JP4911488B2 - 多結晶シリコンの製造方法 - Google Patents
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Description
前記の半導体グレードシリコンの製法では極めて高純度のシリコンを製造できるが、シリコンへの転換率が低く、この平衡をシリコンに有利にするために多量の水素が必要なこと、それでも転換率が低いために多くの未反応ガスを再度循環使用する必要があること、未反応ガス中に種々のハロゲン化シランが生成するため、再度蒸留によって分離が必要になること、最終的に水素で還元できない四塩化珪素が多量に生成してくること、などのために高コストである。
この他四塩化珪素の亜鉛還元法(非特許文献2)、トリクロルシランの流動床還元(非特許文献3)など、種々の提案がなされているが、いずれもまだ実用化されていない。
本発明の目的は、還元剤の充分な利用効率とシリコンの歩留まりを得るため、液相線組成以上のSi濃度に達する(固液共存の状態になる)まで反応が進行する方法を提供することにあり、太陽電池用原料として、好適に用いられる高純度シリコンの新規で安価な製造方法、及び該製造方法で得られる高純度シリコンを提供することにある。
SiHnCl4-n (1)
(式中、nは0〜3の整数を示す。)
さらに、本発明は、〔2〕以下の(ア)、(イ)の工程を有することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法に係るものである。
(ア)下式(1)で示される気体のクロロシランと、それを還元可能かつシリコンよりも融点の低い金属とを反応させることによってシリコンを製造する方法であって、該金属の融液中に温度差を付けて、高温部と低温部とを設け、該クロロシランを該高温部に導入し、還元反応を進行させ、還元反応を進行させ、還元生成したシリコンを該高温部から該低温部に拡散させ、該低温部で多結晶シリコンを析出させる工程。
SiHnCl4-n (1)
(式中、nは0〜3の整数を示す。)
(イ)上記の工程で得られた多結晶シリコンを方向凝固することにより、高純度多結晶シリコンを製造する工程。
また、本発明は、〔3〕気体のクロロシランを溶融金属中に導入する際に、低温部を該溶融金属の融点以上1100℃以下の範囲に保持し、高温部と低温部との温度差を50℃以上とすることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の多結晶シリコンの製造方法、
〔4〕金属中に導入するクロロシランが単独または不活性ガスとの混合ガスであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の多結晶シリコンの製造方法、
〔5〕クロロシランと不活性ガスとの混合ガスにおけるクロロシランの濃度が10体積%以上であることを特徴とする〔4〕記載の多結晶シリコンの製造方法、
〔6〕金属がナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の多結晶シリコンの製造方法、
〔7〕金属がアルミニウムである〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の多結晶シリコンの製造方法、
〔8〕クロロシランが四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシランから選ばれる1種または2種以上である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の多結晶シリコンの製造方法に係るものである。
本発明の製造方法によれば、一旦融液中に溶解したシリコンを低温部で析出させることにより、高温部におけるシリコン濃度を常に飽和濃度以下に維持することができるため、高温部でのシリコン析出が還元反応を阻害することなく、連続的に還元反応を進行させることができる。また、静的状態ではアルミニウム融液中でのシリコンの拡散は速くないが、気体を吹き込むことで融液全体を乱流状態にし、生成物質の移動が反応を支配することがなく、化学反応と原料供給が律速である状態を維持している。
したがって、本発明の製造方法によれば、クロロシランとアルミニウムの反応性が高いため、多結晶シリコンの収率が高くなるので、工業的に極めて重要である。
SiHnCl4-n (1)
(式中、nは0〜3の整数を示す。)
該クロロシランとしては、四塩化珪素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロルシランが挙げられる。コストを考慮すると四塩化珪素が最も好ましい。これらのクロロシランは、工業的に良く知られている方法で製造された高純度品を使用できる。公知の製造方法としては、珪石と炭素の共存下、1000〜1400℃の高温で塩素化する方法、又は冶金グレードシリコンと塩素もしくは塩化水素の反応などにより製造する方法などがある。このようにして得られたクロロシランを蒸留することにより、6N以上の高純度クロロシランを製造できる。
本発明における原料として用いるクロロシランの純度としては、4N以上が好ましく、 6N以上がさらに好ましく、7N以上が特に好ましい。また、特にP、Bの含有量は0.5ppm以下が好ましく、0.3ppm以下が更に好ましく、0.1ppm以下が特に好ましい。
