JP4876685B2 - ガラス封止発光素子の製造方法 - Google Patents
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Description
特に短波長、高輝度の発光ダイオードの場合には、問題となっている。
さらに従来の封止樹脂は熱伝導率が小さいため、放熱性が悪く、温度上昇による色変化、ひいては輝度劣化の原因となっている。一方、ガラス材料は耐光性に優れ、紫外線および青色光に対して殆ど劣化しない。また材料組成を選べば屈折率および熱伝導率の高いガラスを作成することができる。
「この発光素子1010は、図に示すとおり、電力受送手段としてのマウントリード1021の上に発光素子1010を固定し、発光素子の上面の電極からマウントリード1021と他の電力受送手段としてのサブリード1022とへそれぞれボンディングワイヤ1023、1024が懸架されている。図22に示すように、低融点ガラスからなる筒状体1058aを準備し、これを発光素子1010とリード1021、1022の組み付け体1020に被せる。これを炉に入れて筒状体1058aを軟化させる。その結果、筒状体1058aはその材料の表面張力によりレンズ状に組み付け体1020を被覆することとなる。」
また、特許文献4では、封止時における封止部材の加圧力等が発光素子に付与されることに起因して生じる発光素子のバンプの変形、移動、バンプ間短絡等を防止できるようにした発光装置が示されている。
一方、本発明者らは、TeO2およびZnOを主成分とするガラスで封止された発光装置を提案した(特許文献5参照)。この場合、LEDの平均線膨張係数が85×10−7/℃であるのに対して、ガラスの平均線膨張係数は75×10−7〜140×10−7/℃である。したがって、ガラス封止後に発生する残留応力は、特許文献3に比較して小さいことが見込まれる。それ故、特許文献5に記載のガラスによれば、特許文献3のようにLEDに応力緩和部を設けずとも、応力に起因する破壊のおそれを低減することが可能となる。
本発明の第1の態様において、前記ガラス部材の下側の表面形状に平坦である部分を含み、前記平坦である部分に前記発光素子が配置されていることが好ましい。
A>B>C
の関係が成立することが好ましい。また、さらに
(C/A)≦0.6
の関係が成立することが好ましい。
発光素子は、正面視で矩形状の半導体チップであり、ガラス部材の曲面である部分の曲率半径は、発光ダイオードチップの1辺の長さの2.5倍以上であることが好ましい。また、曲面は、球面または回転楕円体面の一部であることが好ましい。発光素子は、LEDおよび半導体レーザのいずれか一方とすることができる。ガラス部材は、TeO2、B2O3およびZnOを含むことが好ましい。前記発光素子に備えられた半導体基板の熱膨張係数α1と前記ガラス部材の熱膨張係数α2との間に、
|α1−α2|<20×10−7(℃−1)
の関係が成立することが好ましい。さらに、
|α1−α2|<15×10−7(℃−1)
の関係が成立することがより好ましい。また、前記ガラス部材の屈折率が1.7以上であることが好ましい。
本発明において、軟化点の測定は、測定の精度が±15℃である簡易的な方法で行った。その測定法は以下の通りである。直径5mm、長さ20mmの円柱状に加工したサンプルについて、マックサイエンス社製熱機械分析装置DILATOMETER(商品名)を用い、サンプルの伸びの検出部を押す圧力を4.9kPa(10gの加重)、昇温速度を5℃/分として、サンプルが軟化してサンプルの伸びの検出部を押すことができなくなる温度(屈服点)を求め、これを軟化点とした。
たとえば、後述するTeO2含有のガラス部材の場合において、加熱の結果としての最高到達温度を600〜620℃とすることができる。なお、TeO2含有のガラス部材において、その組成を調整することで、実施例の場合よりも低温域である、560〜570近傍の温度での処理に適合させることができる。
さらに、発光素子を構成する半導体基板の熱膨張係数α1とガラス部材の熱膨張係数α2との間に、
