以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を表すものである。このスイッチング電源装置は、高圧バッテリ10から供給される高圧の直流入力電圧Vinをより低い直流出力電圧Voutに変換し、図示しない低圧バッテリに供給して負荷Lを駆動するDC−DCコンバータとして機能するものである。なお、本発明の第1の実施の形態に係るコイルセット(後述するコイルセット7)およびその製造方法についても、以下併せて説明する。
このスイッチング電源装置は、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられた入力平滑コンデンサ2と、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられたインバータ回路1と、1次側コイル41(41A,41B)および2次側コイル42A,42Bを有するトランス4とを備えている。1次側高圧ラインL1Hの入力端子T1と1次側低圧ラインL1Lの入力端子T2との間には、高圧バッテリ10から出力される直流入力電圧Vinが印加されるようになっている。このスイッチング電源装置1はまた、トランス4の2次側に設けられた整流回路5と、この整流回路5に接続された平滑回路6とを備えている。
入力平滑コンデンサ2は、入力端子T1,T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化するためのものである。
インバータ回路1は、4つのスイッチング素子11〜14から構成されたフルブリッジ型の回路構成となっている。具体的には、スイッチング素子11,12の一端同士が互いに接続されると共にスイッチング素子13,14の一端同士が互いに接続され、これらの一端同士は、トランス4の1次側コイル41A,41Bを介して互いに接続されている。また、スイッチング素子11,13の他端同士が互いに接続されると共にスイッチング素子12,14の他端同士が互いに接続され、これらの他端同士は、それぞれ入力端子T1,T2に接続されている。インバータ回路11はこのような構成により、図示しない駆動回路から供給される駆動信号に応じて、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを入力交流電圧に変換するようになっている。
なお、これらスイッチング素子11〜14としては、例えば電界効果型トランジスタ(MOS−FET;Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor)などのスイッチ素子が用いられる。
トランス4は、後述する上部U型コアUCおよび下部U型コアDCから構成される磁芯40と、一対の1次側コイル41A,41Bと、一対の2次側コイル42A,42Bとを有している。このうち、一対の1次側コイル41A,41Bは、互いに直列接続されている。また、2次側コイル42Aは、センタタップP1Aにおいて互いに接続された一対のコイル部43−1,44−2を有しており、後述する整流回路5内の整流部(整流ダイオード51A,52Aからなる整流部)に導かれている。また、2次側コイル42Bは、センタタップP1Bにおいて互いに接続された一対のコイル部44−1,43−2を有しており、後述する整流回路5内の整流部(整流ダイオード51B,52Bからなる整流部)に導かれている。
具体的には、トランス4は、インバータ回路1によって生成された入力交流電圧を変圧し、2次側コイル42Aの各端部(センタタップP1Aとは反対側の端部)から、互いに180度位相が異なる出力交流電圧を出力するようになっている。同様に、2次側コイル42Bの各端部(センタタップP1Bとは反対側の端部)からも、互いに180度位相が異なる出力交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合の変圧の度合いは、1次側コイル41A,41Bと、2次側コイル42A,42Bの各コイル部43−1,44−2,44−1,43−2との巻数比によって定まる。
整流回路5は、各2次側コイル42A、42Bからの出力を整流する一対の整流部からなる。これらの整流部は、一対の整流ダイオード51A,52Aからなる整流部と、整流ダイオード51B,52Bからなる整流部とであり、いずれも単相全波整流型のものである。整流ダイオード51Aのアノードは、トランス4における2次側コイル42Aのコイル部43−1の他端(センタタップP1Aとは反対側の端部)に接続され、整流ダイオード52Aのアノードは、2次側コイル42Aのコイル部44−2の他端(センタタップP1Aとは反対側の端部)に接続されている。また、これら整流ダイオード51A,52Aのカソード同士は互いに接続点P2Aにおいて接続され、接続点P4を介して出力ラインLOに導かれている。
同様に、整流ダイオード51Bのアノードは、トランス4における2次側コイル42Bのコイル部44−1の他端(センタタップP1Bとは反対側の端部)に接続され、整流ダイオード52Bのアノードは、2次側コイル42Bのコイル43−2の他端(センタタップP1Bとは反対側の端部)に接続されている。また、これら整流ダイオード51B,52Bのカソード同士は互いに接続点P2Bにおいて接続され、接続点P4を介して出力ラインLOに導かれている。つまり、この整流回路5の整流部は、それぞれセンタタップ型のカソードコモン接続の構成となっており、トランス4からの出力交流電圧の各半波期間を、それぞれ整流ダイオード51A,52A,51B,52Bによって個別に整流して全波整流電圧を得るようになっている。そして、各整流部は後段の接続点P4で接続されており、各整流部からの出力が合成された全波整流電圧が得られるようになっている。
なお、トランス4の1次側コイル41A,41Bおよび2次側コイル42A,42Bは、後述する1組のコイルセット(コイルセット7)を含んで構成されている。このコイルセット7の詳細構成および製造方法については、後述する。
