しかしながら、上記のパイロットシンボルにダミーキャリアを付加する方法は、DFT法によって発生する信号帯域内の歪みを軽減する優れた方法であるが、実際に通信に使用する帯域の他にダミーキャリア用の帯域が必要になるため、様々な問題が発生する。一つはダミーキャリアを含めた帯域をシステム帯域とした場合、実際に通信に使用できる帯域がダミーキャリア分減ってしまうということがある。逆に、データシンボルの帯域をシステム帯域とすると、パイロットシンボル送信時はダミーキャリアの分だけ使用帯域が増えてしまう。隣接チャネルとの間にガードバンドを配置してダミーキャリアの影響を軽減する方法もあるが、ダミーキャリアがあると帯域外輻射を防ぐためのフィルタへの負担が多くなる。これはダミーキャリアがある場合は、帯域外の規定周波数での減衰を満足するために周波数方向の減衰率を大きくする必要があるからである。
また、パイロット信号の送信時にダミーキャリアに使用する電力分余裕がある増幅器を用意する必要があるため、増幅器の電力効率が悪くなるという問題もある。これらの問題以外にも、OFDMA(OFDM/TDMA)システムや適応変調システムに従来方式を用いる場合、信号帯域中に送信しない未使用サブキャリアが発生することがあり、この場合受信側でDFT法を用いると未使用サブキャリアの両端に歪みが発生し、伝搬路推定精度を劣化させるという問題もある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い精度で伝搬路推定を行なうことができるパイロットシンボルを送信する無線送信方法、そのパイロットシンボルを受信して伝搬路を推定する伝搬路推定方法、無線送信機、無線受信機および無線通信システムを提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線送信方法は、OFDM通信方式で無線信号を送信する無線送信機の無線送信方法において、サブキャリアの振幅を調整し、通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に前記振幅を調整したサブキャリアを付加したパイロットシンボルを送信することを特徴としている。
このように、サブキャリアの振幅を調整し、通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加したサブキャリアを用いてパイロットシンボルを送信するので、受信時に前記通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加したサブキャリアの振幅を補正することで、通信に使用する帯域の両端に発生する歪みを低減することが可能となる。また、通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加するサブキャリアの振幅を調整するので、送信電力を少なく抑えることができると共に、帯域外輻射の量を小さく抑えることができる。
(2)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアを、通信に使用する周波数帯域の高周波数側または低周波数側の少なくとも一方に付加してパイロットシンボルを送信することを特徴としている。
この構成により、受信時に前記通信に使用する周波数帯域の高周波数側または低周波数側の少なくとも一方に付加されたサブキャリアの振幅を補正することで、付加した側の通信に使用する帯域端に発生する歪みを低減することが可能となる。
(3)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアを付加する場合、前記通信に使用する周波数帯域内のサブキャリアの送信電力を変化させることを特徴としている。
この構成により、通信に使用する周波数帯域内のサブキャリアの送信電力を変化させるので、振幅を調整したサブキャリアを付加するために必要なパイロットシンボルの送信電力を少なくすることが可能となる。
(4)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアを付加する場合、送信電力が、前記振幅を調整したサブキャリアを付加しない場合の送信電力と同一となるように、前記通信に使用する周波数帯域内のサブキャリアの送信電力を変化させることを特徴としている。
この構成により、振幅を調整したサブキャリアを付加する場合と付加しない場合とでパイロットシンボルの送信電力を一定に保持することが可能となるので、送信時の電力効率を低下させないことが可能となる。
(5)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアを付加する場合、前記通信に使用する周波数帯域内のサブキャリアの単位周波数あたりの本数と、前記振幅を調整したサブキャリアの単位周波数あたりの本数とが異なることを特徴としている。
この構成により、通信に使用する周波数帯域外のサブキャリアに割り当てる送信電力を変化させることができる。例えば、振幅を調整したサブキャリアの単位周波数あたりの本数を減らす場合は、通信に使用する周波数帯域外で送信電力を減らすことができるので、増幅器の電力効率を向上させることが可能となる。
(6)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアの単位周波数あたりの本数は、前記通信に使用する周波数帯域内のサブキャリアの単位周波数あたりの本数よりも少ないことを特徴としている。
この構成により、通信に使用する周波数帯域外で送信電力を減らすことができるので、増幅器の電力効率を向上させることが可能となる。
(7)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアを付加する場合、前記通信に使用する周波数帯域から遠いほど前記サブキャリアの振幅を小さくすることを特徴としている。
この構成により、通信に使用する帯域への影響を抑えつつ、振幅を調整したサブキャリアに割り当てる電力を更に低減させることが可能となる。
(8)また、本発明の無線送信方法は、OFDM通信方式で無線信号を送信する無線送信機の無線送信方法において、通信に使用する周波数帯域中の少なくとも一つのサブキャリアに振幅を調整したサブキャリアを割り当てたパイロットシンボルを送信することを特徴としている。
この構成により、送信電力を減らしつつ、受信時に振幅を調整したサブキャリアの補正を行うことで発生する歪みを低減することが可能となる。
(9)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアを、通信データが割り当てられていないサブキャリアに割り当てることを特徴としている。
この構成により、データ送信に寄与しない送信電力を減らしつつ、受信時に振幅を調整したサブキャリアの補正を行うことで発生する歪みを低減することが可能となる。
(10)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアを割り当てるサブキャリアは、適応変調を行なった結果、送信信号中の送信電力がゼロであるサブキャリアであることを特徴としている。
この構成により、送信電力がゼロであるサブキャリアの両端における歪みの低減が可能となる。また、振幅を調整しないダミーキャリアを挿入する場合に比べ、振幅を調整した分の送信電力効率が向上し、与干渉を低減させることが可能となる。
(11)また、本発明の無線送信方法は、OFDMA通信方式で無線信号を送信する際に、通信データが割り当てられていないサブチャネルがある場合、前記通信データが割り当てられていないサブチャネルに割り当てられているサブキャリアの少なくとも一つに前記振幅を調整したサブキャリアを割り当てることを特徴としている。
この構成により、通信データが割り当てられていないサブチャネルの両端における歪みを低減することが可能となる。また、振幅を調整しないダミーキャリアを挿入する場合に比べ、振幅を調整した分の送信電力効率が向上し、与干渉を低減させることが可能となる。
(12)また、本発明の無線送信方法は、前記通信データが割り当てられていないサブチャネルの少なくとも一方の隣接サブチャネルにデータが割り当てられている場合、前記通信データが割り当てられていないサブチャネルに割り当てられているサブキャリアの少なくとも一つに前記振幅調整したサブキャリアを割り当てることを特徴としている。
この構成により、伝搬路推定精度の向上に寄与しないサブキャリアに前記振幅を調整しないダミーキャリアを挿入する場合と比べ、振幅を調整した分の送信電力効率が向上し、与干渉を低減させることが可能となる。
(13)また、本発明の無線送信方法は、前記振幅を調整したサブキャリアを割り当てるサブキャリアが、DCキャリアであることを特徴としている。
この構成により、受信時に補正することでDCキャリアの両端における歪みの発生を低減することが可能となり、また、振幅を調整しないダミーキャリアを挿入する場合に比べ、振幅を調整した分の送信電力効率が向上し、与干渉を低減させることが可能となる。
(14)また、本発明の無線送信方法は、送信先の受信機が、前記サブキャリアの振幅を調整し、前記通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加したサブキャリアを用いて送信されたパイロットシンボルに基づいて、伝搬路推定が可能であるかどうかを認識し、前記送信先の受信機が、前記パイロットシンボルに基づいて、伝搬路推定が可能である場合、前記振幅を調整したサブキャリアを用いたパイロットシンボルを送信することを特徴としている。
