JP4896410B2 - マイクロカプセルの製造法ならびにマイクロカプセル及びそれを用いた表示媒体 - Google Patents
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Description
本発明は、さらにそのようなマイクロカプセルを具備してなる磁気表示媒体等の表示・記録材料にも関するものである。
(2)エマルジョンにポリアニオンを添加して混合し、酸を添加してpHを3〜5程度に調整する。これによりコアセルベーションが生じ、コアセルベート皮膜が形成される。
(3)温度を低温にしてコアセルベート滴の皮膜をゲル化させ、さらに硬化剤を添加して皮膜を硬化(架橋および/または変性)させる。
しかしながら、これらの用途は主としてコーティングに関するものであり、比較的高温で反応させるものである。一部に、オキサゾリン基を有する化合物を用いた場合に比較的低い温度(たとえば60〜120℃)で硬化することができる(特許文献1)旨の開示はあるものの、水中での反応ではなく、やはり塗布物を乾燥・硬化させるものである。本発明で必要とする水中での反応は、その性質上、ある規定以下の温度で処理しなくてはならず、特異な条件を必要とするもので、単なる置換は出来ないものである。なぜならば硬化前で耐熱性を有していないゲル状親水性コロイドの皮膜は、ゲル化点以上の温度で容易に水に対して溶解してしまうからである。
すなわち、本発明は、
「1.カルボキシル基を有する親水性コロイドとしてゼラチンを基本皮膜物質とするマイクロカプセルの製造方法であって、上記基本皮膜物質を、水中で、オキサゾリン基を有する化合物によって硬化することによりマイクロカプセルの皮膜を形成することを特徴とする、マイクロカプセルの製造法。
2.前記ゼラチンがpI=4.9〜8.1である第1項に記載のマイクロカプセルの製造法。
3.第1項または第2項の何れかに記載の製造法によって得られる、ゼラチンを基本皮膜物質とし、該基本皮膜物質を水中でオキサゾリン基を有する化合物によって硬化した皮膜を有するマイクロカプセル。
4.少なくとも芯物質として表示素子を内包した第3項に記載のマイクロカプセルを複数個配列して得られる表示媒体。」に関する。
また、マイクロカプセル皮膜の硬化時にアルカリ領域へのpH調整が不要で、マイクロカプセル分散液の増粘やマイクロカプセル同士の凝集、マイクロカプセル皮膜の膨潤といった現象を回避できる。
また、同様の理由により酸性以外では安定でない物質のマイクロカプセル化に適する。
さらに、硬化剤として高分子、特にフィルム形成性高分子を用いると、硬化剤自体が皮膜性を有するため、皮膜物質を硬化させると同時に硬化剤自体による2重の被覆も生じ、内包物の保持能力を向上させることができる。
そして、この方法により得られたマイクロカプセルを用いることにより、有害物質を含まない上、解像度に優れた表示媒体等を得ることができる。
本発明によるマイクロカプセルの製造法は、カルボキシル基を有する親水性コロイドを基本皮膜物質とし、上記基本皮膜物質をオキサゾリン基を有する化合物によって硬化することによりマイクロカプセルを形成すること等を特徴とする。
ここで親水性コロイドとは、溶媒中に存在し、芯物質の周囲に配位してエマルジョンを形成しうる分子コロイド等を示している。
例えば、カルボキシル基を有する親水性コロイドとしては、ゼラチンやアルブミンなどの水溶性蛋白質、澱粉や寒天、アラビアゴムなどの天然高分子物質、カルボキシメチルセルロース、カルボキシルメチルヒドロキシエチルセルロースなどの合成セルロースエーテル類、ポリビニルメチルエーテル・無水マレイン酸共重合体、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールなどの合成高分子化合物などが挙げられ、その1種または2種以上を混合して使用することができる。中でも基本皮膜物質として使用するには、ゲル化性を有する水溶性蛋白質が好ましい。更にアルカリ処理ゼラチンや酸処理ゼラチンなどのゼラチン類がよく、その中でもアルカリ処理ゼラチンが最適である。
ゼラチンはコラーゲンから抽出する際の処理方法の違いにより酸処理ゼラチンとアルカリ処理ゼラチンに大別される。アルカリ処理ゼラチンは石灰漬処理工程でアミノ酸側鎖の脱アミド化が進み酸処理ゼラチンと比較してカルボキシル基への変性量が多い。オキサゾリン基はカルボキシル基との反応に対して活性が高いことからカルボキシル基を多く有しているアルカリ処理ゼラチンはオキサゾリン化合物による架橋材料として適している。
まず、カルボキシル基を有する親水性コロイド、すなわち、基本皮膜物質を含む水溶液中に芯物質(油性物質)を分散させ、油滴が水溶液中に分散したO/Wエマルジョンを形成させる。
そこで本発明では、アルデヒド類に代わる硬化剤として毒性や環境へ負荷の少ないオキサゾリン基を有する化合物を用いる。このようないわゆるオキサゾリン化合物は、(化1)に示したようなオキサゾリン基を有する化合物であり、例えば、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィドなどのオキサゾリン化合物。また、付加重合性オキサゾリン化合物として2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられる。これらの1種もしくは2種以上の化合物を重合または共重合したものを使用可能である。
