JP4914868B2 - 電動車両の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は電動車両の制御装置に関し、より具体的には着磁された2個の回転子を相対回転させて位相を変更する電動機を備えた電動車両の制御装置に関する。
電動ポンプを介して作動流体を供給されて着磁された2個の回転子を相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を変更する電動機で駆動される車輪を備えた電動車両の例としては、下記の特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、磁石片が周方向に平行に配置される第1、第2の回転子を備えると共に、作動流体が供給されないときは強め位相位置で安定する特性を備えた電動機を搭載している。
特開2007−244060号公報
ところで、電動機によっては磁石片をその長手方向が径方向を向くように配置される第1の回転子と周方向を向くように配置される第2の回転子を備えるものもあり、そのような電動機は作動流体が供給されないとき、弱め位相位置で安定する特性を備える。いずれの特性を備える電動機であっても、電動ポンプを介して作動流体を供給して位相を変更することから、電動ポンプの消費電力を低減することが望ましい。
従って、この発明の目的は上記した課題を解消することにあり、電動機で車輪が駆動される電動車両において位相を変更する電動ポンプの消費電力を低減するようにした電動車両の制御装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、それぞれに複数の磁石片が設けられると共に、同一の軸線を中心に回転する第1、第2の回転子と、電動ポンプを介して作動流体を供給して前記第1、第2の回転子を前記軸線を中心として相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を前記磁石片による合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置との間で変更する位相変更機構とを少なくとも有すると共に、前記作動流体が供給されないとき、前記合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置の中間位置あるいは最も弱められる位相位置で安定する特性を備える電動機と、前記電動機で駆動される車輪とを備えた電動車両の制御装置において、前記電動車両が所定速度以上の高速で所定時間以上走行する高速走行状態にあるか否か判定する高速走行状態判定手段と、前記高速走行状態にあると判定されるとき、前記電動ポンプの作動を抑制するポンプ作動抑制手段とを備える如く構成した。
請求項2にあっては、それぞれに複数の磁石片が設けられると共に、同一の軸線を中心に回転する第1、第2の回転子と、電動ポンプを介して作動流体を供給して前記第1、第2の回転子を前記軸線を中心として相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を前記磁石片による合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置との間で変更する位相変更機構とを少なくとも有すると共に、前記作動流体が供給されないとき、前記合成磁束が最も強められる位相位置で安定する特性を備える電動機と、前記電動機で駆動される車輪とを備えた電動車両の制御装置において、前記電動車両が渋滞路を所定時間以上走行する渋滞走行状態にあるか否か判定する渋滞走行状態判定手段と、前記渋滞走行状態にあると判定されるとき、前記電動ポンプの作動を抑制するポンプ作動抑制手段とを備える如く構成した。
請求項3に係る電動車両の制御装置にあっては、前記渋滞走行状態判定手段は、外部通信に基づいて前記渋滞走行状態にあるか否か判定する如く構成した。
請求項1にあっては、電動ポンプを介して作動流体を供給して着磁された第1、第2の回転子を相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を磁石片による合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置との間で変更する位相変更機構とを少なくとも有すると共に、作動流体が供給されないとき、合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置の中間位置あるいは最も弱められる位相位置で安定する特性を備える電動機で駆動される車輪とを備えた電動車両の制御装置において、所定速度以上の高速で所定時間以上走行する高速走行状態にあるか否か判定し、高速走行状態にあると判定されるとき、電動ポンプの作動を抑制、即ち、停止あるいはその吐出出力を低下させる如く構成したので、位相を変更する電動ポンプの消費電力を低減することができる。また、トルクが必要な低回転ではない高速走行状態にあるときに限って電動ポンプの作動を抑制する如く構成したので、不都合が生じることがない。