平滑回路6は、チョークコイル61と、出力平滑コンデンサ62とを含んで構成されている。チョークコイル61は出力ラインLOに挿入配置されており、その一端は、接続点P4を介して整流回路5に接続され、その他端は、出力ラインLOの出力端子T3に接続されている。出力平滑コンデンサ62は、出力ラインLOと接地ラインLGとの間に接続されている。接地ラインLGの一端は、接続点P3を介してセンタタップP1A,P1Bに接続され、接地ラインLGの他端は、出力端子T4に接続されている。このような構成により平滑回路6では、整流回路5で整流された全波整流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、これを出力端子T3,T4から低圧バッテリ(図示せず)に給電するようになっている。
次に、図2〜図4を参照して、本発明の主な特徴的部分であるトランス4の主要部(コイルセット7)と、整流回路5との詳細構成について説明する。ここで、図2は、このコイルセット7の外観構成を平面図(X−Y平面図:図2(A))および断面図(Y−Z断面図:図2(B))で表したものであり、平面図においては、平滑回路6との接続関係も示している。また、図3は、図2に示したコイルセット7の外観構成を断面図(Z−X断面図)で表したものであり、図4は、図2に示したコイルセット7の外観構成を、コア部分を含めた分解斜視図で表したものである。
図2〜図4に示したように、このコイルセット7は、互いに対向する2組の板金(板金43−1,44−2および板金44−1,43−2)を含んで構成されている。また、本実施形態のコイルセット7は、これら2組の板金に加え、これらの板金と電気的に接続されたダイオードチップ51A,52A,51B,52Bを含んで構成されている。
まず、コイルセット7の具体的配置について説明する。板金43−1,43−2のコイルパターンは同一の形状であり、板金44−1,44−2のコイルパターンも同一の形状である。そして、互いに異なるコイルパターンを有する2枚の板金43−1,44−2が互いに対向しており、さらに、互いに異なるコイルパターンを有する2枚の板金44−1,43−2が互いに対向している。本実施の形態では、板金43−1,44−1が表側(Z座標がより大きい側)に配置され、板金44−2,43−2が裏側(Z座標がより小さい側)に配置されている。そして、これらの板金が対向した2組の板金が、面内の所定方向(X軸方向)に沿って配置され、このX軸方向で隣り合う板金43−1,44−1および板金44−2,43−2が、互いに異なるコイルパターンとなっている。これを、断面方向から見ると、図3に示したように、同一コイルパターンの板金43−1,43−2と、やはり同一コイルパターンの板金44−1、44−2とが、たすき掛けの配置となっている。さらに、隣り合った板金43−1,44−1および板金44−2,43−2は、それぞれ、図2に記載した中線Y1(Y軸方向に沿った基準線)に対し、互いに左右対称の形状となっている。
なお、板金43−1,44−2はそれぞれ、図1の回路図におけるコイル部43−1,44−2に相当してトランス4の2次側コイル42Aを形成し、板金44−1,43−2はそれぞれ、図1の回路図におけるコイル部44−1,43−2に相当してトランス4の2次側コイル42Bを形成している。このため、板金44−2のコイルパターンは、板金43−1のコイルパターンに対して、貫通孔40Aを基準に逆巻となっており、板金43−2のコイルパターンは、板金44−1のコイルパターンに対して、貫通孔40Bを基準に逆巻となっている。
ダイオードチップ(図1の回路図における整流ダイオードに相当する)51A,52A,51B,52Bは、それぞれ接続用板金53上に直接配置されている。ダイオードチップ51Aは、板金43−1とボンディングワイヤ(後述するボンディングワイヤ56)を介して接続されており、ダイオードチップ52Aは、板金44−2とボンディングワイヤを介して接続されており、ダイオードチップ51Bは、板金44−1とボンディングワイヤを介して接続されており、ダイオードチップ52Bは、板金43−2とボンディングワイヤを介して接続されている。そして、各ダイオードチップ51A,52A,51B,52Bは、接続用板金53側がカソード接続されており、板金43−1,44−2,44−1,43−2には、アノード接続されている。
そして、各ダイオードチップ51A,52A,51B,52Bは、所定のモールドパッケージ54によりモールドされている。このモールドパッケージ54は、ダイオードのみならず、接続用板金53、43−1,44−2,44−1,43−2を一定の位置関係となるように固着しているので、コイルセット7全体の形状安定性が担保されている。なお、接続用板金53および各板金43−1,44−2,44−1,43−2には、後述するねじ止め用の孔53H、43−1H,44−2H,44−1H,43−2Hが設けられている。
接続用板金53は、図1に示した接続点P4の機能を有し、この接続用板金53には出力ラインLOが接続されている。また、板金43−1および板金44−2は、ねじ止め用の孔43−1H,44−2Hに挿入された図示しないねじによって接続されており、これにより図1に示したセンタタップP1Aとしての機能を有し、接地ラインLGに接続されるようになっている。同様に、板金44−1および板金43−2は、ねじ止め用の孔44−1H,43−2Hに挿入された図示しないねじにより接続されており、これにより図1に示したセンタタップP1Bとしての機能を有し、接地ラインLGに接続されるようになっている。
このように、各ダイオードチップ51A,52A,51B,52Bをカソードコモン接続の構成とすると共に、前述の板金の構成とすることにより、出力電流が流れる接続用板金53が端に位置するため、出力ラインLOが接地ラインLGを飛び越えることなく、接続用板金53と直接接続される。そして、図2(A)では、接地ラインLGが接続用板金53の下側を飛び越える構成となっているが、ねじ止め用の孔43−1H,44−2H,44−1H,43−2Hに挿入されるねじ(図示せず)を、シャーシ等のグランドに直接固定すること等により、接地ラインLGが接続用板金53と立体的に交差する構成としなくてもよく、その場合には簡易な構成とすることが可能である。