この構成により、送信電力効率を高めつつ、受信時に前記振幅を調整したサブキャリアを補正することで伝搬路推定時に発生する歪みを低減させることが可能となる。
(15)また、本発明の無線送信方法は、送信先の受信機から送信された通信品質情報を受信し、前記受信した通信品質情報と基準値とを比較し、前記比較の結果、前記通信品質情報が基準値よりも良い場合、前記振幅を調整したサブキャリアを用いたパイロットシンボルを送信することを特徴としている。
伝搬路推定時に発生する歪みは、通信品質の高い環境下でのみ問題となる。従ってこの構成により、通信品質が低い場合は、振幅を調整したサブキャリアを付加しないようにすることによって、送信に必要な電力を下げることが可能となる。
(16)また、本発明の無線送信方法において、前記通信品質情報は、SNRまたはSINRであることを特徴としている。
これにより、信号成分とそれ以外の成分との比を把握することができるため、通信品質を判断することが可能となる。
(17)また、本発明の伝搬路推定方法は、OFDM通信方式で送信された無線信号を受信する無線受信機の伝搬路推定方法において、通信に使用される周波数帯域内のサブキャリア、および振幅が調整され、前記通信に使用される周波数帯域以外の周波数帯域に付加されたサブキャリアを用いて送信されたパイロットシンボルを受信し、前記受信したパイロットシンボルについて離散フーリエ変換を行ない、前記離散フーリエ変換された信号について送信時に使用された符号で複素除算を行ない、前記複素除算後の信号について、前記付加されたサブキャリアの振幅を補正し、前記振幅補正後の信号について逆離散フーリエ変換を行ない、前記逆離散フーリエ変換後の信号において所定の時間領域を減衰、または削除する時間フィルタ処理を行ない、前記時間フィルタ後の信号について離散フーリエ変換を行なって周波数応答を得ることを特徴としている。
この構成により、通信に使用される周波数帯域以外の周波数帯域に振幅調整していないサブキャリアを付加する場合と同等の伝搬路推定精度を確保することが可能となる。また、送信時に通信に使用される周波数帯域以外の周波数帯域に付加されたサブキャリアの振幅を調整するため、信号帯域外への漏洩電力も少なく抑えることが可能となる。
(18)また、本発明の伝搬路推定方法は、前記サブキャリアの振幅補正時に、前記複素除算後の信号について、更に通信に使用される周波数帯域内のサブキャリアの振幅を独立に補正することを特徴としている。
この構成により、振幅を調整したサブキャリアを付加する場合と付加しない場合とでパイロットシンボルの送信電力を一定に保持するために、通信に使用される周波数帯域内のサブキャリアの振幅が調整されている場合も、振幅の補正を適切に行なうことが可能となる。
(19)また、本発明の伝搬路推定方法は、前記受信したパイロットシンボルについて、前記通信に使用される周波数帯域内のサブキャリアの単位周波数あたりの本数と、前記振幅が調整されたサブキャリアの単位周波数あたりの本数とが異なる場合、前記振幅が調整されたサブキャリアの単位周波数あたりの本数を変化させることを特徴としている。
この構成により、送信側において、通信に使用する周波数帯域外のサブキャリアに割り当てる送信電力を変化させることができる。例えば、振幅を調整したサブキャリアの単位周波数あたりの本数を減らす場合は、通信に使用する周波数帯域外で送信電力を減らすことができるので、増幅器の電力効率を向上させることが可能となる。
(20)また、本発明の伝搬路推定方法は、前記サブキャリアの振幅補正時に、前記振幅が調整されたサブキャリアの単位周波数あたりの本数を、前記通信に使用される周波数帯域内のサブキャリアの単位周波数あたりの本数と等しくすることを特徴としている。
この構成により、送信側において、通信に使用する周波数帯域外で送信電力を減らすことができると共に、受信側において、振幅が調整されたサブキャリアの単位周波数あたりの本数を通信に使用する周波数帯域と同様にし、伝搬路推定時の歪みの低減させることが可能となる。
(21)また、本発明の伝搬路推定方法は、前記サブキャリアの振幅補正時に、受信機の周波数特性に基づいて、振幅の補正を行なうことを特徴としている。
この構成により、受信機の周波数特性のためにFFT部に入力される信号の周波数特性が一定でない場合であっても、周波数特性に合わせた振幅補正を行なうことにより、振幅が調整されたサブキャリアの帯域の補正を適切に行なって、伝搬路推定精度を向上させることが可能となる。
(22)また、本発明の伝搬路推定方法は、OFDM通信方式の無線信号を受信する無線受信機の伝搬路推定方法において、通信に使用する周波数帯域中の少なくとも一つのサブキャリアに振幅が調整されたサブキャリアが割り当てられたパイロットシンボルを受信し、前記受信したパイロットシンボルについて離散フーリエ変換を行ない、前記離散フーリエ変換後の信号を送信時に使用した符号で複素除算し、前記複素除算後の信号について、前記振幅が調整されたサブキャリアの振幅を補正し、前記サブキャリアの振幅を補正後の信号について逆離散フーリエ変換し、前記逆離散フーリエ変換後の信号について、所定の時間領域を減衰、または削除する時間フィルタ処理を行ない、前記時間フィルタ処理後の信号を離散フーリエ変換することで伝搬路の周波数応答を得ることを特徴としている。
この構成により、通信に使用する周波数帯域に振幅調整していないサブキャリアを付加する場合と同等の伝搬路推定精度を確保することが可能となる。また、サブキャリアの振幅を調整するため、与干渉も少なく抑えることが可能となる。
(23)また、本発明の伝搬路推定方法において、前記パイロットシンボル中の振幅が調整されたサブキャリアは、適応変調が行なわれた結果、送信信号中の送信電力がゼロであるサブキャリアであることを特徴としている。
この構成により、適応変調の結果送信電力がゼロであるサブキャリアの両端における歪みを低減し、伝搬路推定精度を向上させることが可能となる。
(24)また、本発明の伝搬路推定方法において、OFDMA信号の信号を受信し、前記パイロットシンボル中の振幅が調整されたサブキャリアは、OFDMAで通信データが割り当てられていないサブチャネルに割り当てられているサブキャリアの少なくとも一つであることを特徴としている。
この構成により、OFDMAで通信データが割り当てられていないサブチャネルの両端で発生する歪みを低減し、伝搬路推定精度を向上させることが可能となる。
(25)また、本発明の伝搬路推定方法において、前記パイロットシンボル中の振幅が調整されたサブキャリアがDCキャリアであることを特徴としている。
この構成により、受信時に補正することでDCキャリアの両端における歪みの発生を低減することが可能となり、また、振幅を調整しないダミーキャリアを挿入する場合に比べ、振幅を調整した分の送信電力効率が向上し、与干渉を低減させることが可能となる。
(26)また、本発明の無線送信機は、OFDM通信方式で無線信号を送信する無線送信機であって、パイロットシンボル用の符号を生成するパイロット符号生成部と、サブキャリアの振幅を調整する利得調整部と、を備え、通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に前記振幅を調整したサブキャリアを付加したパイロットシンボルを送信することを特徴としている。
このように、サブキャリアの振幅を調整し、通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加したサブキャリアを用いてパイロットシンボルを送信するので、受信時に前記通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加したサブキャリアの振幅を補正することで、通信に使用する帯域の両端に発生する歪みを低減することが可能となる。また、通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加するサブキャリアの振幅を調整するので、送信電力を少なく抑えることができると共に、帯域外輻射の量を小さく抑えることができる。
(27)また、本発明の無線受信機は、OFDM通信方式の無線信号を受信する無線受信機であって、通信に使用する周波数帯域中の少なくとも一つのサブキャリアに振幅が調整されたサブキャリアが割り当てられたパイロットシンボルを受信する受信部と、前記受信したパイロットシンボルに離散フーリエ変換を行なう第1の離散フーリエ変換部と、前記離散フーリエ変換後の信号を送信時に使用した符号で複素除算する除算部と、前記複素除算後の信号について、前記振幅が調整されたサブキャリアの振幅を補正する利得補正部と、前記サブキャリアの振幅を補正後の信号について逆離散フーリエ変換する逆離散フーリエ変換部と、前記逆離散フーリエ変換後の信号について、所定の時間領域を減衰、または削除する時間フィルタ部と、前記時間フィルタ部の出力信号を離散フーリエ変換することで伝搬路の周波数応答を得る第2の離散フーリエ変換部と、を備えることを特徴としている。
この構成により、通信に使用する周波数帯域に振幅調整していないサブキャリアを付加する場合と同等の伝搬路推定精度を確保することが可能となる。また、サブキャリアの振幅を調整するため、信号帯域外への漏洩電力も少なく抑えることが可能となる。
