JP4887148B2 - 第VIIIa因子様活性を示す第IXa因子特異抗体 - Google Patents

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Description

(技術分野)
本発明は、第IX因子/第IXa因子に結合可能で第IXa因子(FIXa)の凝血促進活性を活性化することが可能なリガンド、それらリガンドの誘導体、そのようなリガンドを含む薬学的組成物、そのようなリガンドの投与することを含み血液凝固疾患を患う患者を治療する方法、タンパク質である特定のリガンドをコードする核酸、およびそのようなリガンドを発現する細胞に関する。
(背景技術)
正常な止血過程における鍵となる事象の一つに、第X因子(FX)不活型前駆体の酵素活性型FXaへの変換、それに続くプロトロンビンの活性化プロセスおよび凝血塊の形成がある。インビボでのFX活性化は、組織因子/第VIIa因子経路から始まる。組織因子/第VIIa因子複合体は、組織因子経路の抑制物質によって容易に抑制される。引き続いて内在性凝固経路を介してFXの主要部分の活性化が起こる。それには内在性第X因子を活性化する複合体の形成が欠かせない。この複合体は、Ca2+イオンの存在下でリン脂質表面に結合した第IXa因子(FIXa)と第VIIIa因子(FVIIIa)との凝固因子から成る。その内在性の第X因子を活性化するこの複合体は、安定的な凝血塊の形成を可能にするレベルのFXaを生じさせる。
FVIIIaは、第IXa因子(FIXa)のアクチベータとして機能し、FXaの形成速度を約200000倍も上げる(非特許文献1)。FXIIIaがFIXaのFXに対する触媒活性を増大させる厳密な機序は、既に知られている。自然に生じる変異体および部位特異的突然変異、さらにプロトロンビナーゼ複合体のような補因子/酵素複合体の解析から、FVIIIaとFIXaとの間に少なくとも二個の接触領域が存在することが示唆された。そのいずれの領域とも、FIXaの酵素活性を増大するのに重要な役割を担う。FVIIIは、内在性第X因子を活性化する複合体内において三つの機能を持つと一般的に考えられている。即ち、(i)FVIIIが、FXに対するプロテアーゼ活性を増大したFIXaの高次構造を安定化し、(ii)FVIIIaが、インビボで凝血促進性リン脂質表面を提供する活性化血小板上でのFIXa受容体として機能し、(iii)最近のデータが示すところではFVIIIaが、FX内の開裂部位をFIXaの活性部位に合わせる。
止血におけるFVIIIの重要な役割は、X染色体に関連した劣性の重篤な出血性疾患であって血液凝固第VIII因子活性の欠如を特徴とする血友病Aで明らかになっている。血友病Aの患者は、血漿由来または組換え体のFVIIIの静脈内注射によるFVIII投与によって治療を受ける。そのような治療法は有効ではあるが、いくつかの欠点を有する。第一に、FVIIIの半減期が比較的短いために、一週間に2〜3回、高用量のFVIIIを投与する必要がある。第二に、FVIIIの製造コストが極めて高く、その結果、主として先進工業国でしか入手することができない。最後に、重篤な患者のおよそ30%において、FVIII活性を抑制する抗体が出現し(「インヒビタ−をもつ血友病患者」または単に「インヒビタ−をもつ患者」と呼ばれる)、そのことは重篤で生命を脅かす合併症である。
FVIIIが、止血時に果たす鍵となるその役割を、血液凝固疾患患者に投薬したときの前述の短所に結び付けて鑑みると、FVIIIと同様な活性を持つが、その限界をいくつか克服した化合物が強く求められている。
van Dieijenら J. Biol. Chem.(1981)256: 3433−3442
(要旨)
本発明は、血液凝固疾患(たとえば血友病および出血性体質)の治療において第VIIIa因子の代替品として機能するリガンドの一部を提供する。従って、それらのリガンドは第IXa因子に結合して第IXa因子の凝血促進活性を刺激することができる。あるリガンドでは、第VIII因子を抑制しない抗体が第IXa因子の凝血促進活性を打ち消さずに、第IXa因子に結合可能である。以下に述べるある特定のリガンドグループが提供される。即ち、(i)第IX因子/第IXa因子に結合してFIXaの凝血促進活性を上昇させるグループ、および(ii)配列番号:1〜8に記載される少なくとも一種のアミノ酸配列を含むグループ。このほかのリガンドは、それらリガンドの誘導体である。いくつかのリガンドは、配列番号:1〜8に記載された少なくとも一種のアミノ酸配列を含み、第IX/IXa因子結合性の対照抗体の結合を競合的に抑制する抗体である。従って、ある抗体は配列番号:1〜8に記載される少なくとも一種のアミノ酸配列を含み、FIXaの凝血促進活性を上昇させる。
そのようなリガンドを発現する細胞およびそれらリガンドをコードする核酸も本発明において提供され、さらにそのようなリガンドの製法およびそれらの細胞または核酸の使用法も提供される。
血友病Aおよび出血性体質のような血液凝固疾患(たとえばヒトにおいて)の治療用の薬学的組成物も本発明で述べられる。ある薬学的組成物はたとえば、本発明で開示される一種またはそれ以上のリガンドと薬学的に受容可能なキャリアおよび/または希釈剤とを含む。
(詳細な記載)
(I. 定義)
本明細書に記載の第VIII因子は、当該技術における一般的な意味を持ち、単独の遺伝子産物から生じる種々のポリペプチド(たとえばAndersson et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 2979−2983, May 1986; Gitschier, J. et al. (1984) Nature 312, 326−330; Wood, W. I. etal. (1984) Nature 312, 330−337; Vehar, G. A. et al. (1984) Nature 312, 337−342; およびToole, J. et al. (1984) Nature 312, 342−347参照)を指し、血漿から得られるもの、あるいは合成または組換えDNA技法を用いて製造されるものである。第VIII因子は自然には、全長タンパク質およびその開裂によって形成された短い形など、いくつかの形態で存在している。全長第VIII因子については、たとえば米国特許第5633150号および同第4757006号に記載されている。第VIII因子のmRNAは、19アミノ酸長のシグナルペプチドを含む2351個のアミノ酸から成る前駆体タンパク質をコードし、成熟型の第VIII因子タンパク質は従って2332アミノ酸長を持つ。そのアミノ酸配列は、三組のAドメイン、単一のBドメインと二組のCドメインとからなる、A1 : A2 : B : A3 : C1 : C2の配列順のドメイン構造を持つことが予測された。血液凝固過程でBドメインは、その分子へのトロンビン作用によって取り除かれる。組換え第VIII因子を含有し、市販されている治療用製剤の例としては、HEMOFIL M(登録商標)、ADVATE(登録商標)およびRECOMBINATE(登録商標) (Baxter Healthcare Corporation, Deerfield, III., U.S.A.から入手可)、ならびにKOGENATE(Bayer, North Carolinaから入手可)の商品名で販売されているものが挙げられる。
第VIII因子という用語は、凝血促進活性を保持していて、置換、付加または欠失を伴うタンパク質を含めたその変異型も含むものである。この第VIII因子という用語の中に含まれるある分子では、全長第VIII因子からひとつのドメインが失われている。たとえばBドメインが失われた第VIII因子(r−VIII SQ)は、Wyeth社、マサシューセッツ州、によって製造されている(たとえば、Berntorp, E. (1997) Thrombosis and Haemostasis 78, 256−260参照;さらに欧州特許出願公開第0506757号も参照)。この特別なタンパク質は、90kDaの重鎖(A1:A2のドメイン)と80kDaの軽鎖(A3:C1:C2のドメイン)とから成り、両鎖はリンカーペプチドで連結されている。第VIII因子という用語は、第VIII因子活性を持つ天然に生じる第VIII因子と本質的に同一の配列を持つ分子種を含むものである。
本明細書に記載の第IX因子は、当該技術における一般的な意味を待ち、自然に生じる形態のもの、および第IX/IXa因子活性を保持し合成、組換えまたはそのほかの手段で製造されるその変異体も含むものである。ヒト第IX因子をコードするcDNAは、種々のグループが記載(たとえば、Choo et al., Nature 299: 178−180 (1982); Fair et al., Blood 64: 194−204 (1984); およびKurachi et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 79: 6461−6464 (1982)を参照)してきた。組換えDNA技法による第IX因子の製法は、米国特許第4770999号中に記載されている。この用語は、第X因子活性化能を保持する天然に生じる第IX因子に置換、付加または欠失を伴うタンパク質も含めるものである。たとえば、置換基を持つ第IX因子タンパク質は、米国特許第6599724号中に記載されている。この用語には、第IXaαおよび第IXaβなどプロセシングを受けた種々の形態も含めることが可能である。第IX因子の概略については、Limentani, S. A., et al., ”The Biochemistry of Factor IX”, in Hemostasis and Thrombosis: Basic Principle and Clinical Practice, 3rd ed. (Colman, R.W., et al., Eds) dhap. 5., J.B. Lippincott Co., Philadelphia, 1994 を参照のこと。
本明細書に記載の凝血促進活性は、当該技術における一般的な意味を持ち、凝血塊形成を促進する活性を一般的に指す。この活性は、血液試料を用いるかあるいは当該技術で既知のほかのアッセイ(たとえば、本明細書の実施例中に記載されるアッセイを参照)を用いてモニタリングすることが可能である。本発明において開示される抗体は、それらが第IXa因子と相互作用することが可能であって、第X因子を第Xa因子に変換する第IXa因子の反応速度を上げるという凝血促進活性を有する。凝血促進活性の上昇は、本明細書の実施例中の記載にあるようなアッセイを用いて計測することが可能である。活性上昇に関するアッセイは、対照あるいはベースラインレベル(たとえば、第VIII因子欠乏性血友病患者からの試料)に対して一般的に比較して行われる。
本明細書に記載の「抗体」とは、特定の抗原に免疫学的に活性を有する免疫グロブリンを一般的に指すように意味付けられており、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体との両方を含めるものである。この用語は、キメラ抗体(たとえば、ヒト化ネズミ抗体)およびヘテロコンジュゲート抗体(たとえば二特異的抗体)のような遺伝子工学的に得られる形態のものも含める。「抗体」という用語は、抗原結合能を持つフラグメントを含めた、抗体の抗原結合性形態(たとえば、Fab’, F(ab’), Fab, FvおよびrIgG 尚、たとえばPierce Catalog and Handbook, 1994−1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL); Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York (1988) を参照のこと)を含めるものである。この用語は、組換え単鎖Fv(scFv)フラグメントも包含する。さらにこの用語は、二価性または二特異的分子、二量化抗体、三量化抗体および四量化抗体も含める。二価性または二特異的分子についてはたとえば、Kosteiny et al., (1992) J. Immunol. 148: 1547, Pack and Pluckthun (1992) Biochemistry 31: 1579, Hollinger et al., 1993, supra, Gruber et al. (1996) Cancer Res. 56: 3055, Adams et al. (1993) Cancer Res. 53: 4026およびMcCartney, et al. (1995) Protein Eng. 8: 301に記載されている。
特定の抗原と免疫学的に反応性を有する抗体は、ファージベクターまたは同様のベクターにおける組換え抗体のライブラリーを選択するなどの組換え方法(たとえば、Huse et al., Science 246: 1275−1281 (1989); Ward et al., Nature 341: 544−546(1989); およびVaughan et al., Nature Biotech. 14: 309−314 (1996)参照)によるか、あるいは抗原または抗原をコードするDNAで動物を免疫化することによって生成させることができる。
典型的には、免疫グロブリンは重鎖と軽鎖とを持つ。重鎖および軽鎖は各々、定常領域と可変領域(両領域は「ドメイン」としても知られる)とを含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、3個の超可変領域によって隔てられた4個の「フレームワーク」領域を含み、「相補性決定領域」あるいは「CDR」とも呼ばれる。このフレームワークおよびCDRの範囲は、既に規定されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、一つの種の中でも比較的変化する。軽鎖および重鎖の構成部分を組合わせたフレームワーク領域である、抗体フレームワーク領域は、3次元空間でのCDRの配置および位置調整に役立っている。
CDRは、抗原エピトープへの一義的な結合を受持つ。各鎖のCDRは典型的な場合、N−末端側から順に数えてCDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、また典型的には、内部に特定CDRが配置されている鎖によって同定される。たとえばVCDR3は、本発明における抗体の重鎖の可変ドメイン内に配置されており、これに対してVCDR1は、本発明における抗体の軽鎖の可変ドメイン由来のCDR1である。
「V」または「VH」の表記は、ある抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指し、Fv、scFvまたはFabの重鎖も含める。「V」または「VL」の表記は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、dsFvまたはFabの軽鎖も含める。
