JP4916385B2 - 有機発光素子の製造方法及び蒸着装置 - Google Patents

有機発光素子の製造方法及び蒸着装置 Download PDF

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Description

本発明は、有機発光素子の製造方法及び蒸着装置に関する。
一般的な有機発光素子は基板・陽極・正孔輸送層・発光層・電子輸送層・電子注入層・陰極といった積層構造で形成されている。このような有機発光素子の低電圧化を図るために陰極からの電子注入性の向上は重要である。具体的には、電子注入効率を向上させるために仕事関数の小さい金属や金属化合物・金属塩などをドーパントとして使用し、これらを含む有機化合物膜を電子注入層に用いて、ドナー(電子供与性)ドーパントとして機能させている。
電子注入層の有機化合物膜中では、仕事関数の小さい金属が電子を与え、有機分子をラジカルアニオン状態にする。このことで、隣接する分子間の電子授受をスムーズに行うことが可能となり、陰極からの注入障壁を低下させ電子注入性を向上させる。さらには、有機化合物膜中のホッピング機構による電子輸送性も向上させることができる。
特許文献1乃至3には、金属化合物を含有させて電子注入層を形成し、電子注入層中の金属化合物を還元することにより、電子注入障壁を低下させることが開示されている。
特開2000−182774号公報 特開2004−311403号公報 特開2005−123094号公報
特許文献1乃至3の技術では、金属化合物が還元されずに有機化合物膜中で残存している場合はドナードーパントとして十分に機能せず、ドープ濃度を向上させても駆動電圧を低下させるどころか上昇させてしまう可能性もある。
そこで、本発明は、電子注入効率がより高く低電圧駆動が可能な有機発光素子を安定して製造する方法及びそれに用いる蒸着装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明は第1に、基板と、前記基板の上に配置される陽極及び陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置される発光層と、前記発光層よりも前記陰極の側に配置され、有機化合物とドーパントとから少なくとも構成される電子注入層とを有する有機発光素子の製造方法において、
電子注入層を形成する蒸着装置は、前記有機化合物の蒸着源と、前記ドーパントの原料であるドーパント材料の蒸着源とを有し、
前記ドーパント材料の蒸着源は、前記ドーパント材料を収容する坩堝が開口部を有する上蓋で覆われてなる収容容器と、前記収容容器内に設けられ開口部を有し前記ドーパント材料との化学反応により前記ドーパント材料の分解を起こす金属からなる中蓋と、前記ドーパント材料を加熱し前記中蓋を電磁誘導により加熱する共通の加熱手段又は個別の加熱手段と、を有する構成であって、
電子注入層を形成する工程は、
前記加熱手段によって前記ドーパント材料と前記中蓋とを加熱することにより、前記上蓋の開口部から通過させて前記ドーパント材料を前記基板に蒸着させる工程と、
前記有機化合物の蒸着源から前記有機化合物を基板に蒸着させる工程と、
を有することを特徴とする有機発光素子の製造方法を提供する
また本発明は第2に、基板と、前記基板の上に配置された陽極及び陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された発光層と、前記発光層よりも前記陰極の側に配置されており、有機化合物とドーパントとから少なくとも構成された電子注入層とを有する有機発光素子の製造方法に用いられる蒸着装置において、
前記有機化合物の蒸着源と、前記ドーパントの原料であるドーパント材料の蒸着源とを有しており、
前記ドーパント材料の蒸着源は、前記ドーパント材料を収容する坩堝が開口部を有する上蓋で覆われてなる収容容器と、前記収容容器内に設けられ開口部を有し前記ドーパント材料との化学反応により前記ドーパント材料の分解を起こす金属からなる中蓋と、前記ドーパント材料を加熱し前記中蓋を電磁誘導により加熱する共通の加熱手段又は個別の加熱手段と、を有することを特徴とする蒸着装置を提供する。
