以下では図面等を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。図1は本発明におけるトルクコンバータのスリップ制御装置のシステム構成概略図である。
トルクコンバータ1は、エンジン14と変速機15との間に介装され、エンジン14の駆動力を流体を介して変速機15に伝達する。変速機15は自動変速機であり、変速機15に伝達された駆動力は、図示しない終減速装置を介して駆動輪16へと伝達される。
トルクコンバータ1には、エンジン14の出力軸と連結されるポンプインペラ12と、変速機15の入力軸に連結されるタービンランナ13とが対向するように配置される。エンジン14の回転に伴ってタービンランナ13が回転すると、トルクコンバータ1の内部に充填された流体(ATF)が流動し、これによってタービンランナ13が回転する。トルクコンバータ1はさらにタービンランナ13とともに回転するロックアップクラッチ2を内蔵している。
トルクコンバータ1は、ロックアップクラッチ2をポンプインペラ12に締結するとトルクコンバータの入力要素と出力要素とが直結されてロックアップ状態となる。また、入力要素と出力要素とを半締結状態にすると、入力要素と出力要素との間にスリップを生じるスリップ状態となる。ロックアップクラッチ2を完全に解放するとコンバータ状態となる。
ロックアップクラッチ2は、その両側に作用するトルクコンバータアプライ圧PA(以下、アプライ圧PA)とトルクコンバータレリーズ圧PR(以下、レリーズ圧PR)との差圧ΔP(=PA−PR)に応じて動作する。ロックアップクラッチ2は、レリーズ圧PRがアプライ圧PAよりも高いとき解放され、レリーズ圧PRがアプライ圧PAよりも低いとき締結される。
ロックアップクラッチ2の締結力に依存するトルクコンバータのロックアップクラッチによる伝達可能トルク、つまりロックアップ容量は差圧ΔPにより決定される。差圧ΔPが大きい程ロックアップクラッチ2の締結力が増大してロックアップ容量が増大する。差圧ΔPはロックアップ制御弁3によって制御される。
ロックアップ制御弁3は、ロックアップクラッチ2に作用するアプライ圧及びレリーズ圧を制御することで差圧ΔPを制御する。ロックアップ制御弁3にはアプライ圧PA及びレリーズ圧PRを向かい合わせに作用させ、さらにアプライ圧PAと同方向にバネ3aの付勢力を作用させ、レリーズ圧PRと同方向にロックアップソレノイド4から供給される信号圧PSを作用させる。差圧ΔPは、これら油圧とバネの付勢力が釣り合うように決定される。
ロックアップソレノイド4は、ポンプ圧PPを元圧としてコントローラ5から送信されるロックアップデューティDに応じて信号圧PSを作り出す。
電源電圧を検出する電源電圧センサ6、ポンプインペラ12の回転速度を検出するポンプインペラ回転センサ7、タービンランナ13の回転速度を検出するタービンランナ回転センサ8、変速機15の出力軸回転速度を検出する変速機出力軸回転センサ9、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ10、及びATFの温度を検出するATF温度センサ11は、それぞれの検出値をコントローラ5へ送信する。
コントローラ5は、受信した信号に基づいてロックアップクラッチ2の締結状態を制御するために、ロックアップソレノイド4の駆動デューティDを決定するとともに、電源電圧信号に応じてロックアップデューティDの補正を行う。
次にコントローラ5で行う制御について図2のフローチャートを参照しながら説明する。なお、この制御は例えば20ms毎に行う。また、スリップ制御、ロックアップ制御、コンバータ制御は、それぞれロックアップクラッチ2の締結状態をスリップ状態、ロックアップ状態、コンバータ状態に維持する制御である。
ステップS1では、トルクコンバータ1の制御がスリップ制御であるか否かを判定する。スリップ制御であると判定されるとステップS4へ進み、スリップ制御でないと判定されるとステップS2へ進む。
トルクコンバータ1の制御は図3に示すマップを参照して、車速及びスロットル開度に基づいて検索される。なお、車速は変速機出力軸回転センサによって検出された変速機15の出力軸回転速度に所定の定数を乗じて算出される。図3は車速、スロットル開度、及び制御領域を示すマップであり、車速が所定値V1より小さい場合は、ロックアップクラッチ2をコンバータ制御とする。また、車速が所定値V1より大きく、かつ所定値V2より小さい場合は、スロットル開度が所定値TVO1よりも小さい場合にスリップ制御とし、スロットル開度が所定値TVO1より大きい場合にロックアップ制御とする。さらに、車速が所定値V2よりも大きい場合はロックアップ制御とする。
ステップS2では、トルクコンバータ1の制御がロックアップ制御か否かを判定する。ロックアップ制御であると判定されるとステップS3へ進み、ロックアップ制御でないと判定されるとステップS14へ進む。
ステップS3では、ロックアップ制御において完全ロックアップ状態、すなわち差圧指令値が最大の状態に移行できているか否かを判定する。移行できている場合はステップS13へ進み、移行できていない場合はステップS4へ進む。
