JP4880238B2 - 内燃機関用点火コイル及び自動車 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車などのエンジンのプラグホールに取り付けられ、点火プラグが装着されて使用される内燃機関用点火コイル、及びこの点火コイルを内蔵する自動車に関する。
内燃機関用点火コイルとしては、両端部に柔軟なシリコーン樹脂性のキャップが装着された丸棒状の中心鉄芯の外側に、二次ボビンに巻かれた二次コイルが配置され、さらにその外側に、一次ボビンに巻かれた一次コイルが配置されたものが知られている。これらの構成部材は、互いに組み合わされてコイルケースの中に収納され、コイルケースの開放基端部からエポキシ樹脂が注入される。そして、コイルケース内へのエポキシ樹脂の充填率を高めるために、コイルケースが真空引きされ、その後、エポキシ樹脂が硬化することで点火コイルが完成される(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−071913号公報
ところで、二次ボビン内の樹脂が十分に充填されていないと、点火コイルの使用状態における経年的な冷熱ストレスによって、樹脂にクラックが生じる原因となってしまう。樹脂の充填率は、先端側になるほど低下し易く、これを解消するためには、コイルケースが真空引きされる時間の延長や高真空化が必要となる。しかし、これでは、樹脂充填工程に要する時間が延びて生産性が低下することになってしまう。また、粘度の低い樹脂を選定することも考えられるが、採用可能な樹脂が制限されることになってしまう。
一方、樹脂の流通路を拡大させる対策も考えうるが、例えば、中心鉄芯の外径を縮小すると磁気抵抗が増加してしまい、二次ボビンの薄肉化すると二次ボビン強度が低下する弊害が発生する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、樹脂充填工程において点火コイルの隅々まで迅速且つ確実に樹脂材を充填させることができる内燃機関用点火コイルを提供することを目的とする。また、このような点火コイルを内蔵した自動車を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、中心鉄芯の外側に、一次コイルと二次コイルとを同軸的に配置してコイルケースに収納し、コイルケース内部に合成樹脂材を充填してなる内燃機関用点火コイルであって、二次コイルは、二次ボビンに二次巻線を巻回して構成され、二次ボビンは、二次コイルの二次巻線が外周面に巻回される略円筒状のボビン本体部と、軸方向に貫通する先端開口設けて略円筒状に形成され、先端開口に配置されたダイオードを通して二次コイルの高圧電圧が二次側端子に出力されるボビン先端部と、ボビン本体部とボビン先端部とを連結する略円筒状の連結部と、が一体形成されて構成され、ボビン先端部と連結部の境界位置から軸方向基端向きに突出する複数の突起が、先端開口を取り囲んで間隔を開けて放射状に設けられることで、突起と突起の間に形成される隙間に樹脂が充填されるよう構成されると共に二次ボビンの内外に通じて連結部内部に連絡する一対の貫通孔が、連結部を径方向に貫通して、その正面側と背面側に各々形成され、中心鉄芯の先端部に装着された有底円筒状の弾性キャップが複数の突起に当接する状態で、中心鉄芯が二次ボビンの内部に収容され、この収容状態において、弾性キャップの円筒状の外周面が、樹脂の円滑な移動を阻害する程度に、二次ボビンの内面にやや密に嵌合している一方、弾性キャップの円形状の先端面が、貫通孔の基端側に近接して位置することで、一対の貫通孔が中心鉄芯によって閉塞されることなく、開口している。また、本発明は、前記点火コイルを備える自動車である。
上記構成の本発明によれば、本体部と先端部とを連結する略円筒状の連結部に、径方向の貫通孔が形成されているので、点火コイルの二次ボビン内部の隅々まで樹脂が迅速に充填されて生産効率が良く、また残存空隙がないので経年使用による樹脂クラックの発生も抑制される。
以下、実施例に係る内燃機関用点火コイルについて、その概略構成から説明する。図1は、実施例に係る点火コイルの概略縦断面図である。この点火コイルは、エンジンのプラグホールに取り付けられると共に、先端部に点火プラグが装着されて、点火プラグに高電圧を供給するものである。
図示の通り、本実施例の点火コイルは、中心部から順に、中心鉄芯1、二次ボビン2に二次巻線が巻かれた二次コイル3、一次ボビン4に一次巻線が巻かれた一次コイル5がそれぞれ同心に配置され、それらは略円筒状のケース6に収納される。また、一次コイル5の外周面には、周方向の一部に切欠きを備えて略C字状に形成された鋼板からなる外装鉄芯7が装着される。なお、中心鉄芯1の長手方向両端部には、鉄芯の磁束の飽和を抑制するために、一次コイル5で発生する磁束と反対方向の磁束を発生させる永久磁石を装着してもよい。