本発明によれば、電子注入層中のドーパントをより効率的に機能させることができる。その結果、本発明により製造された有機発光素子は、電子注入効率が高く、低電圧駆動が可能である。また、本発明によれば、素子特性を落とすことなく、長時間連続生産が可能である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
先ず、便宜上、本発明に係る蒸着装置の説明をし、その後、前記蒸着装置を用いた有機発光素子の製造方法を説明する。
本発明の蒸着装置は、図1に示すように、発光層13よりも陰極16側に、有機化合物とドーパントとから少なくとも構成される電子注入層15を有する有機発光素子の製造方法に好適に用いられる。
この蒸着装置は、チャンバー室と、前記チャンバー室内を所定の圧力に排気する真空ポンプと、基板ホルダと、膜厚センサと、有機化合物の蒸着源と、ドーパントの原料であるドーパント材料の蒸着源などを有する(図示は省略)。つまり、基本的構成は、通例の蒸着装置と同様であるため、相違部分についてのみ詳細に説明する。
前記ドーパント材料の蒸着源は、図2に示すように、前記ドーパント材料を収容する坩堝3が開口部を有する上蓋4で覆われてなる収容容器と、前記収容容器内の上部に設けられた、開口部を有する中蓋1とを有する。さらに前記ドーパント材料を加熱する加熱手段2と、前記中蓋を電磁誘導により加熱する加熱手段6とを個別に有する。但し、本実施形態の加熱手段は、ドーパント材料を加熱する加熱手段2と、中蓋1を加熱する加熱手段6とに分けているが、共通の加熱手段として構成されていても良い。
中蓋1は複数個の開口部を有する板状部材である。中蓋1に使用する物質としては特に限定されないが、ドーパント材料5との化学反応により前記ドーパント材料5の分解を起こす金属を用いると、熱による分解以外に、還元反応などの化学反応による分解も期待できるので好ましい。
この中蓋1は、収容容器内においてドーパント材料5と非接触の高さ位置に設けられていることが好ましい。中蓋1として、ドーパント材料5との化学反応により前記ドーパント材料5の分解を起こす金属を用いている場合、中蓋1がドーパント材料5と直接接触すると、接触面積の変化が発生しばらつきの要因となり得る。また、直接反応による副生成物や残渣が中蓋1表面を被覆してしまうことで中蓋1が劣化し、効果が低下する要因ともなり得る。従って、ドーパント材料5とは非接触で、かつドーパント材料5の蒸気と接触する位置に設けられていると、中蓋1に残渣や反応副生成物による表面被覆が発生し難い。その結果、長時間の蒸着後でも化学反応による分解が期待され、デバイスの特性を維持させることが可能となる。
中蓋1はドーパント材料5の蒸気と積極的に接触させることが好ましい。ドーパント材料5の蒸気を中蓋1と接触させることで、ドーパント材料5の二次的な分解を促進させることができる。しかも、中蓋1は坩堝3内に配置されているため、この空間において、より積極的にドーパント材料5の蒸気と接触させることができる。その結果、デバイス特性のさらなる向上が実現できる。また、ドーパント材料5の蒸気との接触を増やすために、本実施形態のように中蓋1を複数枚配置しても良い。この場合、各中蓋1の開口部の位置は垂直方向でずらした位置に配置することが望ましい。
前記中蓋1の温度はドーパント材料5の析出を防止するという観点から真空下でのドーパント材料5の蒸発温度以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。また、中蓋1の温度は分解を促進させる観点から、より高温であることが好ましいが、輻射熱による有機発光素子や蒸着源周辺への影響を考えると2000℃以下であることが好ましい。本発明の効果が充分であり、かつ輻射熱による影響を比較的容易に抑えられる温度として、1000℃前後であることがより好ましい。
