JP4907010B2 - 高分子電解質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質、中でも燃料電池用として好適に用いられる高分子電解質に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高効率でクリーンなエネルギー変換装置として、燃料電池が注目を集めている。中でも、電解質としてプロトン伝導性を有する高分子膜を用いた固体高分子型燃料電池は、コンパクトな構造で高出力が得られ、かつ簡単なシステムで運転できることから、車両用等の移動用電源として注目されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池においては、燃料極側から供給される水素と空気極から供給される酸素によって、
燃料極 : H2 → 2H+ + 2e-
空気極 : 1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O
なる電気化学的な反応が生じる。上記反応式において、電子は燃料極から外部回路を通して、空気極側に移動し、プロトンは電解質膜中を移動するので、電解質膜のプロトン伝導性が燃料電池の特性を大きく左右する。
【0004】
従来、固体高分子型燃料電池に用いられるプロトン伝導性の高分子電解質としては、スルホン酸基を持つ高分子電解質である、Nafion(デュポン社の登録商標)をはじめとするパーフルオロカーボンスルホン酸系の材料が、燃料電池としての特性に優れることから主に使用されており、例えば、Nafionにリン酸を含有させた高分子電解質よりなる膜(R.Savinell et.al.,J.Electrochem.Soc.,Vol.141,1994(4),L46−48)が開示されている。ここで、リン酸とは化学式H3PO4で表されるオルトリン酸を指す。しかし、リン酸を含有させた高分子電解質よりさらにプロトン伝導性に優れた高分子電解質が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、スルホン酸基を持つ高分子電解質であって、リン酸を含有させたものより、プロトン伝導性に優れた高分子電解質を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究を行った結果、スルホン酸基を持つ高分子電解質に特定のリン酸エステルを含有させることにより、優れたプロトン伝導性を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、〔1〕スルホン酸基を持つ高分子電解質と、一般式(1)で表される1種または2種以上のリン酸エステルとを含有する高分子電解質に係るものである。
(1)
(式(1)中、Rは直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基またはアリール基を表す。nは1または2を表す。nが2の場合、2個あるRは同一でも異なっていてもよい。)
また、本発明は、〔2〕上記〔1〕の高分子電解質を使用してなる燃料電池に係るものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、スルホン酸基を持つ高分子電解質としては、例えば、(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる高分子にスルホン酸基を導入した高分子電解質;(B)主鎖が、全ての水素原子がフッ素で置換された脂肪族炭化水素からなる高分子にスルホン酸基を導入した高分子電解質;(C)主鎖が芳香環を有する高分子にスルホン酸基を導入した高分子電解質;(D)(A)〜(C)のスルホン酸基導入前の高分子を構成する繰り返し単位から選ばれるいずれか2種以上の繰り返し単位からなる共重合体にスルホン酸基を導入した高分子電解質等が挙げられる。ここに「高分子にスルホン酸基を導入した」とは、「高分子骨格にスルホン酸基を化学結合を介して導入した」ことを意味する。
中でも、化学的安定性の観点からは、(B)が好ましい。
また、耐熱性の観点からは、(C)であることが好ましい。
【0008】
上記(A)の高分子電解質としては、主鎖が酸素原子等のヘテロ原子で中断されているものであってもよく、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸、等が挙げられる。
【0009】
上記(B)の高分子電解質としては、主鎖が酸素原子等のヘテロ原子で中断されているものであってもよく、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸等が挙げられ、Nafion(デュポン社の登録商標)等のパーフルオロカーボンスルホン酸が好ましい。
【0010】
上記(C)の高分子電解質としては、主鎖が酸素原子等のヘテロ原子で中断されているものであってもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレン・エーテル)、ポリフォスファゼン、ポリイミド、ポリ(4-フェノキシベンゾイル-1,4-フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれにスルホン酸基が導入されたもの、アルキルスルホン化ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0011】
