JP4897437B2 - 低分子化合物溶液循環型フローnmr装置 - Google Patents
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Description
特定の低分子化合物と高分子化合物の結合あるいは相互作用は、多くの方法で検出されている。特に高分子化合物あるいは低分子化合物の分子構造の情報を直接観測できる核磁気共鳴を用いた測定(以下、NMR測定という。)では、化合物濃度に対する測定スペクトルの変化から高分子化合物と低分子化合物の解離定数、反応速度の評価だけでなく化合物の構造に基づいた相互作用の解析が可能である。NMR測定によるタンパク質と低分子化合物の相互作用を測定する方法の記載については、例えば、特許文献1を参照のこと。
溶液がプローブ24にセットされた容器10を満たし送液ポンプ48の入力側へ達した後は、常に一定体積の溶液が容器内を満たしている。
(バッファー液の注水)
送液ポンプ48を稼動させ、バッファー液を注水バルブ46から取り入れる。バッファー液は第1の低分子化合物溶液移送管181を経由して混合用フィルタ部32へ送られる。混合用フィルタ32では低分子化合物溶液のみが通過する部分551、552から中空状フィルタ541,542を通過して、混合溶液が通過する部分56に達し、排出口50から出て、第1試料移送管161を経て容器10に達する。その後、バッファー液は第2試料移送管162、分離用フィルタ34、第2の低分子化合物溶液移送管182を通って制御部30の送液ポンプ48の入力側へ達する。
(低分子化合物の注入)
低分子化合物の注入時には、まず、送液ポンプ48による溶液の循環を行い溶液の流れを移送管の中に作る。低分子化合物注入部70には予め注入用の低分子化合物溶液をセットしておき、測定者が設定した体積だけ溶液を注入する。注入した溶液は流れに沿って送液ポンプ48に達し、第1の低分子化合物溶液移送管181を経由して混合用フィルタ部32へ送られる。
混合用フィルタ32では低分子化合物溶液注入口から、低分子化合物溶液のみが通過する部分551、552に送られ、中空状フィルタ541,542を通過して、混合溶液が通過する部分56に達する。低分子化合物溶液のみの注入時には混合溶液が通過する部分56には低分子化合物溶液のみが存在する。排出口50から出た溶液は第1試料移送管161を経て容器10に達する。
このとき、プローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30での試料通過領域では、低分子化合物濃度が増加した状態となる。
(低分子化合物濃度の希釈)
低分子化合物濃度の希釈は低分子化合物の注入と同様な動作で、注入溶液として低分子化合物を含まない溶媒を用いることで実現される。低分子化合物を含まない溶液の注入時には、まず、送液ポンプ48による溶液の循環を行い溶液の流れを移送管の中に作る。低分子化合物注入部70には予め注入用の低分子化合物を含まない溶液をセットしておき、測定者が設定した体積だけ溶液を注入する。注入した溶液は送液ポンプ48に達し、第1の低分子化合物溶液移送管181を経由して混合用フィルタ部32へ送られる。
注入と同時に余剰溶液が発生し、試料通過領域全体の圧力が上昇する。注入による溶液の循環送液時からの圧力上昇を圧力計49で確認して、排水バルブ44を開き余剰溶液を排出させる。余剰溶液の排出が終了すると圧力計の示す圧力は循環送液時の圧力に戻る。この圧力の戻りを確認して、排水バルブ44を閉め、定常的な循環送液を行う。
このとき、プローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30での試料通過領域では、低分子化合物濃度が減少した状態となる。上記の注入動作を複数回繰り返すことで、NMR測定に用いる試料溶液内の低分子化合物濃度を減少させることが出来る。
(試料溶液の注入)
