しかしながら、上記したような衝撃緩衝装置のように複雑な構造は、小型・軽量化には適しておらず、生産コストや維持費などが高価になりやすい。そして、発泡体部材を用いた衝撃緩衝体、または衝撃緩衝装置では、衝撃緩衝性能を向上させるために、一般的には発泡体部材の特性を改善したり、発泡体の体積および取り付け面積などの発泡体形状を最適化したりすることが行われている。しかし、さらなる緩衝性能の向上、発泡体から発生する有害ガスの軽減、衝撃緩衝装置の軽量化などが要請されている。
衝撃緩衝性能の向上を図ると、発泡体体積の大型化と、その大型化に付随して、衝撃緩衝装置の重量が増加したり、発泡体から発生する有害ガスが増加したりする傾向がある。したがって、高い衝撃緩衝性と小型・軽量・低有害発生ガスは一般的には相反する。
ところで、一般的に衝撃緩衝現象は、以下に示すような運動方程式を用いて、モデル化することができる。
mz+cy+kx=0
ここで、zは物体の加速度、yは物体の速度、xは物体の変位、mは物体の質量、cは粘性抵抗器の粘性減衰係数、kはバネのバネ定数を表す。
発泡樹脂などの発泡体部材を利用した衝撃緩衝部材は、上記のバネと粘性抵抗器の両方の特性を持っている。そのため、用途に応じて、所望のバネ定数kと粘性減衰係数cを併せ持つ衝撃緩衝体を使用するべきである。粘性減衰係数cが高いほど、衝撃緩衝体で衝撃のエネルギーが消費されやすい。しかしながら、用途に応じて、所望のバネ定数kと粘性減衰係数cを併せ持つ理想的な特性の発泡体を作ることは難しい。すなわち、高い衝撃緩衝性能を発揮する画期的な発泡体形状を形成することは難しい。例えば、発泡体の体積および取り付け面積などの発泡体形状を最適化することが検討されているが、限られた空間内で、十分な緩衝性能を発揮することは困難であった。
以下では、HDDユニット206の落下衝撃に対応する内部構造に関して、図6、図7を用いて説明する。なお、図面では、筐体214、HDDケース207および衝撃緩衝体204の衝撃を受ける部分を除き、図示を省略している。図6、図7は、ユーザが誤ってノートパソコンを落下させた場合の従来技術における衝撃緩衝部材、衝撃緩衝体204、HDDユニット206の動作を説明するための模式的な断面図である。
そして、図6(a)と図7(a)は、HDDユニット206が落下中であるときの状態を示す模式的な断面図である。また、図6(b)と図7(b)は、HDDユニット206が落下し地面などに衝突した後に、重心側に傾くときの状態を示す模式的な断面図である。そして、図6(c)と図7(c)は、HDDユニット206が落下し地面などに衝突した後に、衝撃緩衝体204の復元力が働く状況を説明するための模式的な断面図である。
なお、図6(a)、図7(a)に示すように、HDDユニット206の重心位置は、略長方形であるHDDユニット206の筐体面の中心線(一点鎖線)より右にあるものとして説明する。
まず、図6を用いて、衝撃緩衝体204に設置するスペースおよび弾性部材の厚みが、落下に伴う衝撃に対して十分な量である場合の動作について説明する。
図6(a)に示すように、HDDユニット206を保護する衝撃緩衝体204の厚みL1は、HDDユニット206の落下に伴う衝撃を吸収するのに十分であるとしている。この場合、図6(a)に示すように、HDDユニット206が矢印240の方向で地面や机上などに向けて落下すると、やがて、ノートパソコンの筐体214は地面や机上などに衝突する。その結果、図6(b)に示すように、HDDユニット206の重心位置と略長方形であるHDDユニット206の筐体面の中心線とのズレにより、HDDユニット206は、図6(b)では右回り(矢印213に示す方向)に回転する。そして、衝撃緩衝体204が衝撃を十分吸収する。その後、図6(c)に示すように、衝撃緩衝体204の復元力によって左回り(矢印212に示す方向)に回転して緩やかに復元する。このときHDDユニット206の回転が緩やかであるため、後述するヘッド外れは発生しない。
次に、図7を用いて、衝撃緩衝体204を設置するスペースおよび弾性部材の厚みが制限された場合の動作について説明する。
