JP4898217B2 - 中空体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中空体の製造方法に関し、詳しくは、複数の部材を組み合せて一体化することによって中空部を有する中空体を製造するという中空体の製造方法に関する。
図28は、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック1を示す斜視図である。シリンダブロック1は、中空部を有する中空体である。シリンダブロック1は、円筒状のシリンダ部分2を4つ、含む。シリンダ部分2には、ピストンが移動可能に内嵌される。このようなシリンダ部分2は、中空部であるウォータジャケット3を有する。ウォータジャケット3には、冷却装置によって冷却水が循環され、これによってエンジン本体の過熱が防がれる。
第1の従来技術として、中空体を、一体成形する技術がある。この従来技術は、図28に示すシリンダブロック1の製造に用いられている。この従来技術では、中子を含む鋳型内に、溶湯を注入して充満させ、鋳型内に充満した溶湯を凝固させる。鋳型内に充満した溶湯の凝固物は、中空部を有する中空体となる。中子は、中空体の中空部に相当する砂型であり、鋳型内に充満した溶湯が凝固した後に加振などによって崩壊されて除去される。このような第1の従来技術では、中子が必要であるので、中空体の製造が困難であるという問題がある。
第2の従来技術として、複数の部材を接合して、中空部を有する中空体を実現する技術がある。この従来技術は、特許文献1に開示されている。この従来技術は、具体的には、オイル通路を有する自動車用チェーンケースの製造方法に関する技術である。オイル通路は、中空部である。自動車用チェーンケースは、中空体である。
前記製造方法では、まず、第1部材であるチェーンケース鋳物と第2部材である板部材とが準備される。チェーンケース鋳物は、略板状の基板と、この基板に立設される通路壁部とを有する。通路壁部は、環状に一体的に形成される。基板は、通路壁部に関して内側の部分の2箇所に孔が形成され、これらの孔を介して、オイル通路に対してオイルが流入または流出することができる。板部材は、通路壁部の上部に、蓋として設けられる。板部材は、通路壁部の上部に嵌め込まれる。通路壁部の上部に板部材が嵌め込まれた状態では、板部材の上面と通路壁部の最上面とは、ほぼ同じ高さである。通路壁部の上部に板部材が嵌め込まれた後、通路壁部の上部に嵌め込まれた板部材の周囲に沿って摩擦撹拌接合される。このようにして、オイル通路を有する自動車用チェーンケースが実現される。
このような製造方法では、通路壁部の上部と板部材との間に隙間があると、摩擦撹拌された部分に窪みまたは空洞が生じてしまうという問題がある。この問題を回避するために、通路壁部の上部に板部材がきつく嵌り込むようにすると、通路壁部の上部に板部材を嵌め込む作業が困難になるという問題がある。
特開2005−342745号公報
本発明の目的は、中空体の製造を容易にすることができ、しかも作業性を低下させることなく、摩擦撹拌された部分に窪みまたは空洞が生じるという不具合を防ぐことができる中空体の製造方法を提供することである。
本発明は、外部に臨んで開放する開放空間を規定する凹部を有する第1部材と、第1部材の前記開放空間の開口を塞ぐことができる第2部材とを、準備し、
第1部材の前記開放空間の開口を第2部材によって塞いだ状態で、第1部材と第2部材とを摩擦撹拌することによって、第1部材の前記開放空間の開口を閉鎖する中空体の製造方法であって、
第1部材の前記開放空間は、開口側の第1空間部分と、第1空間部分を除く残余の第2空間部分とを含み、
前記第2部材は、前第1空間部分に嵌り込むことができる嵌合部と、この嵌合部に連なり、前第1空間部分に前記嵌合部が嵌り込んだ状態で前記開放空間の開口よりも外方に突出する突出部とを有し、
前記第1空間部分の深さをD1とし、摩擦撹拌によって形成される撹拌部分の深さをD2とするとき、D2≦(2/3)・D1の関係式を満たすようにして、前記第1部材の第1空間部分に臨む第1内面と、第2部材の嵌合部とを摩擦撹拌することを特徴とする中空体の製造方法である。
また本発明は、第1部材の凹部は、前記第1内面と、前記第2空間部分に臨む第2内面と、前記第1内面と第2内面との間に形成され、前記開放空間の開口を介して外部に臨む第3内面とを含み
第1部材のうちで第1内面を形成する部分と、第2部材のうちで第1部材の第3内面および第2空間部分に対向する対向部分を除く残余の部分とが摩擦撹拌され、第2部材の前記対向部分は、第1部材の前記第3内面によって支持されることを特徴とする。
また本発明は、第1部材のうちで第1内面を形成する部分と、第2部材のうちで第1部材の第3内面および第2空間部分に対向する対向部分を除く残余の部分とを1パスで摩擦撹拌することによって、前記開放空間の開口を閉鎖して閉鎖空間を形成し、さらに、前記閉鎖空間と外部とを連通する貫通孔を形成することを特徴とする。
また本発明は、第1部材と第2部材とは、接合ツールを、第1部材と第2部材とに没入させた状態で、接合ツールを、その軸線と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路に沿って移動させることによって、摩擦撹拌され、
接合ツールは、第1部材から、または第2部材のうち第1部材によって支持される部分から、没入させることを特徴とする。
また本発明は、第1部材と第2部材とは、接合ツールを、第1部材と第2部材とに没入させた状態で、接合ツールを、その軸線と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路に沿って移動させることによって、摩擦撹拌され、
接合ツールは、第1部材から、または第2部材のうち第1部材によって支持される部分から、退出させることを特徴とする。
また本発明は、前記中空体の製造方法で製造される中空体である。
本発明によれば、第1部材と第2部材とが準備される。第1部材は、外部に臨んで開放する開放空間を規定する凹部を有する。第2部材は、第1部材の前記開放空間の開口を塞ぐことができる。第1部材と第2部材とは、第1部材の前記開放空間の開口を第2部材によって塞いだ状態で、摩擦撹拌され、これによって第1部材の前記開放空間の開口が閉鎖される。このようにして中空部を有する中空体が実現される。
第1部材の前記開放空間の開口が閉鎖されることによって中空体が実現されるので、中空体の実現のために、中子が必要なく、したがって中空体の製造を容易化することができる。
第2部材の突出部は、前記嵌合部に連なり、前記開放空間における開口側の第1空間部分に前記嵌合部が嵌り込んだ状態で前記開放空間の開口よりも外方に突出する。第2部材の嵌合部が第1部材の前記開放空間に緩やかに嵌り込むことができる場合、第2部材の嵌合部と第1部材との間には隙間がある。この隙間には、第2部材の突出部が摩擦撹拌によって流動化して流れ込み、これによって前記隙間が埋まる。したがって摩擦撹拌された部分に窪みまたは空洞が生じるという不具合を防ぐことができる。
