JP4886630B2 - 作業車のエンジン排気構造 - Google Patents

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本発明は、エンジンから延設された排気管を、その延出端部が車体の横側方に位置するように形成してある作業車のエンジン排気構造に関する。
上記のような作業車のエンジン排気構造としては、断面形状が円形の排気管を、その延出端部が車体の左前方に向かうように屈曲形成したものがある(例えば特許文献1参照)。
また、排気管を、その先端開口端が車体の左後方に向かうように屈曲形成し、かつ、先端開口端の下部に、排気管の内方に向けて突出する山形の突曲部を、その開口端側ほど内方突出量および周方向幅が大きくなるように排気管の排気方向に沿って形成したものがある(例えば特許文献2参照)。
特開2006−315571号公報 実公平5−7457号公報
前者の構成では、排気管の排出口から排出した排気が車体に向かうことを抑制するために、排気管の延出端部を車体の左前方に向けるようにしている。しかしながら、排出口の形状が排気管の断面形状と同じ円形であるために、エンジンからの排気が、排気管の排出口から円錐状に均等に拡散された状態で、車体の左前方に向けて排出されることになる。そのため、排気管の排出口から排出した排気の一部が、車体の左前側部に向かうようになる。これにより、車体の前部側に吸気部を備えた作業車においては、排気管の排出口から排出した排気を、冷却外気とともに吸気口から吸引する可能性が高くなり、排気を吸引した場合には、その吸引に起因した冷却効率の低下を招くことがある。
作業車の一例であるトラクタにおいては、車体の後部に重量の大きい耕耘装置などの後部配備型の作業装置を連結する場合には、車体の前後バランスの均衡を保つために、車体の前端部に左右幅の広いバンパー兼用のバランスウエイトを装備することがある。また、車体の前部に、フロントローダや散布装置などの前部配備型の作業装置を連結することがある。
しかしながら、前者の構成において、作業車の前端部にバンパー兼用のバランスウエイトや前部配備型の作業装置を連結すると、排気管の排出口から排出した排気の一部が車体の左前側部に向かうことにより、バランスウエイトや作業装置の左側部分に排気がかかり易くなる。そのため、バランスウエイトや作業装置に排気がかかることに起因して、バランスウエイトや作業装置が部分的に黒ずむ不都合を招き易くなる。
一方、後者の構成では、排気管の排出口から排出した排気が車体に向かうことを抑制するために、排気管の先端開口端を車体の左後方に向けるようにしている。しかしながら、先端開口端の下部に山形の突曲部を形成したために、エンジンからの排気が、排気管の排出口から左右方向に大きく拡散された状態で、車体の左後方に向けて排出されることになる。そのため、排気管の排出口から排出した排気の一部が、車体の左後側部に向かい易くなる。これにより、車体の後部側に搭乗運転部を備えた作業車においては、排気管の排出口から排出した排気が搭乗運転部に及ぶ虞ある。
また、排気管の内方に向けて突出する突曲部を形成することにより、排気管の先端開口端での開口面積が基端側での開口面積よりも小さくなる。そのため、背圧が高くなって排気の流れに悪影響を及ぼす虞がある。
本発明の目的は、排気が車体側に拡散することに起因した冷却効率の低下やバランスウエイトや作業装置の黒ずみなどをより効果的に抑制することにある。
上記の目的を達成するため、本発明では、
車体と、前記車体の前後方向に沿う車体フレームと、前記車体フレームの前方先端部に設けられたバランスウェイトと、前記車体に搭載されたエンジンと、を備え、前記エンジンから前記車体前方に向けて開口延設した排気管を、その延出端部が前記車体フレームの横側方に位置するように形成してある作業車のエンジン排気構造において、
前記延出端部における車体に面する内側部分のみが、その延出端側ほど前記排気管の中心側に位置するとともに上下方向に大きく拡径された扁平状となるように、前記延出端部を形成してあることを特徴とする。