図7(a)に示すように、HDDユニット206を保護する衝撃緩衝体204の厚みL2は、L1より薄く、HDDユニット206の落下に伴う衝撃を吸収するのに十分でないとしている。この場合、HDDユニット206が地面や机上などに落下すると、図7(b)に示すように、HDDユニット206の重心位置と略長方形であるHDDユニット206の筐体面の中心線とのズレにより、HDDユニット206は、図7(b)でも右回り(矢印213に示す方向)に回転する。そして、HDDユニット206は、回転が生じることによる衝撃を完全に吸収できないために衝撃緩衝体204が剛体に近い状態まで潰れる。したがって、図7(b)の場合に比べて、さらに急激な回転モーメントが生じることになる。この回転モーメントが慣性ラッチ構造のラッチ非動作モードで生じた場合について、次に詳しく説明する。
図7(b)に示すように、HDDユニット206が地面や机上などに落下すると、HDDユニット206の重心のズレによりHDDユニット206は、まず、右回り(矢印213に示す方向)に回転する。そして、衝撃緩衝体204が衝撃を吸収できず、HDDユニット206の右下角端がHDDケース207に衝突する。さらに、HDDユニット206は、その衝突の反動と衝撃緩衝体204の復元力によって、左回り(矢印212に示す方向)に回転運動が生じる。そのために、HDDユニット206は、衝撃緩衝体204によって衝撃を吸収されながら、衝撃緩衝体204を下方に押しつけるように左回り(矢印212に示す方向)に回転運動をする。この後、図7(c)に示すように、HDDユニット206の左下角端がHDDケース207に衝突し、この衝撃と慣性でヘッドアーム208は左回り(矢印232に示す方向)に回転して退避位置から磁気ディスク209上に移動する場合がある。
ヘッドアーム208は、回転軸210に対して重量バランスが取られているため、HDDユニット206の各平面方向の面落下衝撃のみが作用する。したがって、本来、HDDユニット206に回転運動を伴わなければヘッドアーム208の回転モーメントは発生せず、ヘッドアーム208は回転しない。
しかし、一般に落下衝撃の方向は安定せず、落下衝撃の作用時、着地面とHDDユニット206の重心の位置関係に応じた方向に、HDDユニット206の回転運動が生じるものである。
したがって、ヘッドアーム208は慣性によって、HDDユニット206に対して相対的に回転を始める。すなわち、衝撃緩衝体204の弾性部材厚みが十分でない場合には、衝撃緩衝体204は落下に伴う衝撃を十分吸収できない。その結果、図7(c)に示したように、HDDユニット206に加わる衝突の衝撃が大きければ、ヘッドアーム208は慣性によってそのまま回転運動を継続する。そして、ヘッドアーム208は退避位置から矢印232の示す方向に回転して、磁気ディスク209上に移動し固着する場合がある。
HDDユニット206の非動作時では、ヘッドアーム208は待避位置にヘッドアーム回転ストッパ211の慣性ラッチ構造によって固定されている。しかし、矢印212の示す方向にHDDユニット206が回転した場合は、HDDユニット206の受けた衝撃がそのままヘッドアーム208に伝達される。その結果、衝撃のタイミングによっては、ヘッドアーム回転ストッパ211の慣性ラッチ構造が外れ、ヘッドアーム208が矢印232の示す方向に回転を始める。そして、衝撃が大きければヘッドアーム208は慣性によってそのまま回転運動を継続して退避位置から外れ、磁気ディスク209上に移動し固着する。これらの現象をヘッド外れという。
ここで、慣性ラッチ構造とは、衝撃によってHDDユニット206の回転が生じた場合、ヘッドアーム208が回転し破壊位置に移動してしまう前に、ヘッドアーム208にラッチを掛け、回転を規制する構造である。
本来、HDDユニット206の回転の方向にかかわらずラッチを掛けることのできる構造を有している。しかし、慣性ラッチ構造が起動した後、HDDユニット206が逆方向(矢印212の示す方向)回転に転じると、慣性ラッチ構造が再作動するまでの間、ラッチ動作にタイムラグが生じる。このタイミングでヘッドアーム208が慣性により図7(c)の左回り(矢印232の示す方向)に回転し、HDDユニット206の左端部がHDDケース207に衝突し、これらの動作が短期間に起こった場合、慣性ラッチ構造が働かずヘッドアーム208の運動を阻止できず、ヘッド外れに至る場合があった。
すなわち、ヘッドアームの回転と慣性ラッチ構造の作動しないタイミングの両要因が合致した場合にヘッド外れが起こるという問題を有していた。
本発明は上記課題を解決するもので、衝撃緩衝動作時間内において、HDDユニットのヘッドアームが休止中のディスク上に移動する原因となるHDDユニットの回転動作に伴って発生するヘッドロードする方向の回転動作を緩和し、ヘッド外れを防止することを目的する。
