JP4883253B2 - シリコーンゴム用ポリウレタン系樹脂コート剤及びシリコーンゴム部材 - Google Patents
シリコーンゴム用ポリウレタン系樹脂コート剤及びシリコーンゴム部材 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコーンゴム基材表面に良好に接着して耐摩耗性に優れた表面保護層を簡単に形成することができるシリコーンゴム用ポリウレタン系樹脂コート剤、及びこのコート剤により表面保護されたシリコーンゴム部材に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
携帯電話、各種リモコン等のシリコーンゴム製キーパッドのキートップ上には、接着性や着色性が良好なシリコーンゴム含有インクにより文字や絵柄が印刷(文字インク層)されていることが多い。この文字インク層は、キータッチ時には指との接触にさらされるために摩耗し、かすれ、判読できなくなることもあった。また、汗の成分である水分、塩分、油分が指先からシリコーンゴム製キーパッドに浸透、透過して接点障害を起こすことが問題になる場合もあった。
【0003】
一方、電子写真複写機、プリンター等に用いられるロールとしては、耐熱性に優れ、硬度や弾性等の諸特性の調整が非常に広範囲に可能であることから、シリコーンゴム製ロールが一般的に使用されている。
【0004】
しかし、シリコーンゴムは、耐摩耗性が劣るために印刷耐久性が不十分であるという問題があった。更に、シリコーンゴム中に含有される微量な低分子シロキサンが長期の使用中に表面に滲み出ることから、印刷物の画像品質を劣化させてしまう問題もあった。
【0005】
そこで、これらのシリコーンゴム部材に樹脂コート剤を塗工して表面保護層を形成し、耐摩耗性を付与したり、接点障害対策、低分子シロキサン対策とすることが一般的に行われている。具体的には、この樹脂コート剤として耐摩耗性が非常に良好で、かつ水分、塩分、油分、低分子シロキサン等の浸透性が少ないという特徴を有するウレタン樹脂を使用することが提案されている。
【0006】
しかしながら、ウレタン樹脂は、基材が離型性の高いシリコーンゴムであると、シリコーンゴム部材表面を予めプライマー処理、プラズマ処理、UV処理等の煩雑な前処理を施さないと基材表面に接着せず、耐摩耗性が十分発揮されないという欠点があり、この点の改善が課題であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーンゴム基材との接着性に優れ、耐摩耗性に優れた表面保護層を各種シリコーンゴム基材表面に簡単に形成することができるポリウレタン系樹脂コート剤、及びこれにより表面処理されたシリコーンゴム部材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)分子鎖の側鎖及び/又は主鎖に少なくとも1個の脂肪族不飽和結合と、少なくとも1個の活性水素とが同一分子内に共存する炭化水素化合物及び/又は脂肪族不飽和基含有ポリシロキサンと、有機ポリイソシアネートと、ポリオール及び/又はポリアミンと、及び必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることで得られる脂肪族不飽和基を有するポリウレタン系樹脂、(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒を配合することにより、シリコーンゴム基材に煩雑な前処理を施さなくても良好に接着して耐摩耗性に優れた表面保護層を簡単かつ容易に形成することができるポリウレタン系樹脂コート剤が得られること、そしてこのウレタン系樹脂コート剤により表面保護層が形成されたシリコーンゴム部材は、特に各種キーパッド、複写機、プリンター等のロールとして有効に利用できることを見出した。
【0009】
即ち、シリコーンゴムには様々な種類があるが、そのうちキーパッドやロール等の部材として使用されるものの多くはミラブル型シリコーンゴムと射出成型用液状シリコーンゴムであり、これらの加硫、架橋機構はそれぞれ過酸化物加硫とヒドロシリル化架橋である。ここで、通常、過酸化物加硫は、シリコーン生ゴムに含有されるアルケニル基、典型的にはビニル基に過酸化物から発生するラジカルを作用させて架橋させるため、硬化後のゴムには未反応のアルケニル基が一部残存している。また、ヒドロシリル化架橋では、アルケニル基、典型的にはビニル基含有シリコーンオイルとヒドロシリル基含有架橋剤をヒドロシリル化触媒存在下に反応させるため、硬化後のゴムには未反応のアルケニル基及び/又はヒドロシリル基が一部残存している。
【0010】
