以下、本発明の一態様について説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の発光素子の一態様について図1を用いて説明する。
図1には、第1の電極101と第2の電極102との間に正孔発生層111を有する発光素子が示されている。正孔発生層111と第2の電極102との間には、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子発生層115が設けられている。第1の電極101の電位が第2の電極102の電位よりも高くなるように第1の電極101と第2の電極102とに電圧を印加したとき、発光層113には、第1の電極101側から正孔が注入され、第2の電極102側から電子が注入される。そして、発光層113に注入された正孔と電子とは再結合する。発光層113には発光物質が含まれており、再結合によって生成された励起エネルギーによって発光物質は励起状態となる。励起状態となった発光物質は、基底状態に戻るときに発光する。
正孔発生層111は、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体と、そのアントラセン誘導体に対し電子受容性を示す物質とを混合して形成された層である。このように一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体を用いることで、酸化反応に起因した素子不良が少なく、長期間、安定に動作する発光素子を得ることができる。これは、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体が酸化反応の繰り返しに対する耐性に優れたものであり、正孔発生層111において酸化反応が生じても、正孔発生層111の質の変化は生じ難い為である。なお、正孔発生層111の質の変化としては、例えば抵抗値の増加等が挙げられる。
一般式(1)において、R1〜R8は、それぞれ独立、または、R1とR2、R3とR4、R5とR6、R7とR8とがそれぞれ結合して芳香環を形成する。R1〜R8がそれぞれ独立であるとき、R1〜R8は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、R1とR2の結合と、R3とR4の結合と、R5とR6の結合と、R7とR8の結合とは、それぞれ独立している。
一般式(2)において、R11〜R18は、それぞれ独立、または、R11とR12、R12とR13、R15とR16、R16とR17とがそれぞれ結合して芳香環を形成する。R11〜R18がそれぞれ独立であるとき、R11〜R18は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、R11とR12の結合と、R12とR13の結合と、R15とR16の結合と、R16とR17の結合とは、それぞれ独立している。
なお、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体の中でも特に1×10−6cm2/Vsの正孔移動度を有するアントラセン誘導体を用いることが好ましい。また、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体に対して電子受容性を示す物質は、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体に対して、モル比の値が0.5以上2以下(=電子受容性を示す物質/アントラセン誘導体)となるように含まれていることが好ましい。また、電子受容性を示す物質について特に限定はないが、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、レニウム酸化物等から選ばれる少なくとも一の金属酸化物を用いることが好ましい。但し、この他、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、タングステン酸化物、銀酸化物等の金属酸化物を用いても構わない。これらの金属酸化物と組み合わせることで、正孔発生層111の結晶化を抑制することができ、結晶化に起因した素子の動作不良を低減することができる。なお、金属酸化物の他、金属窒化物、金属酸化窒化物等も電子受容性を示すのであれば用いても構わない。このような構成の正孔発生層111において、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体は、電子受容性を示す物質によって電子を奪われる。つまり一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体は酸化され、そして正孔が発生する。
また、発光層113は、発光物質を含んでいる。ここで、発光物質とは、発光効率が良好で、所望の波長の発光をし得る物質である。発光層113は、発光物質のみから形成された層であってもよいが、発光物質自体の濃度に起因して濃度消光を生じる場合は、発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、発光物質が分散するように混合された層であることが好ましい。発光層113に発光物質を分散して含ませることで、発光が濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。ここで、エネルギーギャップとはLUMO準位とHOMO準位との間のエネルギーギャップをいう。
発光物質について特に限定はなく、発光効率が良好で、所望の発光波長の発光をし得る物質を用いればよい。例えば、赤色系の発光を得たいときには、4−ジシアノメチレン−2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJTB)やペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン等、600nmから680nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いることができる。また緑色系の発光を得たいときは、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6やクマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)等、500nmから550nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いることができる。また、青色系の発光を得たいときは、9,10−ビス(2−ナフチル)−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−ガリウム(略称:BGaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等、420nmから500nmに発光スペクトルのピークを有する発光を呈する物質を発光物質として用いることができる。以上のように、蛍光を発光する物質の他、ビス[2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIr(pic))、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(略称:Ir(ppy)3)等の燐光を発光する物質も発光物質として用いることができる。
また、発光物質と共に発光層113に含まれ、発光物質を分散状態にするために用いられる物質について特に限定はなく、発光物質として用いる物質のエネルギーギャップ等を勘案して適宜選択すればよい。例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、または4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、2,3−ビス{4−[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:NPADiBzQn)等のキノキサリン誘導体の他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)等の金属錯体等を発光物質と共に用いることができる。
正孔輸送層112は、正孔を輸送する機能を有する層であり、本形態の発光素子においては、正孔発生層111から発光層113へ正孔を輸送する機能を有する。正孔輸送層112を設けることによって、正孔発生層111と発光層113との距離を離すことができ、その結果、正孔発生層111に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質を用いて形成することが好ましい。なお、正孔輸送性の高い物質とは、電子よりも正孔の移動度が高く、電子の移動度に対する正孔の移動度の比の値(=正孔移動度/電子移動度)が100よりも大きい物質をいう。正孔輸送層112を形成するのに用いることができる物質の具体例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等が挙げられる。