上記(D)の高分子電解質としては、ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたものでも、交互共重合体にスルホン酸基が導入されたものでも、ブロック共重合体にスルホン酸基が導入されたものでもよい。ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたものとしては、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン-ジヒドロキシビフェニル共重合体が挙げられる(例えば、特開平11−116679号公報。)
ブロック共重合体にスルホン酸基が導入されたもの(以下、スルホン酸基を持つブロック共重合体ということがある)としては、全てのブロックの主鎖が脂肪族炭化水素で構成されるブロック共重合体、例えばスチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレントリブロック共重合体にスルホン酸基を導入したもの等であってもよいが、少なくとも一つのブロックがその主鎖に芳香環を有するブロック共重合体であることが耐熱性が高く好ましい。またスルホン酸基を持つブロックとスルホン酸基を実質的に持たないブロックとをそれぞれ一つ以上有するブロック共重合体が伝導性に優れるためより好ましい。
【0012】
ここで、スルホン酸基を持つブロックとは、スルホン酸基の数がブロックを構成する繰り返し単位1個あたり平均0.5個以上であるブロックを、スルホン酸基を実質的に持たないブロックとは、スルホン酸基の数がブロックを構成する繰り返し単位1個あたり平均0.1個以下であるブロックをいう。
【0013】
スルホン酸基を持つブロックの具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α―メチルスチレン)、ポリ(アリルフェニルエーテル)、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(フェニレン)、ポリ(アニリン)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(フェニルメチルフォスファゼン)、ポリ(ジフェニルフォスファゼン)、エポキシ樹脂等を有するブロックのそれぞれにスルホン酸基が導入されたブロックが挙げられる。
中でも、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(フェニレン)、ポリ(アニリン)、等を有する一般式(2)で表されるブロックにスルホン酸基が導入されたブロック、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)を有する一般式(3)で表されるブロックにスルホン酸基が導入されたブロックが好ましく用いられる。
【0014】
(2)
(式中、Xは、−O−、−S−、−NH−、または直接結合を表し、R1 は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基を表わし、aは0〜3の整数である。 R1 が複数ある場合は、これらは同一でも異なっていてもよい。)
一般式(2)のブロックを構成する繰り返し単位の数は、通常2〜200個であり、好ましくは5〜50個である。
【0015】
一般式(2)のブロックとしては、Xが−O−で表されるポリ(フェニレンエーテル)が好ましく、その代表例としては、例えば、ポリ(1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−1,3−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメチル−1,3−フェニレンエーテル)、ポリ(2−フェニル−1,3−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,3−フェニレンエーテル)等が挙げられる。中でも、ポリ(1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましく、ポリ(2−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)がさらに好ましい。
【0016】
一般式(2)のブロックは、公知の方法により製造することができる。例えば、ポリ(フェニレンエーテル)の場合、フェノールを触媒存在下で酸化する酸化重合法や、ハロゲン化フェノールを触媒とアルカリ存在下に縮合するいわゆるウルマン反応により製造できる。
【0017】
―(O−CH2CH(CH2OAr2))― (3)
(式中、Ar2は、置換基を有することもある1価の芳香族基を表す。)
一般式(3)の繰り返し単位の数は、通常2〜200個であり、好ましくは5〜50個である。
【0018】
ここで、置換基を有することもある1価の芳香族基としては、例えば下記の基が挙げられる。
(式中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、またはフェノキシ基を表わし、bは0〜4の整数を、cは0〜6の整数を表す。R2が複数ある場合は、これらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0019】