また、第1空間部分の深さをD1とし、摩擦撹拌によって形成される撹拌部分の深さをD2とするとき、D2≦(2/3)・D1の関係式を満たすようにして、前記第1部材の第1空間部分に臨む第1内面と、第2部材の嵌合部とが摩擦撹拌される。これにより、撹拌部分に空洞が生じることを防止し、機械的強度が低下してしまうことを防止することができる。
また本発明によれば、第1部材の前記開放空間は、開口側の第1空間部分と、第1空間部分を除く残余の第2空間部分とを含む。第1部材の凹部は、第1空間部分に臨む第1内面と第2空間部分に臨む第2内面との間には、前記開放空間の開口を介して外部に臨む第3内面とが形成される。このような第3内面によって、摩擦撹拌によって流動化した部分の第2空間部分への侵入を防ぐことができ、歩留りを向上させることができる。
第1部材のうちで第1内面を形成する部分と、第2部材のうちで第1部材の第3内面および第2空間部分に対向する対向部分を除く残余の部分とが摩擦撹拌される。第2部材の前記対向部分は、第1部材の前記第3内面によって支持される。このような第2部材の前記対向部分によって、摩擦撹拌によって流動化した部分の第2空間部分への侵入を確実に防ぐことができ、歩留りをさらに向上させることができる。
また本発明によれば、第1部材と第2部材とは、接合ツールを、第1部材と第2部材とに没入させた状態で、接合ツールを、その軸線と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路に沿って移動させることによって、摩擦撹拌される。接合ツールを没入させるのは、第1部材から、または第2部材のうち第1部材によって支持される部分からである。したがって接合ツールを没入させるときの押圧力によって、第2部材が変形して第1部材の前記開放空間に不所望に侵入しまうという不具合を回避することができ、歩留りを向上させることができる。
また本発明によれば、第1部材と第2部材とは、接合ツールを、第1部材と第2部材とに没入させた状態で、接合ツールを、その軸線と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路に沿って移動させることによって、摩擦撹拌される。接合ツールを退出させるのは、第1部材から、または第2部材のうち第1部材によって支持される部分からである。接合ツールを退出させた個所には、接合ツールの跡が残る。本発明では、接合ツールを退出させる個所が前述のように選択されることによって、接合ツールの跡に起因する中空体の機械的強度の低下を可及的に抑えることができる。
また本発明によれば、第1部材の前記開放空間の開口が閉鎖されて、中空体が実現されるので、中空体は、第1部材に比べて、機械的強度が向上される。また中空体は、中空部を有することによって、軽量化される。
図1は、本発明の実施の第1形態である中空体11の製造方法を説明するための斜視図であり、図1(1)は第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15によって塞ぐ前の状態を示し、図1(2)は第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15によって塞いだ状態を示し、図1(3)は第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌した状態を示し、図1(4)は貫通孔16を形成した状態を示す。図2は、図1に示す中空体11の製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施の形態の製造方法は、ダイカスト鋳造物を用いた中空体11の製造方法である。一例として述べると、この製造方法は、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロックの製造に用いることができる。
中空体11は、中空部を有する。中空部とは、遮蔽された空間を規定する部分を意味する。また中空部とは、外部に開放する空間を規定する部分であって、開口部がアンダーカットとなるような部分をも意味する。アンダーカットとは、鋳造を想定した場合、鋳型および中子の引抜きを不可能にする個所を意味する。
第1部材12は、ダイカスト法で鋳造された部材であり、アルミニウム合金から成る。第1部材12は、大略的に円筒状である。第1部材12の軸線方向両端部には、第1部材12の軸線に垂直または略垂直な端面17がそれぞれ形成される。第1部材12は、開放空間13を規定する凹部18を有する。開放空間13は、第1部材12の軸線まわりの周方向に全周にわたって延びて、前記周方向の全周にわたって前記各端面17のいずれか一方の位置で外部に臨んで開放する。
第2部材15は、ダイカスト法で鋳造された部材であり、アルミニウム合金から成る。第2部材15は、大略的に円環状である。第2部材15は、第1部材12の開放空間13の開口14(後述の図5(2)参照)を塞ぐことができる。第2部材15は、第1部材12の開放空間13に部分的に嵌り込むことができる嵌合部19と、この嵌合部19に連なり、第1部材12の開放空間13に嵌合部19が嵌り込んだ状態で前記開放空間13の開口14よりも外方に突出する突出部20とを有する。嵌合部19は、円環状である。突出部20は、円環状であり、嵌合部19と同軸に設けられる。
中空体11の製造作業を開始すると、まず、ステップa1で、図1(1)に示すように、第1部材12と第2部材15とを準備する。次に、ステップa2で、図1(2)に示すように、第1部材12の開放空間13に部分的に第2部材15の嵌合部19を嵌め込んで、第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15によって塞ぐ。
次に、ステップa3で、図1(3)に示すように、第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15によって塞いだ状態で、第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌することによって、第1部材12の開放空間13の開口14を閉鎖する。このようにして閉鎖空間を形成して、中空体の前駆体21を得る。本実施の形態において、開口14を閉鎖した状態は、開口14を介して、前記閉鎖空間と外部とに流体が流通しない状態をいう。
