JP4876247B2 - ペニシリウム属に属する新規微生物 - Google Patents
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Description
この廃棄物の一般的な処理は焼却又は埋立による。前者の場合、重油などの燃料の消費などのコストがかかり、しかも環境の悪化を招きやすく、後者の場合、埋立用地を確保しにくい等の問題がある。従って、廃棄物処理量が少なくなれば、それだけ有利であり、廃棄物の減量が求められているところである。
また、前記ミカン以外に、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、八朔、すだち、ざぼん、柚子、かぼすなどの柑橘類を用いて工場で果汁飲料や缶詰等の各種製品を製造することができるが、その際にも上記と同じ問題が生じる。すなわち、柑橘類を用いる各種製品の製造に際し、果皮、圧搾滓等の廃棄物の処理が大きな問題となる。また、柑橘類を一定の基準で選果する際に、基準から外れた不良品が廃棄物となり、この処理も大きな問題である。
従来からの柑橘類廃棄物の処理の研究手法として、物理化学的な手法、及び、生物学的な手法を挙げることができる。
前記物理化学的な手法の研究例としては、例えば、硫酸溶液に浸したミカン果皮を加圧・加熱して加水分解する技術があり、ミカン果皮の分解によって生じる単糖類や少糖類をアルコール発酵の原料に用いることが目標である(非特許文献1)。この技術は(1)硫酸を用いる点、(2)高圧および高熱をかける点、(3)加熱に伴うメイラード反応で繊維質の一部が変性する点、(4)反応後にアルカリで中和する必要がある点、(5)そのアルカリも劇毒物であり、取扱いに慎重を要する点、(6)事故発生時には、酸・アルカリの漏洩による環境汚染の懸念がある点等の、問題点があり、実用化までには多くの解決しなければならない課題が残されている。
また、柑橘類廃棄物を炭化させ、その炭化物からセメント用混和剤を得る技術が報告されている(特許文献1)。
例えば柑橘類の果皮、特にミカン果皮には各種セルロースと各種ペクチンが共存しており、ミカン果皮の分解は従来の技術を単に用いれば解決されるというような単純ものではなく、今までに実用的な技術に関する報告はない。
また、前記新規微生物を培養し、ついで培養した微生物を用いて柑橘類廃棄物を処理すると、柑橘類廃棄物を分解し、廃棄物の減量化に有効であることが判明した。さらに、その微生物の培養液からペクチナーゼ及び/又はセルラーゼを製造することができる。
この新規微生物を培養する条件は、用いる培地の種類や量などにより変動するので、一概に規定することができないが。例えば、20〜35
℃にて好気的な条件下、数日〜4週間程度とすることができる。
柑橘類廃棄物に本発明の新規微生物を適用する方法も特に制限されない。前記微生物の培養槽内に廃棄物を投入し、所定温度で攪拌処理する方法、あるいは廃棄物を収容した容器に前記微生物を適用し、所定温度、所定湿度に管理する方法などが挙げられるが、それらの方法に限定されない。ここで、所定温度は柑橘類廃棄物の内容や量、希望する減量の程度などにより変動するのであり、一概に規定することができないが、例えば、前記培養槽や容器の温度を20〜35℃とすることができる。また、所定湿度も同様であって、一概に規定することができないが、例えば、前記容器内の湿度を30〜70%とすることができる。
さらに、本発明では、新規微生物そのものを粗ペクチナーゼ及び/又はセルラーゼとしてもよい。
さらには、この微生物の培養物からペクチナーゼ及び/又はセルラーゼを製造することができる。特に、セルラーゼおよびペクチナーゼの両酵素は繊維質の分解に有効である。
(培地の調製)
本発明のYNB培地はN−源としての(NH4)2SO4の他、KH2PO4、MgSO4、NaCl、CaCl2、微量の金属、ごく微量のビタミンを含む。
ミカン果皮をジューサーにて破砕し、大きさが約2mmのミカン果皮破砕物を得た。その破砕物1gを前記YNB培地30mLに配合し、加熱滅菌し(MP−YNB培地)、本発明の微生物培地を調製した。
(微生物の選別)
箱に詰め込んだミカンの中から、ミカン同士の接触表面が一部茶色に変色して軟らかくなり、カビが肉眼上は確認できない腐熟ミカン果皮サンプル(5mm×5mm)を前記滅菌したMP−YNB培地10mLに懸濁し、その懸濁液100μLを30mLの前記滅菌したMP−YNB培地に接種し、150rpm、20℃で培養した。