送液ポンプ48を稼動させ、プローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30の循環路全体に一定流を発生させる。高分子化合物に適した溶媒に高分子化合物を含んだ試料溶液を試料溶液注入部90から、注入する。混合溶液が通過する部分56では、既にある低分子化合物溶液と注入した高分子化合物溶液の混合が行われる。注入により溶液の圧力が上昇するが、中空状フィルタ541,542は高分子化合物を通さないので、高分子化合物を含んだ溶液は一定流に沿って、プローブにセットされた容器10へと移動する。容器10は試料移送管161,162と比べて内径が大きいため試料移送管162を通過した溶液は容器10の所でさらに混合される。
(試料溶液の保持)
高分子化合物を含む混合溶液が容器10に達し、その内部を満たしたときに送液ポンプ48を停止する。ポンプ停止により溶液に働く圧力は低下し、溶液の循環流は停止する。容器10は試料移送管161,162と比べて内径が大きいため、試料移送管161,162を溶液が通過する際の抵抗が大きく、ポンプ停止後には容器10内部の溶液は保持されている。
(NMR測定)
高分子化合物を含んだ試料溶液をプローブにセットされた容器内に満たしたのち、磁石により均一静磁場が試料に加えられた状況下でNMR測定を試料に対して行う。
(試料溶液の排出)
送液ポンプ48を稼動させ、プローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30の循環路全体に一定流を発生させる。発生した一定流により容器10内部に保持された混合溶液は試料移送管162を通って、フィルタ部34へ達する。混合溶液が通過する部分66から、中空状フィルタ641,642を通過した低分子化合物溶液は61を通過して182へと排出される。高分子化合物を含んだ溶液は試料排出口62から試料排出用シリンジ91へと移動する。
図1に示したように、核磁気共鳴プローブ24は試料に磁場を加えるための磁石201,202の内部に配置されたボア221,222内に固定されている。試料の一定量を保持する容器10は核磁気共鳴プローブ24の中で、核磁気共鳴信号を検出する検出コイル28との最適な位置関係にセットされている。一般に容器10はガラスによって作成することが望ましい。容器10は排出部12を介して第2の試料移送管162と接続されている。また、容器10は注入口14を介して第1の試料移送管161と接続されている。
第2の試料移送管162は分離用フィルタ部34と接続される。分離用フィルタ部34は注入口60、低分子化合物溶液排出口61、試料排出口62、中空状フィルタ物質641,642、低分子化合物溶液のみが通過する部分651,652、混合溶液が通過する部分66を有する。
注入口60から注入された溶液は、混合溶液が通過する部分66で中空状フィルタ物質641,642に接する。中空状フィルタ物質は高分子化合物を通過させないので、部分651,652には高分子化合物が存在しない。高分子化合物を含む溶液は部分66に繋がれた試料排出口62から排出することができる。低分子化合物を含む溶液は部分651,652に繋がれた低分子溶液排出口61から排出される。
中空状フィルタ物質641,642はタンパク質などの高分子化合物と他の成分を分離できるものである限り、特に限定はされないが、好ましくは、タンパク質は通過できない程度であって低分子化合物を含む他の成分が通過できる程度の径の細孔を持った中空状物質を用いる。
制御部30では、上記注入口40と低分子化合物溶液注入部70、排水バルブ44、注水バルブ46、送液ポンプ部48、圧力計49、上記低分子化合物濃度制御部の排出口42が接続されており、
上記低分子化合物溶液注入部70は1つあるいは複数のシリンジポンプと制御する電子機器で構成され、
上記送液ポンプ部48は、加圧により溶液を送液するポンプと上記送液ポンプを制御する電子機器で構成される。
制御部30の排出口42は第1低分子溶液移送管181を介して混合用フィルタ部32の低分子化合物溶液注入口51に接続される。
混合用フィルタ部32は排出口50、低分子化合物溶液注入口51、試料溶液注入口52、中空状フィルタ物質541,542、低分子化合物溶液のみが通過する部分551,552、混合溶液が通過する部分56を有する。
