以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能であろう。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略される。
本発明にかかる3次元形状測定装置の構成について図1を用いて説明する。図1は3次元形状測定装置の構成を示す図である。図1において11は光源、12はレンズ、13は赤外線カットフィルタ、14はマルチスリット、15はプリズム、16はボイスコイルモータ(以下、VCMとする)17はミラー、19は2群レンズ、20はビームスプリッタ、21はビームスプリッタ、22は対物レンズ、23は試料、24はステージ、25は2群レンズ、26はミラー、27は結像レンズ、28はCCDカメラ、30は波長切替機構、31は波長フィルタ。32は回転機構、33は処理装置、34はステージ駆動機構、40はレンズ、41は2分割フォトダイオードである。
本実施の形態では、試料23のコンフォーカル画像を撮像するCCDカメラ28及びマルチスリット14の位置を検出するための2分割フォトダイオード41を備えている。光源11からマルチスリット14を透過した光がCCDカメラ28により検出される。すなわち、3次元形状測定装置1は、コンフォーカル光学系により、試料23の形状を測定している。すなわち、水平方向及び鉛直方向の走査におけるXYZ座標と、コンフォーカル光学系を介して検出した光の強度とに基づいて試料23の3次元形状を測定している。
光源11は、試料23を照明するための照明光を出射する。光源11は、例えば白色光源等であり、さらに具体的には、水銀ランプ、ハロゲンランプ等種々のランプ光源を用いることができる。もちろん、これ以外の光源であってもよい。すなわち、光源11は、ブロードなスペクトルを有しており、様々な波長の光を照明光として出射するものであることが好ましい。
マルチスリット14は、光源11の近傍に設けられている。光を透過するスリットが複数設けられたマルチスリット14が光路上に配置される。これにより光源11からの光はライン状の光に変換される。光源11とマルチスリット14の間には、波長を選択する波長切替機構30の一部である波長フィルタ31と、光源11からの光を集光するレンズ12と、赤外線をカットする赤外線カットフィルタ13とが設けられている。赤外線カットフィルタ13は試料23が加熱されるのを防ぐため、光源11からの赤外線をカットしている。波長フィルタ31を有する波長切替機構30の構成については後述する。
マルチスリット14はVCM16に取り付けられ、直線移動可能になっている。このVCM16を駆動することによって、マルチスリット14は光軸と垂直な方向に移動する。そして、マルチスリット14はマルチスリット14の設けられているそれぞれのスリットと垂直な方向に移動する。VCM16はカメラコントローラ29からの信号により駆動される。そして、VCM16は、例えばPID制御により所定の位置にマルチスリット14を移動させることができる。
このマルチスリット14の構成について図2及び図3を用いて説明する。図2はVCM16に接続されたマルチスリット14の構成を示す図である。図3はマルチスリット14の構成を示す平面図である。
図2に示すようにVCM16に接続されたマルチスリット14は光源11からの光をライン状の光に変換するためのスリット部51が設けられている。スリット部51の横には2分割フォトダイオード41に検出される光を透過する矩形パターン52が設けられている。このスリット部51と矩形パターン52が設けられているマルチスリット14はVCM16を駆動することによって矢印の方向に移動する。
このマルチスリット14について図3を用いて詳細に説明する。マルチスリット14の中央にはスリット部51が設けられている。スリット部51はライン状の光を生成するためのスリット53とスリット53との間に設けられた遮光部54により構成される。スリット部51ではスリット53に入射した光のみが透過し、遮光部54に入射した光は遮られる。したがって、光源11からの光がライン状の光に変換される。マルチスリット14はガラス等の透明基板にフォトリソグラフィー工程で遮光パターンを設けることにより形成される。
スリット53と遮光部54とはそれぞれ一定の幅で繰り返し設けられており、周期的な空間パターンが形成される。Y方向の配列された複数のスリット53のそれぞれはX方向に長いスリット光を生成する。スリット53と遮光部54との比は例えば、1:7又は1:15である。すなわち、スリット部51に入射した光の1/8又は1/16が使用される。マルチスリット14を透過したスリット状の照明光を試料上に投影して、VCM16によりマルチスリット14をY方向に走査することで試料全面を順次照明する。すなわち、X方向に沿って設けられたスリット53を有するマルチスリット14をY方向に移動することにより、光軸と垂直な方向に照明光を走査することができる。スリット53の間隔については、試料23の反射光がCCDカメラ28に入射された際に、各スリット53に対応する反射光間で互いに影響を及ぼさない程度の間隔とする。
スリット部51と異なる位置に設けられた矩形パターン52は、2分割フォトダイオード41に受光される光を透過する。図3では2分割フォトダイオード41におけるそれぞれのフォトダイオードの受光面45a、45bをマルチスリット14上に投影して図示している。2分割フォトダイオード41の受光面45a及び受光面45bのそれぞれは矩形パターン52を通過した光を検出することができるように配置される。すなわち、矩形パターン52からの光は2分割フォトダイオード41の受光面45aと受光面45bの境界線をまたぐように投影される。そして、マルチスリット14がY方向に移動すると受光面上で矩形パターン52からの光が移動して、受光面45a、受光面45bに受光される光量が変化する。この2分割フォトダイオード41の出力の比に基づいてマルチスリット14の位置が検出される。すなわち、マルチスリット14がY方向に移動することで、受光面45a又は受光面45bの一方に入射する光量が多くなり、他方が少なくなる。この2分割フォトダイオード41の出力信号の差分により、マルチスリット14の位置が検出される。
ここで、図1の説明に戻る。マルチスリット14のスリット53を通過した光は、ミラー17によって試料23の方向に反射される。ミラー17で反射した光は2群レンズ19により集光され、ビームスプリッタ20、21を通過して対物レンズ22に入射する。対物レンズ22に入射された光は集光され試料23上に結像する。VCM16によってマルチスリット14を移動させることにより、試料23上の任意の位置を照明することができる。ステージ24上に載置された試料23はマルチスリット14と共役な位置に配置される。