このようなシリコーンゴム表面に本発明のウレタン系樹脂コート剤を塗工すると、このコート剤の各成分の一部が基材のシリコーンゴム中に浸透し、(A)成分中の脂肪族不飽和基、(B)成分中のヒドロシリル基と、シリコーンゴム中の未反応残存アルケニル基及び/又はヒドロシリル基が、(C)成分のヒドロシリル化触媒の存在によって渾然一体にヒドロシリル化反応して、表面付近にアンカー効果をもたらすものと考えられ、これによりシリコーンゴム基材との優れた接着性が得られるものである。
【0011】
従って、本発明は、
(1)(A)下記一般式(1)〜(7)で表される脂肪族不飽和基と活性水素含有官能基とを有する化合物と、有機ポリイソシアネートと、ポリオール及び/又はポリアミンとを反応させることによって得られる脂肪族不飽和基を有するポリウレタン系樹脂
100重量部
【化9】
(式中、R 1 は単結合、又は酸素原子が介在してもよい炭素数1〜12のアルキレン基又はフェニレン基、R 2 は単結合、又は炭素数1〜12のアルキレン基又はフェニレン基、R 3 、R 4 、R 5 は水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基又はフェニル基、R 6 は炭素数1〜12のアルキレン基又はフェニレン基より水素原子が1個脱離した3価炭化水素基、X 1 は水酸基,アミノ基及びカルボキシル基から選ばれる活性水素を有する官能基、X 2 は水酸基,アミノ基及びカルボキシル基から選ばれる活性水素を有する官能基、炭素数1〜12のアルキル基又はフェニル基、又は水素原子を示す。)
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜100重量部
(C)ヒドロシリル化触媒 有効成分として0.001〜0.1重量部
を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム用ポリウレタン系樹脂コート剤、
(2)シリコーンゴム基材表面に、上記シリコーンゴム用ポリウレタン系樹脂コート剤による表面保護層が形成されたシリコーンゴム部材
を提供する。
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のシリコーンゴム用ポリウレタン系樹脂コート剤の、(A)成分中の分子鎖の側鎖及び/又は主鎖に少なくとも1個の脂肪族不飽和結合(ビニル基等のアルケニル基、エチニル基等のアルキニル基等)と、少なくとも1個の活性水素とが同一分子内に共存する炭化水素化合物の例としては、下記一般式(1)〜(7)で表わされるものが挙げられる。
【0013】
【化3】
(式中、R1、R2は単結合又は2価の炭化水素基、R3、R4、R5は1価の炭化水素基又は水素原子、R6は3価の炭化水素基、X1は活性水素を有する有機官能基、X2は活性水素を有する有機官能基、1価の炭化水素基又は水素原子をそれぞれ表す。)
【0014】
ここで、2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜6のアルキレン基、フェニレン基が好ましい。3価の炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜6のもので、アルキレン基又はフェニレン基より水素原子が1個脱離したものが好ましい。1価の炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜6のアルキル基、フェニル基が好ましい。また、活性水素を有する有機官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基が好適なものとして挙げられる。なお、上記1価、2価、3価の各炭化水素基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0015】
上記の炭化水素化合物としては、下記のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【化4】
【0017】
(A)成分中の脂肪族不飽和基(ビニル基等のアルケニル基、エチニル基等のアルキニル基等)含有ポリシロキサンの例としては、下記一般式(8)〜(11)が挙げられる。
【0018】
【化5】
(式中、R7、R8は2価の炭化水素基、R9は1価炭化水素基、R10は単結合又は2価の炭化水素基、R11、R12、R13は1価の炭化水素基又は水素原子、R14は1価の炭化水素基、R15は3価の炭化水素基、X3は活性水素を有する有機官能基、X4は活性水素を有する有機官能基、1価の炭化水素基又は水素原子、m=1〜200の整数、n=1〜200の整数をそれぞれ表す。)