Ar2の好ましい例を芳香族オールの形(Ar2−OH)で示すと、例えばフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,4,−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,4,5,6−テトラメチルフェノール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−i−プロピルフェノール、4−i−プロピルフェノール、2−n−ブチルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、2−i−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−i−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−ビフェノール、4−ビフェノール、1-ナフトール、2−ナフトールなどが挙げられる。
【0020】
一般式(3)で表される繰り返し単位を有するブロックは、公知の方法、例えば、対応する下記式
で表される芳香環を有するグリシジルエーテルを開環重合することにより製造し得る。
【0021】
かかる芳香環を有するグリシジルエーテルの代表例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、o−トルイルグリシジルエーテル、m−トルイルグリシジルエーテル、p−トルイルグリシジルエーテル、2,3−ジメチルフェニルグリシジルエーテル、2,4−ジメチルフェニルグリシジルエーテル、2,5−ジメチルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジメチルフェニルグリシジルエーテル、2,3,4−トリメチルフェニルグリシジルエーテル、2,4,6−トリメチルフェニルグリシジルエーテル、2,4,5,6−テトラメチルフェニルグリシジルエーテル、2−エチルフェニルグリシジルエーテル、4−エチルフェニルグリシジルエーテル、2−プロピルフェニルグリシジルエーテル、4−プロピルフェニルグリシジルエーテル、2−i−プロピルフェニルグリシジルエーテル、4−i−プロピルフェニルグリシジルエーテル、2−n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−ビフェニルグリシジルエーテル、4−ビフェニルグリシジルエーテル、1−ナフチルグリシジルエーテル、2−ナフチルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数のグリシジルエーテルを用いてもよい。
【0022】
また、必要に応じて上記の芳香環を有するグリシジルエーテルと芳香環を含まないエポキシ化合物、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、シクロヘキサンエポキシド、エピフロロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、トリフルオロプロピレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルなどとを共重合したものであってもよいが、その場合は、芳香環を有するグリシジルエーテル成分は60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。
【0023】
またエポキシ樹脂を有するブロックとしては、分子内に1または2個以上のエポキシ基をもつ樹脂(エポキシ樹脂)を前駆体とするブロックが挙げられるが、エポキシ樹脂を前駆体とするものでなくても、結果としてその形態になっているブロックを含む。
エポキシ樹脂を有するブロックのなかで、主鎖に芳香環を有するエポキシ樹脂を有するブロックがより好ましく、下記一般式(4)で表わされる繰返し単位を有するブロックであることがさらに好ましい。
【0024】
―(O−Ar3−O−CH2CH(OH)CH2)― (4)
(式中、Ar3は、置換基を有することもある2価の芳香族基を表す。)
一般式(4)の繰り返し単位を有するブロックを構成する繰り返し単位の数は、通常2〜200個であり、好ましくは4〜50個である。
【0025】
ここで置換基を有することもある2価の芳香族基としては、例えば下記の基が挙げられる。
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、またはフェニル基を表わし、dは0〜3の整数であり、eは0〜2の整数である。R3が複数ある場合は、これらは同一でも異なっていてもよい。Yは、直接結合、−O−、−S−、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜10のアルキリデン基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキレン基、または炭素数1〜20のアルキレンジオキシ基を表わす。Yが複数ある場合は、これらは同一でも異なっていてもよい。)
【0026】
一般式(4)の繰り返し単位を有するブロックは、公知の方法により製造し得る。例えば、HO−Ar3−OHで表わされるジオール化合物をアルカリ存在下にエピクロロヒドリンと反応させる方法や、ジオール化合物とジグリシジルエーテル化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0027】
