JP4905748B2 - 対物レンズ及び光ピックアップ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ピックアップ装置及び光学素子並びに対物レンズに関し、特に透明基板の厚さが異なる2つの光情報記録媒体に情報記録及び/又は透明基板の厚さが異なる2つの光情報記録媒体に情報再生の可能な光ピックアップ装置及びそれに用いる光学素子並びに対物レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、短波長赤色半導体レーザ実用化に伴い、従来の光ディスクすなわち光情報記録媒体であるCD(コンパクトディスク)と同程度の大きさで大容量化させた高密度の光ディスクであるDVD(デジタルビデオディスク)の開発が進んでいる。このような光ディスクなどを媒体とした光情報記録再生装置の光学系において、記録信号の高密度化を図るため、対物レンズが記録媒体上に集光するスポットを小さくすることが要求されている。このため、光源であるレーザの短波長化と対物レンズの高NA化とが図られているという実情がある。
【0003】
例えば、DVDに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置においては、635nmの短波長半導体レーザを光源として使用したとき、かかるレーザ光を集光させる対物レンズの光ディスク側の開口数NAを約0.6としている。なお、CD、DVDの中にも、種々の規格の光ディスク、例えばCD−R(追記型コンパクトディスク)等があり、CD、DVDの他にもMD(ミニディスク)なども商品化されて普及している。
【0004】
一方、CD−Rに対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置においては、波長λ=780nmである光源が必要になるが、他の光ディスクにおいては、特定の光源波長以外の波長の光源を使用することができ、かかる場合、使用する光源波長λに応じて必要開口数NAが変わるようになっている。例えば、CDの場合は必要開口数NA=λ(μm)/1.73、DVDの場合は必要開口数NA=λ(μm)/1.06で近似される。本明細書でいう開口数は、光ディスク側から見た集光光学系の開口数のことであり、必要開口数とは光ディスクの記録面上で要求されるスポットサイズdと使用波長λとから算出される開口数であり、一般的にはNA=0.83×λ÷dである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように市場には透明基板厚さ、記録密度、使用波長などが異なる様々な光ディスクが存在するが、個々の光ディスクに対して、情報の記録及び/又は再生を行うことができる専用の情報記録再生装置を購入することはユーザーにとって大きな負担となる。そこで、様々な光ディスクに対応できる互換性のある光ピックアップ装置を備えた情報記録再生装置が提案されている。
【0006】
このような光ピックアップ装置においては、波長の異なる光束を、厚さの異なる基板に入射させたとき、球面収差を所定量以下に補正する必要があると共に、情報の書き込み読み取りを適切なものとすべく、各光束のスポット径も所定の範囲内に収める必要がある。
【0007】
これに対し、異なる光ディスクそれぞれに対応した別個の集光光学系を備え、再生する光ディスクにより集光光学系を切り換えるようにした光ピックアップ装置が提案されている。かかる光ピックアップ装置によれば、波長の異なる光束を、厚さの異なる基板に入射させたとき、球面収差を所定量以下に補正でき、各光束のスポット径も所定の範囲内に収めることができる。しかしながら、この光ピックアップ装置では、集光光学系が複数必要となるため構成が複雑となり、高コスト化を招くため好ましくない。
【0008】
本発明は、少ない数の光学素子又は対物レンズを使用しているにも関わらず、厚みの異なる情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生(以下、単位記録再生ともいう)を可能とする光ピックアップ装置及びそれに用いる対物レンズ並びに光学素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の対物レンズは、波長の異なる光源からの光束を光情報記録媒体の記録面に集光するための対物レンズを含む集光光学系と、前記記録面からの反射光を検出するための受光手段とを有し、
透明基板厚さが互いに異なる少なくとも2つの第1及び第2の光情報記録媒体に対して、情報の記録または再生が可能な光ピックアップ装置に使用可能な対物レンズであって、
