JP4900067B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、特に、扁平率が低いタイヤに適用して好適な空気入りタイヤに関するものである。
従来の空気入りタイヤは、トレッド部とショルダー部とサイドウォール部とビード部からなり、トレッド部にタイヤの骨格を形成するカーカス層が配置され、このカーカスの外側にベルト層が配置されると共にその外側にベルト補強層が配置されている。また、ビード部にて、ビードワイヤが巻き付けられてリング形状をなすビードコアが形成され、このビードコアの外周側にビードフィラーが配設されると共に、ビードコアの周囲にカーカスの端部がタイヤ内側から外側に折り返して装架されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
特開平10−250321号公報 特開平10−287106号公報 特開平11−245634号公報
ところで、このような空気入りタイヤでは、例えば、この空気入りタイヤを装着した車両が高速走行することで当該空気入りタイヤが発熱した状態でこの車両が停車し、空気入りタイヤの特定の領域が長期間にわたって路面に接しているような場合などに、いわゆるフラットスポットが発生することがある。すなわち、タイヤが高速走行等により高温となった状態で所定時間停止すると、このタイヤの温度が低下する際に、タイヤが路面に接地する領域(接地面)は、車両の重量などの垂直荷重の影響によって変形し、このタイヤを構成するゴムや有機繊維が変形してタイヤに残留歪が発生する。フラットスポットは、この残留歪によって形成される平坦部である。このフラットスポットが発生すると、走行が開始されてもしばらくの間この変形が維持されるため、タイヤの周方向に対して形状の不均一が生ずることになるので、走行時に振動が発生して操縦安定性が低下してしまうおそれがある。
そこで本発明は、操縦安定性を維持しつつ耐フラットスポット性を向上させることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による空気入りタイヤは、一対のビードコアのタイヤ径方向外周側にビードフィラーを介して該ビードコア周りにタイヤ幅方向内方から外方に巻き返されて架け渡されるカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外周側に設けられるベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外周側に設けられるトレッド面とを有し、前記トレッド面が、少なくともタイヤ幅方向の中央に位置する中央部円弧と、タイヤ幅方向最外方に位置するショルダー側円弧とを含む複数の異なる曲率半径の円弧で形成された空気入りタイヤにおいて、正規リムに組込んで正規内圧の5%を内圧充填した状態でタイヤ子午線方向の断面視にて、前記ベルト層のタイヤ幅方向最外方位置からタイヤ径方向外周側へタイヤ径方向と平行に仮想される仮想線と前記トレッド面のプロファイルとの交点を基準点とし、赤道面と前記トレッド面のプロファイルとの交点をセンタークラウンとし、前記基準点と前記センタークラウンとを結んだ線とタイヤ幅方向に平行な線とがなす角度をθとし、前記中央部円弧の曲率半径をRcとし、前記ショルダー側円弧の曲率半径をRsとし、赤道面から前記ショルダー側円弧のタイヤ幅方向内方端部位置までの円弧長である基準展開幅をLとし、タイヤ幅方向の前記トレッド面の円弧長であるトレッド展開幅をTDWとした場合に、前記トレッド面は、1°<θ<4.5°、5<Rc/Rs<10及び0.4<L/(TDW/2)<0.7を満たすように形成され、前記ビードフィラーは、圧縮永久歪率が30%以下の材料からなることを特徴とする。
請求項2に係る発明による空気入りタイヤは、前記ビードフィラーは、温度20度で測定した貯蔵弾性率に対する温度100度で測定した貯蔵弾性率の保持率が60%以上であるゴム組成物からなることを特徴とする。
請求項3に係る発明による空気入りタイヤは、有機繊維コードからなりタイヤ径方向に対して前記ベルト層と前記トレッド面との間に設けられるベルト補強層を備え、前記ベルト補強層の前記有機繊維コードは、70重量%以上90重量%以下を、ガラス転移温度が100度以上の有機繊維により構成されることを特徴とする。
請求項4に係る発明による空気入りタイヤは、タイヤ子午線方向の断面における前記ビードフィラーのフィラー断面積をSbとし、前記ベルト層におけるタイヤ径方向最内層のタイヤ幅方向最外方位置を通りタイヤ幅方向に平行な線よりタイヤ径方向内周側のサイド部断面積をStとした場合に、前記ビードフィラーは、0.02<Sb/St<0.15を満たすように形成されることを特徴とする。
請求項5に係る発明による空気入りタイヤは、スチールコード又はガラス転移温度が100度以上の有機繊維コードからなり前記ビードコアを覆うように設けられるビード部補強層を備えることを特徴とする。
請求項6に係る発明による空気入りタイヤは、扁平率が50%以下であることを特徴とする。
請求項1に係る発明による空気入りタイヤによれば、角度θ、中央部円弧の曲率半径をRc、ショルダー側円弧の曲率半径をRs、基準展開幅Lのプロファイル変量因子を、[1°<θ<4.5°]、 [5<Rc/Rs<10]、[0.4<L/(TDW/2)<0.7]を満たすように設定することで、トレッド面のタイヤ幅方向に沿ったプロファイルの曲率を直線に近づけることができると共に、ビードフィラーを圧縮永久歪率が30%以下の材料で構成することで、トレッド面のプロファイル(輪郭)形状と、ビードフィラーの材料とが相互に適正な組み合わせとなるように設定することができるので、空気入りタイヤにおける局所的な変形を抑制することができると共に、ビードコア周りの剛性を高くしつつビードフィラーにおける永続的な残留歪(永久歪)の蓄積を抑制することができるので、操縦安定性と耐フラットスポット性とをバランスよく両立することができる。この結果、操縦安定性を維持しつつ耐フラットスポット性を向上させることができる。