ここで、HO−Ar3−OHで表わされるジオール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、2-メチルハイドロキノン、2、6-ジメチルハイドロキノン、2-フェニルハイドロキノン、2,6-ジフェニルハイドロキノン、2-メチルレゾルシノール、2、6-ジメチルレゾルシノール、2-フェニルレゾルシノール、2,6-ジフェニルレゾルシノール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ヘキサン、ジエチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0028】
本発明においては、前記のようなスルホン酸基を持つブロックとスルホン酸基を実質的に持たないブロックとをそれぞれ一つ以上有することが好ましいが、スルホン酸基を実質的に持たないブロックとしては,ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等を有する一般式(5)で表されるブロックであることが耐熱性が高いので好ましい。
【0029】
(5)
(式中、R4は、炭素数1〜6のアルキル基を表わし、fは0〜4の整数である。R4が複数ある場合はこれらは同一でも異なっていてもよい。Zは−CO−または−SO2−を表わす。)
【0030】
中でも、Zが−SO2−であるポリエーテルスルホンが、溶媒に対する溶解性が高くより好ましい。
一般式(5)で示されるブロックは、公知の方法で製造し得る。ポリエーテルスルホンは、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンとを重縮合して合成することができる。
一般式(5)で示されるブロックの繰り返し単位の数は、10〜1000個が好ましく、20〜400個がより好ましい。繰り返し単位の数が小さすぎると共重合体のフィルム強度や耐熱性が低下する傾向にあり、大きすぎると溶解性が低下する傾向にある。
【0031】
次に、スルホン酸基を持つブロック共重合体の製造方法について説明する。
先ずブロック共重合体を製造し、次いでこれをスルホン化する方法が通常用いられる。共重合体の製法すなわち2種以上のブロックを結合させる方法には特に制限はなく、それぞれのブロックの組み合わせに応じた適切な公知の方法を用いることができる。
【0032】
例えば、一般式(2)で示されるブロックの一例であるポリ(フェニレンエーテル)と、一般式(5)で示されるブロックの一例であるポリエーテルスルホンとを結合させる場合、末端に水酸基が残存したポリ(フェニレンエーテル)と末端にハロゲンが残存したポリエーテルスルホンとをアルカリ存在下に縮合する方法が挙げられる。また、末端に水酸基が残存したポリ(フェニレンエーテル)と末端に水酸基が残存したポリエーテルスルホンとを結合させる場合は、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、2,4−ジフルオロベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル等のハロゲン化合物を連結剤として用い、同様の縮合反応で結合させることもできる。
【0033】
また一般式(3)で示されるブロックの一例であるポリ(フェニルグリシジルエーテル)と、一般式(5)で示されるブロックの一例であるポリエーテルスルホンとを結合させる場合、末端に水酸基を有するポリエーテルスルホンの末端水酸基をアルカリ金属フェノラートに変換し、これを重合開始点として芳香環を含むグリシジルエーテルの開環重合を行う方法等が挙げられる。また、エピクロロヒドリン等のブロック化反応に使用できるハロゲンを含むグリシジルエーテルをフェニルグリシジルエーテルと共重合したブロックをまず合成し、これと末端に水酸基が残存したポリエーテルスルホンとをアルカリ存在下に縮合する方法等も挙げられる。
【0034】
また一般式(4)で示されるブロックの一例であるエポキシ樹脂と、一般式(5)で示されるブロックの一例であるポリエーテルスルホンとを結合させる場合、エポキシ樹脂の末端に残存するグリシジル基をポリエーテルスルホンの末端に残存する水酸基に開環付加させて結合させる方法等が挙げられる。
【0035】
上記のようなブロックの一つとしてポリエーテルスルホンを用いる場合、ブロック共重合反応は、溶媒を用いない溶融状態でも行うことは可能であるが、適当な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒などを用いることが出来るが、溶解性が高いことからアミド系溶媒が好ましい。ここで、アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が好ましく用いられる。
ブロック共重合反応の反応温度は通常20℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃である。
【0036】
かくして得られたブロック共重合体をスルホン化することによりスルホン酸基が導入されるが、スルホン化剤としては、例えば、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、SO3などの公知のスルホン化剤を用いることができる。これらの中で濃度が90%以上の硫酸が好ましく、濃度94〜99重量%の硫酸がより好ましい。
