JP4896703B2 - ニッケル電気めっき膜およびその製法 - Google Patents

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Description

本発明は、ニッケル電気めっき膜およびその製法に関するものである。
ニッケル電気めっき膜は、各種の用途に用いられている。例えば、自動車用の燃料パイプとしては、燃料低透過性を向上させるために、その燃料パイプを構成する周壁(樹脂層)の外側に、金属めっき層が形成されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この金属めっき層は、内側の無電解めっき膜と外側の電気めっき膜とからなっている。
特開平8−91063号公報
しかしながら、上記無電解めっき膜および電気めっき膜は、一般に、伸び率が低い(7%以下)ため、上記燃料パイプでは、その組み付け時の変形や使用中の振動による変形に追従できず、電気めっき膜に割れが生じることがある。この割れが生じると、燃料低透過性が悪化する。
そこで、上記変形に追従できるようにするためには、伸び率が高い(8%以上)電気めっき膜を形成する必要がある。また、その電気めっき膜の形成材料としては、耐食性を高くする観点から、ニッケルを用いることが好ましい。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、伸び率が8%以上と高いニッケル電気めっき膜およびその製法の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、合成樹脂,ゴムおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一つからなる部材の表面に無電解めっき膜を介して形成されるニッケル電気めっき膜であって、そのニッケル電気めっき膜のビッカース硬さが210以下、平均結晶粒径が2.5μm以上、X線回折により求められる(111)面のピーク強度〔A〕と(200)面のピーク強度〔B〕の比〔A/B〕が3以上であり、伸び率が8%以上になるニッケル電気めっき膜を第1の要旨とする。
また、本発明は、合成樹脂,ゴムおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一つからなる部材の表面に無電解めっき膜を形成した後、硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物との混合液を主成分とするめっき浴を用いてニッケル電気めっき膜を形成する方法であって、上記めっき浴における硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物との混合比〔硫酸ニッケル六水和物/塩化ニッケル六水和物〕をg/L基準で250/50〜190/110の範囲内に設定することにより、上記第1の要旨のニッケル電気めっき膜を形成するニッケル電気めっき膜の製法を第2の要旨とする。
すなわち、金属の伸びは、結晶におけるすべり面で結晶が相対的にずれることにより生じることが知られている。ニッケルは、結晶構造が面心立法格子であり、その結晶のすべり面が、(111)面(斜め方向の面)であることが知られている。そこで、本発明者らは、ニッケル電気めっき膜の伸び率を高くすべく、上記すべり面である(111)面を成長させる〔(111)配向を増加させる〕ことについて研究を重ねた。その研究の過程で、ニッケル電気めっき膜の形成に用いるめっき浴のうち、硫酸ニッケル浴ではニッケル結晶が柱状(縦)成長し、塩化ニッケル浴では粒状(横)成長するという知見を得た。そこで、本発明者らは、結晶成長方向に着目し、めっき浴として硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物の混合液を用い、その混合比を適正にすることについてさらに研究を重ねた。その結果、上記混合比〔硫酸ニッケル六水和物/塩化ニッケル六水和物〕をg/L基準で250/50〜190/110の範囲内に設定すると、ニッケル電気めっき膜の伸び率を8%以上にすることができることを突き止めた。そして、このときのニッケル電気めっき膜の特性は、X線回折により求められる(111)面のピーク強度〔A〕と(200)面のピーク強度〔B〕の比〔A/B〕が3以上となっていることがわかった。
ここで、上記比〔A/B〕について説明する。金属の結晶は、必ずしも一定の方向に成長するわけではなく、成長の過程で様々な方向に配向する。そのうち、析出過程における内部歪みが小さく、最も理想的な結晶成長するときは(111)配向を示す。また、析出過程で内部歪みを受け、成長を抑制された場合には別の配向で成長し、なかでも、最も内部歪みが高く、成長を抑制された配向が(200)配向である。すなわち、上記比〔A/B〕は、「理想的な結晶配向の量」と「成長を抑制された結晶配向の量」の比をとったものであり、その比の値が大きいということは、「理想的な結晶配向の量が多く、内部歪みが小さい」ことを意味し、材料として高い伸びを得られる可能性があると考えられる。そこで、本発明者らが、実際、上記比〔A/B〕とニッケル電気めっき膜の伸びとの関係について研究すると、その両者の間に相関性がある(伸び率が大きいほど、上記比〔A/B〕が大きくなっている)ことを確認することができた。