該不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等を用いることができるが、反応性が低く安価なアルゴンガスを用いることが経済的に好ましい。
なお、本発明において、金属の純度とは、100重量%から、その金属自身を除く、金属に含まれる鉄と銅とガリウムとチタンとニッケルとナトリウムとマグネシウムと亜鉛の合計の重量%を差し引いたものと定義する。
鉄、銅、ガリウム、チタン、ニッケル、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛の各元素は、方向凝固で除去して、該金属を精製することが可能ではあるが、方向凝固の収率を高めるためには、これらの元素の合計量は、好ましくは30ppm以下、更に好ましくは10ppm以下、最も好ましくは3ppm以下である。
これらの元素以外のもので、Pについては、後に用いることがあるシリコンの精製工程である方向凝固で除くことができないため、Pの濃度は、好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.5ppm以下、特に好ましくは0.3ppm以下がよい。
また、ホウ素も方向凝固の精製が難しいために、ホウ素の濃度は、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下、特に好ましくは0.3ppm以下がよい。
次に、該気体のクロロシランを該高温部に導入し、還元反応を進行させる。クロロシランガスを融液に導入する方法としては、ガス導入管を1個以上金属融液の上面や側面から投入してクロロシランガスを吹き込む方法や、金属融液を保持する容器の底部に表面張力によって金属融液が漏れない程度の孔を多数設置してクロロシランガスを吹き込む方法が挙げられる。
静的状態では、金属融液中でのシリコンの拡散は速くないが、気体を吹き込むことで融液全体を乱流状態にし、生成物質の移動が反応を支配することがなく、化学反応と原料供給が律速である状態を維持することができる。
このようにして、高温部で還元生成したシリコンが金属融液中で飽和に達する前に、低温部に拡散したシリコンが低温部において、溶解度を超えて多結晶シリコンとして析出する。
上記のように、一連の還元反応・拡散・析出反応が連続的に起きるため、溶融アルミニウムの高温部でシリコンが飽和に達して反応が停滞することなく、アルミニウム溶液の流動性が維持できる限り反応は進行する。
例えばアルミニウムの場合、融点は660℃であるが、Al−Siの共晶点は580℃以上であるので、まず660℃以上の溶融状態で反応を開始し、反応の進行に伴い、Siが生成すると共晶点以上で融液となるので、液相温度は580℃まで低下させることが可能である。この温度より低いと、全体が固体となりガスを吹き込むことができない。低温部の温度の上限は特にはなく、以下に述べる温度差および高温部の温度の要請を満たすものであれば良い。
金属融液の高温部と低温部との温度差は、大きいほうが一般に好ましく、50℃以上、好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上である。
なお、反応の収率の観点からは、高温部の温度は高いほど好ましく、700℃以上、更に好ましくは800℃以上、特に好ましくは900℃以上である。しかしながら高温部では、例えばクロロシランが四塩化ケイ素の場合、
Si+SiCl4→2SiCl2
の反応が顕著となり、還元して析出したシリコンが原料ガスである四塩化ケイ素ガスとさらに反応して二塩化ケイ素を生成すると考えられる。この物質は不安定な気体であり、生成しても低温部で直ぐに逆反応の、
2SiCl2→Si+SiCl4
となる不均化反応を起こし、そのため所定位置でのシリコンの収率が低下する可能性があるため、高温部の温度はこの反応が顕著に生じない1100℃以下が好ましい。
また、塩化水素が存在すると、それに応じてアルミニウムの原単位が悪化するが、シリコンの精製効果も期待されるため、精製が必要な場合には必要最小限の使用も考えられる。
なお、本発明における純度分析はグロー放電質量分析法を利用した。
必要に応じて、得られた多結晶シリコンは、付着した金属成分の残渣や未反応金属成分を取り除くために酸やアルカリによる処理、さらに方向凝固等の偏析、高真空化での溶解等を行うことによりシリコン中に含まれる不純物元素をさらに低減することができ、特に得られた多結晶シリコンを方向凝固することにより高純度化することが好ましい。
本方法で得られるシリコンを用いて、キャスト法または電磁鋳造法によって、インゴットを作製する。太陽電池の基板の導電型は、一般にはp型であって、ドーパントの導入としては、例えばホウ素を添加することや、アルミニウムを残存させることによって達成できる。インゴットは、内周刃切断等によりスライシングされる。スライシング後は遊離砥粒を用いて両面がラッピングされ、さらに、ダメージ層を除去するために弗酸等のエッチング液に浸漬する等して多結晶基板が得られる。表面での光反射損出を低減するためには、ダイシングマシンを用いて機械的にV溝を形成したり、反応性イオンエッチングや、酸を用いた等方性エチングによりテクスチャー構造を形成したりする。続いて、受光面にリンや砒素等のn型ドーパントの拡散層を形成することによりp−n接合部を得る。さらに、TiO2等の酸化膜層を表面に形成した後に各面に電極を付け、反射による光エネルギーの損失を減らすためのMgF2等の反射防止膜を付けることにより太陽電池を作製することができる。