請求項2に係る発明による空気入りタイヤによれば、ビードフィラーを貯蔵弾性率の温度依存性が低いゴム組成物により構成することで、ビードフィラーにおける温度変化に伴った変形量が小さくなるので、永続的な残留歪(永久歪)の蓄積が抑制され、熱冷却の間にセットされる永久歪も結果的に低減することができ、よって、フラットスポットの発生率をさらに低くすることができる。
請求項3に係る発明による空気入りタイヤによれば、ガラス転移温度が100度未満の有機繊維の量が多すぎて、ベルト補強層に永続的な残留歪(永久歪)が蓄積されやすくなることを抑制することができ、耐フラットスポット性が悪化することを防止することができると共に、ガラス転移温度が100度以上の高剛性の有機繊維の量が多すぎて引張力に対して延びにくくなることが防止され、タイヤ成形時に空気入りタイヤが所定の形状にならないことを防止することができ、また荷重変形に対する耐久性が悪化することを防止することができる。
請求項4に係る発明による空気入りタイヤによれば、サイド部断面積に対するフィラー断面積が大きすぎて、ビードフィラーの変形が大きくなってしまうことを防止することができ、これにより、空気入りタイヤの熱冷却の間にセットされる永久歪を低減することができ、フラットスポットの発生をより確実に抑制することができると共に、サイド部断面積に対するフィラー断面積が小さすぎてビードフィラー近傍における剛性が低下することを抑制することができ、これにより、操縦安定性の低下を防止することができる。
請求項5に係る発明による空気入りタイヤによれば、ビード部補強層がビードコアを覆うように設けられることから、ビードフィラーの大きさを比較的小さくしてもビードフィラー近傍の剛性をより高く確保することができるので、操縦安定性能を向上することができる。そして、ビード部補強層自体をスチールコード又はガラス転移温度が100度以上の有機繊維コードにより構成することで、このビード部補強層に永続的な残留歪(永久歪)が蓄積されることも抑制することができるので、このビード部補強層におけるフラットスポットの発生も抑制することができる。
請求項6に係る発明による空気入りタイヤによれば、本発明をタイヤ幅方向の長さが比較的長い扁平率50%以下の空気入りタイヤに適用することで、より顕著に操縦安定性を維持した耐フラットスポット性の向上効果を奏することができるという利点がある。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの赤道面を含む子午部分断面図、図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのビード部を示す子午部分断面図である。
この空気入りタイヤ1は、図1に示すように、赤道面50を中心としてほぼ対称になるように構成される。ここで、赤道面50とは、回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1の幅の中心を通る平面である。以下の説明では、この空気入りタイヤ1は、赤道面50を中心としてほぼ対称になるように構成されることから、図1には赤道面50を中心として一方側のみを図示し、特に断りのない限り、当該一方側のみを説明し、他方側の説明はできるだけ省略する。
なお、以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向(図1参照)とは、前記回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。また、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向において赤道面50に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向において赤道面50から離間する方向をいう。
この空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド面5を有するトレッド部6と、その両側に連続する左右のショルダー部7と、サイドウォール部8と、ビード部9から構成されている。さらに、この空気入りタイヤ1は、カーカス層10と、ベルト層11と、ベルト補強層12と、インナーライナ13と、ビードコア14とを備える。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外周側となる部分にトレッド部6が設けられている。また、トレッド部6は、キャップトレッド4を有している。このキャップトレッド4は、トレッド部6におけるタイヤ径方向外方に位置し、空気入りタイヤ1の外部に対して露出している。このようにキャップトレッド4の外部に露出している部分、つまり、キャップトレッド4の表面は、トレッド面5として形成されている。
トレッド面5は、トレッド溝5aと、このトレッド溝5aによって区画される陸部5bが設けられている。トレッド溝5aは、タイヤ周方向に連続して形成される主溝とタイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝(不図示)を有する。トレッド面5は、トレッド溝5aと陸部5bとによりトレッドパターンが形成される。
カーカス層10は、ゴムで被覆されたカーカスコードにより形成されたカーカスプライ10aからなり、タイヤの骨格を形成するものである。このカーカスプライ10aは、赤道面50を中心としてトレッド部6の両側から左右のショルダー部7及びサイドウォール部8を介してビード部9まで延設されている。また、カーカスプライ10aのカーカスコードは、タイヤ周方向に対して略90度の角度をもって配列されている。そして、このカーカスプライ10aは、この空気入りタイヤ1に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐える構造を持っている。