また、上記ビッカース硬さとニッケル電気めっき膜の伸びとの関係についても、相関性があり(伸び率が大きいほど、ビッカース硬さが小さくなっている)、伸び率が8%以上になるニッケル電気めっき膜のビッカース硬さは210以下であることを確認することができた。さらに、平均結晶粒径とニッケル電気めっき膜の伸びとの関係についても、相関性があり(伸び率が大きいほど、平均結晶粒径が大きくなっている)、伸び率が8%以上になるニッケル電気めっき膜の平均結晶粒径は2.5μm以上であることを確認することができ、本発明に到達した。
本発明のニッケル電気めっき膜は、ビッカース硬さが210以下、平均結晶粒径が2.5μm以上、X線回折により求められる(111)面のピーク強度〔A〕と(200)面のピーク強度〔B〕の比〔A/B〕が3以上であり、伸び率を8%以上にすることができる。したがって、例えば、組み付け時の変形や使用中の振動が加わる燃料パイプ用途に好適であり、ニッケル電気めっき膜の割れ防止を実現することができる。
また、本発明のニッケル電気めっき膜の製法は、めっき浴における硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物との混合比〔硫酸ニッケル六水和物/塩化ニッケル六水和物〕をg/L基準で250/50〜190/110の範囲内に設定することにより、本発明のニッケル電気めっき膜を容易に形成することができる。
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
本発明のニッケル電気めっき膜は、伸び率が8%以上になっている。このニッケル電気めっき膜の伸びは、図1(a)に示す結晶の(111)面(斜線部分)1がすべり面となって、図1(b)に示すように、結晶が斜め方向に相対的にずれることにより生じる。そして、伸び率が8%以上になっているとき、ニッケル電気めっき膜の特性は、ビッカース硬さが210以下、平均結晶粒径が2.5μm以上、X線回折により求められる(111)面1のピーク強度〔A〕と(200)面2〔図1(c)の斜線部分参照〕のピーク強度〔B〕の比〔A/B〕が3以上となっている。
このようなニッケル電気めっき膜の形成には、めっき浴として硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物の混合液を主成分とするめっき浴が用いられ、その混合比〔硫酸ニッケル六水和物/塩化ニッケル六水和物〕は、g/L基準で250/50〜190/110程度に設定される。このめっき浴には、必要に応じて、ホウ酸,ピット防止剤等の添加剤を適宜に添加してもよい。ここで、上記主成分とは、全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含める趣旨である。
そして、上記めっき浴の温度は、30〜70℃の範囲内に設定され、電流密度は、1〜10A/dm2 の範囲内に設定され、処理時間は、1〜300分間の範囲内に設定される。また、上記ニッケル電気めっき膜の厚みは、特に限定されないが、通常、0.3〜100μmの範囲内に形成される。
上記伸び率が8%以上のニッケル電気めっき膜は、従来のニッケル電気めっき膜よりも伸び率が大きくなっており、変形する部材に形成しても、その変形が伸び率の範囲内であれば、その部材の変形に追従することができ、割れが生じない。このため、例えば、上記ニッケル電気めっき膜を燃料ホースに形成した場合は、その組み付け時の変形や使用中の振動による変形に追従することができ、燃料ホースの燃料低透過性を維持することができる。
また、上記ニッケル電気めっき膜を形成する対象部材の形成材料としては、熱可塑性樹脂(汎用樹脂,エンジニアリングプラスチック),熱硬化性樹脂,ゴム,熱可塑性エラストマー等があげられ、これらを単独で用いてもよいし、これらのうちの2種以上をアロイ化してもよい。また、それらに、ワラストナイト等の可溶性成分を添加してもよいし、ガラス繊維等の強化材等を添加してもよい。
なお、これら形成材料は、通常、導電性を有しないため、上記ニッケル電気めっき膜の形成に先立って、上記部材の表面に無電解めっき膜が形成され、その無電解めっき膜の表面に、上記ニッケル電気めっき膜が形成される。