次に、1次側コイルおよびコアを含めて、コイルセット7との関係について具体的に説明する。図4に示したように、コイルセット7の上下(Z軸方向に沿った方向)には、互いに対向する上部U型コアUCおよび下部U型コアDCが配置されている。また、これら上部U型コアUCおよび下部U型コアDCからなるU−Uコアであるコア材(磁芯40)の周囲には、コイルセット7における1次側コイル41A,41B、および2次側コイル42A,42Bを構成する4枚の板金43−1,44−1,43−2,44−2が、それぞれ、以下説明する磁芯UC1,DC1,UC2,DC2の延在方向(Z軸方向)に垂直な面内(X−Y平面内)に巻回された構造となっている。上部U型コアUCは、ベースコアUCbと、このベースコアUCbから延びた2本の脚部分である第1の磁芯UC1および第2磁芯UC2とから構成されている。また、下部U型コアDCは、ベースコアDCbと、このベースコアDCbから延びた2本の脚部分である第1磁芯DC1および第2磁芯DC2とから構成されている。なお、上部U型コアUCおよび下部U型コアDCはそれぞれ、例えばフェライトなどの磁性材料により構成され、1次側コイル41A,41Bおよび板金43−1,44−1,43−2,44−2はそれぞれ、例えば銅やアルミニウムなどの導電性材料により構成される。
なお、1次側コイル41A,41Bはそれぞれ、板金43−1,44−1と、板金44−2,43−2との層間に配置されている。また、図示しないリードは上方に折り曲げられ、図示しない基板に接続されるようになっている。また、このコイルセット7の背面側は、図示しない放熱シートを介して図示しないヒートシンクに取り付けられるようになっている。
次に、図2〜図4に加えて図5〜図7を参照して、本実施の形態のコイルセットの製造方法の一例について詳細に説明する。ここで、図5〜図7は、本実施の形態のコイルセットの製造方法における主要な工程の一部を、それぞれ平面図(図5(A),図6(A),図7(A):X−Y平面図)および断面図(図5(B),図6(B),図7(B):Y−Z断面図)で表したものである。
まず、例えば図5(A)に示したように、互いに異なる形状からなると共に基準線Y21,Y22などに対して左右対称となっている2つのコイルパターンを構成する板金43−1,44−1および板金44−2,43−2などを、互いに隣接する2つコイルパターン同士で、リードフレーム55A−1,55B−1,55−Cまたはリードフレーム55A−2,55B−2を介して面内の所定方向(この場合、X軸方向)に沿って連続的に配置させることにより、2枚の板金部(板金43−1,44−1を含む板金部、および板金44−2,43−2を含む板金部)をそれぞれ形成する。そして図5(A)中の矢印P10,P11で示したように、これら2枚の板金部同士を、2つのコイルパターンが交互に配置されるように、互いにずらして重ね合わせる。
次に、例えば図6(A),図6(B)に示したように、ダイオードチップ51A,52A,51B,52Bを、それぞれ接続用板金53上に直接配置させると共に、ボンディングワイヤ56(配線部)を介して、これらダイオードチップ51A,52A,51B,52Bと、板金43−1,44−2,44−1,43−2とを、図2で説明したように電気的に接続させる。
次に、例えば図7(A),図7(B)に示したように、これらダイオードチップ51A,52A,51B,52Bと、それらの周辺の板金とを、所定のモールドパッケージ54によりモールドする。
そして最後に、リードフレーム55A−1,55B−1,55C,55A−2,55B−2をそれぞれ切断することにより、図2および図3に示したコイルセット7が製造される。また、このコイルセット7の上下に互いに対向する上部U型コアUCおよび下部U型コアDCを配置することにより、図4に示した構造が得られる。
次に、本実施の形態のコイルセット7、スイッチング電源装置およびコイルセット7の製造方法の作用および効果について説明する。
まず、本実施の形態のスイッチング電源装置の動作について説明する。
このスイッチング電源装置では、インバータ回路1において、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされて入力交流電圧が生成され、この入力交流電圧がトランス4の1次側コイル41A,41Bへ供給される。そしてトランス4では入力交流電圧が変圧され、2次側コイル42A,42Bから、変圧された出力交流電圧が出力される。
整流回路5では、トランス4から出力された出力交流電圧が、整流ダイオード51A,52Aおよび整流ダイオード51B,52Bによって整流される。これにより、センタタップP1Aと整流ダイオード51A,52Aの接続点P2Aとの間、およびセンタタップP1Bと整流ダイオード51B,52Bの接続点P2Bとの間にはそれぞれ、整流出力が発生する。
平滑回路6では、この整流回路5において発生する整流出力が、チョークコイル61と出力平滑コンデンサ62とによって平滑化され、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力される。そしてこの直流出力電圧Voutは、図示しない低圧バッテリに給電されてその充電に供されると共に、負荷Lが駆動される。
また、本実施の形態のスイッチング電源装置では、インバータ回路1において、スイッチング素子11,14がオン状態になる期間と、スイッチング素子12,13がオン状態になる期間とが、交互に繰り返される。したがって、このスイッチング電源装置の動作をより詳細に説明すると、以下のようになる。