中蓋1を加熱する加熱手段6は、前記中蓋1の高さ位置近傍の坩堝3の上部外周に巻き付けられたコイルである。中蓋1を電磁誘導して上述した温度となるように、前記中蓋1は図示されていない加熱制御装置に接続され、加熱手段6に供給される電力等が制御される構成とされている。
中蓋1の加熱方法としては、直接電流を流して加熱する方法もあるが、その場合は給電用の配線が必要となり、この部分も実際には高温になるため成膜基板や蒸着源周辺への熱影響が問題となる。
しかし、本発明の蒸着装置は、中蓋1を収容容器内に配置し、前記中蓋1を誘導加熱するため、高温となる給電用の端子部や配線が不要となる。よって、これらの部分からの輻射熱を受けなくなるため、成膜基板や蒸着源周辺への熱影響をより抑えることが可能となる。
また、給電用の端子部や配線が不要となるため、セッティングがしやすくなり、メンテ性が格段に向上する。
さらに、直接通電して加熱する場合は、蒸着中に例えば配線がはずれたり、切れたりした場合は、媒体を加熱することができなくなるが、誘導加熱を用いた場合は配線がないため、このような問題は生じない。
複数枚の中蓋をそれぞれ直接通電により加熱する場合、通電用の配線が非常に複雑となり、実現することは相当困難であるが、本発明のように誘導加熱を用いれば配線が必要なくなり、複数枚の中蓋を同時にしかも効率的に加熱することが可能となる。
ドーパント材料5を加熱する加熱手段2は、ドーパント材料5が収容されている高さ位置近傍の坩堝3の下部外周に巻き付けられたタンタルなどの金属の素線であり、直接電流を供給して加熱させる。但し、加熱手段2はシースヒーターなどを用いても良い。
この加熱手段2により坩堝3の下部が加熱され、坩堝3からの熱伝導及び熱輻射によりドーパント材料5が加熱され、蒸発する。蒸発したドーパント材料5は、中蓋1と接触しつつ、開口部から通過し、さらに上蓋4の開口部から通過して基板に蒸着する。この際、図示されていない膜厚センサにより蒸着レートをモニタし、所望の蒸着レートになるように加熱手段2への供給電力が調整される。
上述したように、坩堝3の上部と下部で個別の加熱手段2、6を用いることで、個別に温度調整することが可能となり、中蓋1をドーパント材料5が分解する温度で維持できるようになる。
なお、図3のように加熱手段2と6の間に遮蔽板9を設け、それぞれが干渉し合わないようにしてもよい。
また、中蓋1は上述したように板状部材に限らず、図4に示すように、筒の上端に開口部を有する板が配置された構成でもよく、この板と筒からなる中蓋を坩堝3内に挿入して配置する。前記板と筒は一体(図4(a))であっても構わないし、別々(図4(b))であっても良い。前記のように板と筒からなる中蓋を複数用意し、筒部分の長さを変えることで中蓋同士の間隔を調整することが可能である。さらに、板状の中蓋の場合、加熱されない坩堝壁面に蒸着材料が析出する可能性があるが、このように筒部分を持たせることで、筒部分も誘導加熱されるため、坩堝3への析出を抑える効果がある。
次に、上記蒸着装置を用いた有機発光素子の製造方法を説明する。
本発明の製造方法は、例えば図1に示すように、電子注入効率を向上させるために、電子注入層として、ドーパントとして機能するドーパント材料を含有する有機化合物膜を備えた有機発光素子を製造する際に好適に実施される。
この製造方法は、通例の製造方法と同様に、基板10上に、陽極11、正孔輸送層12、発光層13、電子輸送層14、電子注入層15、陰極16を順に形成する。電子注入層15を形成する際に、ドーパント材料の分解を促進させるため坩堝3内に配置された中蓋1を誘導加熱によって加熱するものである。
つまり、電子注入層15を形成する工程は、加熱手段2によって前記ドーパント材料5を加熱し、前記収容容器内でガス状態にする工程と、前記加熱手段6によって収容容器内の中蓋1を加熱する工程とを有する。そして、前記ガス状態のドーパント材料5を前記中蓋1に接触させつつ、開口部から通過させ、さらに上蓋4の開口部から通過させて基板ホルダ上の基板に蒸着させる工程を有する。加えて、前記有機化合物の蒸着源から前記有機化合物を同じく基板ホルダ上の基板に蒸着させる工程とを有することを特徴とする。
