JP4909240B2 - 複合材の鋳造方法及びその鋳造装置 - Google Patents
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ディスクロータの軽量化を図るために母材を、アルミニウム合金などの軽合金で構成することがある。軽合金では耐摩耗性が低下するために、ディスクロータの要部にプリフォームと称する耐摩耗部材を一体形成することが望まれる。
図8は従来の技術の基本原理を説明する図であり、(a)において、下型101に第1の複合材102を配置し、上型103に第2の複合材104を配置する。なお、第1の複合材102及び第2の複合材104は、予めセラミックスにアルミニウム合金を含浸させた材料である。そして、下型101にアルミニウムの溶湯105を入れ、上型103を下げて加圧する。いわゆる、溶湯鍛造法を実施する。この結果、(b)に示すようなディスクロータ106を得ることができる。107は凝固したアルミニウム合金である。
(c)は(b)のc部拡大図であり、第1の複合材102とアルミニウム合金107との境界108の接合強度が、期待値より低いことが分かった。本発明者らが、詳細に検討したところ、境界108に酸化物が介在していた。酸化物系セラミックスと溶融アルミニウムとの濡れ性が悪いことは周知の通りであり、酸化物が介在したことによって、濡れ性が低下し、接合強度が低下したと考えられる。
しかし、ディスクロータ106の強度向上には、酸化を回避する技術が必要となる。
下型のキャビティの底に設けられているプリフォーム載置面に、前記第1のプリフォームを載置する第1のプリフォーム載置工程と、
上型のプリフォーム保持面に前記第2のプリフォームを吸着する第2のプリフォーム吸着工程と、
前記キャビティへ所定量の溶湯を注ぐ注湯工程と、
次に、前記上型を所定の位置まで移動させて前記キャビティを密封し、前記キャビティの空気を吸引して真空状態にする真空引き工程と、
この真空状態となった前記キャビティに還元ガスを導入し、前記溶湯上の酸化被膜を還元する還元工程と、
前記上型を用いて前記溶湯を加圧し、前記溶湯を前記第1のプリフォーム及び前記第2のプリフォームに含浸する溶湯含浸工程と、からなることを特徴とする
この鋳造装置は、前記第1のプリフォームを載せるプリフォーム載置面を有する下型と、この下型に対して移動可能に設けられ、吸引機構により吸引された前記第2のプリフォームを保持するプリフォーム保持面を有する上型と、
この上型と前記下型とで形成されるキャビティ内を真空状態にする真空引き機構と、
前記キャビティ内へ還元ガスを導入する還元ガス導入機構と、
前記上型を前記下型へ相対的に移動させることで、キャビティ内の溶湯を加圧するプレス機構からなることを特徴とする。
図1は本発明に係るディスクロータの断面図であり、複合材としてのディスクロータ10は、アルミニウム製基材11の一方の面に第1のプリフォーム12を一体的に備え、アルミニウム製基材11の他方の面に第2のプリフォーム13を一体的に備えてなり、中央のボルト穴14、14を用いて車両の回転部材に取付けることができる。
このような形態のディスクロータ10を製造する鋳造装置の構成を次に説明する。
上型本体部42には、縦に穿った吸引路46と、この吸引路46の途中に介設された弁50と、吸引路46の下端に接続する環状の吸引孔47とが設けられている。
すなわち、吸引機構45は、真空ポンプ49、真空ホース48、吸引路46及び吸引孔47で構成される。
シール板56は、ばね鋼で構成され、外力が加わらないときには、くの字に変形している。
図6は本発明に係る第1のプリフォーム載置工程から還元工程までを説明する図であり、(a)に示すように、下型35に第1のプリフォーム12を載せる。また、上型本体部42に第2のプリフォーム13を吸着保持させる。そのためには、部分型部43を相対的に上昇させ、弁50を開いておく。次に、下型35へ所定量のアルミニウム溶湯59を注湯する。
以降の反応を化学反応式に基づいて説明する。
さらに、(d)に示すように、上型40を一括して下げて、真空路61と還元ガス導入路66とを上型本体部42で塞ぐ。