(28)また、本発明の無線受信機は、前前記振幅が調整され、前記通信に使用される周波数帯域以外の周波数帯域に付加されたサブキャリアを用いて送信されたパイロットシンボルに基づいて、伝搬路推定が可能であるかどうかを送信側装置に通知する送信部をさらに備えることを特徴としている。
この構成により、送信装置に送信電力効率を高めつつ、伝搬路推定時に発生する歪みを低減することが可能なパイロットシンボルを送信させることが可能となる。
(29)また、本発明の無線受信機は、無線送信機から受信した無線信号の通信品質を測定する測定部と、前記測定した無線信号の通信品質を示す通信品質情報を前記無線送信機へ送信する送信部と、を備えることを特徴としている。
この構成により、送信装置が振幅を調整したサブキャリアを付加したパイロットの送信制御を行ない、送信に必要な電力を適宜下げることが可能となる。すなわち、送信電力がゼロであるサブキャリアの端部に発生する歪みは、通信品質の高い環境下でのみ問題となる。従って、通信品質が低い場合は、振幅を調整したサブキャリアを付加する必要がない。これを判断することによって、送信に必要な電力を下げることが可能となる。
(30)また、本発明の無線通信システムは、請求項26記載の無線送信機と、請求項27から請求項29のいずれかに記載の無線受信機と、から構成されることを特徴としている。
この構成により、通信に使用する周波数帯域内のサブキャリア、および振幅を調整し、前記通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加したサブキャリアを用いてパイロットシンボルを送信するので、使用しないサブキャリアの両端に歪みが発生するという問題を解決することが可能となる。また、通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加するサブキャリアの振幅を調整するので、送信電力を少なく抑えることができると共に、帯域外輻射の量を小さく抑えることができる。
本発明によれば、通信に使用する周波数帯域内のサブキャリア、および振幅を調整し、前記通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加したサブキャリアを用いてパイロットシンボルを送信するので、使用しないサブキャリアの両端に歪みが発生するという問題を解決することが可能となる。また、通信に使用する周波数帯域以外の周波数帯域に付加するサブキャリアの振幅を調整するので、送信電力を少なく抑えることができると共に、帯域外輻射の量を小さく抑えることができる。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず、以下の実施形態で使用する通信用のフレーム構造について説明する。ここでは、説明を容易にするために、固定長フレームを使用するが、本発明は固定長フレームのみに適用されるものではなく、可変長フレーム、または可変長の非同期パケット通信にも適用可能である。本実施形態で使用するフレームは、時間、周波数方向に固定長でフレームが繰り返し送信されることで通信が行なわれる。フレームは、OFDMシンボル群で構成される。フレーム先頭に同期用シンボルが配置され、続いて伝搬路推定用のパイロットシンボルが配置され、更に続いてデータシンボルが配置される。この構造の概略を、図1(a)に示す。
図1(a)に示すように、201がフレーム全体を表し、このフレーム201が繰り返し送信されることを示している。フレーム201の先頭には、同期用シンボル202が配置される。この同期用シンボルは、受信時にフレーム先頭であることを識別するために使用される。多くの場合、時間軸方向に特徴がある信号が使用される。OFDM信号以外の信号でも使用可能であるため、詳細は省略する。OFDM信号を使用する場合の一例として、時間軸上で同じ信号が繰り返されるように、1サブキャリア毎にヌルキャリアを挿入した信号が使われることがある。
続いてパイロットシンボル203が配置される。更に続いてデータシンボル群204が配置される。本発明は、データシンボル群の内容とは関係ないためデータシンボル群の内容の詳細は触れない。一般的にはそのフレームや後続のフレーム内の構造を示すための制御データや実際に通信に使用するデータが含まれる。
次に、1フレーム内の詳細な内容を図1(b)に示す。フレーム201内の各OFDMシンボルにはガードインターバル205が付加される。ガードインターバルは、遅延波の影響を吸収するために付加するもので、本発明とは直接の関係は無い。一例としてOFDMシンボルの一部をサイクリックプリフィックスとして付加する方法を使用する。
なお、以下の実施形態ではOFDMをベースにした無線通信システムを前提に説明を行う。各実施形態は、OFDMシステムの通信機で通常使用されるIDFT、DFTを用いて送信信号の生成、受信を行うシステム、例えばDFT−spread−OFDMのようなシングルキャリア通信システムなどにも適用可能である。
(第1の実施形態)
本実施形態は、パイロットシンボルに対し通信で使用する周波数帯域の両端に付加するダミーサブキャリアの電力を低減する送信機と、電力が低減されたダミーキャリアが付加されたパイロットシンボルを利用して伝搬路推定精度を向上させる受信機の一例について説明するものである。通信で使用する周波数帯域はデータシンボル中にデータによって変調されたキャリアが配置される帯域のことである。図2は、送信機の概略構成を示すブロック図である。パイロット符号生成部101は、パイロット信号用の符号を生成する。利得調整部102は、後述する制御部110の指示に従ってパイロット符号の振幅を変化させる。入力切替部103は、IFFT部106への入力を、制御部110からの指示で同期用符号生成部104の出力と利得調整部102の出力と変調部105の出力のいずれかに切り替える。
同期用符号生成部104は、フレーム同期用符号を生成する。変調部105は、制御部110からの指示で送信データを変調する。IFFT部106は、入力切替部103の出力に対してIFFT(逆高速フーリエ変換)を行なう。G/I(ガードインターバル)付加部107は、IFFT部106出力の一部をサイクリックプリフィックスとして付加する。D/A変換部108は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。無線送信部108は、入力された信号をベースバンド信号として送信に必要な周波数に変換し、必要な電力まで増幅した後にアンテナから送信する。制御部110は、フレーム送出タイミングと送信制御データにより送信機の各ブロックを制御する。
図3は、受信機の概略構成を示すブロック図である。無線受信部121は、アンテナで電波を受信し、必要な帯域を取り出してベースバンド信号に変換する。A/D変換部122は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。同期・G/I除去部123は、入力された信号からフレーム同期用シンボルを検出し、以降の信号からガードインターバルを取り除いたOFDMシンボルを切り出す。第1FFT部124は、入力されたOFDMシンボルに対して、FFT(高速フーリエ変換)を行なう。
切り替え部125は、入力信号を複素除算部126と伝搬路補正部132のどちらかに出力する。複素除算部126は、入力信号を送信時に使用したパイロットシンボル用符号で複素除算する。利得補正部127は、制御部134からの指示で指定されたサブキャリアの信号の振幅を変化させる。IFFT部128は、入力信号に対してIFFT(逆高速フーリエ変換)を行なう。時間フィルタ部129は、入力された時間軸信号の所定の時間領域の電力を低減・削除する。
第2FFT部130は、入力信号に対して、FFTを行なう。ダミーキャリア削除部131は、制御部134から指示されたサブキャリアのデータを0にする。伝搬路補正部132は、切り替え部125から入力されたデータシンボルについて、ダミーキャリア削除部131から出力される伝搬路情報に従って補正する。復調部133は、制御部134から指示された変調方式で入力データの復調を行なう。制御部134は、同期・G/I除去部123から出力されるフレーム同期タイミングを基準に各ブロックの制御を行なう。
次に、以上のように構成された送信機および受信機の動作について説明する。まず、図4(a)は、本実施形態のデータシンボルを構成するサブキャリアが配置される周波数の概要を示す図である。図4(a)において、301がデータシンボルを構成するサブキャリアが配置される周波数帯域であり、302がFFT/IFFT処理が行なわれる帯域である。本実施形態では、データシンボルを構成するサブキャリアが配置される帯域301の両端に、電力低減されたダミーサブキャリア303を配置したパイロットシンボルを送信する。このパイロットシンボルのスペクトルの概略を図4(b)に示す。
図4(b)に示すスペクトルのパイロットシンボルを、どのように送信するかを各ブロックの動作と共に説明する。図2に示す送信機において、まず、パイロットシンボルの送信に先立って、先に説明したフレーム先頭の同期用シンボルを送信するために、制御部110は、入力切替部103の入力先を同期用符号生成部104に切り替える。これにより、同期用符号がIFFT部106に入力される。同期用符号は、IFFTにより時間軸信号に変換され、G/I付加部107に入力される。G/I付加部107では、時間軸信号に変換された同期用符号の一部をガードインターバルとして付加し、D/A部108にてアナログ信号に変換され、無線送信部108で送信に必要な周波数に変換し、増幅されて送信される。
