JP4907289B2 - 排水の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、窒素含有化合物を含む排水を固体触媒の存在下に湿式酸化処理(以下、固体触媒を用いた湿式酸化処理およびその方法をそれぞれ触媒湿式酸化処理、触媒湿式酸化処理法とも記載する)することにより、排水中の窒素含有化合物を浄化し、排水の無害化を行う方法に関する。
海域、湖沼、河川等において、富栄養化によって赤潮が発生したりかび臭が発生したりすることが問題となって久しいが、この原因は該水域に排出される排水中に含有されている窒素等の栄養塩類が原因とされている。このため、窒素に関する排水規制が実施されているが、従来の活性汚泥法等による処理を行うのみでは窒素含有化合物を十分に除去できないため、脱窒工程を新規に設けなければならない場合が多い。
従来、窒素含有化合物を含む排水の処理方法としては、活性汚泥処理法等の生物処理法、燃焼処理法、アニオン性高分子凝集剤等を用いた凝集処理法等が採用されてきた。
一方、窒素含有化合物を含む排水の処理法として、触媒を用いて湿式酸化する方法が提案されている(特公昭59−19757号、特開平5−138027号)。これは、排水を100〜370℃の温度、液相を保持する圧力条件下、かつ酸素を含有するガスの供給下に特定の触媒の存在のもとに処理する方法である。この処理法によれば、該排水中の窒素含有化合物を窒素ガス、水、炭酸ガス、無機塩、灰分、より低分子量の有機物等に転換し、浄化することができるものである。
この触媒湿式酸化処理法によって窒素含有化合物の処理を高効率で行うことができるが、さらに浄化性を向上させることができれば好ましい。また、触媒湿式酸化処理では100〜370℃の温度かつ排水が液相を保持する圧力条件下で処理を行うため、その温度および圧力条件に耐える反応塔、熱交換器等の装置が必要である。したがって、反応条件をより低温低圧化すること、および触媒単位体積あたりの排水処理量を増大させること等ができれば、装置費およびランニング費を低減でき、好ましいものである。
特公昭59−19757号公報 特開平5−138027号公報
本発明の目的は、窒素含有化合物を含む排水を効果的に処理するために、触媒湿式酸化処理法における、より浄化性が高く経済的にも優れる排水の処理方法を提供することにある。
詳しくは、本発明は、窒素含有化合物を含む排水をより浄化性高く処理し、さらに装置費およびランニングコスト等も低減することのできる方法を提供することを目的とする。すなわち、窒素含有化合物の浄化性を高めることにより、より低温低圧での処理を可能にすれば、湿式酸化塔、熱交換器等の温度および圧力を引き下げることができるため、装置費等を低減できる。また、より高い液空間速度での処理を可能にすれば、装置を小型化でき、かつ触媒量を減らすことができるため、これによっても装置費、ランニング費等を低減できるものである。
本発明は、窒素含有化合物を含む排水を、酸化剤の供給下、100℃以上370℃未満の温度かつ該排水が液相を保持する圧力条件下において、固体触媒を用いて湿式酸化処理するに際し、該固体触媒に少なくとも2種類の組成の異なる触媒を用い、なおかつ排水の流れ方向に対して上流側の触媒(前段触媒)および下流側の触媒(後段触媒)として、下記触媒を用いることを特徴とする排水の処理方法である。
(前段触媒)
チタニアを含有する酸化物を担体成分とし、かつマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、タングステン、銅、銀、金、ルテニウムおよびロジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する触媒
(後段触媒)
チタニアを含有する酸化物を担体成分とし、かつ白金、パラジウム、ルテニウムおよびイリジウムから選ばれる少なくとも2種の元素を含有する触媒
本発明の窒素含有化合物を含む排水の処理方法によれば、従来技術に比べ飛躍的に高効率に排水を処理できるため、より高い液空間速度またはより低温低圧での装置の運転が可能となる。さらに、これにより装置費およびランニング費等を削減することができるため、より低コストでの窒素含有化合物の処理が可能となる。
また、本発明の排水の処理方法は、該排水中に窒素含有化合物以外の汚染物質として有機および/または無機のCOD成分等が含まれる場合でも、これらのCOD成分等をも水、炭酸ガス、無機塩、灰分、より低分子量の有機物等に転換し、排水の浄化を行うことができる。本発明の排水の処理方法は、このようにたいへん優れた排水の処理方法である。
本発明の処理対象となる排水としては、例えば、化学プラント、電子部品製造設備、食品加工設備、印刷製版設備、発電設備、写真処理設備、金属加工設備、金属メッキ設備、金属精錬設備、紙パルプ製造設備などの各種産業プラントから排出される排水や、屎尿、下水などの生活排水、湿式洗煙排水など各種有害物処理設備から排出される排水、埋立地浸出水などの種々の窒素含有化合物を含有する排水が挙げられる。また、有害物質を含有する土壌を処理するために該土壌中の有害物質を液中に抽出した抽出液も本発明の処理対象排水として扱うことができる。
