しかしながら、このような従来の無停電電源装置にあっては、例えば、電源から供給される電力の電圧が低下してから、その電力供給が正常に復旧するまでの長期間にわたる電力供給を確保しようとすると、大容量の電気エネルギーを蓄電しなければならず、大型化してしまうとともに、高額な装置になってしまう、という問題があった。
また、電源からの電力を蓄電する手段として、メンテナンス性や長寿命特性などの観点からコンデンサーが多用されてきているが、このコンデンサーは、ある程度の年数が経過したときの経年変化や、設置箇所の周囲温度などの耐環境特性によって、静電容量が低下したり、内部抵抗が増加するなどして、蓄電能力が低下している場合がある。この場合には、最適なタイミングに、稼動させる負荷装置を一部に制限する切換制御を行うことができずに、安全側のタイミングで切り換えるように設定せざるを得なかった。このため、あと少しで電源電圧低下から正常に復旧したにも拘わらずに、本来、停止させる必要のなかった負荷装置を不必要に停止させてしまっていた。
そこで、本発明は、瞬低・停電発生時に、稼動させる負荷装置を一部に制限するタイミングを最適にすることにより、蓄電する電気エネルギーを有効利用して、全ての負荷装置をできるだけ稼動させることのできる安価な電圧低下対策装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の第1の発明は、電源からの電力を負荷装置に供給する供給経路と、電源からの電力を電気エネルギーとして蓄電する蓄電手段と、該蓄電手段内の蓄電エネルギーを供給電力として負荷装置に供給する供給手段と、を備えて、電源から供給される電力の電圧が低下する電源電圧低下期間中に蓄電手段内から電力を供給して負荷装置の稼動を維持する電圧低下対策装置であって、電源電圧低下が発生したときからの経過時間を計時する計時手段と、電源電圧低下発生時に稼動状態を維持すべき負荷装置の一部を予め設定する装置設定手段と、電源電圧低下が継続しているときに蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限する電圧低下対策制御を実行する制御手段と、を備えており、蓄電手段は、蓄電する電力を出力するに従って該出力電圧が減衰する特性を有するのに対して、制御手段は、装置設定手段内の設定負荷装置を電源電圧低下発生時から稼動させる期間を予め設定する期間設定手段と、装置設定手段内の設定負荷装置のみを蓄電手段からの供給電力で稼動させる場合に当該供給電圧が該稼動に最低限必要な電圧に達するまでの減衰曲線を予め設定する減衰傾向設定手段と、電源電圧低下発生時に、負荷装置の全部に電力供給する蓄電手段からの出力電圧が、電源電圧低下発生時からの期間設定手段内の設定期間の終わりに最低必要電圧を一致させた減衰傾向設定手段内の設定減衰曲線における、計時手段による電源電圧低下が発生したときからの経過時間に対応する必要電圧に一致するタイミングを検知する検知手段と、を具備して、検知手段の検知情報に基づいて蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限して設定負荷装置の稼動を維持することを特徴とするものである。
この発明では、電源電圧低下が発生すると、その発生直後には全ての負荷装置に蓄電手段から電力供給して稼動を維持することができるとともに、その発生時から計時する経過時間における設定減衰曲線(設定負荷装置の稼動により蓄電手段内の蓄電電力を設定期間の終わりに使い切る場合の出力電圧曲線)に、その蓄積手段から供給される電力の出力電圧が略一致するタイミングに、複数台の負荷装置のうちの一部(あるいは負荷装置の機能のうちの一部でもよい)に電力供給する対象を制限するなどして、蓄電手段内の蓄電電力の消費を抑えることができる。したがって、蓄電手段が蓄電電力を供給するに従ってその出力電圧が低下する特性を有する場合に、その出力電圧に基づいて、早期に電源電圧低下が正常に復旧したときに備えて全ての負荷装置の稼動をできるだけ維持しつつ、例えば、電源電圧低下が正常に復旧するまでの一般的な設定期間が経過する前に、蓄電手段内の電力を全て負荷装置に供給してしまうことなく(蓄電手段からの供給電力が負荷装置の駆動電圧以下になってしまうことなく)、その蓄電手段からの電力供給を制限して、電源電圧低下期間中にも稼動させておくべき負荷装置への電力供給を維持することができ、少ない蓄電エネルギーでも、必要な負荷動作を電源電圧低下期間中に継続することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記検知手段として、蓄電手段の出力電圧を測定する測定手段を備えており、前記制御手段は、電源電圧低下発生時には、測定手段が負荷装置の全部に電力供給する蓄電手段からの出力電圧を測定するとともに、該測定手段による測定電圧が、電源電圧低下発生時からの期間設定手段内の設定期間の終わりに最低必要電圧を一致させた減衰傾向設定手段内の設定減衰曲線における、電源電圧低下が発生したときからの計時手段の計時する経過時間に対応する必要電圧に一致するタイミングを検知して、蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限して設定負荷装置の稼動を維持することを特徴とするものである。
この発明では、電源電圧低下が発生すると、その発生直後には全ての負荷装置に蓄電手段から電力供給されて稼動が維持されるのと同時に、その発生時から計時する経過時間における設定減衰曲線に、その蓄積手段からの供給電力の測定電圧が略一致するタイミングに、一部の設定負荷装置に電力供給する対象を制限して、蓄電手段内の蓄電電力の消費を抑えることができる。したがって、蓄積手段から供給される電力の出力電圧を実測する測定電圧に基づいて、全ての負荷装置の稼動をできるだけ維持しつつ、最適なタイミングにその蓄積手段からの電力供給を制限して一部の設定負荷装置の稼動を維持することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の第3の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記制御手段は、電源電圧低下発生時から蓄電手段の蓄電電力を負荷装置の全部に出力して供給する際の該出力電圧の第1減衰曲線と、装置設定手段内の設定負荷装置のみを蓄電手段からの供給電力で稼動させる場合に当該供給電圧が該稼動に最低限必要な電圧に達するまでの減衰傾向設定手段内の第2減衰曲線と、を取得して、電源電圧低下発生時から装置設定手段内の設定負荷装置を稼動させるべき期間の終わりに第2減衰曲線の最低必要電圧を一致させたときに、該第2減衰曲線に第1減衰曲線が交差するまでの該電源電圧低下発生時からの所要時間を導出し、該所要時間を蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限する時間として設定するタイミング設定手段を具備して、