次に、制御部110は、入力切替部103からIFFT部106に同期用符号が出力された直後に、入力先を利得調整部102に切り替える。同時に利得調整部102を設定し、利得調整部102に入力されたパイロット符号の振幅を基準として、各サブキャリアの振幅を調整する。この利得の設定の一例として、本実施形態では、図4(b)に示したデータシンボルが配置される帯域301は0dB、ダミーキャリアを配置する帯域303は−3dB、それ以外の帯域304は−∞dB、つまり信号を削除するように設定する。また、利得調整部102の入力には、パイロット符号生成部101から出力されるパイロットシンボル用の符号が、IFFT処理ポイント分入力される。
利得調整部102で振幅調整を受けると、図4(b)に示したスペクトルの信号となる。振幅調整を受けた信号は、以下同期用シンボルの場合と同じようにIFFT部106、G/I付加部107、D/A部108、無線送信部108を経てパイロットシンボルとして送信される。
制御部110は、入力切替部103からIFFT部106に振幅調整を受けたパイロット符号が入力されると、入力を変調部105に切り替え、変調部を送信制御データに従って設定し、次のフレーム開始時までデータの送信を行なう。次のフレーム開始時間が来ると、入力切替部103の入力先を同期用符号生成部104に切り替え、以上の手順を繰り返す。これにより図1に示したフレーム構成で、図4(b)に示したスペクトルのパイロットシンボルを使用した信号の送信が可能となる。
これに対し、従来の技術でダミーキャリアを付加したパイロットシンボルのスペクトルを図4(c)に示す。305が従来の技術で付加したダミーキャリアである。これを見ると分かるように、本実施形態でダミーキャリアを付加した時に必要な送信電力は、従来方式よりも少なくなると共に、無線送信部で必要な電力も従来方式よりも少なくなる。そして、帯域外輻射の量も少なくなる。本実施形態では、ダミーキャリア部分の減衰量を−3dBとしたが、SNR(Signal to Noise Ratio)が大きい環境ではこの減衰量をもっと大きな値、例えば−10dBなどに設定可能である。この場合、更に必要な送信電力、並びに帯域外輻射の量も少なくすることが可能となる。
次に、受信機の動作について説明する。図3に示す受信機において、まず、無線受信部121で信号を受信してベースバンド信号に変換する。続いてA/D部122でデジタル信号に変換し、同期・G/I除去部123で入力信号中のフレーム同期シンボルの検出を行ない、フレーム開始タイミングを制御部134に入力する。その後、後続の受信信号からG/Iを取り除いたOFDMシンボルの切り出しを行ない、FFT部124に入力する。フレーム同期シンボルの同期の検出方法はどのような方法でも良い。一例として受信信号とフレーム同期シンボルの送信時の時間波形との相関を調べ、最も相関が大きくなったところをフレーム先頭とする方法が使用可能である。同期・G/I除去部123でG/Iを除去されたOFDMシンボルは、FFT部124で周波数軸信号に変換され、切り替え部125に入力される。
同期・G/I除去部123からフレーム開始タイミングを通知された制御部134は、切り替え部125の出力を複素除算部126側に切り替え、複素除算部126に受信したパイロットシンボルを入力する。その後、後続のデータシンボルのために、切り替え部125の出力を伝搬路補正部132に変更する。複素除算部126に入力された信号はパイロットシンボルの送信時に使用された符号で複素除算され、利得補正部127に入力される。利得補正部127は、制御部134からの指示でダミーサブキャリアに対し送信時に行なった振幅調整と逆の補正を行なうように設定される。本実施形態の場合は3dBの利得調整が行なわれる。なお、複素除算処理と振幅調整処理は各サブキャリアに対して線形処理をしているだけなので、順序を入れ替えても同じように動作する。
ここで、この補正の概略について説明する。図4(d)は、受信したパイロットシンボルを複素除算して得た周波数応答の一例を示す図である。307が信号帯域内の周波数応答で、その両端に電力低減されたダミーキャリアによる周波数応答306が配置される。この状態では、信号帯域とダミーサブキャリアの帯域でパイロットキャリアの大きさが異なるため、信号帯域とダミーサブキャリアの間に振幅差308が発生する。この振幅差はダミーサブキャリアが無い場合に比べて小さくなるため、このままDFT法を適用しても帯域端に発生する歪みも振幅差と比例して小さくなる。しかし、ダミーサブキャリアの振幅補正を行なうと、この振幅差を殆ど無くすことができるため、帯域端の歪みはもっと小さくなる。
図4(e)は、ダミーサブキャリアを+3dBしたときの周波数応答の一例を示す図である。309が振幅補正を行なったダミーサブキャリア部分の周波数応答である。この状態は、図4(c)に示した振幅補正を行なわないパイロット信号を使用した場合と殆ど同じで、異なるのはダミーサブキャリア部分のノイズ成分が補正分増えていることだけである。ダミーサブキャリアの部分の雑音成分は、DFT法の処理により信号帯域側に漏れることとなるが、SNRの小さいところでは問題が無い量であることと、SNRの大きい所ではそもそも発生するノイズが殆ど無いことから、振幅補正を行なっていないダミーサブキャリアを使用しているときと同等の歪みを減らすことが可能となる。
送信時にダミーキャリアを用いずに受信時に信号帯域内の情報から帯域外の信号を推定して外挿すればDFT法によって発生する歪みを軽減できるが、信号帯域内の情報から正確に帯域外の信号を推定することは難しい。また、正確に推定できなかった場合はその帯域外の信号の推定誤差によりDFT法を適用した時に帯域内に新たな歪みが発生し、伝搬路の推定精度を劣化させてしまう。一方、送信時にダミーキャリアを付加した場合は、帯域外の伝搬路情報を誤差なく得られるため帯域内に新たな歪みを発生させることは無い。
利得補正部127でダミーサブキャリアの補正が行なわれた信号は、IFFT部128でIFFTを行なうことによって時間軸信号に変換され、その後、時間フィルタ部129で有効な信号以外を削除し、第2FFT部でFFTすることで再び周波数軸の信号に変換する。その後、ダミーキャリア削除部131で制御部134から指示されたダミーサブキャリア部分の振幅を0にして信号帯域について雑音成分を取り除いた周波数応答が得られる。周波数応答が得られた後は、伝搬路補正部132において、切り替え部125から出力されるデータシンボルをダミーキャリア削除部131から出力される周波数応答を利用して周波数等化を行ない、続いて復調部133で制御部134から指示された変調情報により復調動作を行ない、受信データを得ることができる。
以上のように、送信機側で電力低減されたダミーサブキャリアを付加したパイロットシンボルを送信して送信時の電力効率を高め、受信機側でダミーサブキャリアを補正してからDFT法を適用することによって、電力低減をしないダミーサブキャリアを使用したシステムと同等の伝搬路推定精度を確保することが可能となる。また、ダミーキャリア部分の送信電力が少なくて済むため、信号帯域以外への漏洩電力も少なくなる。
本実施形態では、付加したダミーキャリアの分だけパイロットシンボルの送信電力が増える実施方法を説明したが、ダミーキャリアを付加していない時と付加している時のパイロットシンボルの送信電力が変わらないように制御する方法も適用可能である。この時は、振幅補正したダミーキャリアの送信に使用する電力分、信号帯域内のパイロットサブキャリアの送信電力を減らせば良い。信号帯域内のパイロットサブキャリアの送信電力を減らす方法は様々な方法が可能で、一例は信号帯域内の全パイロットサブキャリアの振幅を一律に減らして送信電力を減らす方法が使用できる。図2で示した送信機を使用してこの方法を実施する場合は、制御部110が利得調整部102を設定して信号帯域内についても振幅が減衰するように設定すれば良い。
受信機側でこのパイロットシンボルを使用する時はダミーキャリアを含めて送信側でパイロットシンボルに対して行なった振幅調整を補正してからDFT法を行なうようにすれば良い。図3に示した受信機をする場合は、利得補正部127を設定して送信時に行なわれた振幅調整時の利得の逆補正を行なえば良く、それ以外のブロックは前に説明したように動作すれば良い。ダミーキャリアを付加していない時と付加している時のパイロットシンボルの送信電力が変わらないように振幅調整を行った場合は、信号帯域内のパイロットサブキャリアについても振幅補正を行う。この時、信号帯域内のパイロットサブキャリアと信号帯域外のダミーキャリアの補正量は独立して制御される。
このように受信機で振幅を補正した場合、パイロットシンボルの信号帯域内のSNRがダミーサブキャリアに使用した分悪くなるが、ダミーサブキャリアは振幅調整をしていて使用する電力は多くないことと、信号帯域内のサブキャリア数が十分にあればダミーサブキャリアに使用する電力は相対的にほぼ無視できる電力であることから、パイロットシンボルの電力が変わらないようにダミーキャリアを付加する方法を使用しても問題ない。
なお、このパイロットシンボルの電力が変わらないようにダミーキャリアを付加する方法を使用する場合は、付加するダミーキャリアの電力を小さくすると信号帯域内のパイロットサブキャリアの電力低下を少なくすることが可能となる。