|α1−α2|<20×10−7(℃−1)
の関係が成立することが好ましい。さらに、
|α1−α2|<15×10−7(℃−1)
の関係が成立することがより好ましい。発光素子は、LEDおよび半導体レーザのいずれか一方とすることができる。
そのため、発光素子を光源として、出射光の指向性を制御できる。ガラス材料を採用することで、従来技術における封止樹脂の変色による輝度低下などの問題を解消できる。また高屈折率のガラスを用いれば、発光素子からの光取り出し率を向上させることができる。
さらにガラス材料は樹脂よりも、熱伝導性が良いため、特に高輝度LEDで問題となる放熱性も改善される。また色変換材料をガラス中に分散する態様においては、発光色と変換された色の混色により所望の色光を得るだけでなく、電子デバイスとしての放熱性を改善することができる。このように、耐光性、光り取り出し効率、放熱性のいずれか一つ以上に優れたガラスにより封止された発光素子を作製できる。かつ所定の曲面形状を形成することで、出射光の指向性を制御することもできる。
図1(a)は本発明に係るガラス部材の一実施形態を示す斜視図、同図(b)はIb−Ib’線断面図である。本発明は、半導体製の発光ダイオードチップの表面の少なくとも一部に、例えば図1(a)に示すガラス部材12を密着させる。この構造をとることで、耐光性や光取り出し率の優れたガラス封止発光素子を提供できる。
特に、ガラス部材12には、軟化点が500℃以下、温度50℃〜300℃における平均線膨張係数が65×10−7/℃〜95×10−7/℃、波長405nmの光に対する厚さ1mmでの内部透過率が80%以上であって、この光に対する屈折率が1.7以上であるものが好ましく用いられる。このようなガラスであれば、屈折率が大きく、また、基板10との熱膨張係数差も小さいので、光の取り出し効率を損なうことなしに発光ダイオードチップ11を被覆することができる。具体的には、TeO2、B2O3およびZnOを含むガラスが好ましく用いられる。特に、TeO2の含有量が10mol%以上であるものが好ましい。TeO2の含有量が多くなるほど、屈折率を高くすることができるからである。
次に、本発明における第1の手法を説明する(フローチャートを示す図18を参照)。まず、平板上に所望の方向に載置した発光素子の上部にガラス部材のブロック(細片)を載置する。その後、加熱処理を行い(全体雰囲気の昇温)、ガラス部材を溶融し、溶融したガラス部材を発光素子へ被着せしめ、さらに、ガラス部材に、曲面からなる上側の表面形状と、下側の表面形状の少なくとも一部に曲面を形成し、その後、加熱処理を停止し、徐冷工程に移行する。最終的にガラス部材を固化せしめて、所望のガラス封止発光素子を得ることができる。発光素子の端子が備えられた面の一部に若干のガラスが付着したとしても、発光素子の電気的駆動および発光動作に支障がなければ問題はない。
この際、ガラス部材のブロックの主表面をあらかじめ鏡面仕上げとし、ガラス部材を溶融した際に不用な泡の発生を防止することができるので好ましい。また、ガラス部材のブロックは所定の大きさ、質量のものを作成または選定して用いるようにすることが好ましい。
なお、ガラス部材の体積と発光素子の大きさとの関係を適宜調整することで、ガラス部材が発光素子に接した状態のままで、溶融したガラスを発光素子の上部で略球状に形成し、その後、徐冷することで、ガラス部材の下側先端の部分が平板側に接することなく、発光素子をガラス部材の表面に僅か埋設させ、平坦である部分の面積を減少させた形状、のガラス封止発光素子を得ることもできる。
次に、所定の形状を有するガラス部材(プリフォーム)をあらかじめ形成して用いる第2の手法を説明する。ガラス部材の上側の表面形状を曲面で構成し、下側の表面形状の一部に曲面および平坦である部分を備えた構造のものである。
