JP4922167B2 - ガンの治療方法 - Google Patents

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Description

相互参照
本出願は、現在特許番号6,139,845である1999年12月7日出願の出願番号09/454,842の一部継続出願である、現在放棄された2000年8月2日出願の出願番号09/631,221の一部継続出願である、2002年2月8日出願の出願番号10/071,826の一部継続出願である。これらの出願および特許はすべて、これらは、全体として参照することにより本発明に援用される。
背景技術
本発明は、過形成性組織などの異型組織、嚢胞および新生物(腫瘍およびガンを含む)の治療方法および発症の予防方法、または異型組織、過形成性組織、嚢胞および新生物の退行もしくは寛解を引き起こす方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、発症している異型組織または異型組織近傍へのクロストリジウム毒素の局所投与による、良性およびガン性の両方の種々のガン型(乳腺嚢胞および新生物などの乳腺障害を含む)の治療方法ならびに過形成性および/または高張性、性腺細胞の治療方法に関する。
多くの過形成性組織が、治療しなければ、ガン性組織に進行しうることが分かっている;たとえば、(1)種々の過形成性、化生または異型の乳房組織は、ガンに進行しうる(たとえば、「Diagnostic Histopathology of Tumors」、volume 1、Fletcher C.D.M.編、第2版、Churchill Livingstone(2000)、Ellis I.O.ら、乳房腫瘍、chapter 16(p865-930)(後記にてさらに議論)、ならびにFabian CJ.ら、「タモキシフェンを越える乳ガン化学予防のための新規終点、乳ガン予防のための新薬」、Ann NY Acad Sci 2001 Dec;952:44-59を参照);(2)ポリープなどの過形成腸組織は、ガン腫にガン化しうる(たとえば、Chandraspma、P.、“Gastrointestinal Pathology”、Appleton & Lange(1999)、Der、R.ら、Gastric Neoplasms、chapter 5(p105-144)、特に、p106- 107を参照;(3)口腔および口咽頭上皮過形成は、前ガン性病変を示す(Sunaga H.ら、「口腔および口咽頭前ガン性損傷における顆粒球コロニー刺激因子受容体および血小板誘導内皮細胞成長因子の発現」、Anticanser Res 2001 JuI−Aug;21(4B):2901-6;(4)子宮内膜過形成性組織は、前ガン性組織である(Sivridis E.ら、「子宮内膜過形成および新形成における予後的局面」、Virchows Arch 2001 Aug;439(2):118-26)および;(5)「腎臓および前立腺細胞過形成は、ガン性細胞の発生に至る因子として実証されている」(Van Poppel、H.ら、Precanserous lesions in the kidney Scand J Urol Nephrol Suppl 2000;(205): 136-65)。
乳ガン
ヒトの女性の乳房(同義語として、乳腺)は、新生児に栄養素を提供するという特殊化した機能をもつ高度に変形されたアポクリン汗腺である。乳房は、管胞型の上皮腺組織、腺組織の周囲の線維性結合性組織(支質)および葉間脂肪組織からなる。乳房の神経分布は、感覚および交感神経の遠心性線維を有する第四から第六肋間神経の前枝および外側枝に由来する。腺組織の分泌活性は、遠心性運動神経線維よりもむしろ卵巣および下垂体ホルモンによって大きく制御される。女性において、乳房は、思春期に発達し、閉経期に退行する。妊娠中、乳房中の分泌成分は、泌乳の準備中、大きさおよび数において大きく増える。各乳房は、それぞれ複合した管胞腺からなる乳葉と呼ばれる15−25個の独立した腺単位からなる。各葉は、乳頭において他の乳管と収束する乳管に至る。葉は、コラーゲン中隔によって細分される脂肪組織の塊に埋まっている。皮膚の特殊化した領域である乳輪は、乳頭の付け根を取り囲む。乳房は、胸筋および前鋸筋の上にある深在胸筋筋膜上にある。
乳ガンは、皮膚ガンおよび肺ガンを除いて女性において最も一般的なガンであり、1999年には、米国で175,000人を越える女性が、乳ガンであると診断され、このうち約43,300人がこの疾患のため死亡するだろう。米国では毎年、約40,000人の女性が、乳ガンのために死亡している。米国では、乳ガンは、女性におけるすべてのガンの29%を占める。8人に1人の女性がその一生のうちどこかで乳ガンになると推計されている。早期発見により、治癒率は高くなるが、依然として、54歳以下の成人女性のガン死亡の第1原因であり、54歳以上の女性では第2の死亡原因である。すべての年齢層を通して、女性において、乳ガンは、肺ガンに次いでガンによる死亡原因の第2位である。すべての乳ガン患者のうち1%以下が男性に起こる。
良性の乳房腫瘍として、線維嚢胞性変化、線維腺腫および変異型、硬化性病変、乳頭腫(上皮によって覆われた線維血管性の中心からなる組織)および増殖性乳房疾患が挙げられる。嚢胞は、小葉退化の過程に起因すると考えられる。嚢胞は、上皮によって内張りされた病理学的に拡張した嚢であり、液体を含んでいる。乳房嚢胞には、2つの主な形態が認められ、上皮の層によって内張りされた嚢胞および正常なアポクリン汗腺上皮に似ている、アポクリン型上皮によって内張りされた嚢胞のより一般的形態である。嚢胞は、小葉退化の過程に起因すると考えられ、一般集団の約19%において生じ、非常に一般的であり、7%において触診可能である。対応は、通常、吸引である。嚢胞は、ガンを有する乳房の約77%において見出されうる(Ellisら、p 866)。乳房嚢胞のアポクリン上皮層には、過形成が現れうる。さらに、アポクリン化生が、乳房における頻繁な所見であり、一般に、嚢胞形成を伴う。さらに、アポクリン化生は、硬化性腺症(腺症は、腺の構成要素の数の増加または肥大である)乳頭腫および線維腺腫などの他の非膿疱性良性乳腺疾患を伴いうる。有意に、炎症性障害ではないアポクリン変化(異型)は、患者に対してアポクリンガンまたは髄様ガンなどの乳ガンの続発の有意に増加したリスクを提供する前ガン性組織の一種の表示とみなされる。最終的に、上皮過形成性、腺管過形成および小葉過形成はすべて、乳ガンの発生のリスクを指摘する前ガン性乳房組織状態であるとみなされる。Ellis I.O.ら、Tumor of the Breast、上記、特にp866-867、881および884。
したがって、良性増殖性または線維嚢胞性変化(線維嚢胞性疾患)ならびに過形成が、乳房ガンの発生のリスクの形態学的マーカーとして同定されていることが明らかである。Rosen、P.R.、Rosen's Breast Pathology、第二編、Lippincott Williams & Wilkins(2001)、チャプター10(「Precancerous Breast Disease」)、p229-248、特に、231-232および236-239。
遺伝子突然変異は、家族性乳ガンの約5%を占める。リー・フラウメニ症候群は、乳房、脳および副腎新生物ならびに肉腫、リンパ腫および白血病の発生率の増加を伴う希な遺伝性症候群である。この症候群の原因は、腫瘍抑制遺伝子であるp53遺伝子の突然変異に伴うと考えられる。
乳ガンは、乳房の管または小葉を内張する上皮細胞の悪性増殖を特徴とすることができる。機能する卵巣を持たず、エストロゲン補充を受けたことがない女性は、通常は明らかに乳ガンを発生しないので、乳ガンはホルモン依存性であると一般に考えられている。悪性腫瘍は、いずれかの乳房構造から起こりうる。腺管ガンは、その後に小葉ガンが続き、他の結合組織から悪性腫瘍が起こる最も一般的なガンである。
浸潤性(侵入する)腺管ガンは、乳ガンのすべてのケースの70%−80%を含む最も一般的な細胞型である。腫瘍は、乳ガンの年齢幅の全体を通して起こり、中年から50代後半において最も多く見られる。腫瘍は、通常、触診したときに硬い、その固い中心部を特徴とする。不随する非浸潤性腺管ガンが、頻繁に存在する。浸潤性腺管ガンは一般に、所属リンパ節に拡散し、種々の腺管型のうちで、最も予後が悪い。核および組織学的グレードが、予後の有効な予測材料であると見られている。
非浸潤性腺管ガン(DCIS)は、基底膜を通って周辺組織に浸潤していることを示す顕微鏡所見が認められない、乳管に限定される悪性上皮細胞からなる。腫瘍の分化に基づいて、DCISは、低、中および高グレードにさらに分けることができる。このような層別化は、予後の判定に重要である。DCISの5つの組織学的サブタイプ、すなわち、面皰、乳頭、微小乳頭、篩状および充実性がある。面皰サブタイプは、核異型度が高く、微小浸潤およびher-2/neuガン遺伝子の過剰発現を示す確率が高い。DCISに伴う最も特徴的なマンモグラフィー上の異常は、「クラスター化した微小石灰化」である。構造、核異型度および壊死を用いる新規分類体系が、提案されている。浸潤性小葉ガンは、相対的にまれであり、乳房腫瘍の5%−10%にすぎない。浸潤性小葉ガンは、同一または対側乳房における多中心性の割合がより高いことを特徴とする。病変は、不明瞭な縁を有する傾向にあり、唯一の証拠が、わずかな肥厚または硬化であることもある。特に、浸潤している小葉ガンの患者は、両側ガンを有する傾向にある。段階を追って、浸潤性小葉ガンは、浸潤している腺管ガンと同じ予後である。
一般に、非浸潤性小葉ガン(LCIS)には、特異的な臨床徴候またはマンモグラフィーによる徴候はなく、多くは閉経前の女性に発症する。定義によると、この癌細胞は乳房小葉にとどまり、浸潤は認められない。LCISの顕微鏡的特徴は小細胞から成る充実性増殖である。細胞の増殖率は低く、通常はエストロゲン受容体陽性でHER-2/neu遺伝子の過剰発現はまれである。この疾患では、腫瘍が両側性に生じるリスクが報告されているので、両側単純乳房切除および即時乳房再建による治療を推奨する研究者もいる。もし注意観察待機を選ぶのであれば、乳ガンのリスクの増大は無期限に持続するので、生涯観察が必須である。管状ガンは、高分化型ガンとしても知られている。腋窩リンパ節転移の頻度は、腺管ガンよりも低く、約10%である。予後は、浸潤性腺管ガンよりもかなり良好である。髄様ガンは、顕著なリンパ球浸潤を特徴とする。髄様ガンの患者は、他のタイプの乳ガンの患者よりも若い傾向がある。予後は、浸潤性腺管ガンよりも良好であるとも考えられている。
炎症性乳ガンは、広範性の皮膚浮腫、皮膚および乳房の紅化ならびに明確な塊のない下層組織の固さを特徴とする。これらの臨床症状は、主に、表在性毛細血管の腫脹を伴う皮膚リンパ管(皮膚リンパチャネル)の腫瘍による塞栓が原因である。炎症性乳ガンは、予後不良であり、切除による治療が好ましい。乳頭のペーチェット病は、乳頭の湿疹様変化を臨床的特徴とするまれな型の乳ガンである。ペーチェット病は、乳頭における直下の乳管からの悪性細胞の移動を意味すると考えられる。ペーチェット病の患者の予後は、段階を追って、他の型の乳ガンの女性と同様であるようにみえる。
良性乳房腫瘍として、線維腺腫、末梢管線維腫(結合組織腫瘍)、腺管内上皮腫瘍、停滞嚢胞、脂肪腫(脂肪の腫瘍)、慢性嚢胞性乳腺炎および脂肪壊死が挙げられる。ほとんどの場合、それらは、生殖期間中または直後に起こる。これらは、悪性腫瘍と区別するのが困難であることが多く、大きさの変化またはリンパ管への浸潤を観察しなければならず、その場合、腫瘍を切除して、検査すべきである。マンモグラム、超音波、サーモグラフィーおよび膿疱型の吸引が、診断に役立つことができる。
乳ガンの診断は、乳房組織の病理学的検査によって行うことができる。通常は、乳房の塊は、マンモグラムが正常であることを示す場合であっても生検を必要とする。乳房組織は、針吸引生検または外科生検によって得られる。針吸引は、嚢胞と充実性腫瘍とを識別するのを補助するために医師によって用いられる。吸引において除去された物質の細胞学的および病理学的検査を用いてガンを同定することができる。超音波によって、塊が充実性であるか嚢胞性であるかを決定することができる。
乳房MRIを用いることもできる。最も一般的に行われる切除生検は、塊が小さい場合に用いられる。このような場合、腫瘍全体および正常組織の縁を切除する。腫瘍が大きい場合、切開生検を行って、病理学的検査のための小量の組織を除去してもよい。外科生検から得られた組織を、凍結切片によって評価することができ、それによって、30分以内の診断が可能になり、続いて根治手術を行うことができる;しかし、大部分の外科医は、約24−48時間かかる永久切片を待っている。後者のアプローチは、患者に医師と治療の選択肢を議論するための時間を与え、より一般的なアプローチである。
乳ガンの広がる最も一般的な経路は、腋窩リンパ節に向かうものである。乳ガン患者の約30−40%が、腫瘍が触診できる時点で、すでに腋窩節が陽性(疾患罹患)になっている。冒された腋窩節が多くなるほど、他の場所への微小転移(臨床的に検出不可能な腫瘍細胞)および再発のリスクが大きくなる。通例起こる部位の乳ガン再発は、乳房における元の部位における局所的再発か、または骨、肝臓、肺および脳への遠位拡散である。転移性疾患の合併症として、脊髄圧迫、病的骨折、胸水および気管支閉塞が挙げられる。
乳ガンは、発生率、成長および転移のパターンおよび生存時間によって変化する型をもつ細胞型にしたがって分類される。浸潤性腺管ガンは、最も一般的な型の乳ガンであり、腫瘍の約70%を占める。まれな炎症性乳ガン(乳ガンの症例の1−4%)は、最も予後が不良である。上皮内ガン(CIS)は、非常に予後が良好であり、触診で見つかるものが無い場合にマンモグラフィーによって検出されうることが多い非浸潤性ガンである。
推奨治療法は、診断時の疾患の型および相に応じて異なる。一般に、第I期またはII期の疾患は、乳房温存手術および放射線療法、あるいは乳房再建を伴うか、または再建なしでの非定型的乳房切除術によって治療される。乳房切除および放射線療法は局所治療であり、すでに転移したガン細胞には影響を及ぼさないのは明らかである。転移性疾患の発生のリスクが高い、早期疾患の患者に対して補助化学療法を行ってもよい。現在、エストロゲン受容体陽性の患者には、補助化学療法またはタモキシフェンが標準的治療であると見なされている。閉経前のエストロゲン陽性患者のための抑制の卵巣切除の役割は、臨床試験下にある。前哨リンパ節は、原発腫瘍からのリンパ液の経路に沿った最初のリンパ節である。原発腫瘍または腫瘍床の周囲に放射性同位体(テクネチウム99mイオウコロイド)および/または色素バイタルブルーを注入した後の前哨リンパ節生検は、病的度およびコストが完全腋窩リンパ節切除よりも低い。局所進行乳ガンの患者(第III期)は、予後が不良である。外科手術、化学療法および放射線療法の組み合わせによって良好な局所コントロールを達成することができる。第III期疾患の患者は、遠位転移を発生するリスクがあるので、化学療法を考慮する。局所性再発または転移性疾患の患者のための治療アプローチは、疾患の部位および範囲に応じて様々である。多くの場合、局所および全身療法を組み合わせる。転移性疾患の患者は、まれに、標準的治療に対して耐久性応答を示すので、研究者は、高用量化学療法の治療計画およびそれに続く自家骨髄移植(または幹細胞補充)の使用を評価している。
乳房温存手術は、腫瘍の切除および部分的(下部)腋窩リンパ節切除からなる。用語「乳腺腫瘍摘出術」、「区域切除」、「胼胝切除」および「乳房部分切除」は、局所外科手術を記述するために用いられることが多い。すべての浸潤性ガンの患者および大部分の上皮内ガンの患者に対して、通常は外科手術に続いて放射線療法を行う。大きさが5cm(約2インチ)までの小さい腫瘍であり、多病巣疾患または転移館内ガンの所見をもたない患者の最近の研究では、乳房温存手術に続く放射線療法と非定型的乳房切除術との間で、生存率に差異がないことが明らかにされている。非定型的乳房切除術は、全乳房の除去と腋窩リンパ節切除である。非定型的乳房切除術の不利点は、美容上の醜さと身体イメージおよび自己認識に影響を及ぼす心理社会的問題の可能性である。
良性乳房疾患および乳ガンのための現行の療法には、多くの欠陥および不利益がある。このような非定型的乳房切除術は、身体の一部の喪失、変化した身体イメージ、補綴の必要性、任意の再建手術、胸壁圧迫感および皮弁壊死をもたらす。部分的乳房切除は、腋窩リンパ節切除および放射線療法、乳房線維症、色素沈着過剰、肋骨骨折、乳房浮腫、皮膚感受性の変化、筋炎および一次療法長期化をもたらす。実際に、非定型および部分乳房切除の両方が、感覚喪失、手および腕のケアの必要性ならびに血清腫、血腫、創傷感染、リンパ浮腫、腕の衰弱、痛み、心理的苦痛、腕の可動性障害、神経傷害および倦怠感などを包含しうる術後合併症をもたらしうる。血清腫は、腋窩または胸壁の死腔における漿液および漿液性の液体の貯留である。血清腫は、治癒を遅延化させ、感染を促進しうる。血腫は、血液が間質腔に貯留するときに起こり、液化したときに吸引され、やがて自然に再吸収されうる。