また、衝撃緩衝性能、小型・軽量化、製造・組み立てなどの量産性に優れたノートパソコンなどでの使用に適した衝撃緩衝装置を提供することができる。
上述した目的を達成するために、ここに開示された技術の衝撃緩衝装置は、磁気ヘッドを有する回転可能なヘッドアームと磁気ディスクとを含むハードディスクドライブユニット(HDDユニット)への衝撃を緩衝する衝撃緩衝装置であって、第1衝撃緩衝部材と、前記第1衝撃緩衝部材より硬度の低い第2衝撃緩衝部材とを備え、前記磁気ディスク面に対して直角方向に位置する前記HDDユニットの側面部のうち、前記磁気ディスクおよび前記ヘッドアームの両回転中心を結ぶ方向と大略等しい方向であって前記磁気ディスク面内にある第1方向を有する一面と当該HDDユニットを収容する箱体の内壁との間の空間において、前記第2衝撃緩衝部材が前記第1衝撃緩衝部材より圧縮されると、前記ヘッドアームにヘッドアンロードする方向の回転力が発生するように、前記第1衝撃緩衝部材および前記第2衝撃緩衝部材は該第1方向に一列に配置され、前記HDDユニットが、前記第1方向に直交する方向であって前記内壁に向かう第2方向の衝撃を受けたとき、前記第2衝撃緩衝部材が前記第1衝撃緩衝部材より圧縮されることによって、前記第1衝撃緩衝部材および前記第2衝撃緩衝部材は前記HDDユニットに加わる衝撃を緩衝するようにしたことを特徴とする。
以上のように本発明は、衝撃緩衝部材に衝撃エネルギーの消費を促し、衝撃緩衝体を構成する衝撃緩衝部材自体に粘性抵抗器の役割を持たせる。そのため、衝撃緩衝装置は、HDDユニットの自由落下に伴う回転運動を緩やかにする。そして、衝撃緩衝体が硬度の異なる衝撃緩衝部材から構成されることによって、ヘッドアームが休止中のディスク上に移動する原因となる方向(ヘッドロードする方向)のHDDユニットの回転運動と逆方向(ヘッドアンロードする方向)の回転運動を、まず生じるように構成されている。そのためこの際には、ヘッド外れが生じることはない。
そして、衝撃緩衝装置は、落下した後には、落下衝撃を吸収して緩やかな復元力を生じさせる。その復元力は、ヘッドアームが休止中のディスク上に移動する原因となる方向(ヘッドロードする方向)のHDDユニットの回転運動を、自由落下に伴う回転運動より緩やかに生じるように構成されている。その結果、ヘッド外れが生じることを防ぐことができる。したがって、ヘッドアームと慣性ラッチ構造の弱点をカバーできる高い緩衝効果を有する衝撃緩衝装置が得られる。
したがって、部品数が少ないためにコストダウンが達成されると同時に、簡単な構造であるため製造・組み立てなどの量産も容易であり、安価に量産可能な衝撃緩衝体となる。
また、体積が少なくなることで小型・軽量化が容易になるため、小型・軽量が求められるノートパソコンなどでの使用に適した衝撃緩衝体となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1と、図2を用いて説明する。
図1(a)は、本実施の形態における衝撃緩衝体で覆われて実装されたHDDユニット106がノートパソコンに収容されている外観図である。図1(b)は、単体のHDDユニット106を示す外観図である。図1(c)は、HDDユニット106に衝撃緩衝体104を貼付した状態を示す外観図である。図1(c)に示すように、衝撃緩衝体104は、HDDユニット106に貼付された第1衝撃緩衝部材101と第2衝撃緩衝部材102とから構成されている。また、HDDユニット106には、さらに衝撃緩衝部材100が貼付されている。そして、図1(d)は、HDDユニット106に衝撃緩衝体104、衝撃緩衝部材100を貼付し、HDDケース(箱体)107に収容した状態を示す外観図である。
図2は、本実施の形態におけるユーザが誤ってノートパソコンを落下させた場合の衝撃緩衝体104を用いたときの衝撃緩衝体104とHDDユニット106との動作を説明するための模式的な断面図である。図2(a)は、HDDユニット106が落下中であるときの状態を示す模式的な断面図である。また、図2(b)は、HDDユニット106が落下し地面などに衝突した後に、重心側に傾くときの状態を示す模式的な断面図である。そして、図2(c)は、HDDユニット106が落下し地面などに衝突した後に、衝撃緩衝体104の復元力が働く状況を説明するための模式的な断面図である。