請求項2にあっては、電動ポンプを介して作動流体を供給して着磁された第1、第2の回転子を相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を磁石片による合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置との間で変更する位相変更機構とを少なくとも有すると共に、作動流体が供給されないとき、合成磁束が最も強められる位相位置で安定する特性を備える電動機で駆動される車輪とを備えた電動車両の制御装置において、渋滞路を所定時間以上走行する渋滞走行状態にあるか否か判定し、渋滞走行状態にあると判定されるとき、電動ポンプの作動を抑制、即ち、停止あるいはその吐出出力を低下させる如く構成したので、位相を変更する電動ポンプの消費電力を低減することができる。また、高速回転が要求されることがない渋滞走行状態にあるときに限って電動ポンプの作動を抑制する如く構成したので、位相を強め位相側、換言すれば許容回転数を減少させても、不都合が生じることがない。
請求項3に係る電動車両の制御装置にあっては、外部通信に基づいて渋滞走行状態にあるか否か判定する如く構成したので、上記した効果に加え、渋滞走行状態にあるか否かを容易に判定することができる。
以下、添付図面に即してこの発明に係る電動機の制御装置を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の第1実施例に係る電動車両の制御装置の全体構成を示す概略図である。
図1で符号Vは電動車両、具体的にはハイブリッド車両、より具体的にはシリーズ・パラレルハイブリット車両(以下「車両」という)を示す。車両Vはガソリンを燃料とする火花点火式の内燃機関(「ENG」と示し、以下「エンジン」という)10を備える。エンジン10の出力はトルク吸収用のダンパ(フライホイールマス)12を介して変速機14の入力軸14aに接続される。
変速機14の入力軸14aには第1の電動機(モータ)16が連結される。第1の電動機16はブラシレスあるいは交流同期電動機からなる。エンジン10と第1の電動機16は直結され、一方が回転すると、他方も回転させられるように構成される。
変速機14において入力軸14aは油圧クラッチ14bを介して小径の第1ギヤ14cに接続され、第1ギヤ14cは大径の第2ギヤ14dと噛合する。第2ギヤ14dは一方では小径の第3ギヤ14eに接続されると共に、他方では同様に小径の第4ギヤ14fに噛合する。
第3ギヤ14eはディファレンシャルDに接続され、それを介して車輪Wに接続される。第4ギヤ14fには第2の電動機(モータ)18が連結される。第2の電動機18もブラシレスあるいは交流同期電動機からなる。
第1、第2の電動機16,18は、PDU(Power Drive Unit。パワードライブユニット)20を介してバッテリ22に接続される。PDU20はインバータを備え、バッテリ22から供給(放電)される直流(電力)を交流に変換して第1、第2の電動機16,18に供給すると共に、第1、第2の電動機16,18の回生動作によって発電された交流を直流に変換してバッテリ22に供給する。
油圧クラッチ14bはオン(係合)されるとき、エンジン10と第1の電動機16の出力を第1ギヤ14cに伝達すると共に、オフ(解離)されるとき、エンジン10と第1の電動機16を第1ギヤ14cから切り離す。第2の電動機18は常に第4ギヤ14fに接続される。
車両Vの走行を説明すると、発進時には油圧クラッチ14bがオフされてエンジン10と第1の電動機16は変速機14から切り離される一方、PDU20を介してバッテリ22から電力を供給されて第2の電動機18が起動される。第2の電動機18の出力は第4ギヤ14fを介して車輪Wを駆動し、車両Vは発進する。
車両Vの走行速度がある値に達すると、第1の電動機16はPDU20から電力を供給されて起動され、エンジン10をクランキングして始動する。エンジン10はすると、逆に第1の電動機16を駆動し、第1の電動機16を発電機として動作させる。第2の電動機18はバッテリ22の出力に代え、第1の電動機16が発電する電力で回転を継続する。このように第1の電動機16は主として、電動機としてよりも発電機として機能する。