本発明に係る複合材の鋳造方法は、図6及び図7に示すとおり、金属製基材の一方の面に第1のプリフォーム12を一体形成し、前記金属製基材の他方の面に第2のプリフォーム13を一体形成してなる複合材の鋳造方法において、
下型35のキャビティの底に設けられているプリフォーム載置面36に、前記第1のプリフォーム12を載置する第1のプリフォーム載置工程と(図6(a))、
上型40のプリフォーム保持面41に前記第2のプリフォーム13を吸着する第2のプリフォーム吸着工程と(図6(a))、
前記キャビティへ所定量の溶湯59を注ぐ注湯工程と(図6(a))、
次に、前記上型40を所定の位置まで移動させて前記キャビティを密封し、前記キャビティの空気を吸引して真空状態にする真空引き工程と(図6(b))、
この真空状態となった前記キャビティへ還元ガスを導入し、前記溶湯上の酸化被膜を還元する還元工程と(図6(c))、
前記下型35へ進入する上型40を用いて前記溶湯59を加圧し、溶湯を第1のプリフォーム12及び第2のプリフォーム13に含浸する溶湯含浸工程と(図7)、からなる。
図9は図1の別実施例図であり、ディスクロータ10Bは、アルミニウム製基材11の一方の面に第1のプリフォーム12を一体的に備え、アルミニウム製基材11の他方の面に第2のプリフォーム13を一体的に備えてなり、ボルト穴14、14を用いて車両の回転部材に取付けることができる。
上型40、上型本体部42と、部分型部43とからなり、上型本体部42に吸引路46及び吸引孔47Bを有するが、部分型部43の側面と吸引孔47Bとで吸入弁を成している。
また、プレス機構20や弁50の一例を示したものであって、適宜、構成を変更することは差し支えない。
Claims (5)
- 金属製基材の一方の面に第1のプリフォームを一体形成し、前記金属製基材の他方の面に第2のプリフォームを一体形成してなる複合材の鋳造方法において、
下型のキャビティの底に設けられているプリフォーム載置面に、前記第1のプリフォームを載置する第1のプリフォーム載置工程と、
上型のプリフォーム保持面に前記第2のプリフォームを吸着する第2のプリフォーム吸着工程と、
前記キャビティへ所定量の溶湯を注ぐ注湯工程と、
次に、前記上型を所定の位置まで移動させて前記キャビティを密封し、前記キャビティの空気を吸引して真空状態にする真空引き工程と、
この真空状態となった前記キャビティに還元ガスを導入し、前記溶湯上の酸化被膜を還元する還元工程と、
前記上型を用いて前記溶湯を加圧し、前記溶湯を前記第1のプリフォーム及び前記第2のプリフォームに含浸する溶湯含浸工程と、からなることを特徴とする複合材の鋳造方法。 - 金属製基材の一方の面に第1のプリフォームを一体形成し、前記金属製基材の他方の面に第2のプリフォームを一体形成してなる複合材の鋳造装置であって、
この鋳造装置は、前記第1のプリフォームを載せるプリフォーム載置面を有する下型と、この下型に対して移動可能に設けられ、吸引機構により吸引された前記第2のプリフォームを保持するプリフォーム保持面を有する上型と、
この上型と前記下型とで形成されるキャビティ内を真空状態にする真空引き機構と、
前記キャビティ内へ還元ガスを導入する還元ガス導入機構と、
前記上型を前記下型へ相対的に移動させることで、キャビティ内の溶湯を加圧するプレス機構からなることを特徴とする複合材の鋳造装置。 - 前記上型は、前記第2のプリフォーム保持面を有する上型本体部と、この上型本体部に対して前後進可能とされた部分型部とから構成され、前記上型本体部に吸引路及び吸引孔が設けられ、この吸引路又は吸引孔は遮断部材を備え、前記部分型部の移動により前記遮断部材が前記吸引路又は吸引孔を遮断するようにしたことを特徴とする請求項2記載の複合材の鋳造装置。
- 前記遮断部材は、前記吸引路に介設され、前記部分型部の移動により閉じられる弁であることを特徴とする請求項3記載の複合材の鋳造装置。
- 前記遮断部材は、前記部分型部が兼ね、該部分型部の側面にて吸引孔を閉じることを特徴とする請求項3記載の複合材の鋳造装置。
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