(実施の形態1)
本発明のアントラセン誘導体の一態様について説明する。
本発明のアントラセン誘導体として、構造式(6)〜(9)で表されるアントラセン誘導体がある。
これらのアントラセン誘導体は、下記合成スキーム(a−1)、または合成スキーム(a−2)で合成される。
合成スキーム(a−1)において、R11〜R18は、それぞれ独立、または、R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とがそれぞれ結合して芳香環を形成する。R11〜R18がそれぞれ独立であるとき、R11〜R18は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、R11とR12の結合と、R13とR14の結合と、R15とR16の結合と、R17とR18の結合とは、それぞれ独立している。
合成スキーム(a−2)において、R21〜R28は、それぞれ独立、または、R21とR22、R22とR23、R25とR26、R26とR27とがそれぞれ結合して芳香環を形成する。R21〜R28がそれぞれ独立であるとき、R21〜R28は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、R21とR22の結合と、R22とR23の結合と、R25とR26の結合と、R26とR27の結合とは、それぞれ独立している。
以上に説明したような本発明のアントラセン誘導体は、酸化反応の繰り返しに対し耐性を有する。また、以上に説明したような本発明のアントラセン誘導体は、青色系の発光を呈することができる。
(実施の形態2)
本発明のアントラセン誘導体を発光物質として用いた発光素子の態様について、図1を用いて説明する。
図1には、第1の電極101と第2の電極102との間に発光層113を有する発光素子が表されている。そして、発光層113には、一般式(1)、(3)〜(5)、構造式(6)〜(9)のいずれかの式で表される本発明のアントラセン誘導体が含まれている。
このような発光素子において、第1の電極101から注入された正孔と、第2の電極102から注入された電子とは、発光層113において再結合し、本発明のアントラセン誘導体を励起状態にする。そして、励起状態の本発明のアントラセン誘導体は基底状態に戻るときに発光する。このように、本発明のアントラセン誘導体は発光物質(所謂ゲスト)として機能する。なお、本形態の発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極102は陰極として機能する。
ここで、発光層113について特に限定はないが、本発明のアントラセン誘導体が、本発明のアントラセン誘導体の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、ゲストとして分散して含まれた層であることが好ましい。これによって、本発明のアントラセン誘導体からの発光が、濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。なお、エネルギーギャップとはLUMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップを言う。
本発明のアントラセン誘導体を分散状態にするために用いる物質(所謂ホスト)について特に限定はないが、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)などのアントラセン誘導体や、4,4'−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体の他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)等の金属錯体等が好ましい。
また、第1の電極101について特に限定はないが、本形態のように、陽極として機能するときは、仕事関数の大きい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO)、または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20%の酸化亜鉛を含む酸化インジウムの他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。なお、第1の電極101は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
また、第2の電極102について特に限定はないが、本形態のように、陰極として機能するときは、仕事関数の小さい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、リチウム(Li)またはマグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属等を含んだアルミニウム等を用いることができる。なお、第2の電極102は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することができる。
なお、発光した光を外部に取り出すために、第1の電極101と第2の電極のいずれか一または両方は、インジウムスズ酸化物等のから成る電極、または可視光を透過出来るように数〜数十nmの厚さで形成された電極であることが好ましい。
また、第1の電極101と発光層113との間には、図1に示すように、正孔輸送層112を有していてもよい。ここで、正孔輸送層とは、第1の電極101から注入された正孔を発光層113へ輸送する機能を有する層である。このように、正孔輸送層112を設け、第1の電極101と発光層113とを離すことによって、発光が金属に起因して消光することを防ぐことができる。
なお、正孔輸送層112について、特に限定はなく、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4'−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4',4''−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4',4''−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物等によって形成されたものを用いることができる。