電子輸送層114は、電子を輸送する機能を有する層であり、本形態の発光素子においては、電子発生層115から発光層113へ電子を輸送する機能を有する。電子輸送層114を設けることによって、第2の電極102と発光層113との距離を離すことができ、その結果、第2の電極102に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質を用いて形成することが好ましい。なお、電子輸送性の高い物質とは、正孔よりも電子の移動度が高く、正孔の移動度に対する電子の移動度の比の値(=電子移動度/正孔移動度)が100よりも大きい物質をいう。電子輸送層114を形成するのに用いることができる物質の具体例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)等の金属錯体の他、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4−ビス(5−メチルベンズオキサゾル−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)等が挙げられる。
なお、正孔輸送層112と電子輸送層114とは、それぞれ、上記の物質の他、バイポーラ性の物質を用いて形成してもよい。バイポーラ性の物質とは、電子または正孔のいずれか一方のキャリアの移動度と他方のキャリアの移動度とを比較したときに、一方のキャリアの移動度に対する他方のキャリアの移動度の比の値が100以下、好ましくは10以下である物質をいう。バイポーラ性の物質として、例えば、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、2,3−ビス{4−[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:NPADiBzQn)等が挙げられる。バイポーラ性の物質の中でも特に、正孔及び電子の移動度が1×10−6cm2/Vs以上の物質を用いることが好ましい。また同一のバイポーラ性の物質を用いて、正孔輸送層112と電子輸送層114とを形成しても構わない。
電子発生層115は、電子を発生する層であり、電子輸送性の高い物質およびバイポーラ性の物質から選ばれる少なくとも一の物質と、これらの物質に対し電子供与性を示す物質とを混合して形成することができる。ここで、電子輸送性の高い物質およびバイポーラ性の物質の中でも特に1×10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。電子輸送性の高い物質およびバイポーラ性の物質については、それぞれ、上記したものを用いることができる。また、電子供与性を示す物質としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。また、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物、具体的にはリチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO))等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。また、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。また、アルカリ金属窒化物、アルカリ土類金属窒化物等、具体的には、窒化カルシウム、窒化マグネシウム等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。
第1の電極101はインジウム錫酸化物、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)が混合されたターゲットを用いて形成された酸化インジウムの他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、窒化タンタル等の仕事関数の高い物質を用いて形成してもよいし、アルミニウム、マグネシウム等の仕事関数の低い物質を用いて形成してもよい。このように、本形態の発光素子では、物質の仕事関数に依らずに第1の電極101を形成することができる。これは、第1の電極101と発光層113との間に正孔発生層111が設けられている為である。
また、第2の電極102についても、インジウム錫酸化物、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)が混合されたターゲットを用いて形成された酸化インジウムの他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、窒化タンタル等の仕事関数の高い物質を用いて形成してもよいし、アルミニウム、またはマグネシウム等の仕事関数の低い物質を用いて形成してもよい。このように、本形態の発光素子では、物質の仕事関数に依らずに第2の電極102を形成することができる。これは、第2の電極102と発光層113との間に電子発生層115が設けられている為である。
なお、本形態では、正孔発生層111及び発光層113の他に、正孔輸送層112、電子輸送層114等を有する発光素子について示したが、発光素子の態様は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図3に示すように電子発生層115に換えて電子注入層116を設けた発光素子であってもよい。電子注入層116は、第2の電極102から電子輸送層114へ電子の注入を補助する機能を有する層である。電子注入層116を設けることによって、第2の電極102と電子輸送層114との間の電子親和力の差が緩和され、電子が注入され易くなる。電子注入層116は、電子輸送層114を形成している物質よりも電子親和力が大きく第2の電極102を形成している物質よりも電子親和力が小さい物質、または電子輸送層114と第2の電極102との間に1〜2nmの薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるような物質を用いて形成することが好ましい。電子注入層116を形成するのに用いることのできる物質の具体例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、アルカリ金属のフッ化物、アルカリ土類金属のフッ化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物等の無機物が挙げられる。これらの物質は薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるため好ましい。また、無機物の他、BPhen、BCP、p−EtTAZ、TAZ等の電子輸送層114を形成するのに用いることのできる物質も、これらの物質の中から、電子輸送層114の形成に用いる物質よりも電子親和力が大きい物質を選択することによって、電子注入層116を形成する物質として用いることができる。つまり、電子注入層116における電子親和力が電子輸送層114における電子親和力よりも相対的に大きくなるようにすることで、電子注入層116を形成することができる。なお、電子注入層116を設ける場合、第2の電極102は、アルミニウム等の仕事関数の低い物質を用いて形成することが好ましい。
また、発光層113と電子輸送層114との間には、図4に示すように、正孔阻止層117を設けてもよい。正孔阻止層117を設けることによって、正孔が、発光層113を突き抜けて第2の電極102の方に流れていくのを防ぐことができ、キャリアの再結合効率を高めることができる。また、発光層113で生成された励起エネルギーが電子輸送層114等、他の層へ移動してしまうことを防ぐことができる。正孔阻止層117は、BAlq、OXD−7、TAZ、BPhen等の電子輸送層114を形成するのに用いることのできる物質の中から、特に、発光層113を形成するのに用いる物質よりもイオン化ポテンシャル及び励起エネルギーが大きい物質を選択することによって、形成することができる。つまり、正孔阻止層117におけるイオン化ポテンシャルが電子輸送層114におけるイオン化ポテンシャルよりも相対的に大きくなるように、正孔阻止層117は形成されていればよい。同様に、発光層113と正孔輸送層112との間にも、発光層113を突き抜けて第1の電極101の方に電子が流れていくのを阻止するための層を設けても構わない。
なお、正孔輸送層112、電子輸送層114を設けるか否かについては発明の実施者が適宜選択すればよく、例えば、正孔輸送層112、電子輸送層114とを設けなくても金属に起因した消光等の不具合が生じない場合等は、必ずしもこれらの層を設ける必要がない。