電源電圧低下が発生したときからの計時手段の計時する経過時間がタイミング設定手段内の設定時刻に一致するタイミングを検知して、蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限して設定負荷装置の稼動を維持することを特徴とするものである。
この発明では、電源電圧低下が発生すると、その発生直後には全ての負荷装置に蓄電手段から電力供給されて稼動が維持されるのと同時に、その発生時からの経過時間が計時され、その経過時間が全ての負荷装置を稼動させた場合の第1減衰曲線と設定負荷装置を設定期間内に稼動させる場合の第2減衰曲線が交差するまでの設定時間に達したタイミングに、一部の設定負荷装置に電力供給する対象を制限して、蓄電手段内の蓄電電力の消費を抑えることができる。したがって、電源電圧低下が発生してからの経過時間に基づいて、全ての負荷装置の稼動をできるだけ維持しつつ、最適なタイミングにその蓄積手段からの電力供給を制限して一部の設定負荷装置の稼動を維持することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明の特定事項に加え、前記供給手段に、蓄電手段から受け取る供給電力の電圧を昇圧する昇圧手段を設けるとともに、負荷装置の全部に電力供給する蓄電手段からの出力電圧と、装置設定手段内の設定負荷装置のみに電力供給する蓄電手段からの出力電圧との双方あるいは後者に当該昇圧手段による昇圧分を加算することを特徴とするものである。
この発明では、電源電圧低下が発生したときに、蓄電手段内の蓄電電力の電圧を昇圧して負荷装置に電力供給することにより、蓄電手段の出力電圧が負荷装置やインバータ装置などの供給手段自体を稼動させるのに必要な電圧を下回る場合でも、それらの駆動電圧まで昇圧して稼動させることができ、全ての負荷装置や少なくとも設定負荷装置のみに電力供給する蓄電手段の出力電圧に、昇圧手段を介することによる昇圧分を加算することにより、蓄電手段の供給電力で設定負荷装置を設定期間中に稼動させることのできる最低必要電圧(設定電圧)にその出力電圧が略一致するタイミングを延長することができる。したがって、蓄電手段内から供給可能な電力量を増やすことができ、電源電圧低下発生から全ての負荷装置を稼動させる期間を延長することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の第5の発明は、上記第4の発明の特定事項に加え、前記昇圧手段は、制御手段により駆動・停止が制御されて、該制御手段が蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限するタイミングに駆動を開始することを特徴とするものである。
この発明では、電源電圧低下発生後に全ての負荷装置の稼動を維持した後に、蓄電手段から電力供給する対象を一部の設定負荷装置に制限するタイミングに、昇圧手段が駆動されてその蓄電手段から受け取る供給電力の電圧が昇圧される。したがって、全ての負荷装置を駆動させている大電流の供給電力を不必要に昇圧手段により昇圧させることを回避して、昇圧手段が早期に劣化・損傷してしまうことを防止することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の第6の発明は、上記第5の発明の特定事項に加え、前記制御手段は、負荷装置の全部に電力供給する蓄電手段からの出力電圧が、蓄電手段内の蓄電エネルギーを供給電力として負荷装置に供給する供給動作を行うのに必要な下限電圧を超える前に、昇圧手段の駆動を開始することを特徴とするものである。
この発明では、電源電圧低下発生後に全ての負荷装置の稼動を維持した後に、蓄電手段からの供給電力の電圧が負荷装置やインバータ装置などの供給手段自体を稼動させるのに必要な電圧を下回ってしまう前に、昇圧手段を駆動させることができる。したがって、蓄電手段から電力供給する対象を一部の設定負荷装置に制限するタイミングに昇圧手段を駆動させることにより、その蓄電手段内に設定負荷装置を稼動させるのに必要な蓄電電力が残っているのにも拘わらずに、その前に電圧が足らずに停止させてしまうことを防止することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の第7の発明は、上記第1から第6のいずれかの発明の特定事項に加え、前記制御手段は、蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限することにより該蓄電手段からの出力電圧が上昇する電圧値を、負荷装置の全部に電力供給する蓄電手段からの出力電圧に加算、あるいは、装置設定手段内の設定負荷装置のみに電力供給する蓄電手段からの出力電圧から減算することを特徴とするものである。
この発明では、電源電圧低下発生後に全ての負荷装置の稼動を維持した後に、蓄電手段から電力供給する対象を一部の設定負荷装置に制限すると、その供給電流の減少に伴って多少の電圧上昇が起こることから、その電圧上昇分を蓄電手段の出力電圧に加算、あるいは、設定負荷装置を設定期間内に稼動させる場合の蓄電手段の出力電圧から減算する。