まず、離型性を有する平板の上にガラス材料を載置した後に、加熱によりガラス材料を溶融することによって行われる。ここで、離型性を有する平板は、表面に離型材層が設けられた平板であってもよいし、離型性を有する材料からなる平板であってもよい。離型性を有する材料としては、窒化ホウ素またはカーボン(特に、ガラス質カーボン)などが挙げられる。但し、カーボンを用いる場合には、真空中または窒素などの不活性ガス雰囲気下で処理することが必要となる。
本発明において、ガラス部材の表面形状における「平坦である部分」は、ガラス部材と平板とが接触している部分に形成される。従って、平坦である部分の形状は、平板の表面形状に概ねしたがうものとなる。尚、この平坦である部分は、図1の平坦な表面12bに対応する。
例えば、離型材(溶融ガラスに対する濡れ性の低い部材)で被覆された基板(例えばアルミナ製)10上で、固形またはペースト状のガラス材料を昇温により溶融し、材料自身の凝集作用により、表面形状の少なくとも一部が曲面、好ましい態様としては、略球状になった状態を得る。そして、その状態の溶融ガラスを徐冷し、その形状を固定することでガラス部材を形成できる。
ガラス部材12の形状は、表面12aにおいて、基板10に対して水平方向の主軸に沿った径Aと、鉛直方向の主軸に沿った径Bと、表面12bの径Cとの3種類のパラメータで規定される。尚、後述するように、発光ダイオードチップは、端子側の面を下方にして基板10の上に載置された状態でガラス部材12によって封止されるので、「基板10に対して水平方向」とは、発光ダイオードチップの端子側の面に対して水平方向と言い換えることもできる。鉛直方向についても同様である。
径A,B,Cの間には
A>B>C
の関係が成立する。本発明においては、曲面は、球面または楕円体面の一部であることが好ましい。特に、ガラス部材12が球形に近いほど、出射光の指向性が高くなることから
(C/A)≦0.6
の関係が成立することが好ましい。
ガラス部材12が搭載される発光ダイオードチップは、その大きさが正面視で0.3mm□程度と非常に微細であることからガラス部材12も微細かつ軽いものでよい。そのため、表面12aの形状は、実質的には球面に近似した形状となる。なお、ガラス球に対して、発光ダイオードベアチップが十分小さければ、点光源として近似でき、出射光の指向性が良いため、ガラス部材の球面である部分の曲率半径は、発光ダイオードチップの1辺の長さの2.5倍以上であることが好ましい。換言すると、径Aについて
(A/2)≧2.5
の関係が成立することが好ましい。
基本的に、ほぼ球状の形態を得ることができる。また、変形の程度が大きければ楕円体の形態になると考えられる。
図2は本発明に係るガラス封止発光ダイオードチップの一実施形態を示す斜視図であり、図3はIII−III’線断面図である。これらの図に示すガラス部材12は、図1(a)に示したものと同等のものであり、発光ダイオードチップ11は、平坦な表面12bに設けられている。
これらの図に示すように、離型材で被覆された基板10の上に、発光ダイオードチップ11を端子13を基板10の側に向けて載置する。次いで、発光ダイオードチップ11の上に、図1(a)で示したガラス部材12を載せ、昇温して固体のガラス部材12を軟化させる。すると、ガラス部材12が重力によって下方に移動し、発光ダイオードチップ11を取り囲んだ状態となる。ここで、ガラス部材12の比重は発光ダイオードチップ11の比重より大きいので、浮力によって発光ダイオードチップ11はガラス部材12中を上方に移動する。この移動距離rは、
r ∝ F×t×η−1
によって表される。但し、Fは浮力、tはガラスの軟化時間、ηはガラスの粘度である。