【0019】
ここで、2価の炭化水素基、1価の炭化水素基、3価の炭化水素基、活性水素を有する有機官能基としては、上記と同様である。また、mは好ましくは10〜100の整数、nは好ましくは1〜50の整数である。
【0020】
上記のポリシロキサン化合物としては、下記のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
【化6】
【0022】
(A)成分中の有機ポリイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類、これらジイソシアネートの3量体イソシアヌレート等が挙げられる。
【0023】
(A)成分中のポリオールの例としては、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、両末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン等のジオール類や、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、アクリルポリオール等が挙げられる。
【0024】
(A)成分中のポリアミンの例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、両末端アミノ変性ポリジメチルシロキサン等の直鎖状ポリアミン、水添キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、1,5−ナフチレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0025】
(A)成分中の鎖伸長剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、ハイドロキノン等の短鎖ジオール類が一般的に用いられる。
【0026】
これらを用いて(A)成分の脂肪族不飽和基を有するポリウレタン系樹脂を得るには、常法によりケトン系、エステル系等の適当な溶剤中で、有機スズ系、アミン系等のウレタン化触媒存在下に、50〜150℃で1〜10時間熟成し、各成分を反応させればよい。更に必要ならば、粘度、固形分濃度、溶剤を調整するために、反応生成物を濃縮、希釈、溶媒置換してもよい。
【0027】
各成分の反応割合は、所望するポリウレタン系樹脂コート剤の物性に応じて選択すればよいが、一般的には、ポリオール及び/又はポリアミン100重量部に対して分子鎖の側鎖及び/又は主鎖に少なくとも1個の脂肪族不飽和結合と少なくとも1個の活性水素とが同一分子内に共存する炭化水素化合物及び/又は脂肪族不飽和基含有ポリシロキサンが0.1〜50重量部、好ましくは1〜25重量部、鎖伸長剤が0〜50重量部、好ましくは0〜10重量部である。有機ポリイソシアネートの量は、上記活性水素含有化合物の活性水素とイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/活性水素)が0.5〜2.0、特に0.9〜1.1となることが好ましい。
【0028】
また、このポリウレタン系樹脂の重量平均分子量は10,000〜2,000,000、特に10,000〜100,000であることが好ましい。脂肪族不飽和基含有量は0.0001〜10,000ミリモル/gであることが好ましく、より好ましくは0.001〜100ミリモル/g、特に好ましくは0.01〜10ミリモル/gである。
【0029】
(B)成分の1分子当たり2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記一般式(12)又は(13)で表される化合物が好適であり、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
【化7】
【0031】
上記式中、r、sは0以上の整数であり、R16は水素原子又はR17、R17は1価有機基であり、かつR16が2個ともR17のときsは2以上、R16の1個がR17、1個が水素のときsは1以上、R16が2個とも水素のときsは0以上の整数である。
【0032】
【化8】
【0033】
上記式中、R18は1価有機基であり、tは0以上の整数、uは2以上の整数であり、t+uは3以上の整数である。
【0034】