「単鎖Fv」または「scFv」の用語は、本来ならば2本鎖である抗体の重鎖および軽鎖の両可変ドメインが連結して単鎖を形成した場合の抗体を指す。典型的には、その2本の鎖の間にリンカーペプチドが挿入されていて固有のフォールディングをとり、活性結合部位が形成されている。
「キメラ抗体」とは、(a)定常領域またはその一部分が変更、置換えまたは交換された免疫グロブリン分子のことであって、その抗体結合部位(可変領域)が、異なるか変更されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域に連結しているか、あるいはそのキメラ抗体に新たな特性を付与する全く異なる分子、たとえば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物など、に連結しているもの、または(b)可変領域またはその一部分が変更、置換え、あるいは異なるか変更された抗原特異性を持つ可変領域と交換された免疫グロブリンのことである。
「ヒト化抗体」とは、ヒト以外の免疫グロブリンから導かれる最小限の配列を含む免疫グロブリン分子のことである。ヒト化抗体は、受入れ側のヒト免疫グロブリンの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性および受容性を持つマウス、ラットまたはウサギのようなヒト以外の種由来の残基(ドナー抗体)で置き換わったヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含めるものである。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、ヒト以外の相当する残基で置き換わっている。ヒト化抗体は、レシピエントの抗体中にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列中にも見出されない残基を含むことも可能である。一般的にヒト化抗体は、少なくとも1個、典型的には2個の可変ドメインのほぼ全体を含み、ヒト化抗体CDR領域の全体またはほぼ全体は、ヒト以外の免疫グロブリンのCDR領域に相当し、フレームワーク(FR)領域の全体またはほぼ全体が、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列そのものである。最も好ましくはヒト化抗体は、免疫グロブリン、典型的にはヒト免疫グロブリン、の定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む(Jones et al., Nature 321: 522−525 (1986); Riechmann et al., Nature 332: 323−329 (1988); およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593−596 (1992))。抗体のヒト化ついてはたとえば、Winterと共同研究者との方法(たとえば、Jones et al., Nature 321: 522−525 (1986); Riechmann et al., Nature 332: 323−327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239: 1534−1536 (1988)参照)に従って実施することができ、ネズミのCDRまたはCDR配列をヒト抗体の相当する配列の代わりに置換えることによっても実施することができる。従ってそのようなヒト化抗体は、ヒトのインタクトの可変ドメインよりも実質的に小さい可変ドメイン部分が、ヒト以外の動物種由来の相当配列で置換わっているキメラ抗体(米国特許第4816567号)でもある。
「エピトープ」または「抗原決定部位」とは、抗体が結合する抗原表面部位を指す。エピトープは、連続したアミノ酸、あるいはタンパク質の3次フォールディングによって並列した非連続のアミノ酸の両方から形成され得る。連続したアミノ酸から形成されたエピトープは典型的には、タンパク質変性溶媒に曝されても維持されるが、3次フォールディングによって形成されたエピトープは典型的には、タンパク質変性溶媒で処理されると失われる。1個のエピトープには少なくとも3個、通常それ以上、少なくとも5個、あるいは8−10個のアミノ酸が、特有の空間高次構造で含まれている。エピトープの空間高次構造の測定方法にはたとえば、X線結晶解析および2次元核磁気共鳴法が挙げられる。たとえばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996)を参照のこと。
2個またはそれ以上の核酸あるいはポリペプチド配列に関しての「同一の」または何パーセントの「同一性」という用語は、アミノ酸残基またはヌクレオチドが同じか、あるいは後述の初期パラメータを伴うBLASTまたはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを用いて計測されるか、あるいはマニュアルでの整列化と視覚認識とによって計測されたアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定の配列一致率%(即ち、比較領域または指定領域に関して最大限一致するように比較、整列化した時の、特定の領域に関する約60%の同一性、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいはそれ以上の同一性)を持つ2個またはそれ以上の配列またはサブ配列のことを指す。そのような配列を、今後は「ほぼ同一の」と言うことにする。この定義は、分析対象配列の相補体をも指すか、あるいは適用される場合がある。またこの定義には、欠失および/または付加がある配列、それらに加えて置換基を持つ配列、さらに天然に生じるたとえば多型性または対立遺伝子性のような変異体、および人為的変異体も含まれる。後述するように、好ましいアルゴリズムでは、ギャップを考慮することができる。同一性については、アミノ酸長またはヌクレオチド長が少なくとも約5、6、7、8または9個である領域に関して言及するのが好ましく、さらには10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90または100個のアミノ酸長またはヌクレオチド長に関して言及するのが良い。
配列の比較については典型的な場合、一つの配列は、分析対象配列が比較される1種の参照配列としての役割を果たす。ある配列比較アルゴリズムを用いる際には、分析対象および参照の配列をコンピュータに入力し、サブ配列の座標を指定し、さらに必要であれば配列アルゴリズムプログラムのパラメータも指定する。また初期設定プログラムパラメータが使用出来るのが好ましく、あるいは代わりのパラメータを指定できるのが好ましい。次にその配列比較アルゴリズムによって、そのプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する分析対象配列に関する配列一致率%が計算される。
比較のための最適な配列整列処理についてはたとえば、Smith & Watermanの局所的相同性アルゴリズム、Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981);Needleman & Wunschの相同性整列処理アルゴリズム、J. Mol. Biol. 48: 443 (1970);Pearson & Lipmanの同一性探査法、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988);各種アルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、およびWisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI中のTFASTA)のコンピュータによる実行、あるいはマニュアルによる整列化と視覚認識とによる方法(たとえば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照)で実施可能である。
配列一致率%および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの例には、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25: 3389−3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403−410 (1990)に記載されているBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムが挙げられる。尚、BLASTおよびBLAST 2.0は、本発明において記載されたパラメータと共に、本発明の核酸およびタンパク質に関する配列一致率%の決定に用いられる。BLAST解析実行用ソフトウエアは、米国立バイオテクノロジー情報センターを通して公に入手可能である。BLASTアルゴリズムのパラメータであるW、TおよびXは、整列処理の感度と速度とを決定するものである。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、初期設定としてワード長(W)11、予測数量(E)10、M=5、N=−4および2本鎖の両方の比較の実施を用いる。アミノ酸配列用には、初期設定としてワード長3および予測数量(E)10を用いるBLASTPプログラム、および整列数(B)50、予測数量(E)10、M=5、N=−4および2本鎖の両方の比較の実施を初期設定として用いるBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1989)参照)が適用される。
BLASTアルゴリズムは、2種類の配列間の類似性の統計的解析(たとえば、Karlin & Atschul, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90: 5873−5887 (1993)参照)も実施する。BLASTアルゴリズムによって提供される一つの類似性算定値は、最小合計確率数(P(N))であって、それは2個のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列間のマッチングが偶然起こるであろう確率を示すものである。たとえば、参照核酸との解析対象核酸の比較においての最小合計確率数が約0.2未満の場合、より好ましくは約0.01未満の場合、最も好ましくは約0.001未満の場合、その核酸は参照核酸に類似しているとみなされる。対数値では負の大きな数、たとえば5、10、20、30、40、70、90、110、150または170、になると言える。
「宿主細胞」とは天然に生じる細胞、または発現ベクターを含んでその複製または発現を継続させる形質転換細胞のことである。宿主細胞の例としては、培養細胞、外植片および生体内細胞が挙げられる。宿主細胞は、大腸菌のような原核細胞、あるいは酵母、昆虫、両生類、またはCHOおよびHeLa等の哺乳類の細胞のような真核細胞であり得る。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本発明においてアミノ酸残基の重合体を指すものとして互換的に用いられる。これらの用語は、天然に生じるアミノ酸重合体、修飾残基を含むそれら重合体、および非天然化で生じるアミノ酸重合体はもちろんのこと、1個またはそれ以上のアミノ酸残基が、対応する天然由来アミノ酸の人工キメラ擬似体であるアミノ酸重合体にも適用される。
「アミノ酸」という用語は、天然に生じるアミノ酸および合成アミノ酸を指し、また天然に生じるアミノ酸に類似した機能を有するアミノ酸類似体およびアミノ酸擬似体も指す。天然に生じるアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされているものであり、後で修飾を受けるそれらのアミノ酸、たとえばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸およびO−ホスホセリン、も同様である。アミノ酸類似体とは、天然に生じるアミノ酸と同じ基本的化学構造を持つ化合物、たとえばH、カルボキシル基、アミノ基とR基とが結合したα炭素を持つ、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム等、を指す。そのような類似体は、修飾されたR基を持つ場合(たとえばノルロイシン)、あるいは修飾されたペプチド主鎖を持つ場合があるが、いずれも天然に生じるアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸擬似体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を持つがその機能は天然に生じるアミノ酸に類似する化合物を指す。
本発明ではアミノ酸は、それらの一般的に知られた3文字表記法、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字表記法のいずれかで言及される場合がある。ヌクレオチドでもまた、それらの一般的に受け入れられる1文字コードによって言及される場合がある。
「保存的修飾変異体」とは、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用されるものである。特別の核酸配列に関して、保存的修飾変異体は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれらの核酸のこと、あるいはあるアミノ酸をコードしなくても本質的に同一のものか、または連結したもの、たとえば天然の連続的配列、を指す。遺伝子コードの縮重のために、多数の機能的同一性核酸によってほとんどのタンパク質がコードされる。たとえば、GCA、GCC、GCGおよびGCUのコドンは、すべてアミノ酸のアラニンをコードする。従って、あるコドンによって特定されるアラニンの各位置において、そのコードされるポリペプチドを改変しない前述の別の対応するコドンにコドン変更することが可能である。そのような核酸変異は、保存的修飾変異の一種である「沈黙変異」である。本発明において、あるポリペプチドをコードする各核酸配列は、核酸の沈黙変異のことも述べているものとする。スキルの一つとして、ある核酸中の各コドン(但し、メチオニンに対する通常唯一のコドンであるAUG、およびトリプトファンに対する通常唯一のコドンであるTGGを除く)を、機能的に同一の分子を得るためにある状況下で変更できることがわかるであろう。従って、一つのポリペプチドをコードするある核酸の沈黙変異がしばしば、実用プローブ配列以外の発現産物に関する前述の配列中に暗示されている。