また、正孔輸送層112は、以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。
また、第2の電極102と発光層113との間には、図1に示すように、電子輸送層114を有していてもよい。ここで、電子輸送層とは、第2の電極102から注入された電子を発光層113へ輸送する機能を有する層である。このように、電子輸送層114を設け、第2の電極102と発光層113とを離すことによって、発光が金属に起因して消光することを防ぐことができる。
なお、電子輸送層114について特に限定はなく、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等によって形成されたものを用いることができる。この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体等によって形成されたものであってもよい。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いて形成されたものであってもよい。
また、電子輸送層114は、以上に述べた物質から成る層を二以上組み合わせて形成した多層構造の層であってもよい。
さらに、第1の電極101と正孔輸送層112との間には、図1に示すように、正孔注入層111を有していてもよい。ここで、正孔注入層とは、陽極として機能する電極から正孔輸送層112へ正孔の注入を補助する機能を有する層である。なお、正孔輸送層を特に設けない場合は、陽極として機能する電極と発光層との間に正孔注入層を設け、発光層への正孔の注入を補助してもよい。
正孔注入層111について特に限定はなく、モリブデン酸化物(MoOx)やバナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タングステン酸化物(WOx)、マンガン酸化物(MnOx)等の金属酸化物によって形成されたものを用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(CuPC)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
また、第2の電極102と電子輸送層114との間には、図1に示すように、電子注入層115を有していてもよい。ここで、電子注入層とは、陰極として機能する電極から電子輸送層114へ電子の注入を補助する機能を有する層である。なお、電子輸送層を特に設けない場合は、陰極として機能する電極と発光層との間に電子注入層を設け、発光層への電子の注入を補助してもよい。
電子注入層115について特に限定はなく、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を用いて形成されたものを用いることができる。この他、Alq3または4,4−ビス(5−メチルベンズオキサゾル−2−イル)スチルベン(BzOs)等のように電子輸送性の高い物質と、マグネシウムまたはリチウム等のようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属とを混合したものも、電子注入層115として用いることができる。
以上に説明した本発明の発光素子において、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法、またはインクジェット法、または塗布法等、いずれの方法で形成しても構わない。また、第1の電極101または第2の電極102についても、スパッタリング法または蒸着法等、いずれの方法を用いて形成しても構わない。
以上のような構成を有する本発明の発光素子は、本発明のアントラセン誘導体を用いているため、酸化反応の繰り返しによる発光物質の性質の変化に伴った発光素子の特性変化が少なく、長期間、安定な発光を呈することができる。また、以上のような構成を有する本発明の発光素子は、本発明のアントラセン誘導体を用いているため、効率よく発光することができる。
(実施の形態3)
実施の形態2において説明した本発明の発光素子は、表示機能を有する発光装置の画素部や、照明機能を有する発光装置の照明部に適用することができる。そして、本発明の発光素子は効率よく発光できるため、本発明の発光素子を用いることによって低消費電力な発光装置を得ることが出来る。また、本発明の発光素子は、長寿命であるため、長期間に渡り、良好な表示画像等を提供することができる。
本形態では、表示機能を有する発光装置の回路構成および駆動方法について図3〜6を用いて説明する。
図3は本発明を適用した発光装置を上面からみた模式図である。図3において、基板6500上には、画素部6511と、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とが設けられている。ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、配線群を介して、外部入力端子であるFPC(フレキシブルプリントサーキット)6503と接続している。そして、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、FPC6503からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。またFPC6503にはプリント配線基盤(PWB)6504が取り付けられている。なお、駆動回路部は、上記のように必ずしも画素部6511と同一基板上に設けられている必要はなく、例えば、配線パターンが形成されたFPC上にICチップを実装したもの(TCP)等を利用し、基板外部に設けられていてもよい。