ここで、上記無電解めっき膜は、上記部材の表面が凹凸粗面に形成された後に、その凹凸に沿って形成され、上記部材の表面に導電性を付与するためだけに形成されているものであり、膜厚も0.3μm程度と非常に薄く、ピンポールも多く形成されているため、伸びも燃料低透過性(ガスバリア性)も不充分なものとなっている。このため、燃料低透過性(ガスバリア性)は、上記ニッケル電気めっき膜が担っている。そして、上記無電解めっき膜が上記のように非常に薄く、ピンポールも多いため、上記ニッケル電気めっき膜の、上記部材に対する密着力は、上記無電解めっき膜との間の結合力よりも、上記ニッケル電気めっき膜が上記凹凸粗面の凹凸に沿って形成されことによる形状効果(アンカー効果)の方で確保していると考えられる。
上記汎用樹脂としては、例えば、PE(ポリエチレン),PP(ポリプロピレン),PVC(ポリ塩化ビニル),PS(ポリスチレン),ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン),AS(アクリロニトリル・スチレン),PMMA(メタクリル樹脂),PVA(ポリビニルアルコール),PVDC(ポリ塩化ビニリデン),EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体),EVA(エチレンビニルアルコール)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、PA(ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド11,ポリアミド12等を含む),POM(ポリアセタール),PC(ポリカーボネート),PPE(変性ポリフェニレンエーテル),PBT(ポリブチレンテレフタレート),PBN(ポリブチレンナフタレート),PEN(ポリエチレンナフタレート),PET(ポリエチレンテレフタレート),PSF(ポリサルフォン),PES(ポリエーテルサルフォン),PPS(ポリフェニレンサルファイド),PAR(ポリアリレート),PAI(ポリアミドイミド),PEI(ポリエーテルイミド),PEEK(ポリエーテルエーテルケトン),PI(ポリイミド),LCP(液晶性ポリエステル),PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),PVDF(ポリフッ化ビニリデン),ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,アルキド樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,DAP樹脂,シリコーン樹脂等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記ゴムとしては、例えば、NR(天然ゴム),IR(イソプレンゴム),BR(ブタジエンゴム),SBR(スチレン・ブタジエンゴム),IIR(ブチルゴム),EPM(エチレン・プロピレンゴム),EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム),CR(クロロピレンゴム),CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム),CPE(塩素化ポリエチレンゴム),CHR/CHC(エピクロルヒドリンゴム),NBR(ニトリルゴム),ACM/ANM(アクリルゴム),U(ウレタンゴム),T(多硫化ゴム),Q(シリコーンゴム),H−NBR(水素化ニトリルゴム),FKM(フッ素ゴム)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系(TPS),オレフィン系(TPO),エステル系(TPEE),ウレタン系(TPU),アミド系(TPAE)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
そして、上記ニッケル電気めっき膜は、伸び率が大きく、ガスバリア性に優れる観点から、例えば、水素ホースや燃料ホース等の自動車用ホース,エアコン用冷媒ホース等のガスバリア膜として形成されたり、アキュムレータ用ガスバリア膜として形成されたり、加締め等の二次加工が必要となる金具の防錆めっき膜として形成されることが好ましい。
なお、燃料ホースや冷媒ホースでは、内部流体に対する耐性や低抽出性の観点から、最内層に上記ニッケル電気めっき膜を形成することが好ましい。一方、水素ホースでは、内部流体に対する耐性や低抽出性に加えて絶縁性の観点から、最内層には、抽出性が低く、かつ絶縁性の高い熱可塑性樹脂(汎用樹脂,エンジニアリングプラスチック),熱硬化性樹脂,ゴム,熱可塑性エラストマー等からなる層を形成し、その外表面に無電解めっき膜を形成し、この無電解めっき膜の表面に上記ニッケル電気めっき膜を形成することが好ましい。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるわけではない。
〔実施例1〜7および比較例1〜5〕