なお、図2において、HDDユニット106は、磁気ヘッド105と、回転軸110に取り付けられたヘッドアーム108と、磁気データが記録されている磁気ディスク109と、ヘッドアーム108が待避位置から勝手に動かないように固定するヘッドアーム回転ストッパ111とを有する。ヘッドアーム回転ストッパ111は、後述するが、慣性ラッチ構造を有している。なお、HDDユニット106の外部については、本体12、HDDケース107および衝撃緩衝体104の衝撃を受ける部分を除き、図示を省略している。また、図2(a)に示すように、HDDユニット106の重心位置は、略長方形であるHDDユニット106の筐体面の中心線(一点鎖線)より右にあるものとして説明する。
図1(a)に示すように、情報処理装置としてのノートパソコン11は、情報処理回路(図示せず)などを内部に備えたノートパソコン11の本体12と、液晶パネル、液晶表示回路(図示せず)などを内部に備えたノートパソコン表示部13、HDDユニット106を収容した衝撃緩衝体104、衝撃緩衝部材100、HDDケース(箱体)107からなる衝撃緩衝装置14を備えている。なお、この例では、HDDユニット106は、ノートパソコン11の本体12に取り付けられているとしたが、携帯型HDDの筐体に取り付けられていてもよい。すなわち、衝撃緩衝装置14はHDDケース107、および衝撃緩衝体104、衝撃緩衝部材100を備え、HDDユニット106を収容する空間を有している。また、HDDケース107はパソコン、携帯型HDDの筐体の内部壁で構成される空間であってもよい。
衝撃緩衝体104は、弾性を有し、衝撃を受けた際に伸縮することにより衝撃を緩衝する第1衝撃緩衝部材101と第2衝撃緩衝部材102とから構成されている。第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102は、好ましくは発泡樹脂、ゲルまたはゴムにより構成される。発泡樹脂の場合、発泡ポリウレタンなどが使用でき、衝撃緩衝性能の点から好ましい。なお、発泡ポリウレタンはパソコンや自動車などに一般的に使用されている材料である。このように、衝撃緩衝体104は、本実施の形態においては、2つの硬度の異なる衝撃緩衝部材を含むとした。しかし、衝撃緩衝体104は、2以上の衝撃緩衝部材を含むものとしてもよく、それらの衝撃緩衝部材を、HDDユニット106の磁気ディスク109の面とは直角方向に位置するHDDユニット106の側面部の少なくとも一面に当接して配置し、HDDユニット106を支持し、伸縮することによりHDDユニット106に加わる衝撃を緩衝するものである。
図1(c)、図2に示すように、HDDユニット106は、硬度が高い第1衝撃緩衝部材101と、硬度が低い第2衝撃緩衝部材102とを備えている。すなわち、第1衝撃緩衝部材101と第2衝撃緩衝部材102とは、硬度の異なる衝撃緩衝部材であり、第1衝撃緩衝部材101は第2衝撃緩衝部材102より硬度が高い(堅い)材質で構成されている。そして、上述したHDDユニット106の側面部の一面において、図5で説明したヘッドアーム108がヘッドアンロードする方向に位置する側面部に第2衝撃緩衝部材102を配置し、かつ、同じく図5で説明したヘッドアーム108がヘッドロードする方向に位置する側面部に第1衝撃緩衝部材101を並べて配置している。すなわち、図2(a)に示すように、第2衝撃緩衝部材102は、HDDユニット106の磁気ディスク109の面とは直角方向に位置するHDDユニット106の側面部で、磁気ヘッド105が近接する一面の反対側であって、ヘッドアーム108がヘッドアンロードする方向に位置するHDDユニット106の側面部に当接して配置している。そして、第1衝撃緩衝部材101は、第2衝撃緩衝部材102が配置された側のHDDユニット106の側面部であって、かつヘッドアーム108がヘッドロードする方向に位置する側面部に当接して配置している。
以上のように構成された衝撃緩衝体104と、衝撃緩衝装置14と、HDDユニット106について、図2を用いて、その動作を詳細に説明する。
図2(a)に示すように、HDDユニット106が矢印140に示す方向で地面や机上などに落下すると、やがて図2(b)に示すように、ノートパソコン11の本体12は地面や机上などに衝突する。その結果、HDDユニット106の重心位置と、略長方形であるHDDユニット106の筐体面の中心線とのズレにより、HDDユニット106は図2(b)に示すように、一旦は右回り(矢印113に示す方向)に回転する。この回転に伴って、第2衝撃緩衝部材102が衝撃を受けることで、第2衝撃緩衝部材102が衝撃方向に圧縮変形している。この際に、粘性抵抗が生じ、圧縮変形が妨げられ、衝撃のエネルギーが消費される。