アミノ酸配列の場合ではスキルの一つとして、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列に対する置換、欠失または付加の個々については、コードされるアミノ酸配列中の単一アミノ酸または全体に比べて僅かな数の複数個のアミノ酸の変更、追加または欠失が存在するものであって、その変更はあるアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸で置換えられた結果生じる「保存的修飾変異体」であることが認識される。類似するアミノ酸を機能的に提供する保存的置換テーブルは、本技術分野においてよく知られている。このような保存的修飾変異体には、本発明の多型変異体、種間類似体および対立遺伝子もさらに加わり、それらは不可欠のものである。典型的な場合、保存的置換は1)アラニン(A)とグリシン(G)との、2)アスパラギン酸(D)とグルタミン酸(E)との、3)アスパラギン(N)とグルタミン(Q)との、4)アルギニン(R)とリシン(K)との、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)とバリン(V)との、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)とトリプトファン(W)との、7)セリン(S)とスレオニン(T)との、および8)システイン(C)とメチオニン(M)との、各々についてである(たとえば、Creighton, Proteins (1984)参照)。
ある抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」という用語句、あるいはタンパク質またはペプチドを参照する場合の「〜に対して特異的に(または選択的に)免疫活性を有する」という用語句は、タンパク質とその他の生物由来物質との不均質集団中の特定タンパク質の存在を検出する結合反応のことを指す。従って、指定されたイムノアッセイ条件下で、特異化された抗体は、バックグランドの少なくとも2倍、さらに典型的な場合、10〜100倍、ある特定タンパク質配列に結合する。あるタンパク質に特異的に結合するリガンド(たとえば、抗体)は一般的には、少なくとも10−1または10−1、時には10−1または10−1、別の場合では10−1または10−1、好ましくは10−1〜10−1、さらに好ましくは約1010−1〜1011−1あるいはそれ以上、の会合定数を示す。イムノアッセイのフォーマットを変えることは、特定のタンパク質との特異的免疫反応性を持つ抗体の選択に用いることができる。たとえば、固相ELISAイムノアッセイは、あるタンパク質と特異的な免疫反応性を有するモノクローナル抗体の選択に日常的に使用されている。尚、特異的な免疫反応性の測定に使用可能なイムノアッセイのフォーマットおよび条件についての記載に関しては、たとえばHarlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York を参照のこと。
「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」という用語は、本来の状態で見出されるような通常では付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質(たとえば、抗体)のことを指す。純度および均質性は典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学的技術を用いて測定される。ある調製物中に存在する主要分子種であるタンパク質または核酸は、実質的に精製されているものである。特に単離核酸は、天然状態で遺伝子に隣接していて、その遺伝子によってコードされるタンパク質以外のタンパク質をエンコードするいくつかの転写解読枠から選択される。いくつかの実施形態の中で用いられる「精製された」という用語は、一種の核酸またはタンパク質が電気泳動ゲル中で本質的に1本のバンドを形成することを意味するものである。その核酸またはタンパク質が少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、さらに最も好ましくは少なくとも99%、純粋であるとの意味を持つのが好ましい。別の実施形態で用いられる「精製する」または「精製」とは、精製されるべき組成物から少なくとも一種の汚染物質を除去することを意味する。この意味では、精製とはその精製化合物が均質、たとえば100%純粋、であることまでは必要としていない。
「標識」または「検出可能部分」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、またはそのほかの物理的手段によって検出可能な組成物のことである。有用な標識の例としては、蛍光色素、電子密集性試薬、酵素(たとえばELISAにおいて一般的に用いられるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、あるいはハプテンおよび検出を可能にするそのほかのタンパク質または実在物質、たとえばペプチド内への放射性標識の取込みによるもの、またはペプチドと特異的に反応する抗体の検出で用いられるもの、が挙げられる。放射性同位元素には、たとえばH、14C、32P、35Sまたは125Iの場合がある。
(II. 抗体を含めたリガンド)
(A. 構造および活性)
本発明において、FIXaの活性化の際にFVIIIaの代替物または補足物として機能するリガンドが開示される。そのようなリガンドは多くの有用性を持ち、その中には種々の血液凝固疾患患者を治療するための直接的または薬学的組成物の一部としての使用、およびFIX/FIXaの精製および検出における使用も含まれる。提供されるリガンドのある種のものでは、驚くべきことに他の抗体と比較してFIX/FIXaに結合するFIX/FIXa親和性を増大させ(たとえば、後述の実施例4および5参照)、FIXaの凝血促進活性を増大させる(たとえば、後述の実施例6および7参照)ことが見出された。
本発明において用いられるものとしての「リガンド」という用語は一般に、
1)a)インビトロおよび/またはインビボで第IX因子/第IXa因子(好ましくはヒト起源のもの)に結合する化合物、b)FIXaとの複合体形成によってFIXaの凝血促進活性を活性化する化合物、およびc)配列番号:1〜8に挙げられるようなアミノ酸配列の少なくとも一種を含む化合物、ならびに
2)そのような化合物の誘導体、
を指す。
配列番号:1および2は各々、抗体224F3のVHおよびVL領域由来のペプチド配列(図6および7参照)である。配列番号:3〜8は各々、抗体224F3の軽鎖L1−L3、および重鎖H1−H3のCDR配列由来のペプチド配列(図8参照)である。
本発明において用いられるものとしての「誘導体」という用語は、上記(a)および(b)の特徴を持つ化合物のことを一般に指し、さらに(i)配列番号:1〜8のアミノ酸配列の少なくとも一種を含む化合物、その対応する配列のアミノ酸残基数の最大25%が置換または欠失されたいずれかの場合の配列を含む化合物、対応する配列の前記以外のアミノ酸残基数が置換または欠失された場合の配列を含む化合物、あるいは配列番号:1〜8の配列のいずれかの中に1個またはそれ以上のアミノ酸が挿入された場合の配列を含む化合物であって、いずれの場合もそのリガンドの機能は保持されているか、または機能が向上さえしたもの、あるいは(ii) 前項(i)の定義を満たさなくともリガンドの特異的機能を示す化合物(たとえば、タンパク質性または非タンパク質性起源の擬似ペプチド性化合物;Kemp DS, Trends Biotechnol., 1990, pp. 249−255参照)、のいずれかも指す。タンパク質(たとえば、抗体)であるある種の誘導体は、配列番号:1〜8に挙げられたアミノ酸配列の一種またはそれ以上と実質的に同一のアミノ酸配列を持つタンパク質セグメントを含む。
リガンドの「特異的機能」という用語は、リガンドおよびそのほかのエフェクター(詳細は後述)が存在しない場合に対する、リガンド存在時におけるミカエリス−メンテン反応速度論の項の中の触媒効率比(kcat/K)が5:1より大、好ましくは6:1より大、さらに好ましくは6.5:1より大、または最も好ましくは6.8:1より大であることで規定される。
あるリガンドは抗体のようなポリペプチドである。本発明で提供される抗体は一般的、配列番号:3〜8中に挙げられる相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)と同じエピトープを認識する。特別の抗体が別の抗体と同じエピトープを認識する能力については、第二の抗体(たとえば、対照抗体)の抗原(たとえば、第IX因子または第IXa因子)への結合を競合的に抑制する抗体の能力によって測定することができる。いくつかの競合的結合アッセイは、同一抗原に対する2種の抗体間の競合性の計測に用いることができる。そのようなアッセイには、Biacoreアッセイ(たとえば、実施例5を参照)がある。本技術領域において知られた種々のイムノアッセイも用いることができる。たとえば、サンドイッチELISAアッセイを用いる場合、抗体が結合するエピトープによってその抗体を区別することができる。このことは、ウエル表面を被覆する捕捉抗体を用いて実施される。次に飽和量近い濃度の標識化抗原が加えられる。このタンパク質は、ある特異的抗体とエピトープとの相互作用を介してその抗体に結合するであろうものである。洗浄後、検出性部分(たとえば、検出抗体として規定される標識化抗体を伴うHRP)が予め共有結合した第二の抗体がそのELISAに加えられる。この抗体は、もしそれが捕捉抗体と同じエピトープを認識するならば、その特定のエピトープにはもはや結合不能となるため、標的タンパク質に結合することはできないであろう。しかしながら、もしこの第二の抗体が標的タンパク質表面の異なるエピトープを認識するのならば、その抗体は結合可能であろうし、その結合は適切な基質を用いる、活性レベル(およびそのため結合した抗体)の定量によって検出することができる。尚、バックグランドは、単一抗体を用い、捕捉抗体と検出抗体との両方で規定されるが、その最大シグナルは、抗原特異的抗体による捕捉およびその抗原表面の標識に対する抗体による検出によって確定することができる。比較対照としてこのバックグランドおよび最大シグナルを用いることによって、抗体は一対一式のエピトープ特異性測定手法で評価することができる。
前述のアッセイのいずれかを用い、第一の抗体の存在下で抗原への第二の抗体の結合が、少なくとも30%、通常は少なくとも約40%、50%、60%または75%、および場合によっては少なくとも約90%低下するのならば、一般的に第一の抗体は、第二の抗体の結合を競合的に抑制すると考えられる。
本発明で提供されるある種の抗体は、1本またはそれ以上のポリペプチド鎖を持ち、そのうちの少なくとも1本のポリペプチド鎖は、少なくとも3個のループまたは相補性決定領域(即ち、CDR1、CDR2およびCDR3)を含んでいる。それらCDRの一種またはそれ以上もまた、配列番号:3〜8に挙げられるような配列を含んでいる。いくつかの抗体では、そのCDRは4個のフレームワーク領域内に包埋されている。CDRの定義は、Chothiaの計数スキーム(たとえば、Al−Lazikani B., Lesk A. M.およびChothia C. 1997. ”Standard conformations for the canonical structures of immunoglobins”, J. Mol. Biol. 273: 927−948を参照、尚、その開示内容は、すべての目的に対してそのまま参照することで本発明に組入れられるものである)に従う。それ以外のリガンドは、このようなリガンドの誘導体である。それらの誘導体中の一種またはそれ以上(場合によると全部)のCDRは、配列番号:1〜8に挙げられた配列とアミノ酸配列において実質的に同一である。
従って、本発明で提供されるいくつかの抗体は、4個のフレームワーク領域内に包埋されている少なくとも3種のCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を含み、その少なくとも3種のCDRのうちの1種またはそれ以上は、配列番号:3〜8に挙げられるようなアミノ酸配列を含有する。別の抗体は1個またはそれ以上のCDR3セグメントを含み、そのCDR3セグメントの各々は、配列番号:5〜8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。さらにそれら以外の抗体では、CDR1、CDR2およびCDR3は各々、配列番号:3〜5からなる群から選択されるアミノ酸配列、あるいは配列番号:6〜8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。それ以外のある抗体では、配列番号:1〜2に挙げられるようなVH領域およびVL領域の一方または両方を含む。さらに配列番号:1〜8と実質的配列同一性を持つこれらの特定の抗体の誘導体も含まれる。
本発明で提供される抗体のいくつかのものはポリクローナル抗体であるが、別のものではモノクローナル抗体である。提供される別のポリペプチドは、組換え遺伝子工学によって得られる(「組換え抗体」)。従っていくつかのリガンドには、ヒトおよび動物のモノクローナル抗体、またはそれらのフラグメント、あるいは単鎖抗体およびそれらのフラグメント(それらにはミニ抗体、二特異性抗体、二量化抗体、三量化抗体、あるいはそれらの二量体、オリゴマーまたはマルチマーも含まれる)が含まれる。
いくつかのリガンドは、宿主細胞における免疫グロブリン−コード領域の改変体の発現によって生成されたタンパク質を含む。このタイプのリガンドの一例としては、「技術的修飾抗体」がある。このクラスの抗体にはたとえば、合成抗体、キメラまたはヒト化抗体、あるいはそれらの混合物、さらに恒常領域が部分的または完全に失われた抗体フラグメント(たとえば、F、Fab、Fab’またはF(ab)’)も含まれる。技術的修飾抗体では、軽鎖および/または重鎖の一箇所または複数箇所が置換えられ得る。そのような分子には、ヒト化重鎖と非修飾軽鎖(またはキメラ軽鎖)とから成る抗体、あるいはその反対の構成の抗体を含めることができる(「ヒト化」という用語に関しては以下を参照)。Fv、Fc、Fd、Fab、Fab’またはF(ab)という用語は、本技術におけるそれらの通常の意味を持つものとする(たとえば、Harlow E. and Lane D., in ”Antibodies, A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988参照)。
あるリガンドは、第IX因子/第IXa因子に対して指向するモノクローナル抗体(mAb)から生じるものであって、IXaの凝血促進活性を上昇させるFabフラグメントまたはF(ab)フラグメントを含む。
いくつかのリガンドは、選択されたヒト抗体配列の非相同性フレームワーク領域内に予め挿入されたネズミのモノクローナル抗体を由来とするCDRを含むヒト化抗体である。そのフレームワーク領域は、CDRディスプレーに必要とされる領域を含んでいる。