互いに異なる2つの波長をλ1、λ2(λ1<λ2)とし、互いに異なる前記第1及び前記第2の光情報記録媒体の透明基板の厚さをt1、t2(t1<t2)とし、
前記波長λ1の光束により、透明基板の厚さt1の前記第1の光情報記録媒体に記録または再生を行うのに必要な像側の必要開口数をNA1とし、前記波長λ2の光束により、透明基板の厚さt2の前記第2の光情報記録媒体に記録または再生を行うのに必要な像側の必要開口数をNA2(NA1≧NA2)とした時、
前記対物レンズは一枚のレンズで構成されており、
前記対物レンズは、少なくとも一つの面が、回折輪帯をもつ回折面であり、
前記回折面の光路差関数をφ(h)とするとき(hは光軸からの距離)、所定距離hの箇所でdφ(h)/dhが不連続または実質的に不連続な関数であって、
前記透明基板厚t1の前記第1の光情報記録媒体に対し、前記波長λ1の光束を照射した場合、前記必要開口数NA1では、波面収差が0.07λ1rms以下であり、
前記透明基板厚t2の前記第2の光情報記録媒体に対し、前記波長λ2の光束を照射した場合、前記所定距離h以下の前記必要開口数NA2では、波面収差が0.07λ2rms以下であることを特徴とする。
【0010】
厚さの異なる複数種の光情報記録媒体に対して、情報の記録再生を行う光ピックアップ装置の光学系において、開口数NAが小さい側の使用状態で所定開口数の外側の光束をフレアとすれば、小さい開口数NAのための開口制限を用いずとも、ビーム径が絞られ過ぎることがなく、比較的大きなスポット径を得ることができる。そこで、本発明の如く回折輪帯を設けた光学素子を用いることにより、厚さの異なる複数種の光情報記録媒体に対して、情報の記録再生を行う光ピックアップ装置を提供することが可能となる。
【0011】
尚、かかるフレアは、所定開口数の外側で十分に大きなフレアであることが望ましく、フレア量が不十分だと、情報記録又は再生のために必要な部分のスポットに悪影響を与える。これに対し、本発明によれば、開口数NAが小さい側の使用状態で、所定開口数の外側の球面収差を十分に大きなフレアとすることができる。すなわち、NAが小さい側の使用状態で球面収差を実質的に不連続とし、所定開口数の内側では良好に絞られたスポットを得、その外側の光束は大きなフレアとなって記録再生のために必要なスポットに影響を与えないようにしている。
【0012】
光路差関数φ(h)は基準波長の1次回折光に対し回折面によって付加される光路差をあらわすものとし、光路差関数の値がmλ(mは回折次数)変わるごとに回折輪帯を設ける。基準波長は回折効率が最大となる波長とする。
【0013】
ここで、光軸からのある距離hの箇所でdφ(h)/dhが実質的に不連続とは、dφ(h)/dhが連続関数であったとしても、光路差関数から回折輪帯のピッチを求めた時に、回折輪帯のピッチが急激に変わっている状態をいい、好ましくは、|d2φ(h)/dh2|が0.20以上を満たす程度に十分大きいものである。
【0014】
本明細書中、光学素子とは、レンズ、プリズム、ミラー、平行平板などをいう。又、輪帯(回折輪帯)は、光軸方向と平行な断面で回折形状を見たときに、ここでは段(ステップ)から段(ステップ)からまでを一つの輪帯とみなす。
【0015】
請求項2に記載の対物レンズは、前記所定距離hの内側に形成された輪帯のうち最も外側の輪帯における光軸に垂直方向の幅は、前記最も外側の輪帯に隣接し、かつ前記所定距離hの外側に形成された輪帯における光軸に垂直方向の幅より小さいことを特徴とする。
【0016】
図9は、回折輪帯を設けた光学素子としてのレンズの例を示す模式図である。図9においては、回折輪帯のピッチ及び段差は、理解しやすいように実際よりも大きく描かれ、その数も、理解しやすいように少なく描かれている。
【0017】
図9に示すレンズ3の左方の光学面は、光軸Xからの距離をhとして光路差関数をφ(h)で表したとき、所定距離hの箇所で前記光路差関数φ(h)を微分した関数dφ(h)/dhが不連続または実質的に不連続となる点Hを有している。点Hの内側の面には、母非球面Bに沿うような形で、回折輪帯3a〜3fが漸次ピッチ(光軸に直角な方向の幅)を減少するようにして設けられ、変曲点Hの外側の面には、母非球面Bに沿うような形で、回折輪帯3g〜3iが漸次ピッチを減少するようにして設けられている。又、母非球面Bも点Hにおいて折れ曲がる、または実質的に折れ曲がる形状である。
【0018】
ここで、点Hを境にして、回折輪帯のピッチが変わる。より具体的には、回折輪帯3a〜3fまでは漸次ピッチが減少するが、点Hの内側における、その点Hに最も近い回折輪帯3fのピッチP1は、回折輪帯3fに接し、かつ点Hの外側の回折輪帯3gのピッチP2よりも、小さくなっている。このようにすれば、点Hの外側を通過する所定の波長の光を、効果的にフレア光に変換させることが出来る。
