JP4876243B2 - ペルフルオロアルキル基を有する芳香族化合物ゲル化剤 - Google Patents
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Description
リチウムイオン電池の電解質は一般には液体であるが、ポリマー電解質では、ゲル状あるいは固体も用いられる。いずれの電解質においても、次の特性が要求される。
1)高い伝導度(リチウムイオンの易動度が大きい)
2)電極材料に対して、大きな化学的および電気化学的安定性
3)使用可能な温度域が広い
4)高い安全性
5)低価格
電解質溶媒
高濃度のリチウム塩を含み、高い伝導度を得る溶媒には、比誘電率が大きく、粘度の小さい非プロトン性有機溶媒が適している。しかし、比誘電率が大きく、極性の強い溶媒の粘度は大きくなるので、実用の電解液では複数の溶媒の混合体となっている。例えば、誘電率64.4、粘度2.3cpのプロピレンカーボネート(PC)、あるいは誘電率95.3、粘度1.9cpのエチレンカーボネート(EC)と粘度0.59cpのヂメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒が知られている。これらの混合溶媒では、極大伝導度を示す組成があり、加える電解質塩の種類とともに、組成が詳細に研究されている。
電解質塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)の他、フッ素を含むLiPF6、LiAsF6、Li(CF3SO2)2N、LiBF3、LiCF3SO3などが用いられている。これらを溶解した有機溶媒電解液のイオン伝導度は約10−2 S/cmである。
有機ポリマーと液体電解質の混合物であるゲル電解質は、イオン伝導度が高く、固体電解質よりも早期の商品化が図られた経緯がある。ゲル電解質では、炭素系負極材料が用いられ、リチウムイオン二次電池、特に薄膜電池として応用されている。
従来、塗料、インク、潤滑油、農業、水産、化粧品、医薬品、繊維、樹脂、高分子、ゴム、金属等の加工分野の各種産業分野において、有機液体類(動植物油脂、エステル、ポリオール、エーテル、アルコール、炭化水素等)を固化するのに、低分子ゲル化剤もしくは高分子ゲル化剤が用いられてきた。高分子ゲル化剤は、ゲル電解質のゲル化剤として電池の技術分野でよく用いられている。
低分子量のゲル化剤はこれに比較して開発が遅いものの、12−ヒドロキシステアリン酸、ジアルキルウレア誘導体、ジベンジリデンソルビトール、等が知られている。
ペルフルオロアルキルアルカン:F(CF2)n(CH2)mHは、n=12、m=8〜20のものが、デカンをゲル化させること、n=10、m=12のものが、炭化水素溶媒をゲル化させること、が報告されている(非特許文献1)。
しかしながら、ゲル化できる有機液体の種類が多く、しかも、少量の添加でゲル化できる有機低分子ゲル化剤は、今まで知られていなかった。そして、有機電解液に適した高誘電率溶媒をゲル化する有機低分子ゲル化剤は知られていなかった。
Robert J.Twang,et al,"Observations of a"Gel"Phase in Binary Mixtures of Semifluorinated n−Alkanes with Hydrocarbon Liquids"Macromolecules 1985,18,1361−1362 Massimo Napoli,et al,"Synthesis of F(Ch2)8(Ch2)8H and gel phase formation from its solutions in homologous alcohols
本発明のゲル化剤は、有機液体をゲル化させるものである。本発明のゲル化剤は、次の化学式(1)で示される、ペルフルオロアルキル−ヒドロキシエチレン(オリゴメチレン)オキシ基と炭化水素オキシ基とを有する芳香族化合物からなる。
基CmF2m+1は、ペルフルオロアルキル基、mは、6〜12の自然数;
基(CH2)は、メチレン基、pはメチレン基の数で、1〜4の自然数;
基Arは、置換もしくは無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族基;
基Oは、酸素原子;
基OHは、水酸基;
基Rは、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基である)。
本発明のゲル化剤の製造方法は、下記化学式(2)の水酸基と炭化水素オキシ基を有する芳香族化合物を、下記化学式(3)のハロゲン化アルケンと、反応させ、その生成物に下記化学式(4)のヨウ素化ペルフルオロアルキルを反応させ、この生成物(化学式(5))のヨウ素を水酸基と置換させることからなる。
本発明のゲル化剤として使用する化合物は、ペルフルオロアルキル−ヒドロキシエチレン(オリゴメチレン)オキシ基と炭化水素オキシ基とを有する、芳香族化合物である。本発明のゲル化剤として使用する化合物は、下記化学式1で示される。