ケース6内には、熱硬化性エポキシ樹脂が充填される。このエポキシ樹脂は、中心鉄芯1と二次コイル3の間、二次コイル3と一次コイル5の間、一次コイル5とケース6の間にそれぞれ侵入し、それらの間の絶縁性を確保する。なお、ケース6の上部には、イグナイタ8などが収容される大径部6aが形成されているが、エポキシ樹脂はこの大径部6aにも充填される。このエポキシ樹脂は、ケース6の上部開口から注入充填され、真空引きした状態で硬化雰囲気温度に一定時間保持されて硬化される。
ケース6の上部には、一次電流をオンオフするための点火駆動回路としてのイグナイタ8が設けられると共に、イグナイタ8に一次電流を供給するための一次電流入力用コネクタ端子9が設けられる。ケース6の下部には、二次コイル3に電気的に接続された二次高圧端子10を介して、スプリング11が設けられる。このスプリング11を介して、ケース6の下部には点火プラグが接続される。その接続部は、プラグホール等の金属部に高電圧がリークしないように、ケース6の下部に設けられたプロテクタ12に内蔵される。
中心鉄芯1の外周面には、電気的絶縁性を有する緩衝テープTPが巻き付けられる。本実施例の緩衝テープTPは、薄いポリエステルフィルムとされ、内面側に接着剤を塗布した矩形状のフィルムが中心鉄芯1の外周面に巻かれる。なお、緩衝テープTPは、中心鉄芯1の上下両端部1C,1Cを少しだけ残して巻かれており、そのため、中心鉄芯1の上下両端部1C,1Cは、緩衝テープTPから露出した露出部となる。
この露出部(上下両端部)1C,1Cには、有底円筒状のコアキャップCPが装着される。このコアキャップCPは、シリコーン樹脂等の耐熱性に優れた弾性体で形成され、中心鉄芯1の両端部に被せて接着されて、中心鉄芯1を構成する短冊状の珪素鋼板とエポキシ樹脂の熱膨張率の差を吸収する緩衝材として機能する。
本発明の点火コイルは、基本的に上述のような構造であるが、特に、二次ボビン2の構成に特徴があるので、この点を更に詳述する。図2は、二次ボビン2の正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)、A−A断面図(d)である。また、図3は、図2(c)(d)のB−B断面図である。
図2に示すように、この実施例における二次ボビン2は、二次巻線が外周面に巻回される略円筒状の本体部2aと、二次コイル3の高圧電圧が出力される先端部2bと、本体部2aと先端部2bとを連結する略円筒状の連結部2cとが一体形成されて構成されている。この本体部2aの外周面には二次巻線が巻回されるが、連結部2cには二次巻線が巻回されない。なお、本体部2aの基端には、二次ボビン2を一次ボビン4に挿入する際の位置決めに用いられる係合片25a,25b、および、低圧端子30に接続するために引出線を装着するための引出溝26が形成されている。
本体部2aの外周面には、先端側TOPから基端側BASEに向けて19個の巻着セクションSC1〜SC19に区画する18個のフランジFG1〜FG18が設けられている。これらのフランジFG1〜FG18は、円筒形ボビンを径方向に延設して略円環状に形成されている。そして、各フランジFG1〜FG18には、二次巻線を隣接するセクションSCに移行させる線渡し用の切欠き20と、円周方向の三箇所において軸方向に凹部形成した円弧溝21が設けられている。なお、切欠き20と円弧溝21は、樹脂充填における樹脂の流路および樹脂充填で脱気される気体の流路を拡張することになる。
二次巻線の本体部2aへの巻回作業は、先端側TOPから基端側BASEに向けて、自動巻き機によって行なわれ、特定セクションSC(i)の巻回作業が終れば、基端側に隣接する巻着セクションSC(i−1)の巻回作業に移行するようになっている。なお、各巻着セクションSC(i)では、巻着セクション内を軸方向に何回か往復することで巻線が積層的に巻回される。
連結部2cには、二次ボビン2の内外に通じる矩形の径方向貫通孔22が正面側と背面側に形成されている。そして、この連結部2cにもフランジFG19、20を備え、二次ボビン2の強度を向上させている。なお、貫通孔22を設けることによる二次ボビン2の強度低下を防止するため、フランジ19および20と連結するリブ27を形成して、貫通孔22がフランジ19、20およびリブ27で包囲されたものとなっている。
図3は、図2(c)(d)のB−B断面図である。図示の通り、先端部2bは、連結部2cから先端方向に突出して略円筒状に構成されており、二次ボビン2に貫通する軸方向の先端開口23を備えている。この先端開口23には、高圧端子10に接続されるダイオード31が緩やかな状態で挿入される。先端部2bには、連結部2cに向けて突出する4個の突起24が、間隔を開けて、放射状に形成されている。この突起24は、二次ボビン2内に挿入された中心鉄芯1に当接して、それ以上の進入を阻止する。なお、図3では、突起24の構成を明記するために、便宜上、連結部2cにおける樹脂の充填箇所を網掛けで示している。
