JP4878804B2 - 歯科用粘膜調整材 - Google Patents

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本発明は、粉体組成物、詳しくは、ガラス転移温度の低い有機樹脂粒子とガラス転移温度の高い有機樹脂微粒子とからなる粉体組成物に関する。
医療用材料、歯科用材料において、充填材として、(メタ)アクリル系重合体等のビニル重合系樹脂からなる有機樹脂粒子が使用されている。こうした有機樹脂粒子は、通常、ビニル重合性単量体を懸濁重合し、得られた該有機樹脂粒子の懸濁液を脱水し、さらに乾燥することにより製造される。
かかる有機樹脂粒子のうち、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲のものは、そのガラス転移温度の低さによって、通常使用されているポリメチルメタクリレート等のガラス転移温度の高い(メタ)アクリル系重合体により形成された粒子にはない柔らかさを発現できる。そのため、例えば、該軟質樹脂粒子は、体積平均粒子径10〜90μmのものが、歯科用粘膜調整材等の軟質材料の原料として好適に用いられている。
ここで、歯科用粘膜調整材とは、義歯床下粘膜の形態、色調が正常な状態に回復するまで使用中の義歯の粘膜面に裏装して用いられる治療用材料のことであり、詳しくは、以下の説明のような軟質材料である。
すなわち、義歯使用者が義歯を長期にわたって使用していると顎堤を形成する歯槽骨の吸収等が原因となり口腔の形状が次第に変化することが知られている。この様な場合、義歯床と口腔粘膜との適合が悪くなり、義歯が不安定になる。適合不良な義歯をそのまま使用し続けると義歯床下粘膜に不均一な圧力が加わるため、該粘膜に潰瘍や炎症が発生したり、咬合圧による疼痛が引き起こされたりするようになる。上記のような不適合が起こった場合には新しい義歯を作製するか、使用中の義歯を裏装するなどして、義歯の粘膜に対する適合性を回復させる必要がある。
しかしながら、著しい潰瘍や炎症がある患者の口腔粘膜は極めて不安定な状態であるため、新しい義歯の作製や裏装の前に口腔粘膜が比較的健全な状態になるのを待ち、義歯床下粘膜との良好な適合性を確保する必要がある。
このような場合に使用される材料が歯科用粘膜調整材である。義歯修理の前段階で口腔粘膜の治療用として使用するものであり、義歯床下粘膜のひずみ、圧痕を開放し、各部の被圧変位性に対応した機能的な形態を印記するために、義歯床下粘膜面に用いられる軟性高分子材である。粉材と重合性単量体を含む液材の二部材により構成されてなり、これら部材の混和によって、始めは流動性の高いペースト状を示すが、液材が粉材に浸透して粘弾性が発現してくる。ペーストに流動性のあるうちに義歯床粘膜面に盛りつけ、口腔内に挿入して賦形するものである。
この歯科用粘膜調整材は、上記使用目的からして、柔軟性、粘弾性に富むことが要求され、この要求を満足する粉材として、上記ガラス転移温度が0〜60℃のビニル重合系樹脂により形成された有機樹脂粒子が使用されている。
ところが、こうした有機樹脂粒子は、保管や輸送時に荷重や温度がかかることによって凝集が発生し易く、場合によっては融着することがあった。したがって、このような有機樹脂粒子からなる粉体は、体積平均粒子径200μm以上の粗大凝集粒子を、かなりの量で含有しているのが普通であり、粉体の流動性が低下し、容器から取り出し難くなるなど取り扱い性が低下していた。加えて、前記歯科用粘膜調整材用の用途に使用する場合においては、該有機樹脂粒子を含む粉材と液剤とを混ぜる際の練和感の著しい低下を招いていた。このため、該有機樹脂粒子を利用する際には、配合直前にボールミル等による何らかの解砕手段で、これを細粒子化することが必要であり、余分な時間と費用を要していた。
他方、このような凝集による粗大凝集粒子の発生を防止するには、何らかの凝集防止剤を加えること有効と考えられ、シリカなどのケイ素含有無機微粒子(特許文献1)や貝殻粉末(特許文献2)などを使用することが提案されている。しかし、このような異質の微粒子の使用は、有機樹脂微粒子を配合した材料に対して物性や色調等に悪影響を与える可能性がある。しかも、粗大凝集粒子の発生は、前記した粒子の保管や輸送時に発生するだけではなく、有機樹脂粒子の製造工程において、有機樹脂粒子の懸濁液を乾燥した段階で相当量が発生しており、製造された有機樹脂粒子に上記のような凝集防止剤を単に加えたのでは、十分に抑制できないことが発覚した。
特開2005−89520号公報 特開2003−292341号公報
以上の背景にあって本発明は、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲にあるビニル重合系樹脂により形成された有機樹脂粒子からなる粉体において、粗大凝集粒子が含有されておらず、保存時にも該粗大凝集粒子が生成せず、そのため使用前の解砕工程が不要なものを提供することを目的とする。さらには、歯科用粘膜調整材等の軟質材料の充填剤に使用した場合に、物性や色調を悪化させることのない上記軟質な有機樹脂粒子からなる粉体を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲のビニル重合系樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が10〜90μmの有機樹脂粒子に、ガラス転移温度が60℃より高い有機樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が1μm以下の有機樹脂微粒子を組合せて使用し、且つこれらの樹脂粒子の混合を特有の方法により実施することにより、上記粗大凝集粒子の生成が高度に抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲のビニル重合系樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が10〜90μmの有機樹脂粒子と、ガラス転移温度が60℃より高い有機樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が1μm以下の有機樹脂微粒子とからなる粉体組成物であって、体積平均粒子径200μm以上の粗大凝集粒子の含有率が10質量%以下である粉体組成物を含有してなる歯科用粘膜調整材である。