移送管161,162,181,182の材質は試料溶液の性質によって選択すべきである。タンパク質などの生体関連高分子化合物に対する測定では、ポリエチレンエチレンケトン(PEEK)、Tefzel、Kel−F、フューズドシリカが用いられる事が多い。また試料移送管の内径は0.5mmから0.065mmの範囲であることが望ましい。
容器10はNMR測定に十分な試料を溜める必要がある。高分子化合物としてタンパク質を用いる場合には400μLから100μLが好ましい。
プローブの検出感度の向上を行い、磁場均一度の維持が可能な場合には100μL以下でも計測可能である。
計測開始100後には、注入する純粋およびバッファー液の脱気102を行う。
溶液の脱気する方法はデガッサーを注水バルブ46または循環ポンプ48に設置して通過する溶液から溶存空気を除去するか、注入する溶液を予め減圧させて気泡を発生させる減圧による脱気処理を用いてもよい。減圧にはアスピレーター、例えば東京理化器械製アスピレーターと溶液を入れたナス型フラスコなどの耐圧性のある容器を接続し、フラスコをBranson製超音波バスB−220Hに入れて、超音波を当てて60分間脱気処理を行うとよい。
注水バルブ46に脱気処理済の純水が入った容器を接続し、循環ポンプ48によって溶液を吸引し排出口42から排出し、移送管181へと送液する。送液の間、排水バルブ44を開き、高分子化合物溶液の注入口52および排出口62は閉じておく。純水は第1の低分子化合物溶液移送管181を経由して混合用フィルタ部32へ送られる。混合用フィルタ32では低分子化合物溶液のみが通過する部分551、552から中空状フィルタ541,542を通過して、混合溶液が通過する部分56に達し、排出口50から出て、第1試料移送管161を経て容器10に達する。その後、純水は第2試料移送管162、分離用フィルタ34、第2の低分子化合物溶液移送管182を通って制御部30の排水バルブ44に達し、外へ排出される。排水バルブ44からの純水に気泡等が混入しなくなるまで、純水の通水を行う。注水バルブ46からの注水を継続したまま、排水バルブ44を閉じると、純水は送液ポンプ48の入力側へ達し、圧力が増大する。この後、ポンプ48を一旦停止し、注水バルブ46を閉じると循環部分である、プローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30での試料通過領域全体は純水で満たされている。
脱気処理102で処理したバッファー液の容器を注水バルブ46に接続し、純水の注水作業104と同様の作業を行うことで、循環部分であるプローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30での試料通過領域全体がバッファー液で満たされる。
まず、送液ポンプ48による溶液の循環を行い溶液の流れを移送管の中に作る。低分子化合物注入部70に注入用の低分子化合物溶液をセットし、測定者が設定した体積だけ溶液を注入する。注入期間の間、排水バルブ44を開けておく。注入にはシリンジポンプを用いると、測定者が設定した注入体積、注入速度で、溶液を正確に注入することが可能である。注入した溶液は流れに沿って送液ポンプ48に達し、第1の低分子化合物溶液移送管181を経由して混合用フィルタ部32へ送られる。混合用フィルタ32では低分子化合物溶液注入口から、低分子化合物溶液のみが通過する部分551、552に送られ、中空状フィルタ541,542を通過して、混合溶液が通過する部分56に達する。低分子化合物溶液のみの注入時には混合溶液が通過する部分56には低分子化合物溶液のみが存在する。排出口50から出た溶液は第1試料移送管161を経て容器10に達する。注入と同時に余剰溶液が発生し、排水バルブ44から排出される。余剰溶液の排出が終了すると圧力計の示す圧力は循環送液時の圧力に戻る。この圧力の戻りを確認して、排水バルブ44を閉め、定常的な循環送液を行う。このとき、プローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30での試料通過領域では、低分子化合物濃度が増加した状態になり、定常的な循環送液を5周期程度実施すると内部の濃度はほぼ一定になる。