定常領域は、リガンド内に存在する場合、IgG(サブタイプ1−4)、IgM、IgAおよびIgEのようなヒト免疫グロブリンのクラスまたはアイソタイプから典型的には選択される。免疫反応の過程で、免疫グロブリンのクラススイッチ(たとえば、IgMからIgGへのスイッチでは、その定常領域はμからγに変換される)が起こる可能性がある。クラススイッチは、遺伝子工学的手法による定方向化(「定方向性クラススイッチ組換え」)においても起こる可能性があり、その場合のクラススイッチは、従来技術からも知られているようなもの(たとえば、Esser C. and Radbruch A., Annu. Rev. Immunol., 1990, Vol. 8, pp. 717−735参照)である。もちろんヒト化抗体では、他の細胞分子への抗体の結合に必要とされる、定常領域のようなそのほかの配列もまた、通常はヒトのものである。
あるリガンドでは、CDR1, 2, 3, 4, 5または6をネズミ起源のCDR、特に配列番号:3〜8またはそれらの誘導体、と入れ替えることによってヒトの軽鎖および重鎖内の可変領域が技術的に変更されている。この6種のCDRの全て、または6種未満のCDRの組み合わせを変えたものも用いることができる。
完全なヒト化抗体はヒト抗体のフレームワーク領域とネズミ起源のCDRとを持つ。この抗体は、ヒト抗体としての抗原反応性に特有の挙動を示し、医療への適用、たとえば第VIII因子抑制性患者のような血液凝固疾患患者の治療、に必要な構造と諸特性とを備える。ヒト化抗体の一つの利点は、ヒト患者への投与の際、ネズミ抗体の投与の際に生じる抗原抗体反応と比較してその反応が概して低減することである。
本発明で提供されるいくつかのリガンドは、ネズミとヒトとの配列とからなるキメラ抗体である。それらのキメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン由来の両方の鎖の定常領域を組合わせた、配列番号:1および/または2に挙げられるような全可変領域を含む完全ヒト化抗体とは異なるものである。
ほかのリガンドには、抗体のVとVとの領域を橋かけする人工のリンカー配列を含み、それによってVとVとの両領域を含むアミノ酸残基の単鎖が形成されている単鎖抗体がある。従ってこのタイプのリガンドには、(1)ミニ抗体(即ち、scFvフラグメントであって、たとえばプロリンを多く含む配列およびオリゴマー化ドメインに結合したものである;たとえばPlueckthun A. and Pack P., Immunotechnology, 1997, Vol. 3, pp. 83−105参照、尚、その開示情報は本発明において参照文献中に入れられている)を含めた単鎖抗体、ならびに(2)単一ポリペプチド鎖内の全抗体結合領域を取り込んだ単鎖Fv(scFv)、が含まれる。
たとえば単鎖抗体は、第一のV領域のC末端を第二のV領域のN末端に接続するリンカー配列として予め構成されたオリゴヌクレオチドに、V遺伝子を連結させて形成することができる。その一つの配置形態としては、V−リンカー−Vの配列で示されるものが可能である。また別のものではV−リンカー−Vの配列で示されるのも可能である。従って、VとVとは両方ともN末端ドメインに存在することが可能である(Huston JS et al., Int. Rev. Immunol., 1993, Vol. 10, pp. 195−217; Raag R. and Whitlow M., FASEB J., 1995, Vol. 9, pp. 73−80)。リンカー配列として用いられる配列は、たとえば150Aまでの長さ、より好ましくは40Aまでの長さ(伸張状態での測定値)を持つことができる。
ペプチドリンカーおよびそれらの使用は、本技術領域ではよく知られている。たとえばHuston et al., Pro. Nat’l. Acad. Sci. USA 8: 5879 (1988); Bird et al., Science 242: 4236 (1988); Glockshuber et al., Biochemistry 29: 1362 (1990); 米国特許第4946778号、米国特許第5132405号およびStemmer et al., Biotechniques 14: 256−265 (1993)を参照のこと。いくつかの例では、ペプチドリンカーは、複数の領域を合わせること以外、あるいはVとVとの間の最小距離またはそれ以外の空間的関係を保つこと以外には特異的な生物学的活性を持たないものである。しかしながら、ペプチドリンカーのアミノ酸置換は、分子のフォールディング、ネットチャージまたは疎水性のようないくつかの特性に影響するように選択することも可能である。単鎖Fv(scFv)抗体は、アミノ酸長が50以下、一般的には40以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下のペプチドリンカーを所望により含む。いくつかの実施形態ではペプチドリンカーは、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser配列、好ましくはその2、3、4、5または6個の繰り返し配列、のコンカテマーである。しかしながら、リンカー内のいくつかのアミノ酸置換が行われ得ることも考えられる。たとえば、グリシンをバリンに替えることも可能である。
グリシンとセリンとを含むリンカー配列は、その柔軟性のために有用である。グルタミンとリシンとは水溶液中でのそれらの溶解性のために有用である。単鎖抗体は、凝集体(たとえば、トリマー、オリゴマーまたはマルチマー)としても存在し得る。しかしながらいくつかの抗体では、V鎖とV鎖とが直接接続している場合に、リンカー配列は省略される。二特異性抗体は、単一分子内に2種の異なる結合特異性を持つ高分子の複素二官能性クロスリンカー〔このグループに属するものとしては、二特異性(bs)IgG、bsIgM−IgA、bsIgAダイマー、bs(Fab’)、bs(scFv)、二量化抗体およびbsビスFabFcが挙げられる。(たとえば、Cao Y. and Suresh M.R., Bioconjugate Chem., 1998, Vol. 9, pp. 635−644参照、尚、その開示情報は本発明において参照文献に入れられている)〕のことである。本発明で提供される抗体リガンドは典型的な場合、インビボでのそれらの半減期が少なくとも5日、より好ましくは少なくとも10日、さらに最も好ましくは少なくとも20日である。
(B. リガンド活性の測定)
前述で示したように、本発明で開示されるリガンドは、第VIIIa補因子活性または第IXa因子活性化活性を持つ。そのためそれらは、第IXa因子の凝血促進活性を促進する。そのリガンドの機能は、第VIII因子または第VIIIa因子の存在を必要としない。従ってそのリガンドの機能は、第VIII因子/第VIIIa因子に対抗する抑制物質の存在によって負の影響を受けることはない。そのかわりそれらのリガンドは、そのような抑制物質が存在しても第IXa因子の凝血促進活性を促進することができる。
リガンド活性、即ちFIXaの凝血促進活性を上げる能力、は以下のFVIIIアッセイによって計測可能である。
アッセイ反応は、リガンドの試験機能に従い、37℃の湯浴中でPPNチューブ(Micronic社製、オランダ)内で実施される。即ち、13.6μMのリン脂質(小胞体;1,2−ジオレオリル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン60%、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホセリン40%)と6.8mM Ca2+とを含むHNaBSA5−緩衝液(25mM Hepes、175mM NaCl、5mg/ml BSA、pH7.35)220μlを、予め37℃に加温する。FX 20μl、FIXa 20μlおよび各々の補因子40μlを加えてリン脂質10μMとCaCl5mMとを含む反応混合物を得る。0.5、1、2、4、6、8、10、15、20、25および30分後に、その反応混合物から20μlを分取し、氷冷したEDTA−緩衝液(50mM Tris pH8.3、9mM EDTA、428mM NaCl)500μl中に移してそのFXa形成を停止させる。生成したFXaの量は、その反応停止混合液の210μl分を、96穴マイクロプレート中、基質としてのαNAPAP混合液(5mM Pefachrome FXa (Pefa−5523) + 6μM αNAPAP; Pentapharm)40μlと混合し、マイクロプレートリーダーで37℃、波長405nmにおける色素生成性基質の開裂速度(OD/〔分〕)を計測して測定される。FXa濃度は、既知量のFXaで作成された標準較正曲線から、各時間点で計算される。この実験は、種々の異なるFX(基質)濃度(0,10,20,30,40,50,60,80,100,125,150,200,250nM FX)を組合わせて、11nM(反応混合物中の最終濃度)のFIXaおよび最適濃度(通常は25nM)の抗体を用いて行われる。得られたFXa形成速度は、FX濃度の関数としてプロットされ、ミカエリス−メンテン定数(VmaxおよびK)は、Windows Exel(登録商標)の関数機能を用いて双曲線への曲線当てはめを行い計算される。KcatはVmax=kcat〔FIXa〕に従い計算され、触媒効率はcat.eff.=kcat/Kに従い計算される。
第IXa因子(FIXa)を活性化する抗体198B1(国際公開第01/19992号にて開示)および抗体224F3は、FIXa−抗体複合体による第X因子(”FX”)活性化の速度論的パラメータを測定することで特徴づけられた。FX活性化速度は、11nMのFIXa、25nMの各抗体、および濃度が0〜150nMのFXを含む反応混合液中、異なる基質(即ち、ヒトFX濃縮物)で計測された。FXの活性化速度(nM/分)は、FX濃度の関数としてプロットされ、ミカエリス−メンテン定数(KおよびVmax)は、Windows Excel(登録商標)の関数機能を用いて双曲線への曲線当てはめを行い得られた(図3)。代謝回転数kcatは、Vmaxを酵素−複合体濃度で除して計算した。抗体198B1および224F3は、FIXaによる場合の約10倍もFX活性化のkcat値を上げた(表1および以後の本文参照)。補因子を伴わないFIXaでは、25nMの非特異的なポリクローナルマウスIgGが存在する場合と同じく、同一の双曲線が得られ、エフェクターを伴わないFIXaの速度論的パラメータを計算することができた。比較のため、ミカエリス−メンテンの双曲線を異なる数点の第VIIIa因子(”FVIIIa”)濃度でも計算した。抗体198B1および224F3で得られたVmaxは、5pMの第VIII因子(”FVIII”)、即ち、16mU/ml活性相当のFVIII量または1.6%の血漿中濃度に相当する、の存在下で測定された値と類似していた。そのうえさらにFVIIIはFIXaのK値を(実際のFVIIIa濃度から影響を受けずに)約2.5倍も減少させた。抗体224F3では、FXのK値はFIXaに対して有意な影響を受けなかったが、抗体198B1ではK値が2倍に増大した。しかしながら全ての場合でK値は、ヒト血漿中のFX濃度(136nM)よりはるかに低かった。さらにKでは起こらなかったがKcatでのみ、抗体濃度に影響を受けた。結論として、SEQ ID NO: 1および2、ならびに従ってSEQ ID NOs: 3−8も、に挙げられた全ての配列を含む抗体224F3は、最大の触媒効率(kcat/K)、つまり最も効率的な抗体であることを示した(本明細書の以下の表1参照)。ミカエリス−メンテン反応速度論での用語としてのその触媒効率(kcat/K)は、エフェクターを伴わないFIXaと比較して688%も上昇している。
エフェクターを伴わないFIXaおよびFIXa−抗体複合体によるFX活性化の速度論的パラメータを表1に示す。
Figure 0004887148
本発明において提供されるリガンド(たとえば抗体および抗体誘導体)が、ヒト血漿中でのトロンビン生成実験においてFVIII様活性も示すことを、FVIII不足状態の血漿中で証明した。このアッセイ系には、FXIIaからトロンビンの形成に至るまでの内在性の全血液凝固カスケード、ならびに血漿中プロテアーゼ阻害物質、抗トロンビンおよびa−マクログロブリン、による凝固因子の不活化、が必要とされた。トロンビン生成の時間推移は、トロンビンのバースト形成前の凝固開始を反映する対数相の特徴を示した。トロンビンはそれ以外のセリンプロテアーゼと同様に、抗トロンビンおよびa−マクログロブリンによって実質的に阻害された。最初に行った試験は、FVIIIに対する抗体で正常血漿を免疫除去処理して得られたFVIII欠乏血漿中における、FIXaを活性化する抗体の、トロンビン生成に対する効果についてであった。比較のためにFVIIIを用いた実験も行った(図4)。FVIIIの添加には、FVIII欠乏血漿中で次の二つの効果、即ち、(i)凝固時間が短くなることを示す、トロンビンのバースト生成の早期化、および(ii)生成トロンビン量の増大の効果、が認められた。抗体198B1および224F3では、同じ全般的効果を示した(図4)が、その大きさは異なる。この点においても抗体224F3(△)では、ほかの抗体よりも高い効率が証明された。またいくつかのモデル実験系でも、トロンビン生成に対する両抗体の効果は、抗体濃度に依存することが認められた。この両抗体に関しては、そのトロンビン生成に対する血漿中示適効果濃度は40−60pmol/ml血漿であって、この値は定量的ELISAでのFVIII枯渇化血漿で測定されたFIX濃度(40pmol/ml)に等しかった。
免疫除去処理したFVIII欠乏血漿には、FVIII活性が残存する。これに対して、力価が10BU超のFVIIIインヒビタ−血漿には、抗体中和性のFVIIIのみばかりでなく、FVIII活性も失われている。凝血促進性抗体の活性がFVIII抑制物質の存在によって影響を受けるかどうかを研究するために、FVIIIインヒビタ−血漿中で繰返してトロンビン生成実験を行った。抑制物質の存在によって、凝血促進性抗体の活性をFVIIIと比較することができなくなった。従って、その抗体の凝血促進活性は、FEIBA(登録商標)(Baxter Healthcare Corp. 製またはBaxter AG製)、即ち、インヒビタ−をもつ患者における出血性症状の発現を治療するのに頻繁に用いられる活性化プロトロンビン複合体、と比較することにした。インヒビタ−をもつ患者から得られた血漿では、FEIBA(登録商標)に量を増やすと、トロンビン生成に対するその効果は、FVIII除去血漿中でのFVIIIの効果と同じである(図5)。凝血促進性抗体がFIXa刺激物質として適用された場合、それらの効果はFVIII除去血漿中よりもインヒビタ−血漿中でいっそう大きいと判断された。図5は、抗体224F3の存在下で得られたトロンビン生成の時間推移を示すものである。最適条件でのトロンビン形成は、抗体不含の場合よりも10分早く起こった。そのうえ、血漿中FIX濃度に等しい抗体のモル濃度では、最高のトロンビン形成能を示す。