ステージ24はXYZステージであり、ステージ駆動機構34に接続されている。すなわち、ステージ駆動機構34は、ステージ24を水平方向(XY方向)及び、鉛直方向(Z方向)に移動させることができる。ステージ24を水平方向(XY方向)を移動させることにより、試料23の任意の箇所を観察することができる。ステージ24を鉛直方向に移動させることにより、対物レンズ22と試料23との距離を変化させることができる。対物レンズ22と試料23との相対距離を変化させることによって、対物レンズ22の焦点位置を光軸に沿って走査することができる。スリットを用いることによりコンフォーカル光学系を構成しているので、焦点が合っている高さのみの像(スライス像)を捉えることができる。従って、対物レンズ22とステージ24との相対距離が、3次元測定時のZ座標に対応する。すなわち、対物レンズ22とステージ24との相対距離から、対物レンズ22の焦点位置のステージ24表面からの高さを求めることができる。従って、焦点位置のステージ24表面からの高さがZ座標となる。なお、ステージ24ではなく対物レンズ22を移動させるようにしてもよい。試料23と対物レンズ22との相対距離を変化させることにより、焦点位置のステージ24からの高さを変化させることができる。このように、マルチスリット14による水平方向の走査と、ステージ24による鉛直方向の走査とによって、試料23の3次元形状を測定することができる。
試料23からの反射光は再度、対物レンズ22により集光された後、ビームスプリッタ21により反射される。これにより、試料23を照明する照明光と試料23で反射される反射光とを分離することができる。ビームスプリッタ21により反射された光は2群レンズ25により屈折され、ミラー26に入射する。ミラー26に入射した光はCCDカメラ28の方向に反射される。対物レンズとなる2群レンズ25の間隔を調整することにより、焦点距離を微調整することができるのでスリット53とCCDカメラの像倍率を容易に一致させることができる。照明側に配置された2群レンズ19と像面側に配置された2群レンズ25とを同一設計とし、その間隔を調整することによって倍率を調整できる構造としている。
CCDカメラ28は受光素子がアレイ状に配置された2次元アレイ光検出器である。CCDカメラ28の受光面は試料と共役な位置に配置される。CCDカメラ28は各受光素子により検出された光の強度に基づいて電荷を蓄積し、この電荷を順次転送することにより検出信号を出力する。CCDカメラ28は試料を透過した照明光が当たっている照明領域の画素データだけを読み取り、照明光が当たっていない非照明領域の画素のデータは高速に転送して読み捨て、利用しない。すなわち、試料上における照明光の入射位置と共役な位置に配置されている画素列以外の画素からの検出信号は利用しない。CCDカメラ28は試料23で反射した反射光のうち、画素が受光した光に基づく信号をカメラコントローラ29に出力する。すなわち、CCDカメラ28は検出した検出光に基づき検出信号を出力する。これにより、コンフォーカル画像を取得することができる。カメラコントローラ29は検出信号を、例えば、増幅及びA/D変換して処理装置33に出力される。処理装置33はパーソナルコンピュータなどの情報処理装置であり、カメラコントローラから入力された検出信号に対して所定の演算処理を行なう。この、処理装置33は、3次元形状を測定するための演算処理を行い、処理結果を表示する。処理装置33における処理については後述する。
VCM16によりマルチスリット14を移動して、試料23上の照明領域を走査する。マルチスリット14の位置が変化すると、CCDカメラ28の画素列のうちマルチスリット14のスリット53と共役な位置となるものが変化する。すなわち、マルチスリット14が所定の距離だけ移動すると、CCDカメラ28の受光面においてスリット53と共役な位置の画素列が隣の画素列に移動する。具体的には、CCDカメラ28の1列目の画素列がマルチスリット14のスリット53と共役な位置に配置されている状態から、マルチスリット14を所定の距離だけ移動させると、CCDカメラの2列目の画素列がマルチスリット14のスリット53と共役な位置に配置される。そして、マルチスリット14の移動を所定の距離だけ繰り返すことにより、スリット53と共役な位置の画素列が順番にずれていく、これにより、Y方向に走査されている照明光の反射光がコンフォーカル光学系を介して検出される。試料23の全体を照明することにより、CCDカメラ上の全ての画素に対応するデータの取得が完了する。ここで、CCDカメラ28の受光面における画素の位置によって、3次元測定を行う時のXY座標が決定する。すなわち、試料23の異なる位置からの反射光は、CCDカメラ28の異なる画素で検出されるため、受光面上の画素の位置がXY座標に対応する。これにより、XY平面における照明光が集光されている位置、すなわち、3次元測定時のXY座標を求めることができる。カメラコントローラ29に接続された処理装置33によりこれらのデータを合成して2次元の画像を形成する。この2次元画像は処理装置33に記憶されるとともに、ディスプレイ上に表示される。これにより、試料23のスライス像を撮像することができる。ステージ24を上下方向(Z方向)に移動してこの画像の撮像を繰り返す。このように走査を行い、試料中の任意の点に照明光を集光する。そして、集光位置からの反射光をコンフォーカル光学系を介して検出する。検出結果を処理装置により処理し、スライス像を合成することによって全焦点画像を得たり、3次元画像を得ることができる。
また、マルチスリット14の矩形パターン52を透過した光はミラー17、2群レンズ19を介してレンズ40に入射する。レンズ40は2分割フォトダイオード41の受光面上で矩形パターン52を透過した光が適当なスポットになるように光を屈折する。