ステップS4では、前回処理時の制御状態がコンバータ制御であったか否かを判定する。コンバータ制御であった場合はステップS5へ進み、コンバータ制御でなかった場合はステップS7へ進む。ここで、前回処理時の制御がコンバータ制御であったと判定される場合は、制御領域がコンバータ制御からスリップ制御またはロックアップ制御へ移行した初回の処理時であるので、以下のステップS5、S6においてオープン制御(オープンループ制御)で差圧指令値を上昇させて昇圧動作を行うための準備処理を行う。
ステップS5では、初期差圧を設定する。初期差圧は図4に示すテーブルを参照してスロットル開度に基づいて設定される。
ステップS6では、オープン制御による昇圧動作を実行中であることを示すオープン制御フラグをセットする(fOPEN_EXE=1)。
ステップS7では、オープン制御による昇圧動作を実行中であるか否かをオープン制御フラグによって判定する。オープン制御を実行中である場合(fOPEN_EXE=1)にはステップS8へ進み、実行中でない場合(fOPEN_EXE=0)にはステップS12へ進む。
ステップS8では、オープン制御による昇圧動作を終了してよいか否かを判定する。オープン制御終了と判定されるとステップS10へ進み、オープン制御終了と判定されないときステップ9へ進む。オープン制御の終了は以下の(1)式に基づいて判定され、(1)式が成立するときオープン制御終了と判定される。
Nslp<Nslp_end ・・・(1)
ここで、Nslpは実スリップ回転速度、Nslp_endはコンバータ状態からスリップ状態へ移行するためのオープン制御終了スリップ回転速度である。Nslp_endは図5のテーブルを参照することでスロットル開度に基づいて算出される。
ステップS9では、コンバータ状態からスリップ状態へ移行するためのオープン制御を実行する。本ステップにおけるオープン制御の詳細については後述する。
一方、ステップS8においてオープン制御終了と判定されると、ステップS10へ進んでオープン制御による昇圧動作を終了してスリップ制御に切り替えるために制御系の初期化処理を行う。初期化処理はスリップ制御で用いる積分器などをスリップ制御開始時点の差圧指令に対応させて初期化する処理であり、例えば特開2000−145949公報に記載された方法によって行うが、ここでは詳細な説明について省略する。
ステップS11では、オープン制御による昇圧動作を実行中であることを示すオープン制御フラグをクリアする(fOPEN_EXE=0)。
ステップS12では、スリップ制御を実行する。スリップ制御は、トルクコンバータ1のポンプインペラ回転速度とタービンランナ回転速度との差であるスリップ回転速度と、車両の運転状態に基づいて算出される目標スリップ回転速度との差であるスリップ回転偏差をフィードバック補償器の入力値として、入力値がゼロとなるようにロックアップクラッチ2の締結力をフィードバック制御する制御である。スリップ制御は、例えば特許3240979号、3183235号、3230465号などに示す制御系を用いて行い所望の差圧指令値を算出するが、ここでは詳細な説明について省略する。
また、スリップ制御からロックアップ状態への昇圧動作は例えば特開2000−240786などに示すスリップ制御系を用いて行うが、ここでは詳細な説明について省略する。
一方、ステップS3においてロックアップ完了と判定されると、ロックアップ制御における締結動作が完了しているのでステップS13へ進んで差圧ΔPを最高圧に保持する。
ステップS2においてロックアップ制御でないと判定されると、コンバータ制御中であるのでステップS14へ進んで差圧ΔPを最低圧に保持する。このとき、差圧指令値と差圧ΔPの最低圧との間に差がある場合は、指令値が急に最低圧となって指令値に段差が生じることのないように、指令値を所定の変化率で徐々に変化させる。
次にステップS9において行うコンバータ状態からスリップ状態へ移行するためのオープン制御について図6のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
ステップS50では、エンジントルクTQEを読み込む。エンジントルクTQEは、エンジン回転速度及びスロットル開度に基づいてエンジン特性マップを参照することで算出される。エンジン特性マップは予め実験などによって求めておく。
ステップS51では、所定時間T1におけるエンジントルクTQEの変化量ΔTQEを算出する。所定時間T1は、エンジントルクTQEやロックアップクラッチ2の締結力の応答遅れ時間より長い時間に設定されるように予め実験などによって求めておく。
ステップS52では、前回処理時からのエンジントルクTQEの変化量ΔTQE2を算出する。
ステップS53では、前回処理時に設定された差圧指令値PLU_zにおけるロックアップ容量TLU_zを図7のテーブルに基づいて検索する。ロックアップ容量TLU_zが現時点におけるロックアップ容量となる。
ステップS54では、オープン制御終了回転速度Nslp_endを図5のテーブルを参照してスロットル開度に基づいて算出する。
ステップS55では、オープン制御終了回転速度Nslp_endにおけるコンバータトルクTcnv_ENDを算出する。コンバータトルクTcnv_ENDは、例えば特許03183235などに示すスリップ回転制御を行う場合、以下の(2)式に基づいて算出される。
Tcnv_END=Nslp_end/gSLP ・・・(2)
ここで、gSLPはスリップ回転ゲインであり、図8のテーブルを参照してタービンランナ13の回転速度に基づいて算出される。
