JP4900553B2 - 熱硬化型異方性導電接着剤 - Google Patents

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本発明は、熱硬化型のエポキシ樹脂組成物に導電性粒子を分散させてなる熱硬化型異方性導電接着剤に関する。
従来より、液晶パネルのITO(インジウム−チタン−酸化物)電極と回路基板の対応電極とを、異方性導電接着剤で接続することが行われている。この場合、接続の導通信頼性を向上させることを目的として、絶縁性バインダー成分として耐熱性のよい熱硬化型のエポキシ系樹脂組成物が用いられているものがある(特許文献1)。
特開2000−251536
しかし、このようなエポキシ系樹脂組成物に導電性粒子を分散させた異方性導電接着剤を使用して接続されたITO電極に腐食が発生する場合があった。この原因は明確ではないが、塩素イオンの影響ではないかとの仮定の下、無機系のイオン捕捉剤を異方性導電接着剤に配合することが試みられたが、無機系のイオン捕捉剤を入れるとバンプ間にイオン捕捉剤の粒子がバンプと電極との間やバンプ同士の間に存在することになり、ファインピッチ化を阻害する危険性が増大し、また、異方性導電接着剤の塗布膜やフィルムの膜厚の薄膜化を阻害する。また、エポキシ系樹脂組成物の硬化物が有する親水性基による吸湿性の影響ではないかとの仮定の下、バインダー成分の一つとして疎水性オリゴマー等を使用することが考えられるが、異方性導電接着剤の密着性の低下を招き、導通信頼性に問題を生ずる。また、疎水性オリゴマー等は、一般に、エポキシ系樹脂と相溶性が十分でないため、異方性導電接着剤の成膜性が低下するという問題もある。
本発明は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、無機系のイオン捕捉剤や疎水性オリゴマーを使用しなくても、異方性導電接着剤により接続したITO電極に腐食を発生させず、良好な導通信頼性を確保でき、更に成膜性にも優れた異方性導電接着剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、異方性導電接着剤のバインダー成分であるエポキシ系樹脂組成物に、疎水性基として脂環式構造を有するアダマンチル基を有する(メタ)アクリレート類と芳香族環構造を有するビフェニル基を有する(メタ)アクリレート類とを配合することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、エポキシ系樹脂組成物中に導電性粒子が分散してなる熱硬化型異方性導電接着剤において、エポキシ系樹脂組成物がアダマンチルアクリレート類とビフェニル系(メタ)アクリレートとを含有することを特徴とする熱硬化型異方性導電接着剤を提供する。
本発明の熱硬化型異方性導電接着剤は、エポキシ系樹脂組成物にアダマンチル(メタ)アクリレート類とビフェニル系(メタ)アクリレートとを含有する。アダマンチル(メタ)アクリレート類のアダマンチル基は、疎水性の脂環式構造を有するため、エポキシ系樹脂組成物の硬化物に疎水性を向上させ、ITO電極の腐食を防止することができる。また、エポキシ系樹脂組成物の硬化物の硬度を向上させることができるので、導通信頼性を向上させることができる。また、アダマンチル基は、UV吸収が殆どないため、熱硬化型異方性導電接着剤の保存安定性を向上させ、また、その着色を防止することができる。
しかし、アダマンチル(メタ)アクリレート類は、エポキシ系樹脂組成物に対する相溶性が十分とは言えず、成膜性が低下するおそれがある。
一方、ビフェニル系(メタ)アクリレートは、それ自体、疎水性置換基としてビフェニル基を有するものであるが、本発明者の得た知見によれば、腐食性の改善には効果を持たない傾向がある。しかし、ビフェニル系(メタ)アクリレートは、アダマンチル(メタ)アクリレート類の添加効果を阻害せずに、その相溶性を改善することができるので、熱硬化型異方性導電接着剤の成膜性を改善することが可能となる。
本発明の潜在性硬化剤は、エポキシ系樹脂組成物中に導電性粒子が分散してなる熱硬化型異方性導電接着剤であり、エポキシ系樹脂組成物がアダマンチル(メタ)アクリレート類とビフェニル系(メタ)アクリレート類とを含有することを特徴とする。これにより、熱硬化型異方性導電接着剤で接続すべき電極間を接続した場合に、導通信頼性を向上させ、電極の腐食を防止し、成膜性も改善することできる。
本発明で使用するアダマンチル(メタ)アクリレート類とは、アクリル酸又はメタクリル酸のアダマンチルエステルであり、アダマンチル残基にメチル基、エチル基などのアルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン基、シリル基など置換基が存在してもよい。アダマンチル(メタ)アクリレート類の具体例としては、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート等が挙げられる。これらは2種以上を併用することができる。中でも、入手の容易さの点から、2−メチル−2−アダマンチルアクリレートを好ましく使用することができる。
アダマンチル(メタ)アクリレートのエポキシ系樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると熱硬化型異方性導電接着剤で接続すべき電極間を接続した場合に、導通信頼性を十分に向上させることができず、また、電極の腐食を防止することできない。多すぎると不溶化するので、エポキシ系樹脂組成物中の重合して硬化する全成分(例えば一般的なフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、アクリレートオリゴマー等)中の好ましくは1〜70重量%、より好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。
