JP4889220B2 - 乳腺障害の処置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、過形成性組織などの異型性組織、嚢胞および新生物(腫瘍および癌を含む)を処置する方法、ならびに、異型性組織、嚢胞および新生物の発生を防止する方法または異型性組織、嚢胞および新生物の退行もしくは寛解を引き起こす方法に関する。特に本発明は、患部乳腺組織またはその近傍にクロストリジウム毒素を局所投与することによって、乳腺嚢胞や良性および癌性新生物などの乳腺障害を処置する方法、ならびに過形成性および/または高張性乳腺細胞を処置する方法に関する。
多くの過形成性組織は、処置しないと、癌性組織に発展することが知られている。例えば、(1)さまざまな過形成性、化生性または異型性乳房組織は癌に発展する場合がある(例えば、以下に詳しく述べる Fletcher C. D. M.編「Diagnostic Histopathology of Tumors」第1巻(第2版、Churchill Livingstone(2000))第16章(865〜930頁)のEllis I. O.ら「胸部の腫瘍」、ならびに Fabian C. J.ら「タモキシフェンを超えた乳癌化学予防の新しい指標、新しい乳癌予防薬」Ann NY Acad Sci 2001 December;952:44−59などを参照されたい)。(2)ポリープなどの過形成性腸組織は癌化して癌腫になる場合がある(例えば Chandraspma, P.「Gastrointestinal Pathology」(Appleton & Lange(1999))第5章(105〜144頁)のDer, R.ら「胃新生物」、特に106〜107頁を参照されたい)。(3)口腔および中咽頭上皮過形成は前癌性病変を示す(Sunaga H.ら「口腔および中咽頭前癌性病巣における顆粒球コロニー刺激因子受容体および血小板由来内皮細胞増殖因子の発現」Anticancer Res 2001 July −August;21(4B):2901−6)。(4)子宮内膜過形成性組織は前癌性組織である(Sivridis E.ら「子宮内膜過形成および新形成に関する予後的側面」Virchows Arch 2001 August;439(2):118−26)。また、(5)腎臓および前立腺細胞過形成は、癌性細胞の発生につながる要因であることが実証されている(Van Poppel, H.ら「腎臓の前癌性病変」Scand J Urol Nephrol Suppl 2000;(205):136−65)。
ヒト女性の乳房(同義語として乳腺)は、新生児に栄養を与えるという特殊化した機能を持つ著しく変形したアポクリン汗腺である。乳房は、管状−胞状型の上皮腺組織、腺組織をとりまく線維性結合組織(間質)、および葉間脂肪組織からなる。乳房の神経分布は、感覚神経線維と交感神経求心性線維を持つ第4〜第6肋間神経の前および外側枝に由来する。腺組織の分泌活動は、主として、遠心性運動線維ではなく卵巣ホルモンおよび下垂体ホルモンによって制御されている。女性の場合、乳房は思春期に発達し、閉経時に退行する。妊娠中は乳房中の分泌構成要素が、泌乳に備えて、その大きさと数とを著しく増大させる。各乳房は15〜25個の独立した腺単位からなり、この腺単位は乳腺葉と呼ばれ、それぞれが管状−胞状複合腺からなっている。各乳腺葉は乳管につながり、その乳管は他の乳管と共に乳頭で束ねられている。乳腺葉は、コラーゲン性膈膜で細分された脂肪組織の塊に埋まっている。特殊化した皮膚領域である乳輪が乳頭の基部を取り巻いている。乳房は深胸筋筋膜上にあり、その深胸筋筋膜は胸筋と前鋸筋の上に重なっている。
乳癌は女性では最も一般的な癌(皮膚癌および肺癌を除く)であり、1999年の米国では、175,000人を超える女性が乳癌と診断され、この数字のうち約43,300人がこの疾患によって死亡すると概算されている。米国では毎年約40,000人の女性が乳癌によって命を奪われている。米国では乳癌が女性の癌全体の29%を占めている。8人に1人の女性がその人生のどこかの時点で乳癌を発症すると概算されている。早期検出によって治癒率は高くなるが、乳癌は54歳未満の成人女性では癌死の第一原因であり、54歳以降でも2番目に多い原因である。全年齢層の女性では、女性における癌死の第一原因である肺癌を除けば、乳癌が最も多い。男性に発生する乳癌は全乳癌症例の1%未満である。
良性乳腫瘍としては、例えば線維嚢胞変化、線維腺腫およびその変形、硬化性病変、乳頭腫(上皮に覆われた線維血管性の芯を含む構造)および増殖性乳房疾患を挙げることができる。嚢胞は小葉退縮の過程で生じると考えられている。嚢胞は病的に膨張した嚢で、上皮によって裏打ちされ、液体を含んでいる。乳房嚢胞には主要な形態が2つ知られている。一つは、1層の上皮によって裏打ちされた嚢胞であり、もう一つのより一般的な嚢胞の形態は、通常のアポクリン汗腺上皮に似たアポクリン型上皮によって裏打ちされているものである。嚢胞は小葉退縮の過程で生じると考えられ、極めて一般的で、一般人の約19%にみられ、7%では触知可能である。通常は吸引による処置が行われる。嚢胞は、癌を持つ乳房の約77%に見いだすことができる(Ellisら,866頁)。乳房嚢胞のアポクリン上皮層は過形成を示しうる。また、アポクリン化生は乳房では頻繁にみられる所見であり、一般に嚢胞形成に関係している。さらにアポクリン化生は、他の非嚢胞性良性乳腺病、例えば硬化性腺症(腺症は腺構成要素の数の増加または拡大である)、乳頭腫および線維腺腫などにも関係しうる。重要なことに、炎症性障害でないアポクリン変化(異型)は、その患者がアポクリン癌や髄様癌などの乳癌を後に発症する危険を有意に増加させるタイプの前癌性組織であることを示していると考えられる。最後に、上皮過形成、乳管過形成および小葉過形成もすべて、いずれも乳癌が発生する危険を示す前癌性乳房組織状態であると考えられる(Ellis I. O.ら「胸部の腫瘍」(前掲)、特に866〜867頁、881頁および884頁)。
このように、良性増殖性または線維嚢胞性変化(線維嚢胞症)および過形成は、乳癌が発生する危険の形態マーカーであると特定されていることは明らかである(Rosen, P. R.「Rosen's Breast Pathology」第2版、Lippincott Williams & Wilkins(2001)、第10章(「前癌性乳房疾患」)、229〜248頁、特に231〜232頁および236〜239頁)。
家族性乳癌の約5%は遺伝子突然変異によって説明される。リー−フラウメニ症候群は、乳房、脳および副腎新生物ならびに肉腫、リンパ腫および白血病の発生率の増加を伴う稀な遺伝性症候群である。この症候群の原因は、腫瘍抑制遺伝子であるp53遺伝子の突然変異に関係すると考えられている。
乳癌は、乳房の導管または小葉を裏打ちしている上皮細胞の悪性増殖と特徴づけることができる。機能的な卵巣を持たず、しかもエストロゲン補充を一度も受けていない女性は、概して乳癌を発症しないと思われるので、乳癌はホルモン依存性であると一般に考えられている。悪性腫瘍はどの乳房構造からも発生しうる。乳管癌は最も一般的な癌で、小葉癌および他の結合組織から生じた悪性腫瘍がこれに続く。
浸潤性乳管癌は最も一般的な細胞タイプで、乳癌の全症例の70%〜80%を構成する。これらの腫瘍は、乳癌が起こる年齢範囲の全体にわたって発生し、50歳代の半ば〜後半の女性に最もよく見られる。これは、触診時に通常は硬く引き締まった充実性の芯を持つことを特徴とする。これには乳管内癌がしばしば付随し、浸潤領域と乳管内癌領域の両方に面皰壊死が存在しうる。浸潤性乳管癌は一般に領域リンパ節に広がり、さまざまな乳管癌タイプの中で予後は最もよくない。核および組織学的悪性度は予後の有効な予測因子であることが示されている。
乳管内癌(DCIS)は乳管に限局された悪性上皮癌からなり、基底膜を超えた周囲組織への浸潤を示す証拠は顕微鏡ではみられない。DCISは、腫瘍の分化度に応じて、低悪性度、中悪性度および高悪性度に細分することができる。このような等級化は予後的な意味を持っている。DCISには5つの組織学的サブタイプ、すなわち面皰型、乳頭型、微小乳頭型、篩状型、および充実型がある。面皰サブタイプは、高い核悪性度、微小浸潤、およびher−2/neu癌遺伝子の過剰発現を伴う可能性が高い。DCISに関係する最も特徴的な乳房X線異常は「微細石灰化クラスタ−」である。構造、核悪性度および壊死の組合せを使った新しい分類体系が提案されている。浸潤性小葉癌は比較的珍しく、乳腫瘍の5%〜10%しか構成しない。浸潤性小葉癌は、同じ乳房または反対側の乳房で多中心性である割合が高いことを特徴とする。病巣は不明瞭な縁部を持つ傾向があり、時には唯一の証拠が微妙な肥厚または硬結である場合もある。浸潤性小葉癌を持つ患者はとりわけ両側性癌を起こしやすい。病期ごとに比較すると、浸潤性小葉癌は、浸潤性乳管癌とよく似た予後を持つ。
上皮内小葉癌(LCIS)は一般に特異的な臨床徴候または乳房X線徴候を持たず、閉経前の女性に、より頻繁に発生する。定義上、これらの癌細胞は乳腺小葉に限局され、浸潤はない。LCISは顕微鏡では小細胞の充実性増殖を特徴とする。これらの細胞は低い増殖率を持ち、概してエストロゲン受容体陽性であり、her−2/neu癌遺伝子を過剰発現させることは稀である。この疾患では両側性の危険が報告されているので、一部の研究者は、両側単純乳房切除術と同時乳房再建術による処置を勧告している。監視待機を選んだ場合は、増大した乳癌の危険がいつまでも持続するので、生涯観察が必須である。管状腺癌も高分化癌として知られている。腋窩リンパ節転移の頻度は約10%で、乳管癌よりも低い。浸潤性乳管癌と比べると、予後はかなり良好である。髄様癌は顕著なリンパ球浸潤を特徴とする。髄様癌を持つ患者は、他のタイプの乳癌を持つ患者よりも若い傾向がある。予後は、浸潤性乳管癌よりは、やはり良好だと考えられている。
炎症性乳癌は、散在性皮膚浮腫、皮膚および乳房発赤、ならびに基礎組織の堅さを特徴とし、触知可能な腫瘤を伴わない。臨床症状は主として、表在性毛細血管の鬱血を伴う皮膚リンパ管(皮膚リンパ導管)への腫瘍塞栓によるものである。炎症性乳癌は予後が悪く、切除による処置が好ましい。
乳頭のパジェット病は、乳頭の湿疹様変化を臨床的特徴とする珍しい形態の乳癌である。パジェット病は、乳頭のすぐ下にある乳管からの悪性細胞の遊走を表すと考えられている。パジェット病を持つ患者の予後は、他のタイプの乳癌を持つ女性の予後と、病期ごとにみると、よく似ているようである。
良性乳腫瘍には、線維腺腫、乳管周囲線維腫(結合組織腫瘍)、乳管内上皮性腫瘍、貯留性嚢胞、脂肪腫、慢性嚢胞性乳腺炎および脂肪壊死が含まれる。これらは性成熟期またはその直後に最も頻繁に発生する。これらは悪性腫瘍と識別することが難しいことが多く、大きさの変化またはリンパ管侵襲を注視しておかなければならず、これが見られた場合には、その腫瘍を切り取って検査するべきである。乳房X線像、超音波、サーモグラフィおよび嚢胞型の吸引が診断に役立つ。
乳癌の診断は乳房組織の病理学的検査によって行うことができる。乳房にしこりがあれば、乳房X線像が正常と記載される場合でも、通常は生検が正当化される。乳房組織は、針吸引生検または外科的生検によって取得することができる。一部の医師は、嚢胞と充実性腫瘍との識別に利用するために、針吸引を用いる。吸引と液体の除去後は、しばしば嚢胞が消失する。吸引で除去した検体の細胞学的検査または病理学的検査を使って、癌を同定することができる。超音波は、しこりが充実性であるか嚢胞性であるかを決定するのに役立ちうる。乳房MRIも使用することができる。最もよく実施される手術である切除生検は、しこりが小さい場合に使用される。この場合は、腫瘍全体と正常組織の縁部を切除する。腫瘍が大きい場合は、病理学的検査用に少量の組織を取り出すために、切開生検を行うことができる。外科的生検によって得た組織は凍結切片によって評価することができる。この場合は、30分以内の診断が可能であり、それに続いて最終手術を行うことができる。しかしほとんどの外科医は約24〜48時間を要する永久切片を待つ。後者のアプローチは、患者が処置選択肢について医師と議論する時間をとることが可能で、より一般的なアプローチである。
乳癌の最も一般的な転移経路は腋窩リンパ節への転移である。乳癌患者の約30〜40%は、腫瘍が触知可能な時には既に、陽性(罹病)腋窩リンパ節を持っている。多くの腋窩リンパ節が関与しているほど、どこかに微小転移巣(臨床的に検出できない腫瘍細胞)があって再燃または再発する危険は高くなる。一般的な乳癌再発部位は、乳房中の元の位置での局所再発、または骨、肝臓、肺および脳への遠隔転移である。転移性疾患の合併症には、例えば脊髄圧迫、病的骨折、胸水、および気管支閉塞などがある。