車両Vの走行速度がさらに増加すると共に、低負荷領域にあるとき、油圧クラッチ14bがオンされ、エンジン10の出力が第1ギヤ14c、第2ギヤ14dを介して車輪Wに伝達され、車輪Wの駆動を開始する。
エンジン10の起動に伴い、第2の電動機18は停止される。第2の電動機18は停止されても車輪Wの側から駆動され、発電するが、その際に第2の電動機18が可能な限り負荷とならないよう、その位相は弱め位相側にされる。
尚、車両Vが発進した後、第2の電動機18のみでは駆動力が不足するとき、油圧クラッチ14bがオンされ、エンジン10(あるいはそれに加えて第1の電動機16)の出力も車輪Wに接続される。
図1において符号24はECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)を示す。ECU24はマイクロコンピュータからなり、PDU20を介して第1、第2の電動機16,18の動作を制御して車両Vの走行を上記したように制御する。
またECU24は油圧機構26のクラッチ制御油圧回路260を介してクラッチ14bのオン・オフを制御すると共に、運転状態などの検出結果に基づいて第1、第2の電動機16,18のトルクを制御すると共に、位相制御油圧回路261を介して位相を制御する。
運転状態の検出を説明すると、車両Vのドライブシャフト(図示せず)の付近には車速センサ28が設けられ、ドライブシャフトの回転ごとにパルス信号を出力すると共に、運転席のアクセルペダル(図示せず)の付近にはアクセル開度センサ30が設けられ、アクセル開度(乗員によるアクセルペダル踏み込み量)を示す出力を生じる。
また車両Vのブレーキ(図示せず)の付近にはブレーキスイッチ32が設けられ、乗員によってブレーキが踏まれるとき、オン信号を出力すると共に、車両Vの前面にはレーダ装置34が配置され、車両Vの進行方向に向けて電磁波を発信し、前走車などの物体によって反射された反射波を受信して前走車などの物体に対する相対位置(離間距離)と相対速度を検出する。
さらに、ナビゲーション装置36を備え、車両Vが走行する走行路(道路)の情報を取得する。ナビゲーション装置36は、走行路の情報を時々刻々と送信するインターナビ機能を備える。
上記したセンサおよびスイッチ群の出力はECU24に送られ、ECU24はそれらの出力に基づいて第1、第2の電動機16,18のトルクや位相を制御する。
尚、図1で太線は作動用の高圧油圧系を、細線は潤滑・冷却用の低圧油圧系を、また黒丸は軸受けを示す。第1、第2の電動機16,18の固定子40の巻線40aは作動油を供給されて冷却される。
次いで、図2以降を参照して第1、第2の電動機16,18の構造を説明する。尚、以下では第2の電動機18について構造を説明するが、第1の電動機16にもそのまま妥当する。
図2は図1に示す第2の電動機18の要部断面図、図3は図2に示す電動機の位相変更機構を示す分解斜視図、図4は図2に示す回転子の磁石の磁極の向きを示す模式図、および図5は図2に示す電動機の回転子の側面図である。
図示の如く、第2の電動機18は、円環状の固定子(ステータ)40と、その内側に収容される、同様に円環状の回転子42と、回転軸(回転軸線)44を備える。固定子40は鉄系材料から製作される薄板が積層(あるいは鉄系材料を鋳造)されてなると共に、3相(U,V,W相)の固定子巻線40aが配置されてなる。
回転子42は、外周側(第1)の回転子42aと、回転軸(回転軸線)44を中心として相対変位自在な内周側(第2)の回転子42bからなる。回転子42a,42bは例えば焼結金属から製作される鉄心からなると共に、円周側にはそれぞれ複数組、正確には16組の細長い形状の磁石片(永久磁石)46a,46bが相互に僅かな間隔をおいて配置される。
より具体的には、図5に示す如く、外周側の回転子42aには16組の磁石片46aが、磁石片46aの長手方向が回転子42aの径方向を向くように配置される一方、内周側の回転子42bには16組の磁石片46bが、磁石片46bの長手方向が回転子42aの円周方向を向き、よって磁石片46aと平面視においてコ字状を呈するように配置される。
図3に示す如く、回転子42には位相変更機構50が設けられる。位相変更機構50は、回転軸44にスプライン(図示せず)を介して固定されるベーンロータ52と、内周側の回転子42bの内周面に嵌合されて固定される環状ハウジング54と、ベーンロータ52を外周側の回転子42aにピン56aで固定する、一対のドライブプレート56と、それらに作動油(作動流体、より具体的には油圧)を供給する、前記した油圧機構26からなる。