まず、図8に示したように、インバータ回路1のスイッチング素子11,14がそれぞれオン状態になると、スイッチング素子11からスイッチング素子14の方向に1次側ループ電流Ia1が流れる。すると、トランス4における2次側コイル42A,42Bの各コイル部43−1,44−2,44−1,43−2にそれぞれ現れる電圧は、整流ダイオード52A,52Bに対して逆方向となる一方、整流ダイオード51A,51Bに対して順方向となる。このため、接地ラインLG、コイル部43−1,44−1、整流ダイオード51A,51B、接続点P4、出力ラインLO、チョークコイル61および出力平滑コンデンサ62を順に通る2次側ループ電流Ia2が流れる。そしてこの2次側ループ電流Ia2により、直流出力電圧Voutが図示しない低圧バッテリに給電されると共に、負荷Lが駆動される。
ここで、図9を参照して、このような2次側ループ電流Ia2を、本実施の形態のコイルセット7を用いて説明する。なお、理解の容易のため、図9では、図2に示したモールドパッケージ54は図示されていない。図9において、図8の状態では、2次側電流ループIa2は、接地ラインLG上の接続点P3において分岐し、2次側コイル42A,42Bの各センタタップP1A,P1Bから、表側の板金43−1,44−1(コイル部43−1,44−1に相当)へと流れる。このとき、図4において説明したように、各板金43−1,44−1は、上部U型コアUCおよび下部U型コアDCの周りを互いに反対方向に回巻しているため、板金43−1,44−1には、コア中の磁束に基づく図中の実線で示した2次側電流ループIa2が流れる。また、板金43−1,44−1を流れた電流は、それぞれ整流ダイオード51A,51Bを通過して、接続用板金53上(接続点P4に相当)で合流する。この接続用板金53には出力ラインLOが接続されているため、これにより2次側電流ループIa2が流れることになる。
一方、図10に示したように、インバータ回路1のスイッチング素子11,14がそれぞれオフ状態になると共に、インバータ回路1のスイッチング素子12,13がそれぞれオン状態になると、スイッチング素子13からスイッチング素子12の方向に1次側ループ電流Ib1が流れる。すると、トランス4における2次側コイル42A,42Bの各コイル部43−1,44−2,44−1,43−2にそれぞれ現れる電圧は、整流ダイオード51A,51Bに対して逆方向となる一方、整流ダイオード52A,52Bに対して順方向となる。このため、接地ラインLG、コイル部44−2,43−2、整流ダイオード52A,52B、接続点P4、出力ラインLO、チョークコイル61および出力平滑コンデンサ62を順に通る2次側ループ電流Ib2が流れる。そしてこの2次側ループ電流Ib2により、直流出力電圧Voutが図示しない低圧バッテリに給電されると共に、負荷Lが駆動される。
ここで、図11を参照して、このような2次側ループ電流Ib2を、本実施の形態のコイルセット7を用いて説明する。なお、図9と同様に、図11では、図2に示したモールドパッケージ54は図示されていない。図11において、図10の状態では、2次側電流ループIb2は、接地ラインLG上の接続点P3において分岐し、2次側コイル42A,42Bの各センタタップ部P1A,P1Bから裏側の板金44−2,43−2(コイル部44−2,43−2に相当)へと流れる。このとき、図4において説明したように、各板金44−2,43−2は、上部U型コアUCおよび下部U型コアDCの周りを互いに反対方向に回巻しているため、板金44−2,43−2には、コア中の磁束に基づく図中の点線で示した2次側電流ループIb2が流れる。なお、図4に示したとおり、表側の板金43−1と裏側の板金44−2とは、上部U型コアUCおよび下部U型コアDCに対して逆巻に巻かれていると共に、同様に、表側の板金43−1と裏側の板金44−2とは、上部U型コアUCおよび下部U型コアDCに対して逆巻に巻かれているため、図9の状態と図11の状態とでは、各2次側コイルに逆向きの電流が流れる。また、板金44−2,43−2を流れた電流は、それぞれ整流ダイオード52A,52Bを通過して、接続用板金53上(接続点P4に相当)で合流する。この接続用板金53には出力ラインLOが接続されているため、これにより2次側電流ループIb2が流れることになる。
次に、本実施の形態の特徴的部分の作用について説明する。
本実施の形態のコイルセット7の製造方法では、互いに異なる形状からなる2つのコイルパターン(板金43−1,44−1および板金44−2,43−2など)が面内の所定方向(この場合、X軸方向)に沿って連続的に配置されることにより、板金部(板金43−1,44−1を含む板金部、および板金44−2,43−2を含む板金部)が形成される。そして対向する板金部間で2つのコイルパターンが交互に、すなわち千鳥配置となるように、2数の板金部が互いにずらして重ね合わせられる。
これにより、本実施の形態のコイルセット7およびそれを含むスイッチング電源装置では、2数の板金部がそれぞれ、面内の所定方向(この場合、X軸方向)に沿って配置されると共に互いに異なる形状からなる2つのコイルパターンを含んで構成され、かつ、これら2つのコイルパターンが、対向する板金部間で交互に(千鳥配置で)配置されている。したがって、上面から接続部が見通せる配置となり、ダイオードチップの配置や接続を片面から行うことができるようになるため、従来と比べて製造の際の機械化が容易となり、製造効率の向上が実現可能となる。
以上のように本実施の形態では、互いに異なる形状である2つのコイルパターン(板金43−1,44−1および板金44−2,43−2など)を面内の所定方向(この場合、X軸方向)に沿って連続的に配置させることにより、板金部(板金43−1,44−1を含む板金部、および板金44−2,43−2を含む板金部)を形成すると共に、対向する板金部間で2つのコイルパターンが交互に配置されるように、2数の板金部を互いにずらして重ね合わせるようにしたので、2数の板金部がそれぞれ、面内の所定方向(この場合、X軸方向)に沿って配置されると共に互いに異なる形状からなる2つのコイルパターンを含んで構成され、かつ、これら2つのコイルパターンが、対向する板金部間で交互に配置されるようになる。これにより、上面から接続部が見通せる配置となり、ダイオードチップの配置や接続を片面から行うことができるようになるため、従来と比べて製造の際の機械化が容易となり、製造効率を向上させることができる。よって、従来と比べて容易に製造することが可能となる。