神経傷害は、外傷を回避する努力にかかわらず起こりうる。患者は、腕および胸部に、痛み、刺痛、しびれ、重感または皮膚感受性の増加の感覚を訴える。これらの感覚は、時間とともに変化し、通常は一年あるいはそれ以上たつうちに消失する。頻度は低いものの、筋肉萎縮が神経傷害に続発することがあり、腕または肩の機能の低下をもたらす。
臨床的に検出不可能な乳ガン細胞は、ガンの局所切除の後に残るので、局所的腫瘍コントロールのために放射線療法が行われる。放射線療法を、手術前に用いて、大きい乳房腫瘍を萎縮させ、より容易に切除可能にすることもできる。通常は症状緩和放射線療法を骨転移の痛みを和らげるため、および脳などの他の部位への転移の対症的管理のために用いる。倦怠感、皮膚の反応、皮膚の感覚、色および質感の変化ならびに乳房腫脹が、乳房への一連の放射線療法の期間中および直後において一般的である。
化学療法、ホルモン療法またはその2つの組み合わせを用いて、転移性疾患の影響を和らげることができる。通常は、補助化学療法および/または補助ホルモン療法のための推奨事項は、陽性腋窩リンパ節の数、閉経状態、原発腫瘍の大きさおよびエストロゲン受容体アッセイに基づく。最も一般的に用いられる化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質(ハーセプチン)およびビンカアルカロイドである。ホルモン操作は、主としてホルモンブロッカーを介して、まれに性ホルモン産生腺の外科的除去(卵巣摘出、副腎摘出または下垂体切除)によって達成される。抗エストロゲン剤であるタモキシフェンは、最も広範に用いられるホルモン剤である。フェマーラおよびアリミデックスなどの第2選択ホルモン剤は、現在、ER/PR陰性患者および/またはタモキシフェンが役立たない患者に対して利用できる。残念ながら、乳ガンのための化学療法には、倦怠感、体重増加、吐き気、嘔吐、脱毛、食欲および味覚障害、ニューロパチー、下痢、骨髄抑制、更年期障害、髪喪失および体重増加などの数多くの有害な副作用がある。さらに、第1選択剤であるタモキシフェンは、膀胱ガンおよび血餅のリスクを増加しうる。
神経芽腫
神経芽腫は、通常は乳児または幼児に見られる小児期早期の最も一般的な充実性腫瘍の1つである。症例の約96%が、10歳前に生じる神経芽腫は、全小児ガン死の約15%を占める。この疾患は、一般に副腎髄質または交感神経組織の他の部位から発生する。最も頻繁に神経芽腫が発生する部位は、腹部(副腎付近)であるが、胸部、頸部、骨盤または他の部位でも見出される。ほとんどの神経芽腫ガン患者は、診断時に広範な発生が見られる。神経芽腫の最も一般的な症状は、腫瘍による圧力または骨に広がっているガンからの骨の痛みの結果である。眼球突出および目の回りのくまが、一般的であり、目の裏側の領域に広がっているガンによって引き起こされる。神経芽腫は、脊椎を圧迫し、麻痺を引き起こす。発熱、貧血および高血圧が見られることもある。まれに、児童に重篤な水性下痢、非協調性もしくは痙攣様筋肉運動または非協調性眼球運動が見られる。
白血病
平均的成人の血液は、約5リットルであり、その機能として、必須要素のデリバリー、酸素化および老廃物の除去が挙げられる。血液は、赤血球、白血球、血小板および血漿を含む。白血球は、感染との戦いに役立つ。血小板は、創傷からの血液の喪失を妨げるための血餅の形成に関与する。血液の約55パーセントが、全身に血液細胞および血小板を運び、消化からの栄養分および腺からのホルモンを輸送する淡黄色の透明な液体である血漿である。
記載したように、白血球は、防御機構に関与する。白血球には2つの主要な型であるリンパ球と単球がある。リンパ球には2つの主要な型である抗体の産生に関与するBリンパ球(B細胞)とTリンパ球(T細胞)がある。T細胞はさらに、感染または他の損傷組織の部位にマクロファージおよび好中球を補充する炎症性T細胞;ウイルス感染細胞を殺す細胞傷害性Tリンパ球;およびB細胞による抗体の産生を増強するヘルパーT細胞に分けられる。
急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、児童における最も一般的な白血病である。それは、白血球、特にリンパ球のガンである。白血病細胞は、もはや正常に機能しない異常な血液細胞である。したがって、ALLの患者の白血球は、感染と戦う役に立つことができない。この理由から、ALLの児童は、感染症に罹り、発熱することが多い。異常細胞の数およびこれらの細胞がどこで採取されるかに応じて、白血病の患者には、多くの症状が見られる。ALLの児童は、健康な赤血球および血小板の量が少ないことが多い。結果として、全身に酸素を運ぶのに十分な赤血球がない。貧血と呼ばれるこの身体状態では、患者は顔色が悪く、脱力感および疲労感がある。十分な血小板がないと、患者は出血しやすく、あざができやすい。ALLの一般的な症状のいくつかとして、発熱;疲労;頻繁な感染症;リンパ節、肝臓または脾臓の腫れおよび圧痛;出血しやすく、あざができやすいこと;皮下の微小赤色斑(点状出血と呼ばれる);および/または骨もしくは関節痛が挙げられる。
前立腺ガン
前立腺は、男性生殖器官の一部である。健康な前立腺は、およそクルミ大で、ドーナツのような形状をしている。直腸正面および膀胱の下に位置し、尿道を取り巻いている。前立腺は、精嚢液の一部を生成する腺であり、射精中の精液の一部として精子を運ぶ補助をする。肥大した前立腺は、尿道を圧迫し、膀胱から陰茎への尿の流れを遅延化または停止することによって泌尿器系問題を引き起こす。
すべての前立腺ガンの70%以上が、65歳以上の男性において診断される。前立腺ガンの病因はわからないが、リスク因子として、環境、遺伝的要因および家族歴が挙げられる。第一度近親者(すなわち、父、兄弟)に関する情報から、家族にこの疾患歴をもつ男性における前立腺ガンのリスクが2〜11倍増加することが明らかにされている。アフリカ系アメリカ人男性の前立腺ガンの死亡率は、白人男性より2倍以上高い。追加のリスクのために、アフリカ系アメリカ人男性には前立腺ガンの早期スクリーニングが推奨される。米国ガン協会は、50歳以上の男性、アフリカ系アメリカ人男性および前立腺ガンの家族歴をもつ男性などの高リスクグループの45歳以上の男性は、1年に1回、前立腺特異的抗原(PSA)血液試験および直腸内触診(DRE)を受けるべきとしている。前立腺ガンの一般的な症状として、泌尿器系問題;排尿困難、または排尿開始もしくは停止困難;頻尿、特に、夜間頻尿;尿の勢いの弱さまたは中断;排尿中の痛みまたは灼熱痛;勃起困難;尿または精液中の血液;および頻繁な腰、尻または大腿上部の痛みが挙げられる。
黒色腫
皮膚は身体の最大の臓器である。皮膚は、熱、日光、傷害および感染から保護する。皮膚は、体温調節、水分および脂肪を貯蔵し、ビタミンDを産生する。皮膚は、2つの主要な層:外側の表皮と内側の真皮をもつ。表皮は、大部分が扁平細胞と呼ばれる平坦な鱗状細胞でできている。基底細胞と呼ばれる円形細胞が、表皮の扁平細胞の下にある。表皮の下層部分は、メラニン細胞も含む。真皮は、血管、リンパ管、毛嚢および腺を含む。これらの腺は、体温調節に役立つ汗を生成するものもある。その他の腺は、皮膚の乾燥を防ぐのに役立つ油性物質である皮脂を生成する。汗および皮脂は、孔と呼ばれる小さな開口を通って皮膚の表面に到達する。
黒色腫は、皮膚のガンである。黒色腫は、メラニン細胞(色素細胞)が悪性になったときに生じる。黒色腫は、致死的になることが多い皮膚のガンである。米国では毎年、53,600人以上が、黒色腫であると診断される。世界の一部の地域、特に西洋諸国では、黒色腫は年々増加している。米国では、たとえば、黒色腫になった人々のパーセンテージは、この30年間で倍以上になっている。
黒色腫は、最も多いガンの1つである。黒色腫になる可能性は、年齢と共に増加するが、この疾患は、あらゆる年齢の人々を襲う。黒色腫は、どのような皮膚表面にも起こりうる。男性において、黒色腫は、胴体(肩から尻の範囲)または頭部および頸部に見られることが多い。女性では、下肢に発生することが多い。黒色腫は、黒人およびその他の肌の浅黒い人種にはまれである。肌の浅黒い人種に発生する場合、手指の爪もしくは足指の爪の下、または手の平もしくは足の裏に発生する傾向にある。黒色腫が広がる場合、ガン細胞はリンパ節の近くに出現する。リンパ節の群は、全身に見られる。リンパ節は、リンパ系内に存在しうる細菌、ガン細胞または他の有害物質を捕らえる。ガンがリンパ節に達すると、ガン細胞が肝臓、肺または脳などの身体の他の部分に広がったことを意味する。黒色腫の最初の徴候は、存在するホクロの大きさ、形状、色または触感の変化であることが多い。大部分の黒色腫は、黒または青黒い領域をもつ。黒色腫は、新たなホクロとして出現することもある。それは、黒いか、異常であるかまたは醜い見た目である。
結腸および直腸ガン
結腸および直腸は、消化器系の部分である。それらは、大腸と呼ばれる長い筋肉の管である。結腸は、大腸の最初の4−5フィートであり、直腸は、最後の4−5インチである。直腸に結合する結腸の部分がS字結腸である。小腸に結合する部分あ盲腸である。部分的に消化された食物は、小腸から結腸に入る。結腸は、食物から水分および栄養素を取り除き、老廃物として貯蔵する。老廃物は結腸から直腸へ、次いで、肛門を通って体外へ移動する。
米国では、直腸結腸ガンは、男性において、皮膚、前立腺および肺ガンに次いで、4番目に多いガンである。直腸結腸ガンは、女性において、皮膚、肺および乳ガンに次いで、4番目に多いガンでもある。直腸結腸ガンの一般的症状として、排便習慣の変化;下痢、便秘または腸が完全に空にならないという感覚;大便中の血液(鮮赤色または暗色);通常よりも細い大便;一般的腹部不快感(頻繁なガス痛、膨張、膨満および/または腹痛);原因不明の体重減少;持続性疲労;吐き気および嘔吐が挙げられる。
ガンの治療および副作用
乳ガン、神経芽腫、白血病、前立腺ガン、黒色腫または直腸結腸ガンなどのガンの治療は、局所または全身のいずれかで行うことができる。外科手術および放射線照射などの局所的治療は、腫瘍およびその近くの領域のガン細胞に影響を及ぼす。化学療法、ホルモン療法および生物療法などの全身的治療は、血流を通って移動して、全身のガン細胞に達する。
ガン治療の有害な影響から健康な細胞を保護するのは困難なこともある。治療は、健康な細胞および組織に損傷を与えるので、副作用が起こることが多い。ガン治療の副作用は、主として、治療のタイプおよび程度に依存する。また、その影響は、各人同じではなく、1人に対しても1回の治療とその次では変化することもある。
外科手術は、ガンを除去する療法である;外科医は、腫瘍近傍の周囲組織およびリンパ節のいくらかを除去することもありうる。外科手術は、外来患者として行われることもり、あるいは患者が入院しなければならないこともある。この決定は、主として外科手術のタイプおよび麻酔のタイプによって決まる。
外科手術の副作用は、腫瘍の大きさおよび位置、手術のタイプおよび患者の一般的健康状態などの多くの因子によって決まる。患者は、外科手術後最初の2−3週間は、不快であることが多いが、この痛みは、薬剤でコントロールすることができる。患者が、手術後しばらくの間、疲労感またはだるさを感じることも通常のことである。手術から回復するのに要する時間の長さは、患者によって変わる。
放射線療法は、ガン細胞を殺すために高エネルギーの放射線を用いる。いくつかのタイプのガンに対しては、一次治療として、外科手術の代わりに放射線療法を用いることができる。除去しやすなるように腫瘍を小さくするために放射線療法を外科手術の前に行っても良い(ネオアジュバント療法)。他の症例では、領域に残っているかもしれないガン細胞を破壊するために、放射線療法を外科手術の後に行う(アジュバント療法)。もし腫瘍が除去できなかった場合の痛みまたは他の問題を軽減するために、放射線を単独で用いてもよく、または他のタイプの治療と一緒に行ってもよい。
放射線療法は、外照射または内照射の2つの形態のいずれかで行うことができる。両方を受ける患者もある。外照射は、身体の特定の領域において放射線の照準を定める機械から来る。この治療は、病院または診療所で外来患者に施されることが多い。治療後に身体に放射能は残らない。内照射(埋め込み照射、侵入照射または近接照射療法とも呼ばれる)では、放射線は、針、シード、ワイヤーまたはカテーテルに封入され、腫瘍の近傍に直接設置される放射性物質から来る。埋め込みは、永久または一時的である。永久埋め込みでは、照射量は、患者が病院を去る前に安全レベルまで下がる。一時的埋め込みでは、埋め込み物を除去した後は、体内に放射能は残らない。
放射線療法の副作用は、治療用量および治療される身体の部分に従属する。患者は、放射線療法中、特に数週間の治療において、非常に疲労する可能性がある。特に十分な休息が必要であることが多いが、通常は、患者が休息期間中と同様に元気でいるように努力するように医師は励ます。外照射では、治療領域の永久的色素沈着または青銅化が生じる可能性がある。さらに、通常は、治療領域における一時的脱毛が生じ、皮膚では赤化、乾燥、圧痛およびかゆみが起こる。放射線療法は、身体を感染から保護するのに役立つ細胞である白血球の数も減少させる。放射線療法は、副作用を引き起こしうるが、これらは、通常、処置またはコントロールすることができる。大部分の副作用は、一時的であるが、持続的または数ヶ月または数年後に現れるものもある。
化学療法は、ガン細胞を殺すための薬物の使用である。医師は、薬物または薬物の組み合わせを用いることができる。化学療法は、患者が必要とする唯一の治療でありうるが、他の形態の治療と組み合わせてもよい。ネオアジュバント化学療法は、しゅようを小さくするために外科手術前に与えられる薬物を意味する;アジュバント化学療法は、ガンの再発を防ぐために外科手術後に与えられる薬物を意味する。化学療法(単独または他の形態の治療とともに)は、疾患の症状を軽減するためにも用いることができる。
通常は化学療法は、周期的に行われる:治療期間(一日以上治療を行う)、次いで、回復期間(数日または数週間)、次いで別の治療期間などである。ほとんどの抗ガン剤は、静脈内注入(IV)によって投与される;筋肉または皮下に注入されるものもある;経口投与されるものもある。
多量のIV化学療法を受ける必要がある患者は、薬物を治療が終わるまでとどまるカテーテル(薄い可撓管)を通して投与されることが多い。カテーテルの一端は、腕または胸部の大静脈に留置され、他端は、身体の外側に残される。抗ガン剤は、カテーテルを通して投与される。カテーテルを付けられた患者は、各治療のために針を静脈に挿入される不快感を回避する。
抗ガン剤を他の方法で投与することもある。たとえば、腹腔内化学療法と呼ばれるアプローチでは、抗ガン剤をカテーテルを通して直接腹部に注入する。中枢神経系(CNS)においてガン細胞に到達するために、患者は、髄腔内化学療法を受ける。このタイプの治療では、抗ガン剤は、脊柱に留置した針または頭皮に留置した他の器具を通して脳脊髄液に注入される。
通常は、患者は外来として(病院、医師のオフィスまたは家庭で)化学療法を受ける。しかし、どの薬物を投与するか、用量、投与形態および患者の一般的健康状態によって、短期入院が必要な場合もある。
化学療法の副作用は主として、患者が受ける薬物および用量によって変わる。他のタイプの治療と同様に、副作用はヒトによって異なる。一般に、抗ガン剤は、急速に分裂する細胞に影響を及ぼす。ガン細胞に加えて、このような細胞には、感染と戦い、血液凝固を促進し、身体の各部に酸素を運ぶ血液細胞が含まれる。血液細胞が影響を受けると、患者は、感染症になる可能性が高くなり、あざができやすくなるか、または出血しやすくなり、著しく虚弱感および倦怠感を感じるようになる。毛根において急速に分裂している細胞および消化管を内張するもまた影響を受ける。結果として、副作用には、脱毛、食欲不振、吐き気および嘔吐、下痢または口腔および口唇痛が含まれる。
脱毛は、ガン患者の多くにとって大きな関心事である。抗ガン剤には、毛髪を薄くするだけのものもあり、全身の体毛の脱毛をもたらすものもある。大部分の副作用は、治療中の回復期間に徐々に無くなり、治療が終了した後には毛髪が再び生えてくる。
抗ガン剤には、生殖能力(子供を作る能力)の喪失などの長期間の副作用引き起こしうるものもある。生殖能力の喪失は、一時的または永続的であり、使用した薬物ならびに患者の年齢および性別によって変わる。女性の月経が停止することもあり、身体のほてりや膣の乾燥が生じることもある。若い女性において月経が戻る可能性が高い。
ホルモン療法は、その成長がホルモンに依存するガンに対して用いられる。ホルモン療法は、ガン細胞が必要とするホルモンを獲得または使用できないようにする。この治療は、特定のホルモンの生成を停止するか、またはその機能する方法を変更する薬物の使用を含む。もう1つのタイプのホルモン療法は、ホルモンを産生する臓器(卵巣または精巣など)を除去するための外科手術である。ホルモン療法は、数多くの副作用を引き起こしうる。患者は、倦怠感を感じ、体液貯留、体重増加、ほてり、吐き気および嘔吐、食欲の変化が生じ、血餅が生じる場合もある。女性において、ホルモン療法は、月経期の中断および膣の乾燥を引き起こす。女性におけるホルモン療法はまた、受胎能力の喪失または増強のいずれかを引き起こす;ホルモン療法を受けている女性は、治療中の避妊について医師と話し合うべきである。男性において、ホルモン療法は、勃起不全、性欲の喪失または生殖能力の喪失を引き起こす。使用する薬物によって、これらの変化は、一時的、長期的または永続的である。