2分割フォトダイオード41に設けられた2つのフォトダイオードはマルチスリット14の矩形パターン52を透過した光をそれぞれ検出して、検出光の強度に基づく信号をカメラコントローラ29に出力する。カメラコントローラ29は2分割フォトダイオードの出力の比に基づいてマルチスリット14の位置を算出し、マルチスリット14が定められた位置に配置されているかを判断する。マルチスリット14が所定の位置に配置されている場合は、CCDカメラ28により撮像する。マルチスリット14が定められた位置に配置されていない場合はVCM16を駆動して、マルチスリット14を所定の位置に移動する。そして、その位置で撮像を行う。このように、フィードバック制御を行うことにより、正確に測定を行うことができる。さらに、カメラコントローラ29には、マルチスリット14の位置に対応するCCDカメラ28の画素が記憶されている。すなわち、カメラコントローラ29は、マルチスリット14の位置と、その位置におけるスリット53と共役な位置となるCCDカメラ28の画素列とを対応付けて記憶している。そして、スリット53と共役な位置の画素列の検出信号がカメラコントローラ29を介して処理装置33に記憶される。マルチスリット14に設けられたスリット53と共役な位置の画素列の検出信号を用いることによってコンフォーカル画像を撮像することができる。これにより、スリットコンフォーカル光学系を構成することができる。
さらに本発明では光源11からの光がマルチスリット14をバイパスすることができるように2つのプリズム15が設けられている。2つのプリズム15はマルチスリット14の前後に移動可能に設けられている。プリズム15を光路上に移動させることにより、光源11からの光がマルチスリット14をバイパスし、試料23の全面を照明することができる。すなわち、マルチスリット14の前に配置されたプリズム15は光源11からの光がマルチスリット14に入射されないように光を屈折する。このプリズム15により屈折した光はマルチスリット14の後に配置されたプリズム15により元の光路に戻る。そしてマルチスリット14をバイパスされた光が試料23に照射される。これにより、簡易な光学系でマルチスリットをバイパスすることができる。もちろん、マルチスリット14をバイパスするための構成はプリズム15に限らず、ミラーなどの光学部品であってもよい。さらにはVCM16を駆動して、光路上からマルチスリット14を外してもよい。これにより、光源11からの光は面照明となり、通常の顕微鏡として使用することができる。
次に、波長切替機構30の構成について図4を用いて説明する。図4は波長切替機構30に設けられた波長フィルタ31の構成を示す正面図である。円板状の波長フィルタ31は図4に示すように6分割されている。すなわち、波長フィルタ31は31a〜31fの6つの領域に分割されている。ここで、6分割された領域のうち、31aを白色領域とし、31b〜31fを着色領域とする。透過領域31aは光源11からの白色光を透過する。着色領域31b〜着色領域31fはそれぞれ異なる色の光を透過する。すなわち、着色領域31b〜着色領域31fは、透過する光の波長帯域がそれぞれ異なる。換言すると、着色領域31b〜着色領域31fは、光源11からの照明光のうち、所定の波長帯域の光以外の光を遮光する。そして、着色領域31b〜31fで、透過する光の波長帯域が異なる。例えば、着色領域31bは波長が405nm付近の光を透過し、着色領域31cは波長が436nm付近の光を透過し、着色領域31dは波長が546nm付近の光を透過し、着色領域31eは波長が580nm付近の光を透過し、着色領域31fは波長が600nm付近の光を透過する。すなわち、着色領域31b〜着色領域31fを透過する透過光の波長帯域のピークは、それぞれ、405nm、436nm、546nm、580nm、600nmとなる。なお、透過する光の波長帯域は一部が重なっていてもよい。波長フィルター31は透明なガラス基板等に誘電体多層膜を蒸着した干渉フィルターや色素を塗布したカラーフィルター、また、色ガラスなどによって構成することができる。
波長フィルタ31の中心には、回転機構32が取り付けられている。回転機構32は波長フィルタ31を回転させるためのモータなどを備えている。回転機構32の駆動を制御することによって、波長フィルタ31を所定の回転位置で停止させることができる。波長フィルタ31の回転中心は光軸とずれて配置されている。従って、回転機構32によって波長フィルタ31を回転させて回転角度を変化させると、光源11からの照明光が入射する領域が変化する。具体的には、着色領域31bに照明光が入射している状態から、波長フィルタ31を60°回転させると、着色領域31cに照明光が入射する。回転機構32を制御することにより、光源11からの照明光を、白色領域31a及び着色領域31b〜31fのうちのいずれかの領域に入射させることができる。これにより、照明光の波長を変化させることができ、照明光を所望の波長に切り替えることができる。よって、複数の色の光を用いて3次元形状を測定することができる。すなわち、3次元形状の測定に寄与する光の波長を選択することができる。
透明領域31aからの照明光は白色光となる。白色光では、波長に依存しない自然光下の色での観察ができる。従って、透明領域31aからの照明光を用いることによって、白色光下でのコンフォーカル画像を撮像することができる。また、透過領域31aは、例えば、ノンコンフォーカル画像を撮像するときに使用してもよい。ノンコンフォーカル画像の撮像時には、プリズム15を光路中に配置して、試料23をCCDカメラ28で撮像する。これにより、ノンコンフォーカル画像を撮像することができる。ノンコンフォーカル画像を用いれば、通常の光学顕微鏡と同等の画像が得られる。白色光の場合、フィルタによる光量の減衰がないため、高輝度の映像を得ることができる。
次に、試料23の形状について図5を用いて説明する。図5は試料23の形状の一例を示す斜視図である。試料23は基板23c、第2層23b及び第1層23aの3層構造をしている。基板23cの上に、第2層23bが形成されている。第2層23bの上には、第1層23aが形成されている。すなわち、試料23は基板23cの上に、下層となる第2層23bと最上層となる第1層23aとが形成された積層構造体である。この試料23には、図5に示すように、X方向に沿ったライン状の照明光35が入射されている。そして、マルチスリット14を移動させることによって照明光の焦点位置が矢印の方向(Y方向)に走査される。ここで、第2層23bは第1層23a及び基板23cと異なる材料で構成される。すなわち、第1層23a、第2層23b及び基板23cはそれぞれ異なる屈折率及び透過率を有している。たとえば、試料23がフレキシブル配線基板の場合、基板23cがベース材、第2層23bが導体材料、第1層23aがカバーレイ材料となる。この試料23がステージ24上に載置されているとする。本発明にかかる3次元形状測定装置1では、図5に示す第1層23a、第2層23b及び基板23cの各層の3次元形状を測定することができる。