乳癌は細胞タイプに応じて分類され、タイプが異なると、発生率、成長パターンおよび転移パターン、ならびに生存率も変化する。浸潤性乳管癌は最も一般的なタイプの乳癌で、これらの腫瘍の約70%を占める。稀な炎症性乳癌(乳癌症例の1〜4%)は最も予後が悪い。上皮内癌(CIS)は、良好な予後を持つ非浸潤性癌であり、触知可能なものが特になくても、しばしば乳房X線検査で検出されうる。
治療勧告は診断時の疾患のタイプおよび病期によって異なる。I期またはII期の疾患は一般に、乳房温存手術と放射線照射によって、または乳房再建術を伴うもしくは乳房再建術を伴わない非定型的根治乳房切除術によって処置される。乳房切除術と放射線照射は局所処置であり、既に転移してしまっている癌細胞には影響が及ばないことは明らかである。転移性疾患を発症する危険が高い初期疾患患者には補助化学療法も行うことができる。エストロゲン受容体陽性患者の場合、補助化学療法またはタモキシフェンが標準処置であると、現時点ではみなされている。閉経前ER陽性患者にとっての卵巣切除または卵巣機能抑制の役割は、臨床研究が行われているところである。センチネルリンパ節は、原発腫瘍からのリンパ排液経路沿いにある最初のリンパ節である。原発腫瘍または腫瘍床付近に放射性同位体(テクネチウム−99m硫黄コロイド)および/または青色生体色素を注入してからのセンチネルリンパ節生検は、全腋窩郭清術よりも低い傷害率と費用をもたらす。この技術はまだ研究中である。局所進行乳癌(III期)を持つ患者は予後がよくない。外科手術、化学療法および放射線照射の併用により、良好な局所管理を達成することができる。III期疾患の患者は遠隔転移巣を発生させる危険があるので、化学療法を検討する。局所再発性または転移性疾患を持つ患者の場合は、疾患の部位と程度によって処置アプローチが異なる。多くの場合、局所療法と全身療法が併用される。転移性疾患を持つ患者が標準処置に永続的応答を示すことはめったにないので、研究者は、高用量化学治療法と、それに続く自家骨髄移植(または幹細胞補充)の使用を評価検討しているところである。
乳房温存手術は、腫瘍の切除と部分(下)腋窩リンパ節郭清からなる。「乳腺腫瘤切除術」「区域切除術」「胼胝切除術」および「乳腺部分切除」という用語は、しばしば局所手術を表現するために用いられる。浸潤癌を持つ全患者と、上皮内癌を持つ患者の大半では、手術の後に、概して放射線療法が行われる。大きさが5cm(約2インチ)までの小さい腫瘍を持ち多巣性疾患または広汎性乳管内癌の証拠がない患者に関する最近の研究では、乳房温存手術後の放射線療法と、非定型的根治乳房切除術との間に、生存率の相違はみとめられていない。非定型的根治乳房切除術は、乳房全体の除去と、腋窩リンパ節郭清との併用である。非定型的根治乳房切除術の短所は、美容上の変形、ならびに身体像および自己概念に悪影響を及ぼす心理社会的問題の可能性である。
良性乳房疾患および乳癌の現行の治療法には多くの欠点および短所がある。例えば、非定型的根治乳房切除術では、身体部分の喪失、身体像の変化、補綴の必要、随意の再建手術、胸壁圧迫感および皮弁壊死が起こる。乳房部分切除術では、腋窩リンパ節郭清および放射線照射、乳房線維症、色素沈着過剰、肋骨骨折、乳房浮腫、皮膚感受性の変化、筋炎、および初期治療の長期化が起こる。さらに、根治乳房切除術でも乳房部分切除術でも、感覚喪失、手および腕の治療の必要、術後合併症、例えば漿液腫、血腫、創感染、リンパ浮腫、腕の衰弱、疼痛、心理的苦痛、腕の運動障害、神経損傷および疲労などが起こりうる。漿液腫は、腋窩または胸壁の死腔への漿液または漿液血液の蓄積である。漿液腫によって、治癒の遅延や、感染の助長が起こりうる。血腫は間質腔に血液が蓄積すると起こり、液化すれば吸引することができ、処置しなくても徐々に再吸収されうる。
外傷を避けるための外科的努力にもかかわらず神経損傷が起こりうる。患者は、疼痛、刺痛、しびれ、だるさ、または腕もしくは胸部の皮膚感受性の増大を訴える場合がある。これらの感覚は時間の経過と共に変化し、通常は一年以内または一年後に消失する。頻度は下がるが、筋萎縮症が神経損傷に続発し、腕機能または肩機能の低下をもたらす場合もある。
臨床的に検出できない乳癌細胞が癌の局所切除後も残っている可能性があるので、局所腫瘍制御のために放射線療法が行われる。放射線療法は、大きい乳腫瘍を縮小させて、それらをより容易に切除できるようにするために、手術前に使用することもできる。緩和的放射線療法は、骨転移の疼痛を軽減するために、また脳などの他の部位への転移の症候管理に、よく用いられる。乳房への放射線治療の間およびその直後は、疲労、皮膚反応、皮膚の感覚、色および肌理の変化、ならびに乳房腫脹がよくみられる。
化学療法、ホルモン療法、またはそれら2つの組合せは、転移性疾患の作用を一時的に軽減するために使用することができる。補助化学療法および/または補助ホルモン療法に関する勧告は、通常は、陽性腋窩リンパ節の数、閉経状態、原発腫瘍の大きさ、およびエストロゲン受容体アッセイに基づく。最もよく使用される化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍性抗生物質(ヘルセプチン)およびビンカアルカロイドである。ホルモン操作は主としてホルモン遮断薬によって行われ、まれに、性ホルモン産生腺の外科的除去(卵巣切除術、副腎切除術、または下垂体切除術)によって行われる。抗エストロゲンであるタモキシフェンは最も広く用いられているホルモン剤である。ER/PR陰性患者および/またはタモキシフェンが無効な患者には、現在、フェマラやアリミデックスなどの第二選択ホルモン剤を使用することができる。残念ながら、乳癌の化学療法には、疲労、体重増加、悪心、嘔吐、脱毛症、食欲障害および味覚障害、ニューロパシー、下痢、骨髄抑制、閉経症状、脱毛および体重増加などの有害な副作用が数多く伴いうる。また、第一選択薬であるタモキシフェンは、子宮癌と凝血の危険を増大させる。
ボツリヌス毒素
嫌気性グラム陽性細菌であるボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、ボツリヌス中毒と呼ばれる神経麻痺性障害をヒトおよび動物において引き起こす強力なポリペプチド神経毒であるボツリヌス毒素を産生する。ボツリヌス菌の胞子は土壌中に見出され、滅菌と密閉が不適切な零細缶詰工場の食品容器内で成長する可能性があり、これが多くのボツリヌス中毒症例の原因である。ボツリヌス中毒の影響は、通例、ボツリヌス菌の培養物または胞子で汚染された食品を飲食した18時間後〜36時間後に現れる。ボツリヌス毒素は、消化管内を弱毒化されないで通過することができ、そして末梢運動ニューロンを攻撃することができるようである。ボツリヌス毒素中毒の症状は、歩行困難、嚥下困難および会話困難から、呼吸筋の麻痺および死にまで進行し得る。
A型ボツリヌス毒素は、人類に知られている最も致死性の天然の生物学的物質である。A型ボツリヌス毒素(精製された神経毒複合体)(BOTOX(登録商標)の商標でAllergan,Inc.(カリフォルニア州アービン)から入手可能である)の約50ピコグラムがマウスにおけるLD50である。1単位(U)のボツリヌス毒素は、それぞれが18グラム〜20グラムの体重を有するメスのSwiss Websterマウスに腹腔内注射されたときのLD50として定義される。7種類の血清学的に異なるボツリヌス神経毒が特徴付けられており、これらは、型特異的抗体による中和によってそのそれぞれが識別されるボツリヌス神経毒血清型A、B、C1、D、E、FおよびGである。ボツリヌス毒素のこれらの異なる血清型は、それらが冒す動物種、ならびにそれらが惹起する麻痺の重篤度および継続時間が異なる。例えば、A型ボツリヌス毒素は、ラットにおいて生じる麻痺率により評価された場合、B型ボツリヌス毒素よりも500倍強力であることが確認されている。また、B型ボツリヌス毒素は、霊長類では480U/kgの投与量で非毒性であることが確認されている。この投与量は、A型ボツリヌス毒素の霊長類LD50の約12倍である。ボツリヌス毒素は、コリン作動性の運動ニューロンに大きな親和性で結合して、ニューロンに移動し、アセチルコリンの放出を阻止するようである。
ボツリヌス毒素は、活動過多な骨格筋によって特徴付けられる神経筋障害を処置するために臨床的状況において使用されている。A型ボツリヌス毒素は、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣および頸部ジストニーを処置するために米国食品医薬品局によって承認されている。A型以外のボツリヌス毒素血清型は、A型ボツリヌス毒素と比較した場合、効力が弱く、かつ/または活性の継続時間が短いようである。末梢筋肉内A型ボツリヌス毒素の臨床的効果は、通常、注射後1週間以内に認められる。A型ボツリヌス毒素の単回筋肉内注射による症候緩和の典型的な継続時間は平均して約3ヶ月である。
すべてのボツリヌス毒素血清型が神経筋接合部における神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害するようであるが、そのような阻害は、種々の神経分泌タンパク質に作用し、かつ/またはこれらのタンパク質を異なる部位で切断することによって行われる。例えば、A型ボツリヌス毒素およびE型ボツリヌス毒素はともに25キロダルトン(kD)のシナプトソーム会合タンパク質(SNAP-25)を切断するが、これらの毒素は、このタンパク質内の異なるアミノ酸配列を標的とする。B型、D型、F型およびG型のボツリヌス毒素は小胞会合タンパク質(VAMP、これはまたシナプトブレビンとも呼ばれる)に作用し、それぞれの血清型によってこのタンパク質は異なる部位で切断される。最後に、C1型ボツリヌス毒素は、シンタキシンおよびSNAP-25の両者を切断することが明らかにされている。作用機序におけるこれらの相違が、様々なボツリヌス毒素血清型の相対的な効力および/または作用の継続時間に影響していると考えられる。
ボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、既知のボツリヌス毒素血清型の7つのすべてについて約150kDである。興味深いことに、これらのボツリヌス毒素は、会合する非毒素タンパク質とともに150kDのボツリヌス毒素タンパク質分子を含む複合体としてクロストリジウム属細菌によって放出される。例えば、A型ボツリヌス毒素複合体は、900kD、500kDおよび300kDの形態としてクロストリジウム属細菌によって産生され得る。B型およびC1型のボツリヌス毒素は500kDの複合体としてのみ産生されるようである。D型ボツリヌス毒素は300kDおよび500kDの両方の複合体として産生される。最後に、E型およびF型のボツリヌス毒素は約300kDの複合体としてのみ産生される。これらの複合体(すなわち、約150kDよりも大きな分子量)は、非毒素のヘマグルチニンタンパク質と、非毒素かつ非毒性の非ヘマグルチニンタンパク質とを含むと考えられる。これらの2つの非毒素タンパク質(これらは、ボツリヌス毒素分子とともに、関連する神経毒複合体を構成する)は、変性に対する安定性をボツリヌス毒素分子に与え、そして毒素が摂取されたときに消化酸からの保護を与えるように作用すると考えられる。また、より大きい(分子量が約150kDよりも大きい)ボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス毒素複合体の筋肉内注射部位からのボツリヌス毒素の拡散速度を低下させ得ると考えられる。
インビトロでの研究により、ボツリヌス毒素が、脳幹組織の初代細胞培養物からのアセチルコリンおよびノルエピネフリンの両方の、カリウムカチオンにより誘導される放出を阻害することが示されている。また、ボツリヌス毒素は、脊髄ニューロンの初代培養物におけるグリシンおよびグルタメートの両方の誘発された放出を阻害すること、そして脳のシナプトソーム調製物において、ボツリヌス毒素が神経伝達物質のアセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRPおよびグルタメートのそれぞれの放出を阻害することが報告されている。
