JP4911122B2 - 超微細粒組織を有する冷延鋼板 - Google Patents
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Description
すなわち、材料は、金型内で成形され、拘束されている状態では曲げ部に曲げモーメントを受けた状態となっているが、成形品が金型から外されると、このモーメントが小さくなるように材料が変形する。これがスプリングバックである。従って、スプリングバックは材料の強度が大きいほど大きくなる。また、強度レベルが同等の場合には、降伏比(降伏点/引張強度)が高いほどスプリングバック量は大きくなるため、スプリングバックが問題となる部品では、降伏比が低いことも強く求められている。
また、制御圧延法や制御冷却法を適用した場合などについても知られている(例えば特許文献2参照)。
この点、熱延鋼板に比べて板厚が薄く、板厚精度や表面性状が厳しい用途、あるいは表面に亜鉛や錫などのめっきを施す用途に適用される冷延鋼板に対しては、通常の冷間圧延−焼鈍プロセスにおいて結晶粒を微細化する技術はほとんど見当たらない。
しかしながら、従来の二相組織鋼板(デュアルフェーズ鋼板)では、引張強さと伸びの積(TS×EL)の値が 18000 MPa・%を超えるような、強度と伸びを兼ね備える材料を得ることは極めて難しかった。
(1) 合金元素を適正に調整して鋼板の再結晶温度とA1 およびA3 変態温度を制御した上で、冷延後の再結晶焼鈍温度およびその後の冷却速度を適正化することにより、平均結晶粒径が 3.5μm 以下のフェライト相を主体とする超微細粒組織が得られ、その結果TS×EL≧17000MPa・%という優れた強度−伸びバランスが得られる、
(2) さらに、冷却速度を制御して第2相を調整する、具体的には第2相をマルテンサイトとすることにより、TS×EL≧18000MPa・%で降伏比(YR)≦70%という優れた強度−伸びバランスおよび低降伏比が得られる
ことの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.質量%で、
C:0.03〜0.16%、
Si:2.0 %以下、
Mn:3.0 %以下および/またはNi:3.0 %以下、
Ti:0.2 %以下および/またはNb:0.2 %以下、
Al:0.01〜0.1 %、
P:0.1 %以下、
S:0.02%以下および
N:0.005 %以下
で、かつC,Si, Mn, Ni, TiおよびNbが下記(1), (2), (3) 式をそれぞれ満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、フェライト相の分率が65 vol%以上で、かつフェライトの平均結晶粒径が 3.5μm 以下で、さらにマルテンサイト相を組織全体に対する分率で3 vol%以上有する組織としたことを特徴とする超微細粒組織を有する冷延鋼板。
記
637.5+4930{Ti* + (48/93)・[%Nb] }≧A1 --- (1)
A3 ≦ 860 --- (2)
[%Mn] + [%Ni]≧ 1.3 --- (3)
ただし、
Ti* = [%Ti]− (48/32)・[%S] − (48/14)・[%N] --- (4)
A1 = 727+14[%Si] −28.4[%Mn] −21.6[%Ni] --- (5)
A3 = 920+ 612.8[%C]2− 507.7[%C] + 9.8[%Si]3
− 9.5[%Si]2+ 68.5[%Si]+2[%Mn]2− 38[%Mn]
+ 2.8[%Ni]2− 38.6[%Ni]+102[%Ti]+51.7[%Nb] --- (6)
また、[%M] はM元素の含有量(質量%)
Mo:1.0 %以下および
Cr:1.0 %以下
のうちから選んだ一種または二種を含有する組成になることを特徴とする超微細粒組織を有する冷延鋼板。
Ca, REMおよびBのうちから選んだ一種または二種以上を合計で 0.005%以下
を含有する組成になることを特徴とする超微細粒組織を有する冷延鋼板。
