これによると、第1の共通インク室と第2の共通インク室とが圧電アクチュエータを挟んで配置されているため、共通インク室が圧電アクチュエータを挟んだ2つの領域のうちのいずれか一方のみに配置されている場合と比べて、第1の共通インク室及び第2の共通インク室の容積を大きくすることが可能になる。そのため、印刷時に複数の第1及び第2のインク吐出口から吐出される合計インク量が増大しても、第1及び第2の圧力室へのインク供給不足を解消することができる。したがって、第1及び第2のインク吐出口からのインク吐出が安定する。なお、所定の平面は、複数の第1及び第2の圧力室が形成される面及び複数の第1及び第2の圧力室が面方向に沿って形成される仮想平面などを含んでいる。
本発明において、前記第1の共通インク室を画定する壁面の一部が、前記第1の共通インク室に対向した第1のダンパー室を画定する薄肉膜の一方の面となっていることが好ましい。これにより、第1のインク吐出口からのインク吐出時に第1の圧力室から第1の共通インク室内のインクに伝搬する振動を、第1(または第2)のダンパー室で吸収して減衰させることができる。
また、このとき、前記第1のダンパー室が、前記第1の共通インク室に対して前記圧電アクチュエータと反対側に配置されていてもよい。これにより、第1のダンパー室が、第1及び第2の圧力室と第1の共通インク室との間に形成されないので、第1の個別インク流路を形成しやすくなる。
また、本発明において、前記第2の共通インク室を画定する壁面の一部が、前記第2の共通インク室に対向した第2のダンパー室を画定する薄肉膜の一方の面となっていることが好ましい。これにより、第2のインク吐出口からのインク吐出時に第2の圧力室から第2の共通インク室内のインクに伝搬する振動を、第2のダンパー室で吸収して減衰させることができる。
また、このとき、前記第2のダンパー室が、前記第2の共通インク室に対して前記圧電アクチュエータと反対側に配置されていてもよい。これにより、第2のダンパー室が、第1及び第2の圧力室と第2の共通インク室との間に形成されないので、第2の個別インク流路を形成しやすくなる。
また、このとき、前記第1の共通インク室と前記第2の共通インク室とが、前記所定の平面に直交する方向に関して互いに重なり合っていてもよい。これにより、第1及び第2の共通インク室が複数設けられていても、ヘッドの小型化を図りつつ、ヘッドの剛性をほぼ均一とすることが可能になる。
また、このとき、複数の前記第1の共通インク室がなす第1の共通インク室列中の一端にある前記第1の共通インク室から前記一方向に沿ってさらに外側には、複数の前記第2の共通インク室がなす第2の共通インク室列中の一端にある前記第2の共通インク室と前記所定の平面と直交する方向に関して互いに重なり合う、前記第1の共通インク室と同じ形状の第1の空隙が形成されている。そして、前記第2の共通インク室列中の他端にある前記第2の共通インク室から前記一方向に沿ってさらに外側には、第1の共通インク室列中の他端にある前記第1の共通インク室と前記所定の平面と直交する方向に関して互いに重なり合う、前記第2の共通インク室と同じ形状の第2の空隙が形成されていてもよい。これにより、第1の共通インク室列の両端にある第1の共通インク室と、第2の共通インク室列の両端にある第2の共通インク室とが平面と直交する方向に関して互いに重なっていなくても、それぞれが第1及び第2の空隙と平面と直交する方向に関して互いに重なり合うことになる。そのため、ヘッドの剛性をほぼ均一とすることが可能になる。
また、このとき、前記第1の空隙と前記所定の平面と直交する方向に関して互いに重なり合う位置にある前記第2の共通インク室には、当該第2の共通インク室と前記一方向において隣接する前記第2の共通インク室とは異なり、前記第1の空隙と前記一方向において隣接する前記第1の共通インク室に貯溜されるインクと同色のインクが貯溜されている。そして、当該第2の共通インク室に連通する複数の前記第2のインク吐出口と、前記第1の空隙と前記一方向において隣接する前記第1の共通インク室に連通する複数の前記第1のインク吐出口とが、インク吐出面において、前記第1の空隙と前記第1の空隙と隣接する前記第1の共通インク室との間に形成されていてもよい。これにより、同色のインクを吐出する複数の第1及び第2のインク吐出口どうしが隣接することになる。そのため、異なるインクを吐出する複数の第1及び第2のインク吐出口どうしが隣接するときに生じるインクの混色を防ぐことができる。また、色ごとに複数の第1及び第2のインク吐出口を覆うパージキャップを設けることが可能になるため、色ごとにパージすることができる。加えて、パージキャップ自体も小さくすることができるため、パージキャップとインク吐出面とで囲まれた空間が小さくなり、第1及び第2のインク吐出口のインクメニスカスの乾燥を抑制することができる。また、同色の第1及び第2のインク吐出口間距離が小さくなるので、ノズルから吐出される同色のインク着弾精度が向上する。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるインクジェットヘッドが採用されたインクジェットプリンタの概略斜視図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ100は、図1の左右方向に移動可能なキャリッジ101と、このキャリッジ101に設けられて記録用紙Pに対してインクを吐出するシリアル式のインクジェットヘッド1と、記録用紙Pを図1の前方へ搬送する搬送ローラ102等を備えている。インクジェットヘッド1は、キャリッジ101と一体的に左右方向(走査方向)へ移動して、その下面のインク吐出面に形成されたノズル8(図6参照)から記録用紙Pに対してインクを吐出する。そして、インクジェットヘッド1により記録された記録用紙Pは、搬送ローラ102により前方(紙送り方向)へ排出される。