A型ボツリヌス毒素は、既知の手順に従って、培養槽におけるボツリヌス菌の培養を確立して、生育させ、その後、発酵混合物を集め、精製することによって得ることができる。すべてのボツリヌス毒素血清型は、神経活性となるためにはプロテアーゼによって切断またはニッキングされなければならない不活性な単鎖タンパク質として最初に合成される。A型およびG型のボツリヌス毒素血清型を産生する細菌株は内因性プロテアーゼを有するので、A型およびG型の血清型は細菌培養物から主にその活性型で回収することができる。これに対して、C1型、D型およびE型のボツリヌス毒素血清型は非タンパク質分解性菌株によって合成されるので、培養から回収されたときには、典型的には不活性型である。B型およびF型の血清型はタンパク質分解性菌株および非タンパク質分解性菌株の両方によって産生されるので、活性型または不活性型のいずれでも回収することができる。しかし、例えば、B型ボツリヌス毒素を産生するタンパク質分解性菌株でさえも、産生された毒素の一部を切断するだけである。
切断型分子と非切断型分子との正確な比率は培養時間の長さおよび培養温度に依存する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の製剤はいずれも一定割合が不活性であると考えられ、このことが、A型ボツリヌス毒素と比較したB型ボツリヌス毒素の知られている著しく低い効力の原因であると考えられる。臨床製剤中に存在する不活性なボツリヌス毒素分子は、その製剤の総タンパク質量の一部を占めることになるが、このことはその臨床的効力に寄与せず、抗原性の増大に関連づけられている。また、B型ボツリヌス毒素は、筋肉内注射された場合、同じ用量レベルのA型ボツリヌス毒素よりも、活性の継続期間が短く、そしてまた効力が低いことも知られている。
A型ボツリヌス毒素は下記のような臨床的状況において使用されていることが報告されている:
(1)頸部ジストニーを処置するための筋肉内注射(多数の筋肉)あたり約75単位〜125単位のBOTOX(登録商標);
(2)眉間のしわを処置するための筋肉内注射あたり約5単位〜10単位のBOTOX(登録商標)(5単位が鼻根筋に筋肉内注射され、10単位がそれぞれの皺眉筋に筋肉内注射される);
(3)恥骨直腸筋の括約筋内注射による便秘を処置するための約30単位〜80単位のBOTOX(登録商標);
(4)上瞼の外側瞼板前部眼輪筋および下瞼の外側瞼板前部眼輪筋に注射することによって眼瞼痙攣を処置するために筋肉あたり約1単位〜5単位の筋肉内注射されるBOTOX(登録商標);
(5)斜視を処置するために、外眼筋に、約1単位〜5単位のBOTOX(登録商標)が筋肉内注射されている。この場合、注射量は、注射される筋肉のサイズと所望する筋肉麻痺の程度(すなわち、所望するジオプター矯正量)との両方に基づいて変化する。
(6)卒中後の上肢痙性を処置するために、下記のように5つの異なる上肢屈筋にBOTOX(登録商標)が筋肉内注射される:
(a)深指屈筋:7.5U〜30U
(b)浅指屈筋:7.5U〜30U
(c)尺側手根屈筋:10U〜40U
(d)橈側手根屈筋:15U〜60U
(e)上腕二頭筋:50U〜200U。5つの示された筋肉のそれぞれには同じ処置時に注射されるので、患者には、それぞれの処置毎に筋肉内注射によって90U〜360Uの上肢屈筋BOTOX(登録商標)が投与される。
様々な臨床的状態を処置するためにA型ボツリヌス毒素が成功していることにより、他のボツリヌス毒素血清型が注目されている。2つの市販のA型ボツリヌス毒素製剤(BOTOX(登録商標)およびDysport(登録商標))ならびにB型およびF型のボツリヌス毒素の製剤(ともにWako Chemicals(日本)から得られる)の研究が、局所的な筋肉弱化効能、安全性および抗原性を明らかにするために行われた。ボツリヌス毒素製剤が右腓腹筋の頭部に注射(0.5単位/kg〜200.0単位/kg)され、筋肉の弱さが、マウスの指外転評価アッセイ(DAS)を使用して評価された。ED50値を用量応答曲線から計算した。さらなるマウスには、LD50量を決定するために筋肉内注射が行われた。治療指数をLD50/ED50として計算した。別のマウス群には、BOTOX(登録商標)(5.0単位/kg〜10.0単位/kg)またはB型ボツリヌス毒素(50.0単位/kg〜400.0単位/kg)が後肢に注射され、そして筋肉の弱さおよび増大した水の消費が調べられた。後者は、口渇の推定的なモデルである。抗原性は、ウサギに毎月筋肉内注射することによって評価された(B型ボツリヌス毒素については1.5ng/kgまたは6.5ng/kg、あるいはBOTOX(登録商標)については0.15ng/kg)。
最大筋肉弱さおよび継続期間はすべての血清型について用量に関連していた。水の消費は、B型ボツリヌス毒素が注射されたマウスが、BOTOX(登録商標)の場合よりも大きかったが、B型ボツリヌス毒素は、筋肉を弱くさせることにおいては効果が低かった。注射した4ヶ月後、4羽のうち2羽(1.5ng/kgで処置された場合)および4羽のうち4羽(6.5ng/kgで処置された場合)のウサギがB型ボツリヌス毒素に対する抗体を生じた。別の研究において、BOTOX(登録商標)で処置された9羽のウサギはどれも、A型ボツリヌス毒素に対する抗体を示さなかった。
DASの結果は、A型ボツリヌス毒素の相対的な最大効力がF型ボツリヌス毒素と同等で、F型ボツリヌス毒素の効力はB型ボツリヌス毒素よりも大きいことを示している。効果の継続期間については、A型ボツリヌス毒素はB型ボツリヌス毒素よりも大きく、B型ボツリヌス毒素の効果継続期間はF型ボツリヌス毒素よりも大きかった。治療指数値により示されるように、A型ボツリヌス毒素の2つの市販製剤(BOTOX(登録商標)およびDysport(登録商標))は異なる。B型ボツリヌス毒素を後肢に注射した後に認められる増大した水消費の挙動は、この血清型の臨床的に有意な量がネズミの全身循環に入ったことを示している。これらの結果はまた、A型ボツリヌス毒素と匹敵し得る効力を達成するためには、それ以外の調べられた血清型の量を増大する必要があることを示している。投薬量の増大は安全性を損なう可能性がある。さらに、ウサギにおいて、B型はBOTOX(登録商標)よりも抗原性が大きかった。これは、おそらくは、B型ボツリヌス毒素の効果的な用量を達成するために、より多量のタンパク質が注射されたためである。
ボツリヌス毒素を処置に使用することが知られている:蜘蛛膜下痛(例えば米国特許第6113915号参照);傍神経節腫(例えば米国特許第6139845号参照);耳疾患(例えば米国特許第6265379号参照);膵臓疾患(例えば米国特許第6143306号および第6261572号参照);偏頭痛(例えば米国特許第5714468号参照);平滑筋疾患(例えば米国特許第5437291号参照);前立腺肥大を含む前立腺疾患(例えばWO 99/03483およびDoggweiler R.ら、Botulinum toxin type A causes diffuse and highly selective atrophy of rat prostate, Neurourol Urodyn 1998; 17(4):363参照);過形成汗腺を含む自律神経疾患(例えば米国特許第5766606号参照);創傷治癒(例えばWO 00/24419参照);脱毛軽減(例えばWO 00/62746参照);皮膚病変(例えば米国特許第5670484号参照);ならびに神経性炎症性疾患(例えば米国特許第6063768号参照)。米国特許第6063768号は6欄39-42行に、炎症性関節症状、色素性絨毛結節性滑膜炎、およびある種の関節癌、滑膜細胞肉腫の処置を大ざっぱに開示している。米国特許第6063768号の6欄53行にはまた、更なる説明なしに、「腫瘍」が処置できると開示されている。
更に、標的化ボツリヌス毒素(すなわち天然でない結合部分を持つもの)を種々の状態の処置に使用できることが開示されている(例えば米国特許第5989545号、ならびにWO 96/33273; WO 99/17806; WO 98/07864; WO 00/57897; WO 01/21213; WO 00/10598参照)。
ボツリヌス毒素が、胸部痙攣の抑制のために胸筋に注射されている。例えばSenior M., Botox and the management of pectoral spasm after subpectoral implant insertion, Plastic and Recon Surg, July 2000, 224-225参照。
液体の安定な製剤および純粋なボツリヌス毒素製剤のいずれも開示されており(例えばWO 00/15245およびWO 74703参照)、ボツリヌス毒素の局所適用も開示されている(例えばDE 19852981参照)。
アセチルコリン
典型的には、または通常は、単一タイプの小分子の神経伝達物質のみが、哺乳動物の神経系において各タイプのニューロンによって放出される。神経伝達物質アセチルコリンが脳の多くの領域においてニューロンによって分泌されているが、具体的には運動皮質の大錐体細胞によって、基底核におけるいくつかの異なるニューロンによって、骨格筋を神経支配する運動ニューロンによって、自律神経系(交感神経系および副交感神経系の両方)の節前ニューロンによって、副交感神経系の節後ニューロンによって、そして交感神経系の一部の節後ニューロンによって分泌されている。本質的には、汗腺、立毛筋および少数の血管に至る節後交感神経線維のみがコリン作動性であり、交感神経系の節後ニューロンの大部分は神経伝達物質のエピネフリンを分泌する。ほとんどの場合、アセチルコリンは興奮作用を有する。しかし、アセチルコリンは、迷走神経による心臓の抑制のように、抑制作用を一部の末梢副交感神経終末において有することが知られている。
自律神経系の遠心性シグナルは交感神経系または副交感神経系のいずれかを介して身体に伝えられる。交感神経系の節前ニューロンは、脊髄の中間外側角に存在する節前交感神経ニューロン細胞体から伸びている。細胞体から伸びる節前交感神経線維は、脊椎傍交感神経節または脊椎前神経節のいずれかに存在する節後ニューロンとシナプスを形成する。交感神経系および副交感神経系の両方の節前ニューロンはコリン作動性であるので、神経節にアセチルコリンを適用することにより、交感神経および副交感神経の両方の節後ニューロンが興奮し得る。
アセチルコリンは、ムスカリン性受容体およびニコチン性受容体の2種類の受容体を活性化する。ムスカリン性受容体は、副交感神経系の節後ニューロンによって刺激されるすべてのエフェクター細胞において、また、交感神経系の節後コリン作動性ニューロンに刺激されるエフェクター細胞において見られる。ニコチン性受容体は、交感神経および副交感神経の両方の節前ニューロンと節後ニューロンとの間のシナプスに見られる。ニコチン性受容体はまた、神経筋接合部における骨格筋繊維の多くの膜にも存在する。
アセチルコリンは、小さい透明な細胞内小胞がシナプス前のニューロン細胞膜と融合したときにコリン作動性ニューロンから放出される。非常に様々な非ニューロン分泌細胞、例えば副腎髄質(PC12細胞株と同様に)および膵臓の島細胞が、それぞれカテコールアミン類およびインスリンを大きな高密度コア小胞から放出する。PC12細胞株は、交感神経副腎発達の研究のために組織培養モデルとして広範囲に使用されているラットのクロム親和性細胞腫細胞のクローンである。ボツリヌス毒素は、(エレクトロポレーションによるように)透過性にされた場合、または脱神経支配細胞に毒素を直接注射することによって、両タイプの細胞からの両タイプの化合物の放出をインビトロで阻害する。ボツリヌス毒素はまた、皮質シナプトソーム細胞培養物からの神経伝達物質グルタメートの放出を阻止することが知られている。
ボツリヌス毒素基質の広い分布
ボツリヌス毒素は、神経筋接合部におけるニュ−ロンからのアセチルコリン放出をシナプス前抑制することにより、筋細胞を神経麻痺させて弛緩性麻痺をもたらしうることが、知られている。ボツリヌス毒素のタンパク質分解ドメインは、標的細胞の細胞質ゾル中で特定の基質に作用し、その基質の切断は、アセチルコリン含有分泌小胞の膜ドッキングおよびエキソサイトーシスを妨げる。支配ニューロンと筋細胞の間のシナプス間隙にアセチルコリンが存在しないと、筋細胞の刺激が妨げられ、その結果、麻痺が起こる。
ボツリヌス毒素は、アセチルコリン含有分泌小胞のドッキングを制御する3種類のタンパク質の1つ以上に特異的に作用する細胞内プロテアーゼである。これらボツリヌス毒素の特異的基質は、シナプトブレビン、シンタキシンおよび/またはSNAP−25である。例えば、Duggan M. J.ら「細胞におけるボツリヌス神経毒基質発現の調査」Mov Disorder 10(3);376:1995や、Blasi J.ら「ボツリヌス神経毒素Aはシナプスタンパク質SNAP−25を選択的に切断する」Nature 365;160−163:1993などを参照されたい。B型、D型、F型およびG型ボツリヌス毒素の場合、その細胞内基質はシナプトブレビンである。SNAP−25、シナプトブレビンおよびシンタキシンはSNARE(可溶性N−エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体)と呼ばれている。