画素部6511には、列方向に延びた複数のソース信号線が行方向に並んで配列している。また、電流供給線が行方向に並んで配列している。また、画素部6511には、行方向に延びた複数のゲート信号線が列方向に並んで配列している。また画素部6511には、発光素子を含む一組の回路が複数配列している。
図4は、一画素を動作するための回路を表した図である。図4に示す回路には、第1のトランジスタ901と第2のトランジスタ902と発光素子903とが含まれている。
第1のトランジスタ901と、第2のトランジスタ902とは、それぞれ、ゲート電極と、ドレイン領域と、ソース領域とを含む三端子の素子であり、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル領域を有する。ここで、ソース領域とドレイン領域とは、トランジスタの構造や動作条件等によって変わるため、いずれがソース領域またはドレイン領域であるかを限定することが困難である。そこで、本形態においては、ソースまたはドレインとして機能する領域を、それぞれ第1電極、第2電極と表記する。
ゲート信号線911と、書込用ゲート信号線駆動回路913とはスイッチ918によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ゲート信号線911と、消去用ゲート信号線駆動回路914とはスイッチ919によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ソース信号線912は、スイッチ920によってソース信号線駆動回路915または電源916のいずれかに電気的に接続するように設けられている。そして、第1のトランジスタ901のゲートはゲート信号線911に電気的に接続している。また、第1のトランジスタの第1電極はソース信号線912に電気的に接続し、第2電極は第2のトランジスタ902のゲート電極と電気的に接続している。第2のトランジスタ902の第1電極は電流供給線917と電気的に接続し、第2電極は発光素子903に含まれる一の電極と電気的に接続している。なお、スイッチ918は、書込用ゲート信号線駆動回路913に含まれていてもよい。またスイッチ919についても消去用ゲート信号線駆動回路914の中に含まれていてもよい。また、スイッチ920についてもソース信号線駆動回路915の中に含まれていてもよい。
また画素部におけるトランジスタや発光素子等の配置について特に限定はないが、例えば図5の上面図に表すように配置することができる。図5において、第1のトランジスタ1001の第1電極はソース信号線1004に接続し、第2の電極は第2のトランジスタ1002のゲート電極に接続している。また第2トランジスタの第1電極は電流供給線1005に接続し、第2電極は発光素子の電極1006に接続している。ゲート信号線1003の一部は第1のトランジスタ1001のゲート電極として機能する。
次に、駆動方法について説明する。図6は時間経過に伴ったフレームの動作について説明する図である。図6において、横方向は時間経過を表し、縦方向はゲート信号線の走査段数を表している。
本発明の発光装置を用いて画像表示を行うとき、表示期間においては、画面の書き換え動作と表示動作とが繰り返し行われる。この書き換え回数について特に限定はないが、画像をみる人がちらつき(フリッカ)を感じないように少なくとも1秒間に60回程度とすることが好ましい。ここで、一画面(1フレーム)の書き換え動作と表示動作を行う期間を1フレーム期間という。
1フレームは、図6に示すように、書き込み期間501a、502a、503a、504aと保持期間501b、502b、503b、504bとを含む4つのサブフレーム501、502、503、504に時分割されている。発光するための信号を与えられた発光素子は、保持期間において発光状態となっている。各々のサブフレームにおける保持期間の長さの比は、第1のサブフレーム501:第2のサブフレーム502:第3のサブフレーム503:第4のサブフレーム504=23:22:21:20=8:4:2:1となっている。これによって4ビット階調を表現することができる。但し、ビット数及び階調数はここに記すものに限定されず、例えば8つのサブフレームを設け8ビット階調を行えるようにしてもよい。
1フレームにおける動作について説明する。まず、サブフレーム501において、1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。従って、行によって書き込み期間の開始時間が異なる。書き込み期間501aが終了した行から順に保持期間501bへと移る。当該保持期間において、発光するための信号を与えられている発光素子は発光状態となっている。また、保持期間501bが終了した行から順に次のサブフレーム502へ移り、サブフレーム501の場合と同様に1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。以上のような動作を繰り返し、サブフレーム504の保持期間504b迄終了する。サブフレーム504における動作を終了したら次のフレームへ移る。このように、各サブフレームにおいて発光した時間の積算時間が、1フレームにおける各々の発光素子の発光時間となる。この発光時間を発光素子ごとに変えて一画素内で様々に組み合わせることによって、明度および色度の異なる様々な表示色を形成することができる。
サブフレーム504のように、最終行目までの書込が終了する前に、既に書込を終え、保持期間に移行した行における保持期間を強制的に終了させたいときは、保持期間504bの後に消去期間504cを設け、強制的に非発光の状態となるように制御することが好ましい。そして、強制的に非発光状態にした行については、一定期間、非発光の状態を保つ(この期間を非発光期間504dとする。)。そして、最終行目の書込期間が終了したら直ちに、一行目から順に次の(またはフレーム)の書込期間に移行する。これによって、サブフレーム504の書き込み期間と、その次のサブフレームの書き込み期間とが重畳することを防ぐことができる。