【0019】
請求項3に記載の対物レンズは、前記所定距離hの内側を通過する光線の球面収差は、前記所定距離hの外側を通過する光線の球面収差に対して、10λ2〜100λ2小さいことを特徴とする。
【0020】
このように、前記所定距離hの内側を通過する光線の球面収差が、前記所定距離hの外側を通過する光線の球面収差に対して、10λ2〜100λ2小さければ、前記所定距離hの外側を通過する光線はフレアと見なせ、小さい開口数NAのための開口制限を用いずとも、ビーム径が絞られ過ぎることがなく、比較的大きなスポット径を得ることができるため好ましい。
【0021】
請求項4に記載の対物レンズは、少なくとも一つの面が、回折輪帯をもつ回折面であり、前記少なくとも一つの回折面の、光軸から周辺方向に数えて、あるi番目の回折輪帯が次式を満たすことを特徴とする。
1.2≦pi+1/p≦10 (1)
ただし、
:光軸から周辺方向に数えてi番目の回折輪帯の、光軸に垂直な方向の幅
【0023】
尚、上述のi番目の回折輪帯としては、光軸上の輪帯を1としたとき、第14番目〜第22番目の輪帯であることが望ましい。
【0024】
請求項4,5の本発明によれば、開口数NAが小さい側の使用状態で、所定開口数の外側の球面収差を十分に大きなフレアとすることができる。すなわち、NAが小さい側の使用状態で球面収差を実質的に不連続とし、所定開口数の内側では良好に絞られたスポットを得、その外側の光束は大きなフレアとなって記録再生のために必要な部分のスポットに影響を与えないようにしている。値pi+1/piが、式(1)の下限値以上であれば、十分なフレアを得ることができる。一方、値pi+1/piが、式(1)の上限値以下であれば、輪帯ピッチが小さすぎることがなく、回折面の製造が容易となる。
【0025】
請求項に記載の対物レンズは、光ピックアップ装置に使用可能な対物レンズにおいて、NA0.60の光線が通る前記回折面の回折輪帯の番号mが、
22≦m≦32 (2)
をみたすことを特徴とする。
ただし、回折輪帯の番号は光軸上の輪帯を1とし、順に外側に数える。
【0027】
請求項に記載の対物レンズは、前記光線は、波長630〜665nmの範囲内で、略平行な光束で前記対物レンズに入射されることを特徴とする。
【0029】
請求項に記載の対物レンズは、波長λ2と透明基板の厚さt2の組み合わせに対して所定距離h以上の光束をフレアにすることを特徴とする。
【0040】
請求項に記載の対物レンズは、前記波長λ1が、630〜665nmの範囲にあり、好ましくは635nm又は650nmであり、前記波長λ2は、750〜810nmの範囲にあり、好ましくは780nmであり、前記厚さt1は、0.6mmであり、前記厚さt2は、1.2mmであるので、DVDとCDの双方に対して情報の記録及び/又は再生可能な光ピックアップ装置に好適である。
【0041】
請求項に記載の対物レンズは、前記第1の光情報記録媒体がDVDであり、前記第2の光情報記録媒体がCDであるので、DVDとCDの双方に対して情報の記録及び/又は再生可能な光ピックアップ装置に好適な対物レンズを提供できる。
請求項10に記載の対物レンズは、前記必要開口数NA2の波長λ2の光束が前記対物レンズを通過したときに、前記第2の光情報記録媒体の記録面から反射した光束は、前記受光手段の受光面内に含まれるように、前記受光手段に向かって照射され、前記必要開口数NA2以上の波長λ2の光束が前記対物レンズを通過したときに、前記第2の光情報記録媒体の記録面から反射した光束は、前記受光手段の受光面を除く周囲に照射されることを特徴とする。
【0060】
請求項11に記載の対物レンズの如く、前記受光手段が、1個ないし3個のほぼ矩形状の受光面を有している場合、開口数NAがNA2以上の光束の光情報記録面上でのスポット径は5μm以上であれば、別体型受光手段において、中央受光面CSに不要な光が入りづらくなり、誤検出を防止することが出来る。
【0061】
請求項12に記載の対物レンズのごとく、前記受光手段が、略一直線上に並べた3個の矩形状の受光面を有し、開口数NAがNA2以上の光束の光情報記録面上でのスポット径は25μm以上であれば、別体型受光手段において、さらに周辺受光面PSに不要な光が入りづらくなり、誤検出を更に防止できる。
【0062】
請求項13に記載の対物レンズは、前記受光手段は、中央受光面と周辺受光面とを有し、前記必要開口数NA2以上の波長λ2の光束が前記対物レンズを通過したときに、前記第2の光情報記録媒体の記録面から反射した光束は、前記周辺受光面のみを含むように、前記受光手段に向かって照射されることを特徴とする。