以上に述べた本発明の発光素子は、正孔発生層111の厚さに依存した駆動電圧の変化が少ない。その為、正孔発生層111の厚さを変えることによって発光層113と第1の電極101との間の距離を調整することが容易にできる。つまり、効率よく外部に発光を取り出せるような長さとなるように、あるいは外部に取り出された発光の色純度が良くなる長さとなるように、発光した光が通る光路の長さ(光路長)を調節することが容易である。また、正孔発生層111の厚さを厚くすることによって第1の電極101の表面の凹凸を緩和し、電極間の短絡を防ぐことを容易にできる。
また、本発明の発光素子は、電子発生層115の厚さに依存した駆動電圧の変化が少ない。その為、電子発生層115の厚さを変えることによって発光した光が通る光路の長さ(光路長)を調整することが容易である。また、電子発生層115の厚さを厚くすることによって第2の電極102の表面の凹凸を緩和し、電極間の短絡を防ぐことを容易にできる。
(実施の形態2)
本発明の発光素子の一態様について図2を用いて説明する。
図2には、第1の電極201と第2の電極202との間に、第1の層211と、第2の層212と、第3の層213とを有する発光素子が示されている。第1の層211は正孔を発生し、第2の層212は電子を発生する。第3の層213は、電子輸送層221と、発光層222と、正孔輸送層223と、正孔発生層224とが順に積層されて成る。ここで、正孔発生層224は発光層222よりも第2の電極202側に設けられており、電子輸送層221は発光層222よりも第1の電極201側に設けられている。第1の電極201の電位が第2の電極202の電位よりも低くなるように第1の電極201と第2の電極202とに電圧を印加すると、第1の層211から第1の電極201へ正孔が注入される。また、第3の層213へは、第2の層212から電子が注入され、第2の電極202から正孔が注入される。第3の層213に注入された電子と正孔とは、発光層222において再結合する。発光層222には発光物質が含まれており、再結合によって生成された励起エネルギーによって発光物質は励起状態となる。励起状態となった発光物質は、基底状態に戻るときに発光する。
第1の層211と正孔発生層224とは、それぞれ、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体と、そのアントラセン誘導体に対し電子受容性を示す物質とを混合して形成された層である。第1の層211および正孔発生層224において、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体は、電子受容性を示す物質によって電子を奪われる。つまり一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体は酸化され、そして正孔が発生する。
一般式(1)において、R1〜R8は、それぞれ独立、または、R1とR2、R3とR4、R5とR6、R7とR8とがそれぞれ結合して芳香環を形成する。R1〜R8がそれぞれ独立であるとき、R1〜R8は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、R1とR2の結合と、R3とR4の結合と、R5とR6の結合と、R7とR8の結合とは、それぞれ独立している。
一般式(2)において、R11〜R18は、それぞれ独立、または、R11とR12、R12とR13、R15とR16、R16とR17とがそれぞれ結合して芳香環を形成する。R11〜R18がそれぞれ独立であるとき、R11〜R18は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、R11とR12の結合と、R12とR13の結合と、R15とR16の結合と、R16とR17の結合とは、それぞれ独立している。
このように、本形態の発光素子は、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体を用いて第1の層211および正孔発生層224を形成している為、酸化反応に起因した素子不良が少なく、長期間、安定に動作する。これは、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体が酸化反応の繰り返しに対する耐性に優れたものであるため、第1の層211または正孔発生層224において酸化反応が生じても、第1の層211または正孔発生層224の質の変化は生じ難い為である。なお、正孔発生層224の質の変化として例えば抵抗値の増加等が挙げられる。
なお、第1の層211と正孔発生層224とのそれぞれにおいて、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体の中でも特に1×10−6cm2/Vsの正孔移動度を有するアントラセン誘導体を用いることが好ましい。また、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体に対して電子受容性を示す物質は、一般式(1)または一般式(2)で表されるアントラセン誘導体に対して、モル比の値が0.5以上2以下(=電子受容性を示す物質/アントラセン誘導体)となるように、それぞれの層に含まれていることが好ましい。また、電子受容性を示す物質について特に限定はないが、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、レニウム酸化物等の金属酸化物を用いることが好ましい。この他、チタン酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、タングステン酸化物、銀酸化物などを用いても構わない。これらの金属酸化物と組み合わせることで、第1の層211または正孔発生層224の結晶化を抑制することができ、結晶化に起因した素子の動作不良を低減することができる。なお、金属酸化物の他、金属窒化物、金属酸化窒化物等も電子受容性を示すものであれば用いても構わない。
第2の層212は、電子を発生する層であり、電子輸送性の高い物質およびバイポーラ性の物質から選ばれる少なくとも一の物質と、これらの物質に対し電子供与性を示す物質とを混合して形成することができる。ここで、電子輸送性の高い物質およびバイポーラ性の物質の中でも特に1×10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。電子輸送性の高い物質およびバイポーラ性の物質については、それぞれ、上記したものを用いることができる。また、電子供与性を示す物質としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の中から選ばれた物質、具体的にはリチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)等を用いることができる。また、アルカリ金属の酸化物またはアルカリ土類金属の酸化物、具体的にはリチウム酸化物(Li2O)、カルシウム酸化物(CaO)、ナトリウム酸化物(Na2O)、カリウム酸化物(K2O)、マグネシウム酸化物(MgO))等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。また、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。また、アルカリ金属窒化物、アルカリ土類金属窒化物等、具体的には、窒化カルシウム、窒化マグネシウム等から選ばれる少なくとも一の物質も電子供与性を示す物質として用いることができる。
電子輸送層221は、電子を輸送する機能を有する層であり、本形態の発光素子においては、第2の層212から発光層222へ電子を輸送する機能を有する。電子輸送層221を設けることによって、第2の層212と発光層222との距離を離すことができ、その結果、第2の層212に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。電子輸送層221は、電子輸送性の高い物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質を用いて形成することが好ましい。電子輸送層221を形成するのに用いることができる物質の具体例については、実施の形態1における電子輸送層114を形成するのに用いることができる物質の具体例についての記載を準用する。
発光層222は、発光物質を含んでいる。発光層222は、発光物質のみから形成された層であってもよいが、濃度消光を生じる場合は、発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する物質からなる層中に、発光物質が分散するように混合された層であることが好ましい。発光層222に発光物質を分散して含ませることで、発光が濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。なお、発光物質については、実施の形態1における発光物質についての記載を準用する。ここで、発光物質と共に発光層222に含まれ発光物質を分散状態にするために用いられる物質については、実施の形態1に記載の発光物質と共に発光層113に含まれ発光物質を分散状態にするために用いられる物質についての記載を準用する。