また、各ダイオードチップがそれぞれ、所定のモールドパッケージ54によりモールドされているようにしたので、ダイオードチップを固定化することおよび板金部(板金43−1,44−1および板金44−2,43−2など)同士を固定化することが可能となると共に、ダイオードチップに対する異物の付着を抑止することが可能となる。
また、2つのコイルパターンが、所定の基準線Y1等に対して互いに左右対称の形状となっているようにしたので、左右非対称となっている場合と比べ、コイルとしての特性を向上させることが可能となる。
また、2枚の板金部を形成する工程において、互いに隣接する2つのコイルパターンを含む板金同士を、リードフレーム55A−1,55B−1,55C,55A−2,55B−2を介して配置させるようにすると共に、後にこれらリードフレーム55A−1,55B−1,55C,55A−2,55B−2を切断するようにしたので、これらのリードフレームを用いることにより、2枚の板金部の形成をより容易とすることが可能となる。
さらに、1次側コイル41A,41Bをそれぞれ、板金43−1,44−1と、板金44−2,43−2との層間に配置されているようにしたので、1次側コイル41A,41Bがこれらの板金部の層間以外に配置される場合と比べ、ダイオードチップからの放熱量が大きくなる。したがって、電力損失を低減し、回路の効率を向上させることが可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図12は、本実施の形態に係るスイッチング電源装置の回路構成を表したものである。本実施の形態のスイッチング電源装置は、第1の実施の形態のスイッチング電源装置において、トランス4および整流回路5の代わりに、トランス4Aおよび整流回路5Aを設けるようにしたものである。具体的には、上記第1の実施の形態では、各ダイオードチップが接続用板金53上に配置されている場合について説明したが、本実施の形態では、各ダイオードチップが各板金上に直接配置されており、例えば図12に示した2次側コイル(後述する2次側コイル42C,42D)が、図13に示した形状となっている。この図13に示したコイルセット(後述するコイルセット7A)の具体的形状については後述し、まず、図12に示した回路構成について説明する。なお、本発明の第2の実施の形態に係るコイルセット7Aおよびその製造方法についても、以下併せて説明する。
このスイッチング電源装置は、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられた入力平滑コンデンサ2と、1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間に設けられたインバータ回路1と、1次側コイル41(41A,41B)および2次側コイル42C,42Dを有するトランス4Aとを備えている。1次側高圧ラインL1Hの入力端子T1と1次側低圧ラインL1Lの入力端子T2との間には、高圧バッテリ10から出力される直流入力電圧Vinが印加されるようになっている。このスイッチング電源装置1はまた、トランス4Aの2次側に設けられた整流回路5Aと、この整流回路5Aに接続された平滑回路6とを備えている。
トランス4Aは、上部U型コアUCおよび下部U型コアDCから構成される磁芯40と、一対の1次側コイル41A,41Bと、一対の2次側コイル42C,42Dとを有している。このうち、一対の1次側コイル41A,41Bは、互いに直列接続されている。また、2次側コイル42Cは、1つの整流素子57A,58Aを介してセンタタップP1Cで接続された一対のコイル部45−1,46−2を有している。また、2次側コイル42Dは、1つの整流素子57B,58Bを介してセンタタップP1Dで接続された一対のコイル部45−2,46−1を有している。
このトランス4Aは、インバータ回路1によって生成された入力交流電圧を変圧し、2次側コイル42Cの各コイル部45−1,46−2から、互いに180度位相が異なる出力交流電圧を出力するようになっている。同様に、2次側コイル42Dの各コイル45−2,46−1の各端部からも、互いに180度位相が異なる出力交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合の変圧の度合いは、1次側コイル41A,41Bと、2次側コイル42C,42Dの各コイル部45−1,46−2,46−1,45−2との巻数比によって定まる。
整流回路5Aは、各2次側コイル42C、42Dからの出力を整流する一対の整流部からなる。そして、この整流部は、それぞれ一対の整流ダイオード57A,58A、および一対の整流ダイオード57B,58Bからなる単相全波整流型のものである。整流ダイオード57Aのアノードは、接続点P3を介して接地ラインLGに接続され、整流ダイオード57Aのカソードは、コイル部46−2におけるセンタタップP1C側と反対側の端部に接続されている。そして、コイル46−2における整流ダイオード57Aと反対側の端部は、センタタップP1Cおよび接続点P4を介して出力ラインLOに接続されている。また、整流ダイオード58Aのアノードは、コイル45−1における接続点P3側と反対側の端部に接続され、整流ダイオード58Aのカソードは、センタタップP1Cおよび接続点P4を介して出力ラインLOに接続されている。
一方、整流ダイオード57Bのアノードは、接続点P3を介して接地ラインLGに接続され、整流ダイオード57Bのカソードは、コイル部46−1におけるセンタタップP1D側と反対側の端部に接続されている。そして、コイル46−1における整流ダイオード57Bと反対側の端部は、センタタップP1Dおよび接続点P4を介して出力ラインLOに接続されている。また、整流ダイオード58Bのアノードは、コイル45−2における接続点P3側と反対側の端部に接続され、整流ダイオード58Bのカソードは、センタタップP1Dおよび接続点P4を介して出力ラインLOに接続されている。そして、各整流部および2次側コイルは後段の接続点P4で接続されて、各整流部からの出力が合成された全波整流電圧が得られるようになっている。