ガス状態のドーパント材料5を、収容容器から基板までの間で加熱された中蓋1に接触させつつ、開口部から通過させるので、ドーパント材料5の分解が促進され、より電子を与えやすい活性な状態に変化する。その結果、低電圧駆動が可能な有機発光素子を製造することができる。なお、ガス状態とは、ドーパント材料5そのものが蒸発した状態だけでなく、ドーパント材料5が分解したものが蒸発した状態をも指すものである。
ドーパント材料5としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等が挙げられる。電子注入効率を向上させるには仕事関数の低い金属、若しくはその化合物をドーパントとして用いることが好ましく、仕事関数が低い金属としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。しかしながらアルカリ金属は、空気中の水分と激しく反応し、大気中での取り扱いが困難である。したがって、本発明では、大気中での取り扱いが比較的容易なアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、好ましくはアルカリ金属化合物を用いることが好ましい。
アルカリ金属、アルカリ土類金属は単独で電子注入層として用いることも考えられるが、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物は金属と異なり導電性が低い。そのため、本発明で製造される電子注入層は、電子輸送性の有機化合物中にドーパント材料がドーピングされた層である。電子輸送性の有機化合物としては、公知の材料、例えばアルミキノリノール錯体やフェナントロリン化合物等を用いることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
図1に示す有機発光素子を製造した。本実施例では、陽極11に反射電極として機能するクロム(Cr)、陰極16に透明な発光取り出し電極として機能するインジウム錫酸化物(ITO)を用い、トップエミッション型素子を製造した。
先ず、基板10上にクロム(Cr)をスパッタ法にて200nmの膜厚で成膜し、陽極11を得た。その後、該基板にUV/オゾン洗浄を施した。
続いて、真空蒸着装置(アルバック機工株式会社製)に洗浄済みの基板と材料を取り付け、1×10-6Torrまで排気した。その後、陽極11上にN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を60nmの膜厚となるように成膜して正孔輸送層12を形成した。さらにその上にクマリン6(1.0wt%)とトリス[8−ヒドロキシキノリナート]アルミニウム(Alq3)との共蒸着膜を30nmの膜厚で成膜して発光層13を形成した。続けて、電子輸送層14としてフェナントロリン化合物を10nmの膜厚で成膜した。
次に、電子輸送層14上に、フェナントロリン化合物と、ドーパント材料5としての炭酸セシウムとを40nmの膜厚に成膜し、電子注入層15とした。炭酸セシウムの蒸着源としては、図2に示すものを用いた。坩堝3、上蓋4の材質はアルミナであり、中蓋1の材質はタングステンである。坩堝の外径は30mm、高さは50mmであり、板厚は2mmである。また、上蓋4と中蓋1の板厚はそれぞれ1.5mmである。
中蓋1は、ドーパント材料5の蒸気と効率よく接触させる必要があるため、本実施例では2枚使用している。それぞれの中蓋には複数個の開口部が設けられており、2枚の中蓋の開口部位置は、ドーパント材料5との接触機会を増やすために垂直方向において異なる位置に配置されている。
中蓋1及び上蓋4の開口部におけるコンダクタンスの関係は、上蓋4の開口部のコンダクタンスが最も小さく、上側の中蓋1の開口部、下側の中蓋1の開口部の順にコンダクタンスが大きくなるように設計されている。このような条件を満たす上蓋を配置することにより、ドーパント材料5の蒸発が安定し、膜厚分布を向上させることができるようになる。