重要なことに、ボツリヌス毒素の基質を含有するのは、筋肉を支配している神経だけではない。すなわち「SNAP−25は多くのニューロンサブセットのシナプス前領域および神経冠細胞株に存在することから、このタンパク質はニューロン組織で重要な機能を補助していることが示唆される」Oyler G. A.ら「ラット脳、ラットPC−12細胞およびヒトSMS−KCNR神経芽細胞腫細胞におけるSNAP−25免疫反応性の分布と発現」Brain Res Dev Brain Res 1992 Feb 21;65(2):133−146, 1992。
また、「SNAREタンパク質が内分泌細胞に広く存在することから、これらは内分泌腫瘍の一般的診断マーカーとしても役立ちうることが示唆される」Graff, L.ら「小胞モノアミン輸送体、シナプトソーム関連タンパク質25およびシンタキシン1の発現:ヒト小細胞肺癌の特徴」Cancer Research 61, 2138−2144, Mar. 1, 2001の2138頁。例えば、SNAP−25は神経内分泌細胞(例えばクロム親和細胞、PC12、GH3およびインスリノーマなど)に広く分布することが知られている。さらに、ボツリヌス毒素基質であるシナプトブレビンは、線維芽細胞および骨髄性細胞(例えば肥満細胞)にも見いだされている。Duggan M.ら.(前掲)。
実際、SNAREは、全ての分泌細胞ではないとしてもほとんどの分泌細胞で、分泌小胞の膜融合を左右または制御しているようである。Andersson J.ら「神経芽細胞腫細胞におけるSNAP−25aおよびSNAP−25bタンパク質の弁別的選別」Eur J. Cell Bio 79, 781−789:Nobember 2000。
このように、ボツリヌス毒素の基質は、神経伝達物質アセチルコリンを放出するニューロン細胞に限定されない。したがってボツリヌス毒素基質は「膜−膜融合事象に広範に関与」しており、この証拠は「膜融合事象の普遍的機序」(すなわち分泌小胞と細胞壁とのドッキングに関する普遍的機序)を示している(Duggan 1995,前掲)。
このように、ボツリヌス毒素の細胞内基質は、ニュ−ロン細胞にも非ニュ−ロン分泌細胞にも遍在的に分布している。このことは、SNAP−25(25キロダルトン・シナプトソーム関連タンパク質であり、少なくともA型ボツリヌス毒素の基質である)が少なくとも以下の組織または細胞に存在するという発見によって、明瞭に実証されている:
(1)膵臓(Sadoul K.ら「SNAP−25はランゲルハンス島で発現され、インスリン放出に関与する」J. Cell Biology 128;1019−1029:1995)、
(2)下垂体(Dayanithi G.ら「単離され透過処理された神経分泌神経終末からのバソプレシンの放出はボツリヌスA毒素の軽鎖によって阻止される」Neuroscience 1990;39(3):711−5)、
(3)副腎髄質(Lawrence G.ら「ボツリヌス毒素AまたはBによって25kDaシナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)またはシナプトブレビンを切断した後の、無傷のクロム親和細胞と透過処理したクロム親和細胞の異なるエキサイトーシス応答」Eur J. Biochem 236;877−886:1996)、
(4)胃細胞(Hohne−Zell B.ら「ラット胃腸クロム親和細胞様細胞によるヒスタミンのエキソサイトーシスにおけるシナプトブレビンおよびSNAP−25の機能的重要性」Endocrinology 138;5518−5526:1997)、
(5)肺腫瘍(Graff, L.ら「小胞モノアミン輸送体、シナプトソーム関連タンパク質25およびシンタキシン1の発現:ヒト小細胞肺癌の特徴」Cancer Research 61, 2138−2144, Mar. 1, 2001(小細胞肺癌(SCLC)はSNAP−25を含んでいる)、
(6)腸腫瘍(Maksymowych A.ら「極性を持ったヒト大腸癌細胞によるボツリヌス神経毒の結合およびトランスサイトーシス」J of Bio. Chem, 273(34);21950−21957:1998(ヒト大腸癌細胞はボツリヌス毒素を内部に取り入れる)、
(7)膵腫瘍(Huang, X.ら「切断型SNAP−25(1−197)はボツリヌス神経毒Aと同様にHIT−T15インスリノーマ細胞からのインスリン分泌を阻害することができる」Mol. Endo. 12(7);1060−1070:1998(「...インスリン分泌には機能的なSNAP−25タンパク質が必要である」同書1060頁)。また、Boyd R.ら「インスリノーマ細胞株HIT−15およびRINm5Fからのインスリン放出に対するボツリヌス神経毒の作用」J. Bio Chem. 270(31);18216−18218:1995、および Cukan M.ら「膵臓腺房腫瘍細胞株AR42JにおけるSNAP−23およびSNAP−25の発現」Molec Biol Cell 20(suppl);398a, no. 2305:1999(「SNAP−25はニュ−ロン系および内分泌系におけるエキソサイトーシス事象を媒介するSNAREタンパク質である」)も参照されたい。
(8)下垂体腫瘍および正常下垂体細胞(Majo G.ら「ヒト下垂体腺腫中のシナプスタンパク質SNAP−25およびRab3Aの免疫細胞化学的分析、マンモソマトトロフ系統におけるSNAP−25の過剰発現」J. Pathol 1997 Dec.;183(4):440−446)、
(9)神経芽細胞腫(Goodall, A.ら「ヒト神経芽細胞腫SH−SY5Yにおける2タイプの分泌小胞の存在」J. of Neurochem 68;1542−1552:1997)。また、Oyler, G. A.「ラット脳、ラットPC−12細胞およびヒトSMS−KCNR神経芽細胞腫細胞におけるSNAP−25免疫反応性の分布と発現」Dev. Brain Res. 65 (1992);133−146も参照されたい。Goodall(1992)は、ただ1つの神経芽細胞腫細胞株において一定の小胞ドッキングタンパク質のインビトロ同定だけを論じていることに注意されたい。
(10)腎細胞(Shukla A.ら「ラット腎集合管主細胞においてSNAP−25関連Hrs−2タンパク質はAQP2と共存する」Am J Physiol Renal Physiol 2001 September;281(3):F546−56(SNAP−25は腎細胞の「調節性エキソサイトーシス」に関与する)、
(11)正常肺細胞(Zimmerman U. J.ら「肺胞上皮II型細胞におけるシナプトブレビン、シンタキシンおよびSNAP−25のタンパク質分解」IUBMB Life 1999 Oct.;48(4):453−8)、
(12)すべての卵巣細胞(Grosse J.ら「ラットおよびヒト卵巣の卵母細胞およびステロイド産生細胞における25キロダルトンのシナプトソーム関連タンパク質:分子解析およびゴナドトロピンによる調節」Biol Reprod 2000 August;63(2):643−50(SNAP−25は「すべての卵母細胞と、大きい胞状卵胞の顆粒膜細胞(GC)および黄体細胞を含むステロイド産生細胞に」見いだされた)。
コリン作動性乳腺組織
さまざまな過形成性および新生物性乳腺細胞がコリン作動性機序による影響を受ける。例えば、「胞細胞活性にはコリン作動性機序」があることが発見されている(Balakina G. B.ら「白色マウスの乳腺の胞状部分におけるコリンアセチルトランスフェラーゼの局在」Arkh Anat Gistol Embriol 1986 April;90(4):73−7)。また、乳腺異形成性(線維嚢胞)組織と乳癌組織の両方に対するコリン作動性の影響(Dorosevich A. E.ら「乳房異形成および乳癌の間質成分に不可欠な部分の一つとしての自律神経終末およびその細胞微小環境」Arkh Patol 1994 November−December;56(6):49−53)ならびに胸動脈の「平滑筋細胞の直接コリン作動性刺激」(Pesic S.ら「ブタ内胸動脈におけるアセチルコリン誘発性収縮:考えうるムスカリン受容体の役割」Zentralbl Veterinarmed A 1999 October;46(8):509−15)も存在する。
重要なことに、コリンエステラーゼの阻害によるアセチルコリンの増加は、乳腺細胞増殖の増加と、それに続く乳癌の発生に関連づけられている(Cabello G.ら「有機リン系農薬パラチオンおよびマラチオンがおそらくはアセチルコリンエステラーゼ阻害によって誘発するラット乳腺腫瘍モデル」Environ Health Perspect 2001 May;109(5):471−9)。したがって、乳癌細胞増殖の減少は、コリン作動性機序によって媒介されるようである(Panagiotou S.「オピオイド作用薬は細胞を細胞周期のG2/M期にブロックすることによって乳癌細胞増殖を変化させる:細胞骨格要素の関与」J Cell Biochem 1999 May 1;73(2):204−11)。
副腎髄質
副腎、別名腎上体は、腎臓の上部に位置する小さい三角形の構造物である。各副腎は副腎皮質、すなちち外側と、副腎髄質、すなわち内側とからなる。皮質は髄質を取り囲んで封入している。
副腎皮質は、ホルモンであるコルチゾールとアルドステロンを分泌する。コルチゾールはストレス時に産生され、糖使用を調節し、正常血圧の維持に不可欠である。アルドステロンは塩、カリウムおよび水分平衡の主要調節因子の一つである。副腎を両方とも除去した場合は、コルチゾールおよびアルドステロン補充療法が必須である。
副腎髄質は、カテコールアミン類であるアドレナリン(同義語としてエピネフリン)とノルアドレナリン(同義語としてノルエピネフリン)を分泌する。これらのホルモンは、ストレス反応を含むさまざまな身体機能の正常な調節に重要であり、その場合、これらは血圧、心臓の拍出能力、および血糖レベルの上昇を引き起こす。副腎髄質を除去しても、体内の他の腺が補いうるので、ホルモン欠乏症はほとんどまたは全く起こらない。逆に、過剰なカテコールアミン産生は生死にかかわる。
正常成人男性では、副腎髄質によって産生される全カテコールアミンの約85%がアドレナリンであり、残り15%がノルアドレナリンである。髄質組織1gにつき約1.6mgのカテコールアミンが存在する。血中および尿中に見いだされるノルアドレナリンの大半は副腎髄質に由来するものではなく、節後交感神経終末に由来する。二クロム酸カリウムを含む固定液に、薄切したばかりの副腎を入れると、髄質は褐色に変化する。これをクロム親和反応と呼ぶが、この名前はクロム塩に対する副腎髄質組織の親和性を示唆するように付けられたものである。したがって、副腎髄質の細胞はしばしばクロム親和細胞と呼ばれる。クロム親和細胞は副腎髄質の外にも存在するが、通常はノルアドレナリンだけを分泌し、アドレナリンは分泌しない。
副腎髄質は、節前コリン作動性神経線維によって支配された交感神経節であると考えることもできる。これらの神経線維はアセチルコリンを放出し、そのアセチルコリンは、副腎髄質のクロム親和細胞からのエキソサイトーシスの過程によるカテコールアミン類(主としてアドレナリン)の分泌を引き起こす。正常な副腎髄質は、交感神経系の節前コリン作動性枝である内臓神経によって支配されている。副腎髄質の活性は、ほとんど完全に、そのようなコリン作動性神経の制御下にある。
クロム親和細胞腫
クロム親和細胞(副腎髄質のクロム親和細胞を含む)と交感神経節細胞は、以下に図解するように、どちらも共通する胚祖先、すなわち神経冠の交感神経産生細胞に由来するので、両者には共通点が多い。これらの各細胞タイプから発生しうる新生物のタイプの例を括弧内に示す。表示した細胞タイプはそれぞれ潜在的にカテコールアミン類を分泌することができる。
Figure 0004889220
ほとんどのクロム親和細胞新生物は副腎髄質に発生するが、異所性および多部位性クロム親和細胞腫瘍も知られており、それらは、最も一般的には、小児に発生する。
1.傍神経節腫
傍神経節(同義語としてクロム親和体)は心臓(大動脈付近)、腎臓、肝臓、性腺、その他の場所に見いだすことができ、クロム親和細胞(神経冠細胞に由来すると思われ、自律神経系神経節細胞と密接な関係を持つように分布したもの)を含んでいる。傍神経節腫は傍神経節に由来するクロム親和細胞を含む新生物である。頚動脈小体傍神経節腫は頚動脈傍神経節腫と呼ばれ、副腎髄質傍神経節腫は褐色細胞腫またはクロム親和細胞腫と呼ばれる。