【0063】
図8(a)に示すように、一体型受光手段は、少なくとも2個以上、通常は4個以上のストライプ状の受光面から成り立っている。開口数NAがNA2未満の波長λの光束は、中央受光面群CSの間にスポットを形成するが、開口数NAがNA2以上の波長λの光束は、内径φ1のフレア光となって照射される。このときに、内径φ1が十分大きく、中央受光面群CSを完全に内包するようであれば、開口数NAがNA2以上の波長λの光束が周辺受光面PSのみに照射されることとなり、本発明でいう受光面としての中央受光面群CSにおいて不要な光が検出されることが防止され、誤検出を防止することが出来る。
【0064】
請求項14に記載の対物レンズの如く、少なくとも2個のストライプ状の受光面を有し、開口数NAがNA2以上の光束の光情報記録面上でのスポット径は20μm以上であれば、一体型受光手段において、中央受光面CSに不要な光が入りづらくなり、誤検出を防止することが出来る。
【0065】
更に、請求項15に記載の対物レンズの如く、少なくとも4個のストライプ状の受光面を有し、開口数NAがNA2以上の光束の光情報記録面上でのスポット径は50μm以上であれば、一体型受光手段において、さらに周辺受光面PSに不要な光が入りづらくなり、誤検出を更に防止できる。
請求項16に記載の対物レンズは、前記波長λ1と前記透明基板の厚さt1の組み合わせに対する前記対物レンズの物点と、前記波長λ2と前記透明基板の厚さt2の組み合わせに対する前記対物レンズの物点とが、光学的に等しい距離にあることを特徴とする。
請求項17に記載の光ピックアップ装置は、上記のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする。
【0072】
本明細書中で用いる回折パターン(又は回折面)とは、光学素子の表面、例えばレンズの表面に、レリーフを設けて、回折によって光束を集光あるいは発散させる作用を持たせた形態(又は面)のことをいい、一つの光学面に回折を生じる領域と生じない領域がある場合は、回折を生じる領域をいう。レリーフの形状としては、例えば、光学素子の表面に、光軸を中心とする略同心円状の輪帯として形成され、光軸を含む平面でその断面をみれば各輪帯は鋸歯のような形状が知られているが、そのような形状を含むものである。
【0073】
本明細書中において、対物レンズとは、狭義には光ピックアップ装置に光情報記録媒体を装填した状態において、最も光情報記録媒体側の位置で、これと対向すべく配置される集光作用を有するレンズを指し、広義にはそのレンズと共に、アクチュエータによって少なくともその光軸方向に作動可能なレンズ群を指すものとする。ここで、かかるレンズ群とは、少なくとも1枚以上(例えば2枚)のレンズを指すものである。従って、本明細書中において、対物レンズの光情報記録媒体側の開口数NAとは、対物レンズの最も光情報記録媒体側に位置するレンズ面の開口数NAを指すものである。また、本明細書中では開口数NAは、それぞれの光情報記録媒体の規格で規定されている開口数、あるいはそれぞれの光情報記録媒体に対して、使用する光源の波長に応じ、情報の記録または再生をするために必要なスポット径を得ることができる回折限界性能の対物レンズの開口数を示す。
【0074】
本明細書中において、光情報記録媒体(光ディスク)としては、例えば、CD-R, CD-RW, CD-Video, CD-ROM等の各種CD、DVD-ROM, DVD-RAM, DVD-R, DVD-RW,DVD-Video等の各種DVD、或いはMD等のディスク状の現在の光情報記録媒体および次世代の記録媒体なども含まれる。多くの光情報記録媒体の情報記録面上には透明基板が存在する。しかしながら、透明基板の厚さが殆どゼロに近いもの、あるいは透明基板が全くないものも存在もしくは提案されている。説明の都合上、本明細書中「透明基板を介して」と記載することがあるが、かかる透明基板は厚さがゼロである、すなわち透明基板が全くない場合も含むものである。
【0075】
本明細書中において、情報の記録および再生とは、上記のような情報記録媒体の情報記録面上に情報を記録すること、情報記録面上に記録された情報を再生することをいう。本発明の光ピックアップ装置は、記録だけ或いは再生だけを行うために用いられるものであってもよいし、記録および再生の両方を行うために用いられるものであってもよい。また、或る情報記録媒体に対しては記録を行い、別の情報記録媒体に対しては再生を行うために用いられるものであってもよいし、或る情報記録媒体に対しては記録または再生を行い、別の情報記録媒体に対しては記録及び再生を行うために用いられるものであってもよい。なお、ここでいう再生とは、単に情報を読み取ることを含むものである。