上記式(12)、(13)において、R17、R18の1価有機基としては、好ましくは炭素数が1〜12のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、2−フェニルプロピル基等のアルキル基、アリール基、アラルキル基などの非置換1価炭化水素基や、これらの非置換1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、アルコキシ基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基等で置換した3−グリシドキシプロピル基、2−トリメトキシシリルエチル基等の置換1価炭化水素基が挙げられる。特に好ましくはメチル基である。
【0035】
また、r、sは0以上の整数であるが、r+sの値は1,000以下が好ましく、特に100以下が好ましい。r+sが大きくなると、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの粘度が高くなり過ぎ、他の成分との混合が困難になるばかりでなく、相溶性が悪化して架橋反応が進行しにくくなる場合がある。また、t+uの値は3〜6が好ましい。更に、1分子当たりのヒドロシリル基含有率s/(r+s)、u/(t+u)が大きいほど架橋効率も向上するので好ましい。
具体的には、下記のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
【化9】
【0037】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの使用量は、(A)成分のポリウレタン系樹脂の固形分100重量部に対して0.1〜100重量部であるが、特に1〜20重量部が好ましい。
【0038】
(C)成分のヒドロシリル化触媒の例としては、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム等の貴金属の錯体、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド等の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。これらのうち一般的には、反応性が高く、取り扱いも容易な白金系触媒、特に白金錯体が好ましく、とりわけ塩化白金酸のアルコール溶液や、塩化白金酸溶液を中和後に脂肪族不飽和炭化水素基含有化合物を配位させたもの等が好ましく使用される。
【0039】
(C)成分のヒドロシリル化触媒の使用量は、触媒量で十分であるが、具体的に例示すると、(A)成分のポリウレタン系樹脂の固形分100重量部に対して、有効成分として0.001〜0.1重量部である。
【0040】
本発明のポリウレタン系樹脂コート剤には、塗工方法に応じて粘度調整するために希釈剤を添加したり、ポットライフや硬化条件を調整するためにヒドロシリル化反応遅延剤を添加してもよい。また、例えばキーパッド用コート剤としては、充填材、補強材、つや消し材、染料、顔料等を任意成分として配合しても差し支えないし、例えばロール用コート剤としては、導電性付与剤、帯電制御剤、耐熱向上剤、難燃剤、滑剤、離型剤、安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を任意成分として添加しても差し支えない。
【0041】
本発明のポリウレタン系樹脂コート剤は、シリコーンゴム製部材、例えばキーパッドやロール表面などに上記ポリウレタン系樹脂の表面保護層を形成するのに有効であり、これにより表面が耐摩耗性に優れたシリコーンゴム部材を得ることができる。
【0042】
シリコーンゴム部材のシリコーンゴム基材としては、特に制限はなく、その部材として従来から使用されている、過酸化物加硫によるミラブル型シリコーンゴムからなる部材、ヒドロシリル化架橋による射出成型用液状シリコーンゴムからなる部材に好ましく適用できるが、これに制限されない。
【0043】
本発明のポリウレタン系樹脂コート剤をシリコーンゴム部材に塗工する方法は特に限定されないが、スクリーン印刷、スプレーコート、ディップコートが適している。そして塗工後、50〜200℃で5分〜2時間加熱乾燥させると共に、コート剤の各成分の一部が基材のシリコーンゴム中に浸透し、(A)成分中の脂肪族不飽和基、(B)成分中のヒドロシリル基と、シリコーンゴム中の未反応残存ビニル基等のアルケニル基及び/又はヒドロシリル基が、(C)成分のヒドロシリル化触媒の存在によって渾然一体にヒドロシリル化反応する。
【0044】
なお、本発明のポリウレタン系樹脂コート剤でシリコーンゴム基材表面に形成される表面保護層の膜厚は特に限定されないが、例えばキーパッド用コート剤としては、好ましくは5〜100μm、特に好ましくは10〜50μmであり、ロール用コート剤としては、好ましくは1〜100μm、特に好ましくは5〜50μmである。
【0045】