ベーンロータ52は中央のボス部から径方向に等間隔をおいて突出する複数個(6個)のベーン(部材)52aが形成されると共に、環状ハウジング54の内部には中心側に等間隔をおいて突出する複数個(6個)の仕切壁(部材)54aが形成される。ベーン52aと仕切壁54aの先端にはそれぞれシール部材52b、54bが配置され、ベーン52aと環状ハウジング54の内壁面および仕切壁54aとベーンロータ52のボス部の外周面の間を液密にシールする。
環状ハウジング54は、図2に示す如く、軸方向長さ(幅)が内周側の回転子42bよりも大きく形成され、2枚のドライブプレート56に穿設された環状の溝56b(図3で図示省略)に移動自在に収容され、よって環状ハウジング54と内周側の回転子42bは、外周側の回転子42aと回転軸44に回転自在に支持される。
2枚のドライブプレート56は環状ハウジング54の両側面に摺動自在に密接させられ、環状ハウジング54の仕切壁54aとベーンロータ52のボス部の外周面との間に密閉空間を複数個(6個)形成する。この密閉空間はベーンロータ52のベーン52aによって二分され、進角側作動室(第1の作動室)54cと遅角側作動室(第2の作動室)54dを形成する。ここで、「進角」(ADV)とは内周側の回転子42bを外周側の回転子42aに対して矢印ADV(図5)で示す第2の電動機18の回転方向と同一の方向に、「遅角」(RTD)とはその逆方向に回転させることを意味する。
進角側作動室54c、遅角側作動室54dには作動流体、具体的には非圧縮性の流体、より具体的には変速機14のATF(Automatic Transmission Fluid)あるいはエンジン10の潤滑油などの作動油が供給される。作動油は、回転軸44からベーンロータ52に形成される2本の油路62,64を介して進角側作動室54c、遅角側作動室54dに供給される。
油路62,64はほぼ平行しており、図2と図5に示す如く、回転軸44の軸方向に穿設された油路62a,64aと、それに連続して回転軸44の外周面に穿設された油路62b,64bと、それに連続してベーンロータ52のボス部に放射状に穿設された油路62c,64cからなる。油路62は進角側作動室54cに、油路64は遅角側作動室54dに接続され、後述するリザーバとの間で作動油を給排される。
進角側作動室54cと遅角側作動室54dは作動油を給排されて伸縮し、よって外周側の回転子42aに固定されたベーン52aに対して仕切壁54aと一体にされた内周側の回転子42bが回転軸(回転軸線)44を中心として相対回転させられることで、外周側の回転子42aと内周側の回転子42bの間の相対変位角を示す位相が0度から180度の間で変更され、それに応じて第2の電動機18の誘起電圧が変更される。
図5に最進角位置にあるときの進角側作動室54cと遅角側作動室54dを示す。進角位置にあるとき、進角側作動室54cは作動油が供給される一方、遅角側作動室54dからは作動油が排出されるが、最進角位置では進角側作動室54cは最大限度まで膨張する一方、遅角側作動室54dは最大限度まで収縮する。
この実施例に係る第2の電動機18(および第1の電動機16)にあっては、図4(a)に示すように、外周側の回転子42aの磁石片46aと内周側の回転子42bの磁石片46bは同極同士が対向する同極配置となる位相にあるとき、両者の合成磁束が強められる強め界磁(界磁が増加)となる(換言すれば、強め位相位置にある)。他方、図4(b)に示すように、外周側の回転子42aの磁石片46aと内周側の回転子42bの磁石片46bは異極同士が対向する対極配置となる位相にあるとき、両者の合成磁束が弱められる弱め界磁(界磁が減少)となる(換言すれば、弱め位相位置にある)。
外周側の回転子42aと内周側の回転子42bの位相は、所望の合成磁束が得られるように電気角において0度から180度の間において変更可能であり、そのうち0度側を遅角側、180度側を進角側とする。図4(a)は0度のとき(最遅角位置)の磁石片46aと46bの同極配置を示し、このとき界磁が最も強められる。他方、図4(b)は180度のとき(最進角位置)の磁石片46aと46bの対極配置を示し、このとき界磁が最も弱められる。
それにより第2の電動機18の誘起電圧定数Keが変更され、第2の電動機18の特性が変更される。即ち、強め界磁によって誘起電圧定数Keが増加すると、第2の電動機18の運転可能な許容回転速度は低下するものの、出力可能な最大トルクは増大し、逆に弱め界磁によって誘起電圧定数Keが減少すると、出力可能な最大トルクは減少し、許容回転速度は上昇する。
尚、第2の電動機18(および第1の電動機16)は、内周側の回転子42bが外周側の回転子42aに対して最進角位置(位相180度)あるいは中間位置(90度)にあるとき、換言すれば弱め位相位置側にあるときに安定する。即ち、油圧を供給されないとき、回転子42は進角位置側に向けて自ら相対変位する。