なお、本形態では、サブフレーム501乃至504は保持期間の長いものから順に並んでいるが、必ずしも本実施例のような並びにする必要はなく、例えば保持期間の短いものから順に並べられていてもよいし、または保持期間の長いものと短いものとがランダムに並んでいてもよい。また、サブフレームは、さらに複数のフレームに分割されていてもよい。つまり、同じ映像信号を与えている期間、ゲート信号線の走査を複数回行ってもよい。
ここで、書込期間および消去期間における、図4で示す回路の動作について説明する。
まず書込期間における動作について説明する。書込期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ918を介して書込用ゲート信号線駆動回路913と電気的に接続し、消去用ゲート信号線駆動回路914とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介してソース信号線駆動回路と電気的に接続している。ここで、n行目(nは自然数)のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に映像信号が入力される。なお、各列のソース信号線912から入力される映像信号は互いに独立したものである。ソース信号線912から入力された映像信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、電流供給線917から発光素子903へ供給される電流値が決まる。そして、その電流値に依存して発光素子903は発光または非発光が決まる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。
次に消去期間における動作について説明する。消去期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ919を介して消去用ゲート信号線駆動回路914と電気的に接続し、書込用ゲート信号線駆動回路913とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介して電源916と電気的に接続している。ここで、n行目のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に消去信号が入力される。ソース信号線912から入力された消去信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、電流供給線917から発光素子903への電流の供給が阻止される。そして、発光素子903は強制的に非発光となる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。
なお、消去期間では、n行目(nは自然数)については、以上に説明したような動作によって消去する為の信号を入力する。しかし、前述のように、n行目が消去期間であると共に、他の行(m行目(mは自然数)とする。)については書込期間となる場合がある。このような場合、同じ列のソース信号線を利用してn行目には消去の為の信号を、m行目には書込の為の信号を入力する必要があるため、以下に説明するような動作させることが好ましい。
先に説明した消去期間における動作によって、n行目の発光素子903が非発光となった後、直ちに、ゲート信号線911と消去用ゲート信号線駆動回路914とを非接続の状態とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線912とソース信号線駆動回路915と接続させる。そして、ソース信号線とソース信号線駆動回路915とを接続させる共に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913とを接続させる。そして、書込用ゲート信号線駆動回路913からm行目の信号線に選択的に信号が入力され、第1のトランジスタがオンすると共に、ソース信号線駆動回路915からは、1列目から最終列目迄のソース信号線に書込の為の信号が入力される。この信号によって、m行目の発光素子は、発光または非発光となる。
以上のようにしてm行目について書込期間を終えたら、直ちに、n+1行目の消去期間に移行する。その為に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線を電源916と接続する。また、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、ゲート信号線911については、消去用ゲート信号線駆動回路914と接続状態にする。そして、消去用ゲート信号線駆動回路914からn+1行目のゲート信号線に選択的に信号を入力して第1のトランジスタに信号をオンする共に、電源916から消去信号が入力される。このようにして、n+1行目の消去期間を終えたら、直ちに、m+1行目の書込期間に移行する。以下、同様に、消去期間と書込期間とを繰り返し、最終行目の消去期間まで動作させればよい。
なお、本形態では、n行目の消去期間とn+1行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設ける態様について説明したが、これに限らず、n−1行目の消去期間とn行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設けてもよい。
また、本形態では、サブフレーム504のように非発光期間504dを設けるときおいて、消去用ゲート信号線駆動回路914と或る一のゲート信号線とを非接続状態にすると共に、書込用ゲート信号線駆動回路913と他のゲート信号線とを接続状態にする動作を繰り返している。このような動作は、特に非発光期間を設けないフレームにおいて行っても構わない。
(実施の形態4)
本発明の発光素子を含む発光装置の断面図の一態様について、図7(A)〜(C)を用いて説明する。
図7において、点線で囲まれているのは、本発明の発光素子12を駆動するために設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、第1の電極13と第2の電極14との間に発光層15を有する本発明の発光素子である。トランジスタ11のドレインと第1の電極13とは、第1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。このような構成を有する本発明の発光装置は、本形態において、基板10上に設けられている。