ステップS56では、ロックアップ急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを算出する。ロックアップ急締結危険エリア指定容量TLU_SOSとは、スロットル開度が低下してエンジントルクが急激に低下することによるロックアップクラッチの急締結が生じる危険性のある範囲を指定するロックアップ容量の上限値である。すなわち、エンジントルクがロックアップ急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回ったとき、ロックアップ急締結危険エリアに入ったことになる。ロックアップ急締結危険エリア指定容量TLU_SOSは以下の(3)式に基づいて算出される。
TLU_SOS=TLU_END+|ΔTQE1| ・・・(3)
ここで、TLU_ENDは現時点でオープン制御を終了するために要するエンジントルクであり、以下の(4)式に基づいて算出される。
TLU_END=TLU_z+Tcnv_END ・・・(4)
エンジントルクTQEが、ロックアップ容量TLUにオープン制御終了時におけるコンバータトルクTcnv_ENDを加えた値TLU_ENDとなる場合とは、オープン制御を終了してスリップ制御が開始できる状態になった場合である。エンジントルクTQEがこのような値TLU_ENDになったとき、ロックアップ容量TLUを低下させても応答遅れなどによってエンジントルクTQEがロックアップ容量TLUを下回ってロックアップクラッチ2が急締結する可能性がある。
そこで、TLU_ENDに所定時間T1におけるエンジントルク変化量の絶対値|ΔTQE1|を加えた値をロックアップ急締結危険エリア指定容量TLU_SOSとする。これにより、エンジントルクがロックアップ急締結危険エリアに入ったとき、その時点から所定時間T1の間エンジントルクが同じ割合で低下してもオープン制御終了時におけるコンバータトルクを確保できることになる。
ステップS57では、締結力急抜き判定基準値CUTDWN_JDGを設定する。締結力急抜き判定基準値CUTDWN_JDGとは、エンジントルクがロックアップ急締結危険エリアに入ったとき、ロックアップ容量を急抜き、すなわちステップ状に急激に低下させるか否かを判定するための基準値であり、ステップS55で算出したコンバータトルクTcnv_ENDに設定される。ここで、締結力急抜き判定基準値CUTDWN_JDGに以下の(5)式に示すように上限リミットCDJDG_MAX及び下限リミットCDJDG_MINを施すことで、急抜き判定の精度を向上させることができる。
CUTDWN_JDG=MAX(CDJDG_MIN、MIN(Tcnv_END、CDJDG_MAX)) ・・・(5)
ステップS58では、急抜き判定が成立したときのロックアップ容量の急抜き量TLU_CUTDWNを算出する。急抜き量TLU_CUTDWNは初回の急抜き時のみ以下の(6)式に示すように設定され、2回目以降は以下の(7)式に示すように設定される。
TLU_CUTDWN=|ΔTQE1|+Tcnv_END ・・・(6)
TLU_CUTDWN=|ΔTQE1| ・・・(7)
ステップS59では、エンジントルクTQEがロックアップ急締結危険エリアに入っているか否かを以下の(8)式に基づいて判定する。(8)式が成立するときはステップS60へ進み、非成立のときはステップS69へ進む。
TQE<TLU_SOS ・・・(8)
ステップS60では、ロックアップ容量の急抜きを実行する必要があるか否かを、所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1及び締結力急抜き判定基準値CUTDWN_JDGに基づいて以下の(9)式によって判定する。(9)式が成立するときはステップS61へ進み、非成立の時はステップS63へ進む。
ΔTQE1<CUTDWN_JDG ・・・(9)
ステップS61では、急抜き処理を実行する。急抜き処理では、ロックアップ容量TLUを前回処理時のロックアップ容量TLU_zと急抜き量TLU_CUTDWNに基づいて以下の(10)式によって算出する。
TLU=TLU_z−TLU_CUTDWN ・・・(10)
ステップS62では、急抜きタイマTLUCDtmrを所定時間T2にセットする。急抜きタイマTLUCDtmrは、差圧指令値に対するロックアップクラッチの締結力の応答遅れを考慮して、急抜き後の所定時間T2だけロックアップ容量を一定に保持するために設定されるものであり、T2が応答遅れ以上の時間に設定されるよう予め実験などによって求めておく。また、急抜きタイマTLUCDtmrの初期値はゼロである。
一方、ステップS60において(9)式が非成立のときは、ステップS63へ進んで急抜きタイマTLUCDtmrがゼロであるか否かを判定する。ゼロであればステップS64へ進み、ゼロでなければステップS66へ進む。
ステップS64では、前回処理時からのエンジントルクTQEの変化量ΔTQE2がゼロより小さいか否かを判定する。小さければステップS65へ進み、ゼロ以上であればステップS67へ進む。
ステップS65では、締結力減少処理を実行する。締結力減少処理では、ロックアップ容量TLUをエンジントルクTQEの減少分だけ減少させる。ロックアップ容量TLUは以下の(11)式に基づいて算出される。
TLU=TLU_z+ΔTQE2 ・・・(11)