浮力は、ガラスの比重と発光ダイオードチップの比重との差によって決まる。ここで、発光ダイオードチップの質量の大部分は基板によって占められるので、発光ダイオードチップの比重は基板の比重で近似できると考えられる。例えば、一般的な発光ダイオードチップに用いられる基板の比重は、サファイア基板で4.0g/cm3、SiC基板で3.1g/cm3、GaAs基板で5.3g/cm3である。一方、燐酸亜鉛系ガラスの比重は2.8g/cm3〜3.3g/cm3であり、ホウケイ酸亜鉛系ガラスの比重は2.6g/cm3〜3.0g/cm3である。さらに、TeO2、B2O3およびZnOを含み、且つ、TeO2の含有量が10mol%以上であるガラスの内で、TeO2(45.0%)、TiO2(1.0%)、GeO2(5.0%)、B2O3(18.0%)、Ga2O3(6.0%)、Bi2O3(3.0%)、ZnO(15%)、Y2O3(0.5%)、La2O3(0.5%)、Gd2O3(3.0%)およびTa2O5(3.0%)の組成を有するものの比重は5.2g/cm3である。
発光ダイオードチップ11が同じものであれば、ガラスの比重が大きくなるほど、移動距離rは大きくなる。すなわち、ガラス部材12の内部に発光ダイオードチップ11が大きくめり込むことになる。この場合、離型材で被覆された基板と発光ダイオードチップ11との間に占める空間が大きくなるので、発光ダイオードチップ11をガラス部材12で被覆する際に、基板とガラス部材12の間に閉じ込められた空気をこの空間に逃がして、ガラス部材12の内部に気泡が生じるのを防ぐことができる。
以上のことを、図4(a)〜(c)を用いてさらに詳しく説明する。
図4(a)は、離型材で被覆された基板10上の発光ダイオードチップ11の上に、ガラス部材12を載せた状態を示したものである。加熱によってガラス部材12を軟化させると、ガラス部材12が重力によって下方に移動し、基板10、ガラス部材12および発光ダイオードチップ11の間に閉空間Sが形成される。そして、発光ダイオードチップ11の比重がガラス部材12の比重より小さい場合には、図4(c)に示すように、発光ダイオードチップ11が矢印の方向に移動して、ガラス部材12の中にめり込んだ状態となる。このとき、閉空間Sに閉じ込められた空気は、発光ダイオードチップ11と基板10の間に移動するので、ガラス部材12の中に気泡が生じるのを防ぐことができる。
尚、一般的な低融点ガラス(例えば、燐酸−スズ−亜鉛系ガラスなど。)では、温度によって粘度が急激に変化するので、軟化したガラスを球状にするのは困難である。
このように、ガラス部材12内部に発光ダイオードチップ11の一部がめり込むと、両者の間に隙間が生じることなく、密着状態で発光ダイオードチップ11の発光面にガラス部材12が固定される。発光ダイオードチップ11は、その端子側の面のみ露出して大部分がガラス部材12内に埋没し、この場合チップの裏面からの発光のみならずチップの端面(チップを直方体として捉えた場合の側面)からの発光もガラス部材内で反射および伝播するため、光取り出し率を向上させる上で有効である。但し、ガラス部材がチップの裏面のみ封止するもの、チップの裏面全体および端面の一部がガラス部材内に埋没したもの、ガラス部材がチップの裏面の一部のみ封止するものの何れも本発明に含まれる。なお、製法の詳細については実施例において説明する。
図7に部材の配置構成例を示す。ガラスエポキシで作られた基板14の一方の面には、チップ11の端子13と電気接続するための二つの電極15が形成され、電極15の端部は基板14の他方の面まで延在している。
図8は、本発明に係るガラス封止発光ダイオードチップおよび発光ダイオード付き回路基板の製造プロセスの一実施形態を示すフローチャートである。また、図9は、製造プロセスにおける基板温度の履歴を示すグラフである。
発光ダイオードチップは青色発光チップ(昭和電工株式会社製 商品名GB−3070)であり、n電極とp電極がチップの片面に配置され、発光ダイオードチップの端子が基板面を向くようにチップは基板上に載せられる。
また、以上のようにして作られたガラス封止発光ダイオードチップの光束は2〜3lm程度が見込まれ、パワーLEDを用いればさらに向上し、20lmは得られるものと推定される。また、出射光指向性について調べるため、計算機シミュレーションを行ったところ、図11に示す視野角度(輝度が最大輝度の半分の値になる角度×2(開き角度))θが15°以下(ガラス材料の屈折率次第では10°以下も可能)であることを確認した。
