JP4911719B2 - ローラ式ピッチングマシン - Google Patents
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Description
アーム式は、速度を可変できるが、カーブなどの変化球を投げることは難しく、2つの回転ローラを持つ2ローラ式では、変化球も投球可能であるが、瞬時にそれを変更することは難しい。
また、いずれのタイプも任意のボールを希望するコースに投げ分けることは極めて困難である。
そこで、発明者らは3つのローラを用いた3ローラ式ピッチングマシンを発案し、各ローラの制御法にニューラルネットワーク(NN)を用いることで、任意の速度や変化球のボールを打者が希望するコースに投球可能なピッチングマシンを研究開発し、提案している。
しかしながら、開発したマシンを実用化するためにはコストを始めとした、いくつかの問題がある。
特に重要なこととして、打者にデットボール(死球)を絶対に投げない高い投球精度を有することである。
他方、プロ野球などで使用される硬式ボールには、特有の縫い目が付いている。
ボールとローラの摩擦力を用いて投球するローラ式ピッチングマシンでは、同じ投球条件下でもローラと接触する縫い目の位置や向きによってボールの回転や投射角度が微妙に変化し、その結果、投球精度が悪化することが一般に言われている。
本発明者の予備実験にても、硬式ボールの縫い目がローラと接触する仕方によって、ボールの回転や投射角が微妙に変化し、その結果、投球精度が低下することが実験的にわかってきた。
そこで、有限要素法(FEM)を用いて3ローラ式ピッチングマシンの投球シミュレーション解析を行い、投球時のボールの速度や自転回転数(スピン)などのボールの動的挙動を明らかにし、マシンに投入されるボールの姿勢によって投球精度がどのように変化するのかを調べた。
また、それらの解析結果から最適なローラ形状および材質の検討を行った結果本発明に至った。
ここで、ローラの表面の凸曲面形状の曲率半径は、40〜120mmの範囲であるとよく、ローラは、外周部をゴム弾性材で製作してあり、当該ゴム弾性材のヤング率が30〜80MPaの範囲であるのが好ましい。
特に、ローラ外周のゴム材のヤング率を30〜80MPaにしてやや柔く設定し、ローラ表面の曲率半径をR=40〜120mmの範囲にすると、投球の精度がさらに向上する。
これは、柔いローラ表面凸部がへこむようにボールを挟持しながら、その回転摩擦力で発射させるためであると推定される。
発明者らは、これまで開発してきた3ローラ式ピッチングを用いてFEMシミュレーション解析を行った。
まず、図1に解析に用いたマシンの概要を説明する。
ボールは発射位置周りに120°間隔で設置されたゴム製ローラ(1,2,3)との摩擦力を利用して発射される。
各ローラにはそれぞれモータ(M1,M2,M3)を設置し、マシン下部にはマシン全体の仰角θ、偏角φを可変する機構(M4,M5)を付加し、それらはすべてPCによって独立に制御可能である。
なお、各ローラの制御方法にはNN(ニューラルネットワーク)を用い、ローラの回転数などの各種パラメータを決定している。
ここで、NNの具体的な内容は特許文献1,2の内容を取り込むことができる。
これより、本マシンは任意の球速、変化球(球種)のボールを広範囲のコースに精度良く投球できる。
また、室内で行った投球実験の結果から、一般に2シームと呼ばれる、ボールが1回転する間に縫い目が2回現れる状態で投球されたものが、4シーム(縫い目が4回現れる状態)とランダム(2シーム、4シーム以外の状態)に比べて目標点と到達点の距離のバラツキが小さく投球精度の高いこともわかっている。
3ローラ式ピッチングマシンのローラ部およびボールの有限要素モデルを図2に示す。
なお、本解析では、アルミフランジ部(外径φ280mm)は他の材料に比べて剛性が高く変形が微小であるため剛体とし、ボールはその動的特性を考慮し、粘弾性体とした。
解析条件は、ボールの姿勢を図3に示すように2シームおよび4シームとし、ボールとウレタン製のゴムローラ(外径φ320mm、厚み20mm、ローラ幅55mm)の接触摩擦係数μを0.5、解析時間0.1秒で行い,ボールには初期並進速度V0を1m/s,初期角速度ω0を28.56rad/sとして与えた。
この初期速度は、実際にピッチングマシンに投入されるボールの状態を基にして算出した。
なお、比較のため縫い目のないボール(真球モデル)も同様に解析を行った。
そのときのボールの投射角の定義を図4に示し、ローラ1の回転数N1,ローラ2の回転数N2,ローラ3の回転数N3の解析条件を図5に示す。
解析結果より、仰角θと偏角φにおいては2シームが4シームに比べて縫い目の影響が小さいことが確認できた。
次に、ボールの初期姿勢に関わらず投球精度を安定させるため、ローラの表面形状変更の検討を行った。