まず、本発明において鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.03〜0.16%
Cは、安価な強化成分であるだけでなく、パーライトやベイナイトあるいはマルテンサイト等の低温変態相を生成させる上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が0.03%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.16%を超えて含有させると延性や溶接性が劣化するため、Cは0.03〜0.16%の範囲に限定した。
Siは、固溶強化成分として、強度−伸びバランスを改善しつつ強度を向上させるのに有効に寄与するだけでなく、第2相をマルテンサイト化する場合にも有効な元素であるが、過剰な添加は、延性や表面性状、溶接性を劣化させるので、Siは2.0 %以下で含有させるものとした。なお、好ましくは0.01〜0.6 %の範囲である。
MnおよびNiはいずれも、オーステナイト安定化元素であり、A1 ,A3 変態点を低下させる作用を通じて結晶粒の微細化に寄与し、また第2相の形成を進展させる作用を通じて強度−延性バランスを高める作用を有する。しかしながら、多量の添加は鋼を硬質化し、却って強度−延性バランスを劣化させるので、いずれも 3.0%以下で含有させるものとした。
なお、Mnは、有害な固溶SをMnSとして無害化する作用も併せて有するので、0.1 %以上含有させることが好ましい。また、Niは0.01%以上含有させることが好ましい。
Ti, Nbを添加することによって、TiCやNbC等が析出し、鋼板の再結晶温度が上昇する効果がある。そのためには、それぞれ0.01%以上含有させることが好ましい。そして、これらは各々単独で添加しても複合して添加してもよいが、いずれも 0.2%を超えて添加しても効果が飽和するだけでなく、析出物が多くなりすぎてフェライトの延性の低下を招くので、いずれも 0.2%以下で含有させるものとした。
Alは、脱酸剤として作用し、鋼の清浄度に有効な元素であり、脱酸の工程で添加することが望ましい。ここに、Al量が0.01%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.1%を超えると効果は飽和し、むしろ製造コストの上昇を招くので、Alは0.01〜0.1 %の範囲に限定した。
Pは、延性の大きな低下を招くことなく安価に高強度化を達成する上で有効な元素であるが、一方で多量の含有は加工性や靱性の低下を招くので、Pの含有量は 0.1%以下とした。なお、加工性や靱性に対する要求が厳しい場合には、Pはむしろ低減させることが好ましいので、この場合には0.02%以下とすることが望ましい。
Sは、熱延時における熱間割れの原因になるだけでなく、鋼板中にMnS等の介在物として存在し延性や伸びフランジ性の劣化を招くので、極力低減することが望ましいが、0.02%までは許容できるので、本発明ではS含有量は0.02%以下とした。より好ましくは 0.005%以下である
窒素は、時効劣化をもたらす他、降伏延びの発生を招くことから、N含有量は0.005 %以下に抑制するものとした。
Mo:1.0 %以下およびCr:1.0 %以下のうちから選んだ一種または二種
Mo,Crはいずれも、強化成分として、必要に応じて含有させることができるが、多量の添加はかえって強度−延性バランスを劣化させるので、それぞれ 1.0%以下で含有させることが望ましい。なお、上記の作用を十分に発揮させるには、Mo, Crはそれぞれ0.01%以上含有させることが好ましい。
Ca, REM,Bはいずれも、硫化物の形態制御や粒界強度の上昇を通じて加工性および伸びフランジ性を改善する効果を有しており、必要に応じて含有させることができる。しかしながら、過剰な含有は清浄度に悪影響を及ぼすおそれがあるため、合計で 0.005%以下とするのが望ましい。なお、上記した作用を十分に発揮させるためにはCa, REM,Bのうちから選んだいずれか一種または二種以上を合計で0.0005%以上含有させることが好ましい。