正孔輸送層223は、正孔を輸送する機能を有する層であり、本形態の発光素子においては、正孔発生層224から発光層222へ正孔を輸送する機能を有する。正孔輸送層223を設けることによって、正孔発生層224と発光層222との距離を離すことができ、その結果、正孔発生層224に含まれている金属に起因して発光が消光することを防ぐことができる。正孔輸送層223は、正孔輸送性の高い物質を用いて形成することが好ましく、特に1×10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質を用いて形成することが好ましい。正孔輸送層223を形成するのに用いることができる物質の具体例については、実施の形態1における正孔輸送層112を形成するのに用いることができる物質の具体例についての記載を準用する。
第1の電極201はインジウム錫酸化物、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)が混合されたターゲットを用いて形成された酸化亜鉛を含む酸化インジウムの他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、窒化タンタル等の仕事関数の高い物質を用いて形成してもよいし、アルミニウム、マグネシウム等の仕事関数の低い物質を用いて形成してもよい。このように、本形態の発光素子では、物質の仕事関数に依らずに第1の電極201を形成することができる。これは、第1の電極201と発光層222との間に第1の層211と第2の層212とが設けられている為である。
また、第2の電極202についても、インジウム錫酸化物、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)が混合されたターゲットを用いて形成された酸化インジウムの他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、窒化タンタル等の仕事関数の高い物質を用いて形成してもよいし、アルミニウム、マグネシウム等の仕事関数の低い物質を用いて形成してもよい。このように、本形態の発光素子では、物質の仕事関数に依らずに第2の電極202を形成することができる。これは、第2の電極202と発光層222との間に正孔発生層224が設けられている為である。
なお、本形態では、発光物質を含む層である第3の層213が電子輸送層221、発光層222、正孔輸送層223、正孔発生層224を含む多層である発光素子について示したが、発光素子の態様は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように正孔発生層224に換えて正孔注入層225を設けた発光素子であってもよい。正孔注入層225は、第2の電極202から正孔輸送層223へ正孔の注入を補助する機能を有する層である。正孔注入層225を設けることによって、第2の電極202と正孔輸送層223との間のイオン化ポテンシャルの差が緩和され、正孔が注入され易くなる。正孔注入層225は、正孔輸送層223を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが大きく、第2の電極202を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが小さい物質、または正孔輸送層223と第2の電極202との間に1〜2nmの薄膜として設けたときにエネルギーバンドが曲がるような物質を用いて形成することが好ましい。正孔注入層225を形成するのに用いることのできる物質の具体例として、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)等の高分子等が挙げられる。これらの物質を用いることによって正孔注入層225におけるイオン化ポテンシャルが正孔輸送層223におけるイオン化ポテンシャルよりも相対的に大きく、第2の電極202を形成している物質よりもイオン化ポテンシャルが相対的に小さくなるように、正孔注入層225を形成することができる。なお、正孔注入層225を設ける場合、第2の電極202は、インジウム錫酸化物等の仕事関数の高い物質を用いて形成することが好ましい。
また、発光層222と電子輸送層221との間には、図6に示すように、正孔阻止層226を設けてもよい。正孔阻止層226を設けることによって、正孔が、発光層222を突き抜けて第1の電極201の方に流れていくのを防ぐことができ、キャリアの再結合効率を高めることができる。また、発光層222で生成された励起エネルギーが電子輸送層221等、他の層へ移動してしまうことを防ぐことができる。正孔阻止層226は、BAlq、OXD−7、TAZ、BPhen等の電子輸送層221を形成するのに用いることのできる物質の中から、特に、発光層222を形成するのに用いる物質よりもイオン化ポテンシャル及び励起エネルギーが大きい物質を選択することによって、形成することができる。つまり、正孔阻止層226におけるイオン化ポテンシャルが電子輸送層221におけるイオン化ポテンシャルよりも相対的に大きくなるように、正孔阻止層226は形成されていればよい。同様に、発光層222と正孔輸送層223との間にも、発光層222を突き抜けて第2の電極202の方に電子が流れていくのを阻止するための層を設けても構わない。
なお、正孔輸送層223、電子輸送層221を設けるか否かについては発明の実施者が適宜選択すればよく、例えば、正孔輸送層223、電子輸送層221とを設けなくても金属に起因した消光等の不具合が生じない場合等は、必ずしもこれらの層を設ける必要がない。
また、以上のような、発光素子において、第2の層212に含まれる電子輸送性の高い物質の電子親和力と、第3の層213に含まれる層のうち第2の層212と接する層に含まれる物質の電子親和力との差は、好ましくは2eV以下、より好ましくは1.5eV以下である。より具体的には、図2に示した発光素子のように、第2の層212と電子輸送層221とが接するときは、第2の層212に含まれる電子輸送性を有する物質と、電子輸送層221に含まれる電子輸送性を有する物質との電子親和力との差が、2eV以下であることが好ましく、1.5eV以下であることがさらに好ましい。このように、第2の層212と第3の層213とを接合させることによって、第2の層212から第3の層213へ効率よく電子を注入することができる。
以上に述べた本発明の発光素子は、第1の層211及び正孔発生層224の厚さに依存した駆動電圧の変化が少ない素子である。その為、第1の層211若しくは正孔発生層224の厚さを変えることによって発光層222と第1の電極201若しくは第2の電極202との間の距離を調整することが容易にできる。つまり、効率よく外部に発光を取り出せるような長さとなるように、あるいは外部に取り出された発光の色純度が良くなる長さとなるように、発光した光が通る光路の長さ(光路長)を調節することが容易である。また、第1の層211若しくは正孔発生層224の厚さを厚くすることによって第1の電極201若しくは第2の電極202の表面の凹凸を緩和し、電極間の短絡を防ぐことを容易にできる。
(実施の形態3)
本発明の発光素子は、化合物の酸化及び結晶化に起因した動作不良を低減できるものである。また、正孔発生層の厚さを厚くすることによって電極間の短絡を防ぐことができるものである。また、正孔発生層の厚さを変えることで光路長を調整し、発光の外部取り出し効率を高めたり、色純度の良い発光を得ることができるものである。その為、本発明の発光素子を画素として用いることで、発光素子の動作不良に起因した表示欠陥の少ない良好な発光装置を得ることができる。また、本発明の発光素子を画素として用いることで、表示色が良好な画像を提供できる発光装置を得ることができる。また、本発明の発光素子を光源として用いることで、発光素子の動作不良に起因した不具合が少なく良好に照明することができる発光装置を得ることができる。
本形態では、表示機能を有する発光装置の回路構成および駆動方法について図7〜11を用いて説明する。
図7は本発明を適用した発光装置を上面からみた模式図である。図7において、基板6500上には、画素部6511と、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とが設けられている。ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、配線群を介して、外部入力端子であるFPC(フレキシブルプリントサーキット)6503と接続している。そして、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、FPC6503からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。またFPC6503にはプリント配線基盤(PWB)6504が取り付けられている。なお、駆動回路部は、上記のように必ずしも画素部6511と同一基板上に設けられている必要はなく、例えば、配線パターンが形成されたFPC上にICチップを実装したもの(TCP)等を利用し、基板外部に設けられていてもよい。