このような粗大凝集粒子の含有率が少ない粉体組成物は、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲のビニル重合系樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が10〜90μmの有機樹脂粒子を懸濁重合し、得られた反応液を脱水した後、乾燥する有機樹脂粒子の製造方法において、懸濁重合の終了後の反応液に、ガラス転移温度が60℃より高い有機樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が1μm以下の有機樹脂微粒子を混合した後、脱水、乾燥すること、又は、懸濁重合の終了後の反応液を脱水して得た有機樹脂粒子の湿体に、ガラス転移温度が60℃より高い有機樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が1μm以下の有機樹脂微粒子を混合した後、乾燥することにより製造することができる。

本発明において、粉体組成物は、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲のビニル重合系樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が10〜90μmの有機樹脂粒子を含んでいながら、体積平均粒子径200μm以上の粗大凝集粒子の含有率が極めて少ない。しかも、保存時においてもこのような粗大凝集粒子の発生は防止され、一次粒子に近い状態で長く維持でき、使用前に解砕工程を行う必要がない。
また、凝集防止剤として、配合されているのが体積平均粒子径が1μm以下の、有機樹脂である点では同質な微粒子であるため、これを配合した材料の物性や色調に与える影響が小さく、医療用又は歯科用材料の充填剤、例えば歯科用粘膜調整材の充填剤として極めて有用である。
本発明において、粉体組成物を構成する樹脂粒子の一方は軟質な樹脂粒子であり、詳しくは、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲のビニル重合系樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が10〜90μmの有機樹脂粒子である。このように大きい粒子径の樹脂粒子が、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲の軟質なビニル重合系樹脂により構成されているため、歯科用粘膜調整材等の軟質材料の充填剤として、好適に使用可能になる。ここで、上記有機樹脂粒子を構成するビニル重合系樹脂のガラス転移温度は、10〜50℃の範囲であるのがより好ましい。
このビニル重合系樹脂のガラス転移温度が、60℃より大きい場合、樹脂粒子の柔軟性が十分でなくなり、他方、0℃より小さい場合、粗大凝集粒子の発生が顕著になってくる他、良好な粉体性状も保てなくなり、ペースト化してくる。
上記有機樹脂粒子は、ビニル重合系樹脂により形成されてなり、該ビニル重合系樹脂としては、重合性基としてビニル重合性基を有する重合性単量体(以下、ビニル系単量体と称する)を単独重合させて得られたホモポリマー、こうしたホモポリマーのガラス転移温度が0〜60℃の範囲になるビニル系単量体の異なる2種類以上を共重合させたコポリマー、及び該ビニル系単量体とホモポリマーのガラス転移温度が0〜60℃の範囲を外れる他のビニル系単量体とを共重合させて得られたコポリマー(但し、重合体のガラス転移温度が0〜60℃の範囲になる共重合比で重合したもの)のいずれも含むものである。
なお、ビニル重合性基としては、ビニル基、アリル基、スチリル基等であっても良いが、(メタ)アクリロイル基であるのが、重合体が上記ガラス転移温度の要件を満足する樹脂になるものの入手の容易性や安全性の点から好ましい。すなわち、本発明において、特に好適なビニル重合系樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂である。
ビニル重合系樹脂において、このようなガラス転移温度が0〜60℃の範囲にあるホモポリマーを具体的に例示すると、ベンジルアクリレート、4−ブトキシカルボニルフェニルアクリレート、3−クロロ−2,2−ビス(クロロメチル)プロピルアクリレート、2−クロロフェニルアクリレート、4−クロロフェニルアクリレート、4−メトキシフェニルアクリレート、2,4−ジクロロフェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロドデシルアクリレート、2−メトキシカルボニルフェニルアクリレート、3−メトキシカルボニルフェニルアクリレート、2−エトキシカルボニルフェニルアクリレート、3−エトキシカルボニルフェニルアクリレート、4−エトキシカルボニルフェニルアクリレート、ヘプタフルオロ−2−プロピルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、メチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、フェニルアクリレート、m−トリルアクリレート、o−トリルアクリレート、p−トリルアクリレート、N−ブチルアクリルアミド、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、ネオペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、3−オキサブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、ブチルブトキシカルボニルメタクリレート、1H,1H−ヘプタフルオロブチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系単量体の単独重合体が挙げられる。