一方、ステップS63において急抜きタイマTLUCDtmrがゼロでない場合は、ステップS66へ進んで急抜きタイマTLUCDtmrをカウントダウンする。
ステップS67では、ロックアップ容量TLUを以下の(12)式に示すように前回処理時の値に保持してロックアップクラッチの締結力を保持する。
TLU=TLU_z ・・・(12)
本ステップの処理では、ステップS64から進んできた場合には、ロックアップクラッチの急締結の危険はあるがエンジントルクが保持及び増加しているので、ロックアップ容量を保持することでロックアップクラッチの急締結を回避する。ステップS66から進んできた場合には、差圧指令値に対するロックアップクラッチの締結力の応答遅れを考慮して、ロックアップ容量を保持することで確実に急抜きを実行させる。
ステップS68では、ステップS61、S65、S67において設定したロックアップ容量TLUに基づいて図7のテーブルを参照することでロックアップクラッチの締結圧である差圧指令値PLUを設定する。
一方、ステップS59において(8)式が非成立のときは、ステップS69へ進んで急抜きタイマTLUCDtmrがゼロであるか否かを判定する。ゼロであればステップS70へ進み、ゼロでなければステップS71へ進む。
ステップS70では、通常時のオープン昇圧動作における差圧指令値を設定する。すなわち、図9のテーブルを参照することでスロットル開度に基づいて単位時間当たりの昇圧量DPRSを検索する。ここで、単位時間とは制御サイクルと等価であり例えば20msである。次に以下の(13)式に基づいてオープン制御中の差圧指令値Plucを算出する。
Pluc=PLU_z+DPRS ・・・(13)
ここで、PLU_zは前回処理時の差圧指令値である。
一方、ステップS69において急抜きタイマTLUCDtmrがゼロでないと判定されると、ステップS71へ進んでロックアップ容量TLUを上記(12)式に示すように前回処理時の値に保持してロックアップクラッチの締結力を保持する。
ステップS72では、急抜きタイマTLUCDtmrをカウントダウンする。
以上の制御をまとめて図10〜図20のタイミングチャートを参照しながら本実施形態の作用を説明する。
初めに図10、図11を用いて従来例について説明する。図10はエンジントルクの減少時にロックアップ容量を低下させない場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量、(c)はエンジントルク、(d)はロックアップ容量、(e)はエンジン回転速度、(f)はプライマリ回転速度、(g)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少する。これによりエンジントルクTQEが減少するが、ロックアップ容量TLUを減少させないのでエンジン回転速度及びスリップ回転速度が低下する。時刻t2においてスリップ回転速度がオープン制御終了回転速度を下回り、時刻t3においてエンジン回転速度がプライマリ回転速度と一致、すなわちスリップ回転速度がゼロとなる。このようにロックアップクラッチが急締結することで、ショックを生じ、エンジン回転速度及びプライマリ回転速度が振動する。
図11はエンジントルクの減少時にロックアップクラッチを急解放する場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)はエンジントルク、(c)はロックアップ容量、(d)はエンジン回転速度、(e)はプライマリ回転速度、(f)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少する。これによりエンジントルクが減少するので、時刻t2においてロックアップクラッチが完全コンバータ状態となるようにロックアップ容量を最低圧まで急減させてロックアップクラッチを急解放する。ロックアップクラッチの急解放によってショックを生じると共にエンジン回転速度が急上昇する。また、スリップ回転速度が上昇してコンバータ状態となるので、この状態からスリップ回転速度をゼロにする、すなわちスリップ制御を再開してロックアップ状態へ移行させるまでに要する時間が長くなる。
次に図12〜図20を参照しながら本実施形態について説明する。なお、以下の図12〜図20の説明中、図2、図6のフローチャートに対応する符号を括弧内に示した。
図12は、エンジントルクの減少時にロックアップクラッチ締結圧を低下させる場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量、(c)はエンジントルク、(d)はロックアップ容量、(e)はエンジン回転速度、(f)はプライマリ回転速度、(g)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少し、その後エンジントルクTQEも減少する。時刻t2において、所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1が急抜き判定基準値CUTDWN_JDGを下回ると(S60)、時刻t3までの間、ロックアップ容量TLUを所定の変化率で低下させる(S61)。これにより、ロックアップ容量TLUがエンジントルクTQEより大きくなることがないので、エンジン回転速度はプライマリ回転速度まで低下せず、ロックアップクラッチの急締結を防止でき、ショックや振動の発生を抑制することができる。時刻t4において、スリップ回転速度Nslpがオープン制御終了回転速度Nslp_endを下回るとスリップ制御へ移行する。