次に、インクジェットヘッド1について、図2〜6を参照して詳細に説明する。図2は、インクジェットヘッド1の概略斜視図である。図3は、インクジェットヘッド1の圧電アクチュエータ及び下流路ユニットの分解斜視図である。図4は、インクジェットヘッド1の上流路ユニットの分解斜視図である。図5は、圧電アクチュエータの部分拡大平面図である。図6は、図5に示すVI−VI線に沿ったインクジェットヘッド1の部分断面図である。図2〜6に示すように、インクジェットヘッド1は、その内部にインク流路が形成された上流路ユニット2と、上流路ユニット2の下側に配置された圧電アクチュエータ3と、圧電アクチュエータ3の下側に配置され内部にインク流路が形成された下流路ユニット4とを備えている。インクジェットヘッド1の上面において、紙送り方向の一方の端部には、8つのインク供給口5(図4参照)が形成されている。これらインク供給口5を覆う位置には、フィルタ11が設けられている。フィルタ11の各インク供給口5と対向する位置には、微細な貫通孔が複数形成されている。これにより、インク供給源(図示せず)からのインクが、フィルタ5により濾過され、8つのインク供給口5を介して上流路ユニット2及び下流路ユニット4内に流入する。
まず、下流路ユニット4について説明する。図3に示すように、下流路ユニット4は、上から、キャビティプレート41、ベースプレート42、アパーチャプレート43、2枚のマニホールドプレート44,45、ダンパプレート46、スペーサプレート47、及び、ノズルプレート48の計8枚のシート材が積層された積層構造を有している。各プレート41〜48は、紙送り方向に長手方向を有する長方形平面形状となっている。本実施の形態において、下流路ユニット4を構成する8枚のプレート41〜48のうち、ノズルプレート48を除く7枚のプレート41〜47がステンレス鋼からなり、ノズルプレート48がポリイミド樹脂からなる。
ノズルプレート48には、微小径のノズル(インク吐出口)8が微小間隔で多数穿設されている。これらノズル8は、ノズルプレート48の長手方向に沿って千鳥配列状で8列に配列されている。
キャビティプレート41には、各ノズル8に対応する複数の圧力室10がキャビティプレート41の長手方向に沿って千鳥状配列で8列に穿設されている。各圧力室10の長手方向は、キャビティプレート41の長手方向に直交している。各圧力室10の一端部は、ベースプレート42、アパーチャプレート43、2枚のマニホールドプレート44,45、ダンパプレート46及びスペーサプレート47に千鳥状配列で穿設されている微小径の貫通孔61を介して、ノズルプレート48におけるノズル8に連通している。また、キャビティプレート41の一端部側には、4つの孔41aがキャビティプレート41の短手方向(走査方向)に沿って離隔して形成されている。これら4つの孔41aは、8つのインク供給口5のうち、外側の列を構成する4つのインク供給口5とそれぞれ対向するように配置されている。
図3に示すように、2枚のマニホールドプレート44,45のうち、アパーチャプレート43に近い側のマニホールドプレート44には、貫通状の4つのインク室半部44aがマニホールドプレート44の短手方向(走査方向)に沿って互いに離隔して配列されている。各インク室半部44aの一方の端部には、4つの孔41aと対向する位置まで延在し且つ貫通状に形成された接続半部44bが繋がっている。また、マニホールドプレート44には、4つのインク室半部44aがなす列中の一方(図3中紙面手前)にあるインク室半部44aからマニホールドプレート44の短手方向(一方向)に沿ってさらに外側に、インク室半部44aとほぼ同形状の貫通部44cが形成されている。
一方、ダンパプレート46側のマニホールドプレート45にも、4つのインク室半部44aと同様の4つのインク室半部45a及び4つの接続半部44bと同様の4つの接続半部45bが貫通して形成されている。また、マニホールドプレート45には、4つのインク室半部45aがなす列中の一方(図3中紙面手前)にあるインク室半部45aからマニホールドプレート45の短手方向(一方向)に沿ってさらに外側に、インク室半部45aとほぼ同形状の貫通部45cが形成されている。この構成で2枚のマニホールド44,45、アパーチャプレート43及びダンパプレート46の計4枚を積層することにより、対向する2つのインク室半部44a,45a、接続半部44b,45b及び貫通部44c,45cが相互に接合され、それぞれの上下の開口が、上からのアパーチャプレート43と下からのダンパプレート46とにより覆われる。こうして、貫通孔61の列間及び外側に計4つの共通インク室(第1の共通インク室)6と接続部7及び1つの空隙(第1の空隙)9が形成される。なお、4つの接続部7の一端部が外側の列を構成する4つのインク供給口5とそれぞれ対向している。