したがって、蓄電手段の出力電圧を嵩上げして設定負荷装置のみを稼動させたときの設定減衰曲線に略一致する、あるいは、その設定減衰曲線を少なめに仮想して蓄電手段の出力電圧が略一致するタイミングに、稼動させる対象を全ての負荷装置から設定負荷装置に制限する切換を最適に行うことができ、全ての負荷装置を稼動させる期間をできるだけ延長することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の時間設定方法の第1の発明は、電源からの電力を負荷装置に供給する供給経路と、電源からの電力を電気エネルギーとして蓄電する蓄電手段と、該蓄電手段内の蓄電エネルギーを供給電力として該負荷装置に供給する供給手段と、電源電圧低下が発生したときからの経過時間を計時する計時手段と、電源電圧低下発生時に稼動状態を維持すべき負荷装置の一部を予め設定する装置設定手段と、電源電圧低下が発生した場合に計時手段の計時する経過時間が予め設定されている時間を経過しても電源電圧低下が継続しているときに蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限する制御手段と、を備えて、電源から供給される電力の電圧が低下する電源電圧低下期間中に蓄電手段内から電力を供給して負荷装置の稼動を維持する電圧低下対策装置の時間設定方法であって、蓄電手段が蓄電する電力を出力するに従って該出力電圧が減衰する特性を有している場合に、まず、電源電圧低下発生時から蓄電手段の蓄電電力を負荷装置の全部に出力して供給する際の該出力電圧の第1減衰曲線と、装置設定手段内の設定負荷装置のみを蓄電手段からの供給電力で稼動させる場合に当該供給電圧が該稼動に最低限必要な電圧に達するまでの第2減衰曲線と、を取得して、電源電圧低下発生時から装置設定手段内の設定負荷装置を稼動させるべき期間が終わるタイミングに第2減衰曲線の最低必要電圧を一致させたときに、該第2減衰曲線に第1減衰曲線が交差するまでの該電源電圧低下発生時からの所要時間を導出し、該所要時間を制御手段が蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限する時間として設定することを特徴としている。
この発明では、電源電圧低下が発生すると、その発生直後には全ての負荷装置に蓄電手段から電力供給されて稼動が維持されるとともに、その発生時からの経過時間が計時され、その経過時間が全ての負荷装置を稼動させた場合の第1減衰曲線と設定負荷装置を設定期間内に稼動させる場合の第2減衰曲線が交差するまでの設定時間に達したときに、蓄電手段から電力供給する対象をその一部の設定負荷装置に制限して、その蓄電手段内の蓄電電力の消費を抑えることができる。したがって、早期に電源電圧低下が正常に復旧したときに備えて全ての負荷装置の稼動をできるだけ維持しつつ、例えば、電源電圧低下が正常に復旧するまでの一般的な設定期間が経過する前に、蓄電手段内の電力を全て負荷装置に供給してしまうことなく、電源電圧低下発生時に稼動状態を維持すべき設定負荷装置への電力供給を維持することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の時間設定方法の第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限することにより該蓄電手段からの出力電圧が上昇する電圧値を、第1減衰曲線に加算、あるいは、第2減衰曲線から減算して、第1、第2減衰曲線が交差するまでの電源電圧低下発生時からの所要時間を導出することを特徴としている。
この発明では、電源電圧低下発生後に全ての負荷装置の稼動を維持した後に、蓄電手段から電力供給する対象を一部の設定負荷装置に制限すると、その供給電流の減少に伴って多少の電圧上昇が起こることから、その電圧上昇分を、全ての負荷装置を稼動させる場合の第1減衰曲線に加算、あるいは、設定負荷装置を設定期間内に稼動させる場合の第2減衰曲線から減算する。したがって、電源電圧低下発生時から第1、第2減衰曲線の交差するタイミングまでの期間を延長することができ、蓄電手段から電力供給する対象を全ての負荷装置から設定負荷装置に制限する切換を最適なタイミングにして、全ての負荷装置を稼動させる期間をできるだけ延長することができる。
上記課題を解決する電圧低下対策装置の時間設定方法の第3の発明は、上記第1または第2の発明の特定事項に加え、前記供給手段が蓄電手段から受け取る供給電力の電圧を昇圧する昇圧手段を有する場合には、該昇圧手段を介する蓄電手段からの供給電力で装置設定手段内の設定負荷装置のみを稼動させるときに該稼動に最低限必要な当該昇圧手段前段の供給電圧に、第1減衰曲線が略一致するまでの所要時間を導出し、該所要時間を制御手段が蓄電手段からの電力供給を装置設定手段内の設定負荷装置のみに制限する時間として設定することを特徴としている。
この発明では、昇圧手段を介して昇圧させることにより蓄電手段の供給電力で設定負荷装置を設定期間中に稼動させることのできる最低必要電圧に、電源電圧低下が発生した後に全ての負荷装置に電力供給する際の第1減衰曲線が略一致するまでの所要時間を設定することにより、この電源電圧低下発生からの経過時間が設定時間に達したときに、蓄電手段から電力供給する対象を一部の設定負荷装置に制限して、その蓄電手段内の蓄電電力の消費を抑えることができる。したがって、蓄電手段内から供給可能な電力量を増やすとともに、その供給電力量の増加により全ての負荷装置を稼動させる期間をできるだけ延長することができる。
このように本発明によれば、電源電圧低下の発生直後に全ての負荷装置に蓄電手段から電力供給して稼動を維持しつつ、例えば、その電力供給に従って低下するその蓄電手段の出力電圧に基づいて、電源電圧低下から正常に復旧するまで設定負荷装置の稼動を維持不能になるまで蓄電手段内の蓄電電力を消費してしまう前に、その蓄積手段から電力供給する対象をその設定負荷装置に制限することができる。したがって、少ない蓄電電力であっても、全ての負荷装置による電力の浪費を抑えつつできるだけ稼動させることができるとともに、電源電圧低下期間中にも稼動させておくべき負荷装置への電力供給を信頼性高く維持することができる。また、蓄電手段からの供給電力の電圧を昇圧する手段を設けることにより、その蓄電手段内の蓄電電力をより有効に利用することができ、全ての負荷装置を稼動させる期間を延長して電源電圧低下の復旧に備えてできるだけその稼動を維持することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は本発明に係る電圧低下対策装置の第1実施形態を示す図である。
まず、電圧低下対策装置の構成を説明する。図1において、電圧低下対策装置10は、商用電源Pに接続する接続部11と、負荷装置101、102を個別に接続する接続部12と、接続部11に接続された商用電源Pから接続部12に接続された負荷装置101、102に供給する電力の経路となる電源線(供給経路)Lpと、商用電源Pからの交流電力を直流電力に整流する整流器13と、この整流器13からの直流電力を蓄電する蓄電装置14と、この蓄電装置14からの直流電力を交流電力に変換するインバータ15と、このインバータ15からの交流電力を負荷装置101、102に電力供給可能に電源線Lpに入力する変圧器16と、インバータ15の動作の調整・制御を行う制御部(制御手段)17と、を備えている。なお、商用電源Pや負荷装置101、102は、例えば、コンセントとプラグ形式の接続部11、12により電源線Lpに接続するが、これに限らずに、電圧低下対策装置10が分電盤などに設置される場合などには、電気的な導通を確保する、所謂、丸端子などの接続端子により接続してもよい。