さらに、該化合物と、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化α,β−不飽和単量体類;スチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族単量体類等を共重合したものも使用可能である。
そのような化合物の一例としては、上記の特許文献1、特許文献3等に記載のオキサゾリン化合物などが例示できる。
市販されている具体的な例としては、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスK−1010E、エポクロスK−1020E、エポクロスK−1030E、エポクロスK−2010E、エポクロスK−2020E、エポクロスK−2030E、エポクロスRPS−1005、エポクロスRAS−1005(いずれも株式会社日本触媒製)、NKリンカーFX(新中村化学工業株式会社製)などが挙げられる。
フィルム形成性の高分子化合物を硬化剤として用いた場合、マイクロカプセル皮膜のさらなる強度向上、内包物の保持能力向上などの効果を得ることができる。これは、硬化剤自体が成膜性を有するため、皮膜物質を硬化させると同時に硬化剤自体による2重被覆を生じ、マイクロカプセル皮膜を強化するためと推測される。
ここでフィルム形成性とは、オキサゾリン基を有する高分子化合物単独の溶液を塗布・蒸発乾燥させた際にフィルム状の成膜性を有することをいう。
カプセル皮膜のさらなる強度向上のほか、密閉性の向上、可撓性、柔軟性などの好適効果も得ることができる。
本発明ではオキサゾリン化合物を硬化剤として用い、且つ適正な反応条件を選択することで水中での皮膜硬化が可能となり、これを利用して、好適なマイクロカプセルの硬化が可能となった。
コンプレックスコアセルベーション法におけるオキサゾリン化合物による硬化は、未硬化の基本皮膜物質(ゼラチン)マイクロカプセルと調整液を分離し、マイクロカプセルを水で数回洗浄した後に行う必要がある。このような操作を行わないと硬化が十分に成されない。これは、コンプレックスコアセルベーション法でマイクロカプセルを調整した場合、マイクロカプセルが分散している水溶液中には、コアセルベーションに必要なポリアニオンや未析出(溶解状態)の基本皮膜物質(ゼラチン)分子が存在していると考えられる。ポリアニオンは通常、カルボキシル基を有する化合物(アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース等)が一般的に使用される。また、基本皮膜物質(ゼラチン)分子は当然にカルボキシル基を有している。
すなわち、この状態のマイクロカプセル分散液中にはオキサゾリン基と反応し得るカルボキシル基含有成分として、
a)溶解状態の基本皮膜物質分子(ゼラチン等)
b)溶解状態のポリアニオン分子(アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース等)
c)分散状態の基本皮膜物質ゲル(ゼラチンゲル等)
が存在しているといえる。分散状態の基本皮膜物質(ゼラチンゲル)とオキサゾリン化合物を効率的に反応させるには溶解状態のa)、b)を除去する必要があると推測されるからである。
本発明においてpIの測定値は、ゼラチン水溶液をイオン交換樹脂で処理した後、該ゼラチン水溶液を35℃においてpH測定した値を使用したが、それ以外の一般的に使用されるpI(isoionic point:等イオン点)測定、並びにそれに相当するものも使用可能である。
オキサゾリン化合物はゼラチン全般に対して硬化皮膜を形成し、好適なマイクロカプセルを得ることができるが、pIが8.1を超える(例えば、酸処理ゼラチン)ゼラチンを用いたマイクロカプセルは硬化後に静置(r.t.)状態で経時保管を行うとマイクロカプセル同士が凝集し、再分散が困難になる傾向がある。
pIはゼラチン等の等イオン点を表すものであり、これは基本皮膜物質(ゼラチン)分子の持つカルボキシル基とアミノ基の量を示すものであるといえる。
pIが低いゼラチンはアミノ酸側鎖の酸アミド結合が脱アミド化により減少し、カルボキシル基が増大していることを示す。オキサゾリン基はカルボキシル基と反応を生じるため、カルボキシル基の量が多いほど、基本皮膜物質(ゼラチン)とオキサゾリン化合物による架橋点は多くなると考えられる。つまり、十分な架橋が確保できることになり、経時的にも安定なマイクロカプセルが得られ易いと推測される。
本発明によるマイクロカプセルは、カルボキシル基を有する親水性コロイドである基本皮膜物質を、水中で、オキサゾリン基を有する化合物によって硬化させ、皮膜形成するものであり、上記のマイクロカプセルの製造プロセスなどにより得られるものである。
表示媒体または記録材料としてマイクロカプセルを用いるには、通常、支持体上にマイクロカプセルを配列させるが、マイクロカプセルの芯物質間に膨潤した皮膜厚み分の隙間が生じると、解像度やコントラストの低下原因となる。通常、アルデヒド類で硬化を行う場合、反応条件としてpHをアルカリ性、具体的にはpH=9以上に調整を行うが、このときpHをアルカリ性に調整したことによるマイクロカプセル皮膜の膨潤が生じることがある。しかしながら、本発明によるマイクロカプセルは硬化反応を酸性領域で行うことが出来るため、pH変化に伴う膨潤を回避できる。このため、芯物質を高密度で配列させることが可能であるので、解像度やコントラストに優れ、かつ有害なアルデヒド類を実質的に含まない、磁気表示媒体や感熱記録材料を提供することができる。