このような硫酸を使用することにより、スルホン酸基を持つブロックとスルホン酸基を実質的に持たないブロックとを有する共重合体を製造し得る。例えば一般式(5)で表わされる繰り返し単位を有するブロックと、一般式(2)、(3)、または(4)で表わされる繰り返し単位を有するブロックを有するブロック共重合体から、一般式(2)、(3)、または(4)で表わされる繰り返し単位を有するブロックに選択的にスルホン酸基が導入され、一般式(5)で示されるブロックには実質的にスルホン酸基が導入されていないブロック共重合体を製造することができる。
【0037】
スルホン化反応させるに当たっては、反応に不活性な有機溶媒を共存させることもできる。硫酸を使用する場合の、硫酸に対するブロック共重合体の濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。また、反応温度は0℃〜80℃が好ましく、より好ましくは20℃〜40℃である。
ブロック共重合体の硫酸への溶解とスルホン化は同時に進行し、室温では通常2〜20時間で反応が完了して均一な溶液になる。スルホン化されたブロック共重合体は、硫酸溶液を大量の水に注いで回収することができる。
【0038】
かくして本発明におけるスルホン酸基を持つブロック共重合体が製造されるが、スルホン酸基があらかじめ導入されたブロックと、スルホン酸基が実質的に導入されていないブロックとを結合させる方法等によっても製造し得る。
【0039】
本発明に使用するリン酸エステルは、 一般式(1)で表される1種または2種以上のリン酸エステルである。
(1)
式(1)中、Rは、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基またはアリール基を表し、アルキル基が、プロトン伝導性向上の観点から好ましい。
アルキル基としては、通常炭素数1〜6であり、炭素数1〜3がプロトン伝導性向上の観点から好ましく、炭素数2又は3が、さらに好ましい。アルキル基は、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシ基などの基を有していてもよい。
また、nは1または2を表す。nが2の場合、2個あるRは同一でも異なっていてもよいが、入手性の観点から同一であることが好ましい。
【0040】
アリール基としてはフェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ニトロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基などのハロゲン置換フェニル基、などがあげられる。
【0041】
Rがアルキル基で、nが1のリン酸エステルとしては、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノn−プロピルエステル、リン酸モノイソプロピルエステル、リン酸モノn−ブチルエステル、リン酸モノイソブチルエステル、リン酸モノsec−ブチルエステル、リン酸モノtert−ブチルエステル、リン酸モノn−ペンチルエステル、リン酸モノ(1−メチルブチル)エステル、リン酸モノ(2−メチルブチル)エステル、リン酸モノ(3−メチルブチル)エステル、リン酸モノ(1,1−ジメチルプロピル)エステル、リン酸モノ(2,2−ジメチルプロピル)エステル、リン酸モノ(1,2−ジメチルプロピル)エステル、リン酸モノn−ヘキシルエステル、リン酸モノ(2−メチルペンチル)エステル、リン酸モノ(3−メチルペンチル)エステルなどがあげられる。
【0042】
Rがアルキル基で、nが2のリン酸エステルとしては、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジn−プロピルエステル、リン酸ジイソプロピルエステル、リン酸ジn−ブチルエステル、リン酸ジイソブチルエステル、リン酸ジsec−ブチルエステル、リン酸ジtert−ブチルエステル、リン酸ジn−ペンチルエステル、リン酸ジ(1−メチルブチル)エステル、リン酸ジ(2−メチルブチル)エステル、リン酸ジ(3−メチルブチル)エステル、リン酸ジ(1,1−ジメチルプロピル)エステル、リン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)エステル、リン酸ジ(1,2−ジメチルプロピル)エステル、リン酸のジn−ヘキシルエステル、リン酸ジ(2−メチルペンチル)エステル、リン酸ジ(3−メチルペンチル)エステルが挙げられる。
【0043】
中でも、プロトン伝導度を向上させる効果が高い点で、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノn−プロピルエステル、リン酸モノイソプロピルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジn−プロピルエステル、リン酸ジイソプロピルエステルまたはその混合物が好ましく、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノn−プロピルエステル、リン酸モノイソプロピルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジn−プロピルエステル、リン酸ジイソプロピルエステルまたはその混合物がより好ましく、リン酸モノイソプロピルエステル、リン酸ジイソプロピルエステルまたはその混合物が特に好ましい。
