JP4903710B2 - 可撓性ブッシュ装置 - Google Patents

Description

本発明は，可撓性を有するブッシュ装置に関し，特に，内側ブッシュと，内側ブッシュを包囲し，内側ブッシュと共に環状スペースを限定する外側ブッシュと，該環状スペース内に配置され，前記２個のブッシュを互いに接続する弾性接続体と，前記環状スペースの端部領域内に配置され，前記２個のブッシュの限定された半径方向の相対変位のみを許容するスペーサとを具えるブッシュ装置に関するものである。

このような形式のブッシュ装置は，特許文献１：米国特許第4738650号明細書により既知であり，この場合には中間ブッシュが内側ブッシュの両端上又は外側ブッシュの両端上にスペーサとして圧入され，これら中間ブッシュは内側及び外側ブッシュ間で半径方向における所定の遊びが残される寸法を有している。ゴム製ブッシュが弾性接続体として内側ブッシュの中央領域上に加硫され，その軸線方向における長さは，ゴム製ブッシュと２個のスペーサの各々との間にもスペースが残されるように設定されている。内側ブッシュ，その内側ブッシュ上に配置されたスペーサ及びこれらスペーサの間のゴム製ブッシュは事前に組立てられた後，ゴム製ブッシュにプリテンションが作用するように外側ブッシュ上に圧入される。この種のブッシュ装置は，特許文献１によれば弾性フレキシブルディスクの締結素子として使用されている。これは，その作動の間にトルクを伝達する必要がある。その過程において，ブッシュ装置の内側ブッシュが外側ブッシュの方向に押圧され，その結果としてゴム製ブッシュが加圧される。フレキシブルディスクにより伝達すべきトルクが特定量を超えると，スペーサが内側ブッシュ及び外側ブッシュの間のギャップを架橋し，これによりゴム製ブッシュに作用する圧力を制限する。
米国特許第4738650号明細書

本発明の課題は，容易に製造可能であり，作動の間に外側ブッシュに対して内側ブッシュが生じる全ての変位，例えば角変位に伴う構造由来のノイズに対する有効なバリアとして機能する可撓性ブッシュ装置を提案することである。

この課題を解決するため，本発明は，本文冒頭に記載した形式の弾性ブッシュ装置において，各スペーサを一方のブッシュと一体的に形成し，かつ，他方のブッシュに対して弾性接続体を介してのみ作用可能に配置してなることを特徴とするものである。

本発明によれば，スペーサを内側ブッシュ又は外側ブッシュと一体的に形成した構成により，ブッシュ装置の製造を容易化することが可能である。また，各スペーサを２個のブッシュの一方に対して弾性接続体を介してのみ作用可能に配置したことにより，１個又は複数個のブッシュを介して振動が直接的に伝達される惧れを排除することができる。本発明に係るブッシュ装置は，簡単な構成であるにも拘らず，構造由来のノイズに対して特に良好な遮断性を有し，これは内側ブッシュ及び／又は外側ブッシュが鋼製である場合であっても当てはまる。

２個のブッシュ，すなわち内側ブッシュ及び外側ブッシュは，プラスチック製とするのが好適である。ポリエチレンエーテル（PPE）及びポリアミド６１２（PA 612）が特に適当である。このようなプラスチック材の一種からなる外側ブッシュは，例えばフレキシブルディスクのゴム素材からプレス加工することができ，他方，このようなプラスチック材の一種からなる内側ブッシュは鋼製のねじ付きボルトを受け入れるのに好適である。なお，これらのねじ付きボルトは，フレキシブルディスクを挟んで配置される２個の軸フランジの一方又は他方に対して，遊びなく，かつ，交互に締結されるものである。

弾性接続体はゴム又はゴム状材料で構成するのが好適であり，内側及び外側ブッシュ間の環状スペースは弾性接続体及びスペーサで満たすのが好適である。

各スペーサを歯付きリング状に構成するのが，特に好適である。これにより，スペーサ及び弾性接続体の間の確実係合が達成され，本発明に係る可撓性ブッシュ装置を，特にトルク伝達に適した構造とすることが可能である。