平滑回路6は、チョークコイル61と、出力平滑コンデンサ62とを含んで構成されている。このような構成により平滑回路6では、整流回路5Aで整流された全波整流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、これを出力端子T3,T4から低圧バッテリ(図示せず)に給電するようになっている。
次に図13を参照して、本実施の形態におけるコイルセット7Aについて説明する。図13は、このコイルセット7の外観構成を平面図(X−Y平面図:図13(A))および断面図(Z−X断面図:図13(B))で表したものであり、平面図においては、平滑回路6との接続関係も示している。
図13(A)に示したように、本実施の形態のコイルセット7Aでは、板金45−1の上に板金46−2を重ねて対向配置させることによって2次側コイル42Cを形成すると共に、板金45−2の上に板金46−1を重ねて対向配置させることによって2次側コイル42Dを形成している。そして、この2次側コイル42Cと、2次側コイル42Dとにおいて、後述のように板金46−2と板金45−2とが同一形状であり、かつ板金45−1と板金46−1とが同一形状である。さらに、板金46−2,45−2と板金45−1,46−1とは、左右対称の形状となっている。これらの板金が対向した2組の板金が、面内の所定方向(X軸方向)に沿って配置され、隣り合う板金46−2,46−1および板金45−1,45−2が互いに異なるコイルパターン(左右対称)となっている。そして、互いに隣り合う表側の板金46−2,46−1は、ショートバー65A(図13(A)では点線で図示)で接続されて接続点P3を形成しており、互いに隣り合う裏側の板金45−1,45−2は、ショートバー65B(図13(A)では点線で図示)で接続されて接続点P4を形成している。
また、図13(B)に示したように、同一コイルパターン同士の板金46−2,45−2と、やはり同一コイルパターン同士の板金45−1,46−1とが、たすき掛けの配置となっている。さらに、隣り合った板金43−1,44−1と板金44−2,43−2とは、図13(A)に記載した中線Y3(Y軸方向に沿った基準線)に対し、互いに左右対称の形状となっている。なお、板金46−1と板金45−1との間には、一次側コイル41Aが挿入されており、板金46−1と板金45−1との間には、一次側コイル41Bが挿入されている。
なお、板金45−1,46−2は、図12の回路図におけるコイル部45−1,46−2に相当してトランス4の2次側コイル42Cを形成し、板金45−2,46−1は、図12の回路図におけるコイル部45−2,46−1に相当してトランス4の2次側コイル42Dを形成している。このため、板金46−2のコイルパターンは、板金45−1のコイルパターンに対して、貫通孔40Cを基準に逆巻となっており、板金46−1のコイルパターンは、板金45−2のコイルパターンに対して、貫通孔40Dを基準に逆巻となっている。
また、図13(A)では、板金45−1上にダイオードチップ57A,58Aを直接配置させており、これらダイオードチップ57A,58Aは、板金46−2とボンディングワイヤ56を介して接続されている。ダイオードチップ57A,58Aでは、板金45−1側がアノード側であり、ボンディングワイヤ56側がカソード側となっている。同様に、板金45−2上にダイオードチップ57B,58Bを直接配置させており、これらダイオードチップ57B,58Bは、板金46−1とボンディングワイヤ56を介して接続されている。ダイオードチップ57B,58Bでは、板金45−2側がアノード側であり、ボンディングワイヤ56側がカソードとなっている。
また、各ダイオードチップ57A,58A,57B,58Bは、所定のモールドパッケージ54によりモールドされている。このモールドパッケージ54は、これらのダイオードのみならず、板金45−1,46−2,45−2,46−1を一定の位置関係となるように固着しているので、コイルセット7A全体の形状安定性が担保されている。
なお、ショートバー65Aは、板金46−2,46−1と図示しないねじで固定されており、ショートバー65Bは、板金45−1,45−2と図示しないねじで固定されている。このように、接続点P3の機能を有すると共に接地ラインLGと接続されるショートバー65Bを裏側にすることで、板金45−1,45−2およびショートバー65Bをシャーシ等のグランドラインに直接固定することもでき、簡易な構成を取ることが可能である。
また、このような構成のコイルセット7Aは、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、例えば図14に示したように、リードフレーム55A−1,55B−1間で互いに交互に配置された板金45−1,45−2の連続パターンと、リードフレーム55A−2,55B−2間で互いに交互に配置された板金46−1,46−2の連続パターンとを用意する。板金45−1,46−1が同一形状であり、かつ、板金45−2,46−2が同一形状であるため、これら2つの連続パターンは、板金位置がお互いにずれているのみで同一の物である。そして、図中の矢印P12で示したように、互いに重ね合わせる。なお、ここでは、板金46−1,46−2が含まれる連続パターンを表側に重ねることを想定している。これにより、板金45−1と板金46−2とが対向すると共に、板金45−2と板金46−1とが対向したコイルセットの原型が形成される。
次に、例えば図15に示したように重ねられた2つの連続パターンの板金45−1上に、ダイオードチップ57A,58Aを直接配置させると共に、板金45−2上に、ダイオードチップ57B,58Bを直接配置させ、これらにワイヤボンディングを施す。その後、各ダイオードチップをモールドパッケージする。続いて、ショートバー65Aによって板金46−2,46−1同士を互いに接続させ、ショートバー65Bによって板金45−1,45−2同士を互いに接続させる。その後、各リードフレーム55A−1,55A−2,55B−1,55B−2を切り離す。これにより、図13に示したコイルセット7Aが完成する。