頚動脈小体は、総頚動脈の外膜に見いだされる丸い赤褐色〜黄褐色の構造物として観察されることが多い。これは、分岐部の血管の後内側壁に見いだすことができ、メーヤーの靱帯によって付着していて、供給血管はその靱帯を通って主に外頚動脈から流れこんでいる。正常頚動脈小体は直径3〜5mmである。舌咽神経(第IX脳神経)による求心性神経支配を受けているようである。舌咽神経は、運動線維を茎突咽頭筋に、副交感神経分泌促進線維を耳下腺に、そして感覚線維をとりわけ鼓室、軟口蓋の内面および扁桃腺に供給している。組織学的には、頚動脈小体は、多量の細胞質と大きな円形または長円形の核とを持つI型(主)細胞を含んでいる。細胞質はカテコールアミンを貯蔵し放出すると思われる有芯顆粒を含んでいる。正常頚動脈小体は、動脈血組成変化の検出を担っている。
頚動脈傍神経節腫は、全体からみれば稀な腫瘍であるが、頭頚部傍神経節腫の中では最も一般的な形態である。ほとんどの頚動脈小体傍神経節腫にとって選択処置は外科的切除である。しかし、重要な血管および神経のごく近くに位置するので、罹患(主に第X〜XII脳神経の欠損と血管損傷)および死亡(3〜9%と見積もられる)の危険は極めて現実的である。直径が5cmを超える腫瘍は合併症の発生率が著しく高いので、腫瘍サイズは重要である。術中αおよびβアドレナリン遮断薬が投与される(頚動脈傍神経節腫がカテコールアミン類を分泌している場合)か、それほど好ましくはないが、術前に血管造影塞栓術が行われる。放射線療法は、単独で行うにせよ、手術と併用するにせよ、第2の検討事項であり、多少議論のある部分である。残念ながら、傍神経節種は、頚動脈傍神経節腫を含めて、その位置および/または大きさゆえに、手術不能である場合もある。
2.褐色細胞腫
褐色細胞腫は副腎髄質に発生し、過剰なカテコールアミン産生に関係する臨床症状、例えば突発性高血圧(高血圧)、頭痛、頻脈、安静時の多汗、前屈姿勢から突然起きあがった後の症状の発現、および不安発作などを引き起こす。診断には、腹部撮像とカテコールアミン測定用の24時間尿採取で、通常は十分である。フェノキシベンザミンおよびメチロシンによるカテコールアミン遮断は一般に症状を改善し、現在の選択治療である手術中の高血圧発症を予防するのに必要である。標準処置は腹腔鏡下副腎摘出術であるが、家族性型の褐色細胞腫には部分副腎摘出術もしばしば用いられる。悪性(癌性)褐色細胞腫は稀な腫瘍である。
褐色細胞腫は、高血圧の副次的原因についての評価を受けている患者の約0.3%に存在すると見積もられている。褐色細胞腫は、診断されないか、または不適切な処置を受けた場合には、致死的になりうる。一連の剖検から、多くの褐色細胞腫は臨床的に疑われていないことと、診断を受けていない腫瘍が病的結果に明らかに関係していることが示唆される。
副腎髄質における変化の進行として、正常な副腎髄質から副腎髄質過形成(特異的な腫瘍の発生を伴わない副腎髄質の細胞数および大きさの全般的増加)を経て、副腎髄質の腫瘍(褐色細胞腫)への進行を挙げることができる。
褐色細胞種の処置は一方または両方の副腎の外科的除去である。両方の副腎を除去する必要があるかどうかは、疾患の程度に依存するだろう。両方の副腎を除去してしまった患者は、コルチゾールおよびアルドステロン補充を毎日受けなければならない。コルチゾールはヒドロコルチゾン、コルチゾンまたはプレドニゾンによって補充され、毎日投与しなければならない。アルドステロンは毎日経口フルドロコルチゾン(フロリネフ(商標))によって補充される。発熱、かぜ、インフルエンザ、外科手術または麻酔を含むストレス時は、そのような患者には、ヒドロコルチゾンまたはプレドニゾン補充量の増加が必要である。
3.グロムス腫瘍
グロムス腫瘍(傍神経節腫の一タイプ)は一般に良性新生物であり、やはり神経外胚葉組織から生じ、身体のさまざまな部分に見いだされる。グロムス腫瘍は、側頭骨内に生じる最も一般的な良性腫瘍であり、悪性になって転移するのはそれらの5%未満である。グロムス腫瘍は、頭蓋底、胸郭および首に、副交感神経に沿って分布する糸球から生じる。典型的には、各耳には3つの糸球がある。糸球は通常、ヤコブセン神経(CN IX)もしくはアーノルド神経(CN X)に付随して見いだされるか、または頚静脈球の外膜中に見いだされる。しかし物理的位置は、通常は、岬角(鼓室隆起)の粘膜または頚静脈球(頚静脈糸球)である。
頚静脈球腫瘍の発生率は約1:1,300,000人口であり、最も目につく疫学的事実は、女性での発生が優勢だということで、女性:男性の発生比は少なくとも4:1である。カテコールアミンを分泌する(すなわち機能的な)腫瘍は症例の約1%〜3%に生じる。
グロムス腫瘍はカテコールアミン類分泌能を持ち、この点は、やはり神経冠組織に由来し、やはりカテコールアミン類を分泌することができる副腎髄質に似ている。グロムス腫瘍に相当する副腎での新生物は褐色細胞腫であり、グロムス腫瘍は副腎外褐色細胞腫と呼ばれている。カテコールアミンを分泌するグロムス腫瘍は、不整脈、過剰発汗、頭痛、悪心および蒼白を引き起こしうる。
グロムス腫瘍は頭蓋底のさまざまな領域に生じうる。中耳腔に限局されている場合は、これを鼓室隆起腫瘍と呼ぶ。頚静脈孔の領域に生じた場合は、その程度とは無関係に、頚静脈糸球腫瘍と呼ばれる。頚静脈孔に向かって伸びる首の上部に発生した場合は、これを迷走神経糸球腫瘍と呼ぶ。頚動脈分岐部領域に発生した場合は、これを頚動脈糸球腫瘍と呼ぶ。グロムス腫瘍の部位としては、他にも、咽頭、眼窩、鼻、および大動脈弓などが知られている。
頚静脈糸球腫瘍は最も一般的な中耳の腫瘍である。これらの腫瘍は著しく血管性である傾向を示し、外頚動脈の枝によって血液が供給されている。頚静脈糸球腫瘍の症状には、拍動性の耳鳴りを伴う難聴、めまい、そして時には耳痛が含まれる。患者には、おそらく中耳の遮蔽による難聴がありうるが、腫瘍塊による神経損傷に起因する難聴も存在しうる。嚥下、開口、肩すくめおよび舌の動きを制御する神経の脳神経麻痺はいずれも、頚静脈糸球腫瘍の症状である。鼓膜を調べると、赤/青拍動性塊をしばしば見ることができる。症状は、最初は潜行性である。この腫瘍の位置と血管性のせいで、最も一般的な愁訴は、拍動性の耳鳴りである。この耳鳴りは、ほとんどの場合、鼓膜臍への機械的衝突に続発していると考えられる。他の一般的な症状は、耳の膨満および(伝音)難聴である。
カテコールアミン分泌性グロムス腫瘍の現在の治療法は、αおよびβ遮断薬を投与してからの放射線照射および/または外科的切除である。頚静脈糸球腫瘍の処置には、αおよびβ遮断薬の投与が含まれる。X線療法は、たとえ腫瘍塊が残ったとしても症状を改善するために用いることができる。血液供給を遮断する物質で腫瘍を塞栓させることもできるが、この手法には、腫瘍の膨潤が起こって脳幹および小脳を圧迫しうると共に、血液供給を失ったときに死ぬ細胞からカテコールアミンが放出されるという問題がある。小さい腫瘍が適当な位置にある場合は外科手術を行うことができる。頚静脈糸球腫瘍の外科手術の合併症は、耳から脳脊髄液が持続的に漏出することと、顔面の動き、感覚または聴覚を制御する脳神経の1つが麻痺することである。
たとえ外科手術が成功しうるとしても、頚静脈球腫瘍は再発率が高く、多重手術を要する場合があるので、多少問題がある。外科的切除には、主に医原性脳神経欠損とCSF漏出による傷害の危険がある。脳神経保護の欠如は、下部脳神経欠損という傷害を伴うので、おそらく最も重大な外科的介入の欠点だろう。放射線療法も、例えば側頭骨の骨放射線壊死、脳壊死、下垂体−視床下部機能不全、および二次悪性腫瘍などの重篤な合併症を持っている。他の術後合併症には、CSF漏出、吸引症候群、髄膜炎、肺炎および創感染などがある。
したがって、必要とされているのは、乳腺新生物および前癌性過形成性乳腺組織を処置するための有効な非外科切除的非放射線療法的療法である。
本発明はこの必要を満たし、さまざまな前癌性および癌性乳腺組織を処置するための有効な非外科切除的非放射線療法的療法を提供する。したがって本発明は、過形成性組織などの異型性組織、嚢胞および新生物(腫瘍および癌を含む)を処置する方法、ならびに、異型性組織、嚢胞および新生物の発生を防止する方法または異型性組織、嚢胞および新生物の退行もしくは寛解を引き起こす方法を包含する。特に本発明は、患部乳腺組織またはその近傍にクロストリジウム毒素を局所投与することによって、乳腺嚢胞や良性および癌性新生物などの乳腺障害を処置する方法、ならびに過形成性および/または高張性乳腺細胞を処置する方法を包含する。
本発明の一態様は、約10-3U/kg〜約2000U/kgのクロストリジウム神経毒を乳腺に局所投与することによって乳腺障害を処置する方法である。クロストリジウム神経毒は、ボツリヌス毒素であることができる。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2U/kg〜約200U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1U/kg〜約35U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素はA型、B型、C型、D型、E型、F型およびG型ボツリヌス毒素からなる群より選択され、好ましいボツリヌス毒素はA型ボツリヌス毒素である。
ボツリヌス毒素の局所投与は、乳腺中または乳腺上へのボツリヌス毒素植込剤の植込みによって行うことができる。乳腺障害は、前癌性乳房組織および乳癌からなる群より選択される。したがって乳腺障害は嚢胞性乳房疾患であることができる。ボツリヌス毒素は、乳腺へのボツリヌス毒素の直接注入によって局所投与することができる。
より具体的な本発明の一態様は、約10-3U/kg〜約2000U/kgのA型ボツリヌス毒素をヒト患者の乳腺に局所投与することによって乳腺障害を処置する方法である。
本発明は、乳腺にまたは前癌性乳房組織の近傍にボツリヌス毒素を局所投与し、その結果として、過形成性、高張性または新生物性乳腺組織の大きさおよび/または活性を低下させることによって、乳腺障害を処置する方法も包含する。この方法により、ボツリヌス毒素の局所投与後に、過形成性、高張性または新生物性乳腺組織の直径を約20%〜約100%減少させることができる。
したがって、ここに記載する乳腺障害の処置方法は、処置量のボツリヌス毒素を、過形成性、高張性または新生物性乳腺組織に局所投与し、その結果として、前記過形成性、高張性または新生物性乳腺組織の直径を約20%〜約100%減少させるステップを含むことができる。
さらに本発明は、乳腺新生物の発生を防止する方法であって、過形成性または高張性乳腺組織にボツリヌス毒素を局所投与し、その結果として、前記過形成性または高張性乳腺組織からの分泌を減少させ、前記過形成性または高張性乳腺組織が新生物に発展するのを防止するステップを含む方法を包含する。この方法では、ボツリヌス毒素を約10-3U/kg〜約2,000U/kgの量で投与し、ボツリヌス毒素はA型、B型、C型、D型、E型、F型およびG型ボツリヌス毒素からなる群より選択される。ボツリヌス毒素は、前記過形成性または高張性乳腺組織にボツリヌス毒素を直接注入することによって、局所投与することができる。
繰り返すと、乳腺新生物の発生を防止する方法は、処置量のA型ボツリヌス毒素をヒト患者の前癌性過形成性または高張性乳腺組織に局所投与し、その結果として、乳腺新生物の発生を防止するステップを含むことができる。
もう一つの選択肢として、新生物の発生を防止する方法は、約10-3U/kg〜約2000U/kgのボツリヌス毒素を過形成性組織に局所投与するステップを含むことができ、この場合、ボツリヌス毒素は、前癌性過形成性組織からの小胞エキソサイトーシスを阻害することによって前記過形成組織からの分泌を減少させ、その結果として、前記過形成性組織が新生物に発展するのを防止する。過形成性組織は、25キロダルトン・シナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)、シナプトブレビンおよびシンタキシンからなる小胞膜ドッキングタンパク質の群より選択されるボツリヌス毒素の基質を含みうる。さらにまた、ボツリヌス毒素は、約1U〜約40,000Uの量、例えば約10-3U/kg〜約35U/kg、約10-2U/kg〜約25U/kg、約10-2U/kg〜約15U/kg、または約1U/kg〜約10U/kgの量で投与することができ、ボツリヌス毒素の局所投与は、乳房組織の本体の中または上にボツリヌス毒素植込剤を植込むことによって行われる。