入手性の観点からは、アルキル基が同一のモノエステルおよびジエステルの混合物が好ましい。
【0044】
Rがアリール基で、nが1のリン酸エステルとしては、リン酸モノフェニルエステル、リン酸モノトリルエステル、リン酸モノエチルフェニルエステル、リン酸モノイソプロピルフェニルエステル、リン酸モノナフチルエステル、リン酸モノアントリルエステル、リン酸モノフェナントリルエステル、リン酸モノニトロフェニルエステル、リン酸モノクロロフェニルエステル、リン酸モノブロモフェニルエステルなどがあげられる。
【0045】
Rがアリール基で、nが2のリン酸エステルとしては、リン酸ジフェニルエステル、リン酸ジトリルエステル、リン酸ジ(エチルフェニル)エステル、リン酸ジ(イソプロピルフェニル)エステル、リン酸ジナフチルエステル、リン酸ジアントリルエステル、リン酸ジフェナントリルエステル、リン酸ジ(ニトロフェニル)エステル、リン酸ジ(クロロフェニル)エステル、リン酸ジ(ブロモフェニル)エステルなどが挙げられる。
入手性の観点からは、アリール基が同一のモノエステルおよびジエステルの混合物が好ましい。
【0046】
リン酸エステルの量はスルホン酸基を持つ高分子電解質100重量部に対して10重量部〜200重量部が好ましく、20重量部〜160重量部がさらに好ましい。
リン酸エステルが過少のときは、十分にプロトン伝導度向上に寄与できない場合がある。また、過大のときは、フィルム強度が低下し、燃料電池用プロトン伝導膜としての使用が困難となることがある。
【0047】
高分子電解質にリン酸エステルを含有させる方法は、▲1▼高分子電解質の溶液にリン酸エステルを添加する方法、▲2▼例えば後述の方法により製造された高分子電解質のフィルムをリン酸エステル溶液に浸漬処理する方法などがあげられ、処理が簡便である点で、▲2▼の方法が好ましい。
▲1▼の方法においては、高分子電解質の溶液に、高分子電解質100重量部に対して、通常10重量部〜200重量部のリン酸エステルを添加後、ガラス板等に流延製膜した後、溶媒を除去することにより、高分子電解質にリン酸エステルを含有させたフィルムを作ることができる。フィルムの厚みは、特に制限はないが10〜200μmが好ましい。実用に耐えるフィルムの強度を得るには10μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには200μmより薄い方が好ましい。膜厚は溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御できる。
高分子電解質の溶液の溶媒としては、高分子電解質を溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、または水などが用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。
リン酸エステル添加前の高分子電解の溶液の濃度としては、用いる高分子電解質、溶媒、リン酸エステルにより異なるが、溶媒100重量部に対して、通常2重量部〜50重量部、好ましくは、5重量部〜30重量部である。
濃度が低すぎると、溶液の粘度が低すぎて膜厚の制御が難しくなる傾向にあり、濃度が高すぎると、粘度が高すぎて均一な膜の作製が難しくなる傾向にある。
【0048】
また▲2▼の方法において、リン酸エステル溶液の溶媒としては、高分子電解質を溶解せず、リン酸エステルを溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、なかでも、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン等揮発性の溶媒、又は水が、溶媒の除去が容易なので好ましい。▲2▼の方法においては、リン酸エステル溶液の濃度、溶液の温度、又は用いる溶媒を変えることによって、膜への導入量をコントロールすることができる。
濃度としては通常5重量%〜100重量%の範囲であり、プロトン伝導性向上に寄与する導入を確保する点から20重量%〜100重量%が好ましい。
浸漬処理の際の温度は、通常0℃〜100℃が好ましく、浸漬処理中の溶媒の揮発を防ぐ点から20℃〜40℃がさらに好ましい。
【0049】
本発明の高分子電解質を燃料電池に使用する際には、通常フィルム(以下、高分子電解質フィルムということがある)の状態で使用される。本発明の高分子電解質をフィルムへ転化する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)が好ましい。
具体的には、例えば、高分子電解質を適当な溶媒に溶解し、その溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。製膜に用いる溶媒は、高分子電解質を溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドがポリマーの溶解性が高く好ましい。
【0050】
フィルムの厚みは、特に制限はないが10〜200μmが好ましい。実用に耐えるフィルムの強度を得るには10μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには200μmより薄い方が好ましい。膜厚は溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御できる。