蓄電装置14は、整流器13により整流された直流電力を予め蓄電しておく、コンデンサーにより構築された蓄電手段であり、商用電源Pからの交流電力をインバータ15を介して負荷装置101、102に供給可能な電気エネルギーとして蓄電する。
制御部17は、不図示のメモリ内に格納する制御プログラムに従って各種制御動作を実行するCPU(中央処理装置)により構築されており、商用電源Pからの商用電力を検出する検出器18の検出情報や、所定のタイミングからの経過時間を計時するタイマ(計時手段)19の計時情報に基づいて、蓄電装置14内の直流電力をインバータ15により交流電力に変換して変圧器16を介して電源線Lpに入力するなどの制御動作を実行する。すなわち、インバータ15と変圧器16が供給手段を構成している。
例えば、この制御部17は、検出器18の検出情報に基づいて、商用電源Pの供給電力に瞬間的に電圧低下する瞬低の発生を検知したときや、商用電源Pの電力供給が一定期間停止する(瞬間的に停止する瞬停を含む)停電の発生を検知したときには、所望の電力を負荷装置101、102に供給する電源電圧低下対策制御を実行するように設計されており、このときには(特に停電時に)、蓄電装置14内の直流電力を変換した交流電力が商用電源P側に向かって逆流しないように、スイッチ20を切り換えて負荷装置101、102を商用電源Pから切り離す。
具体的には、制御部17は、前記メモリ内の設定に従って、検出器18が検出する瞬低・停電の発生時から蓄電装置14内の蓄電電力を負荷装置101、102の全てにインバータや変圧器16を介して供給する電源電圧低下対策制御を開始した後に、その蓄電装置14の蓄電能力を考慮した切換タイミングに電力供給する対象を一部の装置に制限するように設計されており、この制御部17のメモリ内には、商用電源Pの瞬低・停電の発生時にも正常な稼動状態を維持すべき負荷装置101と、その瞬低・停電の発生時に蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てからその負荷装置101に切り換えるタイミング(電源電圧低下の発生からの経過時間)が予め設定されている。すなわち、制御部17のメモリが装置設定手段を構成する。
詳細には、蓄電装置14は、コンデンサーにより構築されていることから、蓄電電力を出力するに従ってその出力電圧が減衰する特性を有しているとともに、このコンデンサーは、経年変化や環境特性によって静電容量の低下や内部抵抗の増加などが生じるので、制御部17のメモリ内には、設計時に想定した最長使用期間の経過時や設置環境内での周囲温度に応じて最も低下する蓄電装置14の蓄電容量を考慮して、瞬低・停電の発生時に電力供給する対象として負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限する切換タイミングを設定する必要がある。
この蓄電装置14の出力電圧は、図2に一点鎖線で示すように、負荷装置101、102の全てに蓄電電力を供給する際には、最大充電電圧VUから蓄電装置14を構成するコンデンサの内部抵抗Rに電流Iが流れることによる電圧降下(所謂、IRドロップ)の後に、その負荷装置101、102への電力供給量に応じて減衰(電圧降下)するV−T曲線の第1減衰曲線CL1を辿って低下する。また、一部の負荷装置101に蓄電電力を供給する際には、図2に二点鎖線で示すように、同様に、最大充電電圧VUからの電圧降下の後に、その負荷装置101への電力供給量に応じて減衰する第2減衰曲線CL2を辿って低下する。さらに、この蓄電装置14の出力電圧は、図2に示すように、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てからその一部の負荷装置101に切り換えると、負荷装置102に供給していた電力に相当するコンデンサ電流iが減少することによる電圧上昇iRをした後に、第1減衰曲線CL1から第2減衰曲線CL2を辿るように変化する。
このことから、次のようにして、制御部17のメモリ内に、瞬低・停電の発生時に電力供給する対象として負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限する切換タイミングTCを設定する。言い換えると、次に、電圧低下対策装置10の時間設定方法を説明する。
この電圧低下対策装置10の蓄電装置14は、このような蓄電電力の出力(供給)特性を有することから、まずは、負荷装置101、102の全てに蓄電装置14内の蓄電電力を供給する際の第1減衰曲線CL1、および、一部の負荷装置101に蓄電装置14内の蓄電電力を供給する際の第2減衰曲線CL2を取得・準備して、商用電源Pが瞬低・停電から復旧するのに一般的に掛かる期間TSの終わりに、その一部の負荷装置101を稼動させるのに必要な最低必要電圧VLに一致するように調整した第2減衰曲線CL2と、その瞬低・停電の発生時からの第1減衰曲線CL1とが交差する仮のタイミング(電源電圧の低下発生からの所要時間)tcを求める。
この仮の交差タイミングtcを切換タイミングTCとして、制御部17のメモリ内に設定してもよいが、上述するように、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから負荷装置101に制限することによる電圧上昇iRがあるので、第1減衰曲線CL1にその電圧上昇iRを予め加算した値を用いて第2減衰曲線CL2との交差タイミング(逆に、第2減衰曲線CL2からその電圧上昇iRを予め減算した値を用いたときの第1減衰曲線CL1との交差タイミングでもよい)TCを導出する。この後に、その交差タイミングTCを、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に切り換えて制限する制限タイミングTCとして設定する。なお、この制限タイミングTCにおける蓄電装置14の供給電力は、出力電圧VCから電圧上昇iRしてインバータ15に入力(供給)される。