画素部6511には、列方向に延びた複数のソース信号線が行方向に並んで配列している。また、電流供給線が行方向に並んで配列している。また、画素部6511には、行方向に延びた複数のゲート信号線が列方向に並んで配列している。また画素部6511には、発光素子を含む一組の回路が複数配列している。
図8は、一画素を動作するための回路を表した図である。図8に示す回路には、第1のトランジスタ901と第2のトランジスタ902と発光素子903とが含まれている。
第1のトランジスタ901と、第2のトランジスタ902とは、それぞれ、ゲート電極と、ドレイン領域と、ソース領域とを含む三端子の素子であり、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル領域を有する。ここで、ソース領域とドレイン領域とは、トランジスタの構造や動作条件等によって変わるため、いずれがソース領域またはドレイン領域であるかを限定することが困難である。そこで、本形態においては、ソースまたはドレインとして機能する領域を、それぞれ第1電極、第2電極と表記する。
ゲート信号線911と、書込用ゲート信号線駆動回路913とはスイッチ918によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ゲート信号線911と、消去用ゲート信号線駆動回路914とはスイッチ919によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ソース信号線912は、スイッチ920によってソース信号線駆動回路915または電源916のいずれかに電気的に接続するように設けられている。そして、第1のトランジスタ901のゲートはゲート信号線911に電気的に接続している。また、第1のトランジスタの第1電極はソース信号線912に電気的に接続し、第2電極は第2のトランジスタ902のゲート電極と電気的に接続している。第2のトランジスタ902の第1電極は電流供給線917と電気的に接続し、第2電極は発光素子903に含まれる一の電極と電気的に接続している。なお、スイッチ918は、書込用ゲート信号線駆動回路913に含まれていてもよい。またスイッチ919についても消去用ゲート信号線駆動回路914の中に含まれていてもよい。また、スイッチ920についてもソース信号線駆動回路915の中に含まれていてもよい。
また画素部におけるトランジスタや発光素子等の配置について特に限定はないが、例えば図9の上面図に表すように配置することができる。図9において、第1のトランジスタ1001の第1電極はソース信号線1004に接続し、第2の電極は第2のトランジスタ1002のゲート電極に接続している。また第2トランジスタの第1電極は電流供給線1005に接続し、第2電極は発光素子の電極1006に接続している。ゲート信号線1003の一部は第1のトランジスタ1001のゲート電極として機能する。
次に、駆動方法について説明する。図10は時間経過に伴ったフレームの動作について説明する図である。図10において、横軸は時間経過を表し、縦軸はゲート信号線の走査段数を表している。
本発明の発光装置を用いて画像表示を行うとき、表示期間においては、画面の書き換え動作と表示動作とが繰り返し行われる。この書き換え回数について特に限定はないが、画像をみる人がちらつき(フリッカ)を感じないように少なくとも1秒間に60回程度とすることが好ましい。ここで、一画面(1フレーム)の書き換え動作と表示動作を行う期間を1フレーム期間という。
1フレームは、図10に示すように、書き込み期間501a、502a、503a、504aと保持期間501b、502b、503b、504bとを含む4つのサブフレーム501、502、503、504に時分割されている。発光するための信号を与えられた発光素子は、保持期間において発光状態となっている。各々のサブフレームにおける保持期間の長さの比は、第1のサブフレーム501:第2のサブフレーム502:第3のサブフレーム503:第4のサブフレーム504=23:22:21:20=8:4:2:1となっている。これによって4ビット階調を表現することができる。但し、ビット数及び階調数はここに記すものに限定されず、例えば8つのサブフレームを設け8ビット階調を行えるようにしてもよい。
1フレームにおける動作について説明する。まず、サブフレーム501において、1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。従って、行によって書き込み期間の開始時間が異なる。書き込み期間501aが終了した行から順に保持期間501bへと移る。当該保持期間501bにおいて、発光するための信号を与えられている発光素子は発光状態となっている。また、保持期間501bが終了した行から順に次のサブフレーム502へ移り、サブフレーム501の場合と同様に1行目から最終行まで順に書き込み動作が行われる。以上のような動作を繰り返し、サブフレーム504の保持期間504b迄終了する。サブフレーム504における動作を終了したら次のフレームへ移る。このように、各サブフレームにおいて発光した時間の積算時間が、1フレームにおける各々の発光素子の発光時間となる。この発光時間を発光素子ごとに変えて一画素内で様々に組み合わせることによって、明度および色度の異なる様々な表示色を形成することができる。
サブフレーム504のように、最終行目までの書込が終了する前に、既に書込を終え、保持期間に移行した行における保持期間を強制的に終了させたいときは、保持期間504bの後に消去期間504cを設け、強制的に非発光の状態となるように制御することが好ましい。そして、強制的に非発光状態にした行については、一定期間、非発光の状態を保つ(この期間を非発光期間504dとする。)。そして、最終行目の書込期間が終了したら直ちに、一行目から順に次の(またはフレーム)の書込期間に移行する。これによって、サブフレーム504の書き込み期間と、その次のサブフレームの書き込み期間とが重畳することを防ぐことができる。
なお、本形態では、サブフレーム501乃至504は保持期間の長いものから順に並んでいるが、必ずしも本実施例のような並びにする必要はなく、例えば保持期間の短いものから順に並べられていてもよいし、または保持期間の長いものと短いものとがランダムに並んでいてもよい。また、サブフレームは、さらに複数のフレームに分割されていてもよい。つまり、同じ映像信号を与えている期間、ゲート信号線の走査を複数回行ってもよい。
ここで、書込期間および消去期間における、図8で示す回路の動作について説明する。
まず書込期間における動作について説明する。書込期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ918を介して書込用ゲート信号線駆動回路913と電気的に接続し、消去用ゲート信号線駆動回路914とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介してソース信号線駆動回路915と電気的に接続している。ここで、n行目(nは自然数)のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に映像信号が入力される。なお、各列のソース信号線912から入力される映像信号は互いに独立したものである。ソース信号線912から入力された映像信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、電流供給線917から発光素子903へ供給される電流値が決まる。そして、その電流値に依存して発光素子903は発光または非発光が決まる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903が発光する。
次に消去期間における動作について説明する。消去期間において、n行目(nは自然数)のゲート信号線911は、スイッチ919を介して消去用ゲート信号線駆動回路914と電気的に接続し、書込用ゲート信号線駆動回路913とは非接続である。また、ソース信号線912はスイッチ920を介して電源916と電気的に接続している。ここで、n行目のゲート信号線911に接続した第1のトランジスタ901のゲートに信号が入力され、第1のトランジスタ901はオンとなる。そして、この時、1列目から最終列目迄のソース信号線に同時に消去信号が入力される。ソース信号線912から入力された消去信号は、各々のソース信号線に接続した第1のトランジスタ901を介して第2のトランジスタ902のゲート電極に入力される。この時第2のトランジスタ902に入力された信号によって、電流供給線917から発光素子903への電流の供給が阻止される。そして、発光素子903は強制的に非発光となる。例えば、第2のトランジスタ902がPチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にHigh Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。一方、第2のトランジスタ902がNチャネル型である場合は、第2のトランジスタ902のゲート電極にLow Levelの信号が入力されることによって発光素子903は非発光となる。