ベースプレート42には、複数の貫通孔61の他に、複数の連絡孔62が貫通して形成されている。これら連絡孔62は、8列の圧力室列のうち1列おきに4つの圧力室列に属する各圧力室(第1の圧力室)10に対応してベースプレート42の長手方向(紙送り方向)に沿って4列に配列されている。連絡孔62は、一方の開口において圧力室10と連通し他方の開口において後述のアパーチャ63と連通している。また、ベースプレート42は、長手方向の一端部側に、図3に示すように、4つの孔42aが形成されている。これら孔42aは、それぞれキャビティプレート41の4つの孔41aと対向するように配置されている。
アパーチャプレート43には、複数の貫通孔61の他に、複数のアパーチャ63が貫通して形成されている。これらアパーチャ63は、複数の連絡孔62とそれぞれ対向する位置に形成されている。アパーチャ63は、図6に示すように、連絡孔62と連通する一方の開口が共通インク室6と連通する他方の開口よりもその直径が大きくなっている。つまり、アパーチャ63は、連絡孔62から共通インク室6に向かう方向と直交する方向の断面積が連絡孔62から共通インク室6に向かう方向に関して減少している。この構成により、ノズル8からのインク吐出時に圧力室10から共通インク室6側に逆流しようとするインクの流れを制限することができる。また、アパーチャプレート43は、4つの孔42aとそれぞれ対向する位置に孔43aが形成されている。各孔43aは、一方の開口において孔42aとそれぞれ連通し、他方の開口において対応する接続部7とそれぞれ連通している。
ダンパプレート46には、図3に示すように、5列の溝46aが凹設されている。これら溝46aは、スペーサプレート47に向けてのみ開放するように形成され、その位置及び形状は共通インク室6及び空隙9と同形状となっている。したがって、マニホールドプレート44,45、ダンパプレート46及びスペーサプレート47を接合すると、ダンパプレート46の共通インク室6及び空隙9と対向する部分にはスペーサプレート47から離隔した薄肉膜65が形成される。ここで、薄肉膜65は、適宜弾性変形し得るステンレス鋼に形成された溝46aの底部によって構成されているので、共通インク室6側及び薄肉膜65とスペーサプレート47により画定されたダンパー室(溝46a内:第1のダンパー室)側に自由に振動することができる。このような構成により、インク吐出時に圧力室10で発生した圧力変動が共通インク室6に伝播しても、これに対応して薄肉膜65が弾性変形することによって吸収減衰させることができる。なお、空隙9内にはインクが供給されないので、空隙9に対向する薄肉膜65においては、上述のようなダンパー効果を発揮することがないが、空隙9に対向する領域に溝46aが形成され薄肉膜65が形成されていることで、下流路ユニット4の全体的な剛性のバランスが均一化する。
続いて、圧電アクチュエータ3について説明する。図3、図5及び図6に示すように、圧電アクチュエータ3は、キャビティプレート41の長辺とほぼ同じ長さの4辺で構成された略正方形平面形状を有する振動板30と、振動板30の上面において複数の圧力室10に跨って連続的に形成された圧電層31と、圧電層31の上面において複数の圧力室10にそれぞれ対応して形成された複数の個別電極32とを備えている。
振動板30は、ステンレス鋼等の鉄系合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、チタン合金等の金属材料からなり、すべての圧力室10を覆いつつキャビティプレート41の上面(所定の平面)と接合されている。この振動板30は、複数の個別電極32に対向していて個別電極32と振動板30との間の圧電層31に電界を作用させる共通電極を兼ねており、図示しない領域において接地されてグランド電位に保持されている。また、振動板30には、複数の連絡孔66が貫通して形成されている。これら連絡孔66は、一方の開口において圧力室10と連通し他方の開口において圧電層31に形成された後述の連絡孔67(図6参照)と連通している。さらに、複数の連絡孔66は、上述の連絡孔62が連通していない4列の圧力室列に属する各圧力室(第2の圧力室)10に対応して紙送り方向に沿って4列に配列されている。また、振動板30の一端部側には、4つの孔30aが形成されている。これら4つの孔30aは、孔41aとそれぞれ対向して配置されている。
圧電層31は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり、主成分が強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)である。圧電層31は、振動板30の上面全体に形成されており、複数の圧力室10に跨って連続している。そのため、圧電層31をすべての圧力室10に対して一度に形成することができ、圧電層31の形成が容易になる。また、圧電層31には、複数の連絡孔67が貫通して形成されている。これら連絡孔67は、一方の開口において連絡孔66と連通し他方の開口において後述のベースプレート26に形成された連絡孔68(図4参照)と連通している。圧電層31の一端部側には、4つの孔31aが形成されている。これら4つの孔31aは、孔30aとそれぞれ対向して配置されている。
圧電層31の上面には、図5に示すように、圧力室10よりも一回り小さい長方形平面形状を有する個別電極32が複数形成されている。これら個別電極32は、平面視で対応する圧力室10の中央部に重なるようにそれぞれ形成されている。つまり、複数の個別電極32は、紙送り方向に沿って千鳥状配列で8列に配列されている。個別電極32は、本実施形態においては銅からなるが、例えば、金、銀、パラジウム、白金、チタンなどの導電性材料から構成されていてもよい。