また、こうした(メタ)アクリル系単量体の異なる2種類以上を共重合させたコポリマーとしては、ポリ(プロピルメタクリレート−n−ブチルアクリレート)、ポリ(プロピルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート)、ポリ(i−ブチルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート)、ポリ(ベンジルアクリレート−n−ブチルメタクリレート)等が挙げられる。
さらに、ビニル系単量体とホモポリマーのガラス転移温度が0〜60℃の範囲を外れる他のビニル系単量体とを共重合させたコポリマーとしては、ポリ(メチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−n−ブチルメタクリレート)、ポリ(塩化ビニル−n−ブチルメタクリレート)等が挙げられる。他のビニル系単量体において、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性の単量体は、得られるビニル重合系樹脂に架橋構造を形成し、そのガラス転移温度を高くするため、通常は使用しないが、該ガラス転移温度が前記0〜60℃の範囲内に保持される少量ならば使用しても許容される。
これらコポリマー(共重合体)は、前記条件を満たす限り、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等の如何なる共重合体でもよい。コポリマーである場合、共重合比等によりガラス転移温度を調整することができる。
上記のビニル重合系樹脂の中でも、取扱いの容易さ等の点で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させたものが好ましく、特に、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等の炭素数3〜20(より好ましくは3〜10)のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーやその他の
ビニル系単量体とのコポリマー(少なくとも上記(メタ)アクリル酸エステルを50モル%以上使用)であるのが最も好ましい。
有機樹脂粒子を構成するビニル重合系樹脂の平均分子量や分子量分布は、前記ガラス転移温度の要件を満足する限り特に限定さるものではない。平均分子量があまり小さすぎたり大きすぎたりすると、用途によっては使用に困難をきたす可能性があり、例えば、歯科用粘膜調整材のように粉材と液材を練和して用いる材料の粉材主成分とする場合、平均分子量が極端に小さいときには液材と混合・練和して得たペーストの操作性が不良になるおそれがある。また、平均分子量が極めて大きなものは合成・入手が困難であるのみならず、やはりペーストの操作性を良好なものとし難い場合がある。こうしたことを勘案するとビニル重合系樹脂は、質量平均分子量が2万〜500万のものが好適であり、5万〜100万のものがより好ましい。
なお、上記の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)により測定される、標準ポリスチレン換算分子量である。
本発明において、有機樹脂粒子の体積平均粒子径は、10〜90μm、好ましくは20〜75μmである。有機樹脂粒子の体積平均粒子径が10μmより小さい場合、粉体が嵩高く重量に対して粉体体積が大きくなることから扱いにくくなる。他方、該体積平均粒子径が90μmより大きい場合、触感でざらつきを感じるようになるだけでなくそれを原料にして得られた組成物でも粗さが目立つようになることから、特に医療用、歯科用途の粉体としては適さなくなる。
本発明における粉体組成物では、上記説明した軟質な樹脂粒子である有機樹脂粒子とともに、ガラス転移温度が60℃より高い有機樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が1μm以下の有機樹脂微粒子を混合して用いる。このようにガラス転移温度が60℃より高い硬質な有機樹脂微粒子の混合により、有機樹脂粒子の凝集性は大きく抑制される。
ここで、該有機樹脂微粒子のガラス転移温度が60℃より低い場合、有機樹脂粒子の凝集の抑制効果は低減する。この凝集の抑制効果の良好さを勘案すると、ガラス転移温度は100〜300℃であるのがより好ましい。
また、該有機樹脂微粒子の体積平均粒子径が1μmより大きい場合も、有機樹脂粒子の凝集の抑制効果は低減し、さらに、粉体組成物を配合した材料に対する軟質性付与の効果が低減するおそれも生じる。この凝集の抑制効果の良好さを勘案すると、体積平均粒子径は0.5μm以下であるのがより好ましい。さらに、体積平均粒子径の下限値は、0.01μm以上であるのが、上記効果の良好さから好ましい。
このような有機樹脂微粒子は、架橋体でも非架橋体でもよい。しかしながら、体積平均粒子径が1μm以下の架橋された有機樹脂微粒子の入手は困難であるため、非架橋体を用いる方が好ましい。このような有機樹脂微粒子としては公知の如何なるものでもよく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリイソブチルビニルエーテル、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル等も使用可能である。化学的安定性、透明性などの点で、ビニル重合系樹脂、特に、(メタ)アクリル系樹脂が好適に使用され、中でも義歯床を構成するポリマーに組成の類似したポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)等が特に好適に使用される。
これら有機樹脂微粒子は、樹脂を構成する単量体単位の種類や割合、平均分子量や分子量分布、平均粒子径等の異なる2種以上のものを併用してもよい。
こうした(メタ)アクリル系樹脂は、溶液重合、懸濁重合等の公知の重合方法によって得られた重合樹脂を、公知の凍結粉砕等の手法を用いて粉砕した後篩等で分級することにより容易に製造できる。