なお、消去期間では、n行目(nは自然数)については、以上に説明したような動作によって消去する為の信号を入力する。しかし、前述のように、n行目が消去期間であると共に、他の行(m行目(mは自然数)とする。)については書込期間となる場合がある。このような場合、同じ列のソース信号線を利用してn行目には消去の為の信号を、m行目には書込の為の信号を入力する必要があるため、以下に説明するような動作させることが好ましい。
先に説明した消去期間における動作によって、n行目の発光素子903が非発光となった後、直ちに、ゲート信号線911と消去用ゲート信号線駆動回路914とを非接続の状態とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線912とソース信号線駆動回路915と接続させる。そして、ソース信号線とソース信号線駆動回路915とを接続させる共に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913とを接続させる。そして、書込用ゲート信号線駆動回路913からm行目の信号線に選択的に信号が入力され、第1のトランジスタがオンすると共に、ソース信号線駆動回路915からは、1列目から最終列目迄のソース信号線に書込の為の信号が入力される。この信号によって、m行目の発光素子は、発光または非発光となる。
以上のようにしてm行目について書込期間を終えたら、直ちに、n+1行目の消去期間に移行する。その為に、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、スイッチ920を切り替えてソース信号線を電源916と接続する。また、ゲート信号線911と書込用ゲート信号線駆動回路913を非接続とすると共に、ゲート信号線911については、消去用ゲート信号線駆動回路914と接続状態にする。そして、消去用ゲート信号線駆動回路914からn+1行目のゲート信号線に選択的に信号を入力して第1のトランジスタに信号をオンする共に、電源916から消去信号が入力される。このようにして、n+1行目の消去期間を終えたら、直ちに、m+1行目の書込期間に移行する。以下、同様に、消去期間と書込期間とを繰り返し、最終行目の消去期間まで動作させればよい。
なお、本形態では、n行目の消去期間とn+1行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設ける態様について説明したが、これに限らず、n−1行目の消去期間とn行目の消去期間との間にm行目の書込期間を設けてもよい。
また、本形態では、サブフレーム504のように非発光期間504dを設けるときおいて、消去用ゲート信号線駆動回路914と或る一のゲート信号線とを非接続状態にすると共に、書込用ゲート信号線駆動回路913と他のゲート信号線とを接続状態にする動作を繰り返している。このような動作は、特に非発光期間を設けないフレームにおいて行っても構わない。
(実施の形態4)
本発明の発光素子を含む発光装置の一態様について、図11の断面図を用いて説明する。
図11において、点線で囲まれているのは、本発明の発光素子12を駆動するために設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、第1の電極13と第2の電極14との間に正孔発生層と電子発生層と発光物質を含む層とが積層された層15を有する本発明の発光素子である。トランジスタ11のドレインと第1の電極13とは、第1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。このような構成を有する本発明の発光装置は、本形態において、基板10上に設けられている。
なお、図11に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでもよい。また、セミアモルファス等でもよい。
なお、セミアモルファス半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるものである。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる。ラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側にシフトしている。X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端するために水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。所謂微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)とも言われている。珪化物気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する。珪化物気体としては、SiH4、その他にもSi2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることができる。この珪化物気体をH2、又は、H2とHe、Ar、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は2〜1000倍の範囲、圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHz、基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm3以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以下とする。なお、セミアモルファス半導体を用いたTFT(薄膜トランジスタ)の移動度はおよそ1〜10m2/Vsecとなる。
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或いはシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成するトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置であることが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよい。
さらに、第1層間絶縁膜16は、図11(A)、(C)に示すように多層でもよいし、または単層でもよい。なお、16aは酸化珪素や窒化珪素のような無機物から成り、16bはアクリルやシロキサン(シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、水素またはアルキル基等の有機基を有する化合物)、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、16cはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16は、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機物と有機物のいずれか一で形成されたものでもよい。
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン、レジスト、酸化珪素等を用いて形成される。なお隔壁層18は、無機物と有機物のいずれか一で形成されたものでもよいし、または両方を用いて形成されたものでもよい。
なお、図11(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16のみがトランジスタ11と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図11(B)のように、第1層間絶縁膜16(16a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成のものであってもよい。図11(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は第2層間絶縁膜19を貫通し、配線17と接続している。
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、多層でもよいし、または単層でもよい。19aはアクリルやシロキサン、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第2層間絶縁膜19は、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機物と有機物のいずれか一で形成されたものでもよい。