本発明に係る窒素含有化合物は、窒素原子を含有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アンモニア、アンモニウム塩、ヒドラジン、ヒドラジニウム塩、アミン化合物、アミド化合物、アミノ酸化合物、含窒素五員環化合物、硝酸塩、亜硝酸塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、ニトロシル化合物および窒素を含有するポリマー等を挙げることができる。
本発明に係るアミン化合物とは、分子内にアミノ基を有する化合物であり、メチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、アニリン、ピリジンが例示される。
本発明に係るアミド化合物とは、分子内にアミド基を持つ化合物であり、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、尿素が例示される。
本発明に係るアミノ酸化合物としては、グリシン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、トリプトファンが例示される。
本発明に係る含窒素五員環化合物とは、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、フラザン等およびこれらの誘導体が例示される。これらの中でも特にDMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)等のイミダゾリジノン系窒素含有化合物は、非プロトン系極性溶媒として広く使用されているが、このような窒素化合物の処理においても本発明は好適である。
なお、窒素含有化合物は水に不溶または難溶性のものであってもよいが、水に溶解するものが好ましい。なお、水に不溶または難溶性の窒素含有化合物を処理する場合は、窒素含有化合物が水に懸濁している状態等であることが処理上の取扱い面においては好ましいものである。排水中の窒素含有化合物は、単一化合物で存在しても、また、複数種で混在してもよい。
本発明において処理対象となる排水中の全窒素濃度は、特に限定されるわけではないが、30mg/リットル以上3000mg/リットル以下が効果的であり、好ましくは50mg/リットル以上1000mg/リットル以下である。全窒素が30mg/リットル未満の場合は触媒湿式酸化処理することのコスト的な優位性が十分に得られない。一方、3000mg/リットルを超える場合は、全窒素濃度が高すぎるため、十分な処理性能が得られなくなる場合がある。
また、排水中には窒素含有化合物以外の成分、例えばCOD成分等の成分が含有されていても本発明に係る湿式酸化反応に支障の無い範囲であれば特に問題はない。
本発明に係る酸化剤は排水中の被酸化性物質を酸化しうるものであれば何れのものであってもよく、例えば酸素および/またはオゾンを含有するガスや過酸化水素などが挙げられる。ガスを用いる場合には、一般に空気が用いられるが、それ以外に、他のプラントより生じる酸素含有の排ガスも適宜使用することもできる。これらの中でも、過酸化水素は酸化力が強く、かつ過酸化水素水として液体で供給することができるため、液相で酸化反応を行う本発明において好適である。
本発明において、酸化剤の供給方法は、特に限定されるものではなく、例えば触媒層の手前から全ての酸化剤を供給してもよく、また、分割して供給してもよい。酸化剤を分割して供給する場合には、例えば、反応塔内の触媒層において流れ方向に沿って数箇所から酸化剤を供給する方法などが挙げられるが、排水と酸化剤を固体触媒に接触させる触媒層を複数段設け、かつ酸化剤を各段それぞれに添加することが好ましい。その際、反応塔の数は限定されるものではなく、1塔の反応塔内に複数段の触媒層を設けてもよく、また、反応塔を複数用意してそれぞれの反応塔に触媒層を設けてもよい。各触媒層にはそれぞれ1種類の触媒を充填して用いることが好ましい。
本発明は、少なくとも2種類の組成の異なる固体触媒を組み合わせて用いることにより、各々の触媒単独で処理した場合より高い浄化性能で排水中の窒素含有化合物を浄化し、排水の無害化を行うものである。具体的には、排水の流れ方向に対して上流側には、耐久性の高い触媒を用い、下流側には活性の高い触媒を用いるものである。
ここで、固体触媒の種類は少なくとも2種類あればよいが、触媒の種類が多くなれば、触媒の製造コストが上昇して経済的に不利となる場合が多いため、5種類以下であることが好ましく、4種類以下であることが更に好ましい。3種類以上の固体触媒を組み合わせて用いる場合には、排水の流れ方向に対して前段触媒と後段触媒の順序が逆転しない範囲で、複数の種類の前段触媒と後段触媒を任意に組み合わせて用いることができる。