上記培養液50μLを、1.5%の寒天で固形化したMP−YNB培地上に接種し、30℃で、数個のコロニーが精製するまでインキュベートした。
(微生物の培養)
寒天培地表面の一つのコロニーを加熱滅菌した生理的食塩水に懸濁し、そのうちの100μLを上記MP−YNB培地に接種し、150rpm、30℃で培養した。この培養物を下記試験例の試料とした。
(ミカン果皮分解能の測定)
果皮分解能はミカン果皮破砕物の乾燥重量の変化から調べた。すなわち、0.2〜4週間の培養液を、ろ紙にて(ミリポアー、孔の口径は10μm)ろ過し、果皮破砕物を集め、105℃で48時間、オーブンで乾燥後、重量を測定した。
測定結果を図1に示す。図1において、横軸は培養時間(単位は週)であり、縦軸はろ過残渣果皮量である。
2週間の培養で、ミカン果皮は約56%減量し、4週間の培養で約75%減量した。
(セルロース分解能の測定)
OP1の一つのコロニーを、5mmの大きさのろ紙100mgを含むYNB培地30mLに接種し、150rpm、30℃で培養した。
ろ紙の乾燥重量を測定し、セルロース分解能を調べた(Ghoseの方法によった)。
測定結果を図2に示す。図2において、横軸は培養時間(単位は週)であり、縦軸は残存ろ紙量である。
〔試験例3〕
(ペクチン分解能の測定)
OP1の一つのコロニーを、100mgのペクチンを含むYNB培地30mLに接種し、150rpm、30℃で培養した。
ペクチンの乾燥重量を測定し、ペクチン分解能を調べた(ドレーウッド アンソロン法によった)。
測定結果を図3に示す。
図3において、横軸は培養時間(単位は日)であり、縦軸は残存ペクチン量である。
図2、図3から、OP1はセルロース分解能とペクチン分解能とを有すること、及び、2週間及び4週間の培養日数で、セルロースの63%、77%が分解され、僅か4日の培養日数で93%のペクチンが分解したことが判明した。
本発明の微生物のrDNA塩基配列を次のような操作により解析し、上記の結果を加味し、本発明の微生物は新規微生物であることが判明した。
すなわち、本発明の微生物(OP1)の培養物1mLからの細胞ペレットをtrisEDTA緩衝液(1%tritonX−100)200μLに懸濁し、3分間沸騰後、氷冷した。引き続き、それぞれの懸濁液をクロロホルム/イソアミル(24/1)混合溶媒200μLと混合し、150rpm、30℃で、10分間遠心分離して、水相から粗DNAを得た。
このDNAをPCR法の鋳型として用い、28SrDNAのD1/D2領域のDNA、及びITS領域のDNAをPCR法にて増幅した。
すなわち、28SrDNAのD1/D2領域のDNAは、塩基配列が配列番号4のフォワードプライマーNL1を利用し、塩基配列が配列番号5のリバースプライマーNL4を利用して増幅した。ITS領域のDNAは、塩基配列が配列番号6のフォワードプライマーIT1を利用し、塩基配列が配列番号7のリバースプライマーIT4を利用して増幅した。
PCR条件は、94℃1分、55℃1分、72℃2分で30サイクルとした。
この方法で得た塩基配列を、BLASTアルゴリズムを用い(Altschul et.al.:J.Mol.Biol.215,403−410)、GenBank、EMBL,DDBJからから得た既知の微生物のrDNA塩基配列と比較して、既知の微生物とのDNA相同性の一致の程度を比較した。
近隣結合法として知られているClustal W プログラム(Saitou&Nei,1987;Mol.Biol.Evol.4,406−425、Thompson et al.1994;Nucleic Acids Res.22,4673−4680)を用いて,D1/D2領域のDNAに基づく系統樹を作成した。その系統樹を表1に示す。
Claims (3)
- セルラーゼ活性およびペクチナーゼ活性を同時に併せ持ち、寄託番号はNBRC101300である、ミカン果皮分解能を有するペニシリウム(Penicillium属)に属する微生物。
- 請求項1記載の微生物を用いて柑橘類廃棄物を分解することを特徴とする柑橘類廃棄物の減量方法。
- 請求項1記載の微生物の培養物からペクチナーゼ及び/又はセルラーゼを得ることを特徴とするペクチナーゼ及び/又はセルラーゼの製造方法。
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