記
637.5+4930{Ti* + (48/93)・[%Nb] }≧A1 --- (1)
A3 ≦ 860 --- (2)
[%Mn] + [%Ni]≧ 1.3 --- (3)
ただし、
Ti* = [%Ti]− (48/32)・[%S] − (48/14)・[%N] --- (4)
A1 = 727+14[%Si] −28.4[%Mn] −21.6[%Ni] --- (5)
A3 = 920+ 612.8[%C]2− 507.7[%C] + 9.8[%Si]3
− 9.5[%Si]2+ 68.5[%Si]+2[%Mn]2− 38[%Mn]
+ 2.8[%Ni]2− 38.6[%Ni]+102[%Ti]+51.7[%Nb] --- (6)
また、[%M] はM元素の含有量(質量%)
以下、上記の(1), (2), (3) 式の限定理由を順に説明する。
一般に、Ti,Nbを添加するとTiCやNbC等が析出し、鋼板の再結晶温度が上昇する効果があることが知られている。そこで、Ti,Nb添加量と再結晶温度Treの関係について詳細に調査したところ、Ti,Nbをある量以上添加すると、再結晶温度は上記(6) 式で算出されるA3 と等価になることが判明した。
同図によれば、 637.5+4930{Ti* + (48/93)・[%Nb] }が 700℃すなわちA1 以上になると、再結晶温度Treは 855℃近傍すなわちA3 近傍に急上昇し飽和することが分かる。
同図に示したとおり、 637.5+4930{Ti* + (48/93)・[%Nb] }≧A1 の条件下では、再結晶温度TreはA3 と等価になっている。
すなわち、Ti,Nbが添加され、それらの微細炭窒化物のピン止め力により再結晶温度が上昇し、A1 未満のフェライト(α)域で再結晶できなくなった場合、未再結晶の加工αのまま(フェライト+オーステナイト(γ))2相域温度になり、高転位密度部、不均一変形部などの優先核生成サイトにおいて、加工αからの再結晶α核生成とα→γ変態核生成の競合が生じる。この時、α→γ変態の駆動力の方が再結晶の駆動力よりも大きいため、再結晶α核生成より優先してγ核が次々と生成し、優先核生成サイトを占有する。
このα→γ変態での原子再配列によって歪み(転位)は消費され、転位密度の低い加工αのみ残留し、加工αの再結晶はますます困難となる。温度が上昇し、A3 を超え、γ単相域になって初めて歪みが完全に解消され、見かけ上再結晶が完了する。これが、再結晶温度がA3 に一致し、飽和する機構と考えられる。
なお、この際のα→γ変態は、加工α(優先核生成サイトが多い)から核生成することになるので、再結晶が完了した高温でのγ粒は微細化する。従って、焼鈍中の高温γ粒微細化のために再結晶温度をA3 に調整することは有効であるので、本発明では式(1) すなわち 637.5+4930{Ti* + (48/93)・[%Nb] }≧A1 を満足するTi, Nbを添加することにしたのである。なお好ましくは 637.5+4930{Ti* + (48/93)・[%Nb] }>A1 を満足するTi, Nbを添加する。
上述したとおり、 (1)式を満足する場合には、A3 は実質的に再結晶温度になるため、A3 以上の温度で再結晶焼鈍を行う必要がある。ここに、A3 が 860℃を超えた場合、再結晶焼鈍温度をより高温とする必要が生じ、γ粒成長が激しく、フェライトを平均結晶粒径:3.5 μm 以下の微細粒とすることはできなかった。よって、A3 ≦860 ℃を満足させる必要がある。なお、好ましくはA3 <860 ℃であり、より好ましくはA3 ≦830 ℃である。
オーステナイト安定化元素の増大により、CCT 図におけるフェライトスタート線が低温側にシフトすることにより、焼鈍後の冷却過程におけるγ→α変態時の過冷度が増大してαが微細核生成することにより、α結晶粒が微細化する。ここに、平均結晶粒径:3.5 μm 以下の微細粒を得るためには、上掲した(1), (2)式に加えて [%Mn]+[%Ni] ≧ 1.3(%)とする必要があった。
