JP4889878B2 - ポリオキシメチレン樹脂組成物及び複合成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種ポリオレフィン材料との接着性や溶着性に優れたポリオキシメチレン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリオキシメチレン樹脂は機械的性質、電気的性質、耐薬品性等の多くの物性に関して、バランス良く優れた特性を有するエンジニアリングプラスチックであり、例えば、自動車部品、電気・電子機器部品、機械部品等の構造部品用材料として広く利用されている。一方で、ポリオキシメチレン樹脂以外にもこれらの分野で多く利用されている樹脂材料として、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン類があり、近年は、こうしたポリオレフィン製部品とポリオキシメチレン樹脂製部品を接着あるいは溶着して、それぞれの樹脂が持つ特性を生かした複合部品を得ようとする試みがしばしば見受けられる。また、2色成形等の成形手段を用いて、ポリオレフィン製部品とポリオキシメチレン樹脂製部品を成形時に一体化させて複合成形品を得ようとする試みもある。
【0003】
しかしながら、ポリオキシメチレン樹脂は本来ポリエチレンやポリプロピレンとの親和性が低いため、これらポリオレフィン製部品とポリオキシメチレン樹脂製部品を単に接着或いは溶着しただけでは、十分な強度を有する複合部品を得ることはできない。
【0004】
これを改善するために、接着による方法においては各種の接着剤が検討されてきたが、未だ十分な接着強度を有する複合部品を得ることは困難である。
【0005】
また、熱溶着や2色成形により複合化させる方法においては、ポリオキシメチレン樹脂とポリオレフィンの親和性の改善が鍵を握るものであり、ポリオレフィンとして無水マレイン酸等で変性したポリオレフィンを用いることにより、或いはポリオキシメチレン樹脂としてかかる酸変性ポリオレフィンを配合したポリオキシメチレン樹脂組成物を用いることにより両樹脂の親和性を改善し、ポリオキシメチレン樹脂製部品とポリオレフィン製部品の溶着性・接着性を向上させることが検討されてきたが、その接着性・溶着性は未だ十分なものとは言えず、より一層の改善が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる要求に応え得るポリオキシメチレン樹脂組成物を得るため鋭意検討を重ねた結果、ポリオキシメチレン樹脂にポリビニルアセタール樹脂を配合することにより、ポリオレフィン材料との接着性や溶着性に優れたポリオキシメチレン樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、ポリオキシメチレン樹脂50〜99.99重量%とポリビニルアセタール樹脂0.01〜50重量%とからなるポリオキシメチレン樹脂組成物に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物について詳細に説明する。
【0009】
本発明で用いられるポリオキシメチレン樹脂は、オキシメチレン基(−CH2O−)を主たる構成単位とする重合体を総称するものであり、実質的にオキシメチレン繰り返し単位のみからなるポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外にオキシアルキレン基等の他の構成単位を有するコポリマー、さらにはオキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし分岐構造や架橋構造を有する重合体や、他の成分とのブロック重合体、グラフト重合体も含まれる。
【0010】
一般に、ポリオキシメチレンホモポリマーは、無水ホルムアルデヒドの重合、もしくはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサン等の重合により製造され、通常、末端キャップにより熱分解に対して安定化されている。また、ポリオキシメチレンコポリマーは、一般的には、ホルムアルデヒド又は一般式(CH2O)n[但し、nは3以上の整数]で表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマー、例えばトリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとを共重合することによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。共重合のための環状エーテル又は環状ホルマールとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、オキセパン、エチレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が用いられる。また、上記共重合における環状エーテル又は環状ホルマールの代わりに、或いはこれらの環状エーテル又は環状ホルマールと併用して、ジグリシジルエーテル化合物等の多官能化合物や、アルキルグリシジルエーテルの如き特定構造の単官能化合物を用いることにより、分岐構造或いは架橋構造を有するポリオキシメチレン共重合体が得られる。
【0011】
本発明の樹脂組成物における基体樹脂として、上記の如きポリオキシメチレン樹脂はいずれも使用できるが、中でもオキシメチレン基以外の共重合成分としてオキシアルキレン基を導入したポリオキシメチレン共重合体を用いるのが好ましい。また、かかるポリオキシメチレン共重合体としては、オキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし0.05〜10モル%のコモノマー単位を有するものが好ましく、特に好ましくは0.1〜5.0モル%のコモノマー単位を有するものである。このようなポリオキシメチレン共重合体は、樹脂自体の熱安定性、不安定末端部の減少等の見地から、また、本発明の樹脂組成物からなる成形部品をポリオレフィンからなる成形部品と熱溶着等により溶着或いは接着させる際の耐熱性の観点から、特に好ましいものである。
【0012】
さらに、本発明で用いるポリオキシメチレン樹脂は、0.1×10-6mol/g〜100×10-6mol/gの水酸基を有するものが好ましく、これにより、後述するポリビニルアセタール樹脂を配合した場合の相溶性が良くなる。
【0013】
次に、本発明で用いられるポリビニルアセタール樹脂とは、基本的にはポリビニルアルコールを塩酸や硫酸のような酸触媒の存在下でアルデヒドと反応させて、ポリビニルアルコールの水酸基の一部又は全部をアセタール化したものであり、ホルムアルデヒドによる反応物はポリビニルホルマール樹脂、ブチルアルデヒドとの反応物はポリビニルブチラール樹脂と称されている。さらに、反応させるアルデヒドの種類によって、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピルアセタール等が知られている。これらのポリビニルアセタール樹脂の製造法としては、例えばポリ酢酸ビニルを酸によって加水分解する際にその初期段階でアルデヒドを加え、加水分解とアセタール化を同時に進行させるという一段法、又はポリ酢酸ビニルの加水分解により生成するポリビニルアルコールを一度分離したのちこれをアセタール化するという二段法等が挙げられる。このようにして得られるポリビニルアセタール樹脂は、ビニルアセタール基を主体としビニルアルコール基や場合により酢酸ビニル基を有するものであり、下記一般式(1)で示されるものである。