また、本実施形態では、パイロットシンボルの信号帯域内の全てのサブキャリアにパイロットサブキャリアが連続して配置されている場合について説明したが、本発明はスキャッタードパイロットと呼ばれる不連続にパイロットキャリアが配置されている場合にDFT法による伝搬路推定を行なう場合にも適用可能である。図5(a)は、スキャッタードパイロットを利用したパイロットシンボルの一例を示す図である。ここでは、1サブキャリア毎にパイロットキャリア、ヌルキャリアとなる一例について説明する。1201が信号帯域、1202がDFT/IDFT処理帯域、1203がパイロットキャリア、1204がヌルキャリアを示している。このようなパイロットシンボルを送信して、ある伝搬路を通じて受信された信号を送信時に使用した符号で複素除算し、IDFTすると、インパルス応答が得られる。図5(b)は、このインパルス応答を示す図である。
図5(b)の1205、1206に示すように、OFDMシンボル期間内に同じインパルス応答が2つ現れる。このインパルス応答のうちの一つ1205を時間フィルタによって取り出し、DFTを施すと、信号帯域内の周波数応答を求めることが可能となる。この処理は、先に述べたDFT法そのものである。この時、図5(a)に示したように、パイロットシンボルが使用する信号帯域1201が、DFT/IDFT処理帯域1202の一部のみになる場合は、先に説明したように信号帯域1201両端に歪みが発生する。
この歪みを軽減させるために、信号帯域の両端にダミーサブキャリアを挿入する。図5(c)は、ダミーサブキャリアを挿入したパイロットシンボルのスペクトラム概要を示す図である。信号帯域1201の両端の帯域1207に、振幅調整をしたダミーサブキャリア1208が挿入されている。このダミーサブキャリア1208は、信号帯域1201内のパイロットサブキャリアの挿入間隔と同じ間隔で挿入する必要がある。
図5(c)に示したパイロットシンボルを使用し、伝搬路推定を行なう際は、受信時にダミーサブキャリア1208の振幅を送信側が低減した分増幅してからDFT法を行なえば良い。このスキャッタードパイロットを使用した場合でも、図2に示した構成の送信機、図3に示した構成の受信機が使用可能である。送信時は、利得調整部102を適当に設定することによって、電力低減されたダミーサブキャリアを付加したスキャッタードパイロットを使用したパイロットシンボルを生成することが可能となる。受信時は、利得補正部127を設定してヌルキャリアに設定されたポイントのデータを削除してダミーサブキャリアのポイントを増幅する。その後、時間フィルタ部129で2つ現れるインパルス応答の片側を取り出してFFT部130でFFTを行ない、ダミーキャリア削除部131で帯域外の信号を削除すれば良い。
スキャッタードパイロットは、MIMO(Multi Input Multi Output)システムにおいてパイロットシンボルを多重する際にも使用されるが、その場合も本発明を同様に使用することが可能である。
(第2の実施形態)
本実施形態では、本発明をOFDMAシステムに適用する一例について説明する。OFDMAシステムは、OFDM/FDMAシステムとも言われ、OFDMのサブキャリア群を分割して使用する方法である。本実施形態では、分割したサブキャリア群のそれぞれをサブチャネルと呼ぶ。図6(a)は、サブチャネルの配置の一例を示す図である。ここでは、信号帯域401を9つのサブチャネル402に分割した場合を示しており、サブチャネル1〜サブチャネル9をSCH1〜SCH9で表している。このサブチャネルを複数の通信相手に割り当てて使用するのであるが、この割り当て方は様々な方法が考えられる。一例として通信相手から各サブチャネルの通信品質のフィードバックを受けて状態の良いサブチャネルを使用する方法や、通信データ量によって使用するサブチャネル数を変える方法などが考えられる。状態の悪いサブチャネルを使用しないことや通信データ量が少なくなった時に使用しないサブチャネルを設けることは送信電力効率の向上や、セルラシステムの場合は、隣接セルへの与干渉低減にも貢献する。図6(b)は、未使用のサブチャネルを設ける場合の一例を示す図である。図6(b)は、SCH4、SCH6、SCH7が未使用である場合を示している。
なお、送信機側、受信機側双方でどのサブチャネルを使用するかの情報を共有する必要があるが、本実施形態と関係ないので情報の共有方法は省略する。適応的に割り当てを行なう場合、通常は逆方向の通信、リバースリンクを行なうための装置を別途用意して受信側における各チャネルの通信品質を通知し、送信側でサブチャネルを割り当てる方法が使用される。リバースリンクの方法については、本実施形態の範囲外とするが、一般的な無線通信方法なら様々な方法が使用可能である。
しかし、パイロットシンボル中の使用しないサブチャネルにおけるサブキャリアが送信されていない場合、受信機側でDFT法による伝搬路推定を行なうと、未使用サブチャネルの両端で歪みが発生する。図6(c)は、発生する歪みの概略を示す図である。図6(c)は、図6(b)に示したサブチャネルの割り当て例の場合の歪みの状態を示している。この未使用サブチャネルの両端に発生する歪みを無くすためには、全ての未使用サブチャネルでパイロットキャリアを送信すれば良い。しかし、DFT法を使用しない受信機では全く意味を成さない信号であるため、送信電力効率、与干渉の観点からも送信しないことが望ましい。この問題を解決するために本発明を適用する。
本実施形態では、未使用サブチャネルと信号帯域外、つまり送信に使用しないサブキャリアに電力低減したダミーサブキャリアを挿入する。図6(d)は、ダミーサブキャリアを挿入した状態を示す図である。図中、403、404が未使用サブチャネルに挿入した電力低減されたダミーサブキャリアを示し、405、406が第1の実施形態で示した信号帯域外に付加するダミーサブキャリアである。送信機側で上記に示したように未使用サブチャネルに電力低減されたダミーサブキャリアを挿入し、受信機側で電力低減されたダミーキャリアを補正した後にDFT法を適用することによって、未使用サブチャネルが存在する環境下で発生する歪みを低減することができる。
また、リバースリンクなどの手段で、サブチャネルを割り当てる通信相手の受信機が、ダミーキャリアを利用した伝搬路推定が可能かどうかを予め知ることができる場合、ダミーキャリアを利用した伝搬路推定が可能な受信機に対して割り当てるサブチャネルの両脇のサブチャネルが未使用になる場合のみ、未使用サブチャネルにダミーキャリアを配置したパイロットシンボルを送信することにより、送信電力効率を高めつつ伝搬路推定時に発生する歪みを低減させることが可能となる。図6(e)は、ダミーキャリアの配置の概要を示す図である。ここでは、SCH1とSCH3を割り当てる受信機が電力低減されたダミーキャリアを利用して伝搬路推定時の歪みの低減が可能であるということを想定している。
図6(c)に示したように、DFT法による伝搬路推定時の歪みは、受信するサブチャネルの隣接帯域にパイロットキャリアが配置されていない場合、すなわち送信データを割り当てられていないサブチャネルの少なくともどちらか一方の隣接サブチャネルに送信データが割り当てられたサブチャネルが配置された場合に発生する。この歪みを低減するためには、送信時に隣接帯域にダミーキャリアを配置し、受信時にダミーキャリアを含めた帯域でDFT法を適用する。これにより信号帯域内の歪みを低減できることは前に示した通りである。つまり、ダミーキャリアを利用できる受信機が使用する帯域の両隣にのみ通常のパイロットキャリアもしくはダミーキャリアがあれば良い。そのため図6(e)では、SCH1に隣接する帯域外のダミーキャリア405ならびにSCH3に隣接する空きサブチャネルへのダミーキャリア403のみ挿入されている。なお、挿入するダミーキャリアは電力低減が施されているため、受信時に補正する必要がある。
また、DFT法によって発生する歪みは、通信品質の高い、つまりSNRが高い環境下でのみ問題となる。このため、SNRが小さい場合は、ダミーキャリアを付加する必要は無い。そのため、受信機側からその時点でのSNRを報告させ、SNRが高い、例えばSNR=25dB以上の時だけ、電力低減したダミーサブキャリアを付加することで、送信に必要な電力を下げることが可能となる。
以上の説明は、送信データが割り当てられていないサブチャネルは、パイロットシンボル送信時にサブキャリアを使用しないという前提であった。しかし、本発明は、これに限定されるわけではなく、送信データが割り当てられていないサブチャネルにおいてパイロットシンボル送信時にサブキャリアの送信を行うシステムにも適用可能である。この場合、送信データを割り当てられていないサブチャネルのサブキャリアの電力を低減したパイロットシンボルを送信すれば今までの説明と同様となる。
ダミーキャリアを付加したかどうかの情報は、サブチャネルの割り当て情報と共に各受信機に別途報知されるものとする。
受信側では、送信時にダミーサブキャリアが付加されていない場合に、そのまま時間フィルタ処理をする際に発生する歪みは、SNRが低い場合は無視できる一方、SNRが高い場合は、送信側でダミーサブキャリアが付加されるため良好な伝搬路推定結果を得ることができる。
なお、通信品質はSNRでも、SINRでも良く、信号成分とそれ以外の信号成分との比が大体分かる指標であれば良い。