(C. リガンドの製造)
抗体リガンドは、本技術分野から導かれる既知の方法、たとえば従来のハイブリドーマ技術、あるいはファージディスプレイ遺伝子ライブラリー、免疫グロブリン鎖シャッフリング技術またはそのヒト化技術を用いるもの(たとえばHarlow E. and Lane D.,: Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988参照)、によって調製することができる。
たとえばポリクローナル抗体については、たとえば免疫化物質および必要ならばアジュバントも共に1回またはそれ以上の回数注射することによって、哺乳動物内で増やすことができる。典型的には、その免疫化物質および/またはアジュバントは、哺乳動物に皮下または腹腔内に多重回、注射されることになる。免疫化物質には、本明細書の図に示される核酸によってエンコードされるタンパク質、あるいはそのフラグメントまたは融合タンパク質を挙げることができる。哺乳動物を免疫化する際には、免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫化物質をコンジュゲートすることが有用である場合がある。そのような免疫原性タンパク質の例としては、スカシガイのヘモシアニン、血清アルブミン、牛チログロブリンおよび大豆トリプシンインヒビターが挙げられるが、それらに限定されない。用いられる可能性のあるアジュバントの例としては、フロイントの完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリル−リピトA、合成トレハロース−ジコリノミコール酸エステル)が挙げられる。その免疫処置のプロトコールは、不適当な実験法を除き、本技術分野の当業者によって選択されるものといえる。
モノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ法(たとえば、Kohler & Milstein, Nature 256: 495 (1975); およびAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988, Eds. Harlow and Lane, pp. 148−242参照)を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では典型的な場合、マウス、ハムスターまたは適当な宿主動物を、使用する免疫化物質に特異的に結合するであろう抗体を産生するかまたは産生可能であるリンパ球を誘発する免疫化物質で免疫化する。免疫化はたとえば、第IX因子、第IXaα因子または完全活性化第IXaβ因子、あるいはそれらのフラグメントを用いて実施できる。ハイブリドーマは、そのハイブリドーマ細胞の上清中のリガンドが、第IX因子/第IXa因子に結合して第IXa因子の凝血促進活性を増大させることを期待して選択される。凝血促進活性の上昇はたとえば、第VIII因子様活性の計測に関する本技術領域で既知のアッセイ方法、たとえば色素原アッセイ(たとえば後述の実施例2参照)、によって証明することができる。代替法としては、インビトロでリンパ球を免疫化する場合がある。その場合一般的には、ヒト起源の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(”PBLs”)が用いられ、ヒト以外の哺乳類種起源の細胞が望まれる場合には脾臓細胞またはリンパ節細胞が用いられる。次にリンパ球はポリエチレングリコールのような適当な細胞融合剤を用いて不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Priciple and Practice, pp. 59−103 (1986))。
不死化株化細胞は通常、形質転換した哺乳類細胞、特にげっ歯類、牛およびヒト起源のミエローマ細胞、である。通常はラットまたはマウスの株化ミエローマ細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、融合していない不死化細胞の増殖または生存を抑制する一種またはそれ以上の物質を好ましくは含む培地中で培養する場合もある。たとえば、親細胞がヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルートランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)酵素を持たない場合、そのハイブリドーマ用培地は典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリンとチミジンとを含むであろう(「HAT培地」)。
代替的なものとして、本発明で開示されるリガンドのうちのタンパク質性リガンドは、組換え法でも製造可能である。この実施形態では、リガンドのDNA配列は、既知の技術によって決定でき、その全抗体DNAまたはその部分的DNAは、適当な系で発現させることができる。組換えによる製法は、ファージディスプレイ、合成および天然のライブラリー、既知の発現系での抗体タンパク質の発現、またはトランスジェニック動物での発現を含めた方法(Jones et al., Nature, 1986, Vol. 321, pp. 522−525; Pharge Display of Peptides and Proteins, A Laboratory Manual, 1996, Eds. Kay et al., pp. 127−139; 米国特許第4873316号;Vaughan T.J. et al., Nature Biotechnology, 1998, pp. 535−539; Persic L. et al., Gene, 1997, pp. 9−18; Ames R.S. et al., J. Immunol. Methods, 1995, pp. 177−186)と同様に用いることができる。
組換え法によって製造されるリガンドとしての抗体は、細菌用ベクター(たとえば、pBr322およびその誘導体)または真核細胞用ベクター(たとえば、pMSGおよびSV40のようなベクター)のような従来の発現ベクターを用いて製造することができる。抗体をコードするそれらの核酸配列は、複製、発現および/または宿主細胞からの分泌を制御する調節性配列と共に提供され得る。それらの調節性配列は、たとえばプロモーター(たとえばCMVまたはSV40)およびシグナル配列を含む。発現ベクターは、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)、ヒグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子およびチミジン・キナーゼ遺伝子のような選択および増幅マーカーも含むことができる。使用されるベクターの、選択マーカー、レプリコン、エンハンサーのような構成成分は、商業的な入手あるいは従来方法での調製のいずれかが可能である。そのベクターは、種々の細胞培養体、たとえばCHO、COS、繊維芽細胞のような哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母、または大腸菌のような細菌、内で発現するように構成することができる。いくつかの場合では細胞は、発現されたタンパク質の最適な糖鎖形成が可能なように用いられる。
リガンドとしてのFabフラグメントまたはF(ab)フラグメントは、従来技術から導かれる既知の方法、たとえばパパインおよび/またはペプシンのようなタンパク質分解酵素類を用いる抗体開裂による方法、または組換え法、に従って製造することができる。FabおよびF(ab)フラグメント類は、ファージディスプレイ遺伝子ライブラリー法類(Winter et al., 1994, Ann. Rev. Immunol., 12: 433−455)によっても調製可能である。
scFv抗体の製法はすでに開示されている。Huse et al., 前述文献;Ward et al., 前述文献;およびVaughan et al., 前述文献を参照のこと。簡単に述べると、まず免疫化した動物由来のB細胞からmRNAを単離し、cDNAを調製する。そのcDNAを、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域に特異的なプライマーを用いて増幅する。そのPCR産物を精製し、核酸配列を結合する。リンカーペプチドが望まれる場合では、そのペプチドをコードする核酸配列が、重鎖と軽鎖との核酸配列の間に挿入される。scFvをコードする核酸をベクター内に挿入し、適当な宿主細胞内で発現させる。希望する抗原に特異的に結合するscFvは典型的な場合、ファージディスプレイライブラリーをバイオパンニングすることで見出される。バイオパンニングは、いくつかの方法のどれかで行うことが可能である。バイオパンニングは便宜上、表面に希望する抗原を発現する細胞を用いるか、または希望する抗原で被覆された固体表面を用いて行うことができる。その表面は便宜上、磁性ビーズであり得る。非結合ファージを固体表面の洗浄で除去し、結合ファージを溶離する。
ヒト抗体は、本技術領域で知られた、ファージディスプレイライブラリーを含めた種々の技術を用いて製造することができる(Hoogenboom & Winter, J. Mol. Biol. 227: 381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581 (1991))。ヒトモノクローナル抗体の調製のためには、Cole et al. およびBoerner et al.の技法(cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, p.77 (1985)およびBoerner et al., J. Immunol. 147(1): 86−95 (1991))も利用することができる。同様にヒト抗体も、トランスジェニック動物、たとえば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されているマウス、にヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入して製造することができる。それらを吟味すると、ヒト抗体の製造は遺伝子再構成、アセンブリングおよび抗体レパートリーを含めた全ての点で人体内で見られるものによく似ていることに気付く。このアプローチは、たとえば米国特許第5545807号、第5545806号、第5569825号、第5625126号、第5633425号および第5661016号に開示されており、以下の科学出版物にも開示されている。即ち、Marks et al., Bio/Technology 10: 779−783 (1992); Lonberg et al., Nature 368: 856−859 (1994); Morrison, Nature 368: 812−813 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14: 845−851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996); およびLonberg & Huszar, Intem. Rev. Immunol. 13: 65−93 (1995)。
それ以外のタンパク質リガンドは、本技術分野で知られた諸方法、たとえば分子モデリング(たとえばGrassy G. et al., Nature Biotechnol., 1998, Vol. 16, pp.748−752; Greer J. et al., J. Med. Chem., Vol. 37, pp.1035−1054; またはRees A. et al., ”Protein Structure Prediction: A practical approach”, (Stermberg M. J. E., ed.) IRL press, 1996, chap. 7−10, pp.141−261参照)を用いて調製することができる。
リガンドは、本技術分野で開示された種々の方法、たとえば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティー精製(たとえばプロテインG−セファロース)、イオン交換クロマトグラフィーまたはゲルクロマトグラフィー、によって精製することができる。いくつかの方法は、本発明で開示されたリガンドが第IX因子/第IXa因子に結合し、および/または第IXa因子の凝血促進活性を増大させ、および/または第VIII因子様活性を持つことを示すのに用いることができ、その方法の例としてはワンステップ血液凝固試験(たとえばMikaelsson and Oswaldson, Scand. J. Haematol., Suppl., 33, pp.79−86, 1984参照)、あるいはCOATEST VIII: C(登録商標)(Chromogenix社製)またはImmunochrom(IMMUNO社製)のような色素形成性試験が挙げられる。第VIII因子活性の測定に用いられる全ての方法は、原則として使用可能である。計測用の対照ブランク値としては、たとえば非特異的なマウスIgG抗体を用いることができる。
(III. 核酸および形質転換細胞)
本発明において開示されるリガンドをコードする核酸(たとえばDNAまたはRNA)も本発明で提供される。たとえばある核酸は、図6および7で開示されたDNA配列の片方または両方を含んでいる。
そのような核酸を含み、本発明において開示されるようなリガンドを発現する宿主細胞も本発明で提供される。尚、そのような細胞は不死化されているものが好ましい。通常それらの細胞は、均質な株化細胞を形成する。またその細胞はハイブリドーマ細胞でもあり得る。
前述のような細胞および/または核酸を用いての抗体または抗体誘導体のようなリガンドの製法も、本発明で提供される。それらの製法には一般的に、リガンドをコードする核酸を発現ベクター内に挿入して発現構成体を形成することが含まれている。その得られた発現構成体は続いて、従来のタンパク質リガンド発現方法を用いて宿主細胞内に導入される。次にそのタンパク質リガンドは、宿主細胞の少なくとも一種の他成分から分離される。典型的には、そのリガンドが前述規定のように生物学的に純粋になるようにそのタンパク質の精製が行われる。
(IV. 具体的な有益性)
(A. 諸治療法/薬学的組成物)
本発明において提供されるリガンドは、血液凝固疾患の治療、たとえば血友病Aおよび第VIII因子インヒビタ−をもつ患者の治療、における医療上の使用に適している。このリガンドは、患者に治療薬として有効量投与するのに適した何らかの方法、たとえば経口、皮下、筋肉内、静脈内または鼻内投与、によって投与することができる。
「患者」とは典型的には、ヒトの患者を指すが、ほかの哺乳類である場合も含む可能性がある。従ってこの治療法は、ヒトの医療および獣医学的適用の両方に用いることができる。好ましい実施形態において、患者は哺乳類、好ましくは霊長類、であり、さらに最も好ましい実施形態においては、患者はヒトである。