本発明に係るブッシュ装置の寸法を所与とした場合にそのトルク伝達容量を高めるため，少なくとも一対の歯付きリング状スペーサの一方を内側ブッシュ上に，他方を外側ブッシュ上にそれぞれ配置すると共に，該少なくとも一対の歯付きリング状スペーサを互いに歯車状に係合させ，その係合の過程で生じる半径方向及び円周方向の遊びを弾性接続体により架橋するのが好適である。

代替的に，２個のブッシュ，スペーサ及び弾性接続体を一体的な構成とし，内側スペーサを内側ブッシュの一端に，外側スペーサを外側ブッシュの他端にそれぞれ配置すると共に，これら２個のスペーサを互いに接続する弾性接続体により２個のブッシュの間の環状スペースを内側環状スペース及び外側環状スペースに区画する構成とすることも可能である。

この代替的な実施形態では，弾性接続体を軸線方向に平行な複数の棒状部分にケージ状に分割することが可能である。これにより，接続体の弾性的な可撓性を高めることができる。

本発明に係るブッシュ装置は，主として，自在継手シャフトにおける２個の継手部の間に配置され，これら継手部の往復センタリングを司ることにより，継手シャフトの座屈を防止するものである。

本発明は，更に，本文冒頭に記載した形式の本発明に係るブッシュ装置の製造方法を提案するものである。本発明による製造方法においては，ブッシュ及びスペーサを一体的に形成することにより，内側ブッシュの一端に近接する内側スペーサと，外側ブッシュの他端に近接する外側スペーサとを，互いに直接的に隣接させると共に所定の破断領域により互いに接続し，内側ブッシュを外側ブッシュから突出させる。次に，内側ブッシュを外側ブッシュ内に押し込み，その際にスペーサを所定の破断領域内で互いに離間させる。さらに，ブッシュの間の環状スペースを，弾性接続体を成形するゴム状化合物により最終的に満たす。

以下，本発明を図示の実施形態について更に詳述する。

図１は自動車のステアリング系における継手シャフト10を線図的に示しており，この継手シャフト10はステアリングホイール14と，クロスピン継手16, 18における第１継手部16との間に配置されたステアリングシャフト12を含んでいる。第２継手部18は，弾性可撓ディスク20により第３継手部22に接続されている。その目的のため，継手部18, 22はそれぞれフランジ24, 26を有する。可撓ディスク20は，フランジ24及びフランジ26に対して交互に締結ピン28で締結されている。第３継手部22はブッシュ装置30を含んでおり，その詳細構造は図３及び図４に示すとおりである。第３継手部22は内側ブッシュ32及び外側ブッシュ34を含み，これらのブッシュは通常状態では互いに同軸的に配置され，半径方向内側又は外側に環状スペース36を限定し，その環状スペース36はブッシング状の弾性接続体38を収めるものである。

図３において右側に位置する内側ブッシュ32の端部に内側スペーサ40が一体的に配置されている。内側スペーサ40は，図示例では，半径方向外向きに突出する歯を有するリングで構成されている。同様に，図３において左側に位置する外側ブッシュ34の端部に外側スペーサ42が一体的に配置されている。外側スペーサ42は，図示例では，半径方向内向きに突出する歯を有するリングで構成されている。これら２個のブッシュ32, 34及びそれぞれのスペーサ40, 42はプラスチック材料，例えばPPE, PA612で射出成形されている。２個のスペーサ40, 42を弾性接続体38に埋設する。弾性接続体38は，図２ないし図５に示す実施形態ではゴム製であり，内側ブッシュ32及び外側ブッシュ34の間に限定される環状スペース36を，スペーサ40, 42と共に完全に満たすものである。

内側ブッシュ32及び外側ブッシュ34は，例えば，前記プラスチック材料の一種から同時射出成形により特に簡単な手法で製造することができる。そのために，射出成形金型を，２個のブッシュ32, 34が互いに同軸的に配置され，かつ，軸線方向に互いにオフセットされた状態で成形される構成とする。軸線方向のオフセット量を適切に決定することにより，内側ブッシュ32と一体的なスペーサ40を構成する歯車が，外側ブッシュ34と一体的なスペーサ42を構成する歯車と共に，中心軸線に対して直交する共通面内に位置決めされ，かつ，これら２個の歯車が互いに噛み合い状態で成形されるようにする。製造過程において，内側スペーサ40における少なくとも数個の歯を，所定の破断領域44により，外側スペーサ42の隣接する歯と結合させる。したがって，２個のブッシュ32, 34は，同時射出成形後に先ず一体のユニットを構成する。