〔めっき浴の調製〕
下記の表1,2に示すように、硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物との混合比を、各実施例および各比較例で異なるようにし、それに、ホウ酸とピット防止剤(奥野製薬社製、アクナH)とを添加し、めっき浴を調製した。
〔ニッケル電気めっき膜の形成〕
陽極にニッケル板を用い、陰極にSUS304圧延板を用い、それらを上記各めっき浴(50℃)に浸漬し、電流密度5A/dm2 で60分間電気めっきを行い、上記SUS304圧延板に厚み50μmのニッケル電気めっき膜を形成した。その後、100℃×1時間の乾燥処理を行い、上記SUS304圧延板からニッケル電気めっき膜を剥離した。なお、上記SUS304圧延板は、中央の1dm2 以外をマスキングしたものを用い、その中央の1dm2 部分に上記ニッケル電気めっき膜を形成するようにした。
〔伸び率の算出〕
スーパーダンベル成型機(ダンベル社製)を用い、上記ニッケル電気めっき膜をJIS7号試験片形状(測定部の幅2mm、標点間距離12mm)に成型した。そして、その試験片をストログラフ(東洋精機社製、M1)にかけ、引張試験(引張速度5mm/分)を行った。伸び率は、下記の式(1)により算出し、その結果を下記の表1,2に併せて表記した。
Figure 0004896703
〔ビッカース硬さの測定〕
上記ニッケル電気めっき膜をエポキシ樹脂の表面部に埋め込み、そのニッケル電気めっき膜をエメリー紙で♯2000まで研磨した後、バフ研磨布を用いて鏡面化し、測定面とした。そして、マイクロビッカース硬さ計(AKASHI社製、MVK−E)を用い、上記測定面で異なる3箇所でのビッカース硬さを測定し(荷重0.49N、試験時間15秒間)、その平均値をとり、下記の表1,2に併せて表記した。
〔平均結晶粒径の算出〕
クロスセクションポリッシャー(日本電子社製)を用い、上記ニッケル電気めっき膜の厚み方向の断面を露出させた後、電子顕微鏡(HITACHI社製、S−4800)を用い、上記断面を4000倍に拡大した写真を撮った。そして、その拡大写真から結晶粒の個数を数え、下記の式(2)により、平均結晶粒径を算出し、下記の表1,2に併せて表記した。
Figure 0004896703
〔結晶配向の評価〕
X線回折装置(理学電機社製、RINT−1500)を用い、上記ニッケル電気めっき膜を表面側からX線回折した。そして、ピーク指数として表示されるNi(111),Ni(200),Ni(220),Ni(311),Ni(222)のピーク強度のうち、Ni(111)とNi(200)のピーク強度の比〔Ni(111)/Ni(200)〕を算出し、下記の表1,2に併せて表記した。ここで、上記比の値が大きいと、(111)配向の量が多いと判定できる。なお、表1,2では、Ni(111)のピーク強度を100としたピーク強度比で示している。
Figure 0004896703
Figure 0004896703
上記表1,2の結果から、ニッケル電気めっき膜のビッカース硬さと伸びとの関係,平均結晶粒径と伸びとの関係,および上記比〔(111)配向の量〕と伸びとの関係には、それぞれ相関関係があることがわかる。すなわち、伸び率が大きいほど、ビッカース硬さが小さく、平均結晶粒径が大きく、上記比〔(111)配向の量〕が大きくなっている。また、めっき浴における硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物との混合比により、伸び率が異なるニッケル電気めっき膜を形成することができることがわかる。なかでも、その混合比が200/95〜195/105(実施例4〜6)のニッケル電気めっき膜は、伸び率が15%以上となり、特に優れていることがわかる。
また、上記実施例1,3,4および比較例1のニッケル電気めっき膜を、下記に示すようにして、樹脂コルゲート(蛇腹)チューブに形成した後、曲げ評価を行った。
〔樹脂コルゲートチューブの作製〕
PA11を押し出し成型することにより、単層チューブ(外径16mm、周壁厚み1mm)を作製し、これの外周側を、コルゲーターで真空引きすることにより金型に沿わせ、軸方向の両端部を除く中央部分が蛇腹状に形成された樹脂コルゲートチューブを得た。この樹脂コルゲートチューブの蛇腹部分の寸法は、外径18.4mm、内径14.0mm、蛇腹ピッチ3.2mm、周壁厚み1mm、フレキ長300mmであった。
〔樹脂コルゲートチューブの外周面の粗面化〕
マコー社製ココットを用い、上記樹脂コルゲートチューブの外周面に、投射材(多角形のアルミナ粒子♯60)を投射圧0.25MPaで投射し、樹脂コルゲートチューブの外周面を十点平均粗さ(Rz)25μmに形成した。
〔無電解ニッケルめっき膜の形成〕