本発明では、排水の流れ方向に対して上流側の触媒(前段触媒)として、チタニアを含有する酸化物を担体成分とし、かつ次の触媒A成分を含有する触媒を用いる。ここでいう触媒A成分とは、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、タングステン、銅、銀、金、ルテニウムおよびロジウムから選ばれる少なくとも1種の元素の金属および/または化合物である。固体触媒中の触媒A成分の割合は0.05〜70質量%とするのが好ましく、その割合を0.05質量%以上とすることにより、排水中の窒素含有化合物を十分に酸化および/または分解処理することが可能となる。なお、触媒A成分が、前記元素のうち、銀、金、ルテニウムおよびロジウム(以下、「A−1成分」という)の場合には、その金属および/または化合物の割合(合計量)は固体触媒の0.05〜10質量%とするのがよい。10質量%を超える割合で使用しても、それに相応した処理性能の向上は認められず、かえって高価な原料であるがために、固体触媒のコストアップとなって経済的に不利となる。そのほかの、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、タングステンおよび銅(以下、「A−2成分」という)の場合には、その金属および/または化合物の割合(合計量)は固体触媒の0.05〜70質量%とするのがよい。もちろん、合計量が0.05〜70質量%の範囲において、A−1成分とA−2成分とをそれぞれ0.05〜10質量%および0.05〜70質量%の範囲で組み合わせて用いることもできる。
また本発明では、排水の流れ方向に対して下流側の触媒(後段触媒)として、チタニアを含有する酸化物を担体成分とし、かつ次の触媒B成分を含有する触媒を用いる。ここでいう触媒B成分とは、白金、パラジウム、ルテニウムおよびイリジウムから選ばれる少なくとも2種の元素の金属および/または化合物である。固体触媒中の触媒B成分の割合は0.05〜10質量%とするのが好ましく、その割合を0.05質量%以上とすることにより、排水中の窒素含有化合物を十分に酸化および/または分解処理することが可能となる。10質量%を超える割合で使用しても、それに相応した処理性能の向上は認められず、かえって高価な原料であるがために、固体触媒のコストアップとなって経済的に不利となる。触媒B成分は、白金、パラジウム、ルテニウムおよびイリジウムから選ばれる少なくとも2種の元素の金属および/または化合物を組み合わせるものであり、特に限定されるものではないが、白金−パラジウム,白金−ルテニウム,白金−イリジウム,パラジウム−ルテニウム,パラジウム−イリジウムなどの組み合わせが好適である。このように組み合わせて用いることにより、単独で用いる場合より高い浄化性能で排水中の窒素含有化合物を浄化し、排水の無害化を行うことができる。
各々の触媒の形状については特に制限はなく、例えば粒状、球状、ペレット状、破砕状、サドル状、ハニカム状およびリング状のいずれでもよい。ペレット状の場合、断面が円形であるものの他、楕円形、多角形、三葉形、四葉形等任意の形のものを用いることができる。
また各々の触媒量の比率は特に限定されるものではなく、排水の種類や処理条件等に応じて、処理に適したように任意に選択できるものである。本発明では、排水の流れ方向に対して上流側から下流側に向かって少なくとも2種類の組成の異なる触媒を用いるが、2つの隣接する触媒のうち上流側により近い触媒の占有容積をV1とし、下流側により近い触媒の占有容積をV2とすると、この隣接する2つの触媒の占有容積比V1/V2が5/1〜1/5であるように充填することが効果的である。またより効果的には、この隣接する2つの触媒の占有容積比V1/V2が3/1〜1/3であり、さらに効果的には2/1〜1/2である。占有容積比V1/V2が5/1よりも大きい場合、または1/5よりも小さい場合には、本発明における排水の処理方法の効果が少なく、1種類の触媒で処理した結果とあまり差がないものである。この場合には複数の触媒を用いるよりも、単一の触媒を用いた方が触媒の製造単価が下がり、処理コストも低下するため好ましいものである。
本発明の方法は、100℃以上370℃未満の温度範囲で処理を行うものである。この処理温度が100℃未満であると、窒素含有化合物の酸化・分解処理を効率的に行うことが困難になる。この処理温度は、好ましくは120℃を超える温度とするのが良く、より好ましくは130℃を超える温度であり、更に好ましくは140℃を超える温度とするのが良い。また、処理温度が370℃以上であると、排水が液相を維持することができなくなるため、好ましくない。処理温度を高くすれば加熱に必要な運転費が高騰するため、好ましくは280℃以下、より好ましくは170℃以下とするのがよい。
一方、処理圧力は、上記処理温度において排水が液相を保持する圧力であればよく、特に限定されるものではない。処理圧力は各々の触媒層毎に異なってもよい。また、処理性能および触媒の耐久性を向上するためには、この処理圧力の変動を、±20%以内、より好ましくは±10%以内、更に好ましくは±5%以内に制御するのが良い。