本発明で使用するビフェニル系(メタ)アクリレート類とは、アクリル酸又はメタクリル酸のビフェニルエステルであり、ビフェニル残基にメチル基、エチル基などのアルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン基、シリル基など置換基が存在してもよい。ビフェニル系(メタ)アクリレート類の具体例としては、オルトプロピルオキシビフェニルアクリレート、パラプロピルオキシビフェニルアクリレート、パラビフェニルアクリレート等が挙げられる。これらは2種以上を併用することができる。中でも、入手の容易さ等の点から、オルトプロピルオキシビフェニルアクリレートを好ましく使用することができる。
ビフェニル系(メタ)アクリレート類のエポキシ系樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると熱硬化型異方性導電接着剤で接続すべき電極間を接続した場合に、導通信頼性を十分に向上させることができず、また、電極の腐食を防止することできない。多すぎても導通信頼性等が低下するので、エポキシ系樹脂組成物中の重合して硬化する全成分(例えば一般的なフェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、アクリレートオリゴマー等)中の好ましくは1〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは1〜15重量%である。
また、アダマンチル(メタ)アクリレートのビフェニル系(メタ)アクリレート類に対する配合割合は、少なすぎると電極の腐食を防止できず、多すぎると成膜性が低下するので、ビフェニル系(メタ)アクリレート類1重量部に対し、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは2〜4重量部である。
エポキシ系樹脂組成物は、一般的なエポキシ樹脂を含有しており、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシ等を挙げることができる。エポキシ系樹脂組成物は、必要に応じて、アクリル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、尿素樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等を含有することができる。
本発明の熱硬化型異方性導電接着剤は、金属に対する密着性向上のために、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤の含有量は、エポキシ系樹脂組成物中の重合して硬化する全成分100重量部に対し、少なすぎると所期の効果が得られず、多すぎると塗布性が低下するので、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
本発明の熱硬化型異方性導電接着剤は、加熱によりラジカル重合反応やアニオン重合を開始させる重合開始剤を含有する。例えば、パーオキシエステル等の有機過酸化物、AIBN等のラジカル重合開始剤、イミダゾール系潜在性硬化剤等を例示することができる。重合開始剤の熱硬化型異方性導電接着剤中の配合量は、エポキシ系樹脂組成物中の重合して硬化する全成分100重量部に対し、少なすぎると所期の効果が得られず、多すぎると加熱加圧後のピール強度が低下するので、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
本発明の熱硬化型異方性導電接着剤に含有される導電性粒子としては、従来より異方性導電接着剤において用いられている導電性粒子を使用することができる。例えば、ニッケル粒子、金粒子、半田粒子、これらの金属で被覆された樹脂粒子等が挙げられる。これらの表面を絶縁被覆してもよい。これらの導電性粒子の粒子径は、通常、2〜10μm、好ましくは3〜5μmであり、配合量は、熱硬化型異方性導電接着剤中に、通常1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。
本発明の熱硬化型異方性導電接着剤は、必要に応じて、溶剤、製膜成分、ゴム成分等を含有することができる。
本発明の熱硬化型異方性導電接着剤は、上述したエポキシ系樹脂組成物にアダマンチル(メタ)アクリレートと導電性粒子と、更にカップリング剤、重合開始剤とを均一に混合し、ペーストあるいはフィルム形状に加工することにより製造することができる。
以上説明した本発明の熱硬化型樹脂組成物は、電子機器の電極間を異方性導電接続する際に好ましく使用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1、2及び比較例1、2
表1の成分に溶剤としてトルエンを50重量部を加えて混合機を用いて混合し、その混合物を剥離処理済みポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターを用いて塗布し、80℃で5分間乾燥し、20μm厚の異方性導電フィルムを作成した。この異方性導電フィルムを、液晶パネルのITO電極部に貼り、ポリエステルフィルムを剥がし、露出した異方性導電フィルムにフレキシブル回路基板の電極部を貼り、加熱加圧(180℃、60MPa線圧、10秒)することにより接続した。
得られた接続構造体の(1)導通信頼性と(2)腐食性と(3)成膜性とを、次のように評価した。結果を表1に示す。