ここで、このカーカス層10にて、カーカスプライ10aのカーカスコードは、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、高弾性繊維の繊維コードなどを用いるとよい。ポリエステル繊維は、単量体相互の結合部分が主としてエステル結合(−CO・O−)による長鎖状合成高分子からなる繊維であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、PEN(ポリエチレンナフタレート繊維)を用いればよい。レーヨン繊維は、例えば、強力ビスコースレーヨンが好ましいが、これに限定されるものではない。高弾性繊維は、例えば、ナイロンよりも高弾性率を有する繊維であり、アラミド、芳香族ポリアミド等の繊維を用いればよい。
ベルト層11は、タイヤ周方向に貼り付けられ、カーカス層10を補強するための層である。このベルト層11は、カーカス層10のタイヤ径方向外周側に配置される。このベルト層11は、タイヤ径方向内方から順に、ゴムで被覆されたベルトコードにより形成された1番ベルト11a、2番ベルト11bを有する。また、1番ベルト11aと2番ベルト11bとは、各々のベルトコードが互いに交差するように形成され、いわゆるクロスプライベルトとなって形成されている。そして、このベルト層11は、カーカス層10を締め付けてトレッド剛性を高めると共に、衝撃を緩和してトレッドに生じた外傷がカーカス層10に及ぶのを防止する。
ここで、このベルト層11にて、1番ベルト11a、2番ベルト11bのベルトコードは、例えば、高弾性繊維コード又はスチールコードなどを用いるとよい。高弾性繊維は、例えば、ナイロンよりも高弾性率を有する繊維であり、アラミド、芳香族ポリアミド等の繊維を用いればよい。スチールコードは、例えば、素線径0.1mmから0.4mmのスチールフィラメントを1本乃至複数本を撚り合わせたものを用いればよい。
ベルト補強層12は、ベルト層11をさらに補強するための層である。ベルト補強層12は、トレッド部6の表面であるトレッド面5とベルト層11との間に設けられる。すなわち、このベルト補強層12は、トレッド面5のタイヤ径方向内周側で、かつ、ベルト層11のタイヤ径方向外周側に配置される。このベルト補強層12は、タイヤ径方向内方から順に、ゴムで被覆された補強ベルトコードにより形成された1番補強ベルト12a、2番補強ベルト12bを有する。このベルト補強層12のタイヤ径方向外周側に、上述のトレッド部6のキャップトレッド4、トレッド面5が形成されている。また、1番補強ベルト12aと2番補強ベルト12bは、各々の補強ベルトコードがタイヤ周方向に配されている。そして、このベルト補強層12は、ベルト層11を補強することで、タイヤ転動時における振動の発生を抑制して中域周波数のロードノイズを低減すると共に、ベルト層11の端部のせり上がり等を抑制してタイヤの高速耐久性、高速安定性を向上させる。なお、1番補強ベルト12a、2番補強ベルト12bの補強ベルトコードについては、後述で詳細に説明する。
ビードコア14は、ビード部9にて、空気入りタイヤ1の内圧によって発生するカーカス層10のコード張力を支えるものである。左右一対のビードコア14は、複数のビードワイヤを有し、このビードワイヤは、高剛性材としてのスチールワイヤにより構成される。一対のビードコア14は、このビードワイヤを連続して巻き付けてリング形状をなすことで形成されている。このビードコア14は、空気入りタイヤ1をホイールのリム(不図示)に固定させる役割を果たし、また、カーカス層10、ベルト層11、ベルト補強層12などと共に空気入りタイヤ1の強度部材として機能する。
そして、上述のカーカス層10は、カーカスプライ10aがビードコア14の周囲に空気入りタイヤ1の赤道面50側から外方に折り返され、このカーカス層10とビードコア14との空間にビードフィラー15が充填されることで、ビード部9が構成される。さらに具体的には、カーカスプライ10aは、カーカス本体部10bと、折返し部10cとを有する。カーカス本体部10bは、左右一対のビードコア14間に延設される。折返し部10cは、左右一対のビードコア14に対応して左右一対設けられ、カーカス本体部10bの両端部から各ビードコア14周りに巻き返されてタイヤ径方向外方に延設される。カーカス本体部10bと折返し部10cとは一体に形成されている。
つまり、カーカスプライ10aは、赤道面50に対して対称的に一対のビードコア14間に架け渡され、トレッド部6からサイドウォール部8を介してビード部9まで延設され、さらにビードフィラー15を介してビードコア14を赤道面50側から外方へ包み込むように巻き上げられる。ビードフィラー15は、ビードコア14のタイヤ径方向外周側にて、ビードコア14、カーカス本体部10b、折返し部10cにより区画される空間に充填されることで、カーカス層10のカーカスプライ10aをビードコア14に固定すると共に、この部分の形状を整え、ビード部9全体の剛性を高める。また、このカーカス層10の内側には、インナーライナ13がカーカス層10に沿って形成されている。
上記のように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面5が路面(図示省略)に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。このとき、空気入りタイヤ1では、トレッド面5には大きな荷重が作用する。ここで、本実施形態の空気入りタイヤ1は、扁平率が50%以下の空気入りタイヤ1として構成されている。この扁平率とは、図1に示すように、タイヤ幅Wに対するタイヤ高さSHを比率で表したものである。空気入りタイヤ1は、扁平率が低くなると、空気入りタイヤ1を横から見たときの厚さが薄くなり、トレッド面5の幅が広くなり、これに応じてベルト層11、ベルト補強層12の幅も広くなる。これにより、トレッド曲げ剛性が大きくなるので、コーナリングフォースが向上し、操縦安定性を向上することができる。