ところで、第2衝撃緩衝部材102は、第1衝撃緩衝部材101に比べて硬度は低いので、圧縮変形の度合いが第1衝撃緩衝部材101に比べて大きく、HDDユニット106は図2(b)では右回り(矢印113に示す方向)に回転する。このとき落下の衝撃が大きければ、第2衝撃緩衝部材102は衝撃を吸収できないので、HDDユニット106の右下角端がHDDケース107に衝突することもある。しかしながら、この場合、右回り(矢印113に示す方向)の回転は、ヘッド外れは生じない方向である。すなわち、ヘッドアーム108には、ヘッドアンロードする方向に回転する力が生じするので、ヘッド外れは生じない。
さらに落下衝突後は、図2(c)に示すように、第1衝撃緩衝部材101は第2衝撃緩衝部材102より硬い材質のため、第1衝撃緩衝部材101側は衝撃を十分吸収できるので、従来技術で示したようにHDDユニット106の左下角端がHDDケース107に衝突することはない。よって、衝撃緩衝体104の復元力によって、第1衝撃緩衝部材101側を支点として、自由落下によってHDDユニット106が衝撃を受けて伴う右回り(矢印113に示す方向)の回転運動に比べてより緩やかに左回り(矢印112に示す方向)に回転する。そして、HDDユニット106は、元の位置にもどる。この場合、ヘッドアーム108には、ヘッドロードする方向に回転する力が生じるものの、衝撃緩衝体104によって回転する力は弱められているので、ヘッド外れは生じない。
以上のように本実施の形態によれば、衝撃緩衝体は、衝撃緩衝体を構成する第1および第2衝撃緩衝部材に硬度差を設けることによって、HDDユニットのヘッド外れ現象の起きる可能性のある方向への回転運動を、自由落下に伴う回転運動より緩やかに生じるように構成されている。その結果、ヘッド外れが生じることを回避する役割を持たせることで高い緩衝効果を持つものである。
したがって、部品数が少ないためにコストダウンが達成されると同時に、簡単な構造であるため製造・組み立てなどの量産も容易であるため安価に量産可能な衝撃緩衝体となる。
また、本実施の形態における衝撃緩衝体では、衝撃を受けやすいHDDユニットのような装置に衝撃緩衝体が当接する少なくとも一つの面を、例えば両面接着紙を用いて取り付ける構造を備えるために衝撃緩衝部材のみで構成でき、部品数の削減、およびコストダウンを図れる。
また、小型・軽量化が容易になるため、小型・軽量が求められるノートパソコンなどでの使用に適した衝撃緩衝体となる。
なお、図2では、HDDユニット106の重心位置は略長方形であるHDDユニット106の筐体面の中心線(一点鎖線)より右にあるものとして説明した。しかし、HDDユニット106の重心位置が、略長方形であるHDDユニット106の筐体面の中心線より左にある場合でも、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102の位置関係と硬度の硬柔関係は変わらない。その理由を以下に説明する。
まず、ノートパソコンが落下して着地した時点ではヘッド外れしない方向に回転するように第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102の硬度差をさらに大きくするように設定する。すなわち、HDDユニット106の重心位置が略長方形であるHDDユニット106の筐体面の中心線より左のときには、重心位置が中心線より右のときよりも、第2衝撃緩衝部材102を第1衝撃緩衝部材101に比べ、さらに柔らかい材質のものを選ぶ。または、第1衝撃緩衝部材101を、第2衝撃緩衝部材102に比べ、さらに硬い材質のものを選んでもよい。このようにすることで図2(b)に示したように、一旦は右回り(矢印113に示す方向であって、ヘッド外れが生じない方向)に回転するように設定する。その後、第2衝撃緩衝部材102の復元力により、より硬い第1衝撃緩衝部材101側を支点にして緩やかに左回り(矢印112に示す方向)に回転する。したがって、ヘッドアーム108は退避位置から外れることなく、ヘッド外れは発生しない。すなわち、衝撃緩衝体104は、第1衝撃緩衝部材101と、第1衝撃緩衝部材101より硬度の低い第2衝撃緩衝部材102とを備え、HDDユニット106の重心位置に応じて、第1衝撃緩衝部材101と第2衝撃緩衝部材102の硬度、または第1衝撃緩衝部材101と第2衝撃緩衝部材102との硬度の差を変化させるようにして構成されている。