そして、制御部17は、図3のフローチャートに示すように、検出器18の検出情報から商用電源Pの供給電力に瞬低・停電が発生したことを検知すると(ステップS11)、タイマ19の駆動を開始して瞬低・停電発生時からの経過時間を計時するとともに、スイッチ20を切り換えた後に(商用電源Pを切り離した後に)、蓄電装置14内の直流電力をインバータ15により交流電力に変換して変圧器16を介して電源線Lpに入力することより、負荷装置101、102の全てに定常動作するのに必要な電圧を補償するように電力供給を開始する(ステップS21)。
この後には、商用電源Pからの電力供給が正常に復旧したか否かを検出器18による検出情報から、予め設定されている制限タイミングTCが経過するまで繰り返し確認し、瞬低・停電からの復旧が確認された場合(ステップS31、S41)には、ステップS11に戻って、インバータ15や変圧器16を介する蓄電装置14内からの電力供給を停止するのと同時に、スイッチ20を切り換えて負荷装置101、102を商用電源P側に接続することにより、その商用電源Pから負荷装置101、102の定常動作に必要な電圧での電力供給を再開するとともに、瞬低・停電の検知と蓄電装置14への蓄電を継続する。
これにより、瞬低・停電発生から制限タイミングTCが経過する前に商用電源Pからの電力供給が正常に復旧した場合にまで、蓄電装置14から電力供給する対象が制限されてしまうことを回避することができる。言い換えると、蓄電装置14に蓄電されている一部の電気エネルギーで賄える場合には、負荷装置101、102の定常動作を停止させてしまうことなく、その定常動作を維持することができる。
一方、商用電源Pが瞬低・停電から復旧することなく、その制限タイミングTCに達した場合(ステップS31、S41)には、蓄電装置14から電力供給する対象を一部の負荷装置101に制限して、停止させても問題のない負荷装置102の稼動を停止することにより、蓄電装置14内の蓄電電力の消費を負荷装置101のみに抑えて、商用電源Pの瞬低・停電期間中の負荷装置101の稼動を維持する(ステップS51)。
これにより、商用電源Pが瞬低・停電から復旧するまで一部の負荷装置101を稼動させるのに最低限必要な電力を蓄電装置14内に残すように、適正に設定されている制限タイミングTCまで負荷装置101、102の全てを稼動させることができ、瞬低・停電発生からその制限タイミングTCが経過した場合に、蓄電装置14からの電力供給をその一部の負荷装置101に制限することにより、瞬低・停電中でも(その復旧時期TSまで)定常動作を維持すべき負荷装置101の稼動を確保することができる。このときの制限タイミングTCは、電力供給を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限することによる蓄電装置14の出力電圧の上昇分iRまでも考慮して設定されているので、蓄電装置14から負荷装置101、102の全てに電力供給する期間をできるだけ延長して稼動させることができる。
この後には、商用電源Pが瞬低・停電から復旧したことを検出器18による検出情報から確認したときに(ステップS61)、ステップS11に戻って、インバータ15や変圧器16を介する蓄電装置14内からの電力供給を停止するのと同時に、スイッチ20を切り換えて負荷装置101、102を商用電源P側に接続して、その商用電源Pから負荷装置101、102の定常動作に必要な電圧での電力供給を再開するとともに、瞬低・停電の検知と蓄電装置14への蓄電を継続する。
このように本実施形態においては、瞬低・停電が制限タイミングTC以上継続する場合に、負荷装置101、102の全てに蓄電装置14内の蓄電電力を供給する状態から、一部の負荷装置101のみに電力供給を制限して消費する電力量をできるだけ抑えることができる。したがって、蓄電装置14の蓄電容量を小さく設定した安価の電圧低下対策装置10でも、瞬低・停電の発生後には、早期の復旧に備えて負荷装置101、102の全ての稼動をできるだけ維持した後に(蓄電装置14の蓄電電力を使い切る前に)、稼動させておくべき一部の負荷装置101に絞って瞬低・停電から復旧するまで電力供給を維持することができる。
ここで、本実施形態の他の態様としては、本実施形態では、蓄電装置14がコンデンサーにより構築されているために、最長使用期間の経過や設置環境内での周囲温度に応じて最も低下した場合の蓄電容量を考慮して、瞬低・停電の発生時から蓄電装置14の蓄電電力を供給する対象として負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限する制限タイミングTCをメモリ内に設定する一例を説明するが、これに限るものではなく、例えば、周囲温度の異なる設置環境毎に使用開始からの経過時間に応じた制限タイミングをテーブル内に予め格納準備しておき、使用期間の経過や設置環境に応じて、その制限タイミングを選択するようにしても良い。この場合には、使用期間の経過や周囲温度などの環境に応じて蓄電装置14の蓄電容量の低下率が大きいときに、その蓄電電力を有効に利用することができる。
次に、図4および図5は本発明に係る電圧低下対策装置の第2実施形態を示す図である。ここで、本実施形態の電圧低下対策装置は、上述実施形態における電圧低下対策装置と略同様に構成されているので、同様の構成には同一の符号を付してその特徴部分を説明する(以下で説明する他の実施形態においても同様)。
図4において、電圧低下対策装置30は、接続部11、12と、電源線Lpと、整流器13と、蓄電装置14と、インバータ15と、変圧器16と、制御部17と、検出器18と、タイマ19と、に加えて、その蓄電装置14から出力されるインバータ15への供給電力の電圧を測定する電圧計(測定手段)31が配設されており、制御部17は、不図示のメモリ内に格納する制御プログラムに従って検出器18の検出情報などに基づいて開始した電源電圧低下対策制御において、その電圧計31による測定電圧に応じて、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限する。
すなわち、制御部17は、上述実施形態においては、瞬低・停電の発生時からの経過時間に基づいて電源電圧低下対策制御を行っていたのに代えて、蓄電装置14の出力電圧を実測して、その蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限する切換を行うように設計されており、そのメモリ内には、上述実施形態では予め導出した制限タイミングTCを設定していたのに代えて、実測する蓄電装置14の出力電圧VCから制限タイミングTCを適宜決定する。