なお、上記では、連続パターンを重ねた後にダイオードを配置したが、ダイオードの配置後に連続パターンを重ね、その後にワイヤボンディングしてもよい。また、連続パターンを重ねた後、ダイオードの配置の前にショートバーを接続してもよい。
次に、図16〜図19を参照して、本実施の形態のスイッチング電源装置の動作について説明する。なお、図8等に示した第1の実施の形態のスイッチング電源装置と同一の動作については、同一符号を用いてその説明を省略する。
このスイッチング電源装置では、インバータ回路1において、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされて入力交流電圧が生成され、この入力交流電圧がトランス4の1次側コイル41A,41Bへ供給される。そしてトランス4Aでは入力交流電圧が変圧され、2次側コイル42C,42Dから、変圧された出力交流電圧が出力される。
整流回路5Aでは、トランス4から出力された出力交流電圧が、整流ダイオード57A,58A,57B,58Bによって整流される。これにより整流回路5Aを介した接続点P4と接続点P3との間に、整流出力が発生する。
平滑回路6では、この整流回路5Aにおいて発生する整流出力が、チョークコイル61と出力平滑コンデンサ62とによって平滑化され、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力される。そしてこの直流出力電圧Voutは、図示しない低圧バッテリに給電されてその充電に供されると共に、負荷Lが駆動される。
また、このスイッチング電源装置の動作をより詳細に説明すると、まず、図16に示したように、インバータ回路1のスイッチング素子11,14がそれぞれオン状態になると、スイッチング素子11からスイッチング素子14の方向に1次側ループ電流Ic1が流れる。すると、トランス4Aの2次側コイル42A,42Bの各コイル部45−1,46−2,45−2,46−1にそれぞれ現れる電圧は、整流ダイオード58A,58Bに対して逆方向となる一方、整流ダイオード57A,57Bに対して順方向となる。このため、接地ラインLG、整流ダイオード57A,57Bからコイル部46−2,46−1を通り接続点P4、出力ラインLO、チョークコイル61および出力平滑コンデンサ62を順に通る2次側ループ電流Ic2が流れる。そしてこの2次側ループ電流Ic2により、直流出力電圧Voutが図示しない低圧バッテリに給電されると共に、負荷Lが駆動される。
ここで、図17を参照して、このような2次側ループ電流Ic2を、本実施の形態のコイルセット7Aを用いて説明する。なお、理解の容易のため、図17では、図13(A)に示したモールドパッケージ54は図示されていない。図17において、図16の状態では、2次側電流ループIc2は、接地ラインLGからショートバー65B上の接続点P3で分岐し、2次側コイル42C,42Dの裏側の板金45−1,45−2上のダイオード57A,57Bを介して、表側の板金46−2,46−1(コイル部46−2,46−1に相当)へと流れる。このとき、2次側コイル42C,42Dは、図示しないコアの周りを互いに反対方向に回巻しているため、板金46−2,46−1には、コア中の磁束に基づく図中の実線で示した2次側電流ループIc2が流れる。また、各板金46−2,46−1を流れた電流Ic2は、ショートバー65A上の接続点P4で合流し、出力ラインLOに出力され、電流ループIc2が流れることとなる。
一方、図18に示したように、インバータ回路1のスイッチング素子11,14がそれぞれオフ状態になると共に、インバータ回路1のスイッチング素子12,13がそれぞれオン状態になると、スイッチング素子13からスイッチング素子12の方向に1次側ループ電流Id1が流れる。すると、トランス4Aの2次側コイル42A,42Bの各コイル部43−1,44−2,44−1,43−2にそれぞれ現れる電圧は、整流ダイオード57A,57Bに対して逆方向となる一方、整流ダイオード58A,58Bに対して順方向となる。このため、接地ラインLG、コイル部45−1,45−2から整流ダイオード58A,58Bを通り接続点P4、出力ラインLO、チョークコイル61および出力平滑コンデンサ62を順に通る2次側ループ電流Id2が流れる。そしてこの2次側ループ電流Id2により、直流出力電圧Voutが図示しない低圧バッテリに給電されると共に、負荷Lが駆動される。
ここで、図19を参照して、このような2次側ループ電流Id2を、本実施の形態のコイルセット7Aを用いて説明する。なお、理解の容易のため、図19では、図13(A)に示したモールドパッケージ54は図示されていない。図19において、図18の状態では、2次側電流ループId2は、接地ラインLGからショートバー65B上の接続点P3で分岐し、2次側コイル42C,42Dの裏側の板金45−1,45−2(コイル部45−1,45−2に相当)へと流れる。各板金45−1,45−2は、図示しないコアの周りを反対方向に回巻しているため、板金45−1,45−2には、図中の点線で示した2次側電流ループId2が流れる。なお、表側の板金46−2と裏側の板金45−1とは、コアに対して逆巻に巻かれており、同様に表側の板金46−1と裏側の板金45−2とも、コアに対して逆巻に巻かれているため、図17の状態と図19の状態とでは、各2次側コイルに逆向きの電流が流れる。また、板金45−1,45−2を流れた電流は、それぞれ整流ダイオード58A,58Bを通過して表側の板金46−2,46−1を通り、ショートバー65A上の接続点P4で合流し、出力ラインLOに出力され、2次側電流ループId2が流れることになる。