上記の構成を有する試料23に対してZ方向に照明光を走査した時の構成について図6を用いて説明する。図6は照明光が入射している試料23の構成を示す断面図である。また、図6では、第1層23aと第2層23bとを透過する長波長側の照明光で照明した時の様子を示している。図6に示すように、試料23は下から、基板23c、第2層23b、第1層23aの順番で構成されている。ここで、照明光の焦点位置を光軸に沿って走査すると、試料23の様々な高さに照明光が集光される。照明光の焦点位置をZ方向に走査すると、例えば、焦点位置が、図6(a)〜図6(c)に示すように変化する。例えば、ステージ24を上昇させて、対物レンズ22と試料23との距離を近づけた状態では、図6(c)に示すよう基板23cの上面に、照明光35が集光される。一方、ステージ24を下降させて、対物レンズ22と試料23とを遠ざけると、図6(a)に示すように、第1層23aの表面に照明光35が集光される。もちろん、照明光35の焦点位置は図6(a)〜図6(c)以外の位置になることもある。なお、図6では、第1層23aと空気層の界面及び第2層23bと第1層23aの界面での屈折については省略して図示している。
対物レンズ22と試料23との距離を徐々に変化させていくと、対物レンズ22の合焦点位置がZ方向に沿って変位していく。これにより、各層の界面に照明光を集光することができる。第1層23aと空気層との界面、すなわち第1層23aの表面に照明光35が集光されている時は、図6(a)に示す構成となる。また、第2層23bの上面、すなわち、第1層23aと第2層23bとの界面に照明光35が集光されている場合は、図6(b)に示す構成となる。また、第2層23bの下面、すなわち、第2層23bと基板23cとの界面に照明光35が集光されている場合は、図6(c)に示す構成となる。ここで、照明光35は屈折率の違いによって、積層構造を有する試料23の各界面において反射される。具体的には、第1層23aと空気層との界面(第1層23aの上面)、第1層23aと第2層23bとの界面(第2層23bの上面)及び第2層23bと基板23cとの界面(基板23cの上面)において照明光35が反射される。コンフォーカル光学系ではは、界面と焦点位置とが一致している合焦点位置で、ピークとなる。なお、実際には、基板23cとステージ24との界面(基板23cの下面)においても照明光35が反射されるが、ここでは省略して説明する。
ここで、各層の透過率は、波長に応じて異なる。従って、照明光35のうち、各界面に入射する入射光の強度は、波長に応じて異なる。さらに、各層における屈折率及び各界面での反射率も波長に応じて異なる。もちろん、光源11から出射される照明光35の輝度も波長に応じて変化している。従って、対物レンズ22から試料23に入射する照明光35のうち、各界面で反射される反射光の強度も波長に応じて異なる。ここで、図7に、対物レンズ22とステージ24との距離を変化させたときの、検出光の強度の変化を示す。図7のグラフにおいて、横軸はZ方向におけるステージ24の位置で、縦軸が検出光の強度である。図7のグラフでは、右側ほど、ステージ24が上側に上がっており、対物レンズ22と試料23との距離が近づいている。すなわち、ステージ24を上昇していくと、グラフの右側に移っていく。換言すると、グラフの右側になるほど、対物レンズ22の相対的な焦点位置が下側(基板23c側)に下がっており、グラフの左側になるほど、対物レンズ22の相対的な焦点位置が上側(第1層23a側)に上がっている。
図1に示した3次元形状測定装置1では、コンフォーカル光学系を介して反射光を検出しているため、対物レンズ22の焦点位置が各層の界面と一致したときに検出光強度のピークが現れる。すなわち、コンフォーカル光学系では、界面と焦点位置が合った位置、すなわち合焦点位置からの光が検出光によって検出され、合焦点位置以外からの光は検出器によって検出されない。よって、各層の界面に照明光35が集光されたとき、CCDカメラ28によって検出される検出光の強度が強くなる。換言すれば、検出光強度のピークが界面での合焦点位置に対応することになる。Z方向に焦点位置を走査したときの、各画素における検出光のピークに基づいて各層の3次元形状を測定することができる。例えば、CCDカメラ28からは、この検出光強度に基づく検出信号が出力される。処理装置33は、検出信号をA/D変換して得られる検出データを画素と対応付けて記憶する。すなわち、各画素毎に合焦点位置を求める。ここで、Z方向に走査したときの各画素の検出光強度のピークとなる位置が合焦点位置となる。従って、合焦点位置での対物レンズと試料との相対距離がその画素における界面の高さに対応する。すなわち、合焦点位置に基づいて、界面の高さ(Z方向の位置)を求めることができる。照明光35をY方向に走査してCCDカメラ28の全画素における合焦点位置を検出光強度のピークに基づいて算出することによって、3次元形状を測定することができる。
図7(a)〜図7(c)は、波長切替機構30によって、それぞれ異なる波長を選択したときの、ステージ24の位置と、CCDカメラ28によって検出した検出光強度を示している。ここでは、試料と共役な位置にあるCCDカメラ28の画素からの検出光強度を示している。図7(a)は600nmの波長を選択したとき、図7(b)は546nmを選択したとき、図7(c)は405nmの波長を選択したときのグラフを示している。ここで、405nmの照明光35の大半は、第1層23aの表面で反射され、546nmの照明光35の大半は、第1層23aと透過して第1層23aと第2層23bとの界面で反射され、600nmの照明光35の大半は、第1層23a及び第2層23bを透過して第2層23bと基板23cとの界面で反射されるものとする。すなわち、試料23の第1層23a及び第2層23bは可視光領域のうち、長波長側の光を透過し、短波長側の光を反射する材質から形成されているとする。また、基板23cは長波長側の光を反射する材質であるとする。さらに、第1層23aは第2層23bよりも短い波長の光を透過することができる材質であるとする。なお、図7では3種類の選択波長について示したが、選択波長は2つ以上であればよい。
ここで、ステージ24を上昇させていく方向に走査する場合について説明する。ステージ24を所定の位置から上げていくと、試料23と対物レンズ22の距離が徐々に近づいていく。従って、対物レンズ22の焦点位置が図6(a)の状態に示すよう、第1層23aの表面と一致し、その後、図6(b)に示すよう第1層23aと第2層23bとの界面と一致し、さらにその後、図6(c)に示すよう第2層23bと基板23cとの界面と一致する。