図6は、油路62,64を介して進角側作動室54c、遅角側作動室54dに作動油を供給する、前記した油圧機構26の位相制御油圧回路261を詳細に示す回路図である。
図示の如く、油圧機構26は、リザーバ(タンク。作動油の貯留源)26aからフィルタ26bを介して作動油を汲み上げて高圧化してライン圧として油路26cに出力する油圧ポンプ26dと、油路26cを前記した油路62,64を介して進角側作動室54cと遅角側作動室54dのいずれかに切り換え自在に接続する切換弁26eと、油路26cに介挿され、切換弁26eを介して進角側作動室54cと遅角側作動室54dに供給される作動油の流量を調整する流量調整弁26fを備える。それらの動作は、前記したECU24によって制御される。
切換弁26eは4ポート弁(方向切換弁)からなる。切換弁26eには、そのポートを切り換えるリニアソレノイド弁26gが接続される。リニアソレノイド弁26gは油路26cにおいて油圧ポンプ26dと切換弁26eの間に介挿され、電磁ソレノイド26g1を備え、電磁ソレノイド26g1を励磁・消磁されることで、そのスプール(弁体)は、作動油、より具体的には油圧を切換弁26eのスプール(図示せず)に作用させる第1位置と、その作動油をドレンする第2位置の間で切り換え自在である。尚、破線はレリーフバルブ系を示す。
切換弁26eは、そのスプール(弁体)が、リニアソレノイド弁26gにより、油路26cを油路62を介して進角側作動室54cに接続して作動油を供給する一方、遅角側作動室54dをドレン側に接続して作動油を排出させる第1位置と、油路26cを油路64を介して遅角側作動室54dに接続して作動油を供給する一方、進角側作動室54cをドレン側に接続して作動油をドレン(排出)させる第2位置と、その間にあって4つのポートを閉鎖して作動油を保持する中間(中立)位置からなる3つの位置の間で切り替え自在に構成される。スプールは、スプリング26e1で第2位置に付勢される。
流量調整弁26fもリニアソレノイド弁からなり、電磁ソレノイド26f1を備えると共に、電磁ソレノイド26f1をPWM制御されることで、そのスプールは作動油が切換弁26eを介して進角側作動室54cなどに供給される第1位置と、作動油がドレンされる第2位置の間の任意な位置の間を切り換え自在に構成され、切り換えられた位置に応じた流量の作動油を油路26cに出力することで、作動油の流量を調整する。破線はレリーフバルブ系を示す。
流量調整弁26fで流量が調整された油路26cの作動油は、切換弁26eを介して進角側作動室54cあるいは遅角側作動室54dに供給される。前記した如く、進角側作動室54cは、作動油を供給されるとき、その流量に応じて膨張し、位相を最進角位置(180度)と中間位置(90度)の間の任意の位置に変更すると共に、遅角側作動室54dも、作動油を供給されるとき、その流量に応じて膨張し、位相を中間位置(90度)と最遅角位置(0度)の間の任意の位置に変更する。
図6の末尾に示す如く、油圧ポンプ26dは第2の電動機26jに接続され、第3の電動機26jによって駆動される。第3の電動機26jはPDU20のインバータ回路(INV)20aに接続される。このように、油圧ポンプ26dはEOP(Electric Oil Pump。電動オイルポンプあるいは電動ポンプ)として構成される。
ECU24はPDU20のインバータ回路20aを介して第2の電動機18(および第1の電動機16)動作を制御すると共に、第2の電動機18の回転数などから前記した位相変更機構50を介して位相を変更(制御)する。より具体的には、ECU24は、位相センサ26nなどの出力に基づき、リニアソレノイド弁26gと流量調整弁26fの電磁ソレノイド26g1,26f1を励磁・消磁する。
次いで、この実施例に係る車両Vの制御装置、即ち、ECU24の動作を説明する。
図7はその動作を示すフロー・チャートである。
以下説明すると、S10において高速路を走行しているか否か判断する。これはナビゲーション装置36の出力から現在走行している場所が高速道路、即ち、道路交通法で規定される高速自動車国道と自動車専用道路、あるいはそれに準じるような道路であるか、あるいは現在走行している場所が上記した高速道路ではなく、それ以外の道路であるが、検出された車速が所定車速、例えば50km/hを超えるか否か判断することで行なう。
高速道路を走行しているとき、あるいは高速道路を走行していないが、検出された車速が所定車速を超えるとき、S10の判断は肯定される。高速道路を走行している場合、検出された車速が所定車速を超えていなくても、いずれ超えると予想されるから、高速道路を走行している限り、S10の判断は肯定される。