なお、図7に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでもよい。また、セミアモルファス等でもよい。
なお、セミアモルファスな半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるものである。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる。ラマンスペクトルが520cm-1よりも低波数側にシフトしている。X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端するために水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。所謂微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)とも言われている。珪化物気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する。珪化物気体としては、SiH4、その他にもSi2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることができる。この珪化物気体をH2、又は、H2とHe、Ar、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は2〜1000倍の範囲。圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHz。基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm3以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以下とする。
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或いはシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成するトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置であることが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよい。
さらに、第1層間絶縁膜16は、図7(A)、(C)に示すように多層でもよいし、または単層でもよい。なお、16aは酸化珪素や窒化珪素のような無機物から成り、16bはアクリルやシロキサン(シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む物質)、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、16cはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16は、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン、レジスト、酸化珪素等を用いて形成される。なお隔壁層18は、無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよいし、または両方を用いて形成されたものでもよい。
なお、図7(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16のみがトランジスタ11と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図7(B)のように、第1層間絶縁膜16(16a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成のものであってもよい。図7(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は第2層間絶縁膜19を貫通し、配線17と接続している。
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、多層でもよいし、または単層でもよい。19aはアクリルやシロキサン(シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む物質)、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第2層間絶縁膜19は、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
発光素子12において、第1の電極および第2の電極がいずれも透光性を有する物質で構成されている場合、図7(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図7(B)の白抜きの矢印で表されるように、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図7(C)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられていることが好ましい。
また、発光素子12は、第1の電極13が陽極として機能し、第2の電極14が陰極として機能する構成であってもよいし、或いは第1の電極13が陰極として機能し、第2の電極14が陽極として機能する構成であってもよい。但し、前者の場合、トランジスタ11はPチャネル型トランジスタであり、後者の場合、トランジスタ11はNチャネル型トランジスタである。
(実施の形態5)
本発明の発光装置を実装することによって、長期間に渡って良好な表示を行うことができる電子機器、または長期間に渡って良好に照明することができる電化製品を得ることができる。