【0051】
次に本発明の燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、高分子電解質フィルムの両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
該触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金の微粒子を用いることが好ましい。白金の微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いることが好ましい。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーに白金微粒子または白金微粒子を担持したカーボンを接合させる方法、およびそれを高分子電解質フィルムと接合させる方法については、例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
【0052】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。実施例および比較例に使用した高分子電解質にはNafion115(膜厚130μm)(Du Pont社製)、詳細は後述するが、ポリエーテルスルホン−ポリフェニレンエーテル共重合体スルホン酸膜(以下B1と呼ぶ)(膜厚50μm)を使用した。またリン酸およびリン酸エステルは、市販の試薬特級を用いた。リン酸(85wt%)(和光純薬製)、リン酸メチルエステル(モノ-,ジエステル混合物)(東京化成製、モノエステル:ジエステルの混合モル比53:47)、リン酸エチルエステル(モノ-,ジエステル混合物)(東京化成製、モノエステル:ジエステルの混合モル比49:51)、リン酸イソプロピルエステル(モノ-,ジエステル混合物)(東京化成製、モノエステル:ジエステルの混合モル比45:55)、リン酸トリエチルエステル(純正化学製)を使用した。上記リン酸エステルのモノエステルとジエステルの混合モル比は、31P-NMR測定結果により計算した値である。リン酸およびリン酸エステルの溶媒としては、エタノール(和光純薬製)を用いた。浸漬処理前後のフィルム重量の測定にはハロゲン水分計HR73(メトラートレド社製)を使用し、100℃で重量が一定になったところで測定した。なお、リン酸エステルの導入率(%)の算出には数1の式を用いて計算した。
【0053】
〔数1〕
導入率(wt%)={([浸漬処理後のフィルム重量]−[浸漬処理前のフィルム重量])/[浸漬処理前のフィルム重量]}×100
【0054】
実施例1
Nafion115を1cm × 2.5cmの大きさに切り出し、フイルム重量を測定した。またリン酸イソプロピルエステル3.0gにエタノール7.0gを加え、処理液とした。このフィルムを処理液中で室温で12時間浸漬処理した。その後フィルムを取り出し、表面に付着した処理液をろ紙で拭い取り、100℃で1時間常圧乾燥してエタノールを蒸発させたのち、フィルム重量を測定し、数1の式を用いて導入率を算出した。その後、プロトン伝導度測定を行った。プロトン伝導度測定は、恒温槽中120℃で1287型高性能ポテンショ/ガルバノスタット(ソーラトロン社製)及び1260型インピーダンス・ゲイン/フェースアナライザ(ソーラトロン社製)を用いて、交流インピーダンス法で測定した。
【0055】
実施例2
高分子電解質として、Nafion115を使用し、実験操作は実施例1と同様の方法で行った。処理液にはリン酸メチルエステル2.0gにエタノール8.0gを加えたものを使用した。処理条件、導入率は表1に示した。
【0056】
比較例1
高分子電解質にはNafion115を使用し、実験操作は実施例1と同様の方法で行った。処理液にはリン酸85wt%溶液(和光純薬製)を10.0g用いた。処理条件、導入率は表1に示した。
【0057】
実施例1、実施例2、比較例1の導入率及びプロトン伝導度(120℃)を表1に示した。これによると、同じNafion115をベースポリマーとして用いた場合、実施例1では比較例1と比較すると、導入率はほぼ同じであるにもかかわらず、120℃で10倍程度高いプロトン伝導度が得られており、また、実施例2でも、比較例1の2倍以上高いプロトン伝導度が得られており、リン酸イソプロピルエステル及びリン酸メチルエステルを導入した高分子電解質は、リン酸を導入したものに比べ、高温で高いプロトン伝導特性を得た。
【0058】
【表1】
【0059】
参考例1
ポリエーテルスルホン−ポリフェニレンエーテル共重合体スルホン酸膜(B1)は下記の方法で合成した。無水塩化第一銅と2−メチルベンズイミダゾールをトルエン中で大気下室温で15分攪拌した。これに2−フェニルフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとトルエンを加え、酸素雰囲気下50℃で10時間攪拌した後、塩酸を含むメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ過、乾燥してポリ(2−フェニルフェニレンエーテル)を得た。