S10で肯定されるときはS12に進み、その状態が所定時間、例えば5min継続しているか否か判断し、肯定されるときはS14に進み、位相θを最弱め位相の180度と決定する。
即ち、車両Vは上記した高速走行状態にあるとき、高回転低トルクの状態となり、第2の電動機18を強め位相側に駆動する必要がなく、第2の電動機18は弱め位相位置側で安定することから、進角側作動室54cと遅角側作動室54dへの作動油の供給あるいは給排を停止しても、回転子42は位相180度に向けて回転し、180度で停止するからである。
次いでS16に進み、EOP26dの作動を抑制するモードと決定する。EOP26dでの作動を抑制するモードは基本的にはEOP26dを停止することを意味するが、図1の構成においてはEOP26dの出力は油圧クラッチ14bの制御あるいは軸受けなどの摺動部位の潤滑、さらには固定子巻線の冷却にも流用されているため、EOP26dの出力(吐出出力)を低減させるに止める。この作動抑制により、EOP26dの消費電力は低減する。
他方、S10あるいはS12で否定されるときはS18に進み、通常制御モードとする。即ち、アクセル開度センサ30で検出されるトルク指令などに応じて位相θを決定し、EOP26dの作動を制御する。
上記の如く、第1実施例に係る電動車両Vの制御装置においては、所定速度以上の高速で所定時間以上走行する高速走行状態にあるか否か判定し、高速走行状態にあると判定されるとき、EOP26dの作動を抑制する如く構成したので、第2の電動機18(あるいは第1の電動機16)の位相を変更するEOP26dの消費電力を低減することができる。また、車両Vがトルクが必要な低回転ではない高速走行状態にあるときに限ってEOP26dの作動を抑制する如く構成したので、応答性に欠けるなどの不都合が生じることがない。
図8は、この発明の第2実施例に係る電動車両の制御装置の全体構成を示す、図1と同様な概略図である。
第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第2実施例にあっては第2の油圧ポンプ70とそれを駆動する第4の電動機72を設けるようにした。第2の油圧ポンプ70もEOPとして構成され、ECU24はPDU20を介して第4の電動機72の動作を調整して第2のEOP70の作動を制御する。
具体的には、ECU24は、油圧クラッチ14bをオンするとき、第2の油圧ポンプ70を作動させると共に、摺動部位を潤滑するとき、あるいは第1、第2の電動機16,18の固定子40の巻線40aを冷却するとき、第2の油圧ポンプ70を作動させる。
第2実施例に係る装置の動作は図7フロー・チャートに示したものと同様であるが、S16に進んでEOP作動抑制モードとされるとき、EOP26dは完全に停止させる点で相違する。即ち、第2実施例においては、油圧クラッチ14bなどの油圧の供給用に第2のEOP70を設けるように構成したので、EOP作動抑制モードとされるとき、EOP26dを完全に停止させることとする。尚、残余の構成および効果は第1実施例と異ならない。
図9は、この発明の第3実施例に係る電動車両の制御装置のうちの電動機の構造を示す、図5と同様な第2の電動機18の回転子42の側面図である。
第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第3実施例にあっては第2の電動機18(および第1の電動機16)は、図9に示す如く、外周側の回転子42aには16組の磁石片46aがその長手方向が回転子42aの周(円周)方向を向くように配置されると共に、内周側の回転子42bには16組の磁石片46bが同様にその長手方向が回転子42bの周(円周)方向を向き、よって磁石片46aと平面視において平行となるように配置される。
第3実施例においても、従前の実施例と同様、外周側の回転子42aと内周側の回転子42bの位相は電気角において0度から180度の間において変更可能であり、0度のとき(最遅角位置)の磁石片46a,46bは同極配置となって界磁が最も強められる一方、180度のとき(最進角位置)対極配置となって界磁が最も弱められる。
ただし、第3実施例においては、第2の電動機18(および第1の電動機16)は、内周側の回転子42bが外周側の回転子42aに対して最遅角位置(位相0度)にあるとき、換言すれば強め位相位置側にあるときに安定し、油圧を供給されないとき、回転子42は進角位相位置側に向けて自ら相対変位する特性を備える。
尚、第3実施例に係る電動車両Vの構成は、図1あるいは図8と同様である。
図10は第3実施例に係る車両Vの制御装置、即ち、ECU24の動作を示す、図7と同様のフロー・チャートである。