圧電層31の上面には、走査方向に延在した複数の配線34と、圧電層31の下流路ユニット4と対向しない領域の端部に配置された複数の端子35とが形成されている。圧電層31の上面には、ドライバIC80が実装されている。複数の配線34は、複数の個別電極32とドライバIC80とを個別電極32ごとに電気的に接続する複数の個別配線36と、ドライバIC80と複数の端子35とを端子ごとに電気的に接続する複数の信号配線37とを有している。端子35は、図示しない制御部と電気的に接続されている。この構成により、ドライバIC80に対して制御部からシリアル転送されてきた印刷信号を端子35及び信号配線37を介して供給することができる。そして、ドライバIC80に対して印刷信号が供給されると、ドライバIC80が印刷信号を所定の電圧のパラレル信号である駆動信号に変換し、さらに駆動信号を個別配線36を介して各個別電極45に出力する。
ここで、圧電アクチュエータ3の作用について説明する。用紙Pに対して印刷するとき、制御部からドライバIC80に対して印刷信号が供給される。そして、ドライバIC80が駆動信号に変換し各個別電極32に出力する。このとき、振動板30はグランド電位に保持されているので、振動板30と個別電極32との間には、電位差が生じる。すると、圧電層31の個別電極32と振動板30との間に挟まれた領域(活性層)に厚み方向の電界が生じ、分極方向である厚み方向と垂直な水平方向に収縮する。この収縮に伴って、圧力室10に対向する圧電層31の領域及び振動板30の領域に積層方向の歪み(圧力室10の容積を増大させてから元も容積に戻るような変形)が発生し、圧力室内のインクに圧力が付与される。そして、個別電極32に対応するノズル8から圧力が付与されたインクが吐出する。こうして、用紙Pへの所定の印字が行われる。
続いて、上流路ユニット2について説明する。図4に示すように、上流路ユニット2は、上から、スペーサプレート21、ダンパプレート22、2枚のマニホールドプレート23,24、アパーチャプレート25、及び、ベースプレート26の計6枚のシート材が積層された積層構造を有している。各プレート21〜26は、紙送り方向に長手方向を有する長方形平面形状となっている。本実施形態において、これらプレート21〜26は、例えば、ステンレス鋼からなる。
スペーサプレート21の一端部には、8つのインク供給口5となる8つの孔21aが形成されている。これら孔21aは、走査方向に沿って千鳥状で2列に配列されている。
ベースプレート26には、複数の連絡孔68が貫通して形成されている。これら連絡孔68は、一方の開口において連絡孔67と連通し他方の開口において後述のアパーチャ70と連通している。つまり、複数の連絡孔68は、ベースプレート26の長手方向に沿って4列に配列されている。また、ベースプレート26には、複数の個別電極32がなす8列の個別電極列にそれぞれ対応する8列の溝69が凹設されている。これら溝69は、圧電層31に向けてのみ開放するように紙送り方向に延在して形成されている。したがって、ベースプレート26と圧電層31とを接着剤などで接合したときに、図6に示すように、個別電極32の圧電層31との接触面を除く周囲には空隙71が形成される。これにより、圧力室10の容積を増大させるように個別電極32と対向する圧電層31が空隙71側に凸変形したときに、個別電極32も変位するが、そこには空隙71が形成されているため、個別電極32の変位及び圧電層31の変形を阻害しなくなる。したがって、所望の圧力を圧力室内のインクに付与することができる。また、ベースプレート26の一端部側には、4つの孔26aが形成されている。これら4つの孔26aは、孔31aとそれぞれ対向して配置されている。
アパーチャプレート25には、複数のアパーチャ70が貫通して形成されている。これらアパーチャ70は、複数の連絡孔68とそれぞれ対向する位置に形成されている。アパーチャ70は、図6に示すように、連絡孔68と連通する一方の開口が後述の共通インク室76と連通する他方の開口よりもその直径が大きくなっている。つまり、アパーチャ70は上述したアパーチャ63を上下反転したものと同様であり、その機能も同様である。また、アパーチャプレート25の一端部側には、4つの孔25aが形成されている。これら4つの孔25aは、孔26aとそれぞれ対向して配置されている。
図4に示すように、2枚のマニホールドプレート23,24のうち、ダンパプレート22に近い側のマニホールドプレート23には、貫通状の4つのインク室半部23aがマニホールドプレート23の短手方向(走査方向)に沿って互いに離隔して配列されている。各インク室半部23aの一方の端部には、マニホールドプレート23において8つのインク供給口5のうち、内側の列を構成する4つのインク供給口5とそれぞれ対向する位置まで延在し且つ貫通状に形成された接続半部23bが繋がっている。また、マニホールドプレート23には、4つのインク室半部23aがなす列中の一方(図4中紙面奥)にあるインク室半部23aからマニホールドプレート23の短手方向(一方向)に沿ってさらに外側に、インク室半部23aとほぼ同形状の貫通部23cが形成されている。また、マニホールドプレート23の一端部側には、4つの孔23dが形成されている。これら4つの孔23aは、外側の列を構成するインク供給口5及び孔25aとそれぞれ対向して配置されている。