次に、ステップa4で、図1(4)に示すように、中空体の前駆体21に、前記閉鎖空間と外部とを連通する貫通孔16を形成する。貫通孔16の形成には、切削工具が用いられる。貫通孔16は、摩擦撹拌された部分(以下「撹拌部分」という)22を貫通して、中空体11の軸線方向に延びる。本実施の形態では、4つの貫通孔16が、中空体11の軸線まわりの周方向に等間隔をあけて配置される。このようにして中空体11を得て、中空体11の製造作業を終了する。
前記ステップa4で貫通孔16を形成した後、中空体11の撹拌部分22側の端面を研磨するようにしてもよい。
図3は、第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌するために用いられる接合ツール25を示す斜視図である。接合ツール25は、大略的に円柱状である。接合ツール25は、ショルダ部26と、プローブ部27とを有する。ショルダ部26は、円柱状である。ショルダ部26は、接合ツール25の軸線L1に垂直な端面28が形成される。プローブ部27は、ショルダ部26よりも外径が小さい円柱状である。プローブ部27は、ショルダ部26と同軸、もしくは若干、半径方向にずらし偏心させて設けられ、ショルダ部26の端面28から接合ツール25の軸線L1に沿って突出する。
図4は、第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌している状態を示す斜視図である。第1部材12と第2部材15とは、接合ツール25を、第1部材12と第2部材15とに没入させた状態で、接合ツール25を、その軸線L1と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路29に沿って移動させることによって、摩擦撹拌される。
接合ツール25を第1部材12と第2部材15とに没入させた状態は、その接合ツール25のプローブ部27が第1部材12と第2部材15とに没入し、かつその接合ツール25のショルダ部26が第1および第2部材12,15の少なくともいずれか一方、本実施の形態では両方に当接した状態である。接合ツール25の経路29は、図1(2)に示すように、第2部材15に沿って予め定められる。
接合ツール25を、第1部材12と第2部材15とに没入させた状態で、接合ツール25を、その軸線L1と一致する回転軸線まわりに回転させることによって、摩擦熱が発生する。この摩擦熱によって、第1部材12と第2部材15とが部分的に流動化し、流動化した部分が固相撹拌される。このようにして、第1部材12と第2部材15とが、摩擦撹拌される。
前記図1を再び参照して、第1および第2部材12,15は、互いに係合可能に形成される。第1部材12と第2部材15とは、第1部材12の開放空間13に部分的に第2部材15の嵌合部19が嵌り込むことによって、互いに係合する。第1部材12と第2部材15とが摩擦撹拌されるとき、第1部材12と第2部材15とが互いに係合することによって、第2部材15の第1部材12に対する前記接合ツール25の回転方向31および移動方向32への変位が阻止される。このように第2部材15の第1部材12に対する前記接合ツール25の回転方向31および移動方向32への変位が阻止されるので、第1部材12と第2部材15とを確実に摩擦撹拌することができる。
第2部材15の第1部材12に対する前記接合ツール25の移動方向32への変位については、以下のようにして、阻止される。
第1部材12の開放空間13は、第1部材12の軸線まわりの周方向に垂直な断面形状が、前記周方向に大略的に一様である。第1部材12の開放空間13は、前記断面形状が第1形状である第1形状空間部分33と、前記断面形状が第1形状とは異なる第2形状である第2形状空間部分34とを含む。本実施の形態では、第1形状空間部分33が、開放空間13のほとんどを占め、第2形状空間部分34は、前記周方向に等間隔をあけて2個所、存在する。第2形状空間部分34は、第1形状空間部分33よりも、第1部材12の軸線まわりの半径方向に関して内方および外方に突出する。
第2部材15の嵌合部19は、第1嵌合部分35と、第2嵌合部分36とを含む。第1嵌合部分35は、第1部材12の第1形状空間部分33に嵌り込むことができる。第2嵌合部分36は、第1部材12の第1形状空間部分33には嵌り込むことができず、第1部材12の第2形状空間部分34には嵌り込むことができる。
第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15によって塞いだ状態は、第2部材15の第1嵌合部分35が第1部材12の第1形状空間部分33に部分的に嵌り込み、かつ第2部材15の第2嵌合部分36が第1部材12の第2形状空間部分34に部分的に嵌り込んだ状態である。この状態では、第2部材15が第1部材12に対して第1部材12の軸線まわりの周方向へ変位することが阻止される。したがって第1部材12と第2部材15とが摩擦撹拌されるとき、第2部材15の第1部材12に対する前記接合ツール25の移動方向32への変位が阻止される。
図5は、第1部材12と第2部材15との摩擦撹拌を詳細に説明するための断面図であり、図5(1)は第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15によって塞ぐ前の状態を示し、図5(2)は第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15によって塞いだ状態を示す。図6は、図5に続いて第1部材12と第2部材15との摩擦撹拌を説明するための断面図であり、図6(1)は接合ツール25を第1部材12と第2部材15とに没入させようとしている状態を示し、図6(2)は第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌している状態を示し、図6(3)は第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌した状態を示す。図5および図6は、第1部材12の軸線まわりの周方向から見た断面図である。
第1部材12の開放空間13は、図5(1)に示すように、開口14側の第1空間部分41と、第1空間部分41を除く残余の第2空間部分42とを含む。第1部材12の凹部18は、第1空間部分41に臨む第1内面43と第2空間部分42に臨む第2内面44との間には、前記開放空間13の開口14を介して外部に臨む第3内面45が形成される。第3内面45は、第1部材12の軸線まわりの周方向に全周にわたって形成される。このような第3内面45によって、摩擦撹拌によって流動化した部分の第2空間部分42への侵入を防ぐことができ、歩留りを向上させることができる。
第2部材15は、第2部材15の前記周方向に垂直な断面の形状が略T字状である。本実施の形態では、第2部材15は、第2部材15の前記周方向に垂直な断面の面積が、第1部材12の第1空間部分41の前記周方向に垂直な断面の面積と同じか、それ以上となるように、設けられる。