まず、上記粗面化した樹脂コルゲートチューブを、40℃の奥野製薬社製コンディライザーFR(100mL/L)に5分間浸漬した後、イオン交換水で水洗した(1分間)。ついで、奥野製薬社製キャタリストC(20mL/L)と35%塩酸(30mL/L)と塩化ナトリウム水溶液(200g/L)とを混合した混合液(25℃)に、上記樹脂コルゲートチューブを3分間浸漬した後、イオン交換水で水洗した(1分間)。つぎに、40℃の98%硫酸(50mL/L)に2分間浸漬した後、イオン交換水で水洗した(1分間)。さらに、40℃の水酸化ナトリウム水溶液(20g/L)に2分間浸漬した後、イオン交換水で水洗した(1分間)。そして、35℃の奥野製薬社製TMP化学ニッケル(A剤160mL/L、B剤120mL/L)に6分間浸漬することにより無電解ニッケルめっき膜を形成した後、イオン交換水で水洗した(1分間)。その後、オーブンにて乾燥した(80℃×60分間)。
〔樹脂コネクタの圧入〕
上記無電解ニッケルめっき膜を形成した樹脂コルゲートチューブの一端部に、拡管率20%となる樹脂コネクタを圧入した。
〔ニッケル電気めっき膜の形成〕
まず、上記樹脂コルゲートチューブの無電解ニッケルめっき膜形成部分に対して、25℃の銅置換剤ANCアクチ(20g/L)を用いて1分間浸漬することにより、無電解ニッケルめっき膜を活性化した。そして、上記実施例1,3,4および比較例1の各めっき浴(50℃)に浸漬し、電流密度5A/dm2 で105分間電気めっきを行い、上記無電解ニッケルめっき膜の表面に厚み(評価部位であるコルゲート谷部での厚み)50μmのニッケル電気めっき膜をそれぞれ形成した後、イオン交換水で水洗した(1分間)。その後、オーブンにて乾燥した(100℃×60分間)。
〔曲げ評価〕
上記実施例1,3,4および比較例1の各ニッケル電気めっき膜が形成された樹脂コルゲートチューブをそれぞれRゲージに沿わせて曲げ、その際のニッケル電気めっき膜の割れ発生の有無を目視にて確認した。その結果、割れ発生までの曲げRは、比較例1(伸び率6.2%)のニッケル電気めっき膜が形成された樹脂コルゲートチューブが38mmであったのに対し、実施例1(伸び率8.6%)のものは20mm、実施例3(伸び率13.0%)のものは2.0mmであり、実施例4(伸び率18.5%)のものは曲げRを2.0mmにしても割れは確認できなかった。このことから、ニッケル電気めっき膜の伸び率が大きいほど、曲げ追従性に優れることがわかる。
さらに、ニッケル電気めっき膜の厚みを20μm,30μm,40μmに形成して、上記曲げ評価を行った。その結果も上記と同様、ニッケル電気めっき膜の伸び率が大きいほど、曲げ追従性に優れていた。
なお、上記樹脂コルゲートチューブが実際に自動車の燃料ホース等として使用される場合には、通常、上記ニッケル電気めっき膜の外周に、中間ゴム層,補強層および外側ゴム層がこの順に積層形成される。
本発明のニッケル電気めっき膜は、自動車,建築,電気,医療等の様々な分野において、ガスバリア膜,防錆めっき膜等の様々な用途に用いられる。
本発明のニッケル電気めっき膜の結晶を模式的に示し、(a)は(111)面を示す説明図、(b)はその(111)面でずれた状態を示す説明図、(c)は(200)面を示す説明図である。
符号の説明
1 (111)面
2 (200)面

Claims (3)

  1. 合成樹脂,ゴムおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一つからなる部材の表面に無電解めっき膜を介して形成されるニッケル電気めっき膜であって、そのニッケル電気めっき膜のビッカース硬さが210以下、平均結晶粒径が2.5μm以上、X線回折により求められる(111)面のピーク強度〔A〕と(200)面のピーク強度〔B〕の比〔A/B〕が3以上であり、伸び率が8%以上になることを特徴とするニッケル電気めっき膜。
  2. 上記合成樹脂,ゴムおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一つからなる部材が、自動車用ホースである請求項1記載のニッケル電気めっき膜。
  3. 合成樹脂,ゴムおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一つからなる部材の表面に無電解めっき膜を形成した後、硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物との混合液を主成分とするめっき浴を用いてニッケル電気めっき膜を形成する方法であって、上記めっき浴における硫酸ニッケル六水和物と塩化ニッケル六水和物との混合比〔硫酸ニッケル六水和物/塩化ニッケル六水和物〕をg/L基準で250/50〜190/110の範囲内に設定することにより、請求項1または2記載のニッケル電気めっき膜を形成することを特徴とするニッケル電気めっき膜の製法。
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