【0014】
【化1】
【0015】
ここでR1は、−(CH2)n−CH3[但し、n=0〜3]で表され、一般的には−CH3である。また、R2は水素又は炭素数4以下の任意のアルキル基であって、代表的な例としては、−CH3又は−C3H7が挙げられる。また、X,Y,Zは任意であるが、本発明において使用するポリビニルアセタール樹脂としては、構成単位として60重量%以上のビニルアセタール基を有するものが好ましく、ビニルアルコール基は0.1〜40重量%であるのが好ましい。
【0016】
また、ポリビニルアセタール樹脂は、本発明の樹脂組成物の基体樹脂であるポリオキシメチレン樹脂との相溶性や、本発明の目的であるポリオレフィンとの溶着性改善等の観点から、平均重合度100〜3,000のものが好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の中でも、特にポリビニルホルマール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0017】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物において、かかるポリビニルアセタール樹脂の配合量は、ポリオキシメチレン樹脂50〜99.99重量%に対して0.01〜50重量%であり、特に好ましくは0.5〜5重量%である。配合量が0.01重量%未満では、ポリオレフィン材料との溶着・接着効果が十分発揮されず、また、50重量%を超えて配合されると、ポリオキシメチレン樹脂組成物の機械的物性の極端な悪化を招く。
【0018】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物によるポリオレフィン材料との溶着性・接着性改善の作用機構は、先ず第一に、配合したポリビニルホルマール樹脂自身が優れた接着性を有することと、更にビニルアセタールがポリオキシメチレンと親和性が高いことにより、本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物中に均一に分散すること等の効果が複合したことによるものと推測される。さらに、本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物においては、配合したポリビニルアセタール中のアルコール残基の一部とポリオキシメチレン樹脂の水酸基末端とが溶融混練時に化学的或いは物理的に結合し、かかる作用によっても、ポリオキシメチレン樹脂とポリビニルアセタールの相溶性の改善や、該ポリオキシメチレン樹脂組成物とポリオレフィンとの溶着性・接着性の改善に寄与しているものと推測される。
【0019】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は、上記の如き構成により優れた効果を発現するものであるが、更に他の熱可塑性樹脂と溶融混練して成る組成物としても用いることができる。ここで他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、目的に応じて選択使用することができる。更に、本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物には、所望の特性を付与するため、従来公知の添加物、例えば、酸化防止剤、ホルムアルデヒド捕捉剤等の安定剤、潤滑剤、滑剤、核剤、染顔料等の着色剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤等の添加剤を配合し得る。また、ガラス繊維、炭素繊維、その他の無機又は有機の繊維状強化材やガラスビーズ、ガラスフレーク、マイカ等の粉粒状、板状の充填材も適宜配合することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン樹脂にポリビニルアセタール樹脂を配合してなるものであり、ポリオレフィン製部品と溶着性・接着性に対して顕著な改善効果がある。従って、本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物は、その成形品をポリオレフィン系樹脂と熱溶着させて複合成形品とする場合、ポリオキシメチレン樹脂組成物とポリオレフィン系樹脂とを用い、2色成形等の成形手段により複合化してなる複合成形品等に好適に利用される。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
実施例1〜5
ポリオキシメチレン樹脂(ポリプラスチックス(株)製ジュラコンM90)、ポリビニルホルマール樹脂(チッソ(株)製ビニレックK)、ポリビニルブチラール樹脂(電気化学工業(株)製デンカブチラール2000−L)を表1に示す割合で混合した後、二軸押出機により溶融混練し、ペレット状のポリオキシメチレン樹脂組成物を調製した。評価は下記の方法で行い、その結果を表1に示す。
【0023】
[評価方法]
接着強度:調製したポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて表2に示す条件で平板(15mm×100mm×2mm)を成形した。一方、ポリオレフィン樹脂材料として無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井石油化学工業(株)製、商品名:タフマーMP0610)を用い、表2に示す条件で平板(15mm×100mm×2mm)を成形した。次いで、上記で得た平板同士を200℃、加圧力1kgで加熱溶着し貼り合わせることにより、接着強度測定用の試験片を得た。
【0024】
接着強度の測定は、図1に示すように、貼り合わせた試験片の端から平板同士を引き剥がし、引き剥がしに要する強度を測定することによって行った。
【0025】
引張強度:調製したポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて表2に示す条件で引張試験片を成形し、ASTM D638に準拠して引張強度を測定した。
【0026】
比較例1〜3
表1の如く、ポリビニルアセタール樹脂を含まない場合(比較例1)、0.005重量%含む場合(比較例2)、過剰に含む場合(比較例3)についても実施例と同様にして評価した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で用いた接着強度測定用の試験片と接着強度測定状況を示す図である。
Claims (4)
- ポリオキシメチレン樹脂50〜99.99重量%とポリビニルアセタール樹脂0.01〜50重量%とからなるポリオキシメチレン樹脂組成物からなる成形品とポリオレフィン系樹脂からなる成形品を、熱溶着させてなる複合成形品。
- ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂又はこれらの混合物である請求項1記載の複合成形品。
- ポリオキシメチレン樹脂50〜99.99重量%とポリビニルアセタール樹脂0.01〜50重量%とからなるポリオキシメチレン樹脂組成物とポリオレフィン系樹脂とを用い、2色成形により複合化してなる複合成形品。
- ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂又はこれらの混合物である請求項2記載の複合成形品。
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