この特徴構成によると、排気管の延出端部においては、排気管の内部を通る排気のうち、排気管の内側部分に沿って流れる排気が、排気管の車体から離れる外側部分に向かうように案内されながら、その外側部分に沿って流れる排気とともに、排気管の延出端に形成した排気口から、上下方向に大きく拡散されながら排出される。
これにより、排気管の排気口から排出された排気が、車体の吸気部、車体の前端部に連結したバランスウエイトや作業装置、あるいは搭乗運転部に向かうことを効果的に抑制することができる。
また、延出端部の内側部分を排気管の中心側に寄せるとともに上下方向に拡径することにより、延出端部での開口面積が小さくなることを防止することができる。これにより、延出端部での開口面積が小さくなることに起因して背圧が高くなる虞を未然に回避することができる。
ところで、排気の車体側への拡散を抑制する方法としては、延出端部を、その内側部分と外側部分とが互いに接近する扁平な小判形に形成することも考えられる。しかしながら、この場合には、排気管の内部を通る排気のうち、排気管の内側部分に沿って流れる排気は車体から離れる反面、排気管の外側部分に沿って流れる排気は車体に近づくことになる。また、延出端部の内側部分と外側部分の双方を排気管の中心側に寄せることから、内側部分の中心側への変位量が外側部分の中心側への変位量により制限される。
これに対し、本発明は、延出端部の内側部分のみを、その延出端側ほど排気管の中心側に位置するように形成するだけであることから、排気管の外側部分に沿って流れる排気が車体に近づくことはなく、また、内側部分の中心側への変位量が外側部分の中心側への変位量により制限されることもない。
従って、排気管における延出端部の内側部分を、その延出端側ほど排気管の中心側に位置するとともに上下方向に大きく拡径された扁平状に形成することにより、排気管の排出口から排出した排気を冷却外気とともに吸気口から吸引することに起因した冷却効率の低下、その排気がバランスウエイトや作業装置などにかかることに起因したバランスウエイトや作業装置などの部分的な黒ずみ、その排気が搭乗運転部に及ぶことに起因した居住性の低下、および、延出端部での開口面積が小さくなって背圧が高くなることにより排気の流れに悪影響を及ぼす虞、などを効果的に抑制することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明に係る作業車のエンジン排気構造を、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1にはトラクタの全体側面が示されている。図2にはトラクタ前半部の縦断側面が示されている。図3にはトラクタ前半部の縦断平面が示されている。これらの図に示すように、トラクタの前部には、水冷式のエンジン1やラジエータ2などを備えて原動部3が形成されている。ラジエータ2は、エンジン1の前方に位置するように、エンジン1の下部から前方に向けて延設した前部フレーム4(車体フレームに相当する)に立設されている。前部フレーム4の下部には前車軸ケース5がローリング可能に装備されている。前車軸ケース5の左右両端部には、エンジン1からの動力で駆動される左右一対の前輪6が操向可能に装備されている。
図1に示すように、トラクタの後部には、左右の前輪6に連係されたステアリングホイール7や運転座席8などを備えて搭乗運転部9が形成されている。搭乗運転部9の左右外方には、エンジン1からの動力で駆動される左右一対の後輪10が配備されている。搭乗運転部9の下方には、主変速装置として機能する静油圧式の無段変速装置11や、内部に副変速装置として機能するギヤ式の変速装置(図示せず)などを備えたミッションケース12などが配備されている。
ミッションケース12の後部には、ミッションケース12の内部に備えた油圧シリンダ(図示せず)の作動で昇降揺動する左右一対のリフトアーム13や、エンジン1からの動力の外部への取り出しを可能にする動力取出軸14などが装備されている。これにより、このトラクタは、その後部にロータリ耕耘装置やプラウなどの作業装置を駆動昇降可能に連結することができる。また、このトラクタは、ロータリ耕耘装置などの駆動型の作業装置に対する動力の取り出しが可能となるように構成されている。