なお、本実施の形態においては、図2(a)に示すようにヘッドアーム108は、HDDユニット106の内部において、向かって右側に配置されているとして説明した。しかし、図3に示すようにヘッドアーム108は、HDDユニット106の内部において、向かって左側に配置されている場合も考えられる。図3は、HDDユニット106が落下中であるときの状態を示す他の例における模式的な断面図である。
この場合では、第2衝撃緩衝部材102は、HDDユニット106の磁気ディスク109の面とは直角方向に位置するHDDユニット106の側面部で、磁気ヘッド105が近接する一面の側であって、ヘッドアーム108がヘッドロードする方向に位置する側面部に当接して配置している。そして、第1衝撃緩衝部材101は、第2衝撃緩衝部材102が配置された側のHDDユニット106の側面部であって、かつヘッドアーム108がヘッドアンロードする方向に位置する前記側面部に当接して配置している。
このようにして、衝撃緩衝体を構成する第1および第2衝撃緩衝部材に硬度差を設けることによって、HDDユニットのヘッド外れ現象の起きる可能性のある方向への回転運動を、自由落下に伴う回転運動より緩やかに生じるように構成されている。その結果、ヘッド外れが生じることを回避する役割を持たせることで高い緩衝効果を持つものである。
また、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102からなる衝撃緩衝体104をHDDユニット106の側面部の一側面に配置するものとして説明したが、一側面の反対側の側面部にも配置してもよい。この場合、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102の位置関係はHDDユニット106の重心を中心に略点対称になるように配置する。このような構成によれば、衝撃緩衝体104は反対面からの衝撃に対して有効に作用する。
また、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102が衝撃を受け、緩衝して圧縮され、緩衝領域内、すなわち図2におけるHDDユニット106とHDDケース107の間の領域内において、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102が弾性を失う最大圧縮まで到達することがないものと想定する。この場合、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102のそれぞれが最小に圧縮されたときの時間差が6msec以下であるように、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102の材質、サイズ、貼付位置を決定することが好ましい。
また、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102のうち、硬度の高い第1衝撃緩衝部材101の硬度は35〜45度が好適である。
また、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102の材質は発泡樹脂材、ゲルまたはゴム材が好適である。
上記の第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102のそれぞれが最小に圧縮されたときの時間差(6msec以下)、第1衝撃緩衝部材101の硬度(35〜45度)、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102の材質(発泡樹脂材、ゲルまたはゴム材)は経験的、実験的に求めたものである。
従来技術の説明において、図6(b)に示すように、HDDユニット206の右端がHDDケース207へ1回目の衝突をし、図6(c)に示すように、HDDユニット206の左端がHDDケース207へ2回目の衝突をする。第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102の最小圧縮の時間差が6msec以上であれば、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102の機能が十分発揮されず、図6(c)に示すような、ヘッド外れを誘引するHDDユニット206の左端での2回目の衝突が起こる。あるいは、慣性ラッチ構造が作動しないタイムラグの範囲を越えて、慣性ラッチ構造が正常に作動し、ヘッド外れを防止するか、いずれかである。