低分子化合物を含むあるいは含まない溶液の注入動作において、注入溶液に一定濃度のロック溶媒を入れておくことで、一連の動作において容器10内のロック溶媒の濃度を一定にすることが可能である。
定常的な循環送液を5周期程度実施すると内部の濃度はほぼ一定になるが、更に循環回数を重ねると更に濃度の均一化が可能である。
低分子化合物溶液にロック溶媒を混入しておくと、NMR計測でのロック信号を利用して磁場均一度調整(シミング)を行うことが出来る。また、ロック信号を用いずに、低分子化合物由来信号を用いてシミングを行うことも可能である。
低分子化合物由来のNMR信号、スペクトル計測を行って、低分子化合物濃度が所定の濃度と異なると判断した場合には、上記低分子化合物溶液の注入、濃度調整108、濃度均一化110の作業を行い、濃度調整を行うことができる。
送液ポンプ48を稼動させ、プローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30の循環路全体に一定流を発生させる。高分子化合物を含んだ溶液を試料溶液注入部90から測定者が指定した体積を注入する。混合溶液が通過する部分56では、既にある低分子化合物溶液と注入した高分子化合物溶液の混合が行われる。中空状フィルタ541,542は高分子化合物を通さないので、高分子化合物を含んだ溶液は一定流に沿って、プローブにセットされた容器10へと移動する。容器10は試料移送管161,162と比べて内径が大きいため試料移送管161を通過した溶液は容器10の所でさらに混合される。
注入する高分子化合物溶液の体積、流量および領域56、移送管161、容器10の体積は既知なので、注入後の経過時間から混合溶液が容器10を満たす時間を判断できる。その容器10を満たす時間に送液ポンプ48を停止する。ポンプ停止により溶液に働く圧力は低下し、溶液の循環流は停止する。容器10は試料移送管161,162と比べて内径が大きいため、容器10と試料移送管161,162を溶液が通過する際の抵抗差から、容器10内部の溶液は保持されている。
高分子化合物を含んだ試料溶液をプローブにセットされた容器内に満たしたのち、磁石により均一静磁場が試料に加えられた状況下でNMR測定を試料に対して行う。
高分子化合物溶液の排出128は次のように行う。
送液ポンプ48を稼動させ、プローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30の循環路全体に一定流を発生させる。発生した一定流により容器10内部に保持された混合溶液は試料移送管162を通って、フィルタ部34へ達する。混合溶液が通過する部分66から、中空状フィルタ641,642を通過した低分子化合物溶液は61を通過して182へと排出される。試料排出口62に試料排出用シリンジ91を接続し、試料排出口62を開けると、高分子化合物を含んだ溶液は試料排出口62から試料排出用シリンジ91へと移動し、高分子化合物溶液が排出される。
計測すべき高分子化合物溶液の条件すべての計測が行われたどうかの判断を行う。判断方法としては、計測前に計測すべき高分子化合物溶液の条件の数を記録しておき、実施した計測条件の数が記録してある計測すべき高分子化合物溶液の条件の数と等しいかを毎回比較する方法がある。判断の結果、計測すべき高分子化合物溶液の条件すべての計測が行われた場合には低分子化合物濃度変化または交換の反復終了の判断140へと進める。そうでない場合には、低分子化合物濃度調整120へと戻り高分子化合物溶液の注入、NMR計測を行う。また、測定者が反復終了と判断した時点で終了する。
計測すべき低分子化合物溶液の条件すべての計測が行われたどうかの判断を行う。判断方法としては、計測前に計測すべき低分子化合物溶液の条件(濃度変化回数、低分子化合物種類など)の数を記録しておき、実施した計測条件の数が記録してある計測すべき低分子化合物溶液の条件の数と等しいかを毎回比較する方法がある。判断の結果、計測すべき低分子化合物溶液の条件すべての計測が行われた場合には低分子化合物溶液の排出150へと進める。そうでない場合には、低分子化合物濃度の注入108へと戻り低分子化合物濃度の調整を行い、繰り返し計測を進める。また、測定者が反復終了と判断した時点で終了する。