第1部材12の開放空間13には、第2部材15の嵌合部19を嵌め込む。具体的には、前記開放空間13の第1空間部分41に、第2部材15の嵌合部19を嵌め込む。第2部材15の嵌合部19は、図5(2)に示すように、第1部材12の開放空間13に緩やかに嵌り込むことができる。
第2部材15の突出部20は、図5(2)に示すように、第1部材12の開放空間13に前記嵌合部19が嵌り込んだ状態で前記開放空間13の開口14よりも外方に突出する。第2部材15の突出部20は、前記嵌合部19に連なる基部20aと、この基部20aに連なり、前記嵌り込んだ状態で前記開放空間13の幅方向に延びるフランジ部20bとを有する。フランジ部20bは、前記開放空間13の幅方向に関して、前記開放空間13よりも一方および他方に突出する。
第1部材12の開放空間13に部分的に第2部材15の嵌合部19を嵌め込んで、第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15によって塞ぐ。この状態で、接合ツール25を、図6(1)に示すように、その軸線L1と一致する回転軸線まわりに所定の回転速度で回転させながら、所定の没入位置で、第1部材12と第2部材15とに没入させる。
接合ツール25を第1部材12と第2部材15とに没入させた状態で、接合ツール25を、図6(2)に示すように、その軸線L1と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路29に沿って移動させる。このようにして、図6(3)に示すように、撹拌部分22が形成される。接合ツール25を予め定める経路29の全体にわたって移動させた後、接合ツール25を、所定の退出位置で、第1部材12と第2部材15とから退出させる。
接合ツール25を第1部材12と第2部材15とに没入させた状態では、接合ツール25を所定の押圧力で押圧する。このようにして、図6(2)に示すように、接合ツール25のショルダ部26の端面28が、第1部材12の端面17に接触するようにする。これによって、撹拌部分22における外部に臨む面と、第1部材12の端面17とが、大略的には面一となる。
第1部材12の凹部18は、第1部材12の軸線まわりの半径方向に関して、内方側から開放空間13に臨む内方側部分46と、外方側から開放空間13に臨む外方側部分47とを含む。接合ツール25を第1部材12と第2部材15とに没入させた状態では、接合ツール25のプローブ部27を、内方側部分46と外方側部分47との両方に没入させる。これによって第1部材12の開放空間13の開口14を確実に閉鎖することができる。
第1部材12のうちで第1内面43を形成する部分と、第2部材15のうちで第1部材12の第3内面45および第2空間部分42に対向する対向部分48を除く残余の部分とが摩擦撹拌される。第2部材15の前記対向部分48は、第1部材12の前記第3内面45によって支持される。このような第2部材15の前記対向部分48によって、摩擦撹拌によって流動化した部分の第2空間部分42への侵入を確実に防ぐことができ、歩留りを向上させることができる。
以上のような第1形態によれば、第1部材12の前記開放空間13の開口14が閉鎖されることによって中空体11が実現されるので、中空体11の実現のために、前記第1の従来技術のように中子が必要なく、したがって中空体11の製造を容易化することができる。
第1部材12の前記開放空間13には、第2部材15の嵌合部19が緩やかに嵌り込むことができる。したがって第1部材12の前記開放空間13に第2部材15の嵌合部19を嵌め込む作業を容易にすることができ、作業性を向上することができる。
第2部材15の突出部20は、前記嵌合部19に連なり、第1部材12の前記開放空間13に前記嵌合部19が嵌り込んだ状態で前記開放空間13の開口14よりも外方に突出する。第2部材15の嵌合部19が第1部材12の前記開放空間13に緩やかに嵌り込むことができる場合、第2部材15の嵌合部19と第1部材12との間には隙間がある。この隙間には、第2部材15の突出部20が摩擦撹拌によって流動化して流れ込み、これによって前記隙間が埋まる。したがって撹拌部分22に窪みまたは空洞が生じるという不具合を防ぐことができる。
また第1形態によれば、第1および第2部材12,15は、ダイカスト法で鋳造されるので、重力鋳造法で鋳造される場合に比べて、生産性が高い。したがって第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌する必要があるという点を考慮したとしても、生産性を向上させることができる。
また第1部材12と第2部材15とは、摩擦撹拌されるので、アーク溶接される場合に比べて、第1および第2部材12,15の加熱温度が低い。したがって欠陥が生じにくく、歩留りを向上させることができる。このようにして歩留りを向上させることができるので、歩留り向上のために、真空ダイカスト法で鋳造された各部材を用いる必要がなく、したがって第1および第2部材12,15に要するコストを低減して、製造コストを低減することができる。
また第1形態によれば、第2部材15の第1部材12に対する接合ツール25の回転方向31および移動方向32への変位は、第1部材12と第2部材15とが互いに係合することによって阻止されるので、前記変位を阻止するために、第1部材12に対して第2部材15を予め固定しておく必要がない。したがって生産性を向上させることができる。
また第1形態によれば、第1部材12の開放空間13に部分的に第2部材15の嵌合部19が嵌り込むことによって、第1部材12と第2部材15とが互いに係合して、第1部材12に対する第2部材15の変位が阻止される。したがって第1部材12に対する第2部材15の変位を阻止するために、第1および第2部材12,15に係合部を別途、設ける必要がなく、第1および第2部材12,15の構造を簡単化することができる。
第1部材12の開放空間13の開口14が閉鎖されて、中空体11が実現されるので、中空体11は、第1部材12に比べて、機械的強度が向上される。また中空体11は、中空部を有することによって、軽量化される。
また第1形態によれば、第1部材12と第2部材15とは摩擦撹拌されるので、アルミニウム合金から成る第1および第2部材12,15を用いても、前記第3の従来技術のような欠陥が生じにくく、歩留りを向上させることができる。
また第1形態によれば、第1部材12と第2部材15とは摩擦撹拌されるので、撹拌部分22の組織改質、たとえば結晶粒を微細化することができる。このように結晶粒が微細化されることによって、機械的強度やじん性等が向上される。