同様の理由で、本実施の形態においては、衝撃緩衝部材の硬度、衝撃緩衝部材の材質を適切に選んで配置することで、ヘッド外れを誘引するHDDユニット106の左端での2回目の衝突が起こらないようにする。あるいは、慣性ラッチ構造が作動しないタイムラグの範囲を越えるようにする。
なお、情報処理装置は、例えば、衝撃による影響を受けやすいHDDユニットなどを内蔵したPDAや、ゲーム機器や、映像や音声などの再生装置および記録装置や、携帯電話装置や、電子辞書装置などであってもよい。
また、衝撃による影響を受けやすい装置としてノートパソコンに内蔵したHDDユニットを例にとって説明したが、これに限るものではない。装置は、携帯型機器に内蔵した装置であって、装置の重心が装置筐体の中心からズレており、かつ耐衝撃性能を考慮するような場合、本発明の衝撃緩衝体は、特に有効に作用する。
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における衝撃緩衝体104と衝撃緩衝体104に保護されたHDDユニット106との構成を説明する図であって、HDDユニット106が落下中であるときの状態を示す模式的な断面図である。実施の形態1においては、衝撃緩衝体104は第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102とから構成されていた。しかし、実施の形態2においては、図4(a)に示すように、衝撃緩衝体104は、第1衝撃緩衝部材101と第2衝撃緩衝部材102と第3衝撃緩衝部材103とから構成されている点が異なる。本実施の形態においては、実施の形態1と同様の構成には同一符号をつけ、同様な構成と動作については説明を省略する。
図4において、図2の説明と同様に、第1衝撃緩衝部材101と第2衝撃緩衝部材102とは硬度の異なるものであり、第1衝撃緩衝部材101は第2衝撃緩衝部材102より硬度が高い材質で構成されている。また、第1衝撃緩衝部材101は、HDDユニット106の側面部の磁気ディスクが配置された側に当接して配置され、第2衝撃緩衝部材102は、HDDユニット106の側面部のヘッドアーム108が配置された側に当接して配置されていることも実施の形態1における衝撃緩衝体104と同様である。そして、第3衝撃緩衝部材103は、第1衝撃緩衝部材101および第2衝撃緩衝部材102とは、さらに硬度の異なる衝撃緩衝部材である。すなわち、新たに付加された第3衝撃緩衝部材103は第2衝撃緩衝部材102より、さらに硬度が高い(堅い)材質で構成されている。また、第3衝撃緩衝部材103は、第2衝撃緩衝部材102に挟まれ接合して構成されている。
また、図4(a)に示すように、HDDユニット106の重心位置は、略長方形であるHDDユニット106の筐体面の中心線(一点鎖線)より右にあるものとして説明する。
以上のように構成された衝撃緩衝体104とHDDユニット106について、図4を用いて、その動作を詳細に説明する。
図4(a)に示すように、HDDユニット106が矢印140に示す方向で地面や机上などに落下すると、やがて、ノートパソコン11の本体12は地面や机上などに衝突する。その結果、HDDユニット106の重心位置と略長方形であるHDDユニット106の筐体面の中心線とのズレによりHDDユニット106は一旦、右回り(矢印113に示す方向)に回転しようとする。
さらに、落下衝突後は、第1衝撃緩衝部材101は第2衝撃緩衝部材102より硬い材質のため、第1衝撃緩衝部材101側を支点として緩やかに左回り(矢印112に示す方向)で元の位置にもどろうとする。これらの動作は、実施の形態1と同様な動作となるので、詳細な説明は省略する。