図6(a)に示すように対物レンズ22の焦点位置が第1層23aの表面と一致するするときのステージ24の位置を図7のグラフ上でz1とする。z1の位置では、図7(a)〜図7(c)に示すよう検出光強度にピークが現れる。すなわち、600nm、546nm、405nmの全ての波長でピークが出現する。ここで、長波長側の光、具体的には、600nmと546nmの照明光35のうちの大半は、第1層23aを透過する。そのため、600nmと546nmの照明光35のうちの一部しか、第1層23aの表面で反射しない。従って、z1における600nmと546nmの照明光35の検出光の強度は小さくなる。一方、短波長の光、具体的には、405nmの照明光35のうちの大半は、第1層23aの表面で反射する。従って、z1における405nmの照明光35の検出光の強度は大きくなる。これにより、第1層23aの表面における、600nm及び546nmの検出光強度のピークは、405nmの検出光強度のピークよりも小さくなる。従って、図7(c)に示すように、405nmの照明光35では、z1の位置に最大のピークが現れる。600nmと546nmの照明光35では、図7(a)及び図7(b)に示すように、z1の位置に小さなピークが表れる。
ステージ24を上昇させると、図6(b)に示すように対物レンズ22の焦点位置が第1層23aと第2層23bとの界面と一致する。このときのステージ24の位置をz2とする。z2の位置では、図7(a)及び図7(b)に示すよう検出光強度にピークが現れる。すなわち、600nmと546nmの波長の光は、第1層23aを透過するため、第2層23bと第1層23aとの界面まで到達する。第1層23aと透過した照明光35は、第2層23bと第1層23aとの界面で反射される。従って、600nmと546nmの波長の照明光35では、z2の位置にピークが現れる。また、546nmの照明光35では、第1層23aを透過して第2層23bの上面に入射した光の大半が、第2層23bの上面で反射される。従って、546nmの照明光35はz2の位置で、検出光が最大のピークとなる。一方、600nmの照明光35では、第1層23aを透過して第2層23bの上面に入射した光の大半は第2層23bを透過して、一部のみ第2層23bの上面で反射される。600nmの照明光ではz2の位置に小さなピークが表れる。従って、z2の位置での検出光のピークは、546nmの照明光35の方が、600nmの照明光35より高くなる。一方、405nmの照明光35の大半は、第1層23aの表面で反射されるため、第1層23aと第2層23bとの界面まで到達しない。よって、図7(c)に示すように、405nmの照明光35では、z2の位置にピークが現れない。
さらに、ステージ24を上昇させると、図6(c)に示すように対物レンズ22の焦点位置が基板23cと第2層23bとの界面と一致する。このときのステージ24の位置をz3とする。z3の位置では、図7(a)に示すよう検出光強度にピークが現れる。すなわち、600nmの波長の光は、第1層23a及び第2層23bを透過するため、第2層23bと基板23cとの界面まで到達する。第2層23bを透過した光は、基板23cと第2層23bとの界面で反射される。従って、600nmの波長の照明光35では、z3の位置にピークが現れる。また、600nmの照明光35では、第2層23bを透過して基板23cの上面に入射した光の大半が、基板23cの上面で反射される。従って、600nmの照明光では、z1及びz2よりもz3でのピークが高くなる。よって、600nmの照明光35では、z3の位置における検出光強度が最大となる。一方、405nm及び546nmの照明光35の大半は、第1層23aの表面又は、第2層23bの表面で反射されるため、基板23cと第2層23bとの界面まで到達しない。よって、図7(c)及び図7(b)に示すように、546nm及び405nmの照明光35では、z3の位置にピークが現れない。
このように、本発明では、複数の波長の光で別々に照明して、各波長の光をコンフォーカル光学系で検出している。そして、検出光強度のピークに基づく試料23の高さをそれぞれの波長毎に求めている。積層構造体からなる試料23の高さを異なる波長の検出光を用いて測定することによって、積層構造の各層の形状を測定することができる。例えば、第1層23aは、405nmの波長の照明光35に基づいて形状を測定し、第2層23bは546nmの波長の照明光35に基づいて形状を測定し、基板23cは600nmの波長の照明光35に基づいて形状を測定する。これにより、積層構造体の下層の3次元形状の測定を精度よく行うことができる。すなわち、積層構造体では各層によって、光学的性質が異なるため、反射率や透過率に違いが生じる。このため、各層での反射率の高い波長の光に基づいて、その層の形状を測定する。具体的には、上層で反射する波長の光で上層の形状を測定し、上層を透過する波長の光で下層を測定する。これによって、表層以外の下層についても3次元形状を測定することができる。すなわち、上層が設けられている箇所に対応する下層の形状についても測定することができる。例えば、全体が表層で覆われている試料についても、下層の形状を測定することが可能になる。従って、本発明は、表面に設けられた保護層などによって下層のパターンが覆われている試料の形状測定に好適である。様々な試料に対応するため、波長切替機構30で選択することのできる波長の数は、より多い方が好ましい。もちろん、より短い波長及びより長い波長を選択できることが好ましい。これにより、様々な試料23に対して下層の3次元形状の測定が可能になる。なお、試料に応じて、光源11や波長フィルタ31を変えるようにしてもよい。
上述の3次元測定を行うための処理はカメラコントローラ29に接続された処理装置33によって実現することができる。処理装置33は例えば、パーソナルコンピュータであり、ハードウェア及びそれに読み込まれるソフトウェアにより上記の演算処理を実現する。上記の処理を行なうための構成について図8を用いて説明する。図8は処理装置33の構成を示すブロック図である。図8に示すよう、処理装置33は、ステージ制御部70と、VCM制御部71と、波長選択部72と、走査範囲設定部73と、検出データ記憶部74と、合焦点位置算出部75と、収差補正部76と、屈折率補正部77と、3次元形状構築部78と、表示部79とを備えている。
ステージ制御部70は、ステージ24の位置制御を行う。ステージ制御部70は、例えば、ステージ駆動機構34にステージ24を駆動するためのステージ駆動信号を出力する。このステージ駆動信号がステージ駆動機構34に入力される。ステージ駆動機構34がステージ駆動信号に基づいてステージ24を所定の位置に移動させる。具体的には、ステージ24を水平方向(XY方向)に移動させる。これにより、試料23の所定の位置に対して測定を行うことができる。さらに、ステージ駆動信号に基づいてZ方向にステージを移動させることができる。これにより、試料23の任意の高さにおける断層画像を撮像することができる。さらに、ステージ24の高さを徐々に変化させていき、Z方向の走査を行う。これにより、試料23の3次元形状を測定することができる。また、ステージ制御部70にはステージ駆動機構34からステージの位置を示す位置信号が入力される。この位置信号に基づいて、ステージ制御部70はXYZ方向におけるステージ24の現在位置を認識する。