発光素子12において、第1の電極および第2の電極がいずれも透光性を有する物質で構成されている場合、図11(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図11(B)の白抜きの矢印で表されるように、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図11(C)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられていることが好ましい。
また、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が高くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよいし、或いは、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が低くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよい。前者の場合、トランジスタ11はNチャネル型トランジスタであり、後者の場合、トランジスタ11はPチャネル型トランジスタである。
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を特に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置であってもよい。図12には本発明を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。図12において、基板951上には、電極952と電極956との間には発光物質を含む層及び電子発生層、正孔発生層が順に積層した層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブ型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
(実施の形態5)
本発明の発光素子を画素として用いた発光装置は、発光素子の動作不良に起因した表示欠陥が少なく良好に表示動作する。その為、このような発光装置を表示部に適用することによって、表示欠陥に起因した表示画像の誤認等の少ない電子機器を得ることができる。また、本発明の発光素子を光源として用いた発光装置は、発光素子の動作不良に起因した不具合が少なく良好に照明することができる。その為、このような発光装置をバックライト等の照明部として用いることによって、発光素子の不具合に起因して局所的に暗部が形成されるような動作不良が低減され、良好に表示することができる。
本発明を適用した発光装置を実装した電子機器の一実施例を図13に示す。
図13(A)は、本発明を適用して作製したパーソナルコンピュータであり、本体5521、筐体5522、表示部5523、キーボード5524などによって構成されている。図7に示したような本発明の発光素子を画素として用いた発光装置を表示部として組み込むことでパーソナルコンピュータを完成できる。また、本発明の発光素子を光源として用いた発光装置を、バックライトとして組み込んでもパーソナルコンピュータを完成させることができる。具体的には、図14に示すように、筐体5511と筐体5514とに液晶装置5512と発光装置5513とが嵌め込まれた照明装置を表示部として組み込めばよい。なお、図14において、液晶装置5512には外部入力端子5515が装着されており、発光装置5513には、外部入力端子5516が装着されている。
図13(B)は、本発明を適用して作製した電話機であり、本体5552には表示部5551と、音声出力部5554、音声入力部5555、操作スイッチ5556、5557、アンテナ5553等によって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことで電話機を完成できる。
図13(C)は、本発明を適用して作製したテレビ受像機であり、表示部5531、筐体5532、スピーカー5533などによって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込むことでテレビ受像機を完成できる。
以上のように本発明の発光装置は、各種電子機器の表示部として用いるのに非常に適している。なお、電子機器は、本形態で述べたものに限定されるものではなく、ナビゲーション装置等、その他の電子機器であってもよい。
(実施の形態6)
本発明の実施に用いるアントラセン誘導体について説明する。
本発明の実施に用いるアントラセン誘導体として、構造式(3)〜(6)で表されるアントラセン誘導体が挙げられる。
これらのアントラセン誘導体は、下記合成スキーム(a−1)、または合成スキーム(a−2)で合成することができる。
合成スキーム(a−1)において、R1〜R8は、それぞれ独立、または、R1とR2、R3とR4、R5とR6、R7とR8とがそれぞれ結合して芳香環を形成する。R1〜R8がそれぞれ独立であるとき、R1〜R8は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、R1とR2の結合と、R3とR4の結合と、R5とR6の結合と、R7とR8の結合とは、それぞれ独立している。
合成スキーム(a−2)において、R11〜R18は、それぞれ独立、または、R11とR12、R12とR13、R15とR16、R16とR17とがそれぞれ結合して芳香環を形成する。R11〜R18がそれぞれ独立であるとき、R11〜R18は、水素または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。なお、R11とR12の結合と、R12とR13の結合と、R15とR16の結合と、R16とR17の結合とは、それぞれ独立している。
以上に説明したような本発明の実施に用いるアントラセン誘導体は、酸化反応の繰り返しに対し耐性を有する。
本発明の実施に用いるアントラセン誘導体の合成方法、及び酸化反応に対する耐性について調べた結果について説明する。
[ステップ1]
9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセンの合成方法について説明する。
窒素気流下、5.0gの1,4−ジブロモベンゼンの乾燥エーテル溶液(200mL)に−78℃において1.58mol/Lのブチルリチウムヘキサン溶液(13.4mL)を滴下した。滴下終了後同温度にて1時間攪拌した。−78℃にて2−t−ブチルアントラキノン(2.80g)の乾燥エーテル溶液(40mL)を滴下し、その後反応溶液をゆっくり室温まで昇温した。終夜室温で攪拌した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル)によって精製し、化合物を5.5gの重量で得た。
得られた化合物を核磁気共鳴法(1H−NMR)によって測定したところ、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセンであることが確認できた。
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3);δ=1.31(s、9H)、2.81(s、1H)、2.86(s、1H)、6.82−6.86(m、4H)、7.13−7.16(m、4H)、7.36−7.43(m、3H)、7.53−7.70(m、4H)
また、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセンの合成スキーム(b−1)を次に示す。
大気下、上記のようにして合成した9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチル−9,10−ジヒドロキシ−9,10−ジヒドロアントラセンを987mg(1.55mmol)、ヨウ化カリウムを664mg(4mmol)、ホスフィン酸ナトリウム二水和物を1.48g(14mmol)、氷酢酸12mlにて懸濁し、2時間還流加熱撹拌した。室温まで冷ましたのち、生じた析出物を濾過し、メタノール約50mlで洗浄し、ろ物を得た。そしてろ物を乾燥させてクリーム色粉末の化合物700mgを得た。収率は82%だった。この化合物を核磁気共鳴法(1H−NMR、13C−NMR)によって測定したところ、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセンであることが確認できた。
この化合物の1H−NMRと13C−NMRとを次に示す。
1H−NMR(300MHz、CDCl3);δ=1.28(s、9H)、7.25−7.37(m、6H)、7.44−7.48(m、1H)7.56−7.65(m、4H)、7.71−7.76(m、4H)