本実施の形態が実施の形態1と異なるのは、右回り(矢印113に示す方向)の回転から、左回り(矢印112に示す方向)回転で、HDDユニット106が元の位置にもどろうとするタイミングを、実施の形態1よりも、より精度良くかつ広範囲に調整することができる点である。すなわち、本実施の形態における衝撃緩衝体104は、幅の広い第2衝撃緩衝部材102の中に、第2衝撃緩衝部材102より硬度の高い(堅い)材質の第3衝撃緩衝部材103を挟み込んで接合して構成している。これにより、右回り(矢印113に示す方向)の回転から左回り(矢印112に示す方向)で元の位置にもどろうとするときに、一旦、慣性ラッチ構造が外れたとしても、ヘッドアーム108が待避位置から外れる前に再び慣性ラッチ構造が働くように衝撃緩衝体104を構成することができる。すなわち、ヘッドアーム回転ストッパ111の機能しないタイムラグを発生しないようにしてヘッドアーム回転ストッパ111の慣性ラッチ構造が適切に働くタイミングとなるように、衝撃緩衝体104の硬度を調整して、衝撃緩衝体104の衝撃吸収および復元力の働くタイミングを調節することができる。
既に述べたように、待避位置にあるヘッドアーム108はHDDユニット106の回転の方向にかかわらずヘッドアーム回転ストッパ111の慣性ラッチ構造によりラッチを掛けることのできる構造を有している。しかし、慣性ラッチ構造が起動した後、HDDユニット106が左回り(矢印112に示す方向)の回転が生じると、慣性ラッチ構造が再作動するまでの間、ラッチ動作にタイムラグが生じる。このタイミングでヘッドアーム108が慣性によって、左回り(矢印112に示す方向)に回転した場合、慣性ラッチ構造が作動せず、ヘッドアーム108の運動を阻止できないため、ヘッド外れに至る場合がある。すなわち、ヘッドアーム108の左回りの回転と慣性ラッチ構造の作動しないタイミングとの両要因が合致した場合にヘッド外れが起こる。
よって、本実施の形態では、落下の衝撃によって生じるヘッドアーム108の回転と、慣性ラッチ構造のラッチタイミングとを精度良く、かつより広範囲に調整できるようにして慣性ラッチ構造を有効に作動させることでヘッド外れを回避するように衝撃緩衝体104を構成している。すなわち、ヘッドアーム回転ストッパ111の機能しないタイムラグを発生しないようにしてヘッドアーム回転ストッパ111の慣性ラッチ構造が適切に働くタイミングとなるように衝撃緩衝体104の全体としての硬度を調整できるようにしている。したがって、衝撃緩衝体104の衝撃吸収および復元力の働くタイミングを調節することができるものである。
以下では、衝撃緩衝体104の衝撃吸収および復元力の働くタイミングを調節するための他の構成の衝撃緩衝体104について、説明する。図4(b)は、HDDユニット106に第3衝撃緩衝部材103の長手方向の寸法を変更した衝撃緩衝体104を貼付した構成を示す断面図である。慣性ラッチ構造のタイミングの調節は、図4(b)に示すように第3衝撃緩衝部材103の材質、第3衝撃緩衝部材103の長手方向の寸法によって設定可能である。また、図4(c)に示すように、第2衝撃緩衝部材102の長手方向に対する相対位置によっても設定可能である。
さらに、衝撃緩衝体104の衝撃吸収および復元力の働くタイミングを調節するためのさらに異なる構成の衝撃緩衝体104について、説明する。図4(d)は、HDDユニット106に第3衝撃緩衝部材103の厚み方向の寸法を変更した衝撃緩衝体104を貼付した構成を示す断面図である。図4(d)に示すように第3衝撃緩衝部材103の厚み方向の寸法を第2衝撃緩衝部材102とは独立に変化させて空洞部分を形成してもよい。このようにして形成された空洞部分を含めた第2衝撃緩衝部材102および第3衝撃緩衝部材103および第1衝撃緩衝部材101を含めた全体としての衝撃緩衝体104の硬度を変化させて、上記のタイミングの調節を行ってもよい。なお、図4(d)では、空洞部分をHDDユニット106の側面部側に形成したが、HDDユニット106の側面部の反対側(HDDケース107側)に形成してもよい。このように空洞部分を形成することにより、さらに精度良くタイミングの調整を図ることができ、さらに落下などによる衝撃が生じた後の復元力の働く時間と復元力の大きさを独立して設定できる。すなわち、衝撃緩衝体の変形が小さい場合は、復元力を小さくし、所定よりも大きな変形が生じた場合には、復元力を大きくするような設定が可能である。
以上のように本実施の形態における衝撃緩衝体は、第1および第2衝撃緩衝部材に硬度差を設け、さらに第2衝撃緩衝部材の中に硬度の異なる第3衝撃緩衝部材を挟み込んで混入することで、ヘッドアーム回転ストッパの慣性ラッチ構造を有効に動作させることができる。その結果、実施の形態1に比べて、よりHDDユニットのヘッド外れ現象の起きる可能性を回避できるものである。