なお、ここで、タイヤ高さSHは、ビード部9のタイヤ径方向内周側端部(すなわち、リムベース位置)から赤道面50とトレッド面5との交点であるセンタークラウンCLまでのタイヤ径方向に沿ったタイヤ断面高さである。タイヤ幅Wは、タイヤ幅方向の両端に位置して対向するサイドウォール部8のうちタイヤ幅方向の最も外方に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、一対のサイドウォール部8のうちタイヤ幅方向において最も赤道面50から離れている部分同士のタイヤ幅方向における距離である。
ところで、このような空気入りタイヤ1では、例えば、この空気入りタイヤ1を装着した車両が高速走行することで当該空気入りタイヤ1が発熱した状態でこの車両が停車し、空気入りタイヤ1の特定の領域が長期間にわたって路面に接しているような場合などに、いわゆるフラットスポットが発生するおそれがある。すなわち、空気入りタイヤ1が高速走行等により高温となった状態で所定時間停止すると、このタイヤの温度が低下する際に、空気入りタイヤ1が路面に接地する領域(接地面)は、車両の重量などの垂直荷重の影響によって変形し、この空気入りタイヤ1を構成するゴムや繊維コードが変形してタイヤに残留歪が発生するおそれがある。フラットスポットは、この残留歪によって形成される平坦部であり、このフラットスポットが発生すると、走行が開始されてもしばらくの間この変形が維持されるため、空気入りタイヤ1の周方向に対して形状の不均一が生ずることになるので、走行時に振動が発生して操縦安定性が低下してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図1に示すように、トレッド面5のプロファイル(輪郭)形状と、ビードフィラー15の材料とを適正に設定することで、操縦安定性を維持しつつ耐フラットスポット性の向上を図っている。
なお、以下の説明では、特に断りのない限り、各部の位置関係は、タイヤ子午線方向の断面視にて、空気入りタイヤ1を正規リムに組込んで正規荷重に対応した正規内圧の5%を充填した状態で定義されるものとして説明する。なお、ここでいう正規リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
この空気入りタイヤ1のトレッド面5は、複数の異なる曲率半径の円弧で形成されている。具体的には、トレッド面5は、少なくともタイヤ幅方向の中央に位置する中央部円弧21と、タイヤ幅方向最外方に位置するショルダー側円弧22とを含む複数の異なる曲率半径の円弧により形成される。つまり、トレッド面5を形成する複数の円弧のうち、中央部円弧21は、トレッド面5におけるタイヤ幅方向の中央に位置しており、赤道面50を含み、赤道面50を中心として赤道面50のタイヤ幅方向の両側に形成されている。その形状は、タイヤ径方向外方に凸で、赤道面50付近のタイヤ径方向における径が最も大きくなる円弧となっている。
また、ショルダー側円弧22は、中央部円弧21のタイヤ幅方向外方に位置しており、このショルダー側円弧22は、タイヤ径方向外方に凸となっている。また、このショルダー側円弧22のさらにタイヤ幅方向外方には、ショルダー部7を形成する円弧としてショルダー部円弧23が位置している。このショルダー部円弧23は、前記ショルダー部7を形成し、タイヤ径方向外方に凸となる円弧となっている。つまり、タイヤ幅方向における中央部に位置する中央部円弧21のタイヤ幅方向車両外側、あるいは両側2箇所にショルダー側円弧22が位置し、ショルダー側円弧22のタイヤ幅方向外方側の車両外側、あるいは両側にショルダー部円弧23が位置している。また、中央部円弧21とショルダー側円弧22、及びショルダー側円弧22とショルダー部円弧23とは、それぞれ接続されて連続的に形成されている。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、このように位置している中央部円弧21の曲率半径(ラジアス)Rcと、ショルダー側円弧22の曲率半径Rsとは、異なる値に設定されている。そして、この空気入りタイヤ1は、複数の異なる曲率半径の円弧で形成されるトレッド面5のプロファイルを以下のようにして設定し、トレッド面5の曲率を直線に近づけてそのプロファイルを最適化している。
まず、ベルト層11の1番ベルト11aのタイヤ幅方向最外方位置Aからタイヤ径方向外周側へタイヤ径方向と平行に仮想される仮想線Bを設定する。そして、この仮想線Bとトレッド面5のプロファイル(輪郭)との交点を基準点Pとし、この基準点PとセンタークラウンCLとを結んだ線をショルダー片落線Cとする。そして、このショルダー片落線Cとタイヤ幅方向に平行な平行線Eとがなす角度をθとする。角度θは、ショルダー片落線Cと平行線Eとがなす鋭角側の角度である。さらに、中央部円弧21の曲率半径をRc、ショルダー側円弧22の曲率半径をRsとすると共に、赤道面50からショルダー側円弧22のタイヤ幅方向内方端部位置D(中央部円弧21とショルダー側円弧22とが連続する位置)までの円弧長である基準展開幅をL、タイヤ幅方向のトレッド面5の円弧長であるトレッド展開幅をTDWする。
なお、上記角度θは、トレッド部6の両端部に連続するショルダー部7のセンタークラウンCLに対する落ち込み量に相当する。また、トレッド展開幅TDWは、曲率半径Rcの中央部円弧21におけるタイヤ幅方向の円弧長をLc、曲率半径Rsのショルダー側円弧22におけるタイヤ幅方向の円弧長をLsとすると、TDW=(Lc+Ls)×2に相当する。そして、本実施形態では、トレッド面5において中央部円弧21とショルダー側円弧22との間には異なる曲率半径の円弧は設定されていないので、曲率半径Rcの中央部円弧21におけるタイヤ幅方向の円弧長Lcが基準展開幅Lに相当することになる。なお、トレッド面5において中央部円弧21とショルダー側円弧22との間に異なる曲率半径の円弧が設定されている場合、基準展開幅Lは、赤道面50からショルダー側円弧22のタイヤ幅方向内方端部位置Dまでの間にある円弧の円弧長の和となる。言い換えれば、L=TDW/2−Lsとなる。