本発明では、このようにシリコーンゴム基材表面への表面保護層の形成は、通常の方法を採用して行うことができる。なお、表面保護層の接着性を高めるための特別な組成のシリコーンゴム等は必要ない。しかも、シリコーンゴム部材表面を予めプライマー処理、プラズマ処理、UV処理等の煩雑な前処理を施す必要もない。即ち、従来のポリウレタン樹脂コート剤を塗工する場合に比べて前工程を簡略化できると同時に、従来塗工していたポリウレタン樹脂コート剤を、本発明のポリウレタン系樹脂コート剤に置き換えるだけで、その他の材料、製造装置、製造条件等の製造方法を全く変更することなく、表面が耐摩耗性に優れたシリコーンゴム製部材を得ることが可能となる。このことは、該シリコーンゴム製部材の製造コストを低下させる効果も担っている。
【0046】
【実施例】
以下、製造例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0047】
[中間体1の製造]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管及び還流冷却器を具備した反応器に、窒素ガスで置換した後、イタコン酸成分100部、エチレングリコール190部及びハイドロキノン0.01部を投入し、窒素気流下100℃にて均一になるまで撹拌した。続いて、0.05部のテトラブチルチタネートを投入し、窒素気流下160℃の温度下で15時間反応させた。その後160℃で維持させながら、20部のキシロールを添加し、過剰のエチレングリコールの除去を行った。なお、未反応のエチレングリコールはキシロールと共沸し、系外へ完全除去するには5回ほどこの操作を繰り返し行った。
【0048】
[製造例1〜5、比較製造例1]
ポリカーボネートジオール(分子量2,000)150部、1,3−ブタンジオール2部、中間体1を2部、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を18部、MEK(メチルエチルケトン)344部、シクロヘキサノン344部を反応容器に仕込み、撹拌しながら加熱し、60℃になったら、ジブチルチンジラウリレート0.2部を添加して75℃まで昇温し、4時間反応させて残存NCOのないことをIRにて確認して、製造例1のイタコン酸に基づく脂肪族不飽和基を有するポリウレタン樹脂を合成した。以下、製造例1と同様に合成したものを表1に示す。
【0049】
【表1】
1,3BD:1,3−ブタンジオール
TMDD:2,4,7,9−テトラメチル−5−デシニル−4,7−ジオール
GMAE:グリセロールモノアリルエーテル
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
【0050】
[実施例1〜5、比較例1〜6]
有機過酸化物硬化型のミラブル型シリコーンゴムコンパウンド「KE−951U」(信越化学工業社製)100部に、加硫剤(有機過酸化物含有ペースト)「C−8A」(信越化学工業社製)0.6部を配合した。この配合物を、縦100mm、横50mm、厚さ2mmのシート型に充填し、180℃、10分間、100kgf/cm2の条件で加熱圧縮成型し、シリコーンゴムシートAを得た。
【0051】
また、付加反応硬化型の射出成型用液状シリコーンゴム「KE−1990−50A」、「KE−1990−50B」(信越化学工業社製)各50部をよく混合した。この混合物を縦100mm、横50mm、厚さ2mmのシート型に充填し、150℃、10分間、100kgf/cm2の条件で加熱圧縮成型し、シリコーンゴムシートBを得た。
【0052】
これら2種類のゴムシートA,Bに、表2に示した配合のコート剤塗工液をスプレーコートにより塗工し、150℃のオーブン中で30分間加熱乾燥して、各々透明な膜厚約20μmの表面保護層を形成した。得られた各々のコート剤による表面保護層について接着性の試験を行った。結果を表2に示す。
【0053】
また、上記2種類のゴムシートA,Bに、それぞれ「プライマーC」(信越化学工業社製)をスプレーコート、風乾後、100℃のオーブン中で3分間加熱乾燥することにより、プライマー処理したシリコーンゴムシートC,Dを得た。2種類のゴムシートC,Dについても、上記と同様に塗工、加熱乾燥し、得られた各々透明な膜厚約20μmの表面保護層について接着性の試験を行った。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
KF−99P:メチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業社製)
CAT−PL−50T:白金錯体/ヒドロシリル化触媒(信越化学工業社製)
ECHO:1−エチニル−1−シクロヘキサノール/制御剤