系の温度を40℃に保ち、10質量%アルカリ処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 AD pI:5.06) 60質量部を撹拌しながら、40℃の温水(イオン交換水) 80質量部、イソパラフィン(エッソ化学社製 アイソパーM) 80質量部を順に添加して乳化・分散させてO/Wエマルジョンを形成させた。さらにポリアニオンとして1.25質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(第一工業製薬株式会社製 セロゲンF−7A)60質量部を混合して均一にした。10質量%塩酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加してpHを4.2に調整し、コアセルベート皮膜を形成させた。このエマルジョンを撹拌しながら5℃まで徐々に冷却して皮膜をゲル化させ、30min/5℃に保ち安定化させた。冷却されたマイクロカプセル分散液を分液ロートに移し、静置によりマイクロカプセル層と分散液層に分離した。分離したマイクロカプセル層に5℃に冷却したイオン交換水を加え、撹拌洗浄を行った後に再びマイクロカプセル層と分散液層に分離した。この操作を数回繰り返した後、洗浄したマイクロカプセル分散液をビーカーに移し、撹拌を行った。系の温度を25℃まで昇温させ、オキサゾリン高分子化合物(株式会社日本触媒 エポクロスWS−700)48.9質量部を10質量%塩酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)でpH4.0に調整したものを添加した。10質量%塩酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加してpHを4.0に調整し、系の温度を25℃に保ったまま67h撹拌を継続し、皮膜が硬化したマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルは皮膜の膨潤が無く、耐熱性を持った単核のマイクロカプセルであった。
上記実施例1において、ゼラチン種を表1に記載のものに換えた他は同様にしてマイクロカプセルの製造を行った。
pH測定は、ガラス電極式水素イオン濃度計(東亜ディーケーケー株式会社製 HM−30S)により測定した。
芯物質として微粒子磁性体とイソパラフィン(エッソ化学社製 アイソパーM)を主成分とする油性塑性液を混合した塑性分散液88質量部を、系の温度を40℃に保ちながら、10質量%のアルカリ処理ゼラチン水溶液(株式会社ニッピ製 AD pI:5.06)60質量部、40℃の温水(イオン交換水)80質量部を均一に混合した水溶液に乳化・分散させてS/O/Wエマルジョンを形成させた。さらにポリアニオンとして1.25質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(第一工業製薬株式会社製 セロゲンF−7A)60質量部を混合して均一にした。10質量%塩酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加してpHを4.2に調整し、コアセルベート皮膜を形成させた。このエマルジョンを撹拌しながら5℃まで徐々に冷却して皮膜をゲル化させ、30min/5℃に保ち安定化させた。冷却されたマイクロカプセル分散液を分液ロートに移し、静置によりマイクロカプセル層と分散液層に分離した。分離したマイクロカプセル層に5℃に冷却したイオン交換水を加え、撹拌洗浄を行った後に再びマイクロカプセル層と分散液層に分離した。この操作を数回繰り返した後、洗浄したマイクロカプセル分散液をビーカーに移し、撹拌を行った。系の温度を25℃まで昇温させ、オキサゾリン高分子化合物(株式会社日本触媒 エポクロスWS−700)48.9質量部を10質量%塩酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)でpH4.0に調整したものを添加した。10質量%塩酸(和光純薬工業株式会社製 試薬)を添加してpHを4.0に調整し、系の温度を25℃に保ったまま67h撹拌を継続し、皮膜が硬化したマイクロカプセル分散液を得た。得られたマイクロカプセルは皮膜の膨潤が無く、耐熱性を持った単核のマイクロカプセルであった。
得られたマイクロカプセル分散液を厚さ125μmのPETフィルムを支持体として塗布し、磁気表示媒体を形成させた。得られた磁気表示媒体は十分な解像度を有するものであった。
Claims (4)
- カルボキシル基を有する親水性コロイドとしてゼラチンを基本皮膜物質とするマイクロカプセルの製造方法であって、上記基本皮膜物質を、水中で、オキサゾリン基を有する化合物によって硬化することによりマイクロカプセルの皮膜を形成することを特徴とする、マイクロカプセルの製造法。
- 前記ゼラチンがpI=4.9〜8.1である請求項1に記載のマイクロカプセルの製造法。
- 請求項1または2の何れかに記載の製造法によって得られる、ゼラチンを基本皮膜物質とし、該基本皮膜物質を水中でオキサゾリン基を有する化合物によって硬化した皮膜を有するマイクロカプセル。
- 少なくとも芯物質として表示素子を内包した請求項3に記載のマイクロカプセルを複数個配列して得られる表示媒体。
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