以下説明すると、S100において渋滞路を走行しているか否か判断する。これはナビゲーション装置36のインターナビ機能を介して外部通信を行なって現在走行している場所が渋滞路であるか否か判断すると共に、レーダ装置34の出力から検出された前走車との離間距離が所定距離、例えば10m以下であるか否か判断することで行なう。
S100で肯定されるときはS102に進み、渋滞路を走行する渋滞走行状態が所定時間、例えば5min継続しているか否か判断し、肯定されるときはS104に進み、位相θを最強め位相の0度と決定する。
即ち、車両Vは上記した渋滞走行状態にあるとき、低回転高トルクの状態となる。第2の電動機18は高トルク側の強め位相位置側で安定することから、EOP26dを停止させて進角側作動室54cと遅角側作動室54dへの作動油の給排を停止しても、回転子42は位相0度に向けて回転し、0度で停止するからである。
次いでS106に進み、EOP26dの作動を抑制するモードと決定する。EOP26での作動を抑制するモードは基本的にはEOP26dを停止することを意味するが、第3実施例が図1の構成を備える場合にはEOP26dの出力(吐出出力)を低減させるに止める一方、図8の構成を備える場合、EOP26dを停止させる。いずれにしても、この作動抑制により、EOP26dの消費電力は低減する。
他方、S100あるいはS102で否定されるときはS108に進み、通常制御モードとする。即ち、アクセル開度センサ30で検出されるトルク指令などに応じて位相θを決定し、EOP26dの作動を制御する。
上記の如く、第3実施例に係る電動車両Vの制御装置においては、渋滞路を所定時間以上走行する渋滞走行状態にあるか否か判定し、渋滞走行状態にあると判定されるとき、EOP26dの作動を抑制する如く構成したので、位相を変更するEOP26dの消費電力を低減することができる。また、高速回転が要求されることがない渋滞走行状態にあるときに限ってEOP26dの作動を抑制する如く構成したので、位相を強め位相側、換言すれば許容回転数を減少させても、不都合が生じることがない。
また、外部通信に基づいて渋滞走行状態にあるか否か判定する如く構成したので、上記した効果に加え、渋滞走行状態にあるか否かを容易に判定することができる。
第1、第2実施例にあっては、それぞれに複数の磁石片46a,46bが設けられると共に、同一の軸線44を中心に回転する第1(外周側)、第2(内周側)の回転子42a,42bと、電動ポンプ(EOP)26dを介して作動流体(作動油)を供給して前記第1、第2の回転子を前記軸線を中心として相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を前記磁石片による合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置との間で変更する位相変更機構50とを少なくとも有すると共に、前記作動流体が供給されないとき、前記合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置の中間位置あるいは最も弱められる位相位置で安定する特性を備える電動機(第1、第2の電動機)16,18と、前記電動機で駆動される車輪Wとを備えた電動車両Vの制御装置(ECU24)において、前記電動車両が所定速度以上の高速で所定時間以上走行する高速走行状態にあるか否か判定する高速走行状態判定手段(S10,S12)と、前記高速走行状態にあると判定されるとき、前記電動ポンプ(EOP)26dの作動を抑制するポンプ作動抑制手段(S14,S16)とを備える如く構成した。
また、第3実施例にあっては、それぞれに複数の磁石片46a,46bが設けられると共に、同一の軸線44を中心に回転する第1、第2の回転子42a,42bと、電動ポンプ(EOP)26dを介して作動流体(作動油)を供給して前記第1、第2の回転子を前記軸線を中心として相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を前記磁石片による合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置との間で変更する位相変更機構50とを少なくとも有すると共に、前記作動流体が供給されないとき、前記合成磁束が最も強められる位相位置で安定する特性を備える電動機(第1、第2の電動機)16,18と、前記電動機で駆動される車輪とWを備えた電動車両Vの制御装置(ECU24)において、前記電動車両が渋滞路を所定時間以上走行する渋滞走行状態にあるか否か判定する渋滞走行状態判定手段(S100,S102)と、前記渋滞走行状態にあると判定されるとき、前記電動ポンプの作動を抑制するポンプ作動抑制手段(S104,S106)とを備える如く構成した。
また、前記渋滞走行状態判定手段は、外部通信に基づいて前記渋滞走行状態にあるか否か判定する(S100)如く構成した。