空気入りタイヤ1の各部を上記のように規定した場合に、トレッド面5は、角度θが[1°<θ<4.5°]の範囲に設定され、曲率半径Rcと前記曲率半径Rsとの関係を下記の式(11)で求め、式(11)よって求められたF1が、[5<F1<10] の範囲に設定され、基準展開幅Lとトレッド展開幅TDWとの関係を下記の式(12)で求め、式(12)よって求められたF2が、[0.4<F2<0.7] の範囲に設定されるように形成される。

F1=Rc/Rs・・・(11)
F2=L/(TDW/2)・・・(12)
この空気入りタイヤ1は、角度θ、中央部円弧21の曲率半径をRc、ショルダー側円弧22の曲率半径をRs、基準展開幅L(言い換えれば、円弧長Lc、円弧長Ls、トレッド展開幅TDW)のプロファイル変量因子が上記のように設定されることで、トレッド面5のタイヤ幅方向に沿ったプロファイルの曲率が直線に近づくことから、操縦安定性と耐フラットスポット性の両立に対して最適化することできる。
すなわち、角度θを[1°<θ<4.5°]の範囲に設定されることにより、角度θが4.5°よりも小さいので、トレッド面5にて、トレッド部6からサイドウォール部8にかけてのショルダー部7付近での角度変化を小さくする、すなわち、トレッド部6の両端部に連続するショルダー部7のセンタークラウンCLに対する落ち込み量を少なくすることができ、トレッド面5の曲率を平坦に近づけることができる。一方、角度θが1°よりも大きいので、この角度θが小さすぎて空気入りタイヤ1としての適正な形状が崩れてしまうことを防止することができる。さらに、曲率半径Rcと曲率半径Rsとの関係式(11)によって求められたF1を、[5<F1=Rc/Rs<10] の範囲に設定し、基準展開幅Lとトレッド展開幅TDWとの関係を式(12)によって求められたF2を、[0.4<F2=L/(TDW/2)<0.7] の範囲に設定することにより、トレッド面5のプロファイルをより平坦な形状に近付けることができ、トレッド面5における接地圧の均一化を図ることができる。これにより、トレッド面5やショルダー部7、ビード部9における局所的な変形、特に、トレッド面5が表面に形成されたキャップトレッド4のタイヤ径方向内周側に隣接して配置されるベルト補強層12や荷重が作用した際に耐フラットスポット性に対して影響が大きいビードフィラー15の局所的な変形が抑制される。これにより、空気入りタイヤ1の熱冷却の間にセットされる永久歪を低減することができ、フラットスポットの発生を抑制することができる。
そしてさらに、本実施形態の空気入りタイヤ1のビードフィラー15は、圧縮永久歪率Csが30%以下の材料からなる。ここで、圧縮永久歪とは、ゴム材料の加熱圧縮による永久歪のことをいい、この値が小さいほど長時間圧縮したときに復元する力が高いことを示す。この圧縮永久歪は、JIS K6262 の規格に準拠された試験により評価することができ、すなわち、円柱状の試験片に厚さt0の25%に相当する圧縮歪みを与えた状態で、高温(例えば、70℃)に一定時間(例えば、22時間)保持した後、試験片を取り出し30分後の厚さt1を測定することで得ることができる。そして、圧縮永久歪率Csは、[Cs=(t0−t1)/t0×100]で算出することができる。
これにより、ビードフィラー15を圧縮永久歪率Csが30%以下の材料により構成することで、ビードコア14周りの剛性を高く維持して操縦安定性を確保しつつ、このビードフィラー15が荷重により変形してもビードフィラー15における永続的な残留歪(永久歪)の蓄積が抑制される。そして、空気入りタイヤ1の停止時における熱冷却の間にセットされる永久歪も結果的に低減することができ、よって、フラットスポットの発生が抑制される。この結果、トレッド面5のプロファイル(輪郭)形状と、ビードフィラー15の材料とを相互に適正に設定することで、空気入りタイヤ1における局所的な変形を抑制することができると共に、ビードコア14周りの剛性を高くしつつビードフィラー15における永続的な残留歪(永久歪)の蓄積を抑制することができるので、操縦安定性と耐フラットスポット性とをバランスよく両立することができる。この結果、操縦安定性を維持しつつ耐フラットスポット性を向上させることができる。
ここで、本実施形態の空気入りタイヤ1では、圧縮永久歪率Csが30%以下の材料により構成されるビードフィラー15は、温度20度で測定した貯蔵弾性率E20に対する温度100度で測定した貯蔵弾性率E100の保持率が60%以上であるゴム組成物からなることが好ましい。ここで、貯蔵弾性率は、ゴムの特性を示すパラメータであり、歪によって蓄えられたエネルギーの尺度である。ここでは、貯蔵弾性率E20及び貯蔵弾性率E100は、(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用いて、静的歪1%、動的歪0.5%、周波数20Hzで測定した値にて、E100/E20×100≧60%を満たすゴム組成物をビードフィラー15として用いる。ビードフィラー15は、例えば、天然ゴム(NR)/ブタジエン重合物(BR)系のゴム組成物のBR量を増加させたり、樹脂分や可塑剤の配合を低減したりすることで得ることができる。