一方、アパーチャプレート25側のマニホールドプレート24にも、4つのインク室半部23aと同様の4つのインク室半部24a及び4つの接続半部23bと同様の4つの接続半部24bが貫通して形成されている。また、マニホールドプレート24には、4つのインク室半部24aがなす列中の一方(図4中紙面奥)にあるインク室半部24aからマニホールドプレート24の短手方向(一方向)に沿ってさらに外側に、インク室半部24aとほぼ同形状の貫通部24cが形成されている。この構成で2枚のマニホールド23,24、アパーチャプレート25及びダンパプレート22の計4枚を積層することにより、対向する2つのインク室半部23a,24a、接続半部23b,24b及び貫通部23c,24cが相互に接合され、それぞれの上下の開口が、上からのダンパプレート22と下からのアパーチャプレート25とにより覆われる。こうして、共通インク室(第2の共通インク室)76と接続部77及び1つの空隙(第2の空隙)79が形成される。4つの共通インク室76、接続部77及び空隙79は、下流路ユニット4に形成された4つの共通インク室6、接続部7及び空隙9と同じ形状であり、且つ、それぞれ対向して配置されている(各プレート21〜26の積層方向に関して互いに重なり合って配置されている)。図3及び図4に示すように、空隙9及び空隙79は、走査方向に並ぶ4つの共通インク室6,76のうちの端にある共通インク室6,76とそれぞれ対向している(積層方向に関してそれぞれ重なり合っている)。これにより、インクジェットヘッド1の剛性をほぼ均一とすることができる。なお、4つの接続部77の一端部が内側の列を構成する4つのインク供給口5とそれぞれ対向している。また、マニホールドプレート24の一端部側には、4つの孔24dが形成されている。これら4つの孔24aは、孔25a及び孔23dとそれぞれ対向して配置されている。
ダンパプレート22には、図4に示すように、5列の溝74が凹設されている。これら溝74は、スペーサプレート21に向けてのみ開放するように形成され、その位置及び形状は共通インク室76及び空隙79と同形状となっている。したがって、マニホールドプレート23,24、ダンパプレート22及びスペーサプレート21を接合すると、ダンパプレート22の共通インク室76及び空隙79と対向する部分にはスペーサプレート21から離隔した薄肉膜75が形成される。この薄肉膜75も、上述した薄肉膜65と同様に、共通インク室76側及び薄肉膜75とスペーサプレート21により画定されたダンパー室(溝74内:第2のダンパー室)側に自由に振動することができる。これにおいても、上述と同様にインク吐出時に圧力室10で発生した圧力変動が共通インク室76に伝播しても、薄肉膜75の弾性変形によって吸収減衰させることができる。なお、空隙79内にはインクが供給されないので、空隙79に対向する薄肉膜75においては、上述のようなダンパー効果を発揮することがないが、空隙79に対向する領域に溝74が形成され薄肉膜75が形成されていることで、上流路ユニット2の全体的な剛性のバランスが均一化する。また、ダンパプレート22の一端部側には、8つの孔21aとそれぞれ対向する位置に8つの孔22aが形成されている。
このような上流路ユニット2、圧電アクチュエータ3及び下流路ユニット4が互いに積層されることで、外側の列を構成する4つのインク供給口5が下流路ユニット4内に形成された共通インク室6とそれぞれ連通するインク流路が形成される。一方、内側の列を構成する4つのインク供給口5が上流路ユニット2内に形成された共通インク室76とそれぞれ連通するインク流路が形成される。これにより、インク供給源から供給されたインクが8つのインク供給口5から共通インク室6,76にそれぞれ流入する。本実施形態においては、内側及び外側の列にそれぞれ属するインク供給口5のうち、図4中紙面奥側から図4中紙面手前側に向かって順に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが供給されている。つまり、上流路ユニット2の4つの共通インク室76において、図4中紙面奥側から図4中紙面手前側に向かって順に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが供給される。一方、下流路ユニット4の4つの共通インク室6において、図3中紙面奥側から図3中紙面手前側に向かって順に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが供給される。ここで、下流路ユニット4の図3中紙面奥側に位置する共通インク室6は空隙79と対向し、上流路ユニット2の図4中紙面手前側に位置する共通インク室76は空隙9と対向しているため、インクジェットヘッド1は互いに同じ色のインクが供給された共通インク室6,76同士が対向しない構成となっている。