図1〜4に示すように、前部フレーム4の前端部には、前部フレーム4よりも左右幅が広くなるように形成したバンパー兼用のバランスウエイト15が着脱可能に連結されている。そして、このバランスウエイト15を取り外すことにより、バランスウエイト15との連結部(図示せず)を利用して、肥料や薬剤を撒布する撒布装置(図示せず)などの前部配備型の作業装置や付属機器などを装備することができる。
原動部3には、エンジン1やラジエータ2などを覆うボンネット16が装備されている。ボンネット16は、エンジン1やラジエータ2などの左右外方に着脱可能に立設した左右一対のサイドカバー17、トラクタの前端部に立設したフロントグリル18、および、エンジン1やラジエータ2などの上方に開閉可能に配備した上部カバー19、などにより構成されている。左右のサイドカバー17には排気部17Aが形成されている。フロントグリル18には、吸気部18Aが形成されるとともに左右一対のサイドライト20が備えられている。上部カバー19は、その前端部に左右一対のヘッドライト21が備えられている。
図1〜3、図5および図6に示すように、原動部3において、エンジン1とラジエータ2との間には、エンジン1からの動力で回転駆動されるラジエータファン22が配備されている。ラジエータ2には、その排気面およびラジエータファン22を覆うファンシュラウド23が装備されている。ファンシュラウド23には、ラジエータファン22をエンジン1に臨ませる通気用の開口23Aと、ボンネット16の内面に向けて延出するフランジ部23Bとが形成されている。フランジ部23Bの外縁には、その外縁とボンネット16および前部フレーム4などとの隙間を埋めるゴム製のトリム24が装着されている。
つまり、ファンシュラウド23は、ボンネット16の内部空間を、ラジエータ2から前側の冷却外気取入空間25と、ラジエータ2よりも後側のエンジンルーム26とに区画する隔壁に兼用されている。これにより、隔壁を専用部材で構成する場合などに比較して構成の簡素化などを図りながら、ラジエータファン22の作動により、エンジンルーム26内の熱気が、ボンネット16とファンシュラウド23との隙間を通って冷却外気取入空間25に回り込み、フロントグリル18の吸気部18Aから取り込まれた冷却外気とともにラジエータ2の吸気面側から吸引されることによる冷却効率の低下を防止することができる。
図1〜4および図7に示すように、エンジンルーム26には、エンジン1とともにエアクリーナ27やマフラ28などが配備されている。エアクリーナ27はエンジン1の右上方に配置されている。マフラ28はエンジン1の左上方に配置されている。
マフラ28は、エンジン1の排気マニホールド29に接続された排気管30に介装されている。排気管30は、マフラ28の前端部から延出する排気方向下手側部分30Aの全体が、平面視において前部フレーム4とボンネット16における左側のサイドカバー17との間に位置するように配置されている。
排気管30の排気方向下手側部分30Aは、そのマフラ側が、エンジン1とラジエータ2との間を通るように垂下し、かつ、その延出端側が、前部フレーム4と左側のサイドカバー17との間を通ってエンジンルーム26から前部フレーム4の左真横位置に抜け出し、前部フレーム4の左真横位置において、前部フレーム4と左側の前輪6との間を通って、その延出端部30aが左側の前輪6よりも車体前方側に位置するように屈曲形成されている。
排気管30の延出端部30aは、排気管30の排気口30bから排出された排ガスが左側の前輪6の前下方に向かうように、左前下方向きの適正な角度に設定されている。
ちなみに、排気管30における延出端部30aの車体に対する左右方向の角度は、車体の前後方向に沿う基準線から30度までの範囲内に設定されている。
この構成から、排気管30の排気口30bから排出される排気が、前車軸ケース5、左側の前輪6、および搭乗運転部9、に向かうことを防止することができるとともに、前部フレーム4、バランスウエイト15、およびフロントグリル18、あるいは、バランスウエイト15と付け換えた前部配備型の作業装置、などに向かうことを抑制することができる。