上記有機樹脂微粒子の配合量は、粉体組成物を使用する材料の用途に要求される効果を妨げない範囲であれば特に制限はない。例えば、後述の歯科用粘膜調整材で用いる場合等であれば、粉材と液材の練和性の観点などから、前記の有機樹脂粒子100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲で用いることが好ましく、0.5〜25質量部の範囲で用いることがより好ましい。
本発明において、上記各説明した成分からなる粉体組成物は、粗大凝集粒子の含有率が少なく、10質量%以下、より好ましくは1〜6質量%に抑えられている。その結果、粉体の流動性に優れ、容器から取り出し易く良好な取り扱い性を有している。
ところで、前記したようにこうした有機樹脂微粒子を、ビニル重合性単量体を懸濁重合して得られる有機樹脂粒子に単に混合しただけでは、本発明の粉体組成物を得ることは通常困難である。なぜならば、該有機樹脂粒子において、粗大凝集粒子の発生は、粒子の保管や輸送時にだけではなく、有機樹脂粒子の製造時において、その乾燥工程で相当量が発生しているからである。したがって、この段階での粗大凝集粒子の発生を抑制しなければ、有機樹脂粒子中の該粗大凝集粒子の含有量を大きく低減させることはできない。
しかして、この乾燥工程での粗大凝集粒子の発生は、有機樹脂粒子の製造時における、有機樹脂粒子を懸濁重合し、得られた反応液を必要に応じて脱水した後、乾燥する工程の中で、懸濁重合の終了後から乾燥工程の前までの間に、反応系に有機樹脂微粒子を混合しておくことにより大きく抑制できる。このように有機樹脂粒子の製造後ではなく、その製造工程中において、凝集防止剤である有機樹脂微粒子を混合することは従来にない全く新規なことであり、この処理により始めて、製造される有機樹脂粒子中の粗大凝集粒子の含有率を10質量%以下に低減できたものである。
ここで、ビニル重合性単量体の懸濁重合は、例えばポリビニルアルコール等の分散材と水に対して、重合触媒及びビニル系単量体を添加して激しく攪拌させる公知の方法に従って実施すればよい。
懸濁重合の反応液の脱水は、有機樹脂粒子が懸濁する反応液から、有機樹脂粒子の湿体を一旦得てから乾燥を行う場合に必要に応じて実施すればよい。その方法は、公知の方法を任意に用いることができるが、具体的に例示すると、減圧濾過や、遠心脱水等があげられる。
また、乾燥工程についてもコニカルドライヤー等による動的乾燥や、送風乾燥等の公知の方法を任意に用いることができる。乾燥温度は、20〜80℃が一般的であり、乾燥時間は2〜8時間が好ましい。
有機樹脂微粒子の混合は、懸濁重合の終了後から乾燥工程の前までの間であれば、いつ実施しても良いが、脱水工程を行う場合には、該工程でも粗大凝集粒子は発生し易いため、該脱水工程の前に混合しておくのが一層効果的である。有機樹脂微粒子の混合方法は、懸濁重合の終了後から脱水工程の前であれば、有機樹脂粒子が懸濁状態の反応液に加えればよく、脱水後であれば、有機樹脂粒子の湿体に混ぜ合わせれば良い。
本発明において、粉体組成物は、特に限定されるものではなく、一般的な粉体材料の原料として幅広く用いることができる。凝集防止のための無機微粒子を含まないことから、該異質粒子による物性や色調変化が最小であり、こうした要因による性状変化が特に厳しく制限される医療用、歯科用材料に対して好適に用いることができる。例えば、医療用チューブ原料、歯科用充填材料、歯科用義歯補修材料、歯科用粘膜調整材等が挙げられる。このうち有機樹脂粒子の柔らかさを利用して、軟質な材料の充填材として用いるのが特に好ましく、下記理由から歯科用粘膜調整材の粉材として用いる。
すなわち、歯科用粘膜調整材における粉材は、使用直前に歯科医師等が必要量だけ容器より取り出して用いるため、高い流動性が要求される。また、本材料は粉材に対して液材が膨潤していくことによって適度な粘弾性を発現するものであることから粉材の粒径がその特性に大きく影響する。また200μmを超える粗大粒子が多く存在すると、練和により得られたペーストが不均一になる。本発明の粉体組成物を該歯科用粘膜調整材の粉材として用いた場合、粗大凝集粒子の含有量が少なさに起因して、こうした歯科用粘膜調整材に求められる性状が大きく改善できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例、比較例における各種物性の評価方法は以下の通りである。
(1)ガラス転移温度(以下Tgと略す)の測定方法
Tgは示差走査熱量測定装置(DSC6200/セイコー社製)を用いて測定した。およそのTgよりも30℃ほど高温まで10℃/分で初期昇温を続け、そこで5分間保持後、50℃/分で降温した。次いで直ちに再昇温して得られたシグナルにおいて得られる3本の接線の交点の温度を求め、それらの中間の温度をTgとした。
(2)体積平均粒子径、及び粗大凝集粒子の割合
調製した粉体の体積平均粒子径及び200μm以上の粗大粒子の割合はベックマンコールター社製LS230を用い、水を分散媒とし測定前に超音波で3分以上処理した後すみやかに測定した。
(3)保存安定性の評価方法
保存安定性の評価は、調製した粉体の保存開始前後の体積平均粒子径の変化で評価した。即ち、調製した粉材100gをポリプロピレン製ボトルに充填し、キャップをして37℃インキュベーター中に3ヶ月間静置した。静置前後における体積平均粒子径を比較し、保存安定性の指標とした。平均粒子径の変化が大きいほど保存安定性に劣る。例えば、例示する粘膜調整材ではボトルからの取り出しやすさなどが変わることになり、保存安定性が低下したことを示す。
(4)製造直後の粉体組成物に対する性状の評価方法
重合、乾燥工程を経て得られた有機樹脂粒子の性状を、ビデオマイクロスコープ(オリンパス社製)を用いて倍率200で観察し、以下のように区分して評価した。
A;凝集なし。粒子が一次粒子で存在している状態
B;一部凝集。一部に2〜3個程度で構成される凝集粒子が存在している状態。目視や触感では凝集がわからない状態。
C;凝集。一次粒子で存在している部分がほとんどない状態。目視や触感で凝集していることが明らかにわかる状態。
(5)粘膜調整材における練和物性状の評価方法
予め、有機樹脂粒子と有機樹脂微粒子で調製された粉材と、可塑剤及び添加剤により調製された液材をそれぞれ計量し、質量比1:1で混和して適当なヘラ等を用いて練和した。練和して得られるペーストをプラスチックフィルムを介して押圧し、そのまま室温で10分間静置させた後、目視で練和ムラやダマの有無を判断した。ダマ、ムラのないものを均一、ダマ、ムラの存在するものを不均一と評価した。