作成したローラのモデルは図6に示すように表面が盛り上がった形状の凸型ローラ(convex roller)と、逆に窪んだ形状の凹型ローラ(concave roller)の2パターンである。
曲率半径Rはともに100mmとし、ボール中心からローラ表面幅中心までの距離は一定である。
また、これまで用いていたローラは平板ローラ(flat roller)と呼ぶこととした。
発射角の比較を行った結果、ボールの初期姿勢(縫い目の有無)の違いによる影響が大きいことがわかった。
仰角θは図7に示すように平板ローラの2シームが真球モデル(seamless)との差が最も小さく、偏角φは図8に示すように凸型ローラの2シームが真球モデルとの差が最も小さい。
真球モデルの値との差が小さいということは、縫い目の影響が小さく投球精度が良いと考えられる。
また図9に各球種による2シームと4シームの差(Δθ、Δφ)を示し、ストレート、カーブのいずれの場合においても凹型ローラ形状よりも凸型ローラ形状の方が仰角θ、偏角φともそれらの差(Δθ、Δφ)が小さい。
特に、偏角の値はデッドボールに直接的要因につながることから投球精度の面では重要な因子となるため、凸型ローラは他のローラよりも良い傾向があるといえる。
設計条件は、図6に示すボール中心からローラ表面幅中心までの距離(中心間距離)rとローラ表面の曲率半径Rを可変寸法とし、ローラのゴム部分のヤング率Eも変化させた。
なお、これまで用いていた寸法は、r=25.1mm、R=100mm、ヤング率はE=100MPaである。
最適設計を行うために、設計変数に対するローラ最適性の評価として初期姿勢別発射角差を用いることにした。
まず、この推定式を応答曲面法によって導くことにする。
目的となる式は投球精度において最も重要であると考えられる偏角差に関する式(1)と、仰角差と偏角差の両者の影響を考慮した式(2)の2つの式を考案した。
これらの値が小さいほど初期姿勢間の発射角差が小さく、縫い目の影響が小さいことを示す。
ここで、θとφの添字の2、4はボールの初期姿勢(2が2シームおよび4が4シームに対応)を表す。
ηは極端にボールの自転数(スピン)が少なく、期待された球種で投球されていないと考えられる場合を最適解からはずすための項であり次のように決めた。
ω2≧400min−1かつω4≧400min−1⇒η=0,
ω2<400min−1またはω4<400min−1⇒η=1
また、式(2)のαは偏角差の項と仰角差の項の影響を均等にするための重み係数であり、選択した設計点の平均値の比で決定する。
球種はカーブ(N1=1325min−1,N2=1750 min−1,N3=1425min−1)とした。
今回は設計変数を図10のようにそれぞれ3水準に離散化し、その全ての場合を実行して応答曲面を求める全因子計画と呼ばれる実験計画法を用いた。
なお、応答曲面の構築には応答曲面作成ツールRSMaker for Excel を用い、3次多項式による近似を行った。
図11にヤング率E=50MPaのときのR−r曲面図を示す。
この結果から、ローラ表面の曲率半径はR=60〜120mmの間に、またヤング率はE=50MPa付近に最適値があると推定された。
そこで、R=100mmとし、rとEを図12に示す解析条件にて、さらに最適条件近傍の解析を実施した。
その結果を図13に示す。
また、図14はヤング率E=50,60,100MPaにおけるローラ中心間距離rと投球精度の関係を示す。
以上の結果より、ローラのヤング率をE=40〜60MPaに設定し、ローラ表面の曲率はR=80〜120mmのレベルに設定し、ボール中心とローラ中心間距離rを挟持間隔制御装置で適宣に調整すればボール姿勢が2シーム、4シーム、あるいはランダムに変化しても投球精度が高くなることが明らかになった。
なお、今回のボール直径70mmの場合には、r=25.4mmが最適点であった。
図15に、発射口から見た投球解析連続画像を示し、図16に、側面方向から見た投球解析連続画像を示す。
Claims (3)
- ボールの発射方向周りに3つのローラを配置したピッチングマシンであって、
3つのローラは、それぞれの回転を制御する回転駆動装置と、3つのローラで挟持及び発射するボール中心とローラ表面との距離を制御する挟持間隔制御装置を有し、
ローラの表面は凸曲面形状に形成してあることを特徴とするピッチングマシン。 - ローラの表面の凸曲面形状の曲率半径は、R=40〜120mmの範囲であることを特徴とする請求項1記載のピッチングマシン。
- ローラは、外周部をゴム弾性材で製作してあり、当該ゴム弾性材のヤング率がE=30〜80MPaの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載のピッチングマシン。
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