脱気処理102で処理したバッファー液の容器を注水バルブ46に接続し、純水の注水作業104と同様の作業を行うことで、循環部分であるプローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30での試料通過領域全体がバッファー液で満たされる。このとき、循環部分にある低分子化合物溶液は排水バルブ44から排出される。
脱気処理102で処理した純水の容器を注水バルブ46に接続し、純水の注水作業104と同様の作業を行うことで、循環部分であるプローブ24にセットされた容器10、試料移送管全体161,162,181,182、フィルタ部32,34および制御部30での試料通過領域全体が純水で満たされ、バッファー液は排水バルブ44から排出される。
また、測定対象の高分子化合物に合わせて好適なバッファー溶媒、ロック溶媒を選択して測定するのも本発明の実施例の範囲である。
高分子化合物の中でもタンパク質は酵素反応としての性質を有することが知られている。この酵素反応はタンパク質を触媒として基質を生成物へと変化させる反応であり、タンパク質は特定の基質とのみ反応する。この反応は阻害剤と呼ばれる化合物により反応が阻害される。阻害剤はタンパク質の酵素反応を制御する化合物であり、その探索は産業上有用である。
このタンパク質と薬剤の相互作用を調べる際には、1種類のタンパク質の相互作用を調べるのではなく、活性部位(化合物、基質との結合部分)の活性/失活制御を行ったタンパク質の特定残基を改変した複数のタンパク質の相互作用を、低分子化合物の種類、濃度を変化させて調べることが有用である。
NMR計測は低分子化合物溶液あるいはタンパク質溶液に対して用いられるパルスシーケンスが適用範囲である。
溶媒に水分子(H2O)を含まない場合には、WATERGATE法、DPFGSE法、Water−Flipback法を用いなくてもよい。
NMR計測後、手順128で測定したタンパク質を取り出し、次のタンパク質を入れる準備である手順120を行い、次のタンパク質を手順122で注入する。
タンパク質は溶液のpH値、温度、溶液中低分子化合物濃度によって会合を引き起こすことが知られている。タンパク質の会合、凝集が生じるとタンパク質機能が変化し、新たな活性が生じる場合がある。このようなタンパク質の凝集による変化はNMR計測で得られるスペクトル変化として検出される。
例えば、リゾチームはアルギニンなどのアミノ酸が存在すると凝集することが知られている。このように単一種類タンパク質に対する特定低分子化合物の作用を調べる場合には、図3の手順の中で低分子化合物の注入、濃度調整108において、アルギニンなどのアミノ酸を注入する。
その後、図3に示す手順に従い計測を進め、高分子化合物溶液の注入122では標的タンパク質を注入する。
得られたNMRスペクトルの標的タンパク質由来のピークの線幅、ピーク高さを、低分子化合物溶液条件の違い毎に記録する。
タンパク質の会合、凝集が生じると溶液中において1分子で運動していたタンパク質が複数のタンパク質が結合して運動し始める。このため、運動に対する質量が大きくなり、溶液中のランダムな運動が緩慢になり、タンパク質由来ピークの線幅が増大し、ピーク高さが低くなる。
先に記録したデータを比較して、低分子化合物濃度に対するピーク線幅の増大、高さの減少が生じているかを判断する。変化が生じ始めた低分子化合物濃度が、会合、凝集を生じさせる溶液条件である。
本実施例の範囲は、複数種類タンパク質溶液、複数種類低分子化合物溶液に対する計測も含まれる。
上記核磁気共鳴プローブへ電磁波を送るあるいは上記核磁気共鳴プローブから電磁波を受け取る送受信システムを有し、上記低分子化合物濃度制御部、上記第1低分子化合物溶液移送管、上記混合用フィルタ部、上記第1試料移送管、上記容器、上記第2試料移送管、上記分離用フィルタ部、上記第2低分子化合物溶液移送管の間で循環的な溶液移送を行うための手段、低分子化合物溶液を注入する手段、低分子化合物濃度を制御する手段、
試料溶液を注入する手段、試料溶液を計測部に保持する手段、試料溶液を排出する手段、