13C−NMR(300MHz、CDCl3); δ=30.8、35.0、120.8、121.7、121.7、124.9、125.0、125.2、126.4、126.6、126.6、128.3、129.4、129.7、129.9、131.6、131.6、133.0、133.0、135.5、135.7、138.0、138.1、147.8
また、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセンの合成スキーム(b−2)を次に示す。
[ステップ2]
N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミンの合成方法について説明する。
1000mlのエーレンマイヤーフラスコに、トリフェニルアミン25.19g(0.102mol)、N−ブロモスクシンイミド18.05g(0.102mol)、酢酸エチル400mlを入れ、空気中室温で一晩攪拌した。反応終了後、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄後、水層を酢酸エチルで2回抽出し、抽出された溶液を有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにより乾燥後、自然ろ過、濃縮し、得られた無色固体を酢酸エチル、ヘキサンにより再結晶したところ無色粉末状固体を22.01g、収率66%で得た。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この白色粉末状固体が4−ブロモ−トリフェニルアミンであることを確認した。核磁気共鳴法(NMR)による測定結果を以下に示す。
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ ppm:7.32(d,2H,J=8.7Hz),7.29−7.23(m,4H),7.08−7.00(m,6H),6.94(d,2H,J=8.7Hz)
また、4−ブロモ−トリフェニルアミンの合成スキーム(c−1)を次に示す。
次に、500 ml 三口フラスコに、アセトアニリドを7.21g(0.053 mol)、合成した4−ブロモ−トリフェニルアミンを17.32g(0.053 mol)、ヨウ化銅(CuI)を2.05g(0.011mol)、リン酸三カリウムを22.00g(0.103mol)入れ、系内を窒素気流下にした。ジオキサン150ml、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン1.3mlを加え、40時間還流した。反応終了後、室温にさましてから系内の固体を吸引ろ過により除去した。ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄し、水層をクロロホルムで2回抽出し、抽出された溶液を有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにより乾燥後、自然ろ過、濃縮し、得られた無色固体をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製したところ白色粉末状固体を12.00g、収率59%で得た。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この白色粉末状固体がN−(4−ジフェニルアミノフェニル)アセトアニリドであることを確認した。
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δppm:7.36−7.23(m,9H),7.12−7.03(m,10H),2.07(s,3H)
また、N−(4−ジフェニルアミノフェニル)アセトアニリドの合成スキーム(c−2)を次に示す。
500mlのナスフラスコに、合成したN−(4−ジフェニルアミノフェニル)アセトアニリドを20.00g(0.053mol)、40%水酸化ナトリウム水溶液を100g、テトラヒドロフランを50ml、エタノールを50ml入れ空気中で2時間還流した。反応終了後、室温にさましてから水酸化ナトリウム水溶液を除去した。有機層を水で2回洗浄し、水層をクロロホルムで2回抽出し、抽出された溶液を有機層とあわせて飽和食塩水で洗浄した。飽硫酸マグネシウムにより乾燥後、自然ろ過、濃縮し、得られた無色固体を酢酸エチル、ヘキサンにより再結晶したところ無色粉末状固体を14.69g、収率83%で得た。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この白色粉末状固体がN−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミンであることを確認した。
この化合物の1H−NMRを次に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δppm:7.30−7.20(m, 5H),7.08−6.87(m,14H),5.61(s,1H)
また、N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミンの合成スキーム(c−3)を次に示す。
[ステップ3]
構造式(6)で表される9,10−ビス{4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−2−tert−ブチルアントラセンの合成方法について説明する。
200 ml 三口フラスコに、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)−2−tert−ブチルアントラセン2.00 g (0.0037mol)、(4−ジフェニルアミノ)フェニルアニリン2.61 g (0.0078mol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム428 mg (0.77mmol)、tert−ブトキシナトリウム 2.00 g (0.021 mol )を入れ、系内を窒素気流下にした後、脱水トルエン20 ml とトリ−t−ブチルホスフィン10%ヘキサン溶液4.0 ml を加え、80℃で8時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷まし、反応溶液を水で二回洗浄後、水層をクロロホルムで2回抽出し、抽出された溶液を有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後濃縮し、得られた褐色オイル状物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により精製した後、ジクロロメタン、ヘキサンにより再結晶したところ黄色粉末状固体を1.14 g 収率29%で得た(合成スキーム(c−1))。核磁気共鳴法(1H−NMR)によって、この黄色粉末状固体が9,10−ビス{4−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−2−tert−ブチルアントラセン(略称:DPABPA)であることを確認した。
この化合物の1H−NMRは次のようであった。
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δppm:7.89−7.81(m,2H),7.78(d,1H,J=9.3Hz),7.66(d,2H,J=1.8Hz),7.48(d,d,1H,J=9.3Hz),7.38−7.24(m,25H),7.17−7.13(m,12H),7.08−6.98 (m,10H),1.30(s,9H)
また、DPABPAの合成スキーム(d−1)を次に示す。
次に、サイクリックボルタンメトリ(CV)により、DPABPAが酸化に対して安定かどうかを調べた。なお測定には、ビー・エー・エス製、型番:ALSモデル600A電気化学アナライザーを用いた。
CV測定において、支持電解質としては過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NClO4)を、溶媒としてはジメチルホルムアミド(DMF)をそれぞれ用いた。また、作用電極としてはPt電極を、補助電極としてはPt電極を、基準電極としてはAg/Ag+電極をそれぞれ用いた。CV測定のスキャン速度は0.025V/sに設定し、Ag/Ag+電極に対する作用電極の電位を0から0.4Vまで変化させる走査と、0.4Vから0Vまで戻す走査とを1サイクルとした一連の操作を500サイクル行った。
結果を図15に示す。なお、図15において横軸は、Ag/Ag+電極に対する電位(V)を、縦軸は電流値(A)を表している。 図15から、酸化電位は0.24V(vs.Ag/Ag+電極)であることがわかる。また、500サイクルもの操作を繰り返しているにもかかわらず、図15のCV曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化が見られない。このことから、本発明のDPABPAは酸化に対して極めて安定であることがわかった。