(6)粘膜調整材における硬度の測定方法
柔軟性の指標であるショアA硬度は、JIS−K7215(デュロメータ タイプA)に基づいて測定した。試験片は(4)のようにして得られたペーストを直径7mm、高さ12mmの円柱状の穴を有するモールドに流し入れて作製した。測定は練和後37℃で一晩静置した時点で行った。
(7)粘膜調整材における色調の評価
上述の粘膜調整材の練和性の評価において作成した練和物を用いて色調の評価を行った。即ち、(4)で作成した試験片をカッターで厚さ1mmになるように切断し、切断面の色調を色ムラの有無、透明性から評価した。なお、透明性については色差計(東京電色)を用いて測定し、その数値によって以下のように区分した。
A;0.3以下: 透明性あり。背景色を透かしてみることができる程度。
B;0.3より大きい: 背景色を十分に透過できない状態。
また、各実施例、比較例において使用した、各有機樹脂粒子の懸濁重合方法、および粉体組成物の調製(処理)方法、各有機樹脂微粒子の製造方法、および液成分は、それぞれ以下の通りである。
(i)有機樹脂粒子の懸濁重合方法
製造例1〔ポリ(n−ブチルメタクリレート)粒子;PBMAの重合〕
n−ブチルメタクリレート100質量部、ラウロイルパーオキサイド1質量部の混合液に、鹸化度88%のポリビニルアルコール(和光純薬製)の5質量%水溶液30質量部、及びイオン交換水270質量部を添加した。得られた混合液を3000rpmで1時間分散処理し、重合性単量体分散液を調製した。得られた重合性単量体分散液を、攪拌機及び還流冷却管を備えた重合器内に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃に昇温し、3時間重合した。以上により、PBMAの反応液を得た。
得られた反応液からサンプリングして重合性単量体の重合転換率を測定したところ95%であった。同様に反応液からサンプリングして脱水、洗浄、乾燥し、得られたPBMAの体積平均粒子径を測定したところ、40μmであり、Tgは20℃であった。また、重量平均分子量は26万であった。
製造例2〔ポリ(イソブチルメタクリレート)粒子;PiBMAの重合〕
イソブチルメタクリレート100質量部、ラウロイルパーオキサイド1質量部の混合液に、鹸化度88%のポリビニルアルコール(和光純薬製)の5質量%水溶液30質量部、及びイオン交換水270質量部を添加した。得られた混合液を2000rpmで1時間分散処理し、重合性単量体分散液を調製した。得られた重合性単量体分散液を、攪拌機及び還流冷却管を備えた重合器内に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃に昇温し、3時間重合した。以上により、PiBMAの反応液を得た。
得られた反応液からサンプリングして重合性単量体の重合転換率を測定したところ94%であった。同様に反応液からサンプリングして脱水、洗浄、乾燥し、得られたPiBMAの体積平均粒子径を測定したところ、80μmであり、Tgは56℃であった。また、重量平均分子量は28万であった。
製造例3〔ポリ(ヘキサデシルメタクリレート)粒子;PHDMAの重合〕
ヘキサデシルメタクリレート100質量部、ラウロイルパーオキサイド1質量部の混合液に、鹸化度88%のポリビニルアルコール(和光純薬製)の5質量%水溶液30質量部、及びイオン交換水270質量部を添加した。得られた混合液を2000rpmで1時間分散処理し、重合性単量体分散液を調製した。得られた重合性単量体分散液を、攪拌機及び還流冷却管を備えた重合器内に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃に昇温し、3時間重合した。以上により、PHDMAの反応液を得た。
得られた反応液からサンプリングして重合性単量体の重合転換率を測定したところ94%であった。同様に反応液からサンプリングして脱水、洗浄、乾燥し、得られたPHDMAの体積平均粒子径を測定したところ、80μmであり、Tgは15℃であった。また、重量平均分子量は23万であった。
製造例4〔ポリ(3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート)粒子;PTMHMAの重合〕
3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート100質量部、ラウロイルパーオキサイド1質量部の混合液に、鹸化度88%のポリビニルアルコール(和光純薬製)の5質量%水溶液30質量部、及びイオン交換水270質量部を添加した。得られた混合液を2000rpmで1時間分散処理し、重合性単量体分散液を調製した。得られた重合性単量体分散液を、攪拌機及び還流冷却管を備えた重合器内に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃に昇温し、3時間重合した。以上により、PTMHMAの反応液を得た。
得られた反応液からサンプリングして重合性単量体の重合転換率を測定したところ94%であった。同様に反応液からサンプリングして脱水、洗浄、乾燥し、得られたPTMHMAの体積平均粒子径を測定したところ、80μmであり、Tgは5℃であった。また、重量平均分子量は25万であった。
比較製造例1〔ポリ(メチルメタクリレート)粒子;PMMAの重合〕
メチルメタクリレート100質量部、ラウロイルパーオキサイド0.5質量部の混合液に、鹸化度88%のポリビニルアルコール(和光純薬製)の5質量%水溶液30質量部、及びイオン交換水270質量部を添加した。得られた混合液を3000rpmで1時間分散処理し、重合性単量体分散液を調製した。得られた重合性単量体分散液を、攪拌機及び還流冷却管を備えた重合器内に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃に昇温し、3時間重合した。以上により、PMMAの反応液を得た。