試料溶液の核磁気共鳴計測を行う手段、を有することを特徴とする装置。
12…容器の排出口、
14…容器の注入口、
161…第1試料移送管、
162…第2試料移送管、
181…第1低分子化合物溶液移送管、
182…第2低分子化合物溶液移送管、
201,202…磁石、
221,222…ボア、
24…核磁気共鳴プローブ、
26…送受信システム、
28…プローブコイル、
30…低分子化合物濃度制御部、
32…混合用フィルタ部、
34…分離用フィルタ部、
40…低分子化合物濃度制御部の注入口、
42…低分子化合物濃度制御部の排出口、
44…排水バルブ、
46…注水バルブ、
47…デガッサー、
48…送液ポンプ、
49…圧力計、
50…混合用フィルタ部の排出口、
51…混合用フィルタ部の試料注入口、
52…混合用フィルタ部の低分子化合物溶液注入口、
541,542…中空状フィルタ、
551,552…低分子化合物のみが通過する部分、
56…低分子化合物と試料の混合溶液が通過する部分、
60…分離用フィルタ部の注入口、
61…分離用フィルタ部の低分子化合物排出口、
62…分離用フィルタ部の試料排出口、
641,642…中空状フィルタ、
651,652…低分子化合物のみが通過する部分、
66…低分子化合物と試料の混合溶液が通過する部分、
70…低分子化合物注入部、
90…試料注入用シリンジ、
91…試料排出用シリンジ、
100…計測開始、
102…純水、バッファー液の脱気、
104…循環部分への純水の注水、
106…バッファー液へ交換、
108…低分子化合物溶液の注入、濃度調整、
110…濃度均一化、
112…磁場均一度調整、
120…低分子化合物溶液の注入、濃度調整、
122…高分子化合物溶液の注入、
124…NMR計測部への保持、
126…NMR計測、
128…高分子化合物溶液の排出、
130…高分子化合物溶液交換の反復終了の判断、
140…低分子化合物溶液濃度変化または交換の反復終了の判断、
150…低分子化合物溶液の排出、
152…純水への交換、
160…計測終了。
Claims (13)
- 測定を行なう試料に磁場を加えるための磁石と、
上記磁石の中空部に配置されたボアと、
上記ボア内に少なくともその本体の一部が配置された核磁気共鳴プローブと、
上記核磁気共鳴プローブの一部に設置され上記試料を注入する試料注入口および排出を行なう試料排出口を有する容器を具備してなるNMR計測部と、
上記試料注入口に接続され上記試料を上記NMR計測部に移送する第1の試料移送管と、
上記第1の試料移送管に接続され試料溶液と低分子化合物溶液とを混合して上記試料の生成を行なう混合用フィルタ部と、
上記NMR計測部へ電磁波を送信、あるいは上記核磁気共鳴プローブから電磁波を受信する送受信装置と、を有し、
上記混合用フィルタ部に接続された上記第1の試料移送管を介して上記NMR計測部に注入された上記試料に対して上記電磁波を照射し核磁気共鳴測定を行ない、
上記混合用フィルタ部は、
上記低分子化合物溶液と上記試料溶液とが混合されてなる混合溶液が通過する第1の混合溶液通過部と、
上記第1の混合溶液通過部の少なくとも一部を囲むように接して設けられた上記低分子化合物溶液以外を透過しない第1のフィルタと、
上記第1のフィルタの少なくとも一部を囲むように接して設けられた上記低分子化合物溶液を移送する第1の低分子化合物溶液移送部と、を有し、
上記第1の混合溶液通過部は、その一端に取り付けられた上記試料溶液を注入する試料溶液注入口と、その他端に取り付けられ上記第1の試料移送管に接続された上記混合溶液を排出する混合溶液排出口と、上記一端と上記他端との間に上記低分子化合物溶液が注入される第1の低分子化合物溶液注入口とを有することを特徴とする低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 測定を行なう試料に磁場を加えるための磁石と、
上記磁石の中空部に配置されたボアと、
上記ボア内に少なくともその本体の一部が配置された核磁気共鳴プローブと、
上記核磁気共鳴プローブの一部に設置され上記試料を注入する試料注入口および排出を行なう試料排出口を有する容器を具備してなるNMR計測部と、