【0076】
本発明の光ピックアップ装置は、各種のプレーヤまたはドライブ等、あるいはそれらを組み込んだAV機器、パソコン、その他の情報端末等の音声および/または画像の記録および/または再生装置に搭載することができる。
【0077】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
回折面は回折レリーフをはずしたマクロ的な形状を示す母非球面と、光路差函数とで表す。光路差関数は、基準波長の1次回折光に対し回折面によって付加される光路差をあらわすものとし、光路差関数の値がmλ(mは回折次数)変わるごとに回折輪帯を設ける。
【0078】
本発明の実施例では、回折面の母非球面および光路差関数を、光軸からの距離hbを境界として、その内側(光軸側)と外側(周辺側)とでそれぞれ別の関数で表す。
【0079】
このとき母非球面および光路差関数が、境界hbで実質的に連続とするために、外側の母非面および外側の光路差関数には定数項を設けた。
光路差関数Φ(h)は次式で表す。
Φ(h)=b0+b2*h2+b4*h4+b6*h6+・・・ (5)
ただし、
h:光軸からの距離
b0、b2、b4、b6、・・・:光路差関数の係数
【0080】
一方、非球面は次式で表す。
x=(h2/r)/(1+√(1−(1+k)h2/r2))+A0+A2*h2+A4*h4+A6*h6+・・・ (6)
ただし、
A0、A2、A4、A6、・・・:非球面係数
k:円錐係数
r:近軸曲率半径
r、d、n、νdはレンズの曲率半径、面間隔、基準波長での屈折率、アッベ数を表す。
【0081】
上記の定義を基にした場合、光路差関数の2次係数を零でない値とすることにより、レンズにパワーを持たせることができる。また、光路差関数の2次以外の係数、例えば、4次係数、6次係数、8次係数、10次係数等を零でない値とすることにより、球面収差を制御することができる。尚、ここで、制御するということは、屈折パワーを有する部分が持つ球面収差を、逆の球面収差を発生させて補正したり、全体の球面収差を所望な値にすることを意味する。
【0082】
図1は、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置の概略構成図である。図1において、第1の光情報記録媒体(光ディスク、例えばCD)に対して記録および/または再生を行う第1光源11と、第2の光情報記録媒体(光ディスク、例えばDVD)に対して記録および/または再生を行う第1光源11とは波長の異なる第2光源12とを備え、それぞれの光源から射出される発散光束の発散角を所望の発散角に変換するカップリングレンズ21,22と、上記光束をほぼ一つの方向に進むように合成する光合成手段であるビームスプリッタ62と、ビームスプリッタ62からの光束を光情報記録媒体の情報記録面5に集光する対物レンズ3と、光情報記録媒体からの反射光を受光する受光手段としての光検出器41、42とを備えている。図中、8は絞り、9はシリンドリカルレンズ、71,72は1/4波長板、15は光源11からの発散光速の発散度を小さくするためのカップリングレンズ、16は凹レンズ、17は反射光束を分離するためのホログラムである。対物レンズ3は、後述の実施例1〜3を用いる。
【0083】
第1光源11は波長λ1=635又は650nm程度のレーザ光を射出し、このとき透明基板厚t1=0.6mmの光情報記録媒体(DVD)に対して記録および/または再生を行うのに必要な対物レンズの開口数をNA1=0.6〜0.65とする。第2光源12は波長λ2=780nm程度のレーザ光を射出し、このとき透明基板厚t2=1.2mmの光情報記録媒体(CD)に対して記録および/または再生を行うのに必要な対物レンズの開口数をNA2=0.5とする。
【0084】
本実施の形態における2枚構成の高NA対物レンズで、厚みの異なる情報記録媒体に対応できる対物レンズを得るための、回折面の役割は、球面収差の補正であるが、球面収差の補正について、以下のようにする。
【0085】
本実施例においては、透明基板の厚さt1の記録媒体に対する物点の位置と、透明基板の厚さt2の記録媒体に対する物点の位置とが等しくなっており、例えば対物レンズにはいずれもコリメートされた平行光が入射するので、回折面だけの作用によって基板厚の違いによる球面収差を補正する。本実施例では、透明基板の厚さt2の記録媒体に対して必要な開口数NA2の範囲まで球面収差を小さくし、開口数NA1から開口数NA2までの範囲は球面収差を大きくしている。