詳細には、蓄電装置14の出力電圧は、図2に示すように、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てからその一部の負荷装置101に切り換える際には、負荷装置102の電力供給の遮断による電圧上昇iRの後に、その一部の負荷装置101への電力供給量に応じて減衰する第2減衰曲線CL2を辿ることから、制御部17のメモリ内には、商用電源Pが瞬低・停電から復旧するまでに必要な期間の終わりの時期TSに、一部の負荷装置101の稼動に必要な最低必要電圧VLを一致させるように調整した第2減衰曲線CL2より、負荷装置102への電力供給の遮断による電圧上昇iRを予め減算した設定減衰曲線を設定しておく。そして、制御部17は、メモリ内のその設定減衰曲線に蓄電装置14の出力電圧が乗るように、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に切換・制限する。すなわち、制御部17のメモリが期間設定手段および減衰傾向設定手段を構成する。
具体的には、制御部17は、図5のフローチャートに示すように、商用電源Pの供給電力に瞬低・停電が発生すると、タイマ19が瞬低・停電発生からの経過時間を計時するとともに、定常動作するのに必要な電圧で蓄電装置14から負荷装置101、102の全てに電力供給するのと同時に、その蓄電装置14の出力電圧を測定する電源電圧低下対策制御動作を開始する(ステップS11、S21)。
この後には、商用電源Pからの電力供給が正常に復旧したか否かを検出器18による検出情報から繰り返し確認するとともに、その都度、蓄電装置14の出力電圧がタイマ19による経過時刻におけるメモリ内の設定減衰曲線に一致したか否かを電圧計31による測定情報から繰り返し確認し(ステップS31、S42)、その設定減衰曲線に一致する出力電圧VCになるまで電圧降下(減衰)する前に、商用電源Pの瞬低・停電からの復旧が確認された場合には、ステップS11に戻って、蓄電装置14内からの電力供給を停止するのと同時に、商用電源Pから負荷装置101、102の定常動作に必要な電圧での電力供給を再開するとともに、瞬低・停電の検知と蓄電装置14への蓄電を継続する。
一方、商用電源Pが瞬低・停電から復旧する前に、蓄電装置14が出力電圧VCまで減衰した場合には、その蓄電装置14から電力供給する対象を一部の負荷装置101に制限して、停止しても問題のない負荷装置102の稼動を停止することにより、蓄電装置14内の蓄電電力の消費を負荷装置101のみに抑えて、商用電源Pの瞬低・停電期間中の負荷装置101の稼動を維持する(ステップS51)。
これにより、蓄電装置14内に残る蓄電電力を出力電圧により実測して、商用電源Pが瞬低・停電から復旧するまで一部の負荷装置101を稼動させるのに最低限必要な電力を蓄電装置14内に残すことのできる制限タイミングTCのぎりぎりまで、負荷装置101、102の全てを稼動させることができ、その蓄電装置14の蓄電電力が限界に達したときに、蓄電装置14からの電力供給を一部の負荷装置101に制限することにより、瞬低・停電時にも定常動作を維持すべき負荷装置101の稼動を確保することができる。このときの制限タイミングTCは、蓄電装置14からの電力供給を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限することによる電圧上昇分を考慮して設定したメモリ内の設定減衰曲線とその出力電圧とを比較するので、蓄電装置14から負荷装置101、102の全てに電力供給する期間をできるだけ延長して稼動させることができる。
この後には、商用電源Pが瞬低・停電から復旧したことを確認したときに(ステップS61)、ステップS11に戻って、インバータ15や変圧器16を介する蓄電装置14内からの電力供給を停止するのと同時に、商用電源Pから負荷装置101、102の定常動作に必要な電圧での電力供給を再開するとともに、瞬低・停電の検知と蓄電装置14への蓄電を継続する。
このように本実施形態においては、上述実施形態による作用効果に加えて、商用電源Pの瞬低・停電が復旧する最長時期TSまで一部の負荷装置101を稼動させておくのに必要な蓄電電力まで消費しないように(蓄電装置14内の蓄電電力を使い過ぎてしまう前に)、蓄電装置14の出力電圧を実測しつつその蓄電電力を負荷装置101、102の全てに供給して稼動させることができる。したがって、早期に瞬低・停電から復旧したときに備えて、蓄電装置14内に実際に蓄電されている電力を負荷装置101、102の全てに供給して、より長くその稼動状態を維持することができる。
ここで、本実施形態の他の態様としては、上述実施形態では、一部の負荷装置101に電力供給する際の蓄電装置14の出力電圧の第2減衰曲線CL2から、負荷装置102への電力供給の遮断による電圧上昇分iRを減算した設定減衰曲線を、制御部17のメモリ内に設定するが、これに限るものではなく、その第2減衰曲線をメモリ内に設定しておき、蓄電装置14の出力電圧VCにその電圧上昇分iRを加算して、その第2減衰曲線に一致する出力電圧となる制限タイミングTCに、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に切換・制限するようにしてもよい。
次に、図6および図7は本発明に係る電圧低下対策装置の第3実施形態を示す図である。
図6において、電圧低下対策装置40は、上述実施形態におけるインバータ15に代えて、入力される直流電圧を昇圧して出力するチョッパ(昇圧手段)45aを内蔵するインバータ45を備えるとともに、接続部11、12、電源線Lp、整流器13、蓄電装置14、変圧器16、制御部17、検出器18およびタイマ19を備えて(電圧計31を省いて)構築されている。
この電圧低下対策装置40では、インバータ45がチョッパ45aを内蔵していることから、蓄電装置14から受け取る直流電圧を昇圧してインバータ本体に受け渡すことができ、蓄電装置14からの供給電力の電圧が負荷装置101を稼動させるのに必要な最低電圧VL未満である場合にも、稼動可能な最低電圧VL以上に昇圧した上で負荷装置101などに供給することができる。