基CmF2m+1は、ペルフルオロアルキル基、mは、6〜12の自然数;
基(CH2)は、メチレン基、pはメチレン基の数で、1〜4の自然数;
基Arは、置換もしくは無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族基;
基Oは、酸素原子;
基OHは、水酸基;
基Rは、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基である)。
本発明の芳香族化合物の製造方法は、下記化学式2の水酸基と炭化水素オキシ基を有する芳香族化合物を、下記化学式3のハロゲン化アルケンと、反応させ、その生成物に下記化学式4のヨウ素化ペルフルオロアルキルを反応させ、反応式(5)の化合物を生成させる。
基CmF2m+1は、ペルフルオロアルキル基、mは6〜12の自然数;
基(CH2)は、メチレン基、pは1〜4、好ましくは1〜2の自然数
基Arは、置換もしくは無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族基;
基Oは、酸素原子;
基OHは、水酸基;
基Rは、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
である。)
本明細書において、芳香族基Arとは、いわゆる「芳香族性」を示す環式化合物の2価の基である。この環式化合物としては、炭素環式化合物でも、複素環式化合物でも良い。これらの環式化合物は、置換基により置換されていてもよく、置換されていなくても良い。(1)ペルフルオロアルキル(オリゴメチレン)チオ基の導入、及び、(2)炭化水素オキシ基の導入、にとって好ましくない置換基は、水酸基とチオール基を有する芳香族化合物(化学式(2))の置換基として好ましくない。
これらの中でも、芳香族基Arとして、フェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基が好ましい。
本明細書において、ペルフルオロアルキル基CmF2m+1、とは、炭素数mが6〜12のペルフルオロアルキル基である。炭素数mが5以下では、化学式(1)の化合物はゲル化能が小さい。炭素数mが13以上では、化学式(1)の化合物は、有機溶媒の種類によっては、加熱しても溶解しなくなる。
本発明の化合物において、オリゴメチレン基(CH2)pの炭素数は、1〜4である。オリゴメチレン基(CH2)pの炭素数が5以上になると、化学式(1)の化合物は、ゲル化能が小さくなる。
本明細書において、炭化水素基Rは、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。炭化水素基Rは、脂肪族炭化水素の場合、分岐していてもよく、分岐していなくてもよい。また、芳香族炭化水素を含む場合、該芳香族核に置換基が存在していてもよい。勿論ベンジル基などのアリールアルキル基等であってもよい。
本明細書において、ハロゲン化アルケンCH=CH−(CH2)p−Xのハロゲン原子Xとしては、化学式(2)(HO−Ar−OR)の水酸基OHに反応性であればよく、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素が使用できる。
本発明のゲル化剤は、ほとんどすべての有機液体を、5%程度以下の少量の添加でゲル化する。本発明のゲル化剤を有機溶媒に添加し、昇温して溶解し、生成した溶液を常温に戻すことによりゲル化する。本発明のゲル化剤は、有機電解液に適した高誘電率溶媒、例えば、プロピレンカーボネート、をゲル化できる。本発明のゲル化剤により高誘電率溶媒をゲル化して生成したゲルは、電解質ゲルとして使用できる。この電解質ゲルは、リチウムイオン電池に利用できる。そして、色素増感型太陽電池などのゲル電解質にも利用できる。本発明のゲル化剤、又は、これにより生成したゲルは、塗料、インク、潤滑油、農業、水産、化粧品、医薬品、繊維、樹脂、高分子、ゴム、金属等の加工分野を含む産業分野においても利用できる。
次の化学反応式(6)に従って、まず、化合物(A)を製造し、次いで、化合物(B)を製造し、そして、副生物の化合物(C)及び目的の化合物(D)を製造する。
4−ペンチルオキシフェノール3gの3‐ペンタノン溶液に1.0当量の4‐ブロモブテンと1.5当量の炭酸カリウムを加え、2日間環流した。反応溶液に析出する沈殿を濾別し、濾液の溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(A)を得た。(2g,40%)
油状物質
IR=823.5,1039.4,1230.4,1508.1,2931.3
1HNMR(270MHz,CDCl3)δ=0.92(3H,t,J=6.9Hz),1.33−1.46(4H,m),1.75(2H,quin,J=6.9Hz),2.51(2H,q,J=6.9Hz),3.89(2H,t,J=6.4Hz),3.96(2H,t,J=6.6Hz),5.07−5,19(2H,m),5.82−5.97(1H,m),6.82(4H,s)ppm.