さらに、発光ダイオードチップによる発光の主発光ピーク波長が、500nm以下であることを確認した。
例1と同じガラス材料カレット7.61gを乳鉢と乳棒を用いて粉砕した後、黄色蛍光体P46−Y3(化成オプトニクス社製)381mgを混合し、蛍光体入りフリットを得た。この蛍光体入りガラスフリットを34mg小分けにして、610℃、15分間加熱した。加熱速度、冷却速度は実施例1と同条件に設定した。これにより図1(a)と同様のガラス部材12を形成した。
内径5.5mm、厚さ0.5mm、高さ10mmの円筒形のパイレックス(登録商標)管53(図14(a))の内側に離型材として窒化ホウ素パウダーをスプレーし、発光ダイオードチップの載った離型材付き基板50上に載せる。その後、実施例1と同じガラス材料381mgを管53の中に充填し、加熱し、冷却する。管53と基板50とは、ガラス部材を成形するための治具54を構成する。加熱条件および冷却条件は例1と同じである。
まず、基板として6インチのシリコンウェハ(大阪チタニウム株式会社製)を用い、この基板の上に、表面が完全に被覆する程度に離型材をスプレー塗布して離型材層を形成した。離型材としては、窒化ホウ素の粉末(化研興業株式会社製 ボロンスプレー)を用いた。次いで、基板の上にガラス片を重量を変えて載せ、例1と同様の加熱処理をすることにより、全体が略球状で、離型材層と接している部分に平坦部を有する封止ガラスを形成した。ガラス材料としては、例1と同様のものを用いた。また、ガラス片の重量は、10mg、20mg、30mg、60mgおよび90mgの5種類とした。
上記の発光ダイオードチップ以外に、現在市場で利用されている各社の製品を本発明に適用することができる。たとえば、日亜化学株式会社、豊田合成株式会社、シャープ株式会社、昭和電工株式会社、株式会社東芝、米国のCree社の製品などがあげられる。本発明において、発光ダイオードチップの形状は略六面体に限られず、勿論、他の形状であってもよい。発光ダイオードチップの発光部をガラス部材で封止し、その端子側の面がガラス部材の外部に露出する構造をとることができればよい。
例1と同様にして略球状のガラス部材を形成し、これを発光ダイオードチップ(豊田合成株式会社製 商品名E1C60−0B011−03)の上に載せた後、例1と同様にして発光ダイオードチップをガラス部材で封止した。次いで、例1と同様にして、ガラス封止発光ダイオードチップを基板に実装することにより、発光ダイオード付き回路基板を得た。この発光ダイオード付き回路基板の電流電圧特性を、例1で得られた発光ダイオード付き回路基板と比較した。図17にその結果を示す。尚、図17において、「樹脂封止」とは、封止されていない発光ダイオードチップ(豊田合成株式会社製 商品名E1C60−0B011−03)が実装された基板の上に、樹脂組成物(信越化学株式会社製シリコーン樹脂 商品名:LPS3400,屈折率1.41)をポッティングし、100℃で60分間加熱した後、さらに150℃で60分間加熱して得られた発光ダイオード付き回路基板を言う。
このようにガラス封止発光ダイオードの発光光を確認できた。その際、ガラス封止発光ダイオードの発光開始電圧が、ガラス封止前の値と同じであったことから、封止時の熱によってLED発光層に損傷は生じていないものと考えられる。
また、ガラス封止発光ダイオードにおける消費電力の増大は、ガラス封止時の熱によって、LEDの電極が熱履歴を受け、それによって電極部の電気伝導特性に若干の変動が生じたためと考えられる。しかしながら、この程度の変化であれば、発光装置の実用性能上は殆ど問題のないレベルと考えられる。尚、LED等の半導体デバイスにおいて、耐熱性を有する電極構造が知られている。例えば、特開2002−151737号公報、特開平10−303407号公報および特開2005−136415号公報などに開示された、特定材料による層構造を採用したLEDを本発明に適用することによって、上記の電気伝導特性の変化を抑制できると思われる。