触媒層での排水の空間速度は、特に限定されるものではないが、通常、各触媒層あたりの空間速度を0.1hr-1〜10hr-1、より好ましくは0.2hr-1〜5hr-1より更に好ましくは0.3hr-1〜3hr-1となるようにすればよい。空間速度が0.1hr-1未満の場合、排水の処理量が低下し、過大な設備が必要となり、逆に10hr-1を超える場合には、窒素含有化合物の酸化・分解処理を効率的に行うことが困難になる。
本発明では、酸化剤の供給量は特に限定されるものではなく、排水中の有害物質を分解処理するのに必要な量を供給すればよい。酸化剤の供給量として好ましくは排水の理論酸素要求量の0.4倍以上、より好ましくは0.5倍以上であり、好ましくは10.0倍以下、より好ましくは5.0倍以下の酸素量に相当する量であることが推奨される。酸化剤の供給量が理論酸素要求量の0.4倍未満の場合は、排水中の有害物質が十分に分解されない場合が多く、また10.0倍を超えて供給しても設備が大型化するだけで処理性能が向上しない場合が多い。ここでいう理論酸素要求量とは、排水中の被酸化性物質を窒素、二酸化炭素、水、硫酸塩などの灰分にまで分解するのに必要な酸素量のことを指し、排水中に窒素含有化合物以外にも被酸化性物質が含まれている場合にはこれらを含めて理論酸素要求量を求める。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の効果を奏するものであれば本実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す処理装置を使用し、この反応塔1に下記の触媒を1リットル充填して、下記の処理条件下で処理を1000時間連続して行った。以下に詳細な実験方法および結果について記述する。ここでは、3種類の触媒を用いたが、排水の流れ方向に対して上流側に第1触媒として前段触媒を設置し、その下流側に2種類の異なる後段触媒を第2触媒、第3触媒として設置した。
第1触媒(前段触媒)としては、チタニアを担体の主成分とし、ルテニウムを2.0質量%含有する触媒であり、0.4リットル用いた。この触媒の下流側には第2触媒(後段触媒)として、チタニアを担体の主成分とし、パラジウムを0.5質量%,イリジウムを0.5質量%含有する触媒を0.3リットル用いた。更にこの触媒の下流側には第3触媒(後段触媒)として、チタニアを担体の主成分とし、白金を0.3質量%,パラジウムを0.5質量%含有する触媒を0.3リットル用いた。
処理に供した排水は、COD(Cr)濃度25g/リットルであり、トリエタノールアミン0.5g/リットル,アンモニア0.1g/リットルを含有していた。該排水の全窒素濃度は130mg/リットルであった。
上記排水を排水供給ライン1から排水供給ポンプ2により1リットル/hrの流量で昇圧フィードした。一方、酸化剤供給ライン3からはコンプレッサーにて昇圧した空気を90リットル(N)/hrの流量で供給した。この気液混合物を熱交換器4で加熱した後、触媒を充填した反応塔5に導入し、処理温度240℃で湿式酸化処理した。被処理液は熱交換器4および冷却器6により冷却した後、気液分離器7に導入した。気液分離器7では、液面コントローラ(LC)により液面を検出して液面制御弁8を作動させて一定の液面を保持するとともに、圧力コントローラ(PC)により圧力を検出して圧力制御弁9を作動させて7.0MPa(Gauge)の圧力を保持するように操作した。
50時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度は240mg/リットル,全窒素濃度は14mg/リットルであった。以後、開始から1000時間経過するまで処理を継続したが、処理性能の低下は特に見られず、1000時間経過後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度は250mg/リットル,全窒素濃度は16mg/リットルであった。
(比較例1)
反応塔内に、チタニアを担体の主成分とし、白金を0.3質量%,パラジウムを0.5質量%含有する触媒のみを1.0リットル充填した。それ以外は実施例1と同様の条件下で処理を行った。すなわち、実施例1における第3触媒のみを1.0リットル使用した。
50時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度は260mg/リットル,全窒素濃度は17mg/リットルであったが、以後処理性能は低下し、1000時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度は21000mg/リットル、全窒素濃度は120mg/リットルであった。処理終了後、反応塔から取り出した触媒を分析したところ、白金は0.06質量%,パラジウムは0.08質量%に減少していた。
(実施例2)
図2に示す処理装置を使用し、2本の反応塔に下記の触媒を2リットル充填して、下記の処理条件下で処理を1000時間連続して行った。以下に詳細な実験方法および結果について記述する。