今回用いた上蓋4の開口部径はφ3mmであり、上蓋中央部に設けられている。上側の中蓋1の開口部径はφ2mmであり、前記中蓋1の周囲に4個設けられている。下側の中蓋1の開口部径はφ2mmであり、前記中蓋1の中央部に8個設けられている。また、上蓋4、上部中蓋1、下部中蓋1の間隔は本実施例においてはそれぞれ5mmである。中蓋1及び上蓋4の開口部数、開口部径及び配置場所はこれに限定されるものではない。
坩堝下部においては、加熱手段2によりドーパント材料5を加熱し、蒸着源の収容容器内でガス状態とした。そして、前記ガス状態のドーパント材料5を、加熱手段により誘導加熱された前記上下の中蓋1に接触させつつ、開口部から通過させ、さらに上蓋4の開口部から通過させて、電子輸送層14上に蒸着させた。それと共に、蒸着装置の有機化合物の蒸着源からフェナントロリン化合物を電子輸送層14上に蒸着させ、電子注入層15とした。
この際、所望の蒸着レートで一定になるように加熱手段2に供給する電力を制御した。また、加熱手段6に供給される電力及び周波数は中蓋1の温度が1000℃程度になるように調整した。本実施例において周波数は10kHzであるが、これに限られるものではなく、使用する中蓋の形状、材質などにより異なる。
中蓋1及び上蓋4の開口部を上述した構成にすることで、坩堝3内に配置された中蓋1と炭酸セシウム蒸気の接触がより積極的に効率よく行われ、作製されたデバイスの特性が向上する。しかも、上蓋4へのドーパント材料5の再付着が抑制される。
また、炭酸セシウムが高温に維持された中蓋1、上蓋4に何度も衝突して蒸着されるため、ドーパント材料が固まり(クラスタ)として成膜されにくくなり、デバイスの劣化及び基板内のデバイス特性のムラを抑えることができるようになる。
ちなみに、今回使用した坩堝3は絶縁材料であるため、電磁誘導により発熱はしない。坩堝下部は加熱手段2により加熱されており、坩堝上部は誘導加熱された中蓋1により加熱され、蒸発したドーパント材料5の坩堝3及び上蓋4への再付着等が抑制される。本実施例では坩堝3の材質としてアルミナを使用したが、カーボンを使用することも可能である。また、上蓋4も本実施例ではアルミナを使用しているが、カーボン等を使用することもできる。
電子注入層15上にインジウム錫酸化物(ITO)をスパッタ法にて150nmの膜厚で成膜し、透明な発光取り出し陰極16を得た。その後、基板をグローブボックスに移し、窒素雰囲気中で乾燥剤を入れたガラスキャップにより封止した。
得られた有機発光素子に直流電圧を0Vから0.1Vずつ上昇させて印加し、発光特性を調べた。その結果、上記の有機発光素子は印加電圧が5.0Vの時の電流密度が85.0mA/cm2であり、5.0V時の発光効率は5.0cd/Aと計算された。
また、電子注入層15の炭酸セシウムの蒸着を継続して連続的に行った後、同作製手順にて有機発光素子を作製したところ、5.0V印加時に電流密度が84.7mA/cm2、発光効率は5.0cd/Aと計算され、ほとんど変化のないことを確認した。
上記実施例の試験体A1として、別途シリコンウエハ上に、上述した電子注入層15と同条件で単独膜を成膜して作製した。この試験体A1のセシウムイオンの濃度をICP‐MS分析から求め、電子注入層15中のセシウム濃度が約2重量%であることを確認した。また、この試験体A1の蒸着源から上に250mm離れた位置で成膜した膜のφ75mm内でのセシウム濃度分布は±2.2%であった。
蒸着源上部250mmでの上記試験体A1の基板温度を測定したところ、33℃であった。
Cs2CO3クラスタ数に関しては、別途洗浄済みのシリコンウエハ上に、まず電子注入層15と同条件で単独膜を成膜し、さらにその膜を覆うようにアルミニウムを300nmの膜厚で成膜したものを10枚作製して試験体B1とした。この試験体B1の成膜面を顕微鏡で暗視野観察し、φ10mm内の輝点の数で判断した。本実施例のCs2CO3用蒸着源を用いた場合、輝点はほとんど確認されなかった。
<実施例2>
本実施例は、坩堝上部及び坩堝下部をそれぞれ独立で誘導加熱により温度制御するものである。
図5に示す蒸着源の坩堝3、上蓋4の材質はアルミナである。中蓋1は側壁に開口部を有する籠形状になっており、材質はタングステンである。