例えば、走行時に空気入りタイヤ1の温度上昇に伴って、ビードフィラー15の温度も上昇する(例えば、100℃)ことから、このビードフィラー15がやわらかくなって変形する。その後、空気入りタイヤ1が停止し冷却されビードフィラー15が固まったとき(例えば、20℃)に、この高温時と低温時との貯蔵弾性率の差が大きいと、ビードフィラー15の歪量が大きくなって変形量が大きくなってしまうおそれがあるが、本実施例のように、ビードフィラー15として、E100/E20×100≧60%を満たすゴム組成物、言い換えれば、貯蔵弾性率の温度依存性が低いゴム組成物を用いることで、高温から低温への温度変化(例えば、100→20℃)に伴った変形量が小さくなり、初期変形が小さくなるので、ビードフィラー15における永続的な残留歪(永久歪)の蓄積が抑制される。そして、空気入りタイヤ1の停止時における熱冷却の間にセットされる永久歪も結果的に低減することができ、よって、フラットスポットの発生率をさらに低くすることができる。
また、ベルト補強層12にて、1番補強ベルト12a、2番補強ベルト12bの補強ベルトコードは、70重量%以上90重量%以下を、ガラス転移温度Tが100度以上の有機繊維コードにより構成することが好ましい。つまり、1番補強ベルト12a、2番補強ベルト12bの補強ベルトコードは、70重量%以上90重量%以下が、100度以上のガラス転移温度Tを有する有機繊維コードからなる。ここで、ガラス転移温度Tは、例えば、高分子物質を加熱した場合にガラス状の硬い状態からゴム状に変わる現象、すなわち、ガラス転移がおこる温度であり、通常、高分子はこのガラス転移温度T以下の温度で適正な性能を発揮しうる。ガラス転移温度Tが100度以上の有機繊維としては、例えば、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維などを用いることができる。ここでは、例えば、1670[dtex(繊度;1000m当りの糸の重量を表す単位)] のアラミド繊維2本と、1400[dtex] の66ナイロン繊維1本とを撚り合わせた複合コード(1670/2 Aramid 1400 66Nylon)や1670dtexのアラミド繊維2本と940dtexのナイロン繊維1本とを撚り合わせた複合コード(1670/2 Aramid 940 Nylon)をつくり、この複合撚りコードにより1番補強ベルト12a、2番補強ベルト12bの補強ベルトコードを構成するとよい。
すなわち、1番補強ベルト12a、2番補強ベルト12bの補強ベルトコードの70重量%以上を、ガラス転移温度Tが100度以上の有機繊維コードにより構成するので、例えば、ガラス転移温度Tが100度未満の有機繊維(例えば、通常のナイロン繊維)の量が多すぎて、ベルト補強層12に永続的な残留歪(永久歪)が蓄積されやすくなることを抑制することができ、耐フラットスポット性が悪化することを防止することができる。一方、補強ベルトコードの90重量%以下を、ガラス転移温度Tが100度以上の有機繊維コードにより構成するので、例えば、ガラス転移温度Tが100度未満の有機繊維の量が少なすぎて、言い換えれば、ガラス転移温度Tが100度以上の高剛性の有機繊維の量が多すぎて引張力に対して延びにくくなることが防止され、タイヤ成形時に空気入りタイヤが所定の形状にならないことを防止することができ、また荷重変形に対する耐久性が悪化することを防止することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、タイヤ子午線方向の断面におけるビードフィラー15のフィラー断面積をSbとし、ベルト層11におけるタイヤ径方向最内層の1番ベルト11aのタイヤ幅方向最外方位置Aを通りタイヤ幅方向に平行な平行線Fよりタイヤ径方向内周側のサイド部断面積をStとした場合に、フィラー断面積Sbとサイド部断面積Stとの関係を下記の式(13)で求め、式(13)よって求められたF3が、[0.02<F3<0.15] の範囲に設定されるように各ビードフィラー15を設けるとよい。

F3=Sb/St・・・(13)
フィラー断面積Sbとサイド部断面積Stとの関係式(13)によって求められたF3を[0.02<F3=Sb/St<0.15] の範囲に設定することにより、フィラー断面積Sbがサイド部断面積Stの15%よりも小さい面積に設定されるので、サイド部断面積Stに対するフィラー断面積Sbが大きすぎて、ビードフィラー15の変形が大きくなってしまうことを防止することができ、これにより、空気入りタイヤ1の熱冷却の間にセットされる永久歪を低減することができ、フラットスポットの発生をより確実に抑制することができる。一方、フィラー断面積Sbがサイド部断面積Stの5%よりも大きい面積に設定されるので、サイド部断面積Stに対するフィラー断面積Sbが小さすぎてビード部9における剛性が低下することを抑制することができ、これにより、操縦安定性の低下を防止することができる。
そして、上記のようにフィラー断面積Sbとサイド部断面積Stとの関係式(13)によって求められたF3を[0.02<F3=Sb/St<0.15] の範囲に設定した場合、空気入りタイヤ1は、図2に示すように、さらに、優れた熱安定性を有し変形しにくいスチールコード又はガラス転移温度Tが100度以上の有機繊維コードからなり、ビード部9にて、ビードコア14を覆うように設けられるビード部補強層16を備えることがより好ましい。本図に示すビード部補強層16は、空気入りタイヤ1におけるビード部9(リム接触部)の表面を覆う、いわゆるチェーファーとして設けるものとして図示しているが、これに限らず、カーカス層10のカーカス本体部10bと折返し部10cとの外側にこのカーカスプライ10aに接してビードコア14を覆うように設けてもよいし、カーカス本体部10bと折返し部10cとの内側にビードコア14、ビードフィラー15を巻き込むように包み込んだ、いわゆるフリッパーとして設けるようにしてもよい。