【0086】
(実施例1)
図2は、実施例1の対物レンズの断面図であり、図3は、実施例1の対物レンズにおける球面収差図である。[表1]及び[表2]に、実施例1の対物レンズにおけるレンズデータを示す。
【0087】
【表1】
Figure 0004905748
【表2】
Figure 0004905748
【0088】
(実施例2)
図4は、実施例2の対物レンズの断面図であり、図5は、実施例2の対物レンズにおける球面収差図である。[表3]及び[表4]に、実施例2の対物レンズにおけるレンズデータを示す。
【0089】
【表3】
Figure 0004905748
【表4】
Figure 0004905748
【0090】
図6は、実施例3の対物レンズの断面図であり、図7は、実施例3の対物レンズにおける球面収差図であり、図7(a)は、DVDの情報記録/再生条件における収差図で、図7(b)は、CDの情報記録/再生条件における収差図である。[表5]及び[表6]に、実施例3の対物レンズにおけるレンズデータを示す。
【0091】
【表5】
Figure 0004905748
【表6】
Figure 0004905748
【0092】
[表7]に、上述した各条件式を満足している実施例1,2及び3の各データを、まとめて示す。尚、表中において、例えばpiはi番目の輪帯におけるピッチを示す。
【表7】
Figure 0004905748
【0093】
【発明の効果】
本発明によると、少ない数の光学素子又は対物レンズを使用しているにも関わらず、厚みの異なる情報記録媒体に情報の記録再生を可能とする光ピックアップ装置及びそれに用いる対物レンズ並びに光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかる光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図2】実施例1の対物レンズの断面図である。
【図3】実施例1の対物レンズにおける球面収差図である。
【図4】実施例2の対物レンズの断面図である。
【図5】実施例2の対物レンズにおける球面収差図である。
【図6】実施例3の対物レンズの断面図である。
【図7】実施例3の対物レンズにおける球面収差図である。
【図8】図8(a)は一体型受光手段の受光面を示し、図8(b)は別体型受光手段の受光面を示す模式図である。
【図9】回折輪帯を設けた光学素子としてのレンズの例を示す模式図である。
【符号の説明】
8 絞り
9 シリンドリカルレンズ
11 第1光源
12 第2光源
15 カップリングレンズ
16 凹レンズ
17 ホログラム
21、22 カップリングレンズ
41,42 光検出器
62 ビームスプリッタ
71,72 1/4波長板

Claims (17)

  1. 波長の異なる光源からの光束を光情報記録媒体の記録面に集光するための対物レンズを含む集光光学系と、前記記録面からの反射光を検出するための受光手段とを有し、
    透明基板厚さが互いに異なる少なくとも2つの第1及び第2の光情報記録媒体に対して、情報の記録または再生が可能な光ピックアップ装置に使用可能な対物レンズであって、
    互いに異なる2つの波長をλ1、λ2(λ1<λ2)とし、互いに異なる前記第1及び前記第2の光情報記録媒体の透明基板の厚さをt1、t2(t1<t2)とし、
    前記波長λ1の光束により、透明基板の厚さt1の前記第1の光情報記録媒体に記録または再生を行うのに必要な像側の必要開口数をNA1とし、前記波長λ2の光束により、透明基板の厚さt2の前記第2の光情報記録媒体に記録または再生を行うのに必要な像側の必要開口数をNA2(NA1≧NA2)とした時、
    前記対物レンズは一枚のレンズで構成されており、
    前記対物レンズは、少なくとも一つの面が、回折輪帯をもつ回折面であり、
    前記回折面の光路差関数をφ(h)とするとき(hは光軸からの距離)、所定距離hの箇所でdφ(h)/dhが不連続または実質的に不連続な関数であって、
    前記透明基板厚t1の前記第1の光情報記録媒体に対し、前記波長λ1の光束を照射した場合、前記必要開口数NA1では、波面収差が0.07λ1rms以下であり、
    前記透明基板厚t2の前記第2の光情報記録媒体に対し、前記波長λ2の光束を照射した場合、前記所定距離h以下の前記必要開口数NA2では、波面収差が0.07λ2rms以下であることを特徴とする対物レンズ