VCM制御部71はカメラコントローラ29を介してVCM16を制御する。これにより、マルチスリット14の位置を移動させることができる。具体的には、VCM16を駆動するVCM駆動信号を出力する。このVCM駆動信号によって、VCM16が駆動してマルチスリット14を所定の位置に移動させることができる。例えば、マルチスリット14のスリット53と共役な位置に配置されるCCDカメラ28の画素列が走査されるように、マルチスリット14を駆動する。よって、照明光35を試料23に対して走査することができる。これにより、CCDカメラ28の受光面におけるスリット53と共役な位置が隣の画素列へと順番に移動していく。
波長選択部72は、波長切替機構30の回転機構32を制御して、照明光35の波長を選択する。これにより、照明光35の波長を切り替えることができる。さらに、波長選択部72は、回転機構32の角度を記憶しているため、波長フィルタ31のうちのどの波長を選択しているかを検出することができる。走査範囲設定部73は、Z方向の走査範囲を設定する。例えば、試料23のおおよその厚みが既知の場合、作業者がその厚みに基づいてZ方向の走査範囲を設定する。例えば、試料23の全体の厚みより広い領域を設定する。また、表層の対物レンズ側の位置から基板23cの上面よりもステージ側までの範囲を設定してもよい。あるいは、試料23のうち3次元形状を測定する範囲に基づいてZ方向の走査範囲を設定してもよい。また、走査範囲設定部73は、XY方向の走査範囲を設定する。例えば、ノンコンフォーカル画像から、作業者が3次元形状を測定したい範囲を設定する。これにより、XY方向の走査範囲が設定される。この走査範囲設定部73に設定された走査範囲に基づいて、ステージ制御部70がステージ駆動信号を出力する。そして、このステージ駆動信号に基づいてステージ駆動機構34がステージ24の高さを変化させ、かつステージ24を水平方向に移動させる。これにより、試料の任意の箇所の3次元形状を測定することができる。
検出データ記憶部74は、CCDカメラ28からの検出信号に対応する検出データを記憶する。具体的には、CCDカメラ28からの検出信号はカメラコントローラ29によってA/D変換される。検出データ記憶部74は変換されたデジタルデータを検出データとして記憶する。さらに、検出データ記憶部74は、照明光の入射位置に対応する3次元座標と、選択波長とを検出データに対応付けて記憶する。すなわち、ステージ制御部70において認識されているステージ24のZ方向の位置により、対物レンズ22とステージ24との相対距離が決定する。これにより、各検出データに対応するZ座標が決定する。また、VCM制御部71に記憶されているマルチスリット14の位置、及び、ステージ制御部70において認識されているステージ24のXY方向の位置から、対物レンズ22の焦点位置上のXY平面における照明位置が決定する。よって、試料23からの反射光を検出するCCDカメラ28の画素に応じてXY座標が決定する。各画素毎に検出データを記憶することにより、XYZ座標と検出データとを対応付けることができる。これにより、試料上の任意の点のXYZ座標が決まるため、検出データとXYZ座標とを対応付けることができる。さらに、波長選択部72によって動作する回転機構32の回転角度から選択波長が決まる。これにより、検出データと選択波長とを対応付けて記憶することができる。このようにして、検出データ記憶部74は、検出データを、試料23中の任意の点のXYZ座標と、選択波長とに対応付けて記憶する。換言すると、検出データ記憶部74は、X座標、Y座標、Z座標、選択波長、及び検出データの5項目をテーブルとして記憶する。
合焦点位置算出部75は、検出データ記憶部74に記憶されている検出データに基づいて合焦点位置を算出する。そして、各界面の高さを求める。具体的には、各画素毎に、検出光強度のピークとなるZ方向の位置を算出する。例えば、図7に示すグラフの極大値の位置をピーク位置とすることができる。もちろん、既知となっている様々な演算処理方法によって検出光強度のピークを算出することができる。このピーク位置が合焦点位置となる。選択波長毎に、検出光強度のピーク位置を各画素に対して算出する。このとき、上層を透過する波長では、例えば、図7(a)又は図7(b)に示すように複数の検出光ピークが表れる。この場合、算出された全ての検出光強度のピーク位置を記憶する。
次に、合焦点位置の補正をするための収差補正部76及び屈折率補正部77について説明する。収差補正部76は、収差による焦点位置のずれを補正する。すなわち、本発明では、異なる波長の照明光を検出しているため、色収差によって焦点位置がずれてしまうことがある。この収差による焦点位置のずれを補正するため、収差補正部76によって収差を補正している。例えば、色収差によって対物レンズ22の焦点位置がZ方向にずれてしまう場合、収差補正部76に対物レンズ22の選択波長毎の特性を記憶させておく。そして、基準となる位置に対するオフセットを波長毎に記憶させておく。そして、選択した波長毎に、各層の高さの補正を行う。すなわち、検出光強度のピーク位置を選択波長に応じたオフセット量だけ変化させる。これにより、収差による焦点位置のずれを補正することができ、正確に3次元形状を測定することができる。このように、収差補正部76は、3次元形状測定装置の光学系の収差に基づく補正値を記憶し、この補正値に基づいて各層の高さの補正を行う。
屈折率補正部77は屈折率による焦点位置のずれを補正する。例えば、図6に示す構成で第1層23aの屈折率が既知の値であるとき、その屈折率によって生じる焦点位置のずれを補正する。具体的には、各界面での屈折の屈折角から、高さを補正する。さらに、選択波長毎に屈折率の値が異なる場合、それぞれの波長に対して異なる屈折率を用いて補正を行うようにしてもよい。このように屈折率による補正を行うことによって、正確に3次元形状を測定することができる。さらに、各層の屈折率を用いることによって、各層の絶対的な膜厚の測定が可能になる。このように、屈折率補正部77は、上層の屈折率を記憶し、この屈折率に基づいて各層の高さの補正を行う。各層の屈折率は、例えば、試料23の種類に応じた値が作業者により入力されることにより設定される。