つまり、中蓋1は坩堝壁面に沿うように構成されており、坩堝壁面と中蓋1の側壁との間をドーパント材料5の蒸気が通過する過程で分解が促進されるようになっている。中蓋1は坩堝壁面に沿うように構成されているので、坩堝壁面も中蓋1からの熱輻射により加熱され、材料の再付着を防ぐことが可能である。
中蓋1の開口部は、ドーパント材料5の蒸気との接触機会を増やすために、なるべく坩堝上部に設けられていることが望ましい。また、中蓋1の籠の深さ、つまり縦方向の長さも、同じくドーパント材料5の蒸気との接触機会を増やすという意味で、高さを有していることが望ましい。
この中蓋1はコイル(加熱手段)6により誘導加熱される。コイル6に供給される電力及び周波数は中蓋1の温度が1000℃程度になるように調整されている。本実施例において、周波数は10kHzである。
坩堝3内の下部には、ドーパント材料5を入れる金属容器7が配置されている。この金属容器7の材質はニッケルである。金属容器7の材質はドーパント材料5と反応を起こさないものを選択することが望ましい。ドーパント材料5と反応しやすい材質を用いる場合は、金属容器7の内側に反応しない材料、例えばニッケル、アルミナなどをコーティングすることが望ましい。
この金属容器7はコイル(加熱手段)8により誘導加熱される。コイル8に供給される電力及び周波数はドーパント材料5が所望の蒸着レートになるように選択、調整されている。本実施例において、周波数は1kHzであるが、これに限られるものではなく、使用する金属容器の形状、材質などにより異なる。
本実施例では、坩堝上部と下部でコイルに印加する周波数が異なるため、干渉を防止するために図6のようにそれぞれにヨーク19を設けてもよい。
この蒸着源を用いて、実施例1と同様の方法で有機発光素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
さらに、上記蒸着源を用いて実施例1と略同様に試験体A2を作製し、この試験体A2の蒸着源から上に250mm離れた位置で成膜した膜のφ75mm内でのセシウム濃度、濃度分布及び基板温度を測定した。その結果、実施例1とほぼ同等であった。
また、上記蒸着源を用いて実施例1と略同様に作製した試験体B2のCs2CO3クラスタ数を測定したところ、10枚の平均で0.1個であった。
<実施例3>
電子注入層15中のセシウム濃度が約1重量%となるように蒸着した以外は実施例1と同様の方法で有機発光素子、試験体A3、及び試験体B3を作製し、評価した。結果を表1に示す。
本発明の蒸着源を用いることにより、炭酸セシウムと中蓋1がより積極的に接触するので、セシウム濃度が低くても、特性が良好な有機発光素子を作製することが可能となった。
Figure 0004916385
このように、本発明によれば、デバイス或いは坩堝周辺への熱的影響、ドーパント材料のクラスタによるデバイスの劣化及び基板内のデバイス特性のムラを抑えつつ、電子注入層中のドーパント材料をより効率的に機能させることができる。その結果、本発明により製造された有機発光素子は、電子注入効率が高く、低電圧駆動が可能である。また、本発明によれば、素子特性を落とすことなく、長時間連続生産が可能である。さらに、中蓋を直接通電ではなく、電磁誘導で加熱することで、高温となる中蓋への給電用の配線や端子部が必要なくなる。これにより、蒸着源をコンパクトに設計でき、坩堝のセッティングが容易になると同時に、メンテナンス性を格段に向上させることが可能となる。
本発明により製造される有機発光素子の積層構造の一例を示す模式図である。 本発明で使用する蒸着源の一例を示す模式図である。 本発明で使用する蒸着源の一例を示す模式図である。 本発明で使用する中蓋の一例を示す模式図である。 本発明で使用する蒸着源の一例を示す模式図である。 本発明で使用する蒸着源の一例を示す模式図である。
符号の説明
1 中蓋
2 加熱手段
3 坩堝
4 上蓋
5 ドーパント材料
6 加熱手段
7 金属容器
8 コイル(加熱手段)
9 遮蔽板
10 基板
11 陽極
12 正孔輸送層