図７は，センタリング用マンドレル48を取り付けた底部プレート46と，センタリング用マンドレル48のための受け孔52を有する頂部プレート50と，外側ブッシュ34のための受け孔56を有する加熱プレート54とを具える加硫用具を示す。この加硫用具内に，内側ブッシュ32及び外側ブッシュ34よりなるユニットを挿入し，その際に内側ブッシュ32をその下端側が底部プレート46に接触するまでセンタリング用マンドレル48上で押し込むと共に，外側ブッシュ34を加熱プレート54の受け孔56内に部分的に挿入する。その間に頂部プレート50は，加硫用具の残部に対して，例えば図７に示す高さ位置よりも高い位置に保持する。

内側及び外側のブッシュ32, 34で構成されるユニットを上述した態様で挿入した時点で頂部プレート50を押し下げ，その際に頂部プレート50を，図７に示すように，底部プレート46と，底部プレート46に結合された加熱プレート54とに対して，センタリング用マンドレル48を関連する受け孔52内に挿入することにより心出しする。頂部プレート50を更に押し下げると，図８に示すように，外側ブッシュ34が加熱プレート54に設けた受け孔56内に更に押し込まれる。その過程において，ブッシュ32, 34で構成されていたユニットが，所定の破断領域44において破断される。しかし，加硫用具が２個のブッシュを相対的な心出し状態に維持する。図９に示すように，頂部プレート50を加熱プレート54に対してシール状態で密接させると同時に，外側ブッシュ34を，その下端面が内側ブッシュ32の下端面と同様に底部プレート46と当接する最終位置に到達させる。この状態で，２個のブッシュ32, 34の間の環状スペース36は，弾性接続体38を構成すべく射出成形されたゴム状材料で完全に満たされる。すなわち，そのゴム状材料を加硫することにより，ブッシュ装置30が完成されるものである。

図１０及び１１は本発明の他の実施形態を示し，前述した構成要素と機能的に対応する構成要素は先に使用した参照数字にダッシュを付して表すものとする。すなわち，図１０及び１１に示すブッシュ装置は全体が参照数字30’で表され，その内側ブッシュ及び外側ブッシュはそれぞれ参照数字32’, 34’で表されている。図１０に示すように，内側ブッシュ32’は同図で右側に位置する端部でその，本例では単一のスペーサ40’を介して中間ブッシュに一体的に接続されている。この中間ブッシュは内側ブッシュ及び外側ブッシュ32’, 34’に対して同軸的に配置されており，弾性接続体38’を構成するものである。弾性接続体38’はブッシュ装置30’の左端領域で外側ブッシュ34’に対してその，本例では単一のスペーサ42’を介して一体的に接続されている。本実施形態では，所定の破断領域が設けられていない。すなわち，ブッシュ装置30’の各構成要素は，常に互いに接続されている。弾性接続体38’は内側ブッシュ及び外側ブッシュ32’, 34’の間の環状スペースを内側環状スペース36’及び外側環状スペース36’’に区分する。これらの環状スペースは空洞であるが，必要であればゴム状材料で満たしても良い。原則的にブッシング形状の弾性接続体38’は，図１１に示すように，軸線方向に平行な複数の棒状部分38’’にケージ状に分割し，これにより接続体の弾性的な可撓性を高めることができる。

図１は車両用，特に自動車用ステアリング系における継手シャフトを示す側面図である。 図２は，図１の継手シャフトを一部破断して示す拡大図である。 図３は，図２に示す可撓性ブッシュ装置の無負荷状態での拡大図であり，図４のＩＩＩ−ＩＩＩ線矢視断面図である。 図４は同ブッシュ装置の正面図であり，図３のＩＶ−ＩＶ線矢視図である。 図５は同ブッシュ装置の図３と同様な断面図であり，座屈荷重の作用状態を示すものである。 図６は同ブッシュ装置の第１製造工程におけるに２個の部品を示す説明図である。 図７は同ブッシュ装置の他の製造工程を示す説明図である。 図８は同ブッシュ装置の他の製造工程を示す説明図である。 図９はブッシュ装置の他の製造工程を示す説明図である。 図１０はブッシュ装置の他の実施形態を示し，図１１のＸ−Ｘ線矢視断面図である。 図１１は同ブッシュ装置の正面図であり，図１０のＸＩ方向の矢視図である。