生物療法(免疫療法とも呼ばれる)は、身体の生まれつきの能力(免疫系)が疾患と戦うのを助けるか、またはガン治療のいくつかの副作用から身体を保護する。モノクローナル抗体、インターフェロン、インターロイキン−2およびコロニー刺激因子が、ある種の生物療法である。
生物療法によって引き起こされる副作用は、特定の治療によって異なる。一般に、これらの治療は、悪寒、発熱、筋肉痛、脱力感、食欲不振、吐き気、嘔吐および下痢などのインフルエンザ様症状を引き起こす傾向がある。患者はまた、出血しやすいか、またはあざができやすく、皮膚発疹が現れるか、または腫れる。これらの問題は、重篤であるが、治療停止後は、無くなる。
骨髄移植(BMT)または末梢血幹細胞移植(PSCT)もまた、ガン治療に用いられる。移植片は、自家(確保が容易であった患者自身の細胞)、同種(他人によって提供された細胞)または同系(一卵性双生児によって提供された細胞)である。BMTおよびPSCTの両方が、患者に健康な幹細胞(成熟して血液細胞になる非常に未熟な細胞)を提供する。これらは、非常に高用量の化学療法および/または放射線治療によって損傷されるかまたは破壊された幹細胞を補充する。BMTまたはPSCTを受ける患者は、彼らが受けた高用量の化学療法および/または放射線による感染、出血およびその他の副作用のリスクの増大に直面している。移植自体に伴う最も一般的な副作用は、移植中の吐き気および嘔吐ならびに初日または翌日中の悪寒および発熱である。さらに、移植片対宿主病(GVHD)が、ドナーから骨髄を受けた患者に起こる。GVHDにおいては、提供された骨髄(移植片)が、患者(宿主)の組織(ほとんどの場合、肝臓、皮膚および消化管である)に対して反応する。GVHDは、軽いこともあり、または非常に重篤でもありうる。それは、移植後のいつでも起こりうる(数年後ということもある)。GVHDのリスクを低下し、それが起こった場合の問題に対処するために、薬物を用いることができる。
ガン患者には、食欲不振のために、食べるのが困難である患者もいる。さらに、吐き気、嘔吐または口腔および口唇痛などの一般的な治療の副作用が、飲食を困難にしうる。食物の味が変わることが多い。また、ガン治療を受けている患者は、不快または倦怠している場合に食欲がない。
ボツリヌス毒素
嫌気性グラム陽性菌であるボツリヌス菌は、ヒトおよび動物において神経麻痺の病気を引き起こす強力なポリペプチド神経毒であるボツリヌス毒素を産生する。ボツリヌス菌の胞子は、土壌中に見出され、自営缶詰工場の不完全に滅菌および密封された食品容器内で成長することができ、多くのボツリヌス中毒の症例の原因である。通常はボツリヌス中毒の影響は、ボツリヌス菌培養物または胞子で汚染された食料を食べた後18−36時間で現れる。ボツリヌス毒素は、弱毒化されずに胃の内張を通過し、末梢運動神経を攻撃することができるようである。ボツリヌス毒素中毒の症状は、歩行、嚥下および会話困難から呼吸筋麻痺および死亡へ進行することができる。
A型ボツリヌス毒素は、世に知られている最も致死性の高い天然の生物剤である。マウスのLD50は、約50ピコグラムのA型ボツリヌス毒素(精製神経毒複合体)(Allergan、Inc、Irvine、カリフォルニアから商品名BOTOX(R)で市販されている)である。ボツリヌス毒素の一単位(U)は、それぞれ体重18−20 g雌性スイス・ウェブスターマウスに腹腔内注入した場合のLD50として定義される。7つの免疫学的に別のボツリヌス神経毒が特徴決定されており、これらはそれぞれ、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス神経毒血清型であり、型特異的抗体による中和によって区別される。異なる血清型のボツリヌス毒素は、それらが影響を及ぼす動物の種ならびにそれらが引き起こす麻痺の重篤度および期間の点で異なる。たとえば、A型ボツリヌス毒素は、ラットにおいて生じる麻痺のレートによって測定される場合、B型ボツリヌス毒素の500倍強力であることが決定されている。さらに、B型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素の霊長類LD50の約12倍である480 U/kgの用量では霊長類において毒性がないことが決定されている。ボツリヌス毒素は、高い親和性でコリン作動性運動神経に結合し、神経内に取り込まれ、アセチルコリンの放出を遮断するようである。
ボツリヌス毒素は、骨格筋過活動を特徴とする神経筋障害の治療のための臨床設定において用いられている。A型ボツリヌス毒素は、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣および頸部ジストニアの治療用として米国FDAによって承認されている。非A型ボツリヌス毒素血清型は、A型ボツリヌス毒素と比べて毒性が低く、および/または活性である期間が短いようである。末梢筋肉内のA型ボツリヌス毒素の臨床的影響は、通常、注入から一週間以内に見られる。A型ボツリヌス毒素の1回の筋肉内注入からの症状軽減の典型的な期間は、平均して約3ヶ月である。
すべてのボツリヌス毒素血清型が、神経筋接合部において神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害するようであるが、それらは異なる神経分泌タンパク質に影響を及ぼすこと、および/または異なる部位でこれらのタンパク質を切断することによって阻害を行う。たとえば、A型およびE型ボツリヌス菌は、両方とも25キロダルトン(kD)のシナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)を切断するが、タンパク質内の異なるアミノ酸配列を標的とする。B、D、FおよびG型ボツリヌス毒素は、小胞結合膜タンパク質(VAMP、シナプトブレビンとも呼ばれる)に作用し、各血清型は異なる部分でタンパク質を切断する。最終的に、C1型ボツリヌス毒素がシンタキシンおよびSNAP−25の両方を切断することが分かっている。これらの作用機構における差異が、種々のボツリヌス毒素血清型の作用の相対強度および/または持続期間に影響を及ぼす。
7つの公知のボツリヌス毒素血清型すべてについて、ボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、約150 kDである。興味深いことに、ボツリヌス毒素は、結合した非毒性タンパク質とともに150 kDのボツリヌス毒素タンパク質分子を含む複合体としてクロストリジウム細菌によって放出される。したがって、A型ボツリヌス毒素複合体は、900 kD、500 kDおよび300 kD体としてクロストリジウム細菌によって産生されうる。BおよびCi型ボツリヌス毒素は、500 kD複合体としてのみ産生されるようである。D型ボツリヌス毒素は、300 kDおよび500 kD複合体の両方として産生される。最終的に、EおよびF型ボツリヌス毒素は、約300 kD複合体としてのみ産生される。複合体(すなわち、約150 kDより大きい分子量)は、非毒性ヘマグルチニンタンパク質および非毒性非ヘマグルチニンタンパク質を含むと考えられる。これらの2つの非毒性タンパク質(ボツリヌス毒素分子とともに関連する神経毒複合体を含む)は、ボツリヌス毒素分子に変性に対する安定性を提供し、摂取されるときの消化性酸に対する保護を提供するように作用する。したがって、より大きい(分子量約150 kD以上)ボツリヌス毒素複合体であれば、ボツリヌス毒素複合体の筋肉内注入部位から離れるボツリヌス毒素の拡散速度をより遅くすることが可能である。
インビトロ実験では、ボツリヌス毒素が、脳幹組織の初代細胞培養物からのアセチルコリンおよびノルエピネフリンの両方のカリウムカチオン誘導性放出を阻害することが示されている。さらに、ボツリヌス毒素が、脊髄ニューロンの初代培養物においてグリシンおよびグルタミン酸塩の両方の誘発放出を阻害すること、および脳シナプトソーム調製物においてボツリヌス毒素が、神経伝達物質であるアセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRPおよびグルタミン酸塩のそれぞれの放出を阻害することが報告されている。
A型ボツリヌス毒素は、公知の手順にしたがって、発酵槽でボツリヌス菌の培養物を樹立し、成長させ、次いで、発酵混合物を採取し、精製することによって得ることができる。すべてのボツリヌス毒素血清型は、最初は、神経刺激性になるためにプロテアーゼによって切断またはニックを入れなければならない不活性な単鎖タンパク質として合成される。血清型AおよびGボツリヌス毒素を作る細菌株は内因性プロテアーゼを有し、したがって血清型AおよびGは、主として活性体で細菌培養物から回収されうる。対照的に、血清型C1、DおよびEボツリヌス毒素は、タンパク質非分解性菌株によって合成され、したがって、通常は培養物から回収されるときに不活性である。血清型BおよびFは、タンパク質分解性およびタンパク質非分解性株の両方によって生成され、したがって、活性体または不活性体のいずれかにおいて回収されうる。しかし、たとえば、B型ボツリヌス毒素血清型を生成するタンパク質分解性菌株でさえも、生成した毒素の一部を切断するにすぎない。非ニック分子に対するニックの入った分子の正確な比率は、インキュベーションの長さおよび培養物の温度によって決まる。したがって、たとえば、あるパーセンテージのB型ボツリヌス毒素の調製物が、不活性である可能性が高く、それがA型ボツリヌス毒素と比べて有意に低いB型ボツリヌス毒素の公知の強度の原因となると思われる。臨床製剤における不活性なボツリヌス毒素分子の存在は、その臨床効力に寄与することなく、抗原性の増加に結びついているその製剤の全タンパク質負荷に寄与する。さらに、B型ボツリヌス毒素が、同じ用量レベルで筋肉内注入をした場合、A型ボツリヌス毒素と比べて活性の持続時間がより短く、強度もより低いこともことがわかっている。
A型ボツリヌス毒素が、臨床設定において以下のように用いられていることが報告されている:
(1)頸部ジストニアを治療するための1筋肉内注入(複数の筋肉)当たり約75−250単位のボトックス(登録商標);
(2)眉間のしわ(額のしわ)を治療するための1筋肉内注入当たり5−10単位のボトックス(登録商標)(鼻根筋に5単位の筋肉内注入および各皺眉筋に10単位の筋肉内注入);
(3)便秘を治療するための恥骨直腸筋の括約筋内注入による、約30−80単位のボトックス(登録商標);
(4)上眼瞼の外側瞼板前部眼輪筋および下眼瞼の外側瞼板前部眼輪筋への注入による、眼瞼痙攣を治療するための1筋肉当たり約1−5単位の筋肉内注入されるボトックス(登録商標);
(5)斜視の治療のために、外眼筋は、約1−5単位のボトックス(登録商標)を筋肉内注入されており、注入量は、注入される筋肉の大きさおよび所望の筋肉麻痺の範囲(すなわち、所望の眼屈折矯正の量)に応じて変化する;
(6)脳卒中後の上肢痙直の治療のための下記の5つの異なる上肢屈筋へのボトックス(登録商標)の筋肉内注入による注入:
(a)深指屈筋:7.5 U−30 U
(b)表在屈筋(flexor digitorum sublimus):7.5 U−30 U
(c)尺側手根屈筋:10 U−40 U
(d)橈側手根屈筋:15 U−60 U
(e)上腕二頭筋:50 U−200 U。
患者が、治療セッション毎に筋肉内注入によって90 U−360 Uの上肢屈筋ボトックス(登録商標)を受けるように、上記の5つの筋肉には、同じ治療セッションにおいて注入を行っている。
種々の臨床状態を治療するためのA型ボツリヌス毒素の成功が、他のボツリヌス毒素血清型への関心を引き起こしている。局所的筋力低下効力、安全性および抗原性強度を決定するために、2つの市販のボツリヌスA型製剤(ボトックス(登録商標)およびダイスポート(登録商標))およびBおよびF型ボツリヌス毒素(両者とも和光純薬、日本から入手)の製剤の研究が行われている。ボツリヌス毒素製剤を右側腓腹筋の頂部に注入し(0.5−200.0 単位/kg)、マウスディジットアブダクションスコアアッセイ(digit abduction scoring assay)(DAS)を用いて筋力低下を評価した。用量反応曲線からED50値を計算した。LD50用量を決定するために、追加のマウスに筋肉内注入を行った。LD50/ED50として治療指数を計算した。別のグループのマウスの後肢にボトックス(登録商標)(5.0−10.0 単位/kg)またはB型ボツリヌス毒素(50.0−400.0 単位/kg)を注入し、筋力低下および口渇の推定モデルである水分消費増加を試験した。ウサギへの毎月の筋肉内注入によって抗原性強度を評価した(1.5または6.5 ng/kgのB型ボツリヌス毒素または0.15 ng/kgのボトックス(登録商標))。筋力低下ピークおよび持続時間は、すべての血清型について用量依存性であった。B型ボツリヌス毒素は筋力低下において効果が低いが、水分消費はボトックス(登録商標)を注入されたマウスよりもB型ボツリヌス毒素を注入されたマウスにおいて多かった。注入の4ヶ月後、4匹のうち2匹(1.5 ng/kgで処置)および4匹のうち4匹(6.5 ng/kgで処置)のウサギが、B型ボツリヌス毒素に対する抗体を作った。別の実験において、9匹のボトックス(登録商標)処置ウサギは、A型ボツリヌス毒素に対する抗体を作らなかった。DASの結果は、F型ボツリヌス毒素と等しいA型ボツリヌス毒素の相対ピーク強度およびB型ボツリヌス毒素よりも大きいF型ボツリヌス毒素の相対ピーク強度を示す。効果の持続時間に関して、A型ボツリヌス毒素はB型ボツリヌス毒素よりも長く、B型ボツリヌス毒素の効果の持続時間は、F型ボツリヌス毒素よりも長かった。治療指数の値が示すように、2つの市販の製剤であるA型ボツリヌス毒素(ボトックス(登録商標)およびダイスポート(登録商標))は相異する。後肢へのB型ボツリヌス毒素の注入後の水分消費行動の増加は、この血清型の臨床的に有意な量が、マウス体循環に入ったことを示す。結果は、A型ボツリヌス毒素に匹敵する効力を達成するためには、試験した他の血清型の用量を増加することが必要であるということも示す。用量の増加は、安全性を含むことができる。さらに、ウサギにおいて、B型はボトックス(登録商標)よりも抗原性が大きく、その理由は、B型ボツリヌス毒素の有効用量を達成するために注入されたタンパク質負荷がより高いことである可能性がある。
末梢位置において薬理作用を有することに加えて、ボツリヌス毒素は、中枢神経系における阻害効果を有することもできる。WeigandらのNauny−Schmiedeberg's Arch.Pharmacol.1976;292、161−165およびHabermannのNauny−Schmiedeberg's Arch.Pharmacol.1974;281、47−56の研究は、ボツリヌス毒素が逆行輸送によって脊髄領域に上行することを明らかにした。そのようなものとして、たとえば筋肉内注入で末梢位置に注入されたボツリヌス毒素は、脊髄に逆行輸送されうる。
ボツリヌス毒素は、皮膚、骨および腱創傷(U.S.特許6,447,787);髄腔内痛(たとえば、U.S.特許番号6,113,915を参照);汗腺障害などの種々の自室神経疾患(U.S.特許5,766,605);緊張性頭痛(U.S.特許6,458,365);偏頭痛の痛み(U.S.特許5,714,468);術後痛および内臓痛(U.S.特許6,464,986);発毛および毛髪保持(U.S.特許6,299,893);乾癬および皮膚炎(U.S.特許5,670,484);損傷した筋肉(U.S.特許6,423,319);種々のガン(たとえば、U.S.特許6,139,845および6,063,768を参照)、平滑筋障害(U.S.特許5,437,291 );神経絞扼症候群(U.S.特許出願2003/0224019);にきび(WO 03/011333);神経性炎症(U.S.特許6,063,768);耳の障害(たとえば、U.S.特許番号6,265,379を参照);膵臓障害(たとえば、U.S.特許番号6,143,306および6,261,572を参照);前立腺過形成性、前立腺ガンおよび尿失禁などの前立腺障害、(たとえば、U.S.特許6,365,164および6,667,041およびDoggweiler R.らの「A型ボツリヌス毒素は、ラット前立腺の広汎性および高選択的萎縮を引き起こす」、Neurourol Urodyn 1998;17(4):363を参照)の治療のために提案されるか、または使用されている。