図1に反応装置の概略を示す。
アルミニウム(ニラコ(株)製、4N)を内径8mm、深さ50mmの黒鉛坩堝3に溶融状態で融液の深さが約40mmになるように、4.1564g仕込み、これをムライト炉心管中に保持し、電気炉中にセットした。次にこのAl融液の高温部を950℃、低温部の温度を717℃になるように温度を制御した。
このAl融液中に、ガス導入管2を通じて、Arで希釈したSiCl4(関東化学(株)製、4N)をSiCl4分圧78.12mmHgに制御して150ml/分の流量で導入して反応させた。反応時間は420分である。
ガスバブリングを行うため、ガス導入管[アルミナ製、(外径φ6、内径φ4)]の先端と黒鉛坩堝底部の距離は5mmとした。
四塩化ケイ素の移送は、アルゴンガスをキャリアガス8として、四塩化ケイ素9に吹き込み、四塩化ケイ素の蒸気をアルゴンガスと共に移送した。その際、アルゴンガスを希釈ガス7として用いて、四塩化ケイ素の濃度を調整した。
高温部を800℃、低温部を710℃とした以外は実施例1と同様の方法で実験を行った。ただし、使用したアルミニウムは2.4518g、反応時間は540分である。反応終了後サンプルを取り出し、シリコン重量を求めたところ、32.2%であることがわかった。このうち、試料の高温部分では21.7%、低温部では45.0%と、全体のSi濃度も高く、特に低温部で高Si濃度になることがわかった。
反応温度を756℃で温度差をつけない条件で、実施例1と同様の実験を行った。
使用したアルミニウム量は1.7542g、反応時間は510分である。反応後冷却して試料を取り出し、シリコン重量を求めたところ、22.8%であることがわかった。
反応温度を852℃にした以外は、実施例1と同様の実験を行った。
使用したアルミニウムは0.4286g、反応時間は150分である。反応後、サンプル中のシリコン重量%を求めたところ30.0%であり、実施例の濃度には到達しなかった。
ガス導入管・・・・・・2
黒鉛坩堝・・・・・・・3
ムライト炉心管・・・・4
アルミニウム・・・・・5
SiCl4/Ar・・・6
希釈ガス・・・・・・・7
キャリアガス・・・・・8
SiCl4・・・・・・9
恒温槽・・・・・・・10
低温部・・・・・・・11
高温部・・・・・・・12
シリコン・・・・・・13
Claims (8)
- 下式(1)で示される気体のクロロシランと、それを還元可能かつシリコンよりも融点の低い金属とを反応させることによってシリコンを製造する方法であって、該金属の融液中に温度差を付けて、高温部と低温部とを設け、該クロロシランを該高温部に導入し、還元反応を進行させ、還元生成したシリコンを該高温部から該低温部に拡散させ、該低温部で多結晶シリコンを析出させることを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。
SiHnCl4-n (1)
(式中、nは0〜3の整数を示す。) - 以下の(ア)、(イ)の工程を有することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。
(ア)下式(1)で示される気体のクロロシランと、それを還元可能かつシリコンよりも融点の低い金属とを反応させることによってシリコンを製造する方法であって、該金属の融液中に温度差を付けて、高温部と低温部とを設け、該クロロシランを該高温部に導入し、還元反応を進行させ、還元反応を進行させ、還元生成したシリコンを該高温部から該低温部に拡散させ、該低温部で多結晶シリコンを析出させる工程。
SiHnCl4-n (1)
(式中、nは0〜3の整数を示す。)
(イ)上記の工程で得られた多結晶シリコンを方向凝固することにより、高純度多結晶シリコンを製造する工程。 - 気体のクロロシランを溶融金属中に導入する際に、低温部を該溶融金属の融点以上1100℃以下の範囲に保持し、高温部と低温部との温度差を50℃以上とすることを特徴とする請求項1または2記載の多結晶シリコンの製造方法。
- 金属中に導入するクロロシランが単独または不活性ガスとの混合ガスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多結晶シリコンの製造方法。
- クロロシランと不活性ガスとの混合ガスにおけるクロロシランの濃度が10体積%以上であることを特徴とする請求項4記載の多結晶シリコンの製造方法。
- 金属がナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多結晶シリコンの製造方法。
- 金属がアルミニウムである請求項1〜6のいずれかに記載の多結晶シリコンの製造方法。
- クロロシランが四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシランから選ばれる1種または2種以上である請求項1〜7のいずれかに記載の多結晶シリコンの製造方法。
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