13 発光層
14 電子輸送層
15 電子注入層
16 陰極
19 ヨーク

Claims (8)

  1. 基板と、前記基板の上に配置される陽極及び陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置される発光層と、前記発光層よりも前記陰極の側に配置され、有機化合物とドーパントとから少なくとも構成される電子注入層とを有する有機発光素子の製造方法において、
    電子注入層を形成する蒸着装置は、前記有機化合物の蒸着源と、前記ドーパントの原料であるドーパント材料の蒸着源とを有し、
    前記ドーパント材料の蒸着源は、前記ドーパント材料を収容する坩堝が開口部を有する上蓋で覆われてなる収容容器と、前記収容容器内に設けられ開口部を有し前記ドーパント材料との化学反応により前記ドーパント材料の分解を起こす金属からなる中蓋と、前記ドーパント材料を加熱し前記中蓋を電磁誘導により加熱する共通の加熱手段又は個別の加熱手段と、を有する構成であって、
    電子注入層を形成する工程は、
    前記加熱手段によって前記ドーパント材料と前記中蓋とを加熱することにより、前記上蓋の開口部から通過させて前記ドーパント材料を前記基板に蒸着させる工程と、
    前記有機化合物の蒸着源から前記有機化合物を基板に蒸着させる工程と、
    を有することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
  2. 個別の加熱手段である前記ドーパント材料の加熱手段と、前記中蓋の加熱手段とは、個別に温度調整されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
  3. 前記ドーパント材料は、アルカリ金属化合物若しくはアルカリ土類金属化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
  4. 前記ドーパント材料は、炭酸セシウムであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
  5. 前記ドーパント材料を前記基板に蒸着させる工程は、前記加熱手段によって前記ドーパント材料と前記中蓋を加熱することにより、ガス状態のドーパント材料を前記中蓋に接触させつつ、前記中蓋の開口部から通過させ、さらに上蓋の開口部から通過させて基板に蒸着させる工程であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の有機発光素子の製造方法。
  6. 前記中蓋は、200℃以上であって2000℃以下の温度に加熱されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の有機発光素子の製造方法。
  7. 前記中蓋はタングステンからなることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の有機発光素子の製造方法。
  8. 基板と、前記基板の上に配置された陽極及び陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された発光層と、前記発光層よりも前記陰極の側に配置されており、有機化合物とドーパントとから少なくとも構成された電子注入層とを有する有機発光素子の製造方法に用いられる蒸着装置において、
    前記有機化合物の蒸着源と、前記ドーパントの原料であるドーパント材料の蒸着源とを有しており、
    前記ドーパント材料の蒸着源は、前記ドーパント材料を収容する坩堝が開口部を有する上蓋で覆われてなる収容容器と、前記収容容器内に設けられ開口部を有し前記ドーパント材料との化学反応により前記ドーパント材料の分解を起こす金属からなる中蓋と、前記ドーパント材料を加熱し前記中蓋を電磁誘導により加熱する共通の加熱手段又は個別の加熱手段と、を有することを特徴とする蒸着装置。
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