U.S.特許番号5,989,545は、特定の標的部分に化学的に複合または組換え的に融合した修飾クロストリジウム神経毒またはそのフラグメント(ボツリヌス毒素が好ましい)が、該薬剤を脊髄に投与することによって痛みを治療するために用いることができることを開示する。さらに、標的化されたボツリヌス毒素(すなわち、修飾された結合部分をもつもの)が、種々の身体状態を治療するために用いることができることが開示されている(たとえば、WO 96/33273;WO 99/17806;WO 98/07864;WO 00/57897;WO 01/21213;WO 00/10598を参照)。
ボツリヌス毒素は、胸筋痙攣をコントロールするために胸筋に注入されている。たとえば、Senior M.の「ボトックスおよび胸筋下インプラント挿入後の胸筋痙攣の管理」、Plastic and Recon Surg、July 2000、224−225を参照。制御放出型毒インプラントが知られており(たとえば、U.S.特許6,306,423および6,312,708を参照)、経皮ボツリヌス毒素投与が行われている(U.S.特許出願番号10/194805)。
液体安定製剤および純ボツリヌス毒素製剤の両方(たとえば、WO 00/15245およびWO 74703を参照)ならびにボツリヌス毒素の局所適用(たとえば、DE 198 52 981を参照)が、開示されている。
アセチルコリン
主としてまたは一般に、単一タイプの小分子神経伝達物質のみが、哺乳類神経系の各タイプのニューロンによって放出される。神経伝達物質アセチルコリンは、脳の多くの領域におけるニューロンによって分泌されるが、特に、運動皮質の大錐体細胞、大脳基底核における数種の異なるニューロン、骨格筋を神経支配する運動神経、自律神経系(交感神経と副交感神経の両方)の節前ニューロン、副交感神経系の節後ニューロンおよび交感神経系の節後ニューロンのいくつかによって分泌される。本質的に、汗腺への節後交感神経線維、立毛筋および少数の血管のみが、コリン作動性であり、大部分の交感神経系の節後ニューロンは神経伝達物質ノルエピネフリンを分泌する。ほとんどの場合、アセチルコリンは、興奮作用を有する。しかし、アセチルコリンは、迷走神経による心臓の阻害などの末梢副交感神経末端のいくつかにおける阻害作用を有することが知られている。
自律神経系の遠心性シグナルは、交感神経系または副交感神経系のいずれかを通って身体に伝達される。交感神経系の節前ニューロンは、脊髄の中間外側角に位置する節前交感神経細胞体から伸びる。該細胞体から伸びる節前交感神経線維は、脊柱傍交感神経節または脊椎前神経節に位置する節後ニューロンとシナプス形成する。交感神経および副交感神経系の両方の節前ニューロンは、コリン作動性であるので、該神経節へのアセチルコリンの適用は、交感神経および副交感神経系の節後ニューロンの両方を興奮させるだろう。
アセチルコリンは、2つのタイプの受容体、ムスカリンおよびニコチン受容体を活性化する。ムスカリン受容体は、副交感神経系の節後ニューロンによって刺激されたすべてのエフェクター細胞ならびに交感神経系の節後コリン作動性ニューロンによって刺激されたエフェクター細胞に見出される。ニコチン受容体は、交感神経系および副交感神経系の両方の節前および節後ニューロン間のシナプスに見出される。ニコチン受容体は、神経筋接合部における骨格筋繊維の多くの膜にも存在する。
アセチルコリンは、小さい透明な細胞内小胞が節前ニューロン細胞と融合する場合に、コリン作動性ニューロンから放出される。副腎髄質(ならびにPC12細胞系)および膵島細胞などの多種多様な非神経分泌細胞が、有芯小胞からそれぞれカテコールアミンおよびインスリンを放出する。PC12細胞系は、交感神経副腎発達の研究のための組織培養モデルとして広く使用されるラットクロム親和性細胞腫細胞のクローンである。ボツリヌス毒素は、透過処理(電気穿孔によるなど)または麻痺細胞への毒素の直接注入によって、インビトロにて、両タイプの細胞からの両タイプの化合物の放出を阻害する。ボツリヌス毒素は、皮質シナプトソーム細胞培養物からの神経伝達物質グルタミン酸塩の放出を阻害することも知られている。
ボツリヌス毒素の基質の広範な分布
ボツリヌス毒素が、筋細胞を麻痺させて、神経筋接合部におけるニューロンからのアセチルコリン放出のシナプス前抑制による弛緩性麻痺を引き起こしうることが知られている。ボツリヌス毒素のタンパク質分解ドメインは、標的細胞の細胞質ゾル中の特定の基質に作用し、基質の切断が、膜ドッキングおよびアセチルコリン含有分泌小胞のエキソサイトーシスを妨げる。支配ニューロンと筋細胞との間のシナプス間隙におけるアセチルコリンの不在は、筋細胞の刺激を妨げ、それによって麻痺が引き起こされる。
ボツリヌス毒素は、アセチルコリン含有分泌小胞のドッキングをコントロールする3つの異なるタンパク質の1つ以上において特に作用する細胞内プロテアーゼである。ボツリヌス毒素のこれらの特異的基質は、シナプトブレビン、シンタキシンおよび/またはSNAP−25である。たとえば、Duggan M.J.ら、「細胞におけるボツリヌス神経毒基質発現の概説」、Mov Disorder 10(3);376:1995およびBlasi J.ら、「ボツリヌス神経毒Aは、シナプスタンパク質SNAP−25を選択的に切断する」、Nature 365;160−163:1993を参照。B、D、FおよびG型ボツリヌス毒素について、特定の細胞内基質は、シナプトブレビンである。SNAP−25、シナプトブレビンおよびシンタキシンは、SNARE(可溶性N−エチルマレイミド感受性因子結合タンパク質受容体)として知られている。
ボツリヌス毒素の基質を含むのが、筋肉を神経支配する神経のみではないということが重要である:“多くの神経サブセットのシナプス前領域および神経堤細胞系におけるSNAP−25の存在は、このタンパク質が神経組織において重要な機能を補助することを示唆する” Oyler G.A.ら、「ラット脳、ラットPC−12細胞およびヒトSMS−KCNR神経芽細胞におけるSNAP−25免疫活性の分布および発現」、Brain Res Dev Brain Res 1992 Feb 21;65(2):133−146、1992。
さらに、“内分泌細胞におけるSNAREタンパク質の広範な存在は、それらが内分泌腫瘍のための一般的診断マーカーとしても役立ちうることを示唆する...”、Graff、L.ら、「小胞モノアミン輸送体、シナプトソーム関連タンパク質25およびシンタキシンの発現:ヒト小肺ガンの徴候」、Cancer Research 61、2138−2144、March 1、2001、page 2138。たとえば、SNAP−25が、神経内分泌細胞(クロム親和細胞、PC12、GH3および膵島細胞腫など)中に広範に分布することが知られている。さらに、ボツリヌス毒素基質であるシナプトブレビンは、線維芽細胞および骨髄性細胞(たとえば、マスト細胞)中に見出されている。Duggan M.ら、上記。
実際に、SNAREは、すべての分泌細胞でないにしても大部分の分泌小胞の膜融合に影響を及ぼすかまたは膜融合をコントロールするようである。Andersson J.ら、「神経芽細胞におけるSNAP−25aおよびSNAP−25bタンパク質の差異選別」
、Eur J.Cell Bio 79、781−789:Nov 2000。
したがって、ボツリヌス毒素の基質は、神経伝達物質アセチルコリンを放出する神経細胞に限定されない。したがって、ボツリヌス毒素基質は、“膜−膜融合イベントに遍在的に関与し”、証拠は、“膜融合イベント(すなわち、細胞壁と分泌小胞のドッキングのため)の普遍的機構”を指摘する(Duggan 1995、上記)。
したがって、ボツリヌス毒素の細胞内基質は、神経および非神経分泌細胞の両方において遍在的分布を有する。これは、少なくとも以下の部分におけるSNAP−25(25キロダルトンのシナプトソーム関連タンパク質および少なくともA型ボツリヌス毒素の基質)の存在の発見によって明確に説明される:
(1)膵臓(Sadoul K.ら、「SNAP−25は、ランゲルハンス島に発現し、インスリンの放出に関与する」、J.Cell Biology 128;1019−1029:1995;
(2)脳下垂体(Dayanithi G.ら、「単離された透過処理された神経分泌性神経末端からのバソプレッシンの放出は、ボツリヌスA型毒素の軽鎖によって遮断される」、Neuroscience 1990;39(3):711−5);
(3)副腎髄質(Lawrence G.ら、「ボツリヌス毒素AまたはBによる25−kDaシナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)またはシナプトブレビンの切断後の無傷および透過処理されたクロム親和性細胞の別個のエキソサイトーシス応答」、Eur J.Biochem 236;877−886:1996);
(4)胃細胞(Hohne−Zell B.ら、「ラット胃腸クロム親和性細胞様細胞によるヒスタミンのエキソサイトーシス中のシナプトブレビンおよびSNAP−25の機能的重要性」、Endocrinology 138;5518−5526:1997;
(5)肺腫瘍(Graff、L.ら、「小胞モノアミン輸送体、シナプトソーム関連タンパク質25およびシンタキシンの発現:ヒト小肺ガンの徴候」、Cancer Research 61 、2138−2144、March 1 、2001(小細胞肺ガン(SCLCsは、SNAP−25を含む);
(6)腸腫瘍(Maksymowych A.ら、「極性ヒト結腸ガン細胞によるボツリヌス神経毒の結合およびトランスサイトーシス」、J of Bio.Chem、273(34);21950−21957:1998)(ボツリヌス毒素は、ヒト結腸ガン細胞によって内部移行する);
(7)膵臓腫瘍(Huang、X.ら、「ボツリヌス神経毒Aのように、切断された(truncated)SNAP−25(1−197)は、HIT−T15膵島細胞腺腫細胞からのインスリン分泌を阻害することができる」、MoI.Endo.12(7);1060−1070:1998、“...機能的SNAP−25タンパク質がインスリン分泌のために必要である...”、同書、p1060参照)。Boyd R.ら、「膵島細胞腺腫細胞からのインスリンの放出におけるボツリヌス神経毒の作用」、J.Bio Chem.270(31);18216−18218:1995および;Cukan M.ら、「膵腺房腫瘍細胞系AR42JにおけるSNAP−23およびSNAP−25の発現」、Molec Biol Cell 20(suppl);398a、番号2305:1999、“SNAP−25は、神経および内分泌系におけるエキソサイトーシスイベントを媒介するSNAREタンパク質である”も参照);
(8)下垂体腫瘍ならびに正常下垂体細胞(Majo G.ら、「ヒト下垂体腺腫におけるシナプスタンパク質SNAP−25およびRab3Aの免疫細胞化学的分析。プロラクチン・成長ホルモン産生細胞系譜におけるSNAP−25の過剰発現」、J.Pathol 1997 Dec;183(4):440−446);
(9)神経芽腫(Goodall、A.ら、「ヒト神経芽腫SH−SY5Yにおける2つのタイプの分泌小胞の出現」、J.of Neurochem 68;1542− 1552:1997。Oyler、G.A、「ラット脳、ラットPC−12細胞およびヒトSMS−KCNR神経芽細胞におけるSNAP−25免疫活性の分布および発現」、Dev.Brain Res.65(1992);133−146も参照。Goodall(1992)が、単一の神経芽腫細胞系におけるある種の小胞ドッキングタンパク質のインビトロ同定のみを論じていることに留意。);
(10)腎臓細胞(Shukla A.ら、「ラット腎集合管主催棒において、SNAP−25関連Hrs−2タンパク質は、AQP2と共局在化する」、Am J Physiol Renal Physiol 2001 Sep;281(3):F546−56、(SNAP−25は、腎細胞“調節エキソサイトーシス”に関与する);および
(11)正常肺細胞(Zimmerman UJ.ら、「肺胞上皮II型細胞におけるシナプトブレビン、シンタビンおよびSNAP−25のタンパク質分解」、IUBMB Life 1999 Oct;48(4):453−8);および
(12)すべての卵巣細胞(Grosse J.ら、「ラットおよびヒト卵巣の卵母細胞およびステロイド産生細胞中の25キロダルトンのシナプトソーム関連タンパク質:分子分析およびゴナドトロピンによる調節」、Biol Reprod 2000 Aug;63(2):643−50、(SNAP−25は、“すべての卵母細胞および大胞状卵胞の顆粒膜細胞(GC)および黄体細胞などのステロイド産生細胞”に見出される))。
コリン作動性乳腺組織
多様な過形成および新形成乳腺細胞が、コリン作動性メカニズムによって影響を受ける。したがって、「胞巣状細胞活性におけるコリン作動性メカニズム」があることが発見されている。Balakina G.B.ら、「ホワイトマウスの乳腺の胞巣状部分におけるコリンアセチルトランスフェラーゼの局在化」、Arkh Anat Gistol Embriol 1986 Apr;90(4):73−7。さらに、乳腺異形成(線維嚢胞)および乳ガン組織におけるコリン作動性の影響(Dorosevich A.E.ら、「乳房異形成およびガンにおける間質成分の不可欠部分の1つとしての自律神経末端およびその細胞微小環境」、Arkh Patol 1994 Nov−Dec;56(6):49−53)ならびに乳腺動脈における“平滑筋の直接コリン作動性刺激”(Pesic S.ら、「ブタ内胸動脈におけるアセチルコリン誘発性収縮;ムスカリン受容体の可能な役割」、Zentralbl Veterinarmed A 1999 Oct;46(8):509−15)がある。
コリンエステラーゼの阻害によるアセチルコリンの増加が、乳ガンの発生に至る乳腺細胞増殖の増加に関与していることは重大である。Cabello G.ら、「アセチルコリンエステラーゼ阻害を通る可能性がある有機リン系農薬であるパラチオンおよびマラチオンによって誘発されるラット乳房腫瘍モデル」、Environ Health Perspect 2001 May;109(5):471−9。したがって、乳ガン細胞増殖の低下は、コリン作動性メカニズムによって媒介されると思われる。Panagiotou S.、「オピオイドアゴニストは、周期のG2/M期に対して細胞を遮断することによって乳ガン細胞増殖を変更する:細胞骨格エレメントの関与」、J Cell Biochem 1999 May 1 ;73(2):204−11。
副腎髄質
副腎または腎上体は、腎臓の上部に位置する小さい三角形の構造体である。各副腎は、副腎皮質または外側部分および副腎髄質または内側部分を含む。皮質は、髄質を取り囲み、封じている。
副腎皮質は、ホルモンであるコルチゾールおよびアルドステロンを分泌する。コルチゾールは、ストレス時に産生され、糖の利用を調節し、正常な血圧の維持に必須である。アルドステロンは、塩、カリウムおよび水分バランスの主要なレギュレーターの1つである。もし両方の副腎が除去されるならば、コルチゾールとアルドステロン補充療法が必須となる。副腎髄質は、カテコールアミンであるアドレナリン(同義語としてエピネフリン)およびノルアドレナリン(同義語としてノルエピネフリン)を分泌する。これらのホルモンは、それらが血圧、心臓の拍出能力および血糖値の上昇を引き起こすときに、ストレス反応などの種々の身体機能の正常な調節にとって重要である。副腎髄質を除去しても、身体の他の腺が補償することができるので、ホルモン欠乏はほとんど起こらない。これに反して、過剰のカテコールアミンの産生は、生命にかかわる。
正常な成人男性において、副腎髄質によって産生される総カテコールアミンの約85%がアドレナリンであり、残りの15%がノルアドレナリンである。髄質組織1グラム当たり約1.6 mgのカテコールアミンが存在する。血液および尿中に見出されるほとんどのノルアドレナリンは、副腎皮質に由来するのではなく、節後交感神経末端に由来する。もし新たに切片化した副腎を、重クロム酸カリウムを含む固定液に置くならば、髄質は褐色に変わり、これは、クロム塩に対する副腎髄質組織の親和性を示唆するようにクロム親和反応と呼ばれる。したがって、副腎髄質の細胞は、クロム親和性細胞と呼ばれることが多い。クロム親和性細胞は、副腎髄質の外側にも存在するが、通常ノルアドレナリンのみを分泌し、アドレナリンは分泌しない。
副腎髄質は、節前コリン作動性神経線維によって神経支配される交感神経節として見ることができる。これらの神経線維は、副腎髄質のクロム親和性細胞から、エキソサイトーシスの過程によってカテコールアミン(主としてアドレナリン)の分泌を引き起こすアセチルコリンを放出する。正常な副腎髄質は、内臓神経である交感神経系の節前コリン作動性枝によって神経支配される。副腎髄質の活性は、ほとんど完全に、このようなコリン作動性神経コントロールの下にある。
クロム親和性腫瘍
クロム親和性細胞(副腎髄質のクロム親和性細胞など)および交感神経節細胞は、下記の図表で示すように、どちらも共通の胚原細胞である神経提のシンパサゴニウム(sympathagonium)から誘導されるので共通点が多い。これらの細胞型のそれぞれから発生しうる新生物の型の例を括弧内に示す。それぞれの細胞型は、潜在的にカテコールアミンを分泌することができる。
Figure 0004922167