得られた反応液からサンプリングして重合性単量体の重合転換率を測定したところ94%であった。同様に反応液からサンプリングして脱水、洗浄、乾燥し、体積平均粒子径を測定したところ、38μmであり、Tgは105℃であった。また、重量平均分子量は50万であった。
比較製造例2〔ポリ(n−ブチルメタクリレート)粒子;PBMA−Lの重合〕
n−ブチルメタクリレート100質量部、ラウロイルパーオキサイド1質量部の混合液に、鹸化度88%のポリビニルアルコール(和光純薬製)の5質量%水溶液30質量部、及びイオン交換水270質量部を添加した。得られた混合液を1500rpmで1時間分散処理し、重合性単量体分散液を調製した。得られた重合性単量体分散液を、攪拌機及び還流冷却管を備えた重合器内に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃に昇温し、3時間重合した。以上により、PBMA−Lの反応液を得た。
得られた反応液からサンプリングして重合性単量体の重合転換率を測定したところ94%であり、Tgは20℃であった。同様に反応液からサンプリングして脱水、洗浄、乾燥し、PBMA−Lの体積平均粒子径を測定したところ、120μmであった。また、重量平均分子量は26万であった。
比較製造例3〔ポリ(n−オクチルメタクリレート);POMAの重合〕
n−オクチルメタクリレート100質量部、ラウロイルパーオキサイド1質量部の混合液に、鹸化度88%のポリビニルアルコール(和光純薬製)の5質量%水溶液30質量部、及びイオン交換水270質量部を添加した。得られた混合液を3000rpmで1時間分散処理し、重合性単量体分散液を調製した。得られた重合性単量体分散液を、攪拌機及び還流冷却管を備えた重合器内に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃に昇温し、3時間重合した。以上により、POMAの反応液を得た。
得られた反応液からサンプリングして重合性単量体の重合転換率を測定したところ94%であった。しかしながら得られたポリマーはペースト状となり、粒子として得ることはできなかった。そのまま他の製造例と同様に脱水、洗浄、乾燥し、Tgを測定したところ−20℃であり、重量平均分子量は22万であった。
以上の製造例および比較製造例により得られた各有機樹脂粒子の性状を表1に示した。なお、表1中、PMMA及びPOMAは、本発明における有機樹脂粒子が要求するTg範囲を外れる粒子であり、PBMA−Lは体積平均粒子径の範囲を外れる粒子である。
Figure 0004878804

(ii)粉体組成物の調製(処理)方法
粉体組成物の調製法a;
前記製造例および比較製造例で得られた有機樹脂粒子の反応液に対して、ガラス転移温度が60℃より高い有機樹脂微粒子を添加、混合した後、遠心ろ過により脱水した後、得られた有機樹脂微粒子の湿体をエバポレーターにより40℃で3時間乾燥して粉体組成物を調製した。
粉体組成物の調製法b;
前記製造例および比較製造例で得られた有機樹脂粒子の反応液を遠心ろ過により脱水して、有機樹脂粒子の湿体を得た。この有機樹脂粒子の湿体に対して、ガラス転移温度が60℃より高い有機樹脂微粒子を添加後、エバポレーターにより40℃で3時間乾燥して調製した。

(iii)有機樹脂微粒子の製造方法
製造例5〔ポリ(エチルメタクリレート)微粒子;PEMA−0.5の重合〕
三つ口フラスコにエチルメタクリレート11.4g(100mmol)、AIBN0.02g、及びトルエン10mlを加え、窒素ガスを5ml/分の割合で2時間流しつづけた。窒素ガスを止めた後、オイルバスを取り付け、バス温度70℃で6時間攪拌を続けた。反応物を10倍量のメタノールに入れ、生じた沈殿を回収し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿物をベンゼンに溶解した後凍結乾燥を行い、6.8gのPEMAを回収した(収率60%)。
GPC測定したところ重量平均分子量が180,000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=2.15であった。また、Tgは65℃であった。得られたPEMAを凍結粉砕機(ホソカワミクロン社製リンレックスミル)で粉砕して体積平均粒子径0.5μmの粉末とした。なお、体積平均粒子径はベックマンコールター社製LS230を用い、水を分散媒とし測定前に超音波で3分以上処理した後すみやかに測定した。
製造例6〔ポリスチレン微粒子;P(sty)−0.5の重合〕
スチレン100質量部、ラウロイルパーオキサイド1質量部の混合液に、鹸化度88%のポリビニルアルコール(和光純薬製)の5質量%水溶液30質量部及びイオン交換水270質量部を添加した。得られた混合液を1500rpmで1時間分散処理し、重合性単量体分散液を調製した。得られた重合性単量体分散液を、攪拌機及び還流冷却管を備えた重合器内に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃に昇温し、3時間重合した。以上により、P(sty)の反応液を得た。
得られた反応液からサンプリングして重合性単量体の重合転換率を測定したところ94%であった。同様に反応液からサンプリングして脱水、洗浄、乾燥し、得られたP(sty)の体積平均粒子径を測定したところ、0.5μmであり、Tgは103℃であった。また、質量平均分子量は25万であった。
比較製造例4〔ポリ(i−ブチルメタクリレート)微粒子;PiBMA−0.5の重合〕
三つ口フラスコにi−ブチルメタクリレート14.3g(100mmol)、AIBN0.02g、及びトルエン10mlを加え、窒素ガスを5ml/分の割合で2時間流しつづけた。窒素ガスを止めた後、オイルバスを取り付け、バス温度70℃で6時間攪拌を続けた。反応物を10倍量のメタノールに入れ、生じた沈殿を回収し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿物をベンゼンに溶解した後凍結乾燥を行い、8.7gのPiBMAを回収した(収率61%)。