本発明を適用した発光装置を実装した電子機器の一実施例を図8に示す。
図8(A)は、本発明を適用して作製したノート型のパーソナルコンピュータであり、本体5521、筐体5522、表示部5523、キーボード5524などによって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでパーソナルコンピュータを完成できる。
図8(B)は、本発明を適用して作製した携帯電話であり、本体5552には表示部5551と、音声出力部5554、音声入力部5555、操作スイッチ5556、5557、アンテナ5553等によって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでパーソナルコンピュータを完成できる。
図8(C)は、本発明を適用して作製したテレビ受像機であり、表示部5531、筐体5532、スピーカー5533などによって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでテレビ受像機を完成できる。
以上のように本発明の発光装置は、各種電子機器の表示部として用いるのに非常に適している。
なお、本形態では、ノート型のパーソナルコンピュータについて述べているが、この他に携帯電話、カーナビゲイション、或いは照明機器等に本発明の発光素子を有する発光装置を実装しても構わない。
(合成例)
[ステップ1]
9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセンの合成方法について説明する。
窒素気流下、5.0gのp−ジブロモベンゼンの乾燥エーテル溶液(200mL)に−78℃において1.58Nのブチルリチウムヘキサン溶液(13.4mL)を滴下した。滴下終了後同温度にて1時間攪拌した。−78℃にて2−t−ブチルアントラキノン(2.80g)の乾燥エーテル溶液(40mL)を滴下し、その後反応溶液をゆっくり室温まで昇温した。終夜室温で攪拌した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒、ヘキサン−酢酸エチル)によって精製し、化合物を5.5gの重量で得た。
得られた化合物を核磁気共鳴法(1H−NMR)によって測定したところ、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセンであることが確認できた。
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3);δ=1.31(s、9H)、2.81(s、1H)、2.86(s、1H)、6.82−6.86(m、4H)、7.13−7.16(m、4H)、7.36−7.43(m、3H)、7.53−7.70(m、4H)
また、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセンの合成スキーム(b−1)を次に示す。
大気下、上記のようにして合成した9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセン987mg(1.55mmol)、ヨウ化カリウム664mg(4mmol)、ホスフィン酸ナトリウム二水和物を1.48g(14mmol)を、氷酢酸12mlにて懸濁し、2時間還流加熱撹拌した。室温まで冷ましたのち、生じた析出物を濾過し、メタノール約50mlで洗浄し、ろ物を得た。そしてろ物を乾燥させてクリーム色粉末の化合物700mgを得た。収率は82%だった。この化合物を核磁気共鳴法(1H−NMR、13C−NMR)によって測定したところ、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセンであることが確認できた。
この化合物の1H−NMRと13C−NMRとを次に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3);δ=1.28(s、9H)、7.25−7.37(m、6H)、7.44−7.48(m、1H)7.56−7.65(m、4H)、7.71−7.76(m、4H)
13C−NMR(74MHz、CDCl3); δ=30.8、35.0、120.8、121.7、121.7、124.9、125.0、125.2、126.4、126.6、126.6、128.3、129.4、129.7、129.9、131.6、131.6、133.0、133.0、135.5、135.7、138.0、138.1、147.8
また、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセンの合成スキーム(b−2)を次に示す。
[ステップ2]
N−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリンの合成方法について説明する。
1000mlエーレンマイヤーフラスコに、トリフェニルアミン25.19 g (0.102mol)、N−ブロモスクシンイミド18.05g(0.102 mol)、酢酸エチル400mlを入れ、空気中室温で約12時間攪拌した。反応終了後、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄後、水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにより乾燥後、自然ろ過、濃縮し、得られた無色固体を酢酸エチル、ヘキサンにより再結晶したところ無色粉末状固体を22.01g、収率66%で得た。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この無色粉末状固体が4−ブロモトリフェニルアミンであることを確認した。核磁気共鳴法(NMR)による測定結果を以下に示す。
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR(300 MHz,CDCl3)δ ppm: 7.32(d,2H, J=8.7 Hz),7.29−7.23(m,4H),7.08−7.00(m, 6H),6.94(d,2H,J=8.7Hz)