大部分のクロム親和性細胞新生物は副腎髄質で生じるが、大部分は児童に発生する異所性および多所性クロム親和性細胞腫瘍が知られている。
1.傍神経節腫
傍神経節(同義語として、クロム親和性体)は、心臓、大動脈近傍、腎臓、肝臓、生殖腺およびその他の場所において発見でき、神経提細胞を起源とすると思われ、自律神経系神経節細胞に密接な関連を持つようになっているクロム親和性細胞を含む。傍神経節腫は、傍神経節から誘導されたクロム親和性細胞を含む新生物である。頸動脈小体傍神経節腫は、頸動脈傍神経節腫と称されるが、副腎髄質傍神経節腫は、褐色細胞腫またはクロム親和性細胞腫と呼ばれる。
頸動脈小体は、総頸動脈の外膜に見出される丸い赤褐色から黄褐色の構造として観察されることが多い。それは、血管の分岐点の後内側壁に位置することができ、栄養血管が主として外頸動脈から通って走るエア(ayer)の索によって結合する。正常な頸動脈小体は、直径3−5 mmである。求心性神経支配は、舌咽神経(第9脳神経)を通って提供されると思われる。舌咽神経は、茎突咽頭筋に運動神経線維を、耳下腺に副交感神経系の分泌線維を、とりわけ、鼓室、軟口蓋の内面および扁桃腺に感覚線維を供給する。組織学的に、頸動脈小体は、多量の細胞質および大きい円形または楕円形核をもつI型(主)細胞を含む。細胞質は、カテコールアミンを貯蔵し、放出すると思われる高密度顆粒を含む。正常な頸動脈小体は、動脈血の組成の変化の検出に関与する。
頸動脈傍神経節腫は、全体的に見てまれな腫瘍であるが、頭部および頸部の傍神経節腫の最も一般的な形態である。ほとんどの頸動脈小体傍神経節腫の最適な治療は、外科的切除である。しかし、重要な血管および神経に間近に接近するそれらの位置のために、疾病率(主として、脳神経 X−XIIの欠損および血管損傷)の非常に重大なリスクがあり、死亡率は3−9%と推定される。腫瘍の大きさが直径5 cm以上である場合、合併症の発生率が著しく高いので、腫瘍の大きさは重要である。周術期にアルファおよびベータアドレナリンブロッカーを与える(頸動脈傍神経節腫がカテコールアミンを分泌しているならば)か、または程度は下がるが手術前の血管造影による塞栓術が好ましい。放射線療法は、単独または外科手術と組み合わせて、第2の検討事項および議論の領域である。残念ながら、位置および/または大きさのために、頸動脈傍神経節腫などの傍神経節腫は、手術不可能である。
2.褐色細胞腫
褐色細胞腫は、副腎髄質に発生し、突発性高血圧(高血圧)、頭痛、頻脈、休息中の多汗、前屈姿勢から急に起きあがった後の症状の発生および不安発作などの過剰なカテコールアミン産生に関連する症状を引き起こす。腹部画像化およびカテコールアミン用の24時間採尿で、通常の診断は十分である。通常はフェノキシベンズアミンおよびメチロシンによるカテコールアミン封鎖は、症状を改善し、外科手術中の高血圧性クリーゼを予防するために必要であり、現行の最適療法である。家族型褐色細胞腫に対して部分的副腎摘出が用いられることが多いが、標準的治療は腹腔鏡副腎摘出である。悪性(ガン性)の褐色細胞腫は、希な腫瘍である。
褐色細胞腫は、高血圧の第2原因について評価中の患者の約0.3%に存在すると推定されている。褐色細胞腫は、診断されないか、または不適当に管理される場合に、致命的となる。一連の病理解剖は、多くの褐色細胞腫は臨床的に疑われず、診断未確定の腫瘍が明らかに病的な結論を伴うことを示唆している。
副腎髄質における変化は、正常な副腎髄質から副腎髄質過形成(腫瘍の特別な発達をともなわない細胞数および副腎髄質の大きさの一般的増加)へ、副腎髄質の腫瘍(褐色細胞腫)へと進行しうる。
褐色細胞腫の治療は、一方または療法の副腎を外科的に除去することである。療法の副腎を除去するのが必要であるかどうかは、疾患の範囲に依存する。両方の副腎を除去された患者は、毎日コルチゾールおよびアルドステロン補充をしなければならない。コルチゾールは、ヒドロコルチゾン、コルチゾンまたはプレドニゾンによって補充され、毎日服用しなければならない。アルドステロンは、フルドコルチゾン(Florineftm:フロリネフ)を毎日経口服用によって補充される。補充ヒドロコルチゾンまたはプレドニソンの量を増加することは、発熱、風邪、インフルエンザ、外科的処置または麻酔といったようなストレスの多い期間にあるような患者にとって必要である。
3.グロムス腫瘍
グロムス腫瘍(傍神経節腫の一種)は、一般に良性の新生物であり、神経外胚葉組織からも生じ、身体の種々の部分に見出される。グロムス腫瘍は、側頭骨に生じる最も一般的な良性腫瘍であり、それらの5%以下が悪性になり、転移する。グロムス腫瘍は、頭蓋底、胸郭および頸部における副交感神経系の神経に沿って分布するグロムスから発生する。各耳に典型的な3つのグロムス体がある。グロムス体は通常、ジャコブセン(CN IX)またはアーノルド(CN X)の神経に伴って、もしくは頸静脈球の外膜に見出される。しかし、通常の身体的位置は、岬角(グロムス鼓室)の粘膜または頸静脈球(頸静脈小体)である。
頸静脈小体腫瘍の発生率は、母集団に対して、約1:1,300,000であり、疫学における最も著しい点は、女性における優勢な発生率であり、発生率比は、女性:男性で少なくとも4:1である。カテコールアミ分泌(すなわち、機能性)腫瘍は、症例の約1 %−3%に起こる。
グロムス腫瘍は、神経堤組織から発生し、カテコールアミンを分泌することもできる副腎髄質と同様に、カテコールアミンを分泌する能力がある。副腎におけるグロムス腫瘍の新生物同等物は、褐色細胞腫であり、グロムス腫瘍は、副腎外褐色細胞腫と称されている。カテコールアミン分泌グロムス腫瘍は、不整脈、過度の発汗、頭痛、吐き気および蒼白を引き起こしうる。
グロムス腫瘍は、頭蓋底の種々の領域に発生しうる。中耳洞に限定する場合、グロムス鼓室と呼ばれる。頸静脈孔の領域に発生する場合、それらの広がりに無関係に、頸静脈小体と呼ばれる。頸の上部に発生し、頸静脈孔に向かって広がる場合、グロムス迷走神経(glomus vagale)と呼ばれる。頸動脈分岐点に発生する場合、頸動脈小体腫瘍と呼ばれる。他の既知のグロムス腫瘍の部位として、喉頭、眼窩、鼻および大動脈弓が挙げられる。
頸静脈小体腫瘍は、中耳の最も一般的な腫瘍である。これらの腫瘍は、非常に脈管性である傾向があり、外部頸動脈の分枝によって栄養を受ける。頸静脈小体腫瘍の症状として、脈動性耳鳴りを伴う難聴、目まいおよび時々の耳痛が挙げられる。患者は、中耳の閉塞によると思われる難聴になりうるが、腫瘍の塊からの神経損傷による難聴もありうる。嚥下、吐き気を催すこと(gagging)、肩こり、肩すくめおよび舌運動をコントロールする神経の脳神経麻痺はすべて、頸静脈小体腫瘍の症状の一部でありうる。鼓膜を調べる場合、赤/青色の脈動性塊が見られることが多い。症状は、発症時に潜行性である。腫瘍の位置および血管的性質のために、最も一般的な病状は拍動性耳鳴である。耳鳴は、鼓膜臍上の機械的衝撃に続発する場合がほとんどであると考えられている。他の一般的症状は、耳の膨満および(伝音性)難聴である。
カテコールアミン分泌グロムス腫瘍の現在の療法は、アルファおよびベータブロッカーの投与に先立つ照射および/または外科的切除である。頸静脈小体腫瘍の治療として、アルファおよびベータブロッカーの投与が挙げられる。塊が持続したとしてもX−線療法を用いて、症状を改善することができる。その血液供給をブロックする材料で腫瘍を閉塞することは、脳幹および小脳を圧迫しうる腫瘍の膨潤ならびに血液供給を喪失すると死亡する細胞からのカテコールアミンの放出を引き起こすという問題を伴うが、この手順も可能である。適切に位置する小さな腫瘍は、外科手術を行うことができる。頸静脈小体腫瘍に対する外科手術の合併症は、耳からの脳脊髄液の持続性の漏出および顔面運動、感覚または聴覚をコントロールする脳神経の1つの麻痺である。
外科手術が成功するとしても、頸静脈小体腫瘍は再発率が高く、複数の手術を必要とするかもしれないので、少々問題がある。外科的切除は、主として医原性脳神経欠損およびCSF漏出による罹患率のリスクを伴う。下部脳神経の不足による合併症の頻度のせいで、脳神経保護の欠損は、外科的介入にとっておそらく最も重大な難点である。放射線療法も、側頭骨の放射線骨壊死、脳壊死、下垂体−視床下部機能不全および二次性悪性腫瘍などの重篤な合併症を有する。他の術後合併症として、CSF漏出、吸引性症候群、髄膜炎、肺炎および創傷感染が挙げられる。
したがって、乳ガン、中枢神経系ガン、血液細胞ガン、胃腸ガン(結腸または直腸ガンなど)、皮膚ガンおよび前立腺ガンなどの様々なガンの有効な治療を処置するための有効な非外科切除的、非放射線療法的治療方法が必要である。
概要
本発明は、この必要性を満たし、様々なガンならびにガン性組織を治療するための有効な非外科的切除、非放射線療法的治療方法を提供する。したがって、本発明は、過形成性組織、嚢胞および新生物(腫瘍およびガンなど)などの異型組織の治療方法および異型組織、嚢胞および新生物の発生の予防方法またはそれらの退行もしくは寛解の誘発方法を包含する。特に、本発明は、患っている腺組織またはその近傍へのクロストリジウム毒素の局所投与による、良性およびガン性の乳腺嚢胞および新生物などの特定のガンの治療方法ならびに過形成および/または高張性、性腺組織の治療方法を包含する。
本発明の1つの具体例は、ガン細胞にボツリヌス神経毒を投与するステップを含むガンの治療方法である。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2 U/kg−約200 U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1 U/kg−約35 U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれ、好ましいボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素である。
本発明のより詳細な具体例は、ガンまたは前ガン性組織の近傍に約10-2 U/kg−約200 U/kgのA型ボツリヌス毒素を局所投与し、それによって過形成性、高張性、または新生物組織の大きさおよび/または活性を低減化させるステップを含むガンの治療方法である。
本発明のもう1つの具体例は、乳腺にボツリヌス神経毒を投与するステップを含む乳ガンの治療方法である。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2 U/kg−約200 U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1 U/kg−約35 U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれ、好ましいボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素である。乳ガンは、乳房腺管ガンである。
本発明のより詳細な具体例は、乳腺または前ガン性乳房組織の近傍に約10-2 U/kg−約200 U/kgのA型ボツリヌス毒素を局所投与し、それによって過形成性、高張性、または新生物性乳腺組織の大きさおよび/または活性を低減化させるステップを含む乳ガンの治療方法である。
本発明の第3の具体例は、中枢神経系の患っている領域にボツリヌス神経毒を投与するステップを含む中枢神経系ガンの治療方法である。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2 U/kg−約200 U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1 U/kg−約35 U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれ、好ましいボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素である。中枢神経系ガンは、神経芽腫である。
本発明のより詳細な具体例は、中枢神経系の患っている領域または前ガン性中枢神経系組織の近傍に約10-2 U/kg−約200 U/kgのA型ボツリヌス毒素を局所投与し、それによって過形成性、高張性、または新生物性中枢神経系組織の大きさおよび/または活性を低減化させるステップを含む中枢神経系ガンの治療方法である。
本発明の第4の具体例は、血液細胞にボツリヌス神経毒を投与するステップを含む血液細胞ガンの治療方法である。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2 U/kg−約200 U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1 U/kg−約35 U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれ、好ましいボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素である。血液細胞ガンは、白血病である。
本発明のより詳細な具体例は、血液細胞に約10-2 U/kg−約200 U/kgのA型ボツリヌス毒素を局所投与し、それによって過形成性、高張性、または新生物性血液細胞の大きさおよび/または活性を低減化させるステップを含む血液細胞障害の治療方法である。
本発明の第5の具体例は、結腸にボツリヌス神経毒を投与するステップを含む結腸ガンの治療方法である。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2 U/kg−約200 U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1 U/kg−約35 U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれ、好ましいボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素である。
本発明のより詳細な具体例は、結腸または前ガン性結腸組織の近傍に約10-2 U/kg−約200 U/kgのA型ボツリヌス毒素を局所投与し、それによって過形成性、高張性、または新生物性結腸組織の大きさおよび/または活性を低減化させるステップを含む結腸ガンの治療方法である。
本発明の第6の具体例は、直腸にボツリヌス神経毒を投与するステップを含む直腸ガンの治療方法である。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2 U/kg−約200 U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1 U/kg−約35 U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれ、好ましいボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素である。
本発明のより詳細な具体例は、直腸または前ガン性直腸組織の近傍に約10-2 U/kg−約200 U/kgのA型ボツリヌス毒素を局所投与し、それによって過形成性、高張性、または新生物性結腸組織の大きさおよび/または活性を低減化させるステップを含む直腸ガンの治療方法である。
本発明の第7の具体例は、皮膚にボツリヌス神経毒を投与するステップを含む皮膚ガンの治療方法である。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2 U/kg−約200 U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1 U/kg−約35 U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれ、好ましいボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素である。皮膚ガンは、黒色腫である。
本発明のより詳細な具体例は、皮膚または前ガン性皮膚組織の近傍に約10-2 U/kg−約200 U/kgのA型ボツリヌス毒素を局所投与し、それによって過形成性、高張性、または新生物性皮膚組織の大きさおよび/または活性を低減化させるステップを含む皮膚ガンの治療方法である。
本発明の第8の具体例は、前立腺にボツリヌス神経毒を投与するステップを含む前立腺ガンの治療方法である。同様の発明が、出願番号10/778,948、発明の名称「尿閉に関連する泌尿器および関連障害の治療のための神経毒療法の使用」である同時継続出願に開示される。好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-2 U/kg−約200 U/kgの量で投与する。より好ましくは、ボツリヌス毒素を約10-1 U/kg−約35 U/kgの量で投与する。ボツリヌス毒素は、A、B、C、D、E、FおよびG型ボツリヌス毒素から選ばれ、好ましいボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素である。