GPC測定したところ重量平均分子量が180,000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=2.20であった。また、Tgは56℃であった。得られたPiBMAを凍結粉砕機(ホソカワミクロン社製リンレックスミル)で粉砕して体積平均粒子径0.5μmの粉末とした。なお、体積平均粒子径はベックマンコールター社製LS230を用い、水を分散媒とし測定前に超音波で3分以上処理した後すみやかに測定した。
比較製造例5
振動ボールミル(中央化工機商事(株)製)内に、直径10mmのアルミナ球を200gと、平均粒径が70μmのホタテ貝殻粉末(商品名:シェルパワー、(株)ドーケン製)を20gと、イソプロパノールを14gとをそれぞれ収容した後、7時間微粉砕処理した。乾燥してコーヒーミルを用いて解砕することで体積平均粒子径0.5μmの貝殻微粒子を得た。
以上の製造例および比較製造例により得られた各有機樹脂微粒子の性状を、実施例および比較例において該有機樹脂微粒子の市販品として使用したものの性状と共に表2に示した。なお、表2中、PMMA−4.0は、本発明における有機樹脂微粒子が要求する体積平均粒子径の範囲を外れる粒子であり、PiBMA−0.5はTg範囲を外れる有機樹脂微粒子である。
Figure 0004878804

(iv)液成分
実施例、比較例にて用いた液材中の成分は以下に示す通りである。いずれも精製せず、そのまま用いた。
(1)可塑剤
フタル酸ジブチル 和光純薬
セバシン酸ジブチル 和光純薬
(2)添加剤
エタノール99.5% 和光純薬
実施例1
Tgが20℃であり、体積平均粒子径が40μmの有機樹脂粒子であるPBMAの粉末と、Tgが105℃であり、体積平均粒子径が0.2μmであるPMMA微粒子を用い、調製法aの方法で調製した粉体組成物において、粉体性状と保存安定性を評価した。組成と評価結果を表3に示した。
Figure 0004878804
上記表3に示したように、得られた粉体組成物は調製直後において凝集することなく一次粒子の状態を保っていた。また、60℃における60日間の保存試験においても、保存前後で体積平均粒子径に変化がなく、凝集等による保存安定性の低下も見られず、良好な粉体性状を保っていた。
実施例2〜4
実施例1において、有機樹脂粒子を、ガラス転移温度が0〜60℃の範囲であり、体積平均粒子径が10〜90μmの範囲である表3に示した粒子に変えた以外は、実施例1と同様にして粉体組成物を調製し、その粉体性状と保存安定性を評価した。評価結果を表3に示した。
表3に示したように、有機樹脂粒子として、ガラス転移温度が5℃であるPTMHMAを用いた場合において、ビデオマイクロスコープ観察において若干の凝集が見られたものの、目視や触感ではその有無が判別できないほどのわずかな程度であった。その他の有機樹脂粒子を用いた場合では実施例1と同様に調製直後において凝集することなく一次粒子の状態を保っていた。また、60℃における60日間の保存試験においても、いずれの粉体組成物でも保存前後で体積平均粒子径に大きな変化がなく、凝集等による保存安定性の低下も見られず、良好な粉体性状を保っていた。
実施例5〜6
実施例1において、Tgが105℃であり、体積平均粒子径が0.2μmであるPMMA微粒子の添加量を表3に記載された量に変化させた以外は、実施例1と同様にして粉体組成物を調製し、その粉体性状と保存安定性を評価した。評価結果を表3に示す。
表3に示したように、添加量0.3質量部の場合において、ビデオマイクロスコープ観察において若干の凝集が見られたものの、目視や触感ではその有無が判別できないほどのわずかな程度であり、良好な粉体性状を有していた。また、添加量20質量部においては実施例1と同様に乾燥直後において凝集することなく一次粒子の状態を保っていた。また、60℃における60日間の保存試験においても、いずれの添加量の粉体組成物でも保存前後で体積平均粒子径に大きな変化がなく、凝集等による保存安定性の低下も見られず、良好な粉体性状を保っていた。
実施例7〜9
実施例1において、有機樹脂微粒子の体積平均粒子径や、種類を表3に記載されたように変化させた以外は、実施例1と同様にして粉体組成物を調製し、その粉体性状と保存安定性を評価した。評価結果を表3に示す。
表3に示したように、体積平均粒子径が0.8μmのPMMAやガラス転移温度65℃のPEMAを有機樹脂微粒子として用いた場合において、ビデオマイクロスコープ観察において若干の凝集が見られたものの、目視や触感ではその有無が判別できないほどのわずかな程度であり、良好な粉体性状を有していた。また、体積平均粒子径が0.5μmのP(sty)を有機樹脂微粒子として調製した粉体組成物においては実施例1と同様に調製直後において凝集することなく一次粒子の状態を保っていた。また、60℃における60日間の保存試験においても、いずれの添加量の粉体組成物でも保存前後で体積平均粒子径に大きな変化がなく、凝集等による保存安定性の低下も見られず、良好な粉体性状を保っていた。
実施例10〜13
実施例1、2、5及び6において、粉体組成物の調製を調製法bで実施した以外は、これら実施例と同様の方法で粉体組成物を調製し、その粉体性状と保存安定性を評価した。結果を表3に示した。
表3に示したように、調製法bで調製したいずれの粉体組成物においても、ビデオマイクロスコープ観察において若干の凝集が見られたものの、目視や触感ではその有無が判別できないほどのわずかな程度であり、良好な粉体性状を有していた。また、60℃における60日間の保存試験においても、いずれの添加量の粉体組成物でも保存前後で体積平均粒子径に大きな変化がなく、凝集等による保存安定性の低下も見られず、良好な粉体性状を保っていた。
比較例1
実施例1において、有機樹脂微粒子として、Tgが105℃であり、体積平均粒子径が4.0μmであるPMMA−4.0を用いた以外は、実施例1と同様にして粉体組成物を調製し、その粉体性状と保存安定性を評価した。評価結果を表3に示した。
表3に示したように、得られた粉体組成物は、ビデオマイクロスコープで観察したところ、ほとんどが凝集しており、一次粒子で維持されていたものはほとんど見られなかった。それらを乳鉢で一次粒子まで解砕した後、実施例1と同様に保存試験を行ったところ、60日後には体積平均粒子径が40μmから110μmまで増加しており、保存によって凝集が進行し初期の体積平均粒子径を保つことができないことがわかった。