本発明の具体的一態様は、乳腺癌の発生を防止(すなわち[過形成性、化生性または異型性ではあるが]良性の前癌性乳房組織が悪性新生物または癌腫に発展するのを防止することによって防止)する方法であって、約10-3U/kg〜約2000U/kgのA型ボツリヌス毒素を、ヒト患者の過形成性、化生性または異型性乳房組織(例えばアポクリン細胞で裏打ちされた嚢胞)に局所投与するステップを含む方法である。この場合、乳房組織は、25キロダルトン・シナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)、シナプトブレビンおよびシンタキシンからなる小胞膜ドッキングタンパク質の群より選択されるボツリヌス毒素の基質を含み、ボツリヌス毒素はその基質に作用して患部乳房組織からの分泌を減少させる。
本発明は、約10-3U/kg〜約2000U/kgのボツリヌス毒素を新生物に局所投与し、その結果として、新生物の大きさを減少させ、そして/または新生物からの分泌を減少させることによって新生物を処置することによる、新生物の処置方法を、その範囲に包含する。
本発明の方法は、新生物の本体中にボツリヌス毒素を直接注入することによって、または新生物の本体中または本体上にボツリヌス毒素植込剤を植込むことによって行うことができる。本発明の範囲に包含される方法を実施して、10-3U/kg〜約2000U/kgのボツリヌス毒素を新生物に局所投与することができる。U/kgとは、患者の総体重1kgあたりのボツリヌス毒素の単位数を意味する。ボツリヌス毒素はA型、B型、C型、D型、E型、F型およびG型ボツリヌス毒素の1つであることができ、A型ボツリヌス毒素の臨床有効性は多くの適応症について知られていることと、容易に入手できることから、A型ボツリヌス毒素が好ましい。
好ましくは、ボツリヌス毒素を、約1U〜約40,000U(総単位数、患者の体重1kgあたりの単位数ではない)の量で投与する。高い方の用量範囲では、ボツリヌス毒素の投与量(すなわち40,000単位)を、ボツリヌス毒素デポーの部分量(すなわち約10単位のA型ボツリヌス毒素または約500単位のB型ボツリヌス毒素)が、制御放出送達系から、3〜4ヶ月かけて放出されるように(連続的放出送達系)、またはほぼ3〜4ヶ月の反復周期で多相的に制御放出送達系から放出されるように(拍動的放出送達系)、制御放出送達系(すなわち植込剤)の形で投与することができる。処置量のボツリヌス毒素を連続的または拍動的に新生物内または新生物周囲に放出させるために本発明で使用するのに適した制御放出送達系は、同時係属中の特許出願第09/587250号(発明の名称「Neurotoxin Impalant(神経毒植込剤)」)および特許出願第09/624,003号(発明の名称「Botulinum Toxin Implant(ボツリヌス毒素植込剤)」)に開示されている。
より好ましい本発明の一態様として、本発明に従って新生物の本体にまたは新生物の内部に局所投与されるA型ボツリヌス毒素の量は、約10-3U/kg〜約40U/kgの量であることができる。約10-3U/kg未満のA型ボツリヌス毒素は有意な処置有効性をもたらさないと予想され、約40U/kgを超えるA型ボツリヌス毒素は、この毒素の毒性用量またはほぼ毒性用量になると予想することができる。B型ボツリヌス毒素の場合、本発明に従って新生物に局所投与されるB型ボツリヌス毒素の量は、約10-3U/kg〜約2000U/kgの量であることができる。約10-3U/kg未満のB型ボツリヌス毒素は有意な処置有効性をもたらさないと予想され、約2000U/kgを超えるB型ボツリヌス毒素は、B型ボツリヌス毒素の毒性用量またはほぼ毒性用量になると予想することができる。市販B型ボツリヌス毒素製剤は約2000単位/kg(筋肉内)で、B型ボツリヌス毒素の霊長類致死用量に近づくと報告されている(Meyer K. E.ら「成体および若齢カニクイザルにおけるニューロブロックの比較全身毒性研究」Mov. Disord 15(Suppl 2);54;2000)。C型、D型、E型、F型およびG型ボツリヌス毒素の場合、新生物に注入する量は、患者ごとに決定することができ、B型毒素の用量範囲を超えないと予想される。
より好ましい本発明の一態様では、ここに開示する方法に従って投与されるA型ボツリヌス毒素の量は、約10-2U/kg〜約25U/kgである。約1000U/kg未満のB型ボツリヌス毒素であれば、霊長類に筋肉内注入しても、全身作用は現れないと報告されているので(前掲)、所定の期間に連続的放出系によって投与されるB型ボツリヌス毒素の量は、好ましくは、約10-2U/kg〜約1000U/kgである。より好ましくは、A型ボツリヌス毒素を、約10-1U/kg〜約15U/kgの量で投与する。最も好ましくは、A型ボツリヌス毒素を約1U/kg〜約10U/kgの量で投与する。多くの場合、約1単位〜約100単位未満のA型ボツリヌス毒素を新生物内投与することによって、本明細書に説明する通り、有効で長時間持続する治療的改善が得られる。より好ましくは約5単位〜約75単位のボツリヌス毒素(例えばA型ボツリヌス毒素)を使用することができ、最も好ましくは、約5単位〜約50単位のA型ボツリヌス毒素を、標的新生物組織中に局所投与して、有効な結果を得ることができる。特に好ましい本発明の一態様として、約1単位〜約50単位のボツリヌス毒素(例えばA型ボツリヌス毒素)を、新生物標的組織に局所投与して、本明細書に記載する通り、治療的に有効な結果を得ることができる。
本発明の範囲に包含される具体的一方法は、約10-3U/kg〜約2000U/kgのA型ボツリヌス毒素をヒト患者の新生物に局所投与し、その結果として、新生物からの分泌を減少させることによって行うことができる。
「局所投与」とは、標的組織の局所領域内へのまたは局所領域への神経毒の直接注入を意味する。全身性の投与経路、例えば経口投与経路や静脈内投与経路は、本発明の範囲から除外される。
ボツリヌス毒素は修飾ボツリヌス毒素であることができる。すなわちボツリヌス毒素は、天然ボツリヌス毒素と比較して、そのアミノ酸の少なくとも1つが欠失しているか、修飾されているか、または置換されていてもよい。したがってボツリヌス毒素は組換え生産されたボツリヌス毒素またはその誘導体もしくは断片であることができる。
本発明は、過形成性、高張性、嚢胞性および/または新生物性組織を、クロストリジウム毒素で処置し、その結果として、その過形成性、高張性、嚢胞性および/または新生物性状態を減少させるか排除することができるという発見に基づいている。処置対象組織は良性でも悪性でもよく、過形成には高張性状態が含まれる。したがって本発明は、乳癌、嚢胞性乳房疾患、肺癌、腺癌、卵巣癌、口腔および中咽頭癌、膵嚢胞および膵癌、前立腺癌、腎臓癌、GI管癌、精巣癌および精巣嚢胞、リンパ節癌、子宮内膜癌を含む状態の処置に適用することができると共に、そのような臓器および腺の過形成性、化生性、異型性および異形成性前癌組織に適用することができる。
また、1つ以上のボツリヌス毒素基質によって分泌活性が制御または左右される過剰分泌細胞(過形成性または高張性)も、その過形成性または高張性分泌組織が新生物に発展しないように、本発明の範囲に包含される方法で処置することができる。標的組織では、ボツリヌス毒素のタンパク質分解性軽鎖が、内部に取り入れられる。
好ましい一態様として、本発明は、前癌性乳房組織などの乳房疾患を処置する方法である。本発明はどんな特定機序にも限定されないが、患部組織(例えば乳房嚢胞)へのクロストリジウム毒素(例えばボツリヌス毒素)の局所投与は、アポクリン細胞を神経支配している刺激性コリン作動性線維に対する毒素の阻害作用によって、または嚢胞細胞によって毒素(または少なくとも毒素軽鎖)が内部に取り入れられた時の嚢胞に対する毒素の直接作用によって、嚢胞の処置(すなわち、嚢胞および/またはアポクリン細胞過形成の大きさの減少[または完全な除去])をもたらすという仮説を設けることができる。
したがって、本発明の好ましい一態様は、例えば乳房嚢胞、硬化性腺症、乳頭腫、線維腺腫(小葉過形成)および閉塞性腺症などの前癌性乳腺障害を処置する方法である。前癌性とは、患部乳房組織は悪性ではない(すなわち癌性ではない)が、過形成性、肥厚性または化生性ではありうることを意味し、その患者が乳癌を発生させる危険を前癌性組織の存在が増加させることを意味する。
したがって、コリン作動性の神経支配を受けている標的組織は、クロストリジウム毒素(例えばボツリヌス毒素)の局所投与によって処置することができる。局所投与とは、神経毒が標的組織(すなわち前癌性乳房組織)または処置すべき局所組織領域の中に、またはその近傍に、直接投与されることを意味する。局所投与には、患部組織への神経毒の直接注入が含まれる。非癌性(良性)、前癌性、癌性(悪性)の過形成性および/または高張性分泌組織を、本発明の範囲に包含される方法で処置することができる。腫瘍の発生に先立って起こる結節性または散在性の過形成を、本発明によって処置することができる。
ある特定の神経毒、すなわちボツリヌス毒素を使用して、さまざまな前癌性乳房組織を処置すると、劇的な改善効果が得られること、そしてその結果、これが現行の外科手術、化学療法および放射線療法による治療法に、かなりの部分、取って代わりうることを発見した。重要なことに、ボツリヌス毒素の単回局所投与によって、乳房疾患を有効に処置することができる。
投与経路および投与されるボツリヌス毒素の量は、処置される特定の乳腺障害ならびにサイズ、体重、年齢、障害の重篤度および処置に対する応答性を含む様々な患者パラメーターに応じて広範囲に変化させることができる。適切な投与経路および投薬量を決定する方法は、一般には主治医によって症例毎に決定される。そのような決定は当業者にとっては日常的なことである(例えば、Harrison's Principles of Internal Medicine (1997)(編者:Anthony Fauciら、第14版、発行:McGraw Hill)を参照のこと)。全身循環への毒素の進入が実質的に回避されるように処置を行う(すなわち、静脈内投与ではなく皮下または筋肉内注射によって)。
投与に適切な具体的な投薬量は、上記に議論された要因に応じて当業者によって容易に決定される。投薬量はまた、処置または脱神経支配される腫瘍のサイズに、そして毒素の市販の製剤に依存し得る。また、ヒトにおける適切な投薬量の推定値は、他の非新生物組織の効果的な脱神経支配のために必要とされるボツリヌス毒素の量を決定することから推定することができる。したがって、注射されるA型ボツリヌス毒素の量は、処置される乳房組織の大きさおよび活性レベルに比例する。
一般には、患者体重の1kgあたり約0.01単位〜2000単位のボツリヌス毒素(A型ボツリヌス毒など)を、神経毒が乳房標的組織またはその近傍に投与されたときに毒素により誘導される標的組織退行を効果的に達成するために投与することができる。約0.01U/kg未満のボツリヌス毒素は顕著な処置作用を有さず、一方、それぞれ約2000U/kgよりも多い、または約35U/kgよりも多いB型またはA型のボツリヌス毒素は該神経毒の毒性量に近づく。注射針の慎重な設置および使用される神経毒の少ない容量により、著量のボツリヌス毒素が全身に現れないようになる。より好ましい用量範囲は約0.01U/kg〜約25U/kgのボツリヌス毒素であり、例えば、BOTOX(登録商標)として配合された用量である。投与されるボツリヌス毒素のU/kgの実際の量は、例えば処置される過形成性乳房組織の範囲(大きさ)および活性レベルならびに選ばれた投与経路などの要因に依存する。A型ボツリヌス毒素は、本発明の方法において使用される好ましいボツリヌス毒素血清型である。
ボツリヌス毒素の主要な作用部位は、毒素が迅速に結合して、アセチルコリンの放出を妨げる神経筋接合部である。したがって、ボツリヌス毒素がコリン作動性のシナプス前末梢運動ニューロンに対する結合親和性を有することが知られている一方で、本発明者が見出したところでは、ボツリヌス毒素はまた、様々な前癌性乳房組織に結合して、その中に移動し得、毒素はそこで、その後、知られている様式で、そのそれぞれの分泌管−膜ドッキングタンパク質に対するエンドプロテアーゼとして作用する。ある種の乳房組織に対するボツリヌス毒素の親和性は比較的低いために、毒素を分泌組織または腺様組織に注射して、毒素の濃度を局所的に大きくすることが好ましい。したがって、本発明は、コリン作動的な神経支配をほとんどまたは全く受けない前癌性乳房組織を処置するために適用することができる。

好ましくは、本発明の範囲に含まれる方法を実施するために使用される神経毒はボツリヌス毒素であり、例えば、A型、B型、C型、D型、E型、F型またはG型の血清型のボツリヌス毒素のいずれかである。好ましくは、使用されるボツリヌス毒素は、ヒトにおけるその効果が高いこと、容易に入手できること、そして筋肉内注射により局所投与されて骨格筋および平滑筋の障害を処置するために使用されることが知られていることのために、A型ボツリヌス毒素である。