なお、 [%Mn]+[%Ni] ≧ 1.3(%)さえ満足していれば、MnやNiは単独添加でも複合添加でもどちらでも良い。好ましくは [%Mn]+[%Ni] > 1.3(%)であり、より好ましくは [%Mn]+[%Ni] ≧ 2.0(%)の範囲である。
本発明では、鋼組織は、フェライト相の組織分率を体積率で65%以上にすると共に、フェライトの平均結晶粒径を 3.5μm 以下とする。
というのは、本発明で所期した強度、延性、靱性および強度−伸びバランスに優れた冷延鋼板とするには、微細フェライトを主体とする鋼組織とする必要があり、特にフェライト相の組織分率を65 vol%以上とし、フェライト相の平均結晶粒径を 3.5μm 以下とすることが重要だからである。
ここに、フェライトの平均結晶粒径が 3.5μm を超えると強度−伸びバランスが劣化すると共に、靱性が低下し、また他の組織に比べて軟質であるフェライトの組織分率が65 vol%に満たないと延性が著しく低下し、加工性に乏しくなる。なお、フェライト相のより好ましい組織分率は75 vol%以上である。
というのは、マルテンサイトを、組織全体に対する分率で3 vol%以上存在させることにより、効果的に低降伏比を達成できるからである。この点、ベイナイトやパーライトとすると、降伏点が上昇し、降伏比が高くなるため、形状凍結性が低下する。また、パーライトでは、伸びが低下し易く、良好な強度−伸びバランスを得ることが難しくなる。
また、このマルテンサイトの平均結晶粒径は、2μm 以下とすることが好ましい。というのは、マルテンサイトの平均結晶粒径が2μm を超えると、マルテンサイトの平均結晶粒径が2μm 以下の場合に比べて強度−伸びバランスが低下する傾向にあり、TS×EL<18000MPa・%となる場合があるからである。
なお、本発明のように、平均結晶粒径が 3.5μm 以下の微細なフェライトを主相とする場合には、概ねマルテンサイトの平均結晶粒径は2μm 以下を達成できる。
上記の好適成分組成に調整した鋼を、転炉などで溶製し、連続鋳造法等でスラブとする。この鋼素材であるスラブを、高温状態のまま、あるいは冷却したのち、1200℃以上に加熱してから、熱間圧延を施し、ついで冷間圧延後、温度A3 (℃)以上、(A3 +30)(℃)以下で再結晶焼鈍を施し、その後少なくとも 600℃まで5℃/s以上の速度で冷却する。
また、本発明において、熱間仕上げ圧延出側温度は特に限定されるものではないが、Ar3変態点未満では、圧延中にαとγが生じて、鋼板にバンド状組織が生成し易くなり、かかるバンド状組織は冷間圧延後や焼鈍後にも残留し、材料特性に異方性を生じさせる原因となる場合があるので、仕上げ圧延終了温度はAr3変態点以上とすることが好ましい。
なお、冷間圧延時の圧下率は、再結晶焼鈍時の核生成サイトを増やし、結晶粒の微細化を促すという観点から40%以上とすることが望ましく、一方圧下率を上げすぎると鋼板の加工硬化によって操業が困難となるので、圧下率の上限は90%以下程度とするのが好ましい。
前述のように成分調整した本発明の鋼素材では、A3 が再結晶温度と等価となっているので、A3 未満の温度では再結晶が不十分となる。一方、(A3 +30)(℃)を超える温度では、焼鈍中のγ粒の成長が激しく、微細化に不適切であるため、A3(℃)以上、(A3 +30)(℃)以下で再結晶焼鈍を施す。この再結晶焼鈍は、連続焼鈍ラインで行うことが好ましく、連続焼鈍する場合の焼鈍時間は再結晶が生じる10秒から 120秒程度とすることが好ましい。というのは、10秒より短時間では再結晶が不十分であり、圧延方向に伸展したままの組織が残存するために、十分な延性が確保できない場合があり、一方 120秒より長時間ではγ結晶粒の粗大化を招いて、所望の強度を得ることができないことがあるからである。