図13は、エンジントルクが急締結危険エリアに入ったとき、ロックアップクラッチ締結圧を低下させる場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量、(c)はエンジントルク、(d)はロックアップ容量、(e)はエンジン回転速度、(f)はプライマリ回転速度、(g)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少し、その後エンジントルクTQEも減少する。さらに、急締結危険エリア指定容量TLU_SOSが増大し、時刻t2においてエンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回るので(S59)、ロックアップ容量をステップ状に急低下させる(S61)。これにより、ロックアップ容量TLUがエンジントルクTQEより大きくなることがないので、エンジン回転速度はプライマリ回転速度まで低下せず、ロックアップクラッチの急締結を防止でき、ショックや振動の発生を抑制することができる。その後通常のオープン制御に戻り(S70)、時刻t3において、スリップ回転速度Nslpがオープン制御終了回転速度Nslp_endを下回るとスリップ制御へ移行する(S12)。
図14は、エンジントルクが急締結危険エリアに入ったときであって、エンジントルクの変化量が小さいときに、ロックアップクラッチ締結圧を減圧させる場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量、(c)はエンジントルク、(d)はロックアップ容量、(e)はエンジン回転速度、(f)はプライマリ回転速度、(g)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少し、その後エンジントルクTQEも減少する。さらに、急締結危険エリア指定容量TLU_SOSが増大し、時刻t2においてエンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回る(S59)。このとき所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1は急抜き判定基準値CUTDWN_JDGより大きいので、ロックアップ容量TLUを急抜きする必要はないが、エンジントルクTQEは減少しているので(S64)、ロックアップ容量TLUをエンジントルクTQEの減少分ΔTQE2だけ低下させる(S65)。これにより、ロックアップ容量TLUがエンジントルクTQEより大きくなることがないので、エンジン回転速度はプライマリ回転速度まで低下せず、ロックアップクラッチの急締結を防止でき、ショックや振動の発生を抑制することができる。時刻t3において、エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOS以上となると通常のオープン制御に戻り(S70)、時刻t4においてスリップ回転速度Nslpはオープン制御終了回転速度Nslp_endを下回るとスリップ制御へ移行する(S12)。
図15は、エンジントルクが急締結危険エリアに入ったときであって、エンジントルクの変化量が大きいときに、ロックアップクラッチ締結圧を減圧させる場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量、(c)はエンジントルク、(d)はロックアップ容量、(e)はエンジン回転速度、(f)はプライマリ回転速度、(g)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少し、その後エンジントルクTQEも減少する。時刻t2において、所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1が急抜き判定基準値CUTDWN_JDGを下回るが、エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回っていないのでロックアップ容量は低下させない。時刻t3においてエンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回ると(S59)、ロックアップ容量を|ΔTQE1|だけステップ状に低下させる(S61)。これにより、急締結危険エリア指定容量TLU_SOSも低下するのでエンジントルクTQEは急締結危険エリア指定容量TLU_SOSより大きくなる。時刻t4において、再度エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回るので、ロックアップ容量を|ΔTQE1|だけ減少させる。
これにより、ロックアップ容量TLUがエンジントルクTQEより大きくなることがないので、エンジン回転速度はプライマリ回転速度まで低下せず、ロックアップクラッチの急締結を防止でき、ショックや振動の発生を抑制することができる。その後、オープン制御によってロックアップ容量を増加させ(S70)、時刻t5においてスリップ回転速度Nslpがオープン制御終了回転速度Nslp_endを下回るとスリップ制御へ移行する(S12)。