このようにビード部補強層16がビードコア14を間接的に又は直接的に覆うように設けられることで、フィラー断面積Sbとサイド部断面積Stとの関係式(13)によって求められたF3を[0.02<F3=Sb/St<0.15] の範囲に設定しビードフィラー15の大きさを比較的小さくしてもビード部9の剛性をより高く確保することができるので、操縦安定性能を向上することができる。そして、ビード部補強層16自体をチールコード又はガラス転移温度Tが100度以上の有機繊維コードにより構成することで、このビード部補強層16に永続的な残留歪(永久歪)が蓄積されることも抑制することができるので、このビード部補強層16におけるフラットスポットの発生も抑制することができる。
なお、上記で説明した構成を本実施形態のようにタイヤ幅方向の長さが比較的長い扁平率50%以下の空気入りタイヤに適用することで、より顕著に操縦安定性を維持した耐フラットスポット性の向上効果を奏することができるという利点がある。
図3−1、図3−2は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図である。本図を参照して本発明の実施例を説明する。以上で説明した実施形態に係る空気入りタイヤ1を試作し、該空気入りタイヤ1と従来の空気入りタイヤとの性能の評価試験を実施した。性能評価試験は、耐フラットスポット性と操縦安定性に加えCA付高速耐久性の3項目について行なった。この性能試験では、タイヤサイズ225/45ZR17の空気入りタイヤをJATMA規定の正規リムに装着して実施した。
各試験項目の評価方法は、耐フラットスポット性については、最初に、タイヤユニフォーミティを、JASO C607「自動車用タイヤのユニフォーミティ試験方法」に準拠して測定し、時速150km/hで30分予備走行後に、荷重を負荷した状態で1時間ドラム停止する。その後、再び、タイヤユニフォーミティを測定し、ラジアルフォースバリエーションの予備走行前後の差ΔRFVを評価指標とする。この差ΔRFVが小さいほど、耐フラットスポット性に優れる。ここでは、評価結果は、後述する比較例1の評価結果を100%とする指数で示し、指数が大きいほど、耐フラットスポット性が優れていることを示している。
操縦安定性については、200kPaの空気圧を充填した空気入りタイヤ1を車両に装着し、テストコース及びサーキットでテストドライバー5人によって10点法によりフィーリング評価した。評価結果は、後述する比較例1の評価結果を100%とする指数で示し、指数が大きいほど、操縦安定性が優れていることを示している。
CA付高速耐久性については、キャンバー角を−2度とした状態、即ち、ネガティブキャンバーの状態で、ドラム径1707mmのドラムでJATMA高速耐久性試験終了後、荷重5kN、10km/hr毎加速して、空気入りタイヤが破損するまで試験を行ない、破損した速度によって評価した。評価結果は、後述する比較例1の評価結果を100%とする指数で示し、指数が大きいほど、CA付高速耐久性が優れていることを示している。
本実施例では、図3−1、図3−2に示すように、本発明と比較する比較例として7種類、本発明の実施例として5種類を、上記の方法で試験する。「実施例1」から「実施例5」に示す空気入りタイヤは、角度θ、中央部円弧21の曲率半径をRc、ショルダー側円弧22の曲率半径をRs、基準展開幅Lのプロファイル変量因子を上記のように設定することでトレッド面5のタイヤ幅方向に沿ったプロファイルの曲率を直線に近づけると共に、ビードフィラー15を圧縮永久歪率Csが30%以下の材料で構成することで、トレッド面5のプロファイル(輪郭)形状と、ビードフィラー15の材料とが相互に適正な組み合わせとなるように設定している。これに対し、「比較例1」から「比較例7」に示す空気入りタイヤは、角度θ、中央部円弧21の曲率半径をRc、ショルダー側円弧22の曲率半径をRs、基準展開幅Lのプロファイル変量因子のうちのいずれかが適正な関係からずらされているか、ビードフィラー15を圧縮永久歪率Csが30%より大きい材料で構成している。
また、「実施例2」から「実施例5」に示す空気入りタイヤは、E100/E20×100≧60%を満たすゴム組成物(天然ゴム(NR)/ブタジエン重合物(BR)系のゴム組成物においてBR量を増加したゴム組成物)をビードフィラー15として用いている。さらに、「実施例3」から「実施例5」に示す空気入りタイヤは、ベルト補強層12の補強ベルトコードを1670[dtex] のアラミド繊維2本と、1400[dtex] の66ナイロン繊維1本とを撚り合わせた複合コード(1670/2 Aramid 1400 66Nylon)により構成し、この補強ベルトコードの70重量%を、ガラス転移温度T≧100℃の有機繊維により構成している。
加えて、「実施例4」及び「実施例5」に示す空気入りタイヤは、フィラー断面積Sbとサイド部断面積Stとの断面積比Sb/St=0.1とし、さらに、「実施例5」に示す空気入りタイヤは、ビード部補強層16をガラス転移温度Tが100度以上の有機繊維コードにより構成している。
この図3−1、図3−2から明らかなように、「実施例1」から「実施例5」に示す空気入りタイヤは、角度θ、中央部円弧21の曲率半径をRc、ショルダー側円弧22の曲率半径をRs、基準展開幅Lのプロファイル変量因子が、[1°<θ<4.5°]、 [5<F1=Rc/Rs<10]、[0.4<F2=L/(TDW/2)<0.7]を満たすように設定されていると共に、ビードフィラー15を圧縮永久歪率Csが30%以下の材料で構成していることから、「比較例1」から「比較例7」と比べて、いずれも操縦安定性を維持しつつ、耐フラットスポット性を向上させることができている。
また、「実施例2」から「実施例5」に示す空気入りタイヤは、E100/E20×100≧60%を満たすゴム組成物をビードフィラー15として用いていることから、このビードフィラー15における温度依存性が少なくなり、これに伴った剛性変化が少なくなっているため、操縦安定性と耐フラットスポット性とを共に向上させることができている。