また、4−ブロモトリフェニルアミンの合成スキーム(c−1)を次に示す。
次に、500ml三口フラスコに、アセトアニリド7.21g(0.053mol)、合成した4−ブロモトリフェニルアミン17.32g(0.053mol)、ヨウ化銅(I)2.05g(0.011mol)、リン酸三カリウム22.00g(0.103mol)を入れ、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ジオキサン150ml、trans―1,2−シクロヘキサンジアミン1.3mlを加え、40時間還流した。反応終了後、室温にさましてからフラスコ内の固体を吸引ろ過により除去した。ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄し、水層をクロロホルムで2回抽出し、有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにより乾燥後、自然ろ過、濃縮し、得られた白色固体をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製したところ白色粉末状固体を12.00g、収率59%で得た。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この白色粉末状固体がN−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアセトアニリドであることを確認した。
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR(300 MHz,CDCl3)δppm:7.36−7.23(m, 9H),7.12−7.03(m,10H),2.07(s,3H)
また、N−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアセトアニリドの合成スキーム(c−2)を次に示す。
500mlナスフラスコに、合成したN−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアセトアニリド20.00g(0.053mol)、40%水酸化ナトリウム水溶液100g、テトラヒドロフラン50ml、エタノール50mlを入れ空気中で2時間還流した。反応終了後、室温にさましてから水酸化ナトリウム水溶液を除去した。有機層を水で2回洗浄し、水層をクロロホルムで2回抽出し、有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄した。飽硫酸マグネシウムにより乾燥後、自然ろ過、濃縮し、得られた無色固体を酢酸エチル、ヘキサンにより再結晶したところ無色粉末状固体を14.69g、収率83%で得た。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この無色粉末状固体がN−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリンであることを確認した。
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR (300MHz,CDCl3)δppm:7.30−7.20(m, 5H),7.08−6.87(m,14H),5.61(s,1H)
また、N−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリンの合成スキーム(c−3)を次に示す。
[ステップ3]
構造式(6)で表される9,10−ビス{4−[N−(4−ジフェニルアミノ)フェニル−N−フェニル]アミノフェニル}−2−tert−ブチルアントラセンの合成方法について説明する。
200ml三口フラスコに、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセン2.00g(0.0037mol)、N−(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリン2.61g(0.0078mol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム428 mg(0.77mmol)、tert−ブトキシナトリウム 2.00g(0.021mol)を入れ、系内を窒素気流下にした後、脱水トルエン20mlとトリ−tert−ブチルホスフィン10%ヘキサン溶液4.0 ml を加え、80℃で8時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷まし、反応溶液を水で二回洗浄後、水層をクロロホルムで2回抽出し、有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後濃縮し、得られた褐色オイル状物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製した後、ジクロロメタン、ヘキサンにより再結晶したところ黄色粉末状固体を1.14g収率29%で得た(合成スキーム(d−1))。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この黄色粉末状固体が9,10−ビス{4−[N−(4−ジフェニルアミノ)フェニル−N−フェニル]アミノフェニル}−2−tert−ブチルアントラセン(略称:DPABPA)であることを確認した。
この化合物の1H−NMRは次のようであった。
1H−NMR (300 MHz,CDCl3)δ ppm:7.89−7.81(m,2H),7.78(d,1H,J=9.3Hz),7.66 (d, 2H,J=1.8Hz),7.48(d,d,1H,J=9.3 Hz), 7.38−7.24(m,25H),7.17−7.13(m,12H),7.08−6.98(m,10H),1.30(s,9H)
また、DPABPAの合成スキーム(d−1)を次に示す。