図16は、ロックアップ容量の低下量を図15の場合よりも大きくした場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量、(c)はエンジントルク、(d)はロックアップ容量、(e)はエンジン回転速度、(f)はプライマリ回転速度、(g)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t2までは図15の場合と同一であり、時刻t3においてエンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回ると(S59)、ロックアップ容量を|ΔTQE1|+Tcnv_ENDだけ減少させる(S61)。これにより、ロックアップ容量TLUがエンジントルクTQEより大きくなることがないので、エンジン回転速度はプライマリ回転速度まで低下せず、ロックアップクラッチの急締結を防止でき、ショックや振動の発生を抑制することができる。また、急抜き量が図15の場合よりも大きいので一度の急抜きによって確実にロックアップクラッチの急締結を防止できる。
その後、オープン制御によってロックアップ容量を増加させ(S70)、時刻t4においてスリップ回転速度Nslpがオープン制御終了回転速度Nslp_endを下回るとスリップ制御へ移行する(S12)。
図17は、図16においてロックアップ容量低下後の所定時間だけロックアップ容量を保持する場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量、(c)はエンジントルク、(d)はロックアップ容量、(e)はエンジン回転速度、(f)はプライマリ回転速度、(g)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t3までは図16の場合と同一であり、ロックアップ容量を|ΔTQE1|+Tcnv_ENDだけ減少させた後(S61)、所定時間T2だけロックアップ容量TLUを一定に保持する(S67)。これにより、実際のロックアップクラッチ締結力、すなわち実差圧の差圧指令値に対する応答遅れがあっても、所定時間T2の間に遅れを解消することができるので、急抜き処理を確実に行うことができ、スリップ回転速度の落ち込みを抑えてショックや振動の発生を防止できる。
時刻t3から所定時間T2が経過した時刻t4において、オープン制御によるロックアップ容量の増加を再開させ(S70)、時刻t5においてスリップ回転速度Nslpがオープン制御終了回転速度Nslp_endを下回るとスリップ制御へ移行する(S12)。
図18は、ロックアップ容量の低下量を1回目と2回目以降で異なる値とする場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量、(c)はエンジントルク、(d)はロックアップ容量、(e)はエンジン回転速度、(f)はプライマリ回転速度、(g)はスリップ回転速度をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少し、その後エンジントルクTQEも減少する。時刻t2において、所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1が急抜き判定基準値CUTDWN_JDGを下回るが(S60)、エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回っていないのでロックアップ容量は低下させない。時刻t3においてエンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回ると(S59)、ロックアップ容量を|ΔTQE1(t3)|+Tcnv_ENDだけ減少させる(S61)。これにより、急締結危険エリア指定容量TLU_SOSも低下するのでエンジントルクTQEは急締結危険エリア指定容量TLU_SOSより大きくなる。時刻t4において、再度エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回るので(S59)、ロックアップ容量を|ΔTQE1(t4)|だけ減少させる(S61)。ここで、|ΔTQE1(t3)|、|ΔTQE1(t4)|はそれぞれ時刻t3、t4におけるエンジントルク変化量である。
これにより、ロックアップ容量TLUがエンジントルクTQEより大きくなることがないので、エンジン回転速度はプライマリ回転速度まで低下せず、ロックアップクラッチの急締結を防止でき、ショックや振動の発生を抑制することができる。また、1回目の急抜き量を|ΔTQE1(t3)|+Tcnv_ENDとし、2回目以降は|ΔTQE1(t4)|とすることにより、ロックアップクラッチの急締結を確実に防止しながらロックアップ容量の過度の低下を防止して、エンジントルクに対する適切なロックアップ容量を保持することができる。
その後所定時間T2だけロックアップ容量TLUを一定に保持し(S67)、所定時間T2だけ経過した時刻t5においてオープン制御によってロックアップ容量の増加を開始する(S70)。これにより、実際のロックアップクラッチ締結力、すなわち実差圧の差圧指令値に対する応答遅れがあっても、所定時間T2の間に遅れを解消することができるので、急抜き処理を確実に行うことができ、スリップ回転速度の落ち込みを抑えてショックや振動の発生を防止できる。