図1〜4、図7および図8に示すように、排気管30には、断面形状円形のパイプ材が採用されている。排気管30の延出端部30aは、前部フレーム4に面する内側部分30aaが、その延出端側ほど排気管30の中心側に位置して上下方向に拡径される扁平状に変形されている。
この構成から、排気管30の延出端部30aにおいては、排気管30の内部を通る排気のうち、排気管30の内側部分30aaに沿って流れる排気が、排気管30の前部フレーム4から離れる外側部分30abに向かうように案内されながら、その外側部分30abに沿って流れる排気とともに排気口30bから上下方向に拡散されながら排出される。
これにより、排気管30の排気口30bから排出された排気が、前部フレーム4、バランスウエイト15、およびフロントグリル18、あるいは、バランスウエイト15と付け換えた前部配備型の作業装置、などに向かうことをより効果的に抑制することができる。
また、延出端部30aの内側部分30aaを排気管30の中心側に寄せるとともに上下方向に拡径することにより、延出端部30aでの開口面積が小さくなることを防止することができ、延出端部30aでの開口面積が小さくなることに起因して背圧が高くなる虞を未然に回避することができる。
つまり、排気管30の排気方向下手側部分30Aを、平面視において前部フレーム4とボンネット16との間に位置するように配置設定して、排気により昇温する排気管30の排気方向下手側部分30Aがボンネット16から横外方に突出することを防止するようにしながらも、排気管30の排気口30bから排出された排気が冷却外気とともにフロントグリル18の吸気部18Aから吸引されることに起因した冷却効率の低下、その排気がバランスウエイト15や作業装置などにかかることに起因したバランスウエイト15や作業装置などの部分的な黒ずみ、その排気が搭乗運転部9に及ぶことに起因した居住性の低下、および、延出端部30aでの開口面積が小さくなって背圧が高くなることにより排気の流れに悪影響を及ぼす虞、などを効果的に抑制することができる。
〔別実施形態〕
〔1〕作業車としては乗用型の田植機や草刈機などであってもよい。
〔2〕排気管30としては、その延出端部30aが別部材で形成されたものであってもよい。
〔3〕排気管30としては、その排気口30bから排出された排ガスが左側の前輪6の後下方に向かうように、延出端部30aの角度が左後下方向きの適正な角度に設定されたものであってもよい。また、排気管30の排気口30bから排出された排ガスが車体の左下方に向かうように、左下方向きの適正な角度に設定されたものであってもよい。
〔4〕排気管30としては、その延出端部30aが車体の前後方向に沿う前向きになるように形成したものであってもよく、また、その延出端部30aが車体の上下方向に沿う下向きや上向きになるように形成したものであってもよい。
トラクタの全体側面図 トラクタ前半部の縦断側面図 トラクタ前半部の横断平面図 トラクタの正面図 ファンシュラウドの構成を示すトラクタの縦断背面図 ファンシュラウドの構成を示す要部の縦断側面図 エンジン排気構造を示す要部の横断平面図 排気管の排気口側端部の形状を示す要部の縦断正面図
1 エンジン
4 車体フレーム
15 バランスウェイト
30 排気管
30a 延出端部
30aa 内側部分

Claims (1)

  1. 車体と、前記車体の前後方向に沿う車体フレームと、前記車体フレームの前方先端部に設けられたバランスウェイトと、前記車体に搭載されたエンジンと、を備え、前記エンジンから前記車体前方に向けて開口延設した排気管を、その延出端部が前記車体フレームの横側方に位置するように形成してある作業車のエンジン排気構造であって、
    前記延出端部における車体に面する内側部分のみが、その延出端側ほど前記排気管の中心側に位置するとともに上下方向に大きく拡径された扁平状となるように、前記延出端部を形成してあることを特徴とする作業車のエンジン排気構造。
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