図7は、本発明の実施の第2形態である中空体の製造方法を説明するための断面図である。この図7は、第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15Xによって塞いだ状態を示す。本実施の形態は、前述の第1形態に類似するので、共通する点については説明を省略する。第1および第2部材12,15Xは、前述の第1形態における第1および部材12,15に類似するので、対応する部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
第2部材15Xは、第2部材15Xの前記周方向に垂直な断面の形状が略台形状である。本実施の形態では、第2部材15Xは、第2部材15Xの前記周方向に垂直な断面の面積が、第1部材12の第1空間部分41の前記周方向に垂直な断面の面積と同じか、それ以上となるように、設けられる。
第1部材12の開放空間13には、第2部材15Xの嵌合部19を嵌め込む。具体的には、前記開放空間13の第1空間部分41に、第2部材15Xの嵌合部19を嵌め込む。第2部材15Xの嵌合部19は、図7に示すように、第1部材12の開放空間13に緩やかに嵌り込むことができる。
第2部材15Xの突出部20Xは、図7に示すように、第1部材12の開放空間13に前記嵌合部19が嵌り込んだ状態で前記開放空間13の開口14よりも外方に突出する。第2部材15Xの突出部20Xは、前述の第1形態における第2部材15の突出部19の基部20aに相当する。
第2部材15Xの突出部20Xには、前述の第1形態における第2部材15の突出部19のフランジ部20bに相当する部分がないけれども、本実施の形態では、前述の第1形態と同様の効果を達成することができる。
図8は、本発明の実施の第3形態である中空体の製造方法を説明するための断面図である。この図8は、第1部材12の開放空間13の開口14を第2部材15Yによって塞いだ状態を示す。本実施の形態は、前述の第1形態に類似するので、共通する点については説明を省略する。第1および第2部材12,15Yは、前述の第1形態における第1および第2部材12,15に類似するので、対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
第1部材12の開放空間13には、第2部材15Yの嵌合部19Yを嵌め込む。具体的には、前記開放空間13の第1空間部分41に、第2部材15Yの嵌合部19Yを嵌め込む。第2部材15Yの嵌合部19Yは、図8に示すように、第1部材12の開放空間13に緩やかに嵌り込むことができる。
第2部材15Yの嵌合部19Yは、前述の第1形態における第2部材15の嵌合部19に相当する基部19Yaと、この基部19Yaの突出部20とは反対側に連なり、第2空間部分42に一部が緩やかに嵌り込む蓋部19Ybとを有する。
本実施の形態では、前述の第1形態と同様の効果を達成することができる。また第2部材15Yの嵌合部19Yの蓋部19Ybによって、第2空間部分42の開口が塞がれるので、摩擦撹拌によって流動化した部分の第2空間部分42への侵入をさらに確実に防ぐことができ、歩留りをさらに向上させることができる。
図9は、本発明の実施の第4形態である中空体51の製造方法を説明するための斜視図であり、図9(1)は第1部材52の第2形状空間部分34の開口14bを第2部材53によって塞ぐ前の状態を示し、図9(2)は第1部材52の第2形状空間部分34の開口14bを第2部材53によって塞いだ状態を示し、図9(3)は第1部材52と第2部材53とを摩擦撹拌した状態を示す。図10は、図9に示す中空体51の製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施の形態は、前述の第1形態に類似するので、共通する点については説明を省略する。
第1部材52は、前述の第1形態における第1部材12に類似するので、対応する部分には同一の符号を付して、説明を省略する。第1部材52の開放空間13は、第1部材52の軸線まわりの周方向に、第1形状空間部分33と第2形状空間部分34とが交互に並ぶ。本実施の形態では、第2形状空間部分34は、前記周方向に等間隔をあけて4個所、存在する。
第2部材53は、前述の第1形態における第2部材15とは形状が異なるけれども、その他の点については同一である。本実施の形態では、1つの第1部材52に対して、4つの第2部材53が準備される。各第2部材53は、第1部材52の各第2形状空間部分34の開口14bをそれぞれ塞ぐことができる。各第2部材53は、第1部材52の第2形状空間部分34に部分的に嵌り込むことができる嵌合部19と、この嵌合部19に連なり、第1部材52の第2形状空間部分34に嵌合部19が嵌り込んだ状態で前記第2形状空間部分34の開口14bよりも外方に突出する突出部20とを有する。
中空体51の製造作業を開始すると、まず、ステップb1で、図9(1)に示すように、第1部材52と4つの第2部材53とを準備する。次に、ステップb2で、図9(2)に示すように、第1部材52の各第2形状空間部分34に部分的に各第2部材53の嵌合部19を嵌め込んで、第1部材52の各第2形状空間部分34の開口14bを各第2部材53によって塞ぐ。
次に、ステップb3で、図9(3)に示すように、第1部材52の各第2形状空間部分34の開口14bを各第2部材53によって塞いだ状態で、第1部材52と各第2部材53とを摩擦撹拌することによって、第1部材52の各第2形状空間部分34の開口14bを閉鎖する。このようにして中空体51を得て、中空体51の製造作業を終了する。
各第2部材53の1つに着目すると、第1部材52と第2部材53とは、1パスで摩擦撹拌される。換言すれば、接合ツール25を、第1部材52と第2部材53とに没入させた状態で、接合ツール25を、その軸線L1と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路54に沿って第2部材53の延在方向一端部から他端部にわたって移動させる。このような操作を1回、実行する。このとき、接合ツール25のプローブ部27は、内方側部分46と外方側部分47との両方に没入させる。このようにして、第1部材52と第2部材53とが摩擦撹拌されて、撹拌部分55が形成される。
本実施の形態では、接合ツール25は、第1部材52から、または第2部材53のうち第1部材52によって支持される部分から、没入させる。したがって接合ツール25を没入させるときの押圧力によって、第2部材53が変形して第1部材52の開放空間13、詳しくは第2空間部分42に不所望に侵入しまうという不具合を回避することができ、歩留りを向上させることができる。
以上のような第4形態によれば、前述の第1形態と同様の効果を達成することができる。また第1部材52の各第1形状空間部分33の開口14aは閉鎖されないので、前述の第1形態のような貫通孔16の形成に要する手間を省くことができる。