【0055】
[実施例6〜10]
有機過酸化物硬化型のミラブル型シリコーンゴムコンパウンド「KE−971U」(信越化学工業社製)100部に、加硫剤「C−8A」(信越化学工業社製)0.6部を配合した。この配合物を、キートップ部、薄肉可動部、ベース部を形成する金型に充填し、180℃、10分間、100kgf/cm2の条件で加熱圧縮成型し、キートップ部、薄肉可動部、ベース部からなるシリコーンゴム製キーパッドを得た。
【0056】
次に、付加反応硬化型シリコーンゴム系黒色インクベース「シルマークBLM」(信越化学工業社製)100部に、架橋剤「CAT−TM」(信越化学工業社製)8部と、硬化触媒「CAT−PL−2」(信越化学工業社製)0.3部を配合し、キシレン100部で希釈して、黒色のシリコーンゴム系文字インクを得た。上記で得られたシリコーンゴム製キーパッドのキートップ上面に、このシリコーンゴム系文字インクをスクリーン印刷によりテストパターン印刷し、150℃のオーブン中で10分間加熱乾燥して、膜厚約20μmの文字インク層を形成した。これに実施例1〜5の各ポリウレタン樹脂コート剤塗工液をスプレーコートにより塗工し、150℃のオーブン中で30分間加熱乾燥したところ、各々透明な膜厚約20μmの表面保護層が形成されたシリコーンゴム製キーパッドを得た。
【0057】
[実施例11〜15]
有機過酸化物硬化型のミラブル型シリコーンゴムコンパウンド「KE−941U」(信越化学工業社製)100部に、加硫剤「C−8A」(信越化学工業社製)0.6部と、カーボンブラック20部を配合した。このシリコーンゴム配合物を、直径5mm、長さ300mmのSUS製の芯金をセットしたロール型に充填し、ロール型ごと180℃のオーブン中で30分間加熱加硫させて厚さ5mm、軸方向の長さ200mmのシリコーンゴム層を形成し、ロール型から脱型して1次加硫シリコーンゴム製ロールを得た。この1次加硫シリコーンゴム製ロールを200℃のオーブン中で4時間保持して2次加硫シリコーンゴム製ロールとした。これに実施例1〜5の各ポリウレタン樹脂コート剤塗工液をスプレーコートにより塗工し、150℃のオーブン中で30分間加熱乾燥して、透明な膜厚約20μmの表面保護層が形成された導電ロールを得た。
【0058】
【発明の効果】
本発明のポリウレタン系樹脂コート剤は、前処理なしでもシリコーンゴム基材への接着性が良好であり、簡単かつ容易に耐摩耗性に優れた表面保護層を基材表面に形成することができる。また、本発明のポリウレタン系樹脂コート剤により表面保護されたシリコーンゴム部材は、基材のシリコーンゴムの特性を損なうことなく、表面にウレタン樹脂特有の耐摩耗性が付与され、更に接点障害問題や低分子シロキサン問題も解決されたもので、シリコーンゴム製キーパッド、シリコーンゴム製ロール等として有用である。
Claims (7)
- (A)下記一般式(1)〜(7)で表される脂肪族不飽和基と活性水素含有官能基とを有する化合物と、有機ポリイソシアネートと、ポリオール及び/又はポリアミンとを反応させることによって得られる脂肪族不飽和基を有するポリウレタン系樹脂 100重量部
(B)1分子中に2個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜100重量部
(C)ヒドロシリル化触媒 有効成分として0.001〜0.1重量部
を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム用ポリウレタン系樹脂コート剤。 - (A)成分のポリウレタン系樹脂が、重量平均分子量が10,000〜2,000,000であり、かつ脂肪族不飽和基含有量が0.0001〜10,000ミリモル/gである請求項1に記載のコート剤。
- (A)成分のポリウレタン系樹脂を得るための反応に用いる成分として、更に鎖伸長剤を含む請求項1又は2に記載のコート剤。
- 鎖伸長剤が、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、ハイドロキノンから選ばれる短鎖ジオールである請求項3に記載のコート剤。
- シリコーンゴム基材表面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーンゴム用ポリウレタン系樹脂コート剤による表面保護層が形成されたシリコーンゴム部材。
- シリコーンゴム基材がシリコーンゴム製キーパッドである請求項5に記載のシリコーンゴム部材。
- シリコーンゴム基材がシリコーンゴム製ロールである請求項5に記載のシリコーンゴム部材。
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