インクジェットヘッド1には、図6に示すように、共通インク室6から順に、アパーチャ63、連絡孔62、圧力室(第1の圧力室)10、貫通孔61を通ってノズル(第1のインク吐出口)8に至る複数の個別インク流路(第1の個別インク流路)15が形成されている。さらに、共通インク室76から順に、アパーチャ70、連絡孔66〜68、圧力室(第2の圧力室)10、貫通孔61を通ってノズル(第2のインク吐出口)8に至る複数の個別インク流路(第2の個別インク流路)16が形成されている。共通インク室6に流入したインクは、アパーチャ63及び連絡孔62を経由して、対応する圧力室10に供給される。そして、圧力室(第1の圧力室)10で圧電アクチュエータ(第1の圧電アクチュエータ)3により圧力が付与されたインクが、貫通孔61を経由して、対応するノズル8(第1のインク吐出口)から吐出される。一方、共通インク室76に流入したインクは、アパーチャ70及び連絡孔66〜68を経由して、対応する圧力室10に供給される。そして、圧力室(第2の圧力室)10で圧電アクチュエータ(第2の圧電アクチュエータ)3により圧力が付与されたインクが、貫通孔61を経由して、対応するノズル(第2のインク吐出口)8から吐出される。
2種類の個別インク流路15,16は、図3及び図6に示すように、4つの共通インク室6及び空隙9の間に配置された8つのノズル列において、各ノズル列に属するノズル8と連通するように走査方向に沿って交互に配置されている。具体的には、図6に示すように、空隙79と対向しブラックインクが供給された共通インク室6(図6中最も左側に位置する共通インク室6)が個別インク流路15を介して図6中最も左側に位置するノズル8に連通し、走査方向において空隙79と隣接したブラックインクが供給された共通インク室76(図6中最も左側に位置する共通インク室76)が個別インク流路16を介して図6中最も左側に位置するノズル8と走査方向において隣接したノズル8に連通している。なお、残りの3つの共通インク室6及び残りの3つの共通インク室76においても、ブランクインクがそれぞれ供給された共通インク室6,76と同様な配置形態でノズル8と連通している。つまり、4つの共通インク室6及び空隙9の間に配置されたそれぞれ隣接する2列のノズル列に属するノズル8は、いずれも同色のインクを吐出するような構成になっている。これにより、異なる色のインクを吐出するノズル同士が隣接した配置形態において生じることがあるインクの混色を防ぐことができる。ここでいう、インクの混色は、インク吐出面に付着したインク滴をワイパー(図示せず)で払拭するときに、ワイパーに移動に伴って移動したインク滴がそのインク滴の色と異なる色を吐出するノズル8近傍を通過したときに、当該ノズル8に形成されたインクメニスカスに付着して当該ノズル8から吐出するインクに混色が起こるこという。また、色ごとに2列のノズル列を覆うパージキャップを設けることが可能になるため、色ごとにパージすることができる。さらに、パージキャップ自体も小さくすることができるため、パージキャップとインク吐出面とで囲まれた空間が小さくなる。したがって、ノズル8に形成されるインクメニスカスの乾燥を抑制することができる。また、同色のノズル間距離が小さくなるので、用紙Pに対するノズル8から吐出される同色のインク着弾精度が向上する。
続いて、インクジェットヘッド1の製造方法について、図7及び図8を参照しつつ以下に説明する。図7及び図8は、インクジェットヘッド1の製造工程図である。インクジェットヘッド1を製造するには、まず、図7(a)に示すように、キャビティプレート41となるプレートにエッチングにより圧力室10となる孔及び孔41aを形成する(圧力室形成工程)。次に、キャビティプレート41と振動板30とを積層して、所定温度に加熱しつつ加圧して両者を拡散接合する(積層体形成工程)。こうして、図7(b)に示すように、キャビティプレート41と振動板30からなる積層体85を形成することができる。次に、図7(c)に示すように、振動板30にエッチングにより連絡孔66を形成する。なお、振動板30に連絡孔66を形成した後に、振動板30とキャビティプレート41を拡散接合してもよい。
次に、図7(d)に示すように、振動板30の上面全体に、エアロゾルデポジション法(AD法)を用いて超微粒子の圧電材料を高速で衝突させて堆積させる。このとき、振動板30には連絡孔66が形成されているので、振動板30の連絡孔66を除く領域に圧電層31となる堆積層86が形成される。圧電材料の衝突により、振動板30には衝撃が加わるが、予めキャビティプレート41が接合されて剛性が高められているので、反り返り等の変形が生じることはない。ここで、圧電材料を振動板30に堆積させる方法としては、ゾルゲル法、スパッタ法、水熱合成法、あるいは、CVC(化学蒸着)法を用いることもできる。なお、振動板30に圧電材料の粒子を堆積させて堆積層86を形成すると、堆積層86の振動板30の連絡孔66に対応する位置に、連絡孔66と同じく個別インク流路16の一部を構成する連絡孔67が同時に形成されることになり、堆積層86に連絡孔67を形成する工程を別に行う必要がなく、製造工程を簡素化できる。
次に、図7(e)に示すように、圧電層31の上面全体にスクリーン印刷や蒸着法などにより、銅からなる薄膜状の導電性層87を形成する。次に、導電性層87にレーザ光線を照射して、図3に示された複数の個別電極32、複数の配線34及び複数の端子35となる部分以外の導電性層87の部分を除去する。こうして、堆積層86上に複数の個別電極32、複数の配線34及び複数の端子35を形成する。そして、堆積層86が形成された積層体85を所定温度に加熱して堆積層86を焼成するアニール工程を行い、圧電層31を形成する。このアニール工程の際にキャビティプレート41と振動板30も加熱されるため、これらが接着剤で接合されていると、接着剤が溶けて剥がれるおそれがあるが、上述したようにキャビティプレート41と振動板30は拡散接合によって接合されているためアニール工程の際に剥離が生じることはない。こうして、積層体85のキャビティプレート41を除く部分が圧電アクチュエータ3となる。なお、複数の個別電極32、複数の配線34及び複数の端子35に対応する開口を有するマスクを用いてスクリーン印刷や蒸着法などにより導電性層87を形成してもよく、この場合はレーザ光線により導電性層87の一部分を除去する工程を省くことができる。