治療薬剤は、薬学的に受容可能なキャリアおよび/または希釈剤中に、活性物質として医薬有効量の前述規定のリガンドを含有する組成物として製造することができる。そのため、前述規定のようなリガンドと薬学的に受容可能なキャリアおよび/または希釈剤とを含有する薬学的組成物も、本発明で提供される。そのような薬学的組成物は、液体または粉末状のいずれかの形態で存在することができる。その上さらに、その薬学的組成物は、異なるリガンドまたはそれらの誘導体の混合物を含有することも可能である。また第IX因子および/または第IXa因子を含有することも可能である。尚、第IXa因子は、第IXaα因子および/または第IXaβ因子および/または第IXα因子として存在することも可能である。キャリアまたは希釈剤用液体の例には生理食塩水がある。溶液の場合、それらは従来の諸方法で滅菌処理された滅菌物である。
本発明には、血液凝固疾患をわずらう患者の治療用医薬品を製造するための前述規定のようなリガンドの使用も含まれる。
本発明において記載されるリガンドは、血友病Aに対する医薬品を開発する様々な手段において利用することができる。ひとつのアプローチとしては、ある抗体をFc領域がない形式のもの(たとえばFabまたはF(ab’)型)に縮小することおよびその抗体をヒト化することがあげられる。キメラまたは完全ヒト化抗体のフラグメントのいずれかは、臨床試験段階へ移るために用いられる可能性がある。別の選択肢としては、抗体の結合部位をもとにして小分子を設計することである。抗体のエフェクター機能は、FIXaにおける高次構造の変換を誘発する抗体の結合によって達成される。いくつかのそのようなエフェクトは、抗体パラトープに相当する小さな擬似タンパク質体または擬似ペプチド体によっても達成することができる。抗体は本質的には、三次元空間でペプチドエレメントの組合わせ配列を呈する生物学的分子であるため、FVIII様活性を持つ化合物(即ち、FIXaアクチベーター)は、経口投与が可能になるように、およびFVIII抑制物質の存在下でも活性を示すように開発することが可能である。このタイプの化合物は、特に小児にとって厄介な静脈内注射のような投与経路での現行の治療にまつわる多くの欠点を回避するため、血友病Aの治療に有益的に用いることが可能である。
そのリガンドまたは薬学的組成物は、保存のために凍結乾燥された形態で存在することが可能であり、続いて患者への投与前に適当な溶媒中に懸濁することが可能である。この方法については、従来の免疫グロブリンに対するその有益性が一般的に証明されており、この場合には既知の凍結乾燥方法および復元方法を適用することができる。
本発明で提供される組成物のいくつかは、薬学的に受容可能な、酸付加塩と塩基付加塩との両方を含めた意味の塩として存在するような水溶性の状態のものである。「薬学的に受容可能な酸付加塩」とは、遊離塩基のその生物学的有効性を維持し、生物学的にまたはそのほかの点で好ましくないものではない付加塩のことを指し、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、および類似酸のような無機酸、ならびに酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルフォン酸、エタンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、サリチル酸、および類似酸のような有機酸と共に形成される塩類である。「薬学的に受容可能な塩基付加塩」には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルムニウムの塩および類似塩のような無機塩基から生じる塩類が挙げられる。ある組成物では、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩類が含まれる。薬学的に受容可能な非毒性の有機塩基から生じる塩類には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンのような第一級、第二級および第三級のアミン類の塩類、天然に生じる置換化アミン類を含めた置換化アミン類の塩類、環状アミン類の塩類、および塩基性イオン交換樹脂類の塩類が挙げられる。
その薬学的組成物は、一種またはそれ以上の次の成分も含むことができる。即ち、血清アルブミンのようなキャリアタンパク質;緩衝剤;微結晶セルロース、乳糖、トウモロコシ澱粉およびそのほかの澱粉のような充填剤;結合剤;甘味剤およびその他香味剤;着色剤;およびポリエチレングリコール。
その薬学的組成物は、投与法に依存する多様な単位投与剤形で投与することができる。たとえば、経口投与に適した単位投与剤形には、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤およびドロップ剤が挙げられるが、それらに限定されない。経口投与される場合、タンパク質リガンド(たとえば抗体)は、消化から保護されなければならないことが分かる。このことは典型的には、酸および酵素による加水分解に対する抵抗性を付与する組成物とタンパク質リガンドとの複合体の形成、あるいはリポソームまたは保護バリアのような適当な抵抗性キャリア内への被包化、のいずれかによって成される。消化から保護する保護剤の使用法は、本技術領域においてよく知られている。
投与用の組成物には、薬学的に受容可能なキャリア中、好ましくは水性キャリア中、に溶解したリガンド(たとえば抗体)を挙げることができる。多様な水性キャリア、たとえば緩衝化生理食塩水および類似物、を用いることができる。これらの溶液は、滅菌されており、一般に好ましくない物質を含まない。それらの組成物は、従来の、よく知られた滅菌技術によって滅菌される場合がある。その組成物は、pH調整剤、緩衝化剤、毒性調整剤および類似薬剤のような、生理学的条件に近づけるのに必要とされるような薬学的に受容可能な医薬品添加物、たとえば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムおよび類似物、を含有する場合がある。これらの製剤中の活性物質の濃度は、大きく変わり得るものであり、選択した特定の投与法および患者の要求に従って液用量、粘性、体重および類似案件に基づき主として選択されるであろう(たとえば、Remington’s Pharmaceutical Science (15 ed., 1980)およびGoodman & Gillman, The Pharmacological Basis of Therapeutics (Hardman et al., eds., 1996))。
その薬学的組成物を製剤化するのに用いる成分は、高純度のものが好ましく、有害性を示し得る汚染物質を実質的に含まないもの(たとえば、少なくとも米国食品添加物規格(NF)適合グレードのもの、一般的には少なくとも分析グレードのもの、さらに典型的には少なくとも医薬グレードのもの)である。さらにインビボで用いる予定の組成物は通常、滅菌されている。供用化合物が用時合成を要するものまでも、その由来産物は典型的な場合、毒性を示し得るいかなるもの、特に、合成プロセスまたは精製プロセスで存在する場合があるエンドトキシン、も実質的に含まない。非経口投与用組成物においても、滅菌されていて、実質的に等張であってGMPの諸条件下で製造される。
本発明で提供されるリガンドを含有する組成物は、治療または予報的治療に投与することができる。その組成物は治療に用いる場合、血液凝固疾患に罹患している患者に対し、疾患とその合併症との治療あるいは少なくとも部分的なそれらの抑制に充分な量でもって投与される。このことを成し遂げるのに充分な量は、「治療上の有効投与量」として規定される。このような使用の有効量は、疾患の重篤度およびその患者の健康の全般的状態に依存することであろう。この組成物の単回または多回投与は、患者の要求度および忍容度に合うようなその投与量および投与頻度に依存して行われる場合がある。いずれにしてもその組成物は当然、患者を有効治療するのに充分な量の本発明薬剤を提供するものである。患者の血液疾患の進行の防止または遅延化を可能にするモジュレータの量は、「予防的有効投与量」と呼ばれている。予防的治療に求められるこの特別な投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与経路、有効性、その他のような因子と同様に、患者の医学上の体調および疾病履歴に依存するであろう。
適切な投与量は、本技術領域の当業者によって既知技法を用いて定めることができる(たとえば、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Form and Drug Delivery; Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1−3, 1992), Dekker, ISBN 0824770846, 082476918X, 0824712692, 0824716981; Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); およびPickar, Dosage Calculations (1999)参照)。
ある方法では一般的に、前述規定されたような一種またはそれ以上のリガンドを医学的有効量、患者に投与することが含まれる。リガンドの医学上の有効量とは典型的な場合、体重1kg当り、0.005〜50mgの範囲にある。治療可能な血液凝固疾患には、血友病Aおよび出血性体質が挙げられるが、それらに限定されない。治療される患者群には、血友病の抑制性患者が含まれ得るか、またはそれに限られ得る。
(B. 医療以外の有益性)
前述の諸適用に加えて、このリガンドはいくつかの産業上の応用、たとえばアフィニティークロマトグラフィー法による第IX因子/第IXa因子の精製用、検出法(たとえばELISAアッセイ法)の成分として、あるいは標的タンパク質の機能的ドメインとの相互作用を同定するための薬剤として、用いることができる。
このリガンドは、同定法において用いられる場合、典型的には標識化されている。タンパク質リガンドを標識にコンジュゲートする多様な方法(たとえばHunter et al., Nature, 144: 945 (1962); David et al., Biochemistry, 13: 1014 (1974); Pain et al., J. Immunol. Meth., 40: 219 (1981); およびNygren, J. Histochem. And Cytochem., 30: 407 (1982)参照)が知られている。放射性標識化ペプチドまたは放射性標識化抗体組成物のライフタイムは、それらを安定化し分解から防ぐ物質の添加によって延長することが可能である。放射性標識化ペプチドまたは抗体を安定化するどの物質またはそれらの組合わせも使用可能であり、それらの物質は米国特許第5961955号に開示されている。
以下の実施例は、本発明で提供されるリガンド、組成物および方法のある状況を説明するために提供されるものである。しかしながらこれらの実施例は、決して本発明請求項の領域を限定する意味のものではない。
(実施例1:ハイブリドーマ株化細胞の生成)
Balb/cマウスを、ヒトFIXaを用い1週間間隔で4回、免疫化した。尚、1回の免疫化ごとに100μgの抗原を、アジュバントとしてAl(OH)を用いて注射した。最終免疫化の3日後に脾臓細胞を得て、標準的な手法(Koehler and Milstein, Nature 256: 495 (1975))に従いハイブリドーマ株化細胞を樹立した。各マウスについて、880個のハイブリドーマ株化細胞を96穴プレート内で最初はHAT選択培地中、次に通常の増殖用培地(RPMI−1640)中で、増殖させた。4〜5週間後、細胞上清をスクリーニングアッセイ(以下参照)でFVIII様活性についてスクリーニングした。FVIII様活性を示すと同定された抗体を発現する株化細胞を、4〜6回サブクローニングしてその株化細胞がモノクローナルで安定であることを確かめた。
(FVIII様活性を呈するFIXa特異的抗体の単離。)
FIXaでBalb/cマウスを免疫化し、脾臓細胞を不死化後にハイブリドーマ株化細胞を得るスクリ−ニング手順を用い、FVIIIa様活性を呈示したものを、ヒトFIXaに特異的な一連の抗体として単離した。
(実施例2:スクリーニングアッセイ)
FVIII様活性を呈する抗体を対象としたハイブリドーマ上清のスクリーニングに、市販されているFVIII活性用試験キットであるCOATEST VIII:C/4(登録商標)(Chromogenix社製)を用いた。そのアッセイは、試料および試薬の容量を96穴フォーマットにあわせて減量し、5分後に反応を停止せず、3時間続けて行うこと以外は、キット製造業者の仕様記載に本質的に従って実施した。そのうえさらに20ngのヒトFIXaをウエルごとに加えてそのアッセイの感度を上げた。COATEST VIII: C/4(登録商標)は、オールインワン型のアッセイであって、FIXaによってFXをFXaに分解し、同じ反応ウエル中でFXa特異的な色素原性基質Bz−Ile−Glu−Gly−Arg−pNA(S−2222)の開裂も同時に起こるものであった。FIXaの補因子として機能する特異的抗体によってFIXaの触媒活性を刺激することで、結果としてFXaの生成および従って色素原性基質の開裂が起こった。解離したp−ニトロアニリンを、96穴マイクロプレートリーダー(iEMS−Reader, Labsystems社製、フィンランド)内で波長450nmで計測した。
ハイブリドーマ細胞から得られた個々の上清について、FVIII様活性に関してスクリーニングを行った。概略を述べると、酵素であるFIXa、基質であるFX、リン脂質とCa2+との混合物を、ハイブリドーマ上清と共に温置した。FIXaのプロテアーゼ活性を増大させることが可能である作動性抗体、即ち、FIXa結合性抗体は、FIXaが介在したFXaの形成を加速した。FXaの生成、つまり作動性抗体の存在の明示は、FXa特異的基質を用いてモニターされ、p−ニトロアニリンの遊離をモニターした。非特異的マウスIgGを発現するハイブリドーマ株化細胞の上清は、陰性対照として用いた。並行してハイブリドーマ上清も、ELISAによってFIXa結合性抗体に対する試験を行った。このスクリーニング手順によって、試験した全5280種のハイブリドーマ上清の中から、異なる程度のFIXa作動性活性を示す88種の抗体を発見することができたが、そのハイブリドーマ株化細胞のおよそ60%がFIXa結合性抗体を産生していた。
(実施例3:凝血促進性抗体の製造および精製)
モノクローナルのハイブリドーマ株化細胞は、標準的な増殖用培地(たとえばRPMI−1640)中で2〜3週間増殖させた。IgGは、標準的な手順(たとえば、Jungbauer, A. et al., (1989) J. Chromatogr. 476: 257−268参照)に従ってProtein G− Sepharose 4 Fast Flow (Amersham Biosciences社製)を通過させて精製した。