また、本発明によるガラス封止発光素子と、従来技術による樹脂封止発光素子との出射光の角度依存性を計測し、その結果を図19に示す。本発明によると、出射光は0〜10度付近で強い相対強度を示しており、中心部分に集光されていることがわかった。
もともと指向性のない出射光を有するLEDに対し、本発明によるガラス封止を行った(樹脂封止品の特性カーブを参照:ほぼ平坦な出射光特性を示しており、ダイオードチップの出射光には指向性がほとんどないことがわかる。)。本発明によるガラス封止ダイオードチップにおいては、明確な指向性が発現した。従来技術の樹脂封止化LEDでも、その出射面側をレンズ形状とすることで、指向性を持たせることが理論的には可能であるが、樹脂の屈折率が小さいため、所望のサイズの樹脂部材で実用的な指向性を得るのは困難である。
例5で得られた発光ダイオード付き回路基板について、定格電流20mAでの光束を測定し、未封止のものおよび樹脂封止のものと比較したところ、表1のようになった。尚、「未封止」とは、封止されていない発光ダイオードチップ(豊田合成株式会社製 商品名E1C60−0B011−03)を基板に実装して得られた発光ダイオード付き回路基板を言う。また、「樹脂封止」とは、未封止の発光ダイオード付き回路基板の上に、樹脂組成物(信越化学株式会社製シリコーン樹脂 商品名:LPS3400,屈折率1.41)をポッティングし、100℃で60分間加熱した後、さらに150℃で60分間加熱して得られた発光ダイオード付き回路基板を言う。本発明のガラス封止発光ダイオード付き回路基板では、樹脂封止発光ダイオード付き回路基板に比較して光束が15%程度向上した。
11,31,51,101,201:発光ダイオードチップ
12,32,42:ガラス部材
12a,12b:表面
13:端子
15:電極
16:はんだバンプ
21:p電極
22:n電極
23:発光部
24:p型半導体層
25:n型半導体層
26:発光層
27:サファイア基板
52:ガラス
53:管
54:治具
102,103:電極
104,205:ボンディングワイヤ
105:樹脂
202 サブマウント
203,204 リード
206 封止部材
Claims (6)
- 溶融ガラスに対する濡れ性の低い離型材で覆われた面に発光素子を載置する工程と、
前記発光素子の上に固体のガラス部材を載置する工程と、
前記発光素子および前記ガラス部材を加熱し、この加熱によって固体のガラス材料を溶融し前記ガラス部材と前記発光素子との当接部を密着させる工程と、
前記溶融されたガラス部材および前記発光素子を徐冷する工程とを有することを特徴とするガラス封止発光素子の製造方法。 - 前記発光素子を載置するための凹部を備えた治具を用い、この凹部内に前記発光素子およびガラス材料を載置してからこれらを加熱処理することにより、前記凹部の内側形状を利用してガラス部材を成形する請求項1に記載のガラス封止発光素子の製造方法。
- 前記発光素子の近傍に色変換材料が分散しているガラス部材を形成し、その後に、色変換材料を含まないガラス部材を前記色変換材料を含むガラス部材を覆うようにして形成する請求項1または2に記載のガラス封止発光素子の製造方法。
- 前記発光素子が達する最高温度が、ガラス部材の軟化点よりも80〜150℃高い温度である請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス封止発光素子の製造方法。
- 前記発光素子を構成する半導体基板の熱膨張係数α 1 と前記ガラス部材の熱膨張係数α 2 との間に
|α 1 −α 2 |<20×10 −7 (℃ −1 )
の関係が成立する請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス封止発光素子の製造方法。 - 前記発光素子は、LEDおよび半導体レーザのいずれか一方である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス封止発光素子の製造方法。
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