本発明のより詳細な具体例は、前立腺または前ガン性前立腺組織の近傍に約10-2 U/kg−約200 U/kgのA型ボツリヌス毒素を局所投与し、それによって過形成性、高張性、または新生物性前立腺組織の大きさおよび/または活性を低減化させるステップを含む前立腺ガンの治療方法である。
ボツリヌス毒素は修飾ボツリヌス毒素であることも可能であり、すなわち、天然のボツリヌス毒素と比べて、少なくとも1つのアミノ酸欠失、変更または置換を有することができる。したがって、ボツリヌス毒素は、組換え産生ボツリヌス毒素またはその誘導体もしくはフラグメントであることもできる。
以下の定義を本明細書において適用する:
用語「治療する」、「治療すること」または「治療」は、ガンなどの疾患、障害もしくは状態の低減化もしくは消散、または傷害もしくは損傷組織の治癒の促進を意味する。
用語「治療有効量」は、治療組織に重大な有害な副作用を引き起こすことなく、疾患、障害もしくは状態を治療するのに必要な、または疾患、障害もしくは状態を低減化もしくは予防するのに必要な薬剤(すなわち、ボツリヌス毒素などの有効医薬成分)のレベル、量または濃度を意味する。
「局所投与」は、標的組織の局所領域内へのボツリヌス毒素などの神経毒の直接注入を意味する。
発明の説明
本発明は、過形成性、高張性、嚢胞性および/または新生物性組織を、クロストリジウム毒素で処置することによって、過形成、高張、嚢胞性および/または新生物性状態を低減化または消散することができるという発見に基づく。治療される組織は、良性または悪性であってよく、過形成は高張状態を含む。したがって、本発明は、乳ガン、嚢胞性乳房疾患、肺ガン、腺ガン、卵巣ガン、口腔および 口腔咽頭ガン、膵臓嚢胞および膵臓ガン、前立腺ガン、腎臓ガン、胃腸管ガン、精巣ガンおよび嚢胞、リンパ節ガン、子宮内膜ガン、神経芽腫、黒色腫、結腸直腸ガン、白血病ならびにこのような臓器および腺の過形成性、異型、化生および異形成性前ガン性組織などの状態の治療に適用することができる。
さらに、分泌活性が1つ以上のボツリヌス毒素基質によって制御されるか、または影響を受ける過剰分泌細胞(過形成または高張)を、過形成または高張分泌組織の新生物への進展を予防するように、本発明方法によって治療することができる。標的組織において、ボツリヌス毒素のタンパク質分解軽鎖が内部移行する。
好ましい具体例において、本発明は、前ガン性乳房組織などの乳房疾患の治療方法である。本発明は、どのようなメカニズムにも限定されるものではないが、乳房嚢胞などの患っている組織へのクロストリジウム毒素(ボツリヌス毒素など)の局所投与が、アポクリン細胞を神経支配する刺激性コリン作動性線維における毒素の阻害作用または嚢胞細胞による毒素(または少なくとも毒素の軽鎖)の内部移行における嚢胞への毒素の直接作用のいずれかによる嚢胞の治療(すなわち、嚢胞および/またはアポクリン細胞過形成の大きさの縮小[または完全消失])をもたらすことを仮説として取り上げることができる。
したがって、本発明の好ましい具体例は、乳房嚢胞、硬化性腺症、乳頭腫、線維腺腫(過形成小葉)および閉塞性腺症などの前ガン性乳腺疾患の治療方法である。前ガン性とは、患っている乳房組織が過形成性、肥厚性または化生でありうるが、悪性ではない(すなわち、ガン性ではない)こと、および前ガン性組織の存在が乳ガンの発生のリスクを増大させることを意味する。
したがって、ボツリヌス毒素などのクロストリジウム毒素の局所投与によって、コリン作動性神経支配された標的組織を標的化することができる。局所投与は、神経毒が、標的組織(すなわち、前ガン性乳房組織)もしくは治療される局所組織領域内へ、あるいはその近傍に直接投与されることを意味する。局所投与は、患っている組織内への神経毒の直接注入を包含する。非ガン性(良性)、前ガン性、ガン性(悪性)過形成および/または高張分泌組織を本発明方法によって治療することができる。腫瘍の発生に先立つ結節性または広範性過形成を本発明方法によって治療することができる。
種々の前ガン性乳房組織を治療するために、特定の神経毒のボツリヌス毒素が劇的な改善効果を示して用いることができ、したがって、意義深く現在の外科的、化学療法および放射線療法による治療方法に取って代わることが見出されている。意義深く、ボツリヌス毒素の単回局所投与を用いて、首尾よく乳房疾患を治療することができる。
投与経路および投与するボツリヌス毒素の量は、治療される乳腺障害の種類および体格、体重、年齢、疾患の重篤度および治療に対する反応性などの患者によって異なる事項によって、広範に変更することができる。適切な投与経路および用量の決定方法は、主治医によって個別的に決定されるのが通常である。このような決定は、当業者には慣例業務である(たとえば、Harrison's Principles of Internal Medicine(1997)、Anthony Fauciら編、14版、McGraw Hill出版を参照)。
治療は、体循環に毒素が侵入するのを実質的に回避するように行う(すなわち、静脈内投与ではなく、皮下または筋肉内注入を用いる)。
投与に適した特定の用量は、上述した因子を考慮して、当業者によって容易に決定される。用量は、治療または除神経される腫瘍の大きさおよび毒素の市販品の大きさにも依存しうる。さらに、ヒトに適切な用量の評価は、他の非新生物性組織の有効な除神経に必要なボツリヌス菌の量の決定から推定することができる。したがって、注入されるA型ボツリヌス菌の量は、治療される乳房組織の量および活性レベルに比例する。乳房標的組織またはその近傍への神経毒の投与において、一般に、約0.01−2000単位/患者の体重kgのボツリヌス毒素(A型ボツリヌス毒素など)を投与して、効果的に毒素誘発性標的組織萎縮を達成することができる。約0.01 U/kg以下のボツリヌス毒素は、有意な治療効果をもたないが、それぞれ約2000 U/kgまたは35 U/kg以上のボツリヌス毒素BまたはAでは、特定のボツリヌス毒素の毒性用量に近づく。注入針を注意深く配置することおよび使用する神経毒の量を少なくすることが、重大な量のボツリヌス毒素が全身に循環するのを妨げる。より好ましい用量範囲は、約0.01 U/kg−約25 U/kgのたとえば、ボトックス(登録商標)として製剤されたボツリヌス毒素である。投与されるボツリヌス毒素の実際のU/kg量は、治療される過形成乳房組織の広がり(大きさ)および活性のレベルならびに選択された投与経路などの因子によって変わる。A型ボツリヌス毒素は、本発明方法で用いるのに好ましいボツリヌス毒素血清型である。
ボツリヌス毒素の作用の主要部分は、毒素が急速に結合し、アセチルコリンの放出を防止する神経筋接合部である。したがって、ボツリヌス毒素が、既知のコリン作動性シナプス前末梢運動ニューロンに対する結合親和性を有することは公知であるが、我々は、ボツリヌス毒素が種々の前ガン性乳房組織に結合し、転位して、そこで毒素がそのそれぞれの分泌血管膜ドッキングタンパク質におけるエンドプロテアーゼとしての既知の様式で作用することもできるということを見出している。特定の乳房組織に対するボツリヌス毒素の親和性が低いので、毒素の局所濃度を高くするために毒素を分泌または腺組織に注入するのが好ましい。したがって、本発明は、コリン作動性神経支配が小さいか、または無い前ガン性乳房組織の治療に適用することができる。
本発明方法を実施するために用いる神経毒が、A、B、C、D、E、FまたはG血清型ボツリヌス毒素の1つなどのボツリヌス毒素であるのが好ましい。ヒトにおける効力が高く、入手が容易であり、筋肉内注入による局所投与での骨格筋および平滑筋障害の治療のための使用が既知であるため、使用するボツリヌス毒素がA型ボツリヌス毒素であるのが好ましい。
前ガン性乳房組織を治療するための本発明の神経毒の投与経路は、選ばれた神経毒の溶解度特性および投与される神経毒の量などの基準に基づいて選ぶことができる。投与される神経毒の量は、治療される特定の障害、その重篤度および体格、体重、年齢および治療に対する反応性などのその他の患者によって変わる種々の事項によって広範に変わる。たとえば、影響を受けた前ガン性乳房組織の広がりは、注入された神経毒の体積に比例すると考えられ、一方、除神経の量は、大部分の用量範囲において、注入された神経毒の濃度に比例すると考えられる。適切な投与経路および用量の決定方法は、主治医によって個別的に決定されるのが通常である。このような決定は、当業者には慣例業務である(たとえば、Harrison's Principles of Internal Medicine(1997)、Anthony Fauciら編、14版、McGraw Hill出版を参照)。
本発明は、患者の前ガン性乳房組織に局所適用される場合に長期治療効果を有する神経毒の使用を含む。たとえば、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ブチリカムおよびクロストリジウム・ベラッチなどの毒素産生クロストリジウム菌のいずれかの種類によって製造される神経毒を本発明方法で用いるために使用または適合させることができる。前述したとおり、A型が最も好ましい血清型であるが、さらに、すべてのボツリヌス血清型A、B、C、D、E 、FおよびGを、本発明の実施において有利に用いることができる。本発明の実施は、ヒトにおいて標的組織の萎縮および27ヶ月以上の寛解を提供することができる。
透過性副腎髄質細胞からのカテコールアミン放出が、ボツリヌス毒素によって阻害しうることが知られている。さらに、透過性(たとえば、電気穿孔による)インスリン分泌細胞からのインスリン放出が、ボツリヌス毒素によって阻害しうることが知られている。インビトロの場合、ボツリヌス毒素に対する細胞表面受容体が無いために、これらの非神経細胞の細胞膜を、細胞の細胞質ゾルへのボツリヌス毒素の導入を助けるために透過性にすることができる。したがって、B型ボツリヌス毒素は、インスリン分泌細胞系HIT−15に存在するシナプトブレビンを切断することにより、インスリン分泌を明らかに阻害する。Boyd R.Sら、「ベータ細胞からのインスリン放出におけるボツリヌス神経毒Bの作用」、Mov Disord 10(3):376(1995)。ボツリヌス毒素の軽鎖を細胞内媒体に転位さえすれば、ボツリヌス毒素が、いずれかの分泌細胞型(すなわち、神経、腺、分泌)からのいずれかのベシクル媒介性エキソサイトーシスの開放を遮断しうることが発明者の主張である。たとえば、細胞内タンパク質SNAP−25は、神経および非神経分泌細胞の両方に広範に分布し、A型ボツリヌス毒素は、特異的基質がSNAP−25であるエンドペプチダーゼである。したがって、コリン作動性ニューロンは、ボツリヌス菌および破傷風菌の毒素に対する高親和性受容体(acceptor)を有する(そして、したがって、分泌化合物の小胞媒介性エキソサイトーシスの阻害に対して他のニューロンおよび他の細胞よりも感受性が高い)が、毒素濃度が上昇するので、非コリン性交換神経ニューロン、クロム親和性細胞および他の細胞型は、ボツリヌス毒素を吸収することができ、エキソサイトーシスの減少を示す。
したがって、本発明の実施によって、非コリン作動性神経線維ならびに非神経支配もしくは神経支配の程度が少ない分泌性新生物を、適切に高い濃度のボツリヌス毒素の使用によって処置して、分泌性新生物(すなわち、機能性(カテコールアミン分泌)傍神経節腫)およびクロム親和性細胞の治療的萎縮を引き起こすことができる。
正常な副腎髄質において、カテコールアミン分泌速度は、クロム親和性細胞を刺激する神経の活性によってコントロールされる。褐色細胞腫は神経支配されず、このような腫瘍からのカテコールアミンの放出は、神経コントロール下にないという一般的な確信とは対照的に、このような腫瘍がコリン作動性神経支配されるという証拠がある。たとえば、電子顕微鏡は、カテコールアミン小胞を含む細胞と接触する小さなシナプス小胞を有する神経を実証する。さらに、感情的不安、低血圧または過呼吸によって急に引き起こされた褐色細胞腫から循環へのカテコールアミンの突然の分泌は、この分泌における神経系の影響を指し示す。さらに、褐色細胞腫を有する患者を水平から立位に傾けることが、このような腫瘍を有さない被験者に見られない尿ノルエピネフリンの過剰な増加を引き起こし、このことが、(a)機械的影響(すなわち、カテコールアミンに富む腫瘍の圧縮)(b)カテコールアミンのアドレナリン作動系増加量が、褐色細胞腫を有する患者の神経末端に蓄積した交感神経系の反射性活性化および/または(c)存在する褐色細胞腫神経支配の活性化からの結果に影響を及ぼすことが明らかにされている。
さらに、本発明方法は、患者の機能改善を提供することができる。「患者の機能改善」は、痛みの軽減、床についている時間の減少、歩行の増加、健康な姿勢、生活様式の多様化および/または正常な筋肉の緊張によって可能になる回復などの因子によって測定される改善として定義することができる。改善された患者の機能は、改善された生活の質(QOL)と同義である。QOLは、たとえば、公知のSF−12またはSF−36健康調査得点手順を用いて評価することができる。SF−36は、身体機能、身体的問題による役割制限、社会生活機能、身体の痛み、一般的な心の健康、精神的問題による役割制限、活力および全体的健康感という8つの分野において患者の身体および精神的健康を評価する。得られた得点は、種々の一般集団および患者集団のために入手可能な公表された値と比較することができる。
上述したように、我々は、ヒト患者の前ガン性乳房組織への神経毒の局所投与によって驚くほど効果的で長期間持続する効果を達成することができることを見出している。その最も好ましい具体例において、本発明は、標的組織または標的組織の局所領域へのA型ボツリヌス毒素の直接注入によって実施される。神経腺接合部において、A型ボツリヌス毒素などのボツリヌス毒素の除神経効果が、著しく作用期間が長いこと、すなわち、3ヶ月に対して27ヶ月が報告されている。
本発明は、(a)細菌培養、毒素抽出、濃縮、保存、凍結乾燥および/または再構成によって獲得または加工された神経毒複合体ならびに純粋な神経毒;および(b)公知の化学的/生化学的アミノ酸修飾手順によるか、または公知の宿主細胞/組換えベクター技術の使用によって意図的に欠失、修飾または置換された1つ以上のアミノ酸またはアミノ酸配列を有する神経毒ならびにそのように作成された神経毒の誘導体またはフラグメントであり、クロム親和性および新生物細胞型に対する1つ以上の結合した標的化部分を有する神経毒を含む修飾または組換え神経毒;を包含する。
本発明に用いるためのボツリヌス毒素は、減圧下の容器内に凍結乾燥または真空乾燥体として貯蔵することができる。凍結乾燥する前に、ボツリヌス毒素を医薬的に許容しうる賦形剤、安定化剤および/またはアルブミンなどの担体と合わせることができる。凍結乾燥または真空乾燥した物質は、生理的食塩水または水で再構成することができる。
以下の実施例のそれぞれにおいて、投与されるボツリヌス毒素の特定の量は、主治医の判断において評価し、考慮される種々の因子に応じて変わり、実施例のそれぞれにおいて、わずかな量のボツリヌス毒素が、有意な副作用をともなわずに全身に入る。以下のキログラム当たりの注入されるボツリヌス毒素の単位(U/kg)は、患者の全体重当たりのkgである。たとえば、70 kgの患者に対する3U/kgは、210単位のボツリヌス毒素の注入を必要とする。
以下の実施例は、本発明を行うための当業者に特定の好ましい本発明方法を提供するものであり、発明者が本発明であるとみなすものの範囲を制限することを意図するものではない。
以下の実施例のそれぞれにおいて、投与されるボツリヌス毒素(ボトックス(登録商標)など)の特定の量は、主治医の判断において評価し、考慮される種々の因子に応じて変わり、実施例のそれぞれにおいて、わずかな量のボツリヌス毒素が、有意な悪影響をともなわずに全身に現れる可能性がある。
実施例1
前ガン性乳腺障害を治療するためのボツリヌス毒素の使用
1.嚢胞の治療
46歳の女性は、他の点では正常な乳房に慢性嚢胞性疾患を患っている。線維嚢胞性変化は、全体の大きさが直径1.2 cmであり、充実性の線維脂肪組織組織を含む多くの良性実体と様々な大きさの嚢胞との混合物として現れる。超音波および画像化を用いる検査により、嚢胞形成および微小石灰化が明らかである。組織学的検査により、アポクリン異型(過形成および化生の両方)が明らかであり、したがって、患者は、アポクリンガンまたは髄様ガンの発生のリスクがあると決定される。
ガンの診断において乳房細胞の細胞病理を検査するために、触診可能な乳房の微細針吸引(FNA)が、1930年から用いられている。定位微細針吸引ならびに超音波およびマンモグラフィー誘導微細針吸引は、触診可能でない病変にも用いられている。立体X線撮影法は、標準的マンモグラフィーを装置および圧迫プレートを用いて行うことができ、xおよびy座標に沿って病変の1mm以内まで微細針を正確に位置させることができる。超音波誘導は、病変が純粋に嚢胞性であるか、混合であるか、または充実性であるかどかの決定において非常に有用である。通常は、22ゲージ針が用いられる。FNAのために用いられる方法と同様の方法を用いて、ボツリヌス毒素を標的組織に注入する。したがって、注入のために、片手で握ることを可能にするような特別の取っ手付きまたは無しの注入器に針を結合することができる。皮膚を消毒液で拭く。乳房塊をつかみ、覆っている皮膚を技師に適した位置にぴんと引っ張り、もう一方の手で針を挿入する。針を塊に挿入し、病変に針をまっすぐに刺しながら、ボツリヌス毒素の溶液を入れた注入器のプランジャーを押し込む。別法として、U.S.特許番号6,306,423および6,312,708に記載されているように、治療効果を高めるために、徐放性インプラントを皮下挿入することができ、および/またはボツリヌス菌含有マイクロスフィアの懸濁液を注入することができる。