(実施例4:凝血促進性抗体の機能)
FVIII様の活性を示すすべてのモノクローナル抗体は精製され、さらにFXa生成アッセイでそれらの特性解析が行われた。2種のモノクローナル抗体、198B1および224F3と称する、は、最も著しいFVIII活性を示すものと同定された。これら2種の抗体の詳細な特性に関しては、さらに以下に述べることとした。抗体198B1は、ELISAおよびウエスタンブロット解析でウシまたはネズミのFIXへのいかなる結合も認められなかったため、ヒトFIXおよびFIXaに厳密な意味で特異的であることが判明した。その上、ウシFIXaと共に温置してもFXaの生成が生じなかった。しかしながら抗体224F3は、ヒトおよびウシのFIXおよびFIXaに結合し、ネズミのものには結合しなかった。競合的ELISAによって、この2種の抗体がFIX上の同じ結合部位と相互作用することが明らかになった。これに対してそれらの抗体は、FIXaへの結合に関してFVIIIaと競合しなかった。
(ある種の抗体の活性を誘導する第Xa因子形成の検出)
FXをタンパク質加水分解してその酵素活性型であるFXaに変換することは、FXを内在性の第X因子活性化複合体と接触させて行われた。この複合体は、Ca2+イオンの存在下で負に荷電したリン脂質表面の、補因子であるFVIIIaに結合したプロテアーゼFIXaから成るもの(van Dieijen, G., et al. (1985) Thromb. Haemost. 53: 396−400; およびRosing, etal. (1985) Blood 65: 319−322)とした。FXをFXaに変換する凝血促進性抗体の能力を定量的に測定するために、以下のアッセイが実施された。
反応は、37℃の湯浴中のPPNチューブ(Micronic社製、オランダ)内で行われ、予め以下の組成の反応用溶液、即ち、リン脂質12.8μMとCa2+ 5.9mMとを含有するHNaBSA5−緩衝液(25mM Hepes、175mM NaCl、5mg/ml BSA、pH7.35)220μlを37℃に加温した。次に20μlのFX、20μlのFIXaおよび40μlの各補因子(抗体、または対照としてトロンビンで活性化したrFVIII)を加えてリン脂質10μM、CaCl 5mMおよびBSA 0.5mg/mlを含有する反応混合物を得た。分析の種類によってFIXa、rFVIII、FXおよび抗体の最終濃度は調整された。反応後に時間間隔を変えてその反応混合物中から一部(20μl)を分取し、それを氷冷したEDTA緩衝液(50mM Tris pH8.3、9mM EDTA、428mM NaCl)500μl中に移してFXa形成を停止させた。生成したFXaの量については、前述の希釈液の一部210μlを96穴マイクロプレート内で基質−αNAPAP混合液(5mM Pefachrome FXa (Pefa−5523) + 6μM αNAPAP; Pentapharm)40μlと混合して測定し、色素原性基質の開裂速度(ΔOD/分)をマイクロプレートリーダー中、37℃、波長405nmの吸光度で計測した。FXa濃度は、FXaの既知量で作成した標準較正曲線から、各時点について計算して求めた。
第一組の実験では、11nM FIXa、150nM FXおよび10μM リン脂質小胞体を、5mM Ca2+−イオン含有反応混合液中で、量を変えた抗体(5−200nM)と共に温置し、FXaの生成をFXa特異的色素原性基質を用いて追跡した。抗体224F3では、抗体198B1よりも著しい結果となった。抗体224F3で得られたFXa生成曲線を図2aに示した。抗体が介在したFXaの形成速度(nM FXa/分)の上昇は濃度に依存し、その最適抗体濃度では緩衝液での対照試験例と比較して形成速度は10倍上昇した。陰性対照として緩衝液または非特異的ポリクローナルマウス抗体での試験を行ったが、いすれも同じバックグランド活性を示した。比較試験として、天然の補因子であるFVIIIa 17.5pMの存在下でFXa生成アッセイも実施した。そのFVIIIaで得られた曲線は、ほぼ5分間直線となり、その後FXa生成は止まった。これはおそらくFVIIIaのA2ドメインの解離によって不活性化したためと思われる。抗体によるFXaの生成曲線は、少なくとも30分直線であった。さらにその抗体滴定値は、FXaの形成速度に対して用量依存的効果を示した(図2b)。FIXa濃度11nMにおいては、直線状の用量反応性は、約5nMのmAb濃度まで(即ち、FIXa分子当り1個の結合部位の存在に至るまで)得られた。抗体濃度が10〜30nMの間である時、FXの活性化速度は最大に達し、それより高い抗体濃度では減少した(図2b)。FIXa濃度50nMの場合では、抗体濃度25nMまで直線性が得られた(データは示さず)。従って、直線的な用量反応性は、FIXaが抗体で飽和されるまで観察することができた。
反応混合物からFIXa、FX、リン脂質またはCa2+イオンが省かれると、検出可能な量のFXaは形成されなかった。基質であるFXが僅かな量のFXaによってその自動触媒的活性で開裂する可能性を排除するために、FXa生成アッセイは60μMのPefablock Xa(登録商標)(Pentapharm社製)の存在下で行った。Pefablockは、この濃度ではFXaの活性を完全に抑制する競合的FXa阻害剤となった。EDTA緩衝液中へのサブサンプリング後にPefablockは、FXaの定量を可能にする濃度である2μMまで希釈された。尚、Pefablock Xa(登録商標)が存在する時と存在しない時とも、同じFXa生成速度が得られた。これらの結果から、反応混合物中に存在するかまたは生成するFXaが抑制される時にFXa形成が起こり、抗体介在性FXa生成への自動触媒反応の関与の可能性が排除されることが示された。要約すると、この段落で述べられた実験によって、これらの抗体がバイパス反応を触媒したり誘発することはなく、そのかわりにFIXaによるFXのタンパク質加水分解活性化に対する特異的補因子として機能することが示された。
(実施例5:SPR−測定)
FIXaの抗体との相互作用については、BIACORE 300 Instrument(Biacore社製、Uppsala、スェーデン)を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)技法によって研究した。ポリクローナル抗マウスFc抗体をCM5センサーチップ表面に固定化し、各々のモノクローナル抗体で飽和させた。対照としては、非特異的なマウスIgGを用いた。異なる数種の濃度のFIXaをそのチップに適用して流通させ、その親和性定数は、BIACORE内蔵プログラムを用いる定常状態解析によって計算された。定常状態の結合から計算された解離速度定数(Kd)、即ち、抗体224F3では4.77×10−10M、および抗体198B1では3.55×10−9M、は、速度論的曲線によく一致していた。抗体224F3は、FIXaに対して最大の親和性を示し、全ての場合でその結合は5mM CaClの存在下で抗体198B1のそれより強かった。
図1は、5mM CaClの存在下で、抗マウスFcγ(RAMFc)によって捕捉された2種の異なるモノクローナル抗体への、5.56nM FIXaの結合を示したものである。FIXaは、3mM EDTAの存在下では抗体への親和性が弱まり、非特異的マウスIgGには結合しなかった。
(実施例6:トロンビン生成)
FVIII除去血漿またはFVIIIインヒビタ−血漿は、アンクロッド1U/mlを用いてプラスチック攪拌棒で線維素除去された。線維素除去された血漿200μlおよび予め希釈された抗体溶液10μlを、マイクロチューブ内で混合した(図4および5参照)。対照として、FVIII除去血漿の代わりにrFVIIIを、インヒビタ−血漿の代わりにFEIBA(登録商標)を用いて行った。mAb、rFVIIIおよびFEIBA(登録商標)の各濃度については、「図面の簡単な説明」の関連項に記載されているものとした。その混合液は予め5分間、37℃に加温され、そのうちの10μl分を、氷冷したキュベット内緩衝液(50mM Tris,、175mM NaCl,、0.5mg/ml オボアルブミン、20mM EDTA、pH7.9)740μl中に移してそのゼロ点を測定した。その後でPathromtin SL(Dade Behring社製;37℃に予備加熱したもの)87.5μlおよび162.5mM CaCl含有HNBSA5(37℃に予備加熱したもの)25μlを加えて内在性血液凝固経路を介するトロンビン形成を開始させた。反応後に異なる時間間隔で、反応混合物からその一部分(10μl)を、氷冷したキュベット内緩衝液740μl中に移してトロンビンの形成を停止させた。その希釈部分中に存在するトロンビン量を、トロンビン特異的色素原性基質S2238(Chromogenix社製)を用いてマイクロプレートリーダー内で測定した。トロンビンの濃度は、既知量のトロンビンで作成した標準較正曲線から、各時点に対して計算した。
実験の試薬の詳細を以下に述べる。ヒト凝固因子FIX、FIXa、FX、FXaおよびα−トロンビンは、Enzyme Research Laboratories(USA)から購入した。組換えヒト第VIII凝固因子(rFVIII)(RECOMBINATE(登録商標))は、Baxter BioSciences(USA)によって製造されたものである。BSAは、Calbiochem(USA)から購入した。ヒトFVIII枯渇化血漿は、Baxter BioSciences(オーストリア)によって免疫除去処理で製造されたものであり、ヒトFVIIIインヒビタ−血漿は、Technoclon(オーストリア)によって患者血漿から製造されたものである。非特異的ポリクローナルマウスIgGはSigma(USA)から購入した。リン脂質小胞体(DOPC:POPS 60:40)は、合成リン脂質(Avanti Polar Lipids社製、USA)からBaxter BioScience(オーストリア)によって製造されたものである。Pathromtin SLはDade Behring(USA)から購入し、アンクロッドはNIBSC(英国)から購入した。FEIBA(登録商標)およびDAPPTINは、Baxter BioScience(オーストリア)から入手した。
FVIIIaとセリンプロテアーゼであるFIXaとの相互作用は、エフェクター機能の突出した例であった。補因子であるFVIIIaがFIXaへ結合することで、FIXaのFX開裂活性が増大するようなFIXaの高次構造の変化が特に起こって、FIXa酵素のプロテアーゼ活性が低活性型から高活性型に変換する結果となった。プロテアーゼFIXaにおける同様な高次構造の変化を引き起こす特異的抗体のスクリーニングのために、市販されている第FVIII因子用測光アッセイを、血漿中のFVIII活性測定に広く使用されるように適合させた。スクリーニングした株化細胞の60%がFIX結合性抗体を発現したが、我々のスクリーニングではそのハイブリドーマ上清のわずか1.6%のみがFVIII様活性を示した。我々の仮定ではこのことは、FIXaの活性化が稀に見られることを指すものであった。速度論的な諸実験によって、その抗体がFIXaの触媒活性(kcat)を約10倍上昇させる一方、FIXaに対するFXのK値にはほとんど影響を及ぼさないことが示された。FVIIIは主としてFIXaのkcat値を上昇させ、その抗体−FIXa複合体を伴うことでFVIIIのFIXaに対する効果は、Ca2+イオンおよびリン脂質の存在に厳密に依存した。従って、FVIIIによって起こる高次構造変化と本発明の抗体によるものとは同じであるとの結論を得ることができた。分析された凝血促進性抗体は、FIXa結合に関してFVIIIと競合しなかったが、互いに競合した。このことから「ホットスポット」は、相応な高次構造変化の原因にはほとんどならないことが示された。
この抗体のエフェクター機能は、血漿アッセイで確認された。FXa生成アッセイとは対照的に、精製タンパク質を含有するモデル系を用いる血漿アッセイでは、FXIIaからトロンビン形成までの厳密な全凝固経路が探究され、抗トロンビンおよびa−マクログロブリンで活性化した凝固因子の不活化も探究された。血漿アッセイにおいてこの抗体は、それによってFIXが飽和されるまで用量依存的な有効性を示した。この有効性はFVIIIの場合よりも低く、それはモデル系で得られた速度論的データと一致していた。その抗体は、ほかの凝固反応に影響を及ぼさず、しかも血漿中のプロテアーゼ阻害物質による活性化凝固因子の不活化にも影響を及ぼさなかった。この結論は、トロンビン生成曲線がその抗体とFVIIIとの両方でトロンビンの同一のバーストと不活化とを示すという所見に基づくものであった。FVIII除去血漿中およびFVIII抑制性血漿中には、FVIII様活性も検出され、FVIIIに対して指向する抑制性抗体が凝血促進性抗体の活性には影響しないという証拠が得られた。
(実施例7:インビボでのマウスモデルにおける抗体224F3の凝血促進活性の試験)
(実験用材料:)
第IX因子ノックアウトマウスは、体重25g超のオスおよびメスを用いた。ヒトFIXはEnzyme Research Laboratories(USA)から購入した。モノクローナル抗体224F3(サブクローン224 AE3)は、実施例1、2および3で述べたように調製した。非特異的ポリクローナルマウスIgGは、Sigma(USA)から購入した。FIX、抗体224F3および非特異的マウスIgGは、適用緩衝液(68mM NaCl,、100mM グリシン、20mM L−ヒスチジン、pH7.2 + 0.1% BSA)で希望する濃度に希釈した。FVIII抑制性血漿は、ヤギにヒトFVIIIを多回注射して作らせ、血漿交換法によって採取し、56℃で2時間加熱して不活化させた。このインヒビタ−血漿の力価は2000BUを示した。正常なヤギ血漿は、非免疫化ヤギから採取し、同様に処理した。
(方法:)
20匹のFIXノックアウトマウスは、FVIIIインヒビタ−血漿(ヤギ体内産生、20ml/kg)で処置してさらにFVIIIの免疫除去も行った。1時間後にヒトFIXをそのマウスに注射(300U/kg=1500μg/kg)してFIX欠乏状態を打破した。従ってそれらのマウスは、FVIIIインヒビタ−をもつ患者に相当する動物モデルとなった。10分後にそれらのマウスを抗体224F3で処置(2000μg/kg)した。さらにその10分後に尾を(末端から1cmの位置で)切り取り、TurecekらがThrombosis and Haemostasis 77 (3), 591−599 (1997)で述べたような方法によって出血特性を測定した。
20匹のマウスには、正常なヤギ血漿で処置(20ml/kg)した。1時間後にそのマウスにヒトFIXを注射(300U/kg=1500μg/kg)した。10分後にそれらのマウスを抗体不含の緩衝液で処置(10ml/kg)した。さらにその10分後に尾を(末端から1cmの位置で)切り取り、出血特性を測定した。これらのマウスは、FIX活性およびFVIII活性を提示するような陽性対照群として役立ち、ゆえにそれらは正常な出血特性を示した。