時刻t6において、スリップ回転速度Nslpがオープン制御終了回転速度Nslp_endを下回るとスリップ制御へ移行する(S12)。
図19は、急抜き判定値に上下限リミットを施した場合であって、急抜き判定基準値が上限値より大きい場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)はエンジントルク、(c)はロックアップ容量、(d)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少し、その後エンジントルクTQEも減少する。時刻t2において、エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回るので(S59)、エンジントルクTQEの減少分に応じてロックアップ容量TLUを低下させる(S65)。このとき、所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1は、急抜き判定基準値CUTDWN_JDGとして設定されたオープン制御終了回転速度におけるコンバータトルクTcnv_ENDを下回っているが、急抜き判定上限値CDJDG_MAXより大きいので急抜き処理は行わない。時刻t3において、エンジントルク変化量ΔTQE1が急抜き判定上限値CDJDG_MAXを下回るので(S60)、急抜き処理を実行してロックアップ容量を低下させる(S61)。これにより、オープン制御終了回転速度におけるコンバータトルクTcnv_ENDが小さく設定された場合でも、不必要に急抜きを行うことなく応答遅れを防止することができる。
その後所定時間T2だけロックアップ容量TLUを一定に保持し(S67)、所定時間T2だけ経過した時刻t4においてオープン制御によってロックアップ容量の増加を開始する(S70)。
図20は急抜き判定値に上下限リミットを施した場合であって、急抜き判定基準値が下限値より小さい場合のタイミングチャートである。(a)はスロットル開度、(b)はエンジントルク、(c)はロックアップ容量、(d)は所定時間T1におけるエンジントルク変化量をそれぞれ示している。
時刻t1において、運転者のアクセル踏込み量の減少によってスロットル開度が減少し、その後エンジントルクTQEも減少する。時刻t2において、エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSを下回るので(S59)、エンジントルクTQEの減少分に応じてロックアップ容量TLUを低下させる(S65)。このとき、所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1は、急抜き判定基準値CUTDWN_JDGとして設定されたオープン制御終了回転速度におけるコンバータトルクTcnv_ENDを下回っているが、急抜き判定上限値CDJDG_MAXより大きいので急抜き処理は行わない。時刻t3において、エンジントルク変化量ΔTQE1はオープン制御終了回転速度におけるコンバータトルクTcnv_ENDより大きいが、急抜き判定下限値CDJDG_MAXを下回るので(S60)、急抜き処理を実行してロックアップ容量を低下させる(S61)。これにより、オープン制御終了回転速度におけるコンバータトルクTcnv_ENDが大きく設定された場合でも、確実に急抜きを行ってロックアップクラッチの急締結を防止することができる。
その後所定時間T2だけロックアップ容量TLUを一定に保持し(S67)、所定時間T2だけ経過した時刻t4においてオープン制御によってロックアップ容量の増加を開始する(S70)。
以上のように本実施形態では、トルクコンバータ1の締結状態をコンバータ状態からスリップ状態へと移行させるために、オープン制御によってロックアップ容量TLUを上昇させているときに、エンジントルクTQEが低下したと判定されるとエンジントルクの変化量ΔTQE1に基づいてロックアップ容量TLUを低下させる。これにより、ロックアップクラッチ2の締結力が弱まるので、エンジントルクTQEがロックアップ容量TLUと一致することによるロックアップクラッチ2の急締結を防止でき、ショックや振動の発生を防止できる。また、ロックアップ容量TLUの低下量はエンジントルク変化量ΔTQE1に基づいて設定されるので、ロックアップ容量TLUを低下しすぎることによるスリップ状態への移行動作の遅れを防止することができる。
また、ロックアップ容量TLUにオープン制御終了時におけるコンバータトルクTcnv_ENDと所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1とを加えた値を急締結危険エリア指定容量TLU_SOSとし、エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSより小さくなったときロックアップ容量TLUを低下させる。これにより、ロックアップ容量TLUを低下させてから所定時間T1後にエンジントルクTQEが同じ変化率で低下しても、オープン制御終了時におけるコンバータトルク分は確保できるので、ロックアップクラッチ2の急締結をより確実に防止することができる。