嚢胞塊に10単位−100単位のボトックス(登録商標)などのA型ボツリヌス毒素の局所投与を行う。投与後28日以内に、嚢胞は実質的に消失し(嚢胞の直径が少なくとも80%減少した)、次の2−24ヶ月はそのままの状態である。別法として、A型毒素と比べて異なる効力を反映するように調節した投与量で、B、C、D、E、FまたはG型ボツリヌス毒素を投与することができる。したがって、たとえば、B型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素の約50分の1の効力であることがわかっているので、500−5000単位のB型毒素を局所投与する。
2.硬化性腺症の治療
乳房痛の病状を有する59歳の閉経後女性を検査する。マンモグラフィーは、末端管小葉単位から生じ、特に着色がない臨床的に触診可能な直径1.3 cmの塊を含む増殖性病変を明らかにする。塊は境界が不鮮明であり、疼痛および圧痛もある。組織学的に、一群の小葉の正常な形態が、腺房および小葉内間質細胞の無秩序な増殖によって歪められる。10単位−100単位のボトックス(登録商標)などのA型ボツリヌス毒素の局所投与(注入)を行う。投与後28日以内に、塊は実質的に消失し(直径が少なくとも80%減少した)、次の2−24ヶ月はそのままの状態である。別法として、A型毒素と比べて異なる効力を反映するように調節した投与量で、B、C、D、E、FまたはG型ボツリヌス毒素を投与することができる。したがって、たとえば、B型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素の約50分の1の効力であることがわかっているので、500−5000単位のB型毒素を局所投与する。
3.乳管乳頭腫の治療
乳頭からの血液混入分泌の病歴がある50歳の女性を検査する。触診可能な塊は無いが、乳房の腺管上皮の良性新生物が明らかにされる。10単位−100単位のボトックス(登録商標)などのA型ボツリヌス毒素の局所投与(注入)を行う。投与後28日以内に、分泌は解消し、次の2−24ヶ月患者は、無症状のままの状態である。別法として、A型毒素と比べて異なる効力を反映するように調節した投与量で、B、C、D、E、FまたはG型ボツリヌス毒素を投与することができる。したがって、たとえば、B型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素の約50分の1の効力であることがわかっているので、500−5000単位のB型毒素を局所投与する。
4.線維腺腫の治療
36歳の女性は、乳房にしこりが見られる。臨床検査、画像化(マンモグラフィー)および微細針吸引細胞診断から、直径1.5 cmの充実性、移動性、境界鮮明、無痛、弾性の塊が明らかになる。病変が良性なので、患者は切除術の代わりにボツリヌス毒素の局所注入を提示され、それに対するインフォームド・コンセントが得られる。10単位−100単位のボトックス(登録商標)などのA型ボツリヌス毒素のしこりへの局所投与(注入)を行う。投与後28日以内に、塊は実質的に消失し(直径が少なくとも80%減少した)、次の2−24ヶ月はそのままの状態である。別法として、A型毒素と比べて異なる効力を反映するように調節した投与量で、B、C、D、E、FまたはG型ボツリヌス毒素を投与することができる。したがって、たとえば、B型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素の約50分の1の効力であることがわかっているので、500−5000単位のB型毒素を局所投与する。
5.閉塞性腺症の治療
カフェイン摂取歴(過去約10年間にわたって1日当たり4−6杯のコーヒー)がある54歳の女性は、基底部限局性の核および細胞質性頂端尖先をもつ、より高い柱状上皮細胞の単層による正常な内腔上皮層の変性または置換を示す個々の末端管小葉単位をもつ微小嚢胞形成の境界不鮮明な領域として決定される小葉の柱状変性を有する。10単位−100単位のボトックス(登録商標)などのA型ボツリヌス毒素のしこりへの局所投与(注入)を行う。投与後28日以内に、腺疾患は解消し、次の2−24ヶ月はそのままの状態である。別法として、A型毒素と比べて異なる効力を反映するように調節した投与量で、B、C、D、E、FまたはG型ボツリヌス毒素を投与することができる。したがって、たとえば、B型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素の約50分の1の効力であることがわかっているので、500−5000単位のB型毒素を局所投与する。
6.増殖性乳房疾患の治療
64歳の女性からの生検標本における組織診断から、正常な内腔上皮細胞および筋上皮細胞の正常二重層の上の細胞数の増加によって示される上皮過形成(異型をともなう増殖性のもの)が明らかになる。10単位−100単位のボトックス(登録商標)などのA型ボツリヌス毒素のしこりへの局所投与(注入)を行う。投与後28日以内に、生検および組織学的検査から、患者に異型が無くなっていることが決定され、次の2−24ヶ月はそのままの状態である。別法として、A型毒素と比べて異なる効力を反映するように調節した投与量で、B、C、D、E、FまたはG型ボツリヌス毒素を投与することができる。したがって、たとえば、B型ボツリヌス毒素は、A型ボツリヌス毒素の約50分の1の効力であることがわかっているので、500−5000単位のB型毒素を局所投与する。
実施例2
高張または過形成性組織のボツリヌス毒素による治療
高張または過形成標的組織への直接またはその近傍へのボツリヌス毒素の局所投与は、数種類の方法によって達成することできる。上述したように、乳房組織などの皮膚または皮下標的組織は、直接注入または毒素インプラントの設置によって治療することができる。内臓神経芽腫などの内臓部位は、容易に接近することもできる。たとえば、診断および治療目的の内視鏡検査が公知である。
(1)治療的膵臓内視鏡検査技術として、膵臓内視鏡切開術、構造拡張、ステント術、偽嚢胞排液法および膵臓―胆管系の視覚化および治療を可能にする内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)が挙げられる。膵臓療法に用いる内視鏡を、ボツリヌス毒素などの神経毒の髄増組織への直接注入に用いることができるように変更することができる。たとえば、U.S.特許番号5,674,205を参照。本発明の目的のために、必要に応じて、管内に内視鏡がとどまるのを可能にするために予め管減圧術を行って、中咽頭から胃、十二指腸および最終的に膵管を通って内視鏡を動かす。一端そのような位置に置くと、中空の針の尖端を内視鏡から膵臓組織内へ延ばし、針を通して神経毒を膵臓組織に注入することができる。
膵管が接近可能でないか、または減圧しないならば、神経毒を直接膵臓組織に経腹注入するために、画像化誘導(すなわち、超音波またはコンピュータ断層撮影)経皮針を用いることもできる。したがって、膵臓生検のための経皮針吸引は、公知技術であり、所望の毒素注入を達成するために吸引を逆行させることができる。したがって、1-500単位のボツリヌス毒素を膵臓の標的組織に局所投与することによって、膵島細胞腫または高張または過形成膵臓組織を治療することができる。新生物性または過形成肺、腸および卵巣標的組織を同様に治療することができる。
(2)下垂体
神経毒水溶液またはインプラントとしての正確な頭蓋内投与のために定位手順を用いて、過形成または視床下部または下垂体標的組織を治療することができる。頭蓋神経芽腫をこの方法で治療することもできる。したがって、ボツリヌス毒素の頭蓋内投与を以下のように行うことができる。
患者の予備的MRI走査を行って、前交連−後交連線の長さおよび外側骨性指標(external bony landmark)に対するその方向性を得ることができる。次いで、フレームのベースを前交連−後交連線の平面に対して位置を調整することができる。CT誘導を用い、脳室撮影法を補充することができる。2−mm CT切片において後交連を視覚化し、参照点として用いることができる。
使用した長針注入器に付随するか、または組み込んだ電極を通しての高および低頻度刺激の使用によって、標的組織局在化の生理学的実証を行うことができる。2 mm露出チップを供えた直径1.6 mmのサーミスタ電極を用いることができる(Radionics、Burlington、Massachusetts)。Radionics lesion generator(Radionics Radiofrequency Lesion Generator Model RFG3AV)を用い、電極高周波数刺激(75 Hz)により、0.5−1.0 Vにて前腕および手に知覚異常応答を引き出すことができる。低周波数(5 Hz)において、冒された肢における振戦の活性化または中断は、2−3 Vにて起こる。本発明方法では、病変を創成するために電極を用いない。標的組織局在化の確認に続いて、神経毒を注入し、それによって可逆的化学的視床下部切除を引き起こす。典型的な注入は、所望数の単位(すなわち、約0.01 ml−約0.1 mlの水または生理食塩水中の約0.1−約5単位のA型ボツリヌス毒素複合体)である。少ない注入容量を用いて、標的からの毒素の拡散を最小化することができる。通常は、視床下部放出因子または下垂体ホルモン放出阻害作用が約2−4ヶ月で徐々に消失することが予測される。したがって、別の神経毒フォーマットである、ポリマーインプラントに組み入れた神経毒を用いて、長期にわたって(すなわち、約1年−約6年)所望の治療量の毒素の徐放、持続性放出を提供することができ、それによって毒素注入を繰り返す必要がなくなる。
末端肥大症の治療のために、弓状核などの種々の頭蓋内標的への神経毒の定位誘導注入のために数種の方法を用いることができる。したがって、弓状核への注入のための電気生理学的記録および注入誘導に加えて、外科計画のための三次元(3D)T1強調画像およびANの直接視覚化のための多断面T2強調画像による定位磁気共鳴(MRI)法を用いることができる。たとえば、Bejjani、B.P.ら、「三次元定位時期共鳴画像化および電気生理学的誘導を用いるパーキンソン病のための両側性視床下部刺激」、J Neurosurg 92(4);615− 25:2000を参照。患者の前交連−後交連線および脳地図を基準にして、弓状核の中心の座標を決定することができる。
数種の軌道を同時に平衡して用いる電気生理学的監視を行って、機能的標的を正確に決定することができる。MRI画像化を用いることによって予め決定された標的のための中央軌道を、神経毒注入のために、選ぶことができる。外科合併症が無いことが予測される。
コンピュータ支援の地図に基づいた機能的脳神経外科手術手順を用いて、正確に、所望の神経毒を注入するか、または神経毒徐放性インプラントを埋め込むことができる。このような手順により、視床下部構造の三次元表示および実時間操作が可能になる。したがって、3つの直交する方向すべてにおける相互に予め登録された多重脳地図を用いる神経外科計画が実行でき、それが神経毒注入または埋め込みのための標的明確化の正確性を増大すること、管の数を減らすことにより外科手順の時間を短くすることを可能にし、より高度な軌道の計画を促進する。たとえば、Nowinski W.L.ら、「多重脳地図データベースの使用によって向上されたコンピュータ支援定位機能脳神経外科手術」、IEEE Trans Med Imaging 19(1);62−69:2000を参照。したがって、下垂体標的組織への1−500単位のボツリヌス毒素の局所投与によって、下垂体腫瘍または高張もしくは過形成下垂体組織を治療することができる。
実施例3
様々なガンの治療のためのボツリヌス毒素の使用
序論
様々なガンにおけるボツリヌス毒素の抗ガン効果を決定するために実験を行った。Oncotech EDR(登録商標)アッセイ(Oncotech、Inc.、Tustin、California)を用いて実験を行った。このアッセイを用いて、ガン細胞の分裂および成長を停止するための作用剤の測定された能力(有るとすれば)によって決定される、作用剤の抗ガン活性を評価することができる。したがって、Oncotech EDR(登録商標)アッセイは、試験されている作用剤に対する種々のガン細胞系のインビトロ耐性を測定するのに用いるインビトロ薬物耐性アッセイである。
Oncotech EDR(登録商標)アッセイは、ガン細胞を利用するものであり、培養中にガン細胞を特定の潜在力のあるガン化学療法剤(すなわち、作用剤)に曝す。培養期間中に、放射性チミジンを加える。トリチウム標識したチミジンは、ガン細胞膜を容易に通過し、チミジル酸キナーゼおよびヌクレオシドジホスフェートキナーゼによって段階的に3H−dTMPに変換される。次いで、細胞周期のS期中にトリチウム標識したチミジンをDNAに組み込む。抗ガン剤によって影響を受けた細胞は分裂しないか、または非常にゆっくり分裂し、したがって、組み込まれる放射性チミジンの量は少ない。対照的に、処置後に分裂および放射性チミジンの取り込みを継続する細胞は、その薬物に対して耐性がある。サンプル中の放射能の量を測定することによって、アッセイは、特定の作用剤に対するガンの相対的耐性を決定することができる。次いで、実験データにアルゴリズムを適用して、患者がアッセイにおいて試験した作用剤に反応する可能性を決定する。
この実験において、9つの異なるガン細胞型を用いて、各9つの異なるガン細胞型の細胞分裂におけるボツリヌス毒素の作用を明らかにした。これらの細胞系は、6つの異なるガン型である、神経芽腫、急性リンパ芽球性白血病、前立腺ガン、乳ガン、皮膚ガンおよび結腸ガンを表す。この実験は、ボツリヌス毒素が、多くの異なるガン細胞型の細胞分裂を阻害することができることを決定した。
方法および材料
1.ガン細胞系
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、P.O.Box 1549、Manassas、VA 20108)から入手した8つの異なるガン細胞系およびカリフォルニア・ユニバーシティ(Los Angeles)から入手した1つの細胞系をこの実験で用いた。9つのガン細胞型実験は、1)IMR−32、13月齢の白人男性に由来する腹部腫瘤からの神経芽腫細胞系;2)ジャーカット、14歳の男性の末梢血に由来するT細胞白血病細胞系;3)LNCAP、左上部鎖骨リンパ節に転移する前立腺ガン細胞系;4)SK−CO−1、65歳の白人男性に由来する腹水に転移する直腸結腸腺ガン細胞系;5)SK−N−MC、14歳の白人女性に由来する上部眼窩部に転移する神経芽腫細胞系;6)SK−N−SH、4歳の女性に由来する骨髄に転移する神経芽腫細胞系;7)T−47D、54歳の女性に由来する胸水に転移する乳房腺管ガン細胞系;8)ZR−75、63歳の白人女性に由来する腹水に転移する乳房腺管ガン細胞系;および9)M14、カリフォルニア・ユニバーシティ(Los Angeles)によって提供された無色素性黒色腫細胞系であった。
2.被検物質
21または22ゲージの注射器を用いて、0.9%生鮮滅菌生理食塩水0.475 mLで100 Uを再構成してボトックス(登録商標)の希釈標準溶液(210 U/mL)を調製し、穏やかに回旋させ、冷蔵庫で4時間まで2℃−8℃にて貯蔵した。ボトックス(登録商標)は常に再構成から4時間以内に用いた。7つのプラスブミン(plasbumin)(ロット# 684X022のバイアルを用いた。プラスブミン(ヒトアルブミン)の各バイアルは、25%アルブミン、USP、50 mLを含むものであった。各濃度におけるボトックス(登録商標)中に存在するアルブミンの量に対応するようにアルブミンの希釈標準溶液(1.05 mg/mL)を調製した。貯蔵濃度のプラスブミン(12.5 g/50 mLまたは0.25 g/mL)を0.9%生鮮滅菌生理食塩水で1.05 mg/mLに希釈した。
3.被検物質滴定
およそのIC50を決定するために試験した濃度は、ボトックス(登録商標)0.001 U/mL−20 U/mLおよびアルブミン0.000005 mg/mL−0.1 mg/mLの範囲であった。調製した希釈標準溶液を、ボトックス(登録商標)20 U/mLおよびアルブミン0.1 mg/mLを除いて(ここでは、1:10希釈物(0.9 mLの培地+細胞中、100 μLの化合物)を用いた)、ウエル内で1:21(1 mlの培地+細胞中、50 μLの薬物)に希釈した。
4.細胞系標本