図11は、本発明の実施の第5形態である中空体61の製造方法を説明するための斜視図であり、図11(1)は第1部材52の第2形状空間部分34の開口14bを第2部材53によって塞ぐ前の状態を示し、図11(2)は第1部材52の第2形状空間部分34の開口14bを第2部材53によって塞いだ状態を示し、図11(3)は第1部材52と第2部材53とを摩擦撹拌した状態を示す。本実施の形態は、前述の第4形態に類似するので、共通する点については説明を省略する。
本実施の形態では、各第2部材53の1つに着目すると、第1部材52と第2部材53とは、2パスで摩擦撹拌される。換言すれば、接合ツール25を、第1部材52と第2部材53とに没入させた状態で、接合ツール25を、その軸線L1と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路54に沿って第2部材53の延在方向一端部から他端部にわたって移動させる。このような操作を2回、実行する。1回目のとき、接合ツール25のプローブ部27は、内方側部分46と外方側部分47とのいずれか一方に没入させる。2回目のとき、接合ツール25のプローブ部27は、内方側部分46と外方側部分47とのいずれか他方に没入させる。このようにして、第1部材52と第2部材53とが摩擦撹拌されて、撹拌部分62,63が形成される。
以上のような第5形態によれば、前述の第4形態と同様の効果を達成することができる。また第2形状空間部分34の開口14bの幅が、接合ツール25のプローブ部27の直径よりも大きくても、第2形状空間部分34の開口14bを確実に閉鎖することができる。
図12は、本発明の実施の第6および第7形態、ならびに第1および第2の比較例で用いられる第1および第2部材71,72を示す平面図であり、図12(1)は第1部材71の第2形状空間部分34の開口14bを第2部材72によって塞ぐ前の状態を示し、図12(2)は第1部材71の第2形状空間部分34の開口14bを第2部材72によって塞いだ状態を示す。
第1部材71は、前述の第4および第5形態における第1部材52に類似するので、対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施の形態では、第1部材71の開放空間13は、一直線状に延びる。このような開放空間13を規定する凹部18は、開放空間13の幅方向一方側の第1壁部分73と、開放空間13の幅方向他方側の第2壁部分74とを含む。第2部材72は、前述の第4および第5形態における第2部材53に類似するので、対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図13〜図15は、本発明の実施の第6形態である中空体の製造方法を説明するための図である。図13は、1パスで摩擦撹拌した場合の撹拌部分75の外観を示す平面図である。図14は、図13の切断面線S14−S14から見た断面図である。図15は、図13の切断面線S15−S15から見た断面図である。本実施の形態は、前述の第4および第5形態に類似するので、共通する点については説明を省略する。
第1部材71と第2部材72とは、1パスで摩擦撹拌される。換言すれば、接合ツール25を、第1部材71と第2部材72とに没入させた状態で、接合ツール25を、その軸線L1と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路に沿って第2部材72の延在方向一端部から他端部にわたって移動させる。このような操作を1回、実行する。このとき、接合ツール25のプローブ部27は、第1壁部分73と第2壁部分74との両方に没入させる。このようにして、第1部材71と第2部材72とが摩擦撹拌され、図14および図15に示すような撹拌部分75が形成される。
第1部材71のうちで第1内面43を形成する部分と、第2部材72のうちで第1部材71の第3内面45に対向する対向部分48を除く残余の部分とが摩擦撹拌される。第2部材72の前記対向部分48は、第1部材71の前記第3内面45によって支持される。このような第2部材72の前記対向部分48によって、摩擦撹拌によって流動化した部分の第2空間部分42への侵入を確実に防ぐことができ、歩留りを向上させることができる。
第1空間部分41の深さをD1とし、撹拌部分75の深さをD2としたとき、以下の式を満たすように、前記各深さD1,D2が選ばれる。
D2≦(2/3)・D1 …(1)
第1空間部分41の開口側とは反対側の幅をW1とし、第2空間部分42の開口側の幅をW2とし、第2部材72の前記対向部分48の幅をW3としたとき、以下の式を満たすように、前記各幅W1〜W3が選ばれる。
W1−W3<(W1−W2)/2 …(2)
一例として述べると、第1空間部分41の開口側とは反対側の幅W1は6mmに選ばれ、第2空間部分42の開口側の幅W2は3mmに選ばれ、第2部材72の前記対向部分48の幅W3は5mmに選ばれる。
本実施の形態では、接合ツール25は、第1部材71から、または第2部材72のうち第1部材71によって支持される部分から、没入させる。したがって接合ツール25を没入させるときの押圧力によって、第2部材72が変形して第1部材71の開放空間13、詳しくは第2空間部分42に不所望に侵入しまうという不具合を回避することができ、歩留りを向上させることができる。
図16〜図18は、第1の比較例を説明するための図である。図16は、第1の比較例での撹拌部分78の外観を示す平面図である。図17は、図16の切断面線S17−S17から見た断面図である。図18は、図16の切断面線S18−S18から見た断面図である。第1の比較例は、前述の第6形態に類似するので、共通する点については説明を省略する。
第1の比較例では、第1空間部分41の深さをD1とし、撹拌部分78の深さをD2としたとき、以下の式を満たすように、前記各深さD1,D2が選ばれる。
D2>(2/3)・D1 …(3)
このような第1の比較例では、図17に示すように、撹拌部分78に空洞78aが生じ、これによって機械的強度が低下してしまう。また図18に示すように、摩擦撹拌によって流動化した部分が第2空間部分42へ侵入してしまう。
図19〜図21は、第2の比較例を説明するための図である。図19は、第2の比較例での撹拌部分79の外観を示す平面図である。図20は、図19の切断面線S20−S20から見た断面図である。図21は、図19の切断面線S21−S21から見た断面図である。第2の比較例は、前述の第6形態に類似するので、共通する点については説明を省略する。
第2の比較例では、第1空間部分41の深さをD1とし、撹拌部分79の深さをD2としたとき、以下の式を満たすように、前記各深さD1,D2が選ばれる。
D2≒D1 …(4)