化合物(B)の合成
化合物A(2.0g,8.77mmol)のアセトニトリル(8.5ml)、水(5.5ml)溶液に,ペルフルオロオクチルアイオダイド(4.8g,8.79mmol),炭酸水素ナトリウム(0.7g,8.69mmol),ハイドロサルファイトナトリウム(1.5g,8.79mmol)を加え,遮光し一晩撹拌した。反応終了後,酢酸エチルで薄め,水で二回,食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後,溶媒を減圧除去した。残渣をクロロホルム溶媒によるカラムクロマトグラフィーにより精製した。2.8g(41%)
IR(KBr)1149.4, 1203.4, 1234.2cm−1(C−F), 1511.9cm−1, 2933.2, 2958.3cm−1(C−H)
1HNMR(270MHz,CDCL3)δ=0.93(3H,t,J=6.9Hz), 1.26−1.48(4H,m),1.76(2H,quin,J=6.9Hz), 2.14−2.36(2H,m),2.84−3.06(2H,m),3.91(2H,t,J=6.6Hz), 4.00−4.16(2H,m), 4.56−4.66(1H,m), 6.84(4H,s)ppm
化合物(D)の合成)
化合物B(1.10g)を蒸留後数時間後のジエチルエーテル(20ml)溶液にLiAlH4(0.1g)を加え、一晩撹拌した。反応終了後,1N HClを加え,抽出した後,水で二回,食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後,溶媒を減圧除去し,クロロホルム溶媒によるカラムクロマトグラフィーにより,無色の固体(D)を得た。0.32g,mp=92℃
IR(KBr) 1147.4, 1203.4, 1238.1, 1511.9, 2937.1, 3415.3, 3438.5, 3469.3, 3498.2 cm−1
1HNMR (CDCL3) δ=0.93(3H,t,J=7.1Hz), 1.34−1.46(4H, m), 1.76(2H,quin,J=6.9Hz), 2.02(2H,m), 2.20−2.46(2H,m), 2.70(1H,d, J=3.3Hz), 3.90(2H,t,J=6.6Hz), 4.07−4.20(2H,m), 4.46(1H,m), 6.83(4H,s)ppm
化合物(1)の室温における最低ゲル化濃度(wt%)は、以下のとおりである。
プロピレンカーボネート(2.3)、 メタノール(3.6)、DMF(4.6)、1−オクタノール(14.0)、アセトニトリル(20.1)
上記化合物(D)のゲル化能
上記化合物(D)を、有機溶媒に添加し、昇温して溶解し、生成した溶液を常温に戻すことによりゲル化するかどうか観察することにより、ゲル化能を測定した。本実施例で試みた有機溶媒は、プロピレンカーボネート、メタノール、DMF、1−オクタノール、アセトニトリル、シクロヘキサン、オクタン、である。上記化合物(D)は、これらの有機溶媒を、ゲル化することができた。
化合物(D)の室温における最低ゲル化濃度(wt%)は、以下のとおりである。
Claims (6)
- 芳香族基Arが、フェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基である、請求項1に記載のゲル化剤
- 請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のゲル化剤で有機液体をゲル化してなるゲル。
- ゲルが電解質ゲルである、請求項5のゲル。
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