比較例2
実施例1において、有機樹脂微粒子として、Tgが56℃であり、体積平均粒子径が0.5μmであるPiBMA−0.5を用いた以外は、実施例1と同様にして粉体組成物を調製し、その粉体性状と保存安定性を評価した。評価結果を表3に示した。
表3に示したように、得られた粉体組成物は、ビデオマイクロスコープで観察したところ、ほとんどが凝集しており、一次粒子で維持されていたものはほとんど見られなかった。それらを乳鉢で一次粒子まで解砕した後、実施例1と同様に保存試験を行ったところ、60日後には体積平均粒子径が40μmから82μmまで増加しており、保存によって凝集が進行し初期の体積平均粒子径を保つことができないことがわかった。
比較例3〜4
比較例1及び2において、使用する有機樹脂微粒子の調製において調製法bを採用した以外は、それぞれ比較例1及び2と同様にして粉体組成物を調製し、その粉体性状と保存安定性を評価した。結果を表3に示した。
表3に示したように、比較例1及び2同様に、得られた粉体組成物は、ビデオマイクロスコープで観察したところ、ほとんどが凝集しており、一次粒子で維持されていたものはほとんど見られなかった。それらを乳鉢で一次粒子まで解砕した後、実施例1と同様に保存試験を行ったところ、60日後には体積平均粒子径が増加しており、保存によって凝集が進行し初期の体積平均粒子径を保つことができないことがわかった。
比較例5
実施例1において、有機樹脂微粒子を添加しない粉体(PBMA)を調製し、その粉体性状と保存安定性を同様に評価した。結果を表3に示した。
表3に示したように、得られた粉体組成物はほぼすべてが凝集しており、体積平均粒子径200μm以下の粒子は5%以下であった。これらの粉体組成物を乳鉢で一次粒子まで解砕した後、実施例1と同様に保存試験を行ったところ、60日後にはほぼすべてが凝集し、解砕できないほどの塊状組成物となっており、粉体組成物として用いることができない状態に変化していた。
比較例6
実施例1において、有機樹脂粒子を、Tgが−20℃のPOMAに変えて評価した。結果を表5に示す。
表5に示したように、上記組成物は室温(約25℃)ではペースト状であり粉体組成物として用いることができないことがわかった。
実施例14
実施例1で用いた粉体組成物を粉材として、また、以下の表4で示した様にフタル酸ジブチルとエタノールよりなる液状組成物を液材として、質量比1:1で混合、練和して粘膜調整材を調製した。
Figure 0004878804
調製した粘膜調整材の性状、及び硬度を評価し、結果を表5に示した。
Figure 0004878804
表5に示したように、得られた粘膜調整材には練和ムラやダマはなく滑らかな性状を示していた。またそのショアA硬度は8であった。通常、粘膜調整材として要求される硬度は一般的に硬度20以下であり、調製した粘膜調整材は極めて柔軟な性質を有していることがわかった。また色調を評価したところ、色ムラもなく均一であり、また適度な透明性を有していた。粘膜調整材は用途によって不透明なものと透明なものが要求されるため、製造段階において顔料等により透明性を調整する必要がある。そのため顔料無添加の状態で透明性を有していることはその製造において重要である。
実施例15〜26
実施例14において、実施例2〜13で用いた粉体組成物を表4に示したようにそれぞれ粘膜調整材の粉材とする以外は、実施例14と同様にして粘膜調整材を調製し、その性状、及び硬度を評価した。評価結果を表5に示した。
表5に示したように、いずれの組成の粘膜調整材にも練和ムラやダマはなく滑らかな性状を示していた。またそのショアA硬度は5〜13といずれも極めて柔軟な性質を有していることがわかった。また色調についても、いずれも色ムラもなく均一であり、また適度な透明性を有していた。
実施例27
実施例14において、液材を、表4に示したようにセバシン酸ジブチルを主成分とするものに変えた以外は、実施例14と同様にして粘膜調整材を調製し、その性状、及び硬度を評価した。評価結果を表5に示した。
表5に示したように、練和ムラやダマはなく滑らかな性状を示していた。またそのショアA硬度は8であり極めて柔軟な性質を有していることがわかった。また色調についても色ムラもなく均一で、且つ適度な透明性を有していた。
比較例7
実施例14において、有機樹脂粒子を、Tgが105℃であり、体積平均粒子径が38μmであるPMMAに変えた以外は、実施例14と同様にして粘膜調整材を調製、評価した。結果を表5に示す。
表5に示したように、練和ムラやダマはなく滑らかな性状を示していたが、硬度は25であり、粘膜調整材としての柔軟性を有していないことがわかった。上記の結果よりこの粉体組成物は粘膜調整材に適していないことがわかった。
比較例8
実施例14において、有機樹脂粒子を、Tgが20℃であり体積平均粒子径が120μmであるPBMA−Lに変えた以外は、実施例14と同様にして粘膜調整材を調製、評価した。結果を表5に示す。
表5に示したように、得られた練和物は一部に粒子のダマと練和ムラが残っていることがわかった。上記の結果よりこの粉体組成物は粘膜調整材に適していないことがわかった。
比較例9
実施例14において、有機樹脂微粒子を貝殻微粒子に変えた以外は、実施例14と同様にして粘膜調整材を調製、評価した。結果を表5に示す。
表5に示したように、得られた練和物は柔軟な性質を示したものの、白色で不透明なものになってしまったことから、本粉体組成物を粘膜調整材の粉材として用いる場合には製造時の透明性調整ができず、使用に制限のあることがわかった。

Claims (1)

  1. ガラス転移温度が0〜60℃の範囲のビニル重合系樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が10〜90μmの有機樹脂粒子と、ガラス転移温度が60℃より高い有機樹脂により形成されてなる、体積平均粒子径が1μm以下の有機樹脂微粒子とからなる粉体組成物であって、体積平均粒子径200μm以上の粗大凝集粒子の含有率が10質量%以下である粉体組成物を含有してなる歯科用粘膜調整材。
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