図示の通り、複数の突起24は、二次ボビン2に内挿される中心鉄芯1を、コアキャップCPを介して支持する。このとき、貫通孔22が閉鎖されることがないように、コアキャップCPの先端面Hが、貫通孔22の先端面22aよりも基端側に位置づけられる。特に限定されるものではないが、本実施例では、コアキャップCPの先端面Hが、貫通孔22の基端面22bと先端面22aの間であって、基端面22bに近接して配置される。
上述した点火コイルの製造において、樹脂の充填は、図3に示す通りの二次ボビン2の先端部2bを下方に向けた状態で行なわれる。本実施例では、二次ボビン2に貫通穴22が形成されているので、コアキャップCPが二次ボビン2内部にやや密に嵌合していても、貫通孔22を通じて先端部2b内に樹脂が円滑に流入することになる。また、中心鉄芯1の支持位置におけるコアキャップCPの外径と二次ボビン2の内径が同一径となっている場合、貫通孔22がなければ先端部2bおよび非巻回部2c内の気体除去率が悪化することになるが、本実施例の点火コイルは気体の流出路を確保する貫通孔22を設けているので、気体除去が悪化することもない。また、4つの突起24が間隔を開けて配置して先端部2bの内部と本体部2aの内部が必ず連通することになって、先端部2b内の気体が本体部2aに流出することが確保されているので、先端部2b内の樹脂充填率が高まることになる。
以上、本発明の実施例について具体的に説明したが、上記の記載内容は本発明の一例を示したに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱することなく適宜に変更可能である。例えば、貫通孔22や突起24の数を適宜な数とする設計変更が可能である。
本発明の点火コイルの一実施例を示す概略縦断面図(a)と、電気的等価回路(b)である。 二次ボビン2の正面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)、A−A断面図(d)である。 図2(c)(d)のB−B断面図である。
符号の説明
1 中心鉄芯
2 二次ボビン
2a 本体部
2b 先端部
2c 連結部
3 二次コイル
5 一次コイル
6 コイルケース
22 貫通孔
23 先端開口
24 突起
CP コアキャップ

Claims (5)

  1. 中心鉄芯の外側に、一次コイルと二次コイルとを同軸的に配置してコイルケースに収納し、コイルケース内部に合成樹脂材を充填してなる内燃機関用点火コイルであって、二次コイルは、二次ボビンに二次巻線を巻回して構成され、
    二次ボビンは、
    二次コイルの二次巻線が外周面に巻回される略円筒状のボビン本体部と、
    軸方向に貫通する先端開口設けて略円筒状に形成され、先端開口に配置されたダイオードを通して二次コイルの高圧電圧が二次側端子に出力されるボビン先端部と、
    ボビン本体部とボビン先端部とを連結する略円筒状の連結部と、が一体形成されて構成され、
    ボビン先端部と連結部の境界位置から軸方向基端向きに突出する複数の突起が、先端開口を取り囲んで間隔を開けて放射状に設けられることで、突起と突起の間に形成される隙間に樹脂が充填されるよう構成されると共に二次ボビンの内外に通じて連結部内部に連絡する一対の貫通孔が、連結部を径方向に貫通して、その正面側と背面側に各々形成され、
    中心鉄芯の先端部に装着された有底円筒状の弾性キャップが複数の突起に当接する状態で、中心鉄芯が二次ボビンの内部に収容され、この収容状態において、弾性キャップの円筒状の外周面が、樹脂の円滑な移動を阻害する程度に、二次ボビンの内面にやや密に嵌合している一方、弾性キャップの円形状の先端面が、貫通孔の基端側に近接して位置することで、一対の貫通孔が中心鉄芯によって閉塞されることなく、開口していることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
  2. 連結部の外周面には、矩形孔に形成された貫通孔を挟んで一対のフランジ(FG19,FG20)が形成され、貫通孔を包囲するリブが、一対のフランジに連結された状態で形成されている請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
  3. 中心鉄芯の外周面には、電気的絶縁性を有し内面側に接着剤を塗布した緩衝テープが巻き付けられ、軸方向の両端部には、弾性キャップが装着されている請求項1又は2に記載の内燃機関用点火コイル。
  4. ボビン本体部の外周面には、複数の巻着セクションを区画する略円環状の複数の区画フランジ(FG1〜FG18)が設けられ、各区画フランジには、二次巻線を隣接するセクションに移行させる線渡し用の切欠きと、円周方向の複数箇所において軸方向に凹部形成した円弧溝とが設けられて、樹脂材充填時の樹脂流路および脱気流路を形成している請求項1〜3の何れかに記載の内燃機関用点火コイル。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の点火コイルを備える自動車。
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