また、上記の制御冷却処理の終点温度を 600℃としたのは、結晶粒の微細化にはγ→α変態が開始する 600℃までが強く影響するからである。なお、600 ℃未満の温度域では適宜冷却速度を調整して、第2相(マルテンサイト、ベイナイト、パーライト等)を作り分けることが可能である。
このためには、500 ℃から350 ℃までの温度域における冷却時間、すなわち500 ℃から350 ℃まで冷却するのに要する滞留時間を30秒未満とする。上記の冷却時間が30秒以上では、第2相がベイナイトとなり易く、ベイナイトの体積分率が3 vol%以上となって低降伏比を得ることが困難となり、形状凍結性が低下する。
表1に示す成分組成になるスラブを、表2に示す条件でスラブ加熱後、常法に従い熱間圧延して4.0mm 厚の熱延板とした。なお、この時、熱間仕上げ圧延出側温度はAr3変態点以上とし、また巻取り温度は 600℃とした。この熱延板を、酸洗後、冷間圧延(圧下率:60%)して、 1.6mm厚の冷延板としたのち、連続焼鈍ラインにて同じく表2に示す条件下で再結晶焼鈍を行い、製品板とした。
かくして得られた製品板の組織、引張特性、伸びフランジ性および靱性について調査した結果を表3に併記する。
引張特性(引張強さTS、伸びEL)は、鋼板の圧延方向を長手方向として採収したJIS 5号試験片を用いた引張試験により測定した。
伸びフランジ性は、下記の穴拡げ試験により評価した。すなわち、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に準じて採取した試験片に、10mmφ(D0 )の打ち抜き穴を加工したのち、頂角:60°の円錐ポンチで押し広げる加工を施し、割れが板厚を貫通した直後の穴径D(mm)を求め、次式
λ={(D−D0)/D0 }×100 %
で得られる穴拡げ率λで評価した。
靱性は、2mmVノッチシャルピー試験片を用いて、JIS Z 2242に規定の方法で延性−脆性遷移温度 vTrs(℃) を測定した。
また、発明例はいずれも、TS×ELが 17000 MPa・%以上と、強度−延性バランスに優れ、さらに延性−脆性遷移温度も−140 ℃未満で、靱性に優れていることが分かる。
No.11 は、焼鈍温度が本発明の適正温度(846 ℃)を大きく超えたため、結晶粒成長が激しく、TS×EL値が劣っている。
No.12 は、焼鈍温度が本発明の下限(816 ℃)に満たなかったため、再結晶が完了せず、加工組織が残留したため、TS×EL値が劣っており、延性−脆性遷移温度も上昇している。
No.13 は、焼鈍後の冷却速度が小さかったために、結晶粒が粗大化して強度が低下し、TS×EL値の劣化を招いた。
No.23 は、再結晶温度がA1 未満であるため、再結晶焼鈍によるγ粒微細化効果が得られず、粗大粒となったため、十分な強度が得られなかった。
No.24 は、A3 が 860℃を超えていることから、高温焼鈍が必要となり、その結果結晶粒が成長して、TS×EL値が劣っている。
No.25 は、(Ni+Mn)量が少ないために、焼鈍後冷却過程でのγ−α変態時の過冷度が小さく、αが微細核生成することができなかったため、結晶粒が粗大化した。
表1に示した成分組成になるスラブを、表4に示す条件でスラブ加熱後、常法に従い熱間圧延して4.0mm 厚の熱延板とした。なお、この時、熱間仕上げ圧延出側温度はAr3変態点以上とし、また巻取り温度は 600℃とした。この熱延板を、酸洗後、冷間圧延(圧下率:60%)して、1.6 mm厚の冷延板としたのち、連続焼鈍ラインにて同じく表4に示す条件下で再結晶焼鈍を行い、製品板とした。
かくして得られた製品板の組織、引張特性および形状凍結性について調査した結果を表5に示す。
引張特性(降伏点YP、引張強度TS、伸びEL)は、鋼板の圧延方向を長手方向として採取したJIS 5号試験片を用いた引張試験により測定した。なお、降伏比YRは、YR=(YP/TS)×100 (%)として求めた。
形状凍結性は、開口部長さW0 =100 mmのハット曲げ加工を行い、加工後の開口部長さW1 を測定し、開口部長さの変化量ΔW=W1 −W0 を求め、ΔWと引張強度の比ΔW/TS(mm/MPa)を指標として評価した。このΔW/TSが0.040 以下であれば形状凍結性に優れているといえる。