20匹のFIXノックアウトマウスには、FVIIIインヒビタ−血漿(ヤギ体内産生、20ml/kg)で処置してさらにFVIII免疫除去処置を行った。1時間後にそれらのマウスにヒトFIXを注射(300U/kg=1500μg/kg)してFIX欠乏状態を打破した。従ってそれらのマウスは、FVIIIインヒビタ−をもつ患者に相当する動物モデルとなった。10分後にそれらのマウスを、非特異的マウスIgGで処置(2000μg/kg)した。さらにその10分後に尾を(末端から1cmの位置で)切り取り、出血特性を測定した。これらのマウスは、FVIIIインヒビタ−をもつ患者に相当する動物モデルとなり、さらに非活性抗体で処置されたうえ、陰性対照群として従って提供された。
(結果:)
血液損失量は、マウス各個体について2分ごとに測定した。各群20匹のマウスの結果を平均し、それらを図9に示した。図9には、各時間間隔での最初の16分間に観察された血液損失量を示した。FVIII活性が完全に保持されている対照群(FVIII免疫除去処理していない群)では、尾を切り取ってからの最初の2分間で血液損失量は約60μlであった。この対照群では、血液損失量は尾を切り取ってから14−16分後の時間間隔で約15μlにまで連続的に減少していった。FVIIIの免疫除去および抗体224F3での処置の後では、血液損失量は同様の特性、即ち、最初の2分間での血液損失量が50μlであり、時間間隔(2分間)当り約20μlずつ減少した、を示した。このことは、血液凝固が起こって血液損失がゆっくりになることを示したものである。第二の対照群の場合では、そのマウス血液損失特性は、FVIII活性が全くないことを示した。即ち、最初の血液損失量の測定値は同じく50μlであったが、血液損失量の減少は認められず、8分後には逆に増加した。
図10は同じデータを示すものだが、全血液損失量で表示した。非特異的マウスIgGで処置された群の血液損失量は、それ以外の二つの群におけるものよりも大きく、16分後の全血液損失量は350μlに達した。抗体224F3で処置されたマウスまたはFVIII免疫除去されていないマウスでは、最初の16分間で同様の血液損失特性を示し、最初の16分間での全血液損失量は約220μlであった。抗体224F3で処置した20匹のマウスおよび非特異的マウスIgGで処置した20匹のマウス(陰性対照群)の、最初の16分以内の血液損失速度は、Studentのt検定を適用して比較した。両群の差は統計学的に有意(p<0.02)であることが判明された。
(実施例8:抗体224F3の誘導体の開発)
(基本方針:)
凝血促進性抗体224F3の凝血促進活性能がさらに高められたその誘導体は、たとえばそのVLおよび/またはVHをエンコードする配列内に変異を導入することによって、開発することができた。そのような変異は、本技術分野におけるクローニング技法および細菌用発現ベクターを用い、scFvのフォーマットにVHとVLとの遺伝子を収容して行うのが好ましいものであった(たとえば、本明細書の第II節のパートCに挙げた方法を参照)。導入可能な変異例のリストとしては、(i) VHおよび/またはVL内への特異的な変異、(ii) VHおよび/またはVLの全配列を通して分布したランダム変異(たとえば誤り傾向PCRによるもの)または(iii)特異的CDR内でのランダム変異、が挙げられる。これらの変異型誘導体は、ファージディスプレイ技術で予備選択することができ、それによってヒトFIXaに結合可能なscFv変異体の存在率を高めることができた。その変異体は、標準的な発現技法を用いて上清中に発現させることができ、たとえば以下のアッセイを用いてFVIII様活性に関するスクリーニングを行うことができた。
(ヘキサ−ヒスチジン−タグを含む抗体フラグメントのFIXa活性化能を測定するための蛍光アッセイ:)
(材料:)
緩衝液:
・TBS: 25mM Tris, 150mM NaCl pH7.5
・TBS/2%BSA: 2g BSA/100ml TBS
・HNa: 25mM HEPES, 175mM NaCl, pH7.35
・HNaBSA5: 5mg BSA/ml HNa−緩衝液
試薬:
・Penta−HIS抗体、BSA不含(Qiagen社製)
・hFIXaβ(ERL)
・hFX(ERL)
・リン脂質:
・蛍光原性基質Pefafluor FXa: CHSO−D−CHA−Gly−Arg−AMC.AcOH(Pentapharm LTD製)
・PL/Ca++/hFX/蛍光原性基質−ミックス: 最終濃度:4.3mM CaCl; 9.4μM PL; 29.3nM hFX; 167μM 蛍光原性基質
(方法:)
マイクロプレートのウエルを2μg/mlのPenta−HIS抗体で被覆後、TBS/2% BSAでブロッキングした。発現された224F3変異体(たとえば、scFvフォーマット)を含有する細菌上清をTBS/2% BSAで希釈し、ウエル内で温置した。そのプレートを洗浄し、ヒトFIXa(1μg/ml、HNaBSA5での希釈溶液)とともに温置した。洗浄後、PL/Ca++/hFX/蛍光原性基質−ミックスを注加した。蛍光シクナルの生成を蛍光リーダー内で計測した。FVIII様活性を有するscFvがウエル表面に固定化されと、FXa生成の増大および蛍光シグナル生成の促進を観測することができた。
(抗体224F3の誘導体の例:)
前述の方法を用いて抗体224F3の数種の変異バージョンを構築し、FIXaβへの結合性についてはELISAによって分析し、FVIII様活性については蛍光アッセイによって分析した。表2には、構築された点変異種、およびその変異が抗体の結合能および/またはFIXa活性化能に影響するか否かを示した。特にこの表には、224F3抗体−scFv内の特異的変異、ならびにそれに引き続いてのFIXaβ結合能に関する試験(ELISA)およびFIXa活性化能に関する試験(蛍光アッセイ)の結果を示した。野生型scFvに類似した活性は(+)で示され、野生型の活性よりも有意に低い活性は(−)で示された。名称に関しては、たとえばS31Iとは、重鎖(H1−ループ内の)31番目のアミノ酸(セリン、S)がI(イソロイシン)に置き換わっていることを意味するものとした。
Figure 0004887148
尚、本明細書の中で引用されたすべての刊行物、配列の受け入れ番号、および出願特許は、参照によって本発明に受け入れられるものであって、その個々の刊行物または出願特許は参照によって受け入れられるように特定的および個別に示されるようなものである。
図1は、BIACORE 300 Instrument (Biacore AG, Uppsala, Sweden)を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)法により計測された、5mMのCaCl存在下での抗体198B1(国際公開第01/19992号)および抗体224F3とFIXaとの相互作用の反応速度を示す。さらに具体的にはこの図は、5mM CaClの存在下、抗マウスFcγ(RAMFc)によって捕捉された前述2種の異なるモノクローナル抗体(Mabs)への5.56nMのFIXaの結合性を示す。分析中に5.56nMのFIXaを注入し、5分間会合させ、解離を12分間モニターした。横軸に時間を秒で示し、縦軸に任意の単位での相対反応を示す。 図2は、FIXaで触媒されるFXの活性化に対する凝血促進性抗体224F3の効果を示す。図2Aは、種々の抗体濃度でのFXa生成の時間推移(横軸:t(分);縦軸:FXa (nM); *:15pM FVIIIa; 黒菱形:10nM 224F3; 白四角:5nM; 黒四角:4nM; 白三角:3nM; 黒三角:2nM; 白丸:1nM 黒丸:緩衝液)である。図2Bは、抗体の滴定曲線(横軸:224F3(nM); 縦軸:FXa形成速度(nM/min))である。 図2は、FIXaで触媒されるFXの活性化に対する凝血促進性抗体224F3の効果を示す。図2Aは、種々の抗体濃度でのFXa生成の時間推移(横軸:t(分);縦軸:FXa (nM); *:15pM FVIIIa; 黒菱形:10nM 224F3; 白四角:5nM; 黒四角:4nM; 白三角:3nM; 黒三角:2nM; 白丸:1nM 黒丸:緩衝液)である。図2Bは、抗体の滴定曲線(横軸:224F3(nM); 縦軸:FXa形成速度(nM/min))である。 図3は、抗体−FIXa複合体、FVIIIa−FIXa複合体、およびエフェクターを伴わないFXによる、FIXaで触媒されるFXの活性化の速度論的解析を示す。速度論的パラメータは、表1下方にまとめている(横軸:FX(nM); 縦軸:FXa形成速度(nM/min); 黒丸:25nMマウスIgG; 黒三角:25nM抗体198B1; 白三角:25nM抗体224F3; 黒四角:5pM FVIIIa)。 図4は、FVIII除去血漿中でのトロンビン生成の時間推移を示す。グラフは、抗体の存在および非存在でのFVIII除去血漿中でのトロンビン生成を示す(実線:FVIII除去血漿; 黒丸:40nM抗体198B1; 白三角:40nM抗体224F3; 黒三角:20mU/ml FVIII、横軸:t(min)、縦軸:トロンビン(nM))。 図5は、FVIIIインヒビタ−血漿中でのトロンビン生成の時間推移を示す。グラフは、異なる濃度のFEIBA(登録商標)または凝血促進性抗体224F3の存在下でのFVIIIインヒビタ−血漿中でのトロンビン生成を示す。陰性対照としては、非特異的マウスIgG抗体存在下および補充物質を加えない条件でのFVIIIインヒビタ−血漿中におけるトロンビン生成を示す。上側のグラフ:横軸t(min); 縦軸:トロンビン(nM); 白四角:0.5U/ml FEIBA(登録商標); 黒四角:0.3U/ml FEIBA(登録商標); 白三角:0.2U/ml FEIBA(登録商標); 黒四角:0.1U/ml FEIBA(登録商標); 実線:0nM FEIBA(登録商標)。下側のグラフ:横軸: t(min); 縦軸: トロンビン(nM); 白四角:250nM抗体224F3; 黒四角:60nM抗体224F3; 白三角:25nM抗体224F3; 黒三角:6.25nM抗体224F3; 実線:100nM非特異的マウスIgG。 図6および図7は、抗体224F3の可変部重鎖Vの配列(配列番号:1)および可変部軽鎖Vの配列(配列番号:2)を示す。 図6および図7は、抗体224F3の可変部重鎖Vの配列(配列番号:1)および可変部軽鎖Vの配列(配列番号:2)を示す。 図8は、抗体224F3のCDR(相補性決定領域)のL1−L3配列(配列番号:3〜5)およびH1−H3配列(配列番号:6〜8)を示す。各アミノ酸残基の表示は、抗体224F3の各々のポリペプチド鎖内のそれぞれのアミノ酸残基の位置に一致する。その残基数は、L1−L3およびH1−H3の配列、即ち配列番号:3〜8、が導入されるフレームワークで変動するであろう。従ってそれらの表示は、配列番号:3〜8による配列の一部を形成するものではない。そのためそれらの表示は、それらの配列を限定するものとはみなされないであろう。 図9は、正常なヤギ血漿とヒトFIXとによる処置(免疫除去を伴わないもの、黒色の棒部分);インヒビタ−血漿と、ヒトFIXとリガンドとしての抗体224F3とによる処置(灰色の棒部分);およびインヒビタ−血漿と、ヒトFIXと非特異的IgG抗体とによる処置(細平行線のある棒部分)がなされたFIXノックアウトマウスについて、表示された時間間隔(横軸)の関数として血液損失量μl(縦軸)を示す。 図10は、正常なヤギ血漿とヒトFIXとによる処置(免疫除去を伴わないもの、丸印); インヒビタ−血漿、ヒトFIXとリガンドとしての抗体224F3とによる処置(黒三角印); およびインヒビタ−血漿、ヒトFIXと非特異的IgG抗体とによる処置(黒四角印)がなされたFIXノックアウトマウスに関する、時間の関数としての全血液損失量μl(縦軸)を示す。

Claims (18)

  1. 配列番号:3に記載の配列を含むCDR1、配列番号:4に記載の配列を含むCDR2および配列番号:5に記載の配列を含むCDR3を有するVドメインと、
    配列番号:6に記載の配列を含むCDR1、配列番号:7に記載の配列を含むCDR2および配列番号:8に記載の配列を含むCDR3を有するVドメインと
    を含み、
    第IX因子または第IXa因子に結合可能であって第IXa因子の凝血促進活性を増大させることが可能な、抗体であって、
    該抗体は、抗体198B1と比較して高い触媒効率を示し、ここで、
    該V ドメインが配列番号:2と少なくとも95%の同一性を有し、前記V ドメインが配列番号:1と少なくとも95%の同一性を有する、抗体。
  2. 前記 ドメインが配列番号:1挙げられるアミノ酸配列に少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含み、前記V ドメインが配列番号:2に挙げられるアミノ酸配列に少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
  3. 前記 ドメインが配列番号:1挙げられるアミノ酸配列を含み、前記V ドメインが配列番号:2に挙げられるアミノ酸配列を含む、請求項1または記載の抗体。
  4. 前記抗体がIgG抗体である、請求項1に記載の抗体。
  5. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
  6. 前記抗体が抗体フラグメントである、請求項1に記載の抗体。
  7. 前記抗体が組換え抗体である、請求項1に記載の抗体。
  8. 前記抗体が単鎖抗体である、請求項7に記載の抗体。
  9. 前記抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
  10. 前記抗体が標識されている、請求項1に記載の抗体。
  11. 請求項1に記載の抗体を発現する細胞。
  12. 請求項1に記載の抗体をコードする核酸。
  13. 請求項11に記載の細胞を培養する工程を包含する、第IX因子または第IXa因子に結合可能な抗体を作製する方法。
  14. 請求項12に記載の核酸を細胞内で発現させる工程を包含する、第IX因子または第IXa因子に結合可能な抗体を作製する方法。
  15. 請求項1に記載の抗体ならびに薬学的に受容可能なキャリアおよび/または希釈剤を含む、薬学的組成物。
  16. 前記薬学的組成物が、さらに第IX因子、第IXaα因子、第IXaβ因子および/または第IXα因子を含む、請求項15に記載の薬学的組成物。
  17. 薬学的に有効な量の請求項1に記載の抗体を含有する、血液凝固障害を罹患する患者を処置するための組成物。
  18. 前記血液凝固障害が、血友病Aまたは出血性体質である、請求項17に記載の組成物。
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