3次元形状構築部78は、合焦点位置算出部75で算出した合焦点位置に基づいて3次元形状を構築する。具体的には、各画素毎の合焦点位置を合成して、各層の3次元形状を構築する。すなわち、各画素毎の界面の高さをつなぎ合わせることで、各層の3次元形状を構築することができる。ここで、各層毎に異なる波長で算出された合焦点位置を使用して、3次元形状を構築する。例えば、図5に示す構成の試料23の場合、第1層23aの表面形状は405nmの波長により算出した合焦点位置に基づいて3次元形状を構築する。一方、第2層23bは546nm、基板23cは600nmの波長による合焦点位置に基づいて3次元形状を構築する。ここでは、ピーク位置での検出光強度が最も高い波長により、その層の高さを求める。すなわち、全界面で、各選択波長に対するピーク強度を比較する。そして、複数の選択波長のうちピーク強度が最も高くなっている選択波長により算出された合焦点位置をその界面の高さとする。具体的には、図7に示すように、第1層23aの表面では、ピーク強度が最も高い405nmの波長を使用して、第1層23aの表面形状を求める。また、第1層23aと第2層23bとの界面では、ピーク強度が最も高い546nmの波長を使用して、第1層23aと第2層23bとの界面の形状、すなわち、第2層の23bの高さ分布を求める。さらに、基板23cと第2層23bとの界面では、ピーク強度が最も高い600nmの波長を使用して、基板23cと第2層23bとの界面の形状を求める。これにより、複数の選択波長の中から、好適な波長を選択することができる。このように、本発明では、各層毎に最適な波長を使用して、それぞれの層の3次元形状を構築することができる。
表示部79は、液晶表示装置等のディスプレイを備えており、3次元形状構築部78によって構築された3次元形状の表示を行なう。例えば、所定の角度から見た試料23の3次元形状を表示する。これにより、試料23の斜視図が表示される。このとき、最上層を半透明な色として表示してもよい。これにより、下層の形状を視認しやすくすることができる。また、各層の表示色を対応する選択波長の色に応じて決定してもよい。例えば、第1層23aの形状が405nmの波長の光によって検出されている場合、ディスプレイ上で、その405nmの波長に対応する色(例えば、紫色)で表示する。これにより、どの層がどの波長で見えたかを可視化することができる。試料23を構成する物質の透過・反射特性が可視化され、試料23の3次元形状の理解に役立てることができる。もちろん、高さの差を色に変換して、グラデーションで表示してもよい。さらに、任意の断面を指定して、その断面における断面形状を表示できるようにしてもよい。また、3次元形状を構築する際に、XYZ座標も同時に取得しているため、任意の距離、高さ、幅、体積などを計測することも可能である。具体的には、表示画面上において表示されている試料の任意の点を指定して、計測を行なうようにしてもよい。これにより、各層の膜厚や試料23に設けられたパターンの幅やパターン間の距離等を求めることが可能になる。
次に、図9を用いて本発明にかかる3次元形状の測定方法の手順について説明する。図9は本発明にかかる3次元形状の測定方法の手順を示すフローチャートである。まず、最初に補正値の設定を行う(ステップS101)。具体的には、作業者が収差補正部76における補正値及び屈折率補正部77における屈折率の補正値を入力する。収差補正用の補正値は、波長切替機構30の選択波長に応じたオフセットであり、対物レンズ22の色収差などによって決まる。従って、収差補正用の補正値は、3次元形状測定装置1に対して固有の値である。そのため、収差補正用の補正値は一度だけ設定すればよい。収差補正用の補正値は表面が平坦な試料を標準試料として、その標準試料の平坦面に対して波長毎の合焦点位置の測定を行い、合焦点位置のずれから算出することができる。
屈折率の補正値は、試料23に設けられている各層の屈折率によって決まる。従って、屈折率の補正値は、試料23に対して固有の値である。これらの補正値が不明な場合、あるいは、補正を行う必要がない場合は、補正値の設定を行なわなくてもよい。これらの補正値は、それぞれメモリ等に記憶される。収差補正部76及び屈折率補正部77は、設定された補正値に基づいて補正を行う。
次に、走査範囲を設定する(ステップS102)。具体的には、水平方向の走査範囲と、鉛直方向の走査範囲を設定する。これらの走査範囲はメモリ等に記憶される。ステージ制御部70は後述する検出データ取得ステップで、この設定された走査範囲に基づいて、ステージ24を移動させる。
ここで、測定時間を短縮するためのZ方向走査ステップ(ステップS103)及び波長切換ポイント設定ステップ(ステップS104)について説明する。Z方向走査ステップ(ステップS103)では、ステージ24を移動してZ方向の走査を行う。そして、この時の検出データから、試料23の表面の位置を検出する。すなわち、試料23の最も上面側の検出光強度のピーク位置から、試料23の表面の高さを求めることができる。例えば、表面が平坦な試料23では、このステップで表面のおおよその高さを検出することができる。ここでは、波長を固定してZ方向の走査を行ってもよいし、波長を切り替えてZ方向の走査を行ってもよい。
ステップS103のZ方向走査において検出した試料の表面位置から、波長の切換ポイントを設定する(ステップS104)。具体的には、試料23の表層の途中の位置を波長切替ポイントとする。試料23の上側から下側へとZ方向の走査を行う場合、試料23の対物レンズ側の走査開始点から切替ポイントまで、一つに波長で検出データを取得する。すなわち、切替ポイントまでの間、選択波長を固定して検出を行なう。これにより、表層の3次元形状が1つの選択波長によって測定される。そして、Z方向の位置が切替ポイントよりも下に移動したら、違う波長に切り替えて測定を行う。また、最上層の表面に限らず、下層に対する波長切換ポイントを設定してもよい。もちろん、複数の層に対して波長切換ポイントをそれぞれ設定してもよい。切替ポイントは、表層全体の形状を測定できるよう、マージンを持って設定することが好ましい。波長切換ポイントを設定することで、全ての波長に対して検出データを取得する必要がなくなる。これにより、測定時間を短縮することができる。波長切換ポイントの設定は、平坦な層を有する試料23に対して特に有効である。すなわち、その層の形状を測定するための選択波長を単一の選択波長とすることができる。従って、その層の形状を測定するために複数の波長を切り替えて検出データを取得する必要がなくなり、測定時間を短縮することができる。さらに、選択波長の数が多い場合、波長切換ポイントの設定による測定時間短縮の効果が大きい。