さらに、「実施例3」から「実施例5」に示す空気入りタイヤは、ベルト補強層12の補強ベルトコードを1670[dtex] のアラミド繊維2本と、1400[dtex] の66ナイロン繊維1本とを撚り合わせた複合コード(1670/2 Aramid 1400 66Nylon)により構成し、この補強ベルトコードの70重量%を、ガラス転移温度T≧100℃の有機繊維により構成していることから、補強ベルトコードの重量分布が適正に設定されているため、耐フラットスポット性をさらに向上させることができている。
また、「実施例4」及び「実施例5」に示す空気入りタイヤは、フィラー断面積Sbとサイド部断面積Stとの断面積比Sb/St=0.1としていることから、耐フラットスポット性とを共に向上させることができている一方、「実施例5」に示す空気入りタイヤは、ビード部補強層16をガラス転移温度Tが100度以上の有機繊維コードにより構成していることから、ビードフィラー15の大きさを比較的小さくしてもビード部9の剛性をより高く確保することができるので、操縦安定性能もさらに向上することができる。
また、「実施例1」から「実施例5」に示す空気入りタイヤは、いずれも「比較例1」と比べてCA付高速耐久性をも向上することができている。
以上のように、本発明に係る空気入りタイヤは、操縦安定性を維持しつつ耐フラットスポット性を向上させるものであり、扁平率が50%以下の空気入りタイヤに適用して有用である。
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの赤道面を含む子午部分断面図である。 本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのビード部を示す子午部分断面図である。 本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図である。 本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図である。
符号の説明
1 空気入りタイヤ
4 キャップトレッド
5 トレッド面
6 トレッド部
7 ショルダー部
8 サイドウォール部
9 ビード部
10 カーカス層
11 ベルト層
12 ベルト補強層
13 インナーライナ
14 ビードコア
15 ビードフィラー
16 ビード部補強層
21 中央部円弧
22 ショルダー側円弧
23 ショルダー部円弧
50 赤道面

Claims (6)

  1. 一対のビードコアのタイヤ径方向外周側にビードフィラーを介して該ビードコア周りにタイヤ幅方向内方から外方に巻き返されて架け渡されるカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外周側に設けられるベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外周側に設けられるトレッド面とを有し、前記トレッド面が、少なくともタイヤ幅方向の中央に位置する中央部円弧と、タイヤ幅方向最外方に位置するショルダー側円弧とを含む複数の異なる曲率半径の円弧で形成された空気入りタイヤにおいて、
    正規リムに組込んで正規内圧の5%を内圧充填した状態でタイヤ子午線方向の断面視にて、
    前記ベルト層のタイヤ幅方向最外方位置からタイヤ径方向外周側へタイヤ径方向と平行に仮想される仮想線と前記トレッド面のプロファイルとの交点を基準点とし、赤道面と前記トレッド面のプロファイルとの交点をセンタークラウンとし、前記基準点と前記センタークラウンとを結んだ線とタイヤ幅方向に平行な線とがなす角度をθとし、前記中央部円弧の曲率半径をRcとし、前記ショルダー側円弧の曲率半径をRsとし、赤道面から前記ショルダー側円弧のタイヤ幅方向内方端部位置までの円弧長である基準展開幅をLとし、タイヤ幅方向の前記トレッド面の円弧長であるトレッド展開幅をTDWとした場合に、
    前記トレッド面は、1°<θ<4.5°、5<Rc/Rs<10及び0.4<L/(TDW/2)<0.7を満たすように形成され、
    前記ビードフィラーは、圧縮永久歪率が30%以下の材料からなることを特徴とする、
    空気入りタイヤ。
  2. 前記ビードフィラーは、温度20度で測定した貯蔵弾性率に対する温度100度で測定した貯蔵弾性率の保持率が60%以上であるゴム組成物からなることを特徴とする、
    請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 有機繊維コードからなりタイヤ径方向に対して前記ベルト層と前記トレッド面との間に設けられるベルト補強層を備え、
    前記ベルト補強層の前記有機繊維コードは、70重量%以上90重量%以下を、ガラス転移温度が100度以上の有機繊維により構成されることを特徴とする、
    請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. タイヤ子午線方向の断面における前記ビードフィラーのフィラー断面積をSbとし、前記ベルト層におけるタイヤ径方向最内層のタイヤ幅方向最外方位置を通りタイヤ幅方向に平行な線よりタイヤ径方向内周側のサイド部断面積をStとした場合に、
    前記ビードフィラーは、0.02<Sb/St<0.15を満たすように形成されることを特徴とする、
    請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. スチールコード又はガラス転移温度が100度以上の有機繊維コードからなり前記ビードコアを覆うように設けられるビード部補強層を備えることを特徴とする、
    請求項4に記載の空気入りタイヤ。
  6. 扁平率が50%以下であることを特徴とする、
    請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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