上記試料注入口に接続され上記試料を上記NMR計測部に移送する第1の試料移送管と、
上記第1の試料移送管に接続され試料溶液と低分子化合物溶液とを混合して上記試料の生成を行なう混合用フィルタ部と、
上記NMR計測部へ電磁波を送信、あるいは上記核磁気共鳴プローブから電磁波を受信する送受信装置と、を有し、
上記混合用フィルタ部に接続された上記第1の試料移送管を介して上記NMR計測部に注入された上記試料に対して上記電磁波を照射し核磁気共鳴測定を行ない、
上記混合用フィルタ部は、
上記低分子化合物溶液と上記試料溶液とが混合されてなる混合溶液が通過する第1の混合溶液通過部と、
上記第1の混合溶液通過部の少なくとも一部を囲むように接して設けられた上記低分子化合物溶液以外を透過しない第1のフィルタと、
上記第1のフィルタの少なくとも一部を囲むように接して設けられた上記低分子化合物溶液を移送する第1の低分子化合物溶液移送部と、を有し、
上記第1の混合溶液通過部は、その一端に取り付けられた上記試料溶液を注入する試料溶液注入口と、その他端に取り付けられ上記第1の試料移送管に接続された上記混合溶液を排出する混合溶液排出口と、上記一端と上記他端との間に上記低分子化合物溶液が注入される第1の低分子化合物溶液注入口とを有し、
上記NMR計測部への注入は、
上記第1の低分子化合物溶液注入口から上記低分子化合物溶液の注入を行いながら、上記試料溶液注入口に設けられた注入手段によって加圧して上記第1の混合溶液通過部に上記試料溶液を送りこみ、上記第1の混合溶液通過部において上記試料溶液と上記低分子化合物溶液とが混合されてなる上記試料を、上記試料を搬送する搬送溶液の流れに沿って上記容器へ送り込むことを特徴とする低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 上記第1の試料移送管の内径が、上記NMR計測部を構成する容器の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。
- 上記核磁気共鳴測定は、
上記NMR計測部に上記試料を保持しながら、上記電磁波の照射により上記試料から放出される核磁気共鳴信号を上記核磁気共鳴プローブを用いて検出し、
上記検出の終了後、上記試料を上記NMR計測部の容器から排出することを特徴とする請求項1または2記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 上記試料の保持は、
上記第1の低分子化合物溶液注入口から上記低分子化合物溶液を注入し、上記試料が上記NMR計測部の容器に充填された時点で、上記搬送溶液の流れを停止することにより、上記試料を上記NMR計測部の容器に保持することを特徴とする請求項4記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 上記NMR計測部の容器からの排出は、上記第1の低分子化合物溶液注入口から上記低分子化合物溶液を注入することにより、上記容器外へ上記試料を排出することを特徴とする請求項4記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。
- 上記試料排出口に接続された第2の試料移送管と、
上記第2の試料移送管に接続され上記試料に混合された上記試料溶液と上記低分子化合物溶液との分離を行なう分離用フィルタ部と、
上記試料を排出する手段とを有することを特徴とする請求項1または2記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 上記分離用フィルタ部は、
上記低分子化合物溶液と上記試料溶液との混合溶液が通過する第2の混合溶液通過部と、
上記第2の混合溶液通過部の少なくとも一部を囲むように接して設けられた上記低分子化合物溶液以外を透過しない第2のフィルタと、
上記第2のフィルタの少なくとも一部を囲むように接して設けられた上記低分子化合物溶液を移送する第2の低分子化合物溶液移送部と、を有し、