前癌性乳房組織を処置するための本発明による神経毒の投与経路は、選ばれた神経毒毒素の溶解性特性ならびに投与される神経毒の量などの基準に基づいて選択することができる。神経毒の投与量は、処置される特定の障害、その重篤度、およびサイズ、体重、年齢および処置に対する応答性を含む他の様々な患者パラメーターに応じて広範囲に変化させることができる。例えば、影響を受ける前癌性乳房組織の範囲は、注射された神経毒の容量に比例すると考えられ、一方で、脱神経支配の程度は、ほとんどの用量範囲について、注射された神経毒の濃度に比例すると考えられる。適切な投与経路および投薬量を決定する方法は、一般には主治医によって症例毎に決定される。そのような決定は当業者にとっては日常的なことである(例えば、Harrison's Principles of Internal Medicine (1997)(編者:Anthony Fauciら、第14版、発行:McGraw Hill)を参照のこと)。
本発明は、その範囲内において、患者の前癌性乳房組織に局所的に適用されたときに処置効果の継続時間が長い任意の神経毒の使用を包含する。例えば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ボツリヌス・ブチリカム(Clostridium butyricum)およびクロストリジウム・ベラティ(Clostridium beratti)などの毒素産生性のクロストリジウム属細菌の種のいずれかによって作られる神経毒を本発明の方法において使用することができ、または本発明の方法における使用のために適合させることができる。また、A型、B型、C型、D型、E型、F型またはG型のボツリヌス毒素血清型はすべて、本発明の実施において好都合に使用することができるが、上記に説明されているように、A型が最も好ましい血清型である。本発明の実施により、標的組織の退行および緩解がヒトにおいて27ヶ月またはそれ以上にわたってもたらされ得る。
透過処理された副腎髄質からのカテコールアミン放出がボツリヌス毒素によって阻害され得ることが知られている。また、(エレクトロポレーションよるように)透過処理されたインスリン分泌細胞からのインスリンの放出がボツリヌス毒素によって阻害され得ることが知られている。インビトロの場合、これらの非神経細胞の細胞膜は、ボツリヌス毒素に対する細胞表面受容体がないために、細胞の細胞質ゾルへのボツリヌス毒素の導入を助けるために透過性にすることができる。したがって、B型ボツリヌス毒素は、インスリン分泌細胞株HIT-15に存在するシナプトブレビンを切断することによってインスリン分泌を阻害するようである(Boyd R.S.ら、The Effect of Botulinum Neurotoxin-B On Insulin Release From a Beta Cell、Mov Disord 10(3):376 (1995))。
本発明者の論ずるところでは、ボツリヌス毒素の軽鎖が細胞内媒質に移動する限り、ボツリヌス毒素により、任意の分泌性(すなわち、ニューロン性、腺様、分泌性、クロム親和性)細胞タイプからの任意の小胞媒介エキソサイトーシスの放出が阻止され得る。例えば、細胞内タンパク質のSNAP−25はニューロン性および非ニューロン性の両方の分泌細胞に広く分布しており、そしてA型ボツリヌス毒素は、特異的な基質がSNAP−25であるエンドペプチダーゼである。したがって、コリン作動性ニューロンはボツリヌス毒素および破傷風毒素に対する高親和性の受容器を有する(したがって、分泌化合物の小胞媒介エキソサイトーシスの阻害に対して、他のニューロンおよび他の細胞よりも大きな感受性を有する)一方で、毒素濃度が上昇するに従い、非コリン作動性の交感神経ニューロン、クロム親和性細胞および他の細胞タイプがボツリヌス毒素を取り込むことができ、そして低下したエキソサイトーシスを示すことができる。
したがって、本発明を実施することによって、非コリン作動性神経線維、ならびに神経支配されていないか、またはあまり神経支配されていない分泌性新生物を、分泌性新生物(すなわち機能的な(カテコールアミン分泌性の)傍神経節腫)および過形成性クロム親和細胞の退行処置をもたらすために適度により高い濃度のボツリヌス毒素を使用することによって処置することができる。
正常な副腎髄質においては、カテコールアミン分泌速度は、クロム親和細胞を刺激する神経の活性によって制御されている。一般に、クロム親和細胞腫は神経支配されず、そのような腫瘍からのカテコールアミン放出は神経制御下にないと考えられているが、そのような腫瘍がコリン作動性の神経支配を裏付ける証拠がある。例えば、電子顕微鏡検査によって、カテコールアミン小胞を含有する細胞に接触するシナプス小胞を有する神経が認められている。更に、感情的な転倒、高血圧または過呼吸に誘発されてクロム親和細胞腫が循環に突然にカテコールアミンを分泌することは、分泌への神経系の影響を示唆する。更に、クロム親和細胞腫患者を水平位から直立位に体位変化させると、尿中ノルエピネフリンの顕著な上昇(そのような腫瘍を有する患者には見られない)を起こすことがわかっている。この作用は、(a)機械的作用(すなわちカテコールアミンを豊富に含む腫瘍の圧迫)、(b)交感神経系の反射活性化(この場合、アドレナリン作動系上昇量のカテコールアミンが、クロム親和細胞腫患者の神経終末に蓄積したかもしれない)、および/または(b)既存のクロム親和細胞腫神経支配の活性化によるものであり得る。
さらに、本発明の範囲内に含まれる方法は、改善された患者機能を提供することができる。「改善された患者機能」は、疼痛の軽減、臥床時間の短縮、歩行運動の増大、より健康な態度、より多様なライフスタイル、および/または正常な筋肉緊張により可能になる治癒などの要因によって測定される改善として定義することができる。改善された患者機能は、改善された生活の質(QOL)と同義である。QOLは、例えば、知られているSF−12またはSF−36の健康調査評価手順を使用して評価することができる。SF−36は、身体的機能性、身体的問題による職務制限、社会的機能性、身体の痛み、一般的な精神的健康状態、精神的問題による職務制限、活力および一般的な健康認識の8項目において患者の身体的および精神的な健康状態を評価する。得られる評価点は、様々な一般的集団および患者集団について得られる公表された値と比較することができる。
上記に示されているように、本発明者は、驚くほど効果的で長く持続する処置効果が、ヒト患者の前癌性乳房組織への神経毒の局所投与によって達成され得ることを発見した。本発明の最も好ましい実施形態において、本発明は、A型ボツリヌス毒素を標的組織または標的組織局部域に直接注射することによって実施される。神経腺結合部においては、A型ボツリヌス毒素などのボツリヌス毒素の化学的な脱神経支配効果は、作用の継続期間がかなり長いことが報告されている(すなわち、3ヶ月に対して27ヶ月)。
本発明は、その範囲内において、(a)細菌培養、毒素抽出、濃縮、保存、凍結乾燥および/または再構成によって取得または処理された神経毒複合体ならびに純粋な神経毒、そして(b)修飾されたまたは組換え神経毒、すなわち、1つまたは複数のアミノ酸またはアミノ酸配列が、既知の化学的/生化学的なアミノ酸修飾法によって、または既知の宿主細胞/組換えベクター組換え技術の使用によって意図的に欠失、修飾または置換されている神経毒、ならびにそのようにして作製された神経毒の誘導体または断片を包含し、そして、クロム親和細胞種および新生物細胞種に対する1つまたは複数のターゲティング成分を有する神経毒を包含する。
本発明に従って使用されるボツリヌス毒素は、減圧下の容器において凍結乾燥形態または真空乾燥形態で保存することができる。凍結乾燥に先立って、ボツリヌス毒素は、薬学的に受容可能な賦形剤、安定化剤および/またはキャリア(アルブミンなど)と一緒にすることができる。凍結乾燥物または真空乾燥物は生理的食塩水または水で再構成することができる。
以下の各実施例では、ボツリヌス毒素の具体的投与量は、主治医の裁量で比較検討され考慮されるべきさまざまな要因に依存し、各実施例では、全身的に現れるボツリヌス毒素注入量はごくわずかで、有意な副作用をもたない。以下に示す1キログラムあたりの注入ボツリヌス毒素単位数(U/kg)は、患者の総体重1kgあたりの値である。例えば体重70kgの患者の場合、3U/kgなら、210単位のボツリヌス毒素を注入する必要がある。
以下の実施例は、本発明の範囲に包含される好ましい本発明実施方法の具体例を、本発明の実施のために当業者に示すものであり、本発明者が本発明であるとみなす範囲を限定しようとするものではない。
以下の各実施例では、ボツリヌス毒素(ボトックス(BOTOX(登録商標))など)の具体的投与量は、主治医の裁量で比較検討され考慮されるべきさまざまな要因に依存し、各実施例では、全身的に現れるボツリヌス毒素の量はごくわずかであり、重要でない。
ボツリヌス毒素を使った前癌性乳腺障害の処置
1.嚢胞の処置
慢性嚢胞性疾患がある外は正常な乳房を持つ46歳の女性が来院する。線維嚢胞性変化は、多くの良性体の混成物として現れ、腫瘤全体として直径1.2cmで、堅固な線維脂肪組織の部分とさまざまな大きさの複数の嚢胞とを含んでいる。超音波検査および撮像により、嚢胞形成および微細石灰化が明らかになる。組織学的検査により、アポクリン異型(過形成と化生の両方)が明らかになる。したがってこの患者は、アポクリン腺癌または髄様癌を発生させる危険があると判断される。
触知可能な乳房の穿刺吸引(FNA)は、癌の診断において乳房細胞の細胞病理を検査するために、1930年から用いられてきた。触知不能病変には定位穿刺吸引ならびに超音波および乳房X線ガイド下穿刺吸引も使用されてきた。標準的乳房X線装置と圧迫プレ−トとを使って、x座標およびy座標に沿って病変の1mm以内に細針を正確に配置することができるように、立体X線観察を行うことができる。超音波ガイドは、病変が純粋に嚢胞性であるか、混成性であるか、充実性であるかを決定する際に極めて有用である。典型的には22ゲージ針を使用する。FNAに使用する方法論と同じ方法論を使って、標的組織にボツリヌス毒素を注入する。したがって、注入のために、片手での把持を可能にする特別な取っ手を付けた注射器、またはそのような取っ手を付けていない注射器に、針を取り付けることができる。皮膚を消毒薬で拭く。乳房腫瘤を把握し、上層の皮膚を、手術者にとって都合の良い位置まで弛まないように引っ張って、手術者が他方の手で針を挿入できるようにする。針を腫瘤に挿入し、針を病巣に真っ直ぐ差し込みながら、ボツリヌス毒素の溶液が入っている注射器のプランジャを押し込む。もう一つの選択肢として、長期間にわたって治療効果を得るために、米国特許第6,306,423号および第6,312,708号に記載されているように、制御放出植込剤を皮下に挿入することができ、そして/またはボツリヌス含有マイクロスフェアの懸濁液を注入することができる。
嚢胞塊に10単位〜100単位のA型ボツリヌス毒素(ボトックスなど)を局所投与(注入)する。その後28日以内に嚢胞は実質的に退行(嚢胞直径が少なくとも80%減少)し、その状態がその後2〜24ヶ月持続する。もう一つの選択肢として、B型、C型、D型、E型、F型またはG型ボツリヌス毒素を投与することもできる。ただし投与量は、効力がA型毒素とは異なる点を考慮して調節する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の効力はA型ボツリヌス毒素の約50分の1であることがわかっているので、500〜5000単位のB型毒素を局所投与する。
2.硬化性腺症の処置
胸部痛を訴える59歳の閉経後女性を検査する。乳房X線撮影により、終末乳管小葉単位から生じた増殖性病巣であって、臨床的に触知可能で特別な色素沈着のない直径1.3cmの腫瘤を含むものが明らかになる。腫瘤の境界は明確でなく、多少の疼痛および圧痛がある。組織学的には、腺房および小葉内間質細胞の無秩序な増殖によって、小葉群の正常な配置がゆがめられている。10単位〜100単位のA型ボツリヌス毒素(ボトックスなど)を腫瘤中に局所投与(注入)する。その後28日以内に腫瘤は実質的に退行(直径が少なくとも80%減少)し、その状態がその後2〜24ヶ月持続する。もう一つの選択肢として、B型、C型、D型、E型、F型またはG型ボツリヌス毒素を投与することもできる。ただし投与量は、効力がA型毒素とは異なる点を考慮して調節する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の効力はA型ボツリヌス毒素の約50分の1であることがわかっているので、500〜5000単位のB型毒素を局所投与することができる。