尚、上記において、車両Vが電動車両、より具体的にはシリーズ・パラレルハイブリット車両である場合を例にとってこの発明を説明したが、この発明は、通常のシリーズハイブリッド車、さらには内燃機関を備えない電気自動車にも妥当する。
また、第2の回転子42bを回転軸線を中心として相対回転させて両者の相対変位角を示す位相θを変更するように構成したが、第1、第2の回転子の双方を相対回転させて位相を変更するようにしても良い。
さらに、作動流体として作動油を例示したが、その他の流体であっても良い。
この発明の第1実施例に係る電動車両の制御装置の全体構成を示す概略図である。 図1に示す電動機の要部断面図である。 図2に示す電動機の位相変更機構を示す分解斜視図である。 図2に示す回転子の磁石の磁極の向きを示す模式図である。 図2に示す電動機の回転子の側面図である。 図5に示す位相変更機構の作動室に油圧を供給する油圧機構の油圧回路図である。 図1などに示す電動車両の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。 この発明の第2実施例に係る電動車両の制御装置の全体構成を示す、図1と同様な概略図である。 この発明の第3実施例に係る電動車両の制御装置のうちの電動機の構造を示す、図5と同様な電動機の回転子の側面図である。 第3実施例に係る電動車両の制御装置の動作を示す、図7と同様なフロー・チャートである。
符号の説明
V 車両、10 エンジン(内燃機関)、14 変速機、16,18 第1、第2の電動機(モータ)、20 PDU(パワードライブユニット)、22 バッテリ、24 ECU(電子制御ユニット)、26 油圧機構、26d 油圧ポンプ(EOP)、26e 切換弁(4ポート弁)、26g リニアソレノイド弁、28 車速センサ、30 アクセル開度センサ、34 レーダ装置、36 ナビゲーション装置、40 固定子、42 回転子、42a 外周側(第1)の回転子、42b 内周側(第2)の回転子、44 回転軸(回転軸線)、46a,46b 磁石片、50 位相変更機構、52 ベーンロータ、52a ベーン(部材)、54 環状ハウジング、54a 仕切壁(部材)、54c 進角側作動室(第1の作動室)、54d 遅角側作動室(第2の作動室)、62,64 油路(流体路)、70 第2の油圧ポンプ(第2のEOP)

Claims (3)

  1. それぞれに複数の磁石片が設けられると共に、同一の軸線を中心に回転する第1、第2の回転子と、電動ポンプを介して作動流体を供給して前記第1、第2の回転子を前記軸線を中心として相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を前記磁石片による合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置との間で変更する位相変更機構とを少なくとも有すると共に、前記作動流体が供給されないとき、前記合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置の中間位置あるいは最も弱められる位相位置で安定する特性を備える電動機と、前記電動機で駆動される車輪とを備えた電動車両の制御装置において、前記電動車両が所定速度以上の高速で所定時間以上走行する高速走行状態にあるか否か判定する高速走行状態判定手段と、前記高速走行状態にあると判定されるとき、前記電動ポンプの作動を抑制するポンプ作動抑制手段とを備えたことを特徴とする電動車両の制御装置。
  2. それぞれに複数の磁石片が設けられると共に、同一の軸線を中心に回転する第1、第2の回転子と、電動ポンプを介して作動流体を供給して前記第1、第2の回転子を前記軸線を中心として相対回転させ、両者の相対回転角を示す位相を前記磁石片による合成磁束が最も強められる位相位置と最も弱められる位相位置との間で変更する位相変更機構とを少なくとも有すると共に、前記作動流体が供給されないとき、前記合成磁束が最も強められる位相位置で安定する特性を備える電動機と、前記電動機で駆動される車輪とを備えた電動車両の制御装置において、前記電動車両が渋滞路を所定時間以上走行する渋滞走行状態にあるか否か判定する渋滞走行状態判定手段と、前記渋滞走行状態にあると判定されるとき、前記電動ポンプの作動を抑制するポンプ作動抑制手段とを備えたことを特徴とする電動車両の制御装置。
  3. 前記渋滞走行状態判定手段は、外部通信に基づいて前記渋滞走行状態にあるか否か判定することを特徴とする請求項2記載の電動車両の制御装置。
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