Oncotech標準操作手順にしたがってEDRアッセイを行った。DMSO中で凍結した細胞系を、生存率を維持するやり方で解凍した。ボトックス(登録商標)またはアルブミンの存在下で軟寒天上にプレーティングする前に、トリパンブルー排除法を用いて生存率について腫瘍細胞を評価し、サイトスピン標本を用いて腫瘍細胞密度を評価した。約2−1O x 104細胞/ウエルが得られるように、EDR組織培養培地中で生存細胞の希釈物を調製した。
5.コントロール
ポジティブコントロールとしてシスプラチンの細胞毒性用量を2回分析し、リファレンスネガティブコントロールとして非処置ウエルを用いた。ポジティブコントロールからの毎分のカウント(CPM)が非処置コントロールの30%以上ならば、分析を却下した。非処置の半分細胞コントロールウエルには、オーバープレーティングに対するコントロールのために半分の細胞密度でプレーティングした。半分細胞コントロールの成長パーセントが非処置ネガティブコントロールの成長の85%以上ならば、そのプレートを過成長として分類し、分析に含めなかった。各作用剤および各コントロールの複製物を調製し、計算のために値を平均した。
6.EDR(登録商標)アッセイ
24ウエルのクラスタープレートにて腫瘍細胞を培養した。最初に、0.4%の精製低融点アガロースを含む0.5 mLのEDR組織培養培地を各ウエルにピペット分注することによって、培養プレートの各ウエル中の寒天の底層を作成した。硬化のために、アガロースを簡単に固めてもよい。次に、ボトックス(登録商標)またはアルブミンの適当な濃度の希釈標準溶液21倍(50 μl)を各ウエルに加えた(21倍の100 μlを各ウエルに加える、20 U/mL ボトックス(登録商標)および0.1 mg/mLのアルブミンを除く)。0.2%アガロースを含むEDR組織培養培地に、セクション2にしたがって調製した腫瘍細胞を懸濁した。細胞懸濁液を混合し、0.2%アガロースを含むEDR組織培養培地に懸濁した腫瘍細胞のアリコート0.5 mlを各ウエルの底層に加え、アガロースを固めるために4℃にてプレートを静置した。次いで、37℃、5% CO2に設定したインキュベーターに、プレートを配置した。プレートを72時間インキュベートした後、5.0 μCiの3H−チミジンを含むEDR組織培養培地100 μlを各ウエルに加えた。次いで、プレートをインキュベーターに戻し、さらに48時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、各ウエルに脱イオン水0.5 mlを加えることによって腫瘍細胞膜を破壊し、95℃にて加熱した。Brandel自動細胞ハーベスターを用いて、Reeve Angel 934AH濾紙上に細胞DNAを集めた。濾紙を入れた液体シンチレーションバイアルに、Cytoscintシンチレーション液を加え、バイアルのフタを堅く閉めた。次いで、Beckman LS−6500シンチレーションカウンターでバイアルを分析し、3Hについて毎分のカウント(CPM)を記録した。
7.結果の解釈
各処置サンプルであるシスプラチンの細胞毒性用量(2OX CP)とともにインキュベートしたウエルおよび2つの非処置コントロールサンプルについて、トリチウム標識チミジンのカウントを複製ウエルに対して記録した。処置サンプルからの補正平均カウントを、非処置コントロールサンプルからの補正平均カウントで割ることによって、阻害パーセントを計算した。いくつかの細胞系について、2つのネガティブコントロールを分析した。第2のコントロールが第1のコントロールの10%以下である場合、第2のコントロールを用いて阻害パーセントを計算した。
8.データ分析
マイクロソフト・エクセル2000(9.0.2720)を用いて、データから平均および標準偏差を計算した。機能「=平均(...)」を用いて平均を計算し、「=標準偏差(...)」を用いて、標準偏差を計算し、「=T検定(...)」を用いて等分散を仮定した2標本両側t検定を計算した。
結果
滴定分析
9つのガン細胞系において、適切なIC50を決定するために0.001 U/mL−20 U/mLの濃度範囲にわたってボトックス(登録商標)を試験した。ボトックス(登録商標)の単位濃度における変化を図1に示す。
この実験は、異なるボツリヌス毒素濃度により、少なくとも9つのガン細胞系において、細胞分裂を阻害することができることを明らかにした。特に、腹部組織に転移した乳房腺管ガン細胞、肺組織に転移した乳房腺管ガン細胞および骨髄に転移した神経芽腫が、特定のボツリヌス毒素濃度において、それぞれ28%、25%および20%のガン細胞増殖の阻害を示した。
図1に示すように、ボトックスは、9つの異なるガン細胞系すべてにおいて細胞分裂を阻害した。用量反応分析から、0.1 U/mlのボトックスにおいて、最も頻繁に最大阻害が起こることが明らかになった。さらに、0.1 U/mlのボトックスは、試験したすべてのガン細胞型において反応を誘発した用量である。
図2に示すように、ボトックスは、腹部組織に転移した乳房腺管ガン細胞において細胞分裂を阻害した。ボトックスに対する一次応答は、0.1 U/mlにおいて起こり、27.7%の細胞分裂の阻害がもたらされた。5 U/mlのボトックスにおいて二次応答が起こり、15.9%の細胞分裂の阻害がもたらされた
図3に示すように、ボトックスは、肺組織に転移した乳房腺管ガン細胞において細胞分裂を阻害した。25.3%の阻害ピークが0.1 U/mlのボトックスにおいて起こった。
図4に示すように、ボトックスは、骨髄に転移した神経芽腫において細胞分裂を阻害した。ボトックスは、試験したすべての用量において細胞分裂を阻害した。20.4%および19.6%阻害の2つのピーク応答は、それぞれ1および0.01 U/mlのボトックスにおいて起こった。
図5に示すように、ボトックスは、末梢血に由来するT細胞白血病において細胞分裂を阻害した。17.9%のピーク阻害は、2.5 U/mlのボトックスにおいて起こり、ボトックスの濃度減少にともなって、効果は用量依存性で減少した。
図6に示すように、ボトックスは、腹部組織に由来する神経芽腫細胞において細胞分裂を阻害した。ボトックスは、試験したすべての濃度において細胞分裂を阻害し、ピーク阻害は、0.001 U/mlにおける15.0%であった。
図7に示すように、ボトックスは、眼窩上部に転移した神経芽腫細胞において細胞分裂を阻害した。最大阻害である14.7%は、0.1 U/mlのボトックスにおいて見られた。
図8に示すように、ボトックスは、腹部組織に転移した直腸結腸ガン細胞の細胞分裂の阻害において有効であった。0.1 U/mlのボトックスにおいて12.4%の単一の阻害ピークがあった。
図9に示すように、ボトックスは、無色素性黒色腫において細胞分裂を阻害した。9.8%の阻害ピークが、1 U/mlのボトックスにおいて起こり、その後は、ボトックスの濃度減少にともなって、効果は用量依存性で減少した。
図10に示すように、ボトックスは、左鎖骨リンパ節に転移した前立腺細胞の細胞分裂の阻害において有効であった。0.1 U/mlのボトックスにおいて約6.1の単一の阻害ピークがあった。
結論
この実験では、Oncotech EDR(登録商標)アッセイを用いて、9つの異なるガン細胞系におけるボトックス(登録商標)の効果を比較した。ボトックス(登録商標)の存在下で軟寒天にプレーティングする前に、生存率および細胞密度について腫瘍細胞を評価した。細胞を72時間インキュベートし、トリチウム化チミジンを加え、次いで、さらに48時間インキュベートした後、細胞を収集し、トリチウム化チミジンの組み込みを定量した。ボトックス(登録商標)処置ウエルを同じ数の培地処置コントロール細胞と比較することにより成長阻害パーセントを計算した。この実験により、種々の濃度における阻害ならびに0.1 U/mlのボトックスにおいて最も頻繁に阻害ピークが起こることが明らかになった。最高レベルの阻害は、2つの乳房腺管ガン細胞において起こり、細胞分裂が28%および25%阻害された。9つのガン細胞系すべてについてボトックス(登録商標)用量反応を再検討することにより、個々の細胞系が、ボトックス(登録商標)に対する異なる感受性を示すことが明らかになり、28%もの成長阻害パーセントが起こった。
本明細書に開示する本発明方法は、以下に挙げるような多くの利点を有する:
(1)本発明は、乳腺ガン、中枢神経系ガン、血液細胞ガン、胃腸ガン(結腸または直腸ガンなど)、皮膚ガンおよび前立腺ガンなどの様々なガンの有効な治療のための不必要な外科手術を回避する;
(2)本発明にしたがって、ボツリヌス毒素などの神経毒を直接局所適用することによって全身性薬物効果を回避することができる;
(3)本明細書に記載するように、本発明の改善効果は、ボツリヌス毒素などの神経毒の単回局所適用から2年間またはそれ以上持続しうる。
本発明を特定の好ましい方法に関して詳細に説明してきたが、本発明の範囲に属する、その他の具体例、バージョンおよび変更が可能である。たとえば、本発明方法において、多種類の神経毒を有効に用いることができる。さらに、本発明は、2つまたはそれ以上のボツリヌス毒素などの2つまたはそれ以上の神経毒を同時または連続的に投与する局所投与法を包含する。たとえば、臨床応答が喪失するか、または抗体発生が中和されるまでA型ボツリヌス毒素を投与し、次いで、E型ボツリヌス毒素を投与することができる。別法として、所望の治療結果の開始および持続をコントロールするために、いずれかの2つまたはそれ以上のA−G血清型ボツリヌス菌を組み合わせて、局所投与することができる。さらに、ボツリヌス毒素などの神経毒がその治療効果を発揮する前の除神経の増加またはより急速な開始などの補助効果を確定するために、神経毒の投与前、同時または後に、非神経毒化合物を投与することができる。
本発明は、その範囲に、ボツリヌス毒素などの神経毒の局所投与によるガンの治療用医薬の製造におけるボツリヌス毒素などの神経毒の使用も包含する。
したがって、請求項の精神と範囲は、前述の好ましい具体例の記載に限定されるべきではない。
図1は、9種類の異なるガン細胞系または細胞型におけるA型ボツリヌス毒素(ボトックス)のインビトロ効果を図解する。図1のX軸は、9種類の異なるガン細胞型に適用したボトックス濃度(ユニット/ミリリットル)を表す。図1のY軸は、変化するX軸の濃度のボトックスを適用された9種類の異なるガン細胞型に対する細胞分裂の阻害%を表す。以下の図2−10は、図1に示されるものをより明確に説明するための図1に示す9種類の異なるガン細胞型のそれぞれに対応する9つの分離したグラフである。 図2は、腹部組織に転移した乳房腺管ガン細胞(ZR−75細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。 図3は、肺組織に転移した乳房腺管ガン細胞(T−47D細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。 図4は、骨髄に転移した神経芽腫ガン細胞(SK−N−SH細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。 図5は、T細胞白血病ガン細胞(ジャーカット細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。 図6は、腹部組織に転移した神経芽腫ガン細胞(IMR−32細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。 図7は、眼窩上部に転移した神経芽腫ガン細胞(SK−N−MC細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。 図8は、直腸結腸ガン細胞(SKCO−1細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。 図9は、無色素性黒色腫ガン細胞(M14細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。 図10は、前立腺ガン細胞(LNCAP細胞系)におけるA型ボツリヌス毒素のインビトロ効果を示す。X軸は、ボトックス濃度(U/ml)を表し、Y軸は、細胞分裂の阻害%を表す。

Claims (23)

  1. 中枢神経系の患っている領域へのA型ボツリヌス菌神経毒の投与により、中枢神経系障害を治療する、中枢神経系ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  2. 10−2 U/kg−200 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項1に記載の使用。
  3. 10−1 U/kg−35 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項1に記載の使用。
  4. 中枢神経系ガンが神経芽腫である請求項1に記載の使用。
  5. 中枢神経系の患っている領域または前ガン性中枢神経系組織の近傍への10−2 U/kg−200 U/kgの量のA型ボツリヌス毒素の局所投与により、過形成性、高張性または新生物性中枢神経系組織の大きさおよび/または活性の減少をひきおこす、中枢神経系ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  6. 血液細胞へのA型ボツリヌス菌神経毒の投与により、血液細胞ガンを治療する、血液細胞ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  7. 10−2 U/kg−200 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項6に記載の使用。
  8. 10−1 U/kg−35 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項6に記載の使用。
  9. 血液細胞ガンが白血病である請求項6に記載の使用。
  10. 血液細胞への10−2 U/kg−200 U/kgの量のA型ボツリヌス毒素の局所投与により、過形成性、高張性または新生物性血液細胞の大きさおよび/または活性の減少をひきおこす、血液細胞障害の治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  11. 結腸へのA型ボツリヌス菌神経毒の投与により、結腸ガンを治療する、結腸ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  12. 10−2 U/kg−200 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項11に記載の使用。
  13. 10−1 U/kg−35 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項11に記載の使用。
  14. 結腸または前ガン性結腸組織の近傍への10−2 U/kg−200 U/kgの量のA型ボツリヌス毒素の局所投与により、過形成性、高張性または新生物性結腸組織の大きさおよび/または活性の減少をひきおこす、結腸ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  15. 直腸へのA型ボツリヌス菌神経毒の投与により、直腸ガンを治療する、直腸ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  16. 10−2 U/kg−200 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項15に記載の使用。
  17. 10−1 U/kg−35 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項15に記載の使用。
  18. 直腸または前ガン性直腸組織の近傍への10−2 U/kg−200 U/kgの量のA型ボツリヌス毒素の局所投与により、過形成性、高張性または新生物性直腸組織の大きさおよび/または活性の減少をひきおこす、直腸ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  19. 皮膚へのA型ボツリヌス菌神経毒の投与により、皮膚ガンを治療する、皮膚ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
  20. 10−2 U/kg−200 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項19に記載の使用。
  21. 10−1 U/kg−35 U/kgの量でA型ボツリヌス毒素を投与する請求項19に記載の使用。
  22. 皮膚ガンが黒色腫である請求項19に記載の使用。
  23. 皮膚または前ガン性皮膚組織の近傍への10−2 U/kg−200 U/kgの量のA型ボツリヌス毒素の局所投与により、過形成性、高張性または新生物性皮膚組織の大きさおよび/または活性の減少をひきおこす、皮膚ガンの治療用医薬の製造におけるA型ボツリヌス菌神経毒の使用。
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