以上のように本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、互いに異なる形状である2つのコイルパターン(板金45−1,45−2および板金46−2,46−1など)を面内の所定方向(この場合、X軸方向)に沿って連続的に配置させることにより、板金部(板金45−1,45−2を含む板金部、および板金46−2,46−1を含む板金部)を形成すると共に、対向する板金部間で2つのコイルパターンが交互に配置されるように、2数の板金部を互いにずらして重ね合わせるようにしたので、2数の板金部がそれぞれ、面内の所定方向(この場合、X軸方向)に沿って配置されると共に互いに異なる形状からなる2つのコイルパターンを含んで構成され、かつ、これら2つのコイルパターンが、対向する板金部間で交互に配置されるようになる。これにより、上面から接続部が見通せる配置となり、ダイオードチップの配置や接続を片面から行うことができるようになるため、従来と比べて製造の際の機械化が容易となり、製造効率を向上させることができる。よって、従来と比べて容易に製造することが可能となる。
また、上記板金部に対してダイオードチップを電気的に接続させる工程において、板金部上にダイオードチップを直接配置させるようにしたので、各ダイオードチップを配置するための別個の部材(この場合、各ダイオードチップを配置するための接続用板金53)が不要となり、各板金部の形状を同一パターンとすることができる。よって、製造工程をより容易とすることができると共に、製造コストをより低減することが可能となる。
以上、第1および第2の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、ダイオード51A,52A,51B,52Bのカソードが共通に接続されるいわゆるカソードコモンを採用しているが、各ダイオードの向きを反転させ、アノードを共通接続したいわゆるアノードコモンであってもよい。
また、上記実施の形態では、2つのコイルパターンが、所定の基準線Y1等に対して互いに左右対称の形状となっている場合について説明したが、これら2つのコイルパターンは、必ずしも完全に左右対称となっていなくともよい。
また、上記第1の実施の形態では、板金部が2枚(板金43−1,44−1および板金44−2,43−2)の場合で説明したが、例えば図20に示したように、板金部(この場合、板金43−1,44−1、板金44−2,43−2および板金43−3,44−3)を、3枚以上の複数枚で構成してもよい。なお、同様に第2の実施の形態においても、板金部を3枚以上の複数枚で構成してもよい。
また、上記第1の実施の形態では、1次側コイル41A,41Bがそれぞれ、板金43−1,44−1と、板金44−2,43−2との層間に配置されている場合について説明したが、これら1次側コイル41A,41Bを、板金43−1,44−1と、板金44−2,43−2との層間以外に配置してもよい。なお、同様に第2の実施の形態においても、1次側コイル41A,41Bを、板金45−1,45−2と、板金46−2,46−1との層間以外に配置してもよい。
また、上記実施の形態では、整流素子の一例として整流ダイオードを挙げて説明したが、整流素子としてFET(電界効果型トランジスタ)を用いるようにしてもよい。このようなFETを用いて同期整流動作を行うようにすれば、上記実施の形態等と比べて回路の効率をより向上させることが可能となる。
また、上記実施の形態では、1次側コイルや2次側コイル(板金)の形状を具体的に挙げて説明したが、これら1次側コイルや2次側コイル(板金)の形状はこの場合には限られず、他の形状でもよい。
また、上記実施の形態では、インバータ回路1がフルブリッジ型のインバータ回路である場合について説明したが、インバータ回路1の構成はこれには限られず、例えば、ハーフブリッジ型やフォワード型などの構成でもよい。
また、上記実施の形態では、整流回路5がそれぞれ、アノードコモン接続のセンタタップ型および(整流ダイオードがコモン接続でない)センタタップ型の整流回路である場合について説明したが、整流回路の構成はこれには限られず、例えば、アノードコモン接続ではなくカソードコモン接続のセンタタップ型でもよく、また、センタタップ型以外(例えば、ハーフブリッジ型やフォワード型、フライバック型など)の構成でもよい。また、全波整流型の整流回路ではなく、半波整流型の整流回路でもよい。
また、上記実施の形態では、2次側コイルの各端部からの出力、すなわち、トランスの出力が180度異なる位相の場合で説明しているが、必ずしも180度の位相差を持たせる必要はなく、他の位相差であってもよい。
さらに、上記実施の形態において説明した変形例等を組み合わせてもよい。
1…インバータ回路、11〜14…スイッチング素子、10…高圧バッテリ、2…入力平滑コンデンサ、4,4A…トランス、40…磁芯、40A,40B,40C,40D…コア貫通孔、41,41A,41B…1次側コイル、42A,42B,42C,42D…2次側コイル、43−1〜43−3,44−1〜44−3,45−1,45−2,46−1、46−2…板金(コイル部)、43−1H,44−2H,44−1H,43−2H…ねじ止め用の孔、5,5A…整流回路、51A,51B,52A,52B,57A,57B,58A,58B…整流ダイオード(ダイオードチップ)、53…接続用板金、53H…ねじ止め用の孔、54…モールドパッケージ、55A−1,55A−2,55B−1,55B−2,55C…リードフレーム、56…ボンディングワイヤ、6…平滑回路、61…チョークコイル、62…出力平滑コンデンサ、65A,65B…ショートバー、7,7A…コイルセット、L1H…1次側高圧ライン、L1L…1次側低圧ライン、LO…出力ライン、LG…接地ライン、T1,T2…入力端子、T3,T4…出力端子、L…負荷、UC…上部U型コア、DC…下部U型コア、UCb,DCb…ベースコア、UC1,DC1…第1磁芯、UC2,DC2…第2磁芯、P1A,P1B,P1C,P1D…接続点(センタタップ)、P2A,P2B,P3,P4…接続点、Vin…直流入力電圧、Vout…直流出力電圧、Ia1,Ib1,Ic1,Id1…電流(1次側ループ電流)、Ia2,Ib2,Ic2,Id2…電流(2次側ループ電流)、Y1,Y21,Y22,Y3…基準線。