このような第2の比較例では、図20に示すように、撹拌部分79に空洞79aが生じる。第2の比較例における撹拌部分79に生じる空洞79aは、第1比較例における撹拌部分78に生じる空洞78aよりも大きく、したがって機械的強度がさらに低下してしまう。また図21に示すように、摩擦撹拌によって流動化した部分が第2空間部分42へ侵入する。第2の比較例では、摩擦撹拌によって流動化した部分の第2空間部分42への侵入によって、第1の比較例に比べて、第2空間部分42が大幅に狭くなってしまう。さらに図21に示すように、撹拌部分79が窪んでしまう。
第1および第2の比較例では、式(1)が満たされない例である。この他に、式(2)が満たされない場合も、第2部材72が変形して第2空間部分42に侵入してしまうという不具合、および撹拌部分が窪んでしまうという不具合が生じる。接合条件が不適正である場合、たとえば接合ツール25の押圧力が大きすぎたり、接合ツール25の回転速度が高すぎたり、接合ツール25の移動速度が低すぎたりする場合も、同様の不具合が生じる。前述の第6形態では、前述のような不具合が生じないように、接合条件などが選ばれる。
図22および図23は、本発明の実施の第7形態である中空体の製造方法を説明するための図である。図22は、2パスで摩擦撹拌した場合の撹拌部分77の外観を示す平面図である。図23は、図22の切断面線S23−S23から見た断面図である。本実施の形態は、前述の第6形態に類似するので、共通する点については説明を省略する。
第1部材71と第2部材72とは、2パスで摩擦撹拌される。換言すれば、接合ツール25を、第1部材71と第2部材72とに没入させた状態で、接合ツール25を、その軸線L1と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路に沿って第2部材72の延在方向一端部から他端部にわたって移動させる。このような操作を2回、実行する。1回目のとき、接合ツール25のプローブ部27は、第1壁部分73と第2壁部分74とのいずれか一方に没入させる。2回目のとき、接合ツール25のプローブ部27は、第1壁部分73と第2壁部分74とのいずれか他方に没入させる。このようにして、第1部材71と第2部材72とが摩擦撹拌され、図22に示すような撹拌部分77が形成される。
本実施の形態では、1回目の撹拌部分の一部が、2回目でもう一度、撹拌されている。図22においては、撹拌部分77は、紙面左方の部分77aが1回目で形成され、紙面右方の部分77bが2回目で形成される。
本実施の形態では、接合ツール25は、第1部材71から、または第2部材72のうち第1部材71によって支持される部分から、退出させる。接合ツール25を退出させた個所には、接合ツール25の跡76が残る。本実施の形態では、接合ツール25を退出させる個所が前述のように選択されることによって、接合ツール25の跡76に起因する中空体の機械的強度の低下を可及的に抑えることができる。
図24は、ビードオンプレート試験の結果を示す平面図である。図24では、紙面上方から順に、試験片80を予熱することなく摩擦撹拌した場合のビード81の外観、試験片80を予熱することなくアーク溶接した場合のビード82の外観、試験片80を予熱してからアーク溶接した場合のビード83の外観を示す。図25は、ビードオンプレート試験の結果を示す断面図であり、図25(1)は試験片80を予熱することなく摩擦撹拌した場合のビード81の断面を示し、図25(2)は試験片80を予熱することなくアーク溶接した場合のビード82の断面を示し、図25(3)は試験片80を予熱してからアーク溶接した場合のビード83の断面を示す。
このビードオンプレート試験では、日本工業規格(JIS)H5302にADC12として規定されるアルミニウム合金から成る板状の試験片80を用いた。図25(3)は、具体的には、試験片80を100℃で1時間、予熱してからアーク溶接した場合を示す。アーク溶接は、具体的にはMIG溶接である。アーク溶接では、試験片は局所的に650℃(アルミニウム合金の融点)以上に加熱される。摩擦撹拌では、試験片は局所的に450℃程度に加熱される。
試験片80を予熱することなくアーク溶接した場合、図25(2)に示すように、不所望な盛り上がりが生じた。試験片80を予熱してからアーク溶接した場合は、図25(3)に示すように、試験片80を予熱することなくアーク溶接した場合に比べて、不所望な盛り上がりが抑えられた。試験片80を予熱することなく摩擦撹拌した場合、図25(1)に示すように、不所望な盛り上がりが生じなかった。このような試験結果から、摩擦撹拌が用いられる前述の実施の各形態は、アーク溶接が用いられる場合に比べて、歩留りが向上されることが判る。また試験片80を予熱してからアーク溶接する場合に比べて、予熱しない分だけ生産性が向上されることも判る。
また、試験片80を予熱してからアーク溶接した場合、図25(3)に示すように、アーク溶接部85と残余の部分との境界87は、大略的にV字状であった。試験片80を予熱することなく摩擦撹拌した場合、図25(1)に示すように、撹拌部分84と残余の部分との境界86は、大略的にU字状であった。このような試験結果から、摩擦撹拌が用いられる前述の実施の各形態は、アーク溶接が用いられる場合に比べて、閉鎖すべき開口が確実に閉鎖されることが判る。
図26は、エンジン本体の一部を構成する部品であるシリンダブロック91の斜視図である。図27は、図26のS25を拡大して示す図である。中空体であるシリンダブロック91は、円筒状のシリンダ部分92を含む。シリンダ部分92は、中空部であるウォータジャケット93を有する。ウォータジャケット93には、冷却装置によって液体である冷却水が循環され、これによってエンジン本体の過熱が防がれる。
このようなシリンダブロック91は、前述の第1〜第7形態の製造方法を用いて製造することができる。シリンダブロック91は、第1部材と第2部材とが摩擦撹拌されて、製造される。第1部材は、前述の第1〜第7形態の第1部材に相当し、第2部材は、前述の第1〜第7形態の第2部材に相当する。図27には前述の第7形態のように2パスで摩擦撹拌した場合の撹拌部分94を示す。
前述の実施の各形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。第1部材の材質は、アルミニウム合金に限定されない。第1部材の材質は、亜鉛合金、マグネシウム合金および銅合金のうちから選択されてもよい。第2部材の材質についても同様である。第1部材の材質と第2部材の材質とは、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
第1および第2部材は、ダイカスト法以外の方法、たとえば重力鋳造法で成形されてもよい。また第1および第2部材は、切削加工などによって実現されてもよい。
