JP4885619B2 - 加圧水型原子炉用制御棒およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、この領域は、燃料集合体内を上向きに流れてきた冷却水が原子炉出口ノズルに流れ込む場所であるため、冷却水の流れの強さや方向が不規則かつ激しく変化しており、このため制御棒やその周囲にある制御棒クラスタ案内管等の部材も不規則かつ激しく振動している。
そこで、制御棒の被覆管の外表面には、必要とされる範囲内で耐摩耗材の層で被覆する(コーティングする)等の表面処理、具体的にはクロムめっきが施されている。
このため、従来の制御棒においては、前記溶接は、下部端栓および下部端栓と被覆管の下端部の溶接部やその近くに、めっきがされない状態で行われ、ひいてはこの部分はクロムめっきがなされないこととなっていた。
ところが、近年、めっきする必要がないと思われていた制御棒の先端部にも燃料集合体の制御棒案内管とのフレッティングにより生じたと推定される摩耗が認められ、制御棒の先端部にもクロムめっきを施す必要があることが判明した。ただ、前記の如く制御棒は細長く、上下には端栓が溶接されるため、先端部のめっきは技術的に難しいものである。
そこで、先端部にクロムめっきを施すことについて幾つかの発明がなされている。
このため、下部端栓やその取付け部分にもクロムめっき等の耐摩耗用の表面処理を施し、極力非めっき部分を小さくした制御棒の開発が望まれていた。
炭素の含有量が0.06重量%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製の被覆管の一端の外周面に厚さが15μm以下のクロムめっき層を形成する被覆管めっきステップと、
オーステナイト系ステンレス鋼製の挿入部と本体部を有し、前記被覆管内に嵌め込まれる挿入部と、前記被覆管の近くの部分の外径は被覆管と同じである本体部を有する炭素の含有量が0.06重量%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製の端栓の本体部の外周面に厚さが15μm以下のクロムめっき層を形成する端栓めっきステップと、
前記外周面にクロムめっき層が形成された被覆管の一端に前記本体部の外周面にクロムめっき層が形成された端栓の挿入部を完全に挿入した状態で、前記被覆管と前記端栓の本体部のクロムめっき層が形成された部分を溶接する溶接ステップとを有していることを特徴とする加圧水型原子炉用制御棒の製造方法である。
また、クロムは、オーステナイト系ステンレス鋼に比較すると、高融点であり、溶融しにくいため溶接性が悪化するため、クロムめっきの厚さを所定の厚さ以下にすることにより、溶接性の悪化を防止することが考えられた。そして、適切なクロムめっきの厚さを調査した結果、クロムめっきの厚さを15μm以下とすることにより、これら両方を満足させることができることが判った。
具体的な材料としては、例えばSUS304(18−8ステンレス鋼)やSUS308系のローカーボン材を挙げられる。
前記溶接ステップは、不活性ガス雰囲気中で行うものであることを特徴とする加圧水型原子炉用制御棒の製造方法である。
なお、TIG溶接であれば、現在の設備を使用可能であり、溶接ビード部の幅も3mm以下と小さくすることが容易に可能となる。
請求項1または請求項2に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする加圧水型原子炉用制御棒である。
溶接で生じたビード部の幅が3mm以下であることを特徴とする加圧水型原子炉用制御棒である。
なお、ビード部の幅を3mm以下とする方法としては、不活性ガス雰囲気中でのTIG溶接やレーザ溶接等が挙げられる。
溶接ビード部の外径が、クロムめっき厚さを含む被覆管と端栓の外径以下であることを特徴とする加圧水型原子炉用制御棒である。
なお、溶接ビード部にマンガン等が析出してビード部の外径が大きくなったときには、析出物を研磨することにより、溶接ビード部の外径を、クロムめっき厚さを含む被覆管と端栓の外径と同等に(いわゆる面一に)することができる。
本実施の形態は、被覆管と下部端栓の材料をオーステナイト系ステンレス鋼とし、その外表面に予め15μm以下の厚さのクロムめっきをしておき、両方を周方向にTIG溶接するものである。
図1の上の図は、下部端栓と被覆管を溶接する直前の状態であり、下の図は完成状態の図である。図1において、18は制御棒の被覆管の外表面のクロムめっき層であり、29は下部端栓の外表面のクロムめっき層であり、31は下部端栓と被覆管の溶接箇所である。なお、図2と同じ物、部分については同一の符号を付してある。
次いで、被覆管10の下端面と下部端栓20の本体部21の上端が付き合せとなっている箇所を周方向にTIG溶接し、併せて被覆管10を完全に密封する。なおこの際、溶接箇所近くの被覆管10と端栓20をチャックで把持して放熱性を向上させ、被覆管と端栓やそれらの外周面のクロムめっき層への溶接熱による悪影響が生じない様にした。
TIG溶接の条件は、前記図2に示す従来例における溶接の条件と同じである。
この状態を、図1の下の図に示す。この図において左右方向の斜線で網掛けをしている箇所が、溶接による溶け込み箇所である。
本実施の形態は、第1の実施の形態に加えて、被覆管10と下部端栓20を、いずれも炭素含有量が0.06重量%のオーステナイト系ステンレス鋼製としたものである。
第2の実施の形態においては、溶接部、熱影響部とも炭化物が生ぜず、溶接部の耐食性は、第1の実施の形態以上であった。
本実施の形態は、第2の実施の形態に加えて、さらにTIG溶接を不活性ガス雰囲気中で行うものである。
不活性ガスとして、ヘリウムガスを使用した。
本実施の形態では、先の2つの実施の形態と比較したとき、溶接箇所のステンレス鋼やめっき層のクロムは全く酸化することがなく、溶接性及び溶接部の強度はさらに優れていた。
18 被覆管のクロムめっき層
20 下部端栓
21 本体部
22 挿入部
29 下部端栓のクロムめっき層
30 溶接箇所
31 溶接箇所
Claims (5)
- 炭素の含有量が0.06重量%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製の被覆管の一端の外周面に厚さが15μm以下のクロムめっき層を形成する被覆管めっきステップと、
オーステナイト系ステンレス鋼製の挿入部と本体部を有し、前記被覆管内に嵌め込まれる挿入部と、前記被覆管の近くの部分の外径は被覆管と同じである本体部を有する炭素の含有量が0.06重量%以下のオーステナイト系ステンレス鋼製の端栓の本体部の外周面に厚さが15μm以下のクロムめっき層を形成する端栓めっきステップと、
前記外周面にクロムめっき層が形成された被覆管の一端に前記本体部の外周面にクロムめっき層が形成された端栓の挿入部を完全に挿入した状態で、前記被覆管と前記端栓の本体部のクロムめっき層が形成された部分を溶接する溶接ステップとを有していることを特徴とする加圧水型原子炉用制御棒の製造方法。 - 前記溶接ステップは、不活性ガス雰囲気中で行うものであることを特徴とする請求項1に記載の加圧水型原子炉用制御棒の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする加圧水型原子炉用制御棒。
- 溶接で生じたビード部の幅が3mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の加圧水型原子炉用制御棒。
- 溶接ビード部の外径が、クロムめっき厚さを含む被覆管と端栓の外径以下であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の加圧水型原子炉用制御棒。
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