排水の流れ方向に対して上流側の反応塔には、第1触媒(前段触媒)として、チタニアを担体の主成分とし、マンガンを10質量%含有する触媒を1リットル充填した。下流側の反応塔には、第2触媒(後段触媒)として、チタニアを担体の主成分とし、ルテニウムを0.5質量%,パラジウムを0.5質量%含有する触媒を1リットル用いた。
処理に供した排水は、COD(Cr)濃度4.0g/リットルであり、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを0.12g/リットル含有していた。該排水の全窒素濃度は300mg/リットルであった。
上記排水を排水供給ライン1から排水供給ポンプ2により1リットル/hrの流量で昇圧フィードした。酸化剤供給ライン3からは35質量%の過酸化水素水を2本の反応塔それぞれに60ミリリットル/hrずつ供給した。触媒を充填した反応塔5では、いずれも反応温度を160℃として湿式酸化処理した。被処理液は冷却器6により冷却した後、気液分離器7に導入した。気液分離器7では、液面コントローラ(LC)により液面を検出して液面制御弁8を作動させて一定の液面を保持するとともに、圧力コントローラ(PC)により圧力を検出して圧力制御弁9を作動させて0.9MPa(Gauge)の圧力を保持するように操作した。
50時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度は40mg/リットル,全窒素濃度は13mg/リットルであった。以後、開始から1000時間経過するまで処理を継続したが、処理性能の低下は特に見られず、1000時間経過後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度は43mg/リットル,全窒素濃度は14mg/リットルであった。
(比較例2)
2本の反応塔のいずれにも、チタニアを担体の主成分とし、ルテニウムを0.5質量%,パラジウムを0.5質量%含有する触媒のみを1リットルずつ充填した。それ以外は実施例2と同様の条件下で処理を行った。すなわち、実施例2における第2触媒のみを2.0リットル使用した。
50時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度は62mg/リットル,全窒素濃度は26mg/リットルであったが、以後処理性能は低下し、1000時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度は3700mg/リットル、全窒素濃度は260mg/リットルであった。処理終了後、反応塔から取り出した触媒を分析したところ、ルテニウムは0.07質量%,パラジウムは0.05質量%に減少していた。
本発明は排水の処理に用いることができる。特に排水中の窒素含有化合物の湿式酸化処理に有効である。
本発明に係る処理装置の実施態様の一つである。 本発明に係る処理装置の実施態様の一つである。
符号の説明
1.排水供給ライン
2.排水供給ポンプ
3.酸化剤供給ライン
4.熱交換器
5.反応塔
6.冷却器
7.気液分離器
8.液面制御弁
9.圧力制御弁
10.第1触媒(前段触媒)
11.第2触媒(後段触媒)
12.第3触媒(後段触媒)

Claims (6)

  1. 窒素含有化合物を含む排水を、酸化剤の供給下、100℃以上370℃未満の温度かつ該排水が液相を保持する圧力条件下において、固体触媒を用いて湿式酸化処理するに際し、該固体触媒に少なくとも2種類の組成の異なる触媒を用い、なおかつ排水の流れ方向に対して上流側の触媒(前段触媒)および下流側の触媒(後段触媒)として、下記触媒を用いることを特徴とする排水の処理方法。
    (前段触媒)
    チタニアを含有する酸化物を担体成分とし、かつマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、タングステン、銅、銀、金、ルテニウムおよびロジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する触媒
    (後段触媒)
    チタニアを含有する酸化物を担体成分とし、かつ白金、パラジウム、ルテニウムおよびイリジウムから選ばれる少なくとも2種の元素を含有する触媒
  2. 排水と酸化剤を固体触媒に接触させる触媒層を複数段設け、各段にそれぞれ1種類の触媒を充填して用い、かつ酸化剤を各段それぞれに添加する請求項1に記載の処理方法。
  3. 排水の流れ方向に対して、上流側の反応器に前段触媒を、下流側の反応器に後段触媒を充填し、かつ酸化剤を各反応器それぞれに添加する請求項1または2に記載の処理方法。
  4. 下流側の反応器において、組成の異なる複数の後段触媒を用いた複数段層とする請求項3記載の処理方法。
  5. 温度が100℃以上170℃以下である請求項1〜4のいずれかに記載の排水の処理方法。
  6. 前段触媒が、マンガンを含有する触媒である請求項1〜5のいずれかに記載の処理方法。
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