(1)導通信頼性
接続構造体を、温度85℃で湿度85%RHの恒温恒湿槽中で125時間放置し、エージングを行った。エージング後の抵抗値が、エージング前の初期抵抗値の2倍未満の場合を“○”、2倍以上5倍未満の場合を“△”、5倍以上の場合を“×”と評価した。
(2)腐食性
上記導通信頼性試験後の接続部のITO電極を光学顕微鏡(50倍)で目視観察の結果、腐食の無い場合を“○”、エッジ部にのみ腐食がある場合を“△”、全体に腐食がある場合を“×”と評価した。
(3)成膜性
前述したように得た異方性導電フィルムを、光学顕微鏡(50倍)により観察し、成膜できている場合を“○”、成膜できているがボイド等がある場合を“△”、成膜できておらず、ボイドも確認された場合を“×”と評価した。
Figure 0004900553
表1から、エポキシ系樹脂組成物に、2−メチル−2アダマンチルアクリレートもビフェニル基を有するアクリレートも配合していない比較例2の熱硬化性異方性導電フィルムは、いずれの評価項目についてもよくない結果であった。ビフェニル基を有するアクリレートを配合しているが、アダマンチルアクリレートは配合していない比較例1の熱硬化性異方性導電フィルムの場合には、成膜性は良好であったが、導電信頼性と腐食性についてはよくない結果であった。
それに対し、2−メチル−2−アダマンチルアクリレートとビフェニル基を有するアクリレートとを配合している実施例1及び2の熱硬化性異方性導電フィルムの場合には、比較例1の場合に比べ、成膜性は良好なまま、更に導通信頼性と腐食性とについては改善されていることがわかる。また、実施例1〜2の結果から、表1の配合組成では、2−メチル−2−アダマンチルアクリレートの配合量がビフェニル基を有するアクリレートの3倍になると、導通信頼性も腐食性も更に改善されることがわかる。

本発明の熱硬化性導電接着剤は、エポキシ系樹脂組成物にアダマンチル(メタ)アクリレート類とビフェニル系アクリレート類とを含有する。アダマンチル(メタ)アクリレート類のアダマンチル基は、疎水性の脂環式構造を有するため、エポキシ系樹脂組成物の硬化物に疎水性を向上させ、ITO電極の腐食を防止することができる。また、エポキシ系樹脂組成物の硬化物の硬度を向上させることができるので、導通信頼性を向上させることができる。また、アダマンチル基は、UV吸収が殆どないため、熱硬化型異方性導電接着剤の保存安定性を向上させ、また、その着色を防止することができる。ビフェニル系アクリレート類は、アダマンチル(メタ)アクリレート類の添加効果を阻害せずに成膜性を改善することができる。従って、種々の電子部品、特にITO電極を使用する液晶パネルなどの光透過性の表示パネルの接続に有用である。

Claims (10)

  1. エポキシ系樹脂組成物中に導電性粒子が分散してなる熱硬化型異方性導電接着剤において、エポキシ系樹脂組成物がアダマンチル(メタ)アクリレート類とビフェニル基を有する(メタ)アクリレート類とを含有することを特徴とする熱硬化型異方性導電接着剤。
  2. アダマンチル(メタ)アクリレート類が、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート及び3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートからなる群より選択された少なくとも一種である請求項1記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
  3. アダマンチル(メタ)アクリレート類が、2−メチル−2−アダマンチルアクリレートである請求項2記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
  4. エポキシ系樹脂組成物が、フェノキシ樹脂とエポキシアクリレートとを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
  5. アダマンチル(メタ)アクリレート類を、エポキシ系樹脂組成物中の重合して硬化する全成分中に5〜20重量%の割合で含有する請求項1記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
  6. ビフェニル基を有する(メタ)アクリレート類が、オルトプロピルオキシビフェニルアクリレート、パラプロピルオキシビフェニルアクリレート、及びオルトビフェニルアクリレートからなる群より選択された少なくとも一種である請求項1記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
  7. ビフェニル基を有する(メタ)アクリレート類が、オルトプロピルオキシビフェニルアクリレートである請求項6記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
  8. ビフェニル基を有する(メタ)アクリレート類を、エポキシ系樹脂組成物中の重合して硬化する全成分中に1〜15重量%の割合で含有する請求項1記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
  9. 更に、シランカップリング剤を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
  10. 更に、ラジカル開始剤を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の熱硬化型異方性導電接着剤。
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