次に、予めエッチングにより図3に示された孔及び溝が形成されたプレート42〜47を、図8(a)に示すように、複数の個別インク流路15,16の一部及び全部が形成されるように積層体85の下側に積層し、所定温度で加熱しつつ加圧して積層体85及び各プレート42〜47を互いに拡散接合する。こうして、積層体85と各プレート42〜47が積層した積層体88が形成される。次に、予めエッチングにより図4に示された孔及び溝が形成されたプレート21〜26を個別インク流路16の一部が形成されるように積層し、所定温度で加熱しつつ加圧して互いに拡散接合する。こうして、上流路ユニット2が形成される。次に、上流路ユニット2の下面に熱硬化型接着剤を塗布し、図8(b)に示すように、積層体88の上面(圧電アクチュエータ3の上面)に上流路ユニット2を接着する。そして、予めレーザ加工により複数のノズル8が形成されたノズルプレート48を積層体88の下面に熱硬化型接着剤を介して接着する。次に、上流路ユニット2、積層体88及びノズルプレート48が積層された積層体89を、熱硬化型接着剤の硬化温度以上に加熱しつつ加圧する。こうして、接着剤が硬化し上流路ユニット2、圧電アクチュエータ3及び下流路ユニット4が互いに固着する。そして、自然冷却した後、図2に示すように、個別配線36及び信号配線37とドライバIC80とを電気的に接続するようにドライバIC80を圧電層31上に実装する。こうして、インクジェットヘッド1の製造が完了する。なお、振動板30は非常に薄く形成されているため、変形しやすくなっている。そのため、振動板30及び圧電層31の個別電極32とドライバIC80との間の領域を曲げて、ドライバIC80が複数の個別電極32と対向する領域に配置していてもよい。このように、振動板30を曲げることで、インクジェットヘッド1の走査方向に関する幅が小さくなり、小型化が図れる。
以上のように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド1によると、上流路ユニット2に形成された共通インク室76と下流路ユニット4に形成された共通インク室6とが圧電アクチュエータ3を挟んで配置されているため、共通インク室が上及び下流路ユニット2,4のいずれか一方のみに配置されている場合と比べて、共通インク室の合計容積が大きくなる。そのため、印刷時に複数のノズル8から吐出される合計インク量が増大しても、複数の圧力室10へのインク供給不足を解消することができる。したがって、ノズル8からのインク吐出が安定する。
また、下流路ユニット4に形成された共通インク室6内のインクに伝搬する振動を吸収して減衰させるために設けられた溝46aが、共通インク室6に対して圧力室10と反対側に配置されているため、個別インク流路15の経路が下流路ユニット4内において複雑に入り組んだ経路とならない。そのため、個別インク流路15を構成する各孔の位置合わせが容易となって形成しやすくなる。上流路ユニット2に形成された共通インク室76内のインクに伝搬する振動を吸収して減衰させるために設けられた溝74が、共通インク室76に対して圧力室10と反対側に配置されているため、上述と同様に個別インク流路16の経路が上流路ユニット2内において簡易な経路となり、個別インク流路16を形成しやすくなる。
共通インク室6,76が、各プレート21〜26,41〜48の面方向に平行な走査方向(一方向)に沿って4つずつ配列されているため、複数の圧力室10へのインク供給不足をより解消することができる。
本実施の形態によるインクジェットヘッド1の製造方法によると、圧力室10となる孔が形成されたキャビティプレート41と連絡孔66が形成された振動板30とを拡散接合して積層体85とした後、振動板30に圧電材料の粒子を堆積させることによって圧電層31を形成しているので、特別な穿孔加工を施すことなく圧電層31に個別インク流路16の一部を構成する連絡孔67を容易に形成することができる。また、キャビティプレート41と振動板30とを拡散接合しているので、圧電層31となる堆積層86を所定温度で焼成したときに、互いに剥離しない。
続いて、本発明の第2実施形態によるインクジェットヘッド200について図9を参照しつつ以下に説明する。図9は、本発明の第2実施形態によるインクジェットヘッド200の部分断面図である。本実施形態におけるインクジェットヘッド200は、上流路ユニット202及び下流路ユニット204に上述した空隙9,79が設けられておらず、積層方向に関して互いに重なる位置に第1実施形態と同様な共通インク室206,276が4つずつ設けられている。これら以外の構成は、第1実施形態のインクジェットヘッド1とほぼ同様な構成を有している。
上流路ユニット202は、図9に示すように、6枚のプレート221〜226が積層することで構成されている。これらプレート221〜226には、上述した溝74、薄肉膜75、4つの共通インク室76、溝69、アパーチャ70及び連絡孔68と同様な溝274、薄肉膜275、4つの共通インク室(第2の共通インク室)276、溝269、アパーチャ270及び連絡孔268が設けられている。