図7は、受信時の補正方法の概要を示す図である。図7(a)は、送信時のパイロット信号のスペクトラムを示す図である。501は受信機が割り当てられているサブチャネルの帯域のパイロットサブキャリアで、502は信号帯域外や未使用サブキャリアに挿入されるダミーキャリアである。ダミーキャリアの振幅は、−3dBされているものとする。このパイロット信号をある伝搬路を経て受信し、送信時に使用した符号で複素除算した後の信号の一例が図7(b)である。この状態では、信号帯域のパイロットキャリアによる信号503と、ダミーキャリアによる信号504の境界で振幅差が発生している。そこで、送信時に行なった振幅補正の逆補正をダミーキャリアによる信号504に行なう。ここでは+3dBの振幅補正を行なう。振幅補正後の信号のスペクトラムを図7(c)に示す。505が振幅補正後のダミーキャリアによる信号である。この状態になると受信機が割り当てられているサブチャネルの信号503と補正後のダミーキャリアによる信号505境界に振幅差が発生しないため、この信号を時間軸信号に変換して時間フィルタを適用しても信号帯域内の歪みが低減される。
本実施形態では、ダミーキャリアは、未使用サブチャネルの全てのサブキャリアに対して挿入したが、サブチャネル中に含まれるサブキャリア数が十分に多い場合は、使用するサブチャネルの両端に一定数のみ、例えば30本のダミーサブキャリアのみを挿入しても良い。これは前に示したように歪みの多いサブキャリアは帯域端に集中するためで、未使用サブチャネルに含まれるサブキャリア全てにダミーキャリアを挿入しなくても同等の効果が得られるためである。
図6(d)や図6(e)に示したパイロット信号を使用する送信機、およびそのパイロット信号を受信する受信機は、図2および図3に示した構成のものが使用可能である。
図2に示した送信機をOFDMA送信機として動作させるためには、送信データを予めサブチャネル毎に分けて入力し、制御部110を経由して、変調部105にサブチャネル単位で設定するように送信制御データを入力すれば良い。また、パイロットシンボルについても制御部110を経由して、各サブキャリアの振幅が、図6(d)や図6(e)に示したパイロット信号になるように、利得調整部102に対して、送信制御データを入力すれば良い。
一方、図3に示した受信機をOFDMA受信機として動作させるためには、制御部134を経由して、ダミーキャリアが配置されているサブキャリアの振幅を調整するように利得補正部127を設定し、同時にダミーキャリア削除部131に受信するサブチャネル以外のサブキャリアの情報を削除するように設定する。これにより、ダミーキャリア削除部131からは受信するサブキャリアの周波数応答のみが出力されるようになる。また、制御部134を通じて復調部133を受信するサブチャネルのみ復調するように設定する。
以上のように、送信機、受信機共に図2および図3に示した構成を利用して前記の電力低減したダミーサブキャリアを付加したOFDMA信号の送受信が可能となる。
(第3の実施形態)
本実施形態では、サブキャリア適応変調に本発明を適用する場合の一例について説明を行なう。サブキャリア適応変調技術は、受信機側から各サブキャリアの受信品質を逐次送信側に報告し、送信機側では報告された各サブキャリアの品質情報に基づいて所要エラーレートを満たす最速の変調を各サブキャリアに掛ける方式である。そして、所要エラーレートを満たさないサブキャリアは、ヌルキャリアとして与干渉を減らす場合がある。
図8は、サブキャリア適応変調を行なった時の変調方式と受信品質との関係を示す図である。この例では、各サブキャリアの受信品質に合わせて64QAM、16QAM、8相PSKと変調を行なわないヌルキャリアの4段階の割り当てを行なうものとする。ヌルキャリアが割り当てられたサブキャリアはパイロットシンボル中の該当サブキャリア701についてもヌルキャリアとするものとする。この適応変調の制御手順は様々な方法が使用可能である。一例として基地局と端末の間でスーパーフレームを用いて制御する場合について図9を用いて制御方法の概要の説明を行なう。
基地局から端末へ方向への通信を下り、端末から基地局への通信を上りとする。基地局は、下り通信で一定間隔、ここでは4フレームに一度スーパーフレーム901を送信する。スーパーフレームは全てのサブキャリアを使用し、どの端末でも受信できるように変調度の低い、例えば、全てのサブキャリアをBPSKで変調して送信され、この中にはCQI(チャネル品質情報)測定用を兼ねるパイロットシンボルと、後続のノーマルフレーム902がどの端末に割り当てられているかを示す情報、後続のノーマルフレームの各サブキャリアの変調方式の情報を含む制御情報、ブロードキャスト情報などが含まれる。後続のノーマルフレーム902は、スーパーフレーム中の制御情報の内容に従った形で変調されて送信される。端末は、スーパーフレーム901中のパイロットシンボルを受信し、各サブキャリアの品質を測定する。品質情報については、変調方式の決定に使用できるものであれば何でも良く、SINR(信号対干渉雑音比)、SNR(信号対雑音比)等を使うことが多い。簡単なところでは信号レベルだけで判断することもある。
本実施形態では、受信したパイロットシンボルの各キャリアの電力レベルを使用するものとする。受信したパイロットシンボルのサブキャリア毎の電力を上り通信を使用してCQI情報903として送信する。CQI情報を受信した基地局は次のスーパーフレームまでにどのような変調方式を使用するか、また次のスーパーフレーム以降のノーマルフレームにどのように割り当てるかを決定してスーパーフレーム以下のフレームを送信する。以上を繰り返すことでサブキャリア適応変調が可能となる。ここでは、端末装置がCQIを基地局装置に送り、基地局装置で変調方式を決める方法を説明したが、端末装置が変調方式を決めてしまう方法もある。この時は端末装置がCQIを送信する代わりに変調情報MLI(Modulation Level Information)を送信し、基地局装置は端末装置が送ってきたMLIに従った変調を行なって送信すれば良い。
しかし、サブキャリア適応変調を行なった結果、図8の701に示したようにヌルキャリアが挿入され、パイロットシンボル中にヌルキャリアが含まれる場合、ヌルキャリアの両端で歪みが発生する問題がある。本実施形態はこの問題を解決するものである。
図10(a)は、サブキャリア適応変調の結果、ヌルキャリアが発生した場合のパイロットシンボルのスペクトラムの一例を示す図である。ここでは、パイロットシンボルの帯域801中に2つのヌルキャリア802が含まれるものとする。このパイロットシンボルを送信してDFT法による伝搬路推定を行なうと、2つのヌルキャリア802のために受信時に得られる周波数応答が不連続になるため、2つのヌルキャリア802の両端に歪みが発生してしまう。そこで図10(b)に示すように、ヌルキャリアの代わりに電力低減したダミーキャリア803を挿入する。電力低減をしないダミーキャリアを挿入する場合に比べ、電力低減分だけ送信電力効率が上がり、また与干渉が低減する。
上記のように生成されたパイロットシンボルを利用して伝搬路推定を行なうためには、第2の実施形態で示したように、送信側で電力低減されたダミーキャリアを、逆に補正してDFT法を行なえば良い。以下、装置の構成例を示し、動作の説明を行なう。本実施形態では基地局装置と端末装置を利用し、基地局装置から端末装置に向けての通信に本発明を適用する場合を扱う。
図11は、基地局装置の構成例を示す図である。基本的に、図2の送信機に、端末装置から送信された情報を受信する無線受信部602が加えられた構成となる。その他のブロックで、図2の送信装置と同様の働きをするものには同じ番号、同じ名称をつけてある。601は、各ブロックの制御を行ない、端末装置から送られてくるCQIに従って適応変調の制御を行なう制御部である。
図12は、端末装置の構成例を示す図である。基本的に、図3の受信機に、CQIを基地局装置に送信するための無線送信部612が付加されたものである。611は、各ブロックの制御を行なうと共に基地局装置に無線送信部612経由でCQIを通知する制御部である。以下、前記基地局装置と端末装置が、図9に示したフレーム構成を用いて適応変調制御、および電力低減されたダミーキャリアの制御を行なう動作について説明する。
最初に、基地局装置の制御手順を説明する。制御部601は、端末装置に対してノーマルフレームを送信する時に各サブキャリアでどの変調方式を使用するかCQIを基に決定する。初期状態やCQIの受信エラーなどの原因で有効なCQIが無い場合は、全てのサブキャリアを最も復調しやすいBPSKで送信するものとする。制御部601は、各サブキャリアの変調情報の他にスーパーフレームに含むべき制御情報を生成する。続いて、制御部601は、スーパーフレームの送信のために利得調整部102を全てのサブキャリアで電力低減しないように設定し、変調部105に全てのサブキャリアを最も復調しやすいBPSKで変調するように設定する。
その後、入力切替部103の入力を同期用符号生成部104にし、フレーム同期シンボルを送信する。直後に入力切替部103の入力を利得調整部102に切り替え、パイロットシンボルを送信する。続いて入力切替部103の入力を変調部105に切り替え、先程生成した制御情報を送信し、ブロードキャスト情報などのその他スーパーフレームで送信すべきデータを送信する。続いてノーマルフレームの送信タイミングになったら、入力切替部103の入力を同期用符号生成部104に切り替える。同時に変調部105を先に決めたサブキャリア毎の変調方式に設定し、ヌルキャリアがある場合はヌルキャリアが割り当てられたサブキャリアに電力低減を行なうように利得調整部102を設定する。