試料23の少なくとも1層において、波長切換ポイントを設定することで、測定時間を短縮することができる。なお、波長切換ポイントを設定しない場合は、上記のZ方向走査ステップ(ステップS103)及び波長切換ポイント設定ステップ(ステップS104)を行なわなくてもよい。
次に、設定された走査範囲に対して検出データを取得する(ステップS105)。ここでは、マルチスリット14による走査及びステージ24によるZ方向の走査を行い、その間の検出データを処理装置33のメモリに順番に蓄積していく。さらに、より広い範囲の測定を行いたい場合は、XY方向にステージ24を移動して検出データを取得する。このとき、上記の波長切換ポイントに応じて波長を切り替える。すなわち、ステージ24のZ方向の位置が設定された波長切換ポイントとなったら、選択波長を切り替える。これにより、設定範囲全体に対する検出データを取得することができる。
なお、波長切換ポイントが設定されていない場合は、各断層で複数の選択波長を用いて検出データを取得する。このとき、検出データは任意の順番で取得することができる。例えば、選択波長を固定したまま、Z方向の位置を移動して検出データを測定する。この場合、Z方向の走査範囲の検出データを取得した後、選択波長を切り替える。あるいは、Z方向の位置を固定したまま、選択波長を切り替えるようにしてもよい。この場合、全選択波長の検出データを取得したら、Z方向の位置を変える。いずれの手順でも同様の検出データを取得することができる。もちろん、上述の順番に限られるものではない。
このようにして取得した検出データから合焦点位置を算出する(ステップS106)。上述のように、CCDカメラ28の全ての画素に対して合焦点位置を算出する。さらに、複数の選択波長毎に合焦点位置を算出する。ステージ24のXY方向の位置を移動した場合、移動したそれぞれの位置に対して合焦点位置を算出する。すなわち、XY方向の各位置における合焦点位置を算出する。ステージ24のXY方向の位置を移動した場合、移動前と移動後とで照明光の入射位置の一部が重複するようにしてもよい。これによって、入射位置が重複する位置で、高さ方向の位置合わせを行なうことができる。すなわち、ステージ24の移動による高さ方向のずれを修正することができる。処理装置33は、波長毎に算出した合焦点位置を画素と対応付けて記憶する。
次に、算出した合焦点位置に基づいて3次元形状を構築する(ステップS107)。すなわち、積層構造体の各層の形状をそれぞれ異なる波長に基づく合焦点位置により決定する。そして、各層の形状を重ね合わせて3次元形状を構築する。波長切換ポイントが設定されている層では、その波長での高さにより、形状を決定する。波長切換ポイントが設定されていない層では、検出光強度に基づいて好適な波長を選択する。そして、その選択波長での高さから層形状を決定する。このようにして、積層構造体の各層の形状を3次元を求め、3次元形状を構築する。
このようにして構築された3次元形状に基づいて3次元画像を表示する(ステップS108)。例えば、表示画面上に所定の角度から見た試料23の3次元形状を表示する。この表示画像はGUIによって、様々な操作を行なうことができるようにする。例えば、3次元画像の仰角、回転角、スケール、レンジなどは変更可能とする。また、任意の位置の断面情報をグラフとして、3次元画像と同時又は別々に表示するようにしてもよい。さらに、断面のグラフに表れた上層と下層のプロファイルデータにカーソルを合わせることで、膜厚や間隔などを計測するようにしてもよい。もちろん、表示方法は上記のものに限られるものではない。このように、層毎に異なる波長で表面形状を測定し、各層の表面形状を合成する。これにより、表層のみならず、下層の形状についても表示することができる。
尚、上記の説明では、スリットコンフォーカル光学系を有する測定装置について説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ピンホール等及び点光源を用いたコンフォーカル光学系でもよい。上述の説明ではステージ24を鉛直方向に移動して、対物レンズ22の焦点位置を光軸に沿って走査したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、対物レンズ22を移動して焦点位置を走査してもよい。試料上における照明光の位置を走査する照明位置走査は、マルチスリット14によるものに限られるものではない。例えば、照明光の位置を走査する走査手段として、ガルバノミラーなどのビーム走査やステージ走査などを用いることができる。また、スリットコンフォーカル光学系を構成する場合、シリンドリカルレンズを用いて光源11からの光をライン状の照明光35に変換してもよい。なお、試料23は、異なる2種類以上の材質から構成される積層構造体であればよい。
なお、波長切替機構30の位置は光源11とのレンズ12の間に限られるものではなく、他の位置でもよい。すなわち、光源11とCCDカメラ28の間の光路中であればよく、例えば、CCDカメラ28の前に配置することにより、反射光の波長を切り替えることができる。さらに、波長切替機構30は複数の波長フィルタにより構成するものに限られるものではない。例えば、波長切替機構30を分光器などによって構成してもよい。複数の単色光源を配置して、それぞれを切り替えて使用するようにしてもよい。また、波長可変の光源やフィルタを用いてもよい。このような構成でも、波長を選択することができる。さらには、カラーCCDカメラのように受光素子の各画素の前にフィルタが形成された検出器を用いてもよい。一般的なカラーCCDカメラを用いる場合、画素となる各受光素子の前に、R、G、Bのそれぞれのカラーフィルタが形成されている。従って、カラーCCDカメラでは、3波長に対応する検出信号を同時に検出することができる。そして、処理装置33において、各画素毎にZ方向における検出光強度のピークを算出する。換言すると、R、G、Bの全ての検出光をそれぞれ検出して、処理装置33で合焦点位置を算出する波長を選択する。これにより、各層の高さが異なる色により検出され、3次元形状を測定することができる。このような、カラーCCDカメラを用いることによって簡易な構成で波長を選択することができる。さらに、3波長を同時に測定することができるため、測定時間を短縮することができる。このように本発明にかかる3次元形状測定装置において、波長切替機構30は様々な構成を用いることができる。すなわち、波長切替機構30はハードウェアによる構成に限らず、ハードウエハとソフトウエハとを組み合わせた構成でも実現することができる。すなわち、処理装置33で合焦点位置を算出するときに、検出信号に対応する照明光の波長を選択できるものであればよい。