  2. 前記所定距離hの内側に形成された輪帯のうち最も外側の輪帯における光軸に垂直方向の幅は、前記最も外側の輪帯に隣接し、かつ前記所定距離hの外側に形成された輪帯における光軸に垂直方向の幅より小さいことを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ
  3. 前記所定距離hの内側を通過する光線の球面収差は、前記所定距離hの外側を通過する光線の球面収差に対して、10λ2〜100λ2小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の対物レンズ
  4. 前記少なくとも一つの回折面の、光軸から周辺方向に数えて、あるi番目の回折輪帯が次式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の対物レンズ
    1.2≦pi+1/pi≦10
    ただし、
    pi:光軸から周辺方向に数えてi番目の回折輪帯の、光軸に垂直な方向の幅
  5. NA0.60の光線が通る前記回折面の回折輪帯の番号mが、
    22≦m≦32
    をみたすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の対物レンズ。ただし、回折輪帯の番号は光軸上の輪帯を1とし、順に外側に数える。
  6. 前記光線は、波長630〜665nmの範囲内で、略平行な光束で前記対物レンズに入射されることを特徴とする請求項5に記載の対物レンズ
  7. 波長λ2と透明基板の厚さt2の組み合わせに対して所定距離h以上の光束をフレアにすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の対物レンズ
  8. 前記波長λ1は、630〜665nmの範囲にあり、前記波長λ2は、750〜810nmの範囲にあり、前記厚さt1は、0.6mmであり、前記厚さt2は、1.2mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の対物レンズ
  9. 前記第1の光情報記録媒体はDVDであり、前記第2の光情報記録媒体はCDであることを特徴とする請求項8に記載の対物レンズ
  10. 前記必要開口数NA2の波長λ2の光束が前記対物レンズを通過したときに、前記第2の光情報記録媒体の記録面から反射した光束は、前記受光手段の受光面内に含まれるように、前記受光手段に向かって照射され、前記必要開口数NA2以上の波長λ2の光束が前記対物レンズを通過したときに、前記第2の光情報記録媒体の記録面から反射した光束は、前記受光手段の受光面を除く周囲に照射されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の対物レンズ。
  11. 前記受光手段は、1個ないし3個のほぼ矩形状の受光面を有しており、前記必要開口数NA2以上の光束の記録面上でのスポット径は5μm以上であることを特徴とする請求項10に記載の対物レンズ。
  12. 前記受光手段は、略一直線上に並べた3個の矩形状の受光面を有し、前記必要開口数NA2以上の光束の記録面上でのスポット径は25μm以上であることを特徴とする請求項11に記載の対物レンズ。
  13. 前記受光手段は、中央受光面と周辺受光面とを有し、
    前記必要開口数NA2以上の波長λ2の光束が前記対物レンズを通過したときに、前記第2の光情報記録媒体の記録面から反射した光束は、前記周辺受光面のみを含むように、前記受光手段に向かって照射されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の対物レンズ。
  14. 前記受光手段は、少なくとも2個のストライプ状の受光面を有し、前記必要開口数NA2以上の光束の記録面上でのスポット径は20μm以上であることを特徴とする請求項13に記載の対物レンズ。
  15. 前記受光手段は、少なくとも4個のストライプ状の受光面を有し、前記必要開口数NA2以上の光束の記録面上でのスポット径は50μm以上であることを特徴とする請求項13又は14に記載の対物レンズ。
  16. 前記波長λ1と前記透明基板の厚さt1の組み合わせに対する前記対物レンズの物点と、前記波長λ2と前記透明基板の厚さt2の組み合わせに対する前記対物レンズの物点とが、光学的に等しい距離にあることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の対物レンズ。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする光ピックアップ装置
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