フレーム同期用シンボルが送信された直後に入力切替部103の入力を利得調整部102に切り替え、ヌルキャリアがある場合は電力低減されたダミーキャリアが付加されたパイロットシンボルが送信される。続いて入力切替部103の入力を変調部105に切り替えてノーマルフレーム用のデータの送信を行なう。以下、所定の数だけノーマルフレームの送信を行ない、スーパーフレーム送信のタイミングになったらスーパーフレーム用の送信からの手順を繰り返す。
次に端末装置の動作を説明する。制御部611は、スーパーフレームの受信を行なうために利得補正部127を電力補正しないように設定し、ダミーキャリア削除部131を信号帯域内のダミーキャリアを削除しないように設定し、切り替え部125出力を複素除算部126側に設定し、復調部133を全サブキャリアでBPSKの復調を行なうように設定する。そして同期・G/I除去部123がフレーム同期シンボルの受信を検出するのを待つ。同期・G/I除去部123からフレーム同期シンボルの受信が制御部に通知されたら、制御部は続いて受信されるパイロットシンボルが複素除算部126に入力されたタイミングで切り替え部125の出力を伝搬路補正部132側に切り替え、後続のデータシンボルの受信に備える。
受信したパイロットシンボルは複素除算部126以降の処理によりダミーキャリア削除部131から伝搬路の周波数応答となって出力される。制御部611は、得られた周波数応答からCQIを作成し、無線送信部612を利用して基地局装置にCQIを通知する。CQIの作成方法はどのような方法でも良く、予め基地局装置で想定されている方法であれば構わない。一例として得られた周波数応答の振幅をそのまま使用する方法などが考えられる。データシンボルは伝搬路補正部132で周波数等化され、復調部133にて復調される。
制御部611は復調結果からそのフレームがスーパーフレームかどうかを判断し、スーパーフレームでなかった場合は最初からの手順を繰り返し、スーパーフレームが受信されるのを待つ。スーパーフレームであった場合は、その中の制御情報から後続のノーマルフレームを受信するかどうかを判断し、受信する場合は各サブキャリアがどのような変調を使用するかを調べ、ヌルキャリアが使用される場合は後続のノーマルフレームのパイロットシンボルの該当サブキャリアは電力低減がなされるものとしてそのパイロットサブキャリアの振幅を補正するように利得補正部127を設定する。最終的に出力される周波数応答にはそのサブキャリア成分が含まれないようにダミーキャリア削除部131を設定する。
そして、制御部611は後続のノーマルフレームを受信するために切り替え部125の出力先を複素除算部126側に設定し、制御情報に含まれていたように各サブキャリアの変調方式を復調部133に設定する。同期・G/I除去部123からフレーム同期シンボルの受信が通知するのを待って、制御部611は切り替え部125から複素除算部126に後続のパイロットシンボルが送られたら切り替え部125の出力を伝搬路補正部132側に切り替える。複素除算部126に入力されたパイロットシンボルは送信時に使用した符号で複素除算された後、利得補正部127で送信時に電力低減されたパイロットキャリアを補正する。
その後、IFFT部128、時間フィルタ部129、FFT部130を経てDFT法により雑音が低減された周波数応答となる。この時、利得補正部127で予めダミーキャリアの振幅補正を行なっているため、信号帯域内には大きな歪みが発生しない。その後、ダミーキャリア削除部131で信号帯域外とヌルキャリアに設定されたデータが削除され、伝搬路補正部132に入力される。
パイロットシンボル以降のデータシンボルは伝搬路補正部132に入力され、ダミーキャリア削除部131から出力される雑音が低減された周波数応答の情報を用いて周波数等化され、復調部133でスーパーフレーム中の制御情報に従って復調される。制御部611は、スーパーフレームが送信されるタイミングになったら以上の処理を繰り返す。これにより適応変調を行ないながら本発明が実施される。
なお、本実施形態は、サブキャリア適応変調を行なう際にヌルキャリアを設定する受信品質のスレッショルドが8相PSK以下と高めに設定しているため、挿入するダミーキャリアは電力低減して、つまり振幅を小さく調整していた。しかし、ヌルキャリアを設定する受信品質のスレッショルドが低い場合、例えば、BPSK以下などに設定されている場合に受信品質が悪いサブキャリアに挿入された電力低減されたダミーキャリアを受信側で振幅補正しても雑音の割合が大きすぎて正確な伝搬路推定ができない可能性がある。このようにヌルキャリアを設定する受信品質のスレッショルドが低い場合は、送信時に振幅補正をする際の電力を増やし、受信時に振幅補正をする際に送信時に増やした分だけ減衰させることで雑音成分を相対的に小さくし、得られる伝搬路情報の精度を増やすことが可能となる。
なお、本実施形態では、適応変調で動的に発生するヌルキャリアについて説明したが、本発明は、静的なヌルキャリアに対しても適用可能である。受信信号を処理する際に、受信信号をアナログ処理でベースバンド信号に変換した後にA/D変換を行い、DFT処理を行う方法が一般的である。アナログ部の性能的な限界のため、アナログのベースバンド信号にはDC(直流)オフセット成分が残ってしまう。このDCオフセットが残った状態でDCT処理を行うと、DCT処理帯域の中央の処理ポイントにDCオフセットがそのまま出力されてしまい、その処理ポイントにおけるデータの精度を損なってしまう。そのため、一般的なOFDMシステムにおいてはDC成分に相当するキャリア(DCキャリア)をヌルキャリアとすることが一般的になっており、送信電力効率の点からパイロットシンボルにもヌルキャリアを挿入することが一般的となっている。
しかし、A/D変換をベースバンドではなくIF(中間周波数)帯域で行い、デジタル信号処理でベースバンド信号に変換することで、DCオフセットが無い状態のベースバンド信号に変換することが可能となる。このような受信機を使用する場合はDCキャリアに対してパイロットキャリアが挿入されていると、DFT法による伝搬路推定を行う際に歪みが発生しないが、DCオフセットがある受信機に対しては無駄になるという問題がある。
そこで、本実施形態と同様にDCキャリアに電力低減されダミーキャリアを挿入し、DCオフセットが無い受信機では受信時に振幅補正を行うことでDFT法による伝搬路推定の際の歪みの低減を可能とし、かつ、DCキャリアにパイロットキャリアを割り当てる際の電力効率の低下を最小限にすることが可能となる。
(第4の実施形態)
本実施形態では、信号帯域に使用するパイロットキャリアの挿入本数の周波数に対する密度(単位周波数あたりのサブキャリアの本数)と、外挿するダミーキャリア帯域におけるパイロットキャリアの挿入密度が異なるパイロットシンボルを送信する送信機の構成の一例と、前記パイロットシンボル使用して伝搬路の推定精度を向上させる受信機の構成の一例を示す。ダミーキャリア帯域におけるパイロットキャリアの挿入密度を減らすことは、ダミーキャリア帯域を含めた信号帯域外への送信電力が減るということであり、増幅器の電力効率を向上させることが可能となる。ダミーキャリアの振幅が信号帯域と同じ場合でも、信号帯域外への送信電力低減の効果があるが、第1から第3の実施形態に示したダミーキャリアの振幅を低減する方法と組み合わせると、更に信号帯域外の送信電力を低減することが可能となる。本実施形態では、このダミーキャリア帯域へのパイロットキャリアの挿入密度を減らし、かつ挿入するパイロットキャリアの振幅を低減する方法の一例について説明する。
図13(a)は、第4の実施形態で使用するパイロットシンボルの概略を示す図である。図中、1301がFFT/IFFT処理帯域全体を示す。本実施形態では、32ポイントのFFT/IFFTを使用するものとする。また、1302が信号帯域を表し、18本のサブキャリアを使用するものとする。1303は、ダミーキャリア帯域で、信号帯域1302の両側に配置され、FFTポイント2つに1つの割合で振幅低減されたパイロットキャリア1305が挿入されるものとする。低減量は、送信側受信側で予め既知であればどのような値に設定しても良い。
本実施形態では、信号帯域のパイロットキャリアに対して電力で−10dBとなるように振幅を調整するものとする。振幅低減されたパイロットキャリア1305が挿入されていないダミーキャリア帯域1303のポイントや、信号帯域1302でもダミーキャリア帯域1303でもないガードバンド1304のポイントは何も信号を送信しないヌルキャリア1306とする。各パイロットキャリアは予め決められた符号で変調されているものとする。
次に、このパイロットシンボルをどのように利用して伝搬路推定を行なうかについて説明する。受信側では、受信したパイロットシンボルをFFTにより周波数領域に変換し、各サブキャリアを送信時に使用した符号で複素除算し、周波数応答を求める。説明の容易にするために、送信、受信間がフラットな伝搬路とすると、この周波数応答は図13(a)に示した信号に雑音が加わった信号となる。次に、ダミーキャリア帯域のパイロットキャリアの振幅補正を行なう。送信時に施した電力低減分を補正するように振幅調整を行なう。本実施形態では送信側で−10dBの低減処理が行なわれているため、電力で10dB増えるように振幅調整を行なう。振幅補正後の概略を図13(b)に示す。1307が振幅補正後のダミーキャリア帯域のパイロットキャリアである。