また、DPABPAの単膜の吸収スペクトルを図9に示す。図9において横軸は波長(nm)、縦軸は吸光度(単位なし)を表す。また、DPABPAの単膜を403nmで励起したときの発光スペクトルを図10に示す。図10において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。また、図10から、DPABPAの単膜は494nmにピークを有する青色系発光を示すことが分かる。
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)により、DPABPAが酸化に対して安定かどうかを調べた。なお測定には、ビー・エー・エス製、型番:ALSモデル600A電気化学アナライザーを用いた。
CV測定において、支持電解質としては過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NClO4)を、溶媒としてはジメチルホルムアミド(DMF)をそれぞれ用いた。また、作用電極としてはPt電極を、補助電極としてはPt電極を、基準電極としてはAg/Ag+電極をそれぞれ用いた。CV測定のスキャン速度は0.025V/sに設定し、Ag/Ag+電極に対する作用電極の電位を0から0.4Vまで変化させる走査と、0.4Vから0Vまで戻す走査とを1サイクルとした一連の操作を500サイクル行った。
結果を図11に示す。なお、図11において横軸は、Ag/Ag+電極に対する電位(V)を、縦軸は電流値(A)を表している。 図11から、酸化電位は0.24V(vs.Ag/Ag+電極)であることがわかる。また、500サイクルもの操作を繰り返しているにもかかわらず、図11のCV曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化が見られない。このことから、本発明のDPABPAは酸化に対して極めて安定であることがわかった。
本実施例では、構造式(6)で表される9,10−ビス{4−[N−(4−ジフェニルアミノ)フェニル−N−フェニル]アミノフェニル}−2−tert−ブチルアントラセン(略称:DPABPA)を用いた発光素子の作製例について図2を用いて説明する。
ガラス基板701上に、シリコンを含有したインジウム錫酸化物を、スパッタリング法によって成膜し、第1の電極702を形成した。なお、膜圧は110nmとなるようにした。
次に、第1の電極702の上に、DNTPDを、真空蒸着法によって成膜し、DNTPDから成る層703を形成した。なお、膜厚は30nmとなるようにした。
次に、DNTPDから成る層703上に、α−NPDを、真空蒸着法によって成膜し、α−NPDから成る層704を形成した。なお、膜厚は30nmとなるようにした。
次にα−NPDから成る層704の上に、t−BuDNAと構造式(6)で表されるDPABPAとを、共蒸着法によって成膜し、t−BuDNAとDPABPAとを含む層705を形成した。なお、t−BuDNAは95質量%、DPABPAは5質量%含まれるようにした。これによって、DPABPAはt−BuDNAの中にゲストとして分散された状態となる。また、膜厚は、40nmとなるようにした。なお、共蒸着法とは、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
次に、t−BuDNAとDPABPAとを含む層705の上に、Alq3を、真空蒸着法によって成膜し、Alq3から成る層706を形成した。なお、膜厚は20nmと成るようにした。
次に、Alq3から成る層706の上に、弗化カルシウムを、真空蒸着法によって成膜し、弗化カルシウムから成る層707を形成した。なお、膜厚は1nmとなるようにした。
次に、弗化カルシウムから成る層707の上に、アルミニウムを、真空蒸着法によって成膜し、第2の電極708を形成した。
以上のようにして発光素子を作製することで、DPABPAからの発光を得られる発光素子を得ることができる。
また、以上のようにして作製した発光素子において第1の電極702と第2の電極708とに電圧を印加して電流を流すと、DPABPAが発光する。このとき、第1の電極702は陽極として、第2の電極708は陰極として機能する。また、DNTPDから成る層703は正孔注入層として、α−NPDから成る層704は正孔輸送層として、t−BuDNAとDPABPAとを含む層705は発光層として、Alq3から成る層706は電子輸送層として、弗化カルシウムから成る層707は電子注入層として機能する。
さらに、上記の様にして作製した発光素子を封止した。なお、封止は、グローブボックス内において、窒素雰囲気下で行った。
そして、封止した発光素子を駆動させて、初期状態における密度−輝度特性、電圧−輝度特性、輝度−電流効率特性について調べた。なお、測定は25℃となるように保った雰囲気下で行った。
図12に電流密度−輝度特性を、図13に電圧−輝度特性を、図14に輝度−電流効率特性を示す。なお、図12において、横軸は電流密度を、縦軸は輝度を表す。また、図13において、横軸は電圧を、縦軸は輝度を表す。また、図14において、横軸は輝度を、縦軸は電流効率を表す。
図13の電圧−輝度特性から、本実施例の発光素子は、6.6Vの電圧を印加したときに、290cd/m2の輝度で発光することが分かった。また、6.6Vの電圧を印加したときの発光効率は8.2cd/Aであることが分かった。
また、発光スペクトルは、486nmにピークを有するものであった。また、CIE色度座標は(x,y)=(0.19,0.37)であった。
以上のような初期特性を有する本実施例の発光素子に対し、定電流駆動による連続点灯試験を行った。初期状態において290cd/m2の輝度で発光するために必要な電流密度(3.54mA/cm2)の電流を一定時間流し続け、輝度の経持変化を調べた。その結果、600時間経過時に於ける輝度は、初期状態における輝度の86%であることが分かった。このことから、本実施例の発光素子は、発光時間に伴う輝度の減少が小さく、素子寿命が良好であるということが分かった。
連続点灯試験の測定結果を図15に示す。図15において、横軸は初期状態からの経過時間(hour)、縦軸は初期輝度を100としたときの初期輝度に対する輝度の相対値(任意単位)を表す。