なお、 No.4は、フェライトの微細化は達成できたものの、焼鈍後の 500℃から 350℃までの冷却時間が長かったため,第2相にベイナイト相が形成され、TS×ELは 17000 MPa・%以上ではあるが、降伏比が70%を超えて高く、形状凍結性に劣っている。
また、前記実施例1と同様に、靱性についても調査を行った結果、発明例はいずれもシャルピー遷移温度が−140 ℃未満であることが確認された。
No.10 は、焼鈍温度が本発明の適正上限温度(846 ℃)を大きく超えたため、結晶粒成長が著しく、TS×EL値が劣っている。
No.11 は、焼鈍温度が本発明の下限(816 ℃)に満たなかったため、再結晶が完了せず、加工組織が残留したため、TS×EL値が極端に劣っている。
No.12 は、焼鈍後の冷却速度が小さかったために、結晶粒が粗大化して強度が低下し、TS×EL値の劣化を招いた。
No.21 は、再結晶温度TX がA1 未満であるため、再結晶焼鈍によるγ粒微細化効果が得られず、粗大粒となったため、十分な強度ひいてはTS×EL値が得られなかった。
No.22 は、A3 が860 ℃超であることから、高温焼鈍が必要となり、その結果結晶粒が成長して、TS×EL値が低下した。
No.23 は、(Ni+Mn)量が少ないために、焼鈍後冷却過程でのγ−α変態時の過冷度が小さく、αが微細核生成することができなかったため、結晶粒の粗大化を招き、その結果、強度ひいてはTS×EL値が低下した。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.03〜0.16%、
Si:2.0 %以下、
Mn:3.0 %以下および/またはNi:3.0 %以下、
Ti:0.2 %以下および/またはNb:0.2 %以下、
Al:0.01〜0.1 %、
P:0.1 %以下、
S:0.02%以下および
N:0.005 %以下
で、かつC,Si, Mn, Ni, TiおよびNbが下記(1), (2), (3) 式をそれぞれ満足する範囲において含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、フェライト相の分率が65 vol%以上で、かつフェライトの平均結晶粒径が 3.5μm 以下で、さらにマルテンサイト相を組織全体に対する分率で3 vol%以上有する組織としたことを特徴とする超微細粒組織を有する冷延鋼板。
記
637.5+4930{Ti* + (48/93)・[%Nb] }≧A1 --- (1)
A3 ≦ 860 --- (2)
[%Mn] + [%Ni]≧ 1.3 --- (3)
ただし、
Ti* = [%Ti]− (48/32)・[%S] − (48/14)・[%N] --- (4)
A1 = 727+14[%Si] −28.4[%Mn] −21.6[%Ni] --- (5)
A3 = 920+ 612.8[%C]2− 507.7[%C] + 9.8[%Si]3
− 9.5[%Si]2+ 68.5[%Si]+2[%Mn]2− 38[%Mn]
+ 2.8[%Ni]2− 38.6[%Ni]+102[%Ti]+51.7[%Nb] --- (6)
また、[%M] はM元素の含有量(質量%) - 請求項1において、鋼板が、さらに質量%で、
Mo:1.0 %以下および
Cr:1.0 %以下
のうちから選んだ一種または二種を含有する組成になることを特徴とする超微細粒組織を有する冷延鋼板。 - 請求項1または2において、鋼板が、さらに質量%で、
Ca, REMおよびBのうちから選んだ一種または二種以上を合計で 0.005%以下
を含有する組成になることを特徴とする超微細粒組織を有する冷延鋼板。 - 請求項1〜3のいずれかにおいて、マルテンサイトの平均結晶粒径が2μm 以下であることを特徴とする超微細粒組織を有する冷延鋼板。
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