具体的には、図7(a)に示すように、チョッパ45aを内蔵していないインバータ15の場合には、図中に二点鎖線で示す第2減衰曲線CL2(蓄電装置14の出力電圧)を嵩上げすることができないことから、第1減衰曲線CL1と交差する高めの電圧VCを制限タイミングTCにせざるを得ない。しかるに、チョッパ45aを内蔵しているインバータ45の場合には、蓄電装置14からの直流電圧を昇圧することができるので、一部の負荷装置101を稼動させるのに必要な最低必要電圧VLを、図中に三点鎖線で示す第3減衰曲線CL3のように、蓄電装置14の出力電圧が商用電源Pの瞬低・停電期間中に(時期TSまで)下回ってもよく、その最低必要電圧VLに昇圧することのできる出力電圧VL´まで、その蓄電装置14の蓄電電力を利用することができる。ただし、インバータ15を稼動させるのに必要な最低駆動電圧を下回る前にチョッパ45aを稼動させる必要がある。
これにより、図7(b)に示すように、チョッパ45aを内蔵していないインバータ15の場合には、第1、第2減衰曲線CL1、CL2の交差する高めの蓄電装置14の出力電圧VCを制限タイミングとしない限り、商用電源Pの瞬低・停電の復旧時期TSまで負荷装置101を稼動させる最低必要電圧VL以上を確保できないが、チョッパ45aを内蔵するインバータ45の場合には、その出力電圧VCよりも低い蓄電装置14の出力電圧VC´で、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に切換・制限しても、その負荷装置101の稼動に必要な最低必要電圧VL以上のV−T特性線CL3に昇圧することができる。
このことから、次のようにして、制御部17のメモリ内に、瞬低・停電の発生時に電力供給する対象として負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限する切換タイミングTC'などを設定する。言い換えると、次に、電圧低下対策装置40の時間設定方法を説明する。
このように、電圧低下対策装置40は、蓄電装置14からの出力電圧をチョッパ45aにより昇圧可能なインバータ45を介して負荷側に電力供給することができることから、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に切り換える時期として、次のような手順(方法)により最適な制限タイミングTC´を求めて、制御部17のメモリ内に設定する。すなわち、まずは、負荷装置101、102の全てに蓄電装置14内の蓄電電力を供給する際の第1減衰曲線CL1が、商用電源Pが瞬低・停電から復旧するのに一般的に掛かる期間中に負荷装置101を稼動させるのに必要な最低必要電圧VL以上のV−T特性線CL3にチョッパ45aにより昇圧可能な電圧VC´に到達するまでの仮のタイミング(電源電圧の低下発生からの所要時間)tc´を求める。
この仮の到達タイミングtc´を制限タイミングTC´として、制御部17のメモリ内に設定してもよいが、上述するように、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置郡101、102の全てから一部の負荷装置101に制限することによる電圧上昇iRがあるので、第1減衰曲線CL1にその電圧上昇iRを予め加算した値を用いて昇圧可能な電圧VC´になるまでの到達タイミング(逆に、電圧VC´からその電圧上昇iRを予め減算した値を用いたときの到達タイミングでもよい)TC´を導出する。この後に、その到達タイミングTC´を、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に切り換えて制限する制限タイミングTC´として設定する。なお、この制限タイミングTC´における蓄電装置14の供給電力は、出力電圧VC´から電圧上昇iRしてインバータ45のチョッパ45aに入力(供給)される。
そして、制御部17は、上述実施形態と略同様に、商用電源Pの供給電力に瞬低・停電が発生すると、タイマ19が瞬低・停電発生からの経過時間を計時するとともに、定常動作するのに必要な電圧で蓄電装置14から負荷装置101、102の全てに電力供給する電源電圧低下対策制御動作を開始し、この後には、商用電源Pからの電力供給が正常に復旧したか否かを検出器18による検出情報から、予め設定されている制限タイミングTC´が経過するまで繰り返し確認し、瞬低・停電からの復旧が確認された場合には、蓄電装置14内からの電力供給を停止するのと同時に、商用電源Pから負荷装置101、102の定常動作に必要な電圧の電力供給を再開するとともに、瞬低・停電の検知と蓄電装置14への蓄電を継続する。
一方、商用電源Pが瞬低・停電から復旧することなく、制限タイミングTC´に達した場合には、蓄電装置14から電力供給する対象を一部の負荷装置101に制限して、停止させても問題のない負荷装置102の稼動を停止するとともに、インバータ45のチョッパ45aの駆動を開始することにより、蓄電装置14内の蓄電電力の消費を負荷装置101のみに抑えて、商用電源Pの瞬低・停電期間中の負荷装置101の稼動を維持する。
これにより、商用電源Pが瞬低・停電から復旧するまで一部の負荷装置101を稼動させるのに最低限必要な電力を蓄電装置14内に残すように、適正に設定されている制限タイミングTC´まで負荷装置101、102の全てを稼動させることができ、瞬低・停電発生からその制限タイミングTC´が経過した場合に、インバータ45のチョッパ45aの駆動開始と共に蓄電装置14からの電力供給をその一部の負荷装置101に制限することにより、瞬低・停電中でも(その復旧時期TSまで)定常動作を維持すべき負荷装置101の稼動を確保することができる。このときの制限タイミングTC´は、チョッパ45aによる蓄電装置14の出力電圧の昇圧分までも考慮して設定されているので、蓄電装置14から負荷装置101、102の全てに電力供給する期間を上述実施形態よりも延長して稼動させることができる。
この後には、商用電源Pが瞬低・停電から復旧したことを確認したときに、インバータ45や変圧器16を介する蓄電装置14内からの電力供給を停止するのと同時に、商用電源Pから負荷装置101、102の定常動作に必要な電圧での電力供給を再開するとともに、瞬低・停電の検知と蓄電装置14への蓄電を継続する。
このように本実施形態においては、上述実施形態による作用効果に加えて、チョッパ45aを設けることにより延長させた制限タイミングTC´を越えて瞬低・停電が継続する場合に、負荷装置101、102の全てに蓄電装置14内の蓄電電力を供給する状態から、一部の負荷装置101のみに電力供給を制限して消費する電力量をできるだけ抑えることができる。したがって、蓄電装置14からより多くの蓄電電力を負荷装置101、102の全てに供給して、早期に瞬低・停電から復旧したときに備えて、より長く稼動状態を維持することができる。
次に、図8は本発明に係る電圧低下対策装置の第4実施形態を示す図である。