第1部材と第2部材とは、接合ツールを、第1部材と第2部材とに没入させた状態で、接合ツールを、前述の第1〜第7形態のように移動させることなく、その軸線と一致する回転軸線まわりに回転させることによって、摩擦撹拌されてもよい。この場合も、第1部材と第2部材とが摩擦撹拌されるとき、第1部材と第2部材とが互いに係合することによって、第2部材の第1部材に対する前記接合ツールの回転方向への変位が阻止される。このように第2部材の第1部材に対する前記接合ツールの回転方向への変位が阻止されるので、第1部材と第2部材とを確実に摩擦撹拌することができる。
前述の第4〜第7形態では、第2部材として、図7または図8に示すような断面形状をした第2部材が用いられてもよい。
前述の第1〜第7形態の製造方法は、シリンダブロックの製造に限らず、中空部に液体である油を循環させる油圧機器部品の製造にも用いられることができる。
本発明の実施の第1形態である中空体11の製造方法を説明するための斜視図である。 図1に示す中空体11の製造方法を説明するためのフローチャートである。 第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌するために用いられる接合ツール25を示す斜視図である。 第1部材12と第2部材15とを摩擦撹拌している状態を示す斜視図である。 第1部材12と第2部材15との摩擦撹拌を詳細に説明するための断面図である。 図5に続いて第1部材12と第2部材15との摩擦撹拌を説明するための断面図である。 本発明の実施の第2形態である中空体の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の実施の第3形態である中空体の製造方法を説明するための断面図である。 本発明の実施の第4形態である中空体51の製造方法を説明するための斜視図である。 図9に示す中空体51の製造方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の実施の第5形態である中空体61の製造方法を説明するための斜視図である。 本発明の実施の第6および第7形態、ならびに第1および第2の比較例で用いられる第1および第2部材71,72を示す平面図である。 1パスで摩擦撹拌した場合の撹拌部分75の外観を示す平面図である。 図13の切断面線S14−S14から見た断面図である。 図13の切断面線S15−S15から見た断面図である。 第1の比較例での撹拌部分78の外観を示す平面図である。 図16の切断面線S17−S17から見た断面図である。 図16の切断面線S18−S18から見た断面図である。 第2の比較例での撹拌部分79の外観を示す平面図である。 図19の切断面線S20−S20から見た断面図である。
図19の切断面線S21−S21から見た断面図である。 2パスで摩擦撹拌した場合の撹拌部分77の外観を示す平面図である。 図22の切断面線S23−S23から見た断面図である。 ビードオンプレート試験の結果を示す平面図である。 ビードオンプレート試験の結果を示す断面図である。 エンジン本体の一部を構成する部品であるシリンダブロック91の斜視図である。 図26のS25を拡大して示す図である。 エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック1を示す斜視図である。
符号の説明
11,51,61 中空体
12,52,71 第1部材
13 開放空間
14 開口
15,53,72 第2部材
19 嵌合部
20 突出部
25 接合ツール
26 ショルダ部
27 プローブ部
41 第1空間部分
42 第2空間部分
43 第1内面
44 第2内面
45 第3内面

Claims (6)

  1. 外部に臨んで開放する開放空間を規定する凹部を有する第1部材と、第1部材の前記開放空間の開口を塞ぐことができる第2部材とを、準備し、
    第1部材の前記開放空間の開口を第2部材によって塞いだ状態で、第1部材と第2部材とを摩擦撹拌することによって、第1部材の前記開放空間の開口を閉鎖する中空体の製造方法であって、
    第1部材の前記開放空間は、開口側の第1空間部分と、第1空間部分を除く残余の第2空間部分とを含み、
    前記第2部材は、前第1空間部分に嵌り込むことができる嵌合部と、この嵌合部に連なり、前第1空間部分に前記嵌合部が嵌り込んだ状態で前記開放空間の開口よりも外方に突出する突出部とを有し、
    前記第1空間部分の深さをD1とし、摩擦撹拌によって形成される撹拌部分の深さをD2とするとき、D2≦(2/3)・D1の関係式を満たすようにして、前記第1部材の第1空間部分に臨む第1内面と、第2部材の嵌合部とを摩擦撹拌することを特徴とする中空体の製造方法。
  2. 1部材の凹部は、前記第1内面と、前記第2空間部分に臨む第2内面と、前記第1内面と第2内面との間に形成され、前記開放空間の開口を介して外部に臨む第3内面とを含み
    第1部材のうちで第1内面を形成する部分と、第2部材のうちで第1部材の第3内面および第2空間部分に対向する対向部分を除く残余の部分とが摩擦撹拌され、第2部材の前記対向部分は、第1部材の前記第3内面によって支持されることを特徴とする請求項1記載の中空体の製造方法。
  3. 第1部材のうちで第1内面を形成する部分と、第2部材のうちで第1部材の第3内面および第2空間部分に対向する対向部分を除く残余の部分とを1パスで摩擦撹拌することによって、前記開放空間の開口を閉鎖して閉鎖空間を形成し、さらに、前記閉鎖空間と外部とを連通する貫通孔を形成することを特徴とする請求項2記載の中空体の製造方法。
  4. 第1部材と第2部材とは、接合ツールを、第1部材と第2部材とに没入させた状態で、接合ツールを、その軸線と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路に沿って移動させることによって、摩擦撹拌され、
    接合ツールは、第1部材から、または第2部材のうち第1部材によって支持される部分から、没入させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の中空体の製造方法。
  5. 第1部材と第2部材とは、接合ツールを、第1部材と第2部材とに没入させた状態で、接合ツールを、その軸線と一致する回転軸線まわりに回転させるとともに、予め定める経路に沿って移動させることによって、摩擦撹拌され、
    接合ツールは、第1部材から、または第2部材のうち第1部材によって支持される部分から、退出させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の中空体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の中空体の製造方法で製造される中空体。
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