符号の説明

30; 30’ ブッシュ装置
32; 32’ 内側ブッシュ
34; 34’ 外側ブッシュ
36; 36’, 36’’ 環状スペース
38; 38’ 弾性接続体
38’’ 棒状部分
40, 42; 40’, 42’ スペーサ
44 破断領域
46 底部プレート
48 マンドレル
50 頂部プレート
54 加熱プレート

Claims (5)

1. 可撓性を有するブッシュ装置（30; 30’）であって，
   内側ブッシュ（32; 32’）と，
   内側ブッシュを包囲し，内側ブッシュと共に環状スペース（36; 36’, 36”）を限定する外側ブッシュ（34; 34’）と，
   該環状スペース（36; 36’, 36’’）内に配置され，前記２個のブッシュ（32, 34; 32’, 34’）を互いに接続する弾性接続体（38; 38’）と，
   前記環状スペース（36; 36’, 36”）の端部領域内に配置され，前記２個のブッシュ（32, 34; 32’, 34’）の限定された半径方向の相対変位のみを許容するスペーサ（40, 42; 40’, 42’）とを具え，
   各スペーサ（40, 42; 40’, 42’）を一方のブッシュ（32, 34; 32’, 34’）と一体的に形成し，かつ，他方のブッシュ（32, 34; 32’, 34’）に対して前記接続体（38; 38’）を介してのみ作用可能に配置してなるブッシュ装置（30; 30’）において，
   各スペーサ（40, 42）を歯付きリング状に構成してなり，
   前記内側ブッシュ（32; 32'）の軸線方向の端部に，内側スペーサ（40; 40'）を配置し，前記内側ブッシュ（32; 32'）の前記端部とは反対側の前記外側ブッシュ（34; 34'）の軸線方向の端部に，外側スペーサ（42; 42'）を配置していることを特徴とするブッシュ装置。
2. 請求項１に記載のブッシュ装置（30）であって，前記弾性接続体（38）をゴム状材料で構成し，前記環状スペース（36）を前記弾性接続体（38）及び前記スペーサ（40, 42）で満たしてなることを特徴とするブッシュ装置。
3. 請求項１に記載のブッシュ装置（30’）であって，前記２個のブッシュ（32’, 34’），前記スペーサ（40’, 42’）及び前記弾性接続体（38’）を一体的に構成し，内側スペーサ（40’）を内側ブッシュ（32’）の一端に，外側スペーサ（42’）を外側ブッシュ（34’）の他端にそれぞれ配置し，これら２個のスペーサ（40’, 42’）を互いに接続する前記弾性接続体（38’）により，前記２個のブッシュ（32’, 34’）の間の環状スペースを，内側環状スペース（36’）及び外側環状スペース（36’’）に区画してなることを特徴とするブッシュ装置。
4. 請求項１〜３の何れか一項に記載のブッシュ装置（30, 30’）であって，該ブッシュ装置が，自在継手シャフトにおける２個の継手部分（18, 22）の間に配置されて，これら継手部分（18, 22）の往復センタリングを司ることを特徴とするブッシュ装置。
5. 請求項１又は２の何れか一項に記載のブッシュ装置（30）の製造方法であって，
   ・ 前記ブッシュ（32, 34）及び前記スペーサ（40, 42）を一体的に形成することにより，内側ブッシュ（32）の一端に近接する内側スペーサ（40）と，外側ブッシュの他端に近接する外側スペーサ（42）とを，互いに直接的に隣接させると共に所定の破断領域（44）により互いに接続し，
   ・ 内側ブッシュ（32）を外側ブッシュ（34）から突出させ，
   ・ 次に，内側ブッシュ（32）を外側ブッシュ（34）内に押し込み，その際に前記スペーサ（40, 42）を所定の破断領域（44）内で互いに離間させ，
   ・ 前記ブッシュ（32, 34）の間の環状スペース（36）を，前記弾性接続体（38’）を成形するゴム状化合物により最終的に満たすことを特徴とする，ブッシュ装置の製造方法。

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