上記第2の混合溶液通過部は、その一端に取り付けられた上記試料溶液を排出する試料溶液排出口と、その他端に取り付けられ上記第2の試料移送管に接続された上記混合溶液を注入する混合溶液注入口と、上記一端と上記他端との間に上記混合溶液を分離し上記低分子化合物溶液を排出する低分子化合物溶液排出口とを有することを特徴とする請求項7記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 上記試料の排出は、
上記混合用フィルタ部の低分子化合物溶液注入口から上記低分子化合物溶液を注入することにより、上記混合溶液が上記分離用フィルタ部で上記試料を含む溶液と上記試料を含まない低分子化合物溶液に分離され、上記試料を含む溶液を上記分離用フィルタ部の試料溶液排出口から取り出すことを特徴とする請求項7記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 上記混合溶液中の低分子化合物濃度を制御し上記低分子化合物溶液を送液する低分子化合物濃度制御部と、
上記低分子化合物濃度制御部の排出口と上記混合用フィルタ部の低分子化合物溶液注入口とに接続された第1の低分子化合物溶液移送管と、
上記分離用フィルタ部の低分子化合物溶液排出口と上記低分子化合物濃度制御部の注入口とに接続された第2の低分子化合物溶液移送管と、
上記低分子化合物濃度制御部に接続され低分子化合物溶液を注入する低分子化合物溶液注入手段と、
上記低分子化合物濃度制御部に接続され上記試料溶液および上記低分子化合物溶液を搬送する搬送溶液を注入する搬送溶液注入手段と、を有し、
上記低分子化合物溶液は、上記低分子化合物溶液注入手段により上記第1の低分子化合物溶液移送管を介して上記混合用フィルタへ送液され、上記混合用フィルタで混合された上記試料溶液と共に上記NMR計測部を経由して上記分離用フィルタへ送液され、上記分離用フィルタで上記試料溶液と分離されて上記低分子化合物濃度制御部へ送液されることにより、循環的な上記低分子化合物溶液の移送が行われることを特徴とする請求項7記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 上記低分子化合物濃度制御部は、
上記第2の低分子化合物溶液移送管に接続され上記低分子化合物溶液が注入される注入口と、
上記低分子化合物溶液を上記第1の低分子化合物溶液移送管に排出する排出口と、
上記注入口と上記排出口とを接続する溶液移送管と、
上記溶液移送管に接続され上記低分子化合物溶液を注入する低分子化合物溶液注入部と、
上記溶液移送管に接続され上記低分子化合物溶液の排出を調整する排水バルブと、
上記溶液移送管に接続され注水の調整を行なう注水バルブと、
上記溶液移送管中の溶液を加圧により送液する送液ポンプと、
上記溶液の流量を測定する圧力計と、を有し、
上記低分子化合物溶液注入部は、少なくとも一つのシリンジポンプを具備し、上記シリンジポンプからの上記低分子化合物溶液の注入が電子機器によって制御され、
上記送液ポンプは、その注入口にデガッサーの取り付けが可能であり、電子機器によって制御されることを特徴とする請求項10記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。 - 上記試料溶液は、上記試料溶液注入口から上記混合用フィルタの上記第1の混合溶液通過部へ注入され、上記第1の試料移送管を介して上記NMR計測部へ移送され、上記第2の試料移送管を介して上記分離用フィルタの上記第2の混合溶液通過部へ注入され、上記第2の混合溶液通過部の上記試料溶液排出口へ移送されて回収されることを特徴とする請求項10記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。
- 上記低分子化合物溶液の注入は、上記循環的な溶液移送を行いながら、上記低分子化合物濃度制御部の上記低分子化合物溶液注入部から低分子化合物を含む溶液を注入し、上記圧力計の値が定常循環状態の圧力に戻るまで、上記排水バルブから溶液を排出することを特徴とする請求項11記載の低分子化合物溶液循環型フローNMR装置。
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