下流路ユニット204は、図9に示すように、8枚のプレート241〜248が積層することで構成されている。これらプレート241〜248には、上述した貫通孔61、ノズル8、圧力室10、溝46a、薄肉膜65、4つの共通インク室76、アパーチャ63及び連絡孔62と同様な貫通孔261、ノズル(インク吐出口)208、圧力室210、溝246a、薄肉膜265、4つの共通インク室(第1の共通インク室)206、アパーチャ263及び連絡孔262が設けられている。上流路ユニット202と下流路ユニット204との間には、振動板230、圧電層231及び複数の個別電極232を備えた圧電アクチュエータ203が配置されている。圧電アクチュエータ203は、上述した圧電アクチュエータ3とほぼ同様な構成であり、連絡孔266,267を有している。
これら上流路ユニット202、圧電アクチュエータ203及び下流路ユニット204が積層することで、図9に示すように、インクジェットヘッド200の内部には、共通インク室206から順に、アパーチャ263、連絡孔262、圧力室210、貫通孔261を通ってノズル208に至る複数の個別インク流路(第1の個別インク流路)215と、共通インク室276から順に、アパーチャ270、連絡孔268〜266、圧力室210、貫通孔261を通ってノズル208に至る複数の個別インク流路(第2の個別インク流路)216とが形成される。これら2種類の個別インク流路215,216は、走査方向に沿って交互に配置されている。
本実施形態におけるインクジェットヘッド200は、図9中左から右に向かって順に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが各流路ユニット202,204に形成された4つの共通インク室206,276にそれぞれ供給されている。これにより、図9中最も左側に位置するノズル208は、ブラックインクが供給された共通インク室276と個別インク流路216を介して連通している。そして、図9中最も左側に位置するノズル208と共通インク室206を挟んで隣接するノズル208は、ブラックインクが供給された共通インク室206と個別インク流路215を介して連通している。このように積層方向に重なる2つの共通インク室206,276は、当該共通インク室206を挟む位置に存在する2列のノズル列に属するノズル208と連通する。したがって、共通インク室206を挟んで外側に配置された2列のノズル列に属するノズル208は、同色のインクを吐出する。また、4つの共通インク室206の間に存在する複数のノズル列において、互いに隣接する2列のノズル列に属するノズル208同士は、異なる色のインクを吐出する構成となっている。
以上のように、本実施の形態におけるインクジェットヘッド200によると、上流路ユニット202に形成された4つの共通インク室276と、下流路ユニット204に形成された4つの共通インク室206とが積層方向に関して互いに重なっているので、インクジェットヘッド200に8つの共通インク室206,276を設けていても、ヘッドの小型化を図ることができる。加えて、ヘッドの剛性もほぼ均一にすることができる。また、積層方向に関して互いに重なり合う共通インク室206,276が、個別インク流路215,216を介して当該共通インク室206を挟む位置に形成されたノズル208とそれぞれ連通しているので、ノズル208の高密度化が可能になる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、第1及び第2実施形態におけるインクジェットヘッド1,200は、上流路ユニット2,202に4つの共通インク室76,276が形成されており、下流路ユニット4,204に4つの共通インク室6,206が形成されているが、各流路ユニット2,4,202,204にそれぞれ1以上の共通インク室が設けられておればよい。また、上流路ユニット2,202に形成された4つの共通インク室76,276と、下流路ユニット4,204に形成された4つの共通インク室6,206がすべて積層方向に関して重なり合っていなくてもよい。また、各インクジェットヘッド1,200に形成された8つの共通インク室6,76,206,276に同じ色のインク又はすべて異なる色のインクが供給されていてもよい。また、共通インク室6,76,206,276と対向する位置に溝46a,74,246a,274が形成されていなくてもよい。また、溝6a,74,246a,274が対応する共通インク室6,76,206,276と圧力室10との間に形成されていてもよい。また、空隙9,79と共通インク室6,76とが積層方向に関して重なり合っていなくてもよい。また、上述の圧電アクチュエータ3は、すべての圧力室10に跨った振動板30と圧電層31とを有しているが、圧電アクチュエータが圧力室10毎に形成されていてもよいし、圧電層及び個別電極だけが圧力室10毎に形成されていてもよい。また、ベースプレート26,226には、溝69,269の代わりに、各個別電極又は各個別電極列に対応する貫通孔が形成されていてもよい。また、ベースプレート26,226に溝69,269が形成されていなくてもよい。また、上述したインクジェットヘッド1,200は、ヘッドが往復移動するシリアルタイプであるが、ヘッドが固定されたラインタイプでもよい。