次に共沸蒸留装置を備えたフラスコに、スミカエクセルPES5003P(住友化学工業製、水酸基末端ポリエーテルスルホン)、上記の方法で合成したポリ(2−フェニルフェニレンエーテル)、炭酸カリウム、N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと呼ぶ)及びトルエンを加え、加熱攪拌してトルエンと水の共沸条件下にて脱水し、トルエンを蒸留除去した後、4,4−ジフルオロベンゾフェノンを添加し、160℃にて10時間加熱攪拌した。反応液を大量の塩酸酸性メタノールに滴下し、得られた沈殿物をろ過回収し、乾燥して、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を98%硫酸中室温下にて攪拌して溶解させることによりスルホン化した後、氷水中に滴下して析出させ、ろ過回収、洗浄、乾燥してスルホン化したブロック共重合体を得た。製膜法としてはDMAcに溶解し、ガラス板上にキャスト製膜し、乾燥してフィルムを作成した。得られた高分子電解質のイオン交換容量1.6meq/gであった。
【0060】
実施例3
実験操作は浸漬処理する高分子電解質としてB1を用いる以外は実施例1と同様の方法で行った。処理液にはリン酸イソプロピルエステルを10.0g用いた。処理条件、導入量は表2に示した。
【0061】
実施例4
高分子電解質としてB1を用いて、実施例1と同様の操作を行った。処理液としてリン酸メチルエステルを10.0g用いた。処理条件、導入量は表2に示した。
【0062】
比較例2
高分子電解質としてB1を用いて、実施例1と同様の操作を行った。処理液にリン酸85wt%溶液を10.0g用いた。処理条件、導入率は表2に示した。
【0063】
また、実施例3、実施例4、比較例2の導入率及びプロトン伝導度(120℃)を表2に示した。B1をベースポリマーに用いた場合、プロトン伝導度の向上効果が顕著に表れるためにはNafion115の場合に比べると多くの導入量を必要とするが、実施例3、実施例4では浸漬時に100℃に加熱することにより、それぞれ150%、153%まで導入できたのに対し、比較例2では100℃で2時間浸漬処理しても36%にとどまった。120℃でのプロトン伝導度については実施例3は、比較例2に比べ、10倍以上の高いプロトン伝導度が得られ、実施例4でも比較例2に比べ2倍以上のプロトン伝導度が得られた。リン酸イソプロピルエステル及びリン酸メチルエステルを導入した高分子電解質は、リン酸を導入したものに比べ、100℃以上の高温で高いプロトン伝導特性を得た。
【0064】
【表2】
【0065】
実施例5
高分子電解質としてNafion115を使用し、その後の操作は実施例1と同様の方法で行った。処理液はリン酸エチルエステル2.0gにエタノール8.0gを加えたものを使用した。処理条件、導入率は表3に示した。
【0066】
比較例3
高分子電解質としてNafion115を使用し、処理液にリン酸トリエチルエステル10.0gを用いて、実施例1と同様の操作を行った。処理条件、導入率は表3に示した。
【表3】
その結果、実施例5のリン酸エチルエステルでは、比較例3のリン酸トリエチルエステルに比べ、100℃以上の高温で高いプロトン伝導性を有していることが分かった。このことから、トリエステルではなくモノエステル及びジエステル及びその混合物であることが、100℃以上でのプロトン伝導度向上に効果があると考えられる。
以上の結果より、本発明のスルホン酸基を持つ高分子電解質にリン酸イソプロピルエステルに代表されるリン酸エステルを導入した高分子電解質では、リン酸に比べ、高温で高いプロトン伝導特性が得られることがわかった。
【0067】
【発明の効果】
本発明のスルホン酸基を持つ高分子電解質に特定のリン酸エステルを含有させた高分子電解質は、リン酸を含有させた高分子電解質に比べて、高いプロトン伝導性を有し、固体高分子型燃料電池用高分子電解質として有用である。また、100℃以上の高温でも高いプロトン伝導性を有することから、100℃以上の高温で動作させる固体高分子型燃料電池用高分子電解質として有用である。
Claims (3)
- 一般式(2)で表されるブロックにスルホン酸基が導入されたブロックと一般式(5)で表されるブロックとをそれぞれ一つ以上有するブロック共重合体
および
主鎖が、全ての水素原子がフッ素で置換された脂肪族炭化水素からなる高分子にスルホン酸基を導入した高分子電解質であるパーフルオロカーボンスルホン酸
から選ばれる1種以上のスルホン酸を持つ高分子電解質と、
一般式(1)で表される1種以上のリン酸エステルと
を含有することを特徴とする高分子電解質。
(2)
(式(2)中、Xは−O−、−S−、−NH−または直接結合を表し、R1 は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはフェニル基を表し、aは0〜3の整数を表す。R1が複数ある場合、これらは同一でも異なっていてもよい。)
(5)
(式(5)中、R4 は炭素数1〜6のアルキル基を表し、fは0〜4の整数を表す。R4が複数ある場合、これらは同一でも異なっていてもよい。Zは−CO−または−SO2−を表わす。)
(1)
(式(1)中、Rは直鎖または分岐アルキル基を表し、nは1を表す。) - スルホン酸基を持つ高分子電解質100重量部に対し、リン酸エステルを10〜200重量部含有することを特徴とする請求項1記載の高分子電解質。
- 請求項1または2記載の高分子電解質を使用してなることを特徴とする燃料電池。
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