続いて、ダミーキャリア帯域1303中のヌルキャリア1308の補間を行なう。ダミーキャリア帯域1303中のヌルキャリア1308の補間方法はどのような方法を使用しても良い。周波数軸上にローパスフィルタを適用して補間する方法やスプライン曲線やベジェ曲線による補間方法、最小誤差二乗法等の方法で補間する方法などが考えられる。本実施形態では計算量が少ない方法として、隣接するサブキャリア2本の平均値を補間する方法を使用する。
ダミーキャリア帯域1303中のヌルキャリア1308を補間した後の概略を図13(c)に示す。1307がヌルキャリア1308の両端のサブキャリアによって補完されたサブキャリアである。この補間を行なうことでダミーキャリア帯域のパイロットキャリアの挿入密度が信号帯域と同等になる。このヌルキャリア1308を補間した後の信号をIFFTしてインパルス応答に変換し、その後時間窓処理を行なう。
以上の補間処理を実現する送受信機の構成を以下に説明する。最初に送信機の構成の一例について説明する。送信機は、第1の実施形態で使用している構成がそのまま使用可能である。送信機ブロックの利得調整部102に対し、ヌルキャリア1308となるサブキャリアの振幅が0となるように減衰率を設定(減衰率∞)すれば良い。ガードバンド1304についても同様である。ダミーキャリア帯域1303のヌルキャリア1308でないパイロットキャリアについては、電力で−10dBとなるように振幅の調整を行なう。これで図13(a)に示した信号の生成が可能となる。
次に、受信機の構成の一例を説明する。図14は、受信機の構成を示す図である。基本構成は、第1の実施形態の受信機とほぼ同等であるが、利得補正部127とIFF部128の間にサブキャリア補間部1401が追加され、制御部1402の制御対象にこのサブキャリア補間部1401が含まれる所が異なる。そのため、第1の実施形態の受信機と同等のブロックには同じ名称、同じ番号をつけてあり、詳しい説明は省略する。
制御部1402は、サブキャリア補間部1401に対し、予め決められたダミーキャリア帯域中のヌルキャリアを、ヌルキャリア両端のサブキャリアを利用して補間するように設定する。補間後の信号は図13(c)に示したものとなる。以下、第1の実施形態と同じように処理され、信号帯域内の推定誤差が少ない周波数応答を得て復調処理が行なわれる。
本実施形態では、ダミーキャリア帯域のパイロットキャリアが少ないため、伝搬路の遅延分散が大きい環境ではダミーキャリア帯域の推定誤差がやや大きくなる。しかし、時間窓処理後のダミーキャリア帯域の推定誤差の信号帯域に対する影響は小さいため、大きな特性劣化とはならない。
以上のように、ダミーキャリア帯域にヌルキャリアを挿入することで、特性を殆ど劣化させずにダミーキャリア帯域の送信電力を減らすことが可能となる。
(第5の実施形態)
本実施形態では、受信機の周波数特性が一定でないため、FFT部に入力される信号の周波数特性がフラットでない場合の受信機の構成の一例について説明する。受信機を実現する場合、IF(中間周波数)帯域のバンドパスフィルタの特性や、アンチエイリアシングフィルタなどの影響で、FFT部に入力される信号の周波数特性がフラットでない場合がある。一例として、通過帯域を信号帯域に合わせたフィルタを使用した場合、ダミーキャリア帯域ではフィルタの減衰率が大きくなり、送信時に設定した振幅の減衰量に合わせて受信機側で補正しても意図した振幅とならない場合が発生する。
本実施形態は、このような場合にFFT部に入力される信号の周波数特性に合わせた振幅補正を行なうことで送信時に意図した振幅に補正する。図15(a)は、使用するパイロットシンボルのスペクトラムの概要と、受信機のFFT部に入力される信号の周波数特性とを示す図である。使用するパイロットシンボルは第1の実施形態で使用していたものと同様の構成とする。1501はFFT/IFFT処理帯域を、1502は信号帯域を、1503はダミーキャリア帯域を、1504はガードバンドを表す。1506は信号帯域に配置されるパイロットキャリア、1507はダミーキャリア帯域に配置されるキャリアを表す。ダミーキャリアの振幅は、電力で−10dBとなるように送信側で設定されているものとする。
受信機は、第1の実施形態で使用した構成がそのまま使用可能である。無線受信部121の特性によってFFT/IFFT処理帯域1501の周波数特性が変化する。1505が受信機のFFT部に入力される信号の周波数特性を表しており、信号帯域1502内はフラットな特性で、ダミーキャリア帯域からガードバンドに向かって振幅が小さくなる特性であることを示している。受信機のFFT部に入力される信号の周波数特性が図15(a)のような特性の場合、ダミーキャリア帯域の振幅調整を行なう利得補正部127で図15(b)に示した増幅率を設定する。
図15(b)に示した増幅率は、信号帯域1502ではパイロットキャリアの振幅を変えない増幅率で、ダミーキャリア帯域1503では信号帯域1502に近い部分は送信時に設定した低減量を補正する増幅率を、ガードバンド1504に近づくにつれて周波数特性1505に応じた増幅率を、ガードバンド1504では信号を通さない増幅率を設定することを示している。増幅率が大きいということはそのパイロットキャリアの雑音が相対的に大きくなることと等価であるが、信号帯域1502に近いパイロットキャリアの増幅率が送信時に想定した増幅率と殆ど変わらず、信号帯域1503から離れたパイロットキャリアのみ増幅率が多い場合は、信号帯域への雑音の影響が少ないため、FFT部に入力される信号の周波数特性が平坦な場合と余り変わらない特性となる。
利得補正部127にこのような増幅率を設定することで、受信機の周波数特性が一定でないためにFFT部に入力される信号の周波数特性が平坦でない場合でもダミーキャリア帯域の補正を適切に行なって伝搬路推定精度を向上させることが可能となる。
(第6の実施形態)
送信時に設定するダミーキャリア帯域のパイロットキャリアの振幅を低減し、受信時に該当するパイロットキャリアの振幅を増幅して補正すると、補正したパイロットキャリアに含まれている雑音が相対的に大きくなる。ダミーキャリア帯域の雑音が信号帯域の雑音よりも極端に大きい場合、時間窓処理後にダミーキャリア帯域の雑音の影響が信号帯域にも現れる。そのため、送信時の低減量を極端に大きくすることはできない。
一方、信号帯域の伝搬路推定精度へのダミーキャリア帯域のパイロットキャリアに含まれる雑音の影響は、ダミーキャリア帯域内のパイロットキャリアの位置によって一定ではない。信号帯域に近いパイロットキャリアの雑音は信号帯域の伝搬路推定精度への影響が大きいが、信号帯域から離れたパイロットキャリアの雑音は伝搬路推定精度への影響が小さい。
以上の性質を利用し、ダミーキャリア帯域に挿入するパイロットキャリアの振幅の低減率を信号帯域に近いパイロットキャリアについては小さく、信号帯域から遠いパイロットキャリアの低減率を大きく設定することで、ダミーキャリアを送信するために必要な電力を低減することができる。
図16は、本実施形態におけるパイロットシンボルの概要と、受信時の補正方法の概要を示す図である。図16(a)は、送信側のパイロットシンボルのスペクトラムの概要である。1601がFFT/IFFT処理帯域、1602が信号帯域、1603がダミーキャリア帯域、1604がガードバンドを表し、1605が信号帯域に配置されるパイロットキャリア、1606がダミーキャリア帯域に配置されるパイロットキャリアを表している。この図に示されているように、ダミーキャリア帯域に配置されるパイロットキャリア1605は、信号帯域1602に近いパイロットキャリアの低減率が小さく、ガードバンド1604に近いパイロットキャリアの低減率は大きく設定される。
設定値は、極端に大きくなければどのように設定しても良い。本実施形態では信号帯域1602に隣接しているパイロットキャリアの電力の低減率を10dB、ガードバンドに接しているパイロットキャリアの電力の低減率を15dBとし、間のパイロットキャリアの低減率は線形補間されるものとする。
このようなパイロットシンボルを送信する送信機の構成は第1の実施形態に示しているものが使用可能で、送信機ブロックの利得調整部102に対し、図16(a)に示した信号を生成する低減率を設定すれば良い。受信側では、時間窓処理前に送信側で施した振幅の低減を補完すれば良く、第1の実施形態で示した構成の受信機をそのまま使用することが可能となる。利得補正部127に図16(b)で示す増幅率を設定すれば良い。図16(b)は、信号帯域1602では振幅をそのままに、ダミーキャリア帯域1603は信号帯域1602に隣接しているパイロットキャリアは10dBの電力増となる増幅率が設定され、ガードバンド1604に隣接しているパイロットキャリアは15dBの電力増となる増幅率が設定され、その間の増幅率は線形補間された値が設定され、ガードバンドは振幅が0となる増幅率が設定されることを示している。
以上の構成により、受信機側で送信時に施されたダミーキャリア帯域の電力低減処理を補正して伝搬路推定を行なうことができ、電力低減によって増えるダミーキャリア帯域の雑音の影響を少なくすることで伝搬路推定精度への影響を最小限にすることが可能となる。