図8において、電圧低下対策装置50は、接続部11、12と、電源線Lpと、整流器13と、蓄電装置14と、変圧器16と、制御部17と、検出器18と、電圧計31と、インバータ45と、を備えて(タイマ19を省いて)構築されており、制御部17は、不図示のメモリ内に格納する制御プログラムに従って検出器18の検出情報などに基づいて開始した電源電圧低下対策制御において、その電圧計31による測定電圧に応じて、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限する。
すなわち、制御部17は、上述実施形態においては、瞬低・停電の発生時からの経過時間に基づいて電源電圧低下対策制御を行っていたのに代えて、蓄電装置14の出力電圧を実測して、その蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限する切換を行うように設計されており、そのメモリ内には、上述実施形態では予め導出した制限タイミングTC´を設定していたのに代えて、この電圧低下対策装置40では、インバータ45に内蔵するチョッパ45aが、蓄電装置14から受け取る直流電圧を昇圧してインバータ本体に受け渡すことができ、蓄電装置14からの供給電力の電圧が負荷装置101、102を稼動させるのに必要な最低電圧VL未満である場合にも、稼動可能な最低電圧VL以上に昇圧した上で負荷装置101などに供給することができることから、その蓄電装置14の出力電圧を実測して制限タイミングTC´を適宜決定する。
詳細には、蓄電装置14の出力電圧は、図7(a)に示すように、第3減衰曲線CL3が商用電源Pの瞬低・停電の復旧時期TSまでに一部の負荷装置101を稼動させるのに必要な最低必要電圧VLを下回っても、図7(b)に示すように、インバータ45の稼動に必要な最低駆動電圧を下回る前であって、同時に、商用電源Pの瞬低・停電の復旧時期TSまで一部の負荷装置101の稼動に必要な電力が蓄電装置14内に残っていれば、インバータ45に内蔵するチョッパ45aがその負荷装置101の稼動に必要な最低必要電圧VL以上のV−T特性線CL3に電圧VC´から昇圧させることができる。このことから、制御部17のメモリ内には、その電圧VC´から、負荷装置102の電力供給の遮断による電圧上昇分iRを予め減算した電圧を設定しておく。そして、制御部17は、メモリ内のその設定電圧に蓄電装置14の出力電圧が一致した制限タイミングTC´に、蓄電装置14から電力供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に切換・制限する。
具体的には、制御部17は、上述実施形態と同様に、商用電源Pの供給電力に瞬低・停電が発生すると、定常動作するのに必要な電圧で蓄電装置14から負荷装置101、102の全てに電力供給するのと同時に、その蓄電装置14の出力電圧を測定する電源電圧低下対策制御動作を開始して、この後には、商用電源Pからの電力供給が正常に復旧したか否かを検出器18による検出情報から繰り返し確認するとともに、その都度、蓄電装置14の出力電圧がメモリ内の設定電圧に一致したか否かを電圧計31による測定情報から繰り返し確認し、その設定電圧に一致する前に商用電源Pの瞬低・停電からの復旧が確認された場合には、蓄電装置14内からの電力供給を停止するのと同時に、商用電源Pから負荷装置101、102の定常動作に必要な電圧の電力供給を再開するとともに、瞬低・停電の検知と蓄電装置14への蓄電を継続する。
一方、商用電源Pが瞬低・停電から復旧する前に、蓄電装置14が設定電圧まで減衰した場合には、インバータ45のチョッパ45aの駆動を開始するとともに、その蓄電装置14から電力供給する対象を一部の負荷装置101に制限して、停止しても問題のない負荷装置102の稼動を停止することにより、蓄電装置14内の蓄電電力の消費を負荷装置101のみに抑えて、商用電源Pの瞬低・停電期間中の負荷装置101の稼動を維持する。
これにより、蓄電装置14内に残る蓄電電力を出力電圧により実測して、商用電源Pが瞬低・停電から復旧するまでチョッパ45aにより昇圧した上で一部の負荷装置101を稼動させるのに最低限必要な電力を蓄電装置14内に残すことのできる制限タイミングTC´のぎりぎりまで、負荷装置101、102の全てを稼動させることができ、その蓄電装置14の蓄電電力が限界に達したときに、蓄電装置14からの電力供給を一部の負荷装置101に制限することにより、瞬低・停電時にも定常動作を維持すべき負荷装置101の稼動を確保することができる。このときの制限タイミングTC´は、蓄電装置14からの電力供給を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に制限することによる電圧上昇分を考慮して設定したメモリ内の設定電圧とその出力電圧とを比較するので、蓄電装置14から負荷装置101、102の全てに電力供給する期間をできるだけ延長して稼動させることができる。
この後には、商用電源Pが瞬低・停電から復旧したことを確認したときに、インバータ45や変圧器16を介する蓄電装置14内からの電力供給を停止するのと同時に、商用電源Pから負荷装置101、102の定常動作に必要な電圧での電力供給を再開するとともに、瞬低・停電の検知と蓄電装置14への蓄電を継続する。
このように本実施形態においては、上述実施形態による作用効果に加えて、商用電源Pの瞬低・停電が復旧する最長時期TSまで一部の負荷装置101を稼動させておくのに必要な蓄電装置14内の蓄電電力をチョッパ45aの昇圧により少なくすることができ、その蓄電装置14から負荷装置101、102の全てに電力供給して稼動させることのできる期間を延長することができる。したがって、早期に瞬低・停電から復旧したときに備えて、蓄電装置14内に実際に蓄電されている電力を負荷装置101、102の全てに供給して、より長くその稼動状態を維持することができる。
ここで、本実施形態の他の態様としては、上述実施形態では、一部の負荷装置101に電力供給する際の負荷装置102への電力供給の遮断による電圧上昇分iRを減算した設定電圧を制御部17のメモリ内に設定するが、これに限るものではなく、その実測する蓄電装置14の出力電圧にその電圧上昇分iRを加算して、その電圧上昇分iRの減算のない設定電圧に一致するタイミングTC´に、蓄電装置14内の蓄電電力を供給する対象を負荷装置101、102の全てから一部の負荷装置101に切換・制限するようにしてもよい。