3.乳管乳頭腫の処置
一方の乳頭から血が混じった分泌物を排出した履歴がある50歳の女性を検査する。触知可能な腫瘤はないが、乳房の乳管上皮の良性新生物が見つかる。10単位〜100単位のA型ボツリヌス毒素(ボトックスなど)を局所投与する。その後28日以内に分泌物は消失し、患者は無症状の状態がその後2〜24ヶ月持続する。もう一つの選択肢として、B型、C型、D型、E型、F型またはG型ボツリヌス毒素を投与することもできる。ただし投与量は、効力がA型毒素とは異なる点を考慮して調節する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の効力はA型ボツリヌス毒素の約50分の1であることがわかっているので、500〜5000単位のB型毒素を局所投与することができる。
4.線維腺腫の処置
乳房にしこりを持つ36歳の女性が来院する。臨床検査、撮像(乳房X線撮影)および穿刺吸引細胞診断により、堅固で、可動性で、輪郭が明確で、無痛で、ゴムのような、直径1.5cmの腫瘤が見つかる。この病巣は良性なので、この患者には、切除に代わる選択肢としてボツリヌス毒素の局所注入を勧め、それに対するインフォームドコンセントを得る。10単位〜100単位のA型ボツリヌス毒素(ボトックスなど)をしこりに局所投与する。その後28日以内に腫瘤は実質的に退行(直径が少なくとも80%減少)し、その後2〜24ヶ月はその状態が持続する。もう一つの選択肢として、B型、C型、D型、E型、F型またはG型ボツリヌス毒素を投与することもできる。ただし投与量は、効力がA型毒素とは異なる点を考慮して調節する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の効力はA型ボツリヌス毒素の約50分の1であることがわかっているので、500〜5000単位のB型毒素を局所投与することができる。
5.閉塞性腺症の処置
カフェイン摂取の履歴(過去10年間ぐらいにわたって1日4〜6杯のコーヒーを摂取)がある54歳の女性に、不明瞭な微小嚢胞形領域として特定される小葉の円柱変化が認められる。個々の終末乳管小葉単位は、底部に位置する核と細胞質先端隆起とを持つ高円柱状上皮細胞の単層による、正常管腔上皮層の変化または置換を示す。10単位〜100単位のA型ボツリヌス毒素(ボトックス(登録商標)など)をしこりに局所投与する。その後28日以内に腺症は消失し、その状態がその後2〜24ヶ月持続する。もう一つの選択肢として、B型、C型、D型、E型、F型またはG型ボツリヌス毒素を投与することもできる。ただし投与量は、効力がA型毒素とは異なる点を考慮して調節する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の効力はA型ボツリヌス毒素の約50分の1であることがわかっているので、500〜5000単位のB型毒素を局所投与することができる。
6.増殖性乳房疾患の処置
64歳の女性から採取した生検標本の組織学的検査により、正常管腔上皮細胞および筋上皮細胞の正常な二層を超える細胞数の増加によって示される上皮過形成(増殖性で異型を伴う)が明らかになる。10単位〜100単位のA型ボツリヌス毒素(ボトックスなど)をしこりに局所投与する。その後28日以内に、生検とそれに続く組織学的検査により、患者は異型性を持たないことが確認され、その状態は、少なくともその後2〜24ヶ月持続する。もう一つの選択肢として、B型、C型、D型、E型、F型またはG型ボツリヌス毒素を投与することもできる。ただし投与量は、効力がA型毒素とは異なる点を考慮して調節する。したがって、例えばB型ボツリヌス毒素の効力はA型ボツリヌス毒素の約50分の1であることがわかっているので、500〜5000単位のB型毒素を局所投与することができる。
ボツリヌス毒素による高張性または過形成組織の処置
ボツリヌス毒素は、高張性または過形成性標的組織に、またはその近傍に、いくつかの方法で直接局所投与することができる。上述のように、乳房組織などの皮膚または皮下標的組織は、直接注入によって、または毒素植込剤の設置によって、処置することができる。内臓神経芽細胞腫などの内臓部位も容易にアクセスすることができる。例えば診断および治療用の内視鏡はよく知られている。
(1)治療的膵内視鏡技術には、膵管括約筋切除術、狭窄拡張、ステント術、仮性嚢胞ドレナージ、膵胆管系の映像化とその処置を可能にする内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)が含まれる。膵臓治療に使用される内視鏡は、ボツリヌス毒素などの神経毒の膵組織への直接注入に使用できるように、改造することができる。例えば米国特許第5,674,205号を参照されたい。本発明の目的には、内視鏡を中咽頭から胃、十二指腸を経て、最終的に膵管中に移動させる。必要であれば、膵管への内視鏡の挿入が可能なように、前もって膵管減圧を(例えば拡張またはステント術などによって)行っておく。設置し終えたら、中空針チップを内視鏡から膵組織中に伸ばし、その針を通して、神経毒を膵組織中に注入することができる。
膵管にアクセスできない場合、または膵管が減圧されない場合は、画像ガイド下(すなわち超音波またはコンピュータ断層撮影によるもの)の経皮針を使って、神経毒を膵組織に直接、経腹的に注入することができる。すなわち、膵生検のための経皮針吸引は既知の技術であるが、この吸引を逆転させることにより、所望の毒素注入を達成することができる。したがって、膵島細胞腫または高張性もしくは過形成性膵組織は、1〜500単位のボツリヌス毒素を膵標的組織に局所投与することによって処置することができる。新生物性または過形成性の肺、腸および卵巣標的組織も、同様に処置することができる。
(2)下垂体
過形成性の視床下部または下垂体標的組織を処置するために、定位手術を利用して、水溶液または植込剤の形をした神経毒を正確に頭蓋内投与することができる。脳神経芽細胞腫もこの方法で処置される。したがって、ボツリヌス毒素の頭蓋内投与は、以下のように行うことができる。
患者の予備MRI走査を行って、前交連−後交連線の長さと、外部骨標識点に対するその向きを得ることができる。次に、フレームのベースを前交連−後交連線の平面に揃えることができる。CTガイドを使用し、それを脳室撮影で補足することができる。後交連を2mmのCTスライス厚で映像化して、これを基準点として用いることができる。
標的組織局在の生理学的確認は、使用する長針注射器に付随するまたは組み込まれている電極を通した高周波および低周波刺激を使って行うことができる。2mmの露出端を持つ直径1.6mmのサーミスタ電極を使用することができる(Radionics、マサチューセッツ州バーリントン)。電極高周波刺激(75Hz)の場合、Radionics 障害発生装置(Radionics Radiofrequency Lesion Generator モデル RFG3AV)を使って0.5〜1.0Vで、知覚異常反応を前腕と手に誘発させることができる。低周波(5Hz)では、患肢の振戦の活性化または途絶が2〜3Vで起こった。本発明の方法では電極を使って障害を生じさせない。標的組織局在の確認後に、神経毒を注入し、その結果として、可逆的な化学的視床下部破壊を引き起こすことができる。典型的な注入は望ましい単位数(すなわち約0.01ml〜約0.1mlの水または食塩水中の約0.1〜約5単位のA型ボツリヌス毒素複合体)である。低注入体積を使用して、標的からの毒素の拡散を最小限に抑えることができる。視床下部放出因子または下垂体ホルモン放出阻害効果は、典型的には、約2〜4ヶ月以内に消失すると予想することができる。そこで、もう一つの神経毒形態、すなわちポリマー植込剤に組み込んだ神経毒を使うことにより、長期間(すなわち約1年〜約6年)にわたって所望の位置に治療量の毒素を連続的に制御放出させ、結果として、毒素注射を繰り返す必要を回避することができる。
さまざまな頭蓋内標的に、例えば末端肥大症を処置する目的で弓状核(AN)に、神経毒を定位的ガイド下で注入するには、いくつかの方法を使用することができる。例えば、三次元(3D)T1強調画像に頼る定位的磁気共鳴(MRI)法(手術計画のため)、多断面T2強調画像に頼る定位的磁気共鳴(MRI)法(ANの直接映像化のため)を、電気生理学的記録および注入ガイダンス(AN注入のため)と組み合わせて使用することができる。例えばBejjani, B. P.ら「三次元定位磁気共鳴イメージングおよび電気生理学的ガイダンスを用いたパーキンソン病のための両側視床下部刺激」J Neurosurg 92(4);615−25:2000を参照されたい。ANの中心座標は、患者の前交連−後交連線および脳アトラスを参照して決定することができる。
機能的な標的を正確に定義するために、いくつかの平行トラックの電気生理学的監視を同時に行うことができる。MRI撮像法を使って所定の標的に向けられる中央トラックは、神経毒注入用に選択することができる。予想される手術合併症はない。
コンピュータを援用し脳アトラスに基づいて行われる機能的神経外科手術法を使って、正確かつ精密に所望の神経毒を注入するか、または神経毒制御放出植込剤を植込むことができる。そのような方法では、視床下部構造の三次元表示と実時間操作が可能である。したがって、直交する3方向すべてに相互に前もって登録しておいた複数の脳アトラスを使って神経外科手術計画を立てることができ、これにより、神経毒注入または神経毒植込のために行われる標的決定の正確さが増し、区域の減少によって外科手術の時間を短縮し、より洗練された軌道の計画が容易になる。例えば Nowinski W. L.ら「複数の脳アトラスデータベースの使用により強化されたコンピュータ援用定位機能神経外科」IEEE Trans Med Imaging 19(1);62−69:2000を参照されたい。したがって、下垂体腫瘍または高張性もしくは過形成性下垂体組織は、1〜500単位のボツリヌス毒素を下垂体標的組織に局所投与することによって処置することができる。
本明細書中に開示される本発明による方法には多くの利点があり、例えば下記が含まれる:
(1)本発明は、過形成性、高張性および化生性乳房組織を含む様々な乳房障害の効果的な処置のために、外科的手法を不必要にする。
(2)全身的な薬物の作用を、本発明による神経毒の直接的な局所適用によって回避することができる。
(3)本発明の改善効果は、本明細書中に示されているように神経毒の単回局所投与から2年またはそれ以上持続させることができる。
本発明は、いくつかの好ましい方法に関して詳しく記載されているが、本発明の範囲内に含まれる他の実施形態、変形および変更が可能である。例えば、広範囲の神経毒を本発明の方法において効果的に使用することができる。また、本発明は、2つ以上のボツリヌス毒素などの2つ以上の神経毒が同時または連続的に投与される局所的耳投与法を包含する。例えば、A型ボツリヌス毒素を、臨床的応答の喪失または中和抗体が生じるまで投与し、その後、E型ボツリヌス毒素を投与することができる。あるいは、A型〜G型のボツリヌス毒素の任意の2つ以上を組み合わせて、所望する処置結果の開始および継続期間を制御するために局所投与することができる。さらに、脱神経支配を増強するため、またはボツリヌス毒素などの神経毒がその処置効果を発揮し始めるよりも早く脱神経支配を開始するためなどの付随的な効果を生じさせるために、非神経毒化合物を、神経毒を投与する前に、または神経毒を投与すると同時に、または神経毒を投与した後に投与することができる。
本発明はまた、その範囲内において、神経毒を局所投与することによって前癌性乳房組織を処置するための医薬品を調製するための、ボツリヌス毒素などの神経毒の使用を包含する。
したがって、特許請求の範囲の精神および範囲は、上記に示された好ましい実施形態の記載に限定されるものではない。

Claims (4)

  1. 乳腺に局所投与することにより、乳房嚢胞、硬化性腺症、乳管乳頭腫、線維腺腫、閉塞性腺症および増殖性乳房疾患から成る群から選択される前癌性乳腺障害を処置する医薬を製造するための、A型ボツリヌス神経毒の使用。
  2. A型ボツリヌス神経毒を1U〜40,000Uの量で使用する請求項1に記載の使用。
  3. 乳腺に局所投与することにより、乳房嚢胞、硬化性腺症、乳管乳頭腫、線維腺腫、閉塞性腺症および増殖性乳房疾患から成る群から選択される前癌性乳腺障害を処置する医薬であって、A型ボツリヌス神経毒を含有する医薬。
  4. A型ボツリヌス神経毒を1U〜40,000Uの量で含有する請求項に記載の医薬。
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