さらに、エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSより小さくなったときであって、エンジントルク変化量ΔTQE1が急抜き判定基準値CUTDWN_JDGより小さいとき、ロックアップ容量TLUをステップ状に低下させる。エンジントルク変化量ΔTQE1が急抜き判定基準値CUTDWN_JDGより小さいときはエンジントルクTQEの減少率が高くロックアップクラッチ2の急締結が起こる可能性が高いときであるので、ロックアップ容量TLUをステップ状に低下させることでロックアップクラッチ2の急締結をさらに確実に防止できる。
さらに、ロックアップ容量TLUをステップ状に低下させるときの低下量を所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1とするので、ロックアップ容量TLUを低下させた後に同じ割合でエンジントルクTQEが低下しても所定時間T1後にエンジントルクTQEがロックアップ容量TLUを下回ることがなく、適切なロックアップクラッチ2の締結圧を維持しながら急締結を防止することができる。
さらに、ロックアップ容量TLUの低下量を所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1にオープン制御終了時のコンバータトルクTcnv_ENDを加えた値とするので、エンジントルクTQEの推定値と実トルクとの間の誤差やロックアップ容量TLUを低下させる際の応答遅れを生じても、オープン制御終了時に必要なコンバータトルクTcnv_ENDを確保でき、オープン制御終了時におけるエンジントルクTQEに対するスリップ回転速度Nslpを発生させるだけのロックアップ容量TLUを確保できる。よって、ロックアップクラッチ2の急締結を防止しながら確実にスリップ回転速度Nslpを確保することができる。
さらに、ロックアップ容量TLUの低下量を、オープン制御中の初回は所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1にオープン制御終了時のコンバータトルクTcnv_ENDを加えた値とし、2回目以降は所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1とするので、オープン制御終了時に必要なスリップ回転速度Nslp_endを確実に確保しながらロックアップ容量TLUの過度の低下を防止して適切なロックアップ容量TLUを保持することができる。
さらに、ロックアップ容量TLUを低下させた後、所定時間T2の間ロックアップ容量TLUを一定に保持するので、ロックアップ容量TLUの低下に応答遅れがあってもロックアップ容量TLUを確実に目標値まで低下させることができ、ロックアップクラッチ2の急締結をより確実に防止できる。
さらに、エンジントルクTQEが急締結危険エリア指定容量TLU_SOSより小さくなったときであって、エンジントルク変化量ΔTQE1が急抜き判定基準値CUTDWN_JDGより大きいとき、ロックアップ容量TLUをエンジントルクTQEの減少分だけ低下させる。エンジントルク変化量ΔTQE1が急抜き判定基準値CUTDWN_JDGより大きいときはエンジントルクTQEの減少率が比較的低いときであるので、ロックアップ容量TLUをエンジントルクTQEの減少にあわせて徐々に低下させる。これにより、ロックアップクラッチ2の急締結を防止できることに加えて、エンジントルクTQEが低下し始める前のコンバータトルクTcnv_ENDを確保してスリップ回転速度Nslpを維持することにより、エンジン回転速度の落ち込みを防止できる。また、この場合はロックアップクラッチ2の急締結の危険性が比較的低いときであるので、ロックアップ容量TLUの過度の低下を防止してスリップ制御への移行動作の遅れを防止することができる。
さらに、急抜き判定基準値CUTDWN_JDGをオープン制御終了時のコンバータトルクTcnv_ENDに設定するので、急締結危険エリア指定容量TLU_SOSが、ロックアップ容量TLUにオープン制御終了時におけるコンバータトルクTcnv_ENDと所定時間T1におけるエンジントルク変化量ΔTQE1とを加えた値に設定される場合において、エンジントルクTQEをオープン制御を終了させるのに必要なロックアップ容量TLUより大きく保つことができる。よって、ロックアップ容量TLUをステップ状に低下させたときにおけるロックアップクラッチ2の急締結をより確実に防止して、応答遅れによるショックの発生やエンジン回転速度の落ち込みを防止することができる。また、急抜き判定後にロックアップ容量TLUがさらに増加したり、エンジントルク低下量がさらに大きくなった場合においても、より確実にロックアップクラッチ2の急締結を防止できる。
さらに、オープン制御終了時のコンバータトルクTcnv_ENDに設定される急抜き判定基準値CUTDWN_JDGに上限リミットCDJDG_MAX及び下限リミットCDJDG_MINを設定するので、コンバータトルクTcnv_ENDが小さくて急抜き判定基準値CUTDWN_JDGの絶対値が小さいときであっても、不必要にロックアップ容量TLUを低下させることによるオープン制御の遅れを防止できる。また、コンバータトルクTcnv_ENDが大きくて急抜き判定基準値CUTDWN_JDGの絶対値が大きいときであっても、確実にロックアップ容量TLUを低下させてロックアップクラッチ2の急締結を防止できる。
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明と均等であることは明白である。