以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
まず、本発明の一実施形態に係る収納容器付きスプールの構成について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る収納容器付きスプールを示す斜視図であり、図2は図1の収納容器付きスプールの分解斜視図である。この収納容器付きスプールは、繊維体を巻回して収納するものである。繊維体としては、例えば、綿、羊毛等の天然繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン等の合成繊維、金属繊維、ガラス繊維、若しくはこれらを組み合わせたものが挙げられ、その太さや強さは限定されず種々の糸状を呈するものが用いられる。図1及び図2に示すように、特に本実施形態の収納容器付きスプール1では、釣りの利用に供する釣糸(繊維体)Lを巻回して収納する。この収納容器付きスプール1は、釣糸Lを巻回するスプール2と、当該スプール2を収納する収納容器3と、を備えている。
スプール2は、例えば樹脂からなり、ここでは、巻回される釣糸Lの視認性の点で好ましいとして、透明樹脂により形成されている。このスプール2は、図3(a)のスプールの上面図、(b)のb−b矢視図に示すように、胴部21とフランジ22とを有し、胴部21の内周面23より内側が中空とされた非リブ構造の環状体となっている。
胴部21は、円筒形状を呈しており、胴部21の外周面24には、釣糸Lが例えば整列巻きで巻回される。一方、内周面23には、釣糸Lの巻回の起点側(一端側)が例えば瞬間接着剤で接着固定される。具体的には、内周面23には、釣糸Lの一端側を接着固定する固定部25が設けられている(図10参照)。ここでは、内周面23の径を約50mmとし、胴部21の厚さを約2mmとしている。この内周面23において軸線方向の一端側の領域には、軸線方向視において正十二角形を呈する多角形部26が設けられている。
フランジ22は、所定の厚さを有するリング状を呈し、胴部21の外周面24において軸線方向の両端部に、径方向外側に突出するようにそれぞれ形成されている。ここでは、フランジ22の外形を約64mmとし、厚さを約1.5mmとしている。各フランジ22の外周面における周方向の同位置には、径方向外側に開口する凹部27がそれぞれ形成されている。ここでの凹部27の深さは、約2mmである。
図4(a)のフランジの外側の側面図に示すように、フランジ22のうち一方のフランジ22Rにおいて外側の側面22aには、凹部27の底から胴部21の内周面23に至る溝28が形成されている。この溝28の幅は、釣糸Lの直径と略同じにされている。他方、図4(b)のフランジの内側の側面図に示すように、内側の側面22bには、上記溝28に連続し、凹部27の底から胴部21の外周面24に向けて、径方向に対し傾斜して延在する段差29が設けられている。この段差29は、軸線方向視において胴部21の外周面24に連接するように延在している。そして、段差29を介して、径方向外側におけるフランジ22の厚さが、径方向内側における厚さよりも薄くなっている(図10参照)。すなわち、このようなフランジ22の肉厚差による段差29が内側の側面22bに形成されるように、フランジ22の内側が切り欠かれている。
図1及び図2に戻り、収納容器3は、スプール2を胴部21の周方向に回転可能に収納するものである。具体的には、収納容器3は、スプール2の形状に応じた環状を呈し、内部にスプール2を略同軸で収納する。なお、この収納容器3は、スプール2を陳列する際のいわゆるパッケージ(包装)として扱われるものである。収納容器3は、その内部にスプール2を配置する本体(本体部)4と、本体4に着脱自在に取り付けられる蓋(蓋部)5とを有している。
本体4は、例えば樹脂からなり、ここでは、スプール2と同様に視認性の点で好ましいとして、透明樹脂により形成されている。この本体4は、上方(軸線方向における一端側)に開口する環状を呈している。具体的には、図5(a)の本体の上面図、(b)のb−b矢視図に示すように、本体4は、底壁41と内周壁42と外周壁43とを有し、内周壁42及び外周壁43が底壁41を介して結合され形成されている。
底壁41は、リング状を呈し、径方向内側の端部の一部には、径方向外側に行くに従って拡がるような扇状に切り欠かれた切欠き44が形成されている。底壁41の上方側の面41aにおいて径方向内側の端部には、切り欠き44を挟んで周方向に沿うように、上記内周壁42が設けられている。つまり、内周壁42は、隙間(被係合部)45を有して周方向に延在している。一方、底壁41の下方(軸線方向における他端側)側の面41bにおいて径方向内側の端部には、切欠き44を挟んで周方向に沿うように延在する係合部46が形成されている。つまり、係合部46は、隙間45と同様な隙間47を有して周方向に延在している。この係合部46は、内周壁42よりも径方向内側に位置しており、下方に突出すると共にその先端(下端)が径方向外側に突出して軸方向の断面が略L字状となっている(図7参照)。
内周壁42の径方向内側の面42aには、径方向内側に盛り上がる凸部63(図2参照)が形成されている。この凸部63は、径方向内側の面42aの上方側の端部に周方向に延在しており、同様な他の収納容器を重ねて連結する際に、他の収納容器の係合部と係合する。内周壁42の径方向外側の面42bには、内周壁42に肉厚差を設けることで段差64が形成されている。具体的には、径方向外側の面42bにおいて、上方側の径はスプール2の多角形部26の多角形状に内接する内接円の径よりも若干小さいものとなっている一方、下方側の径は当該内接円よりも若干大きいものとなっている。この段差64により、スプール2を本体4に配置する際に、スプール2の多角形部26が形成された側の端部が上方に位置しないと、当該スプール2を収容できないようになっている。
内周壁42の周方向における一端面42cには、周方向に沿って延びるアーム48が設けられている。このアーム48は、収納されたスプール2の多角形部26に当接し(図8参照)且つ胴部21を外周面24側に付勢する。
外周壁43には、軸線方向に延在すると共に上方に開口するスリット(開口部)49が形成されている。スリット49は、釣糸Lを挿通させ当該釣糸Lを外部に導出する。このスリット49は、釣糸Lを好適に外部に引き出すため、上述のように軸線方向に延在すると共に、上方視において径方向外側に拡がるように傾斜して延在している。すなわち、スリット49では、釣糸Lを引き出す際に当該釣糸Lとスリット49との接触で釣糸Lに負荷される不必要な力が低減されている。この外周壁43の上方側の端部には、蓋5と係合して当該蓋5を取り付けるための取付部61が形成されている。
蓋5は、例えば樹脂からなり、図1及び図2に示すように、本体4に取付部61を介して着脱自在に取り付けられる。この蓋5は、かかる取り付けにより、本体4の内部に配置されたスプール2を当該内部に留置させて収納すると共に、スリット49の開口を塞いで挿通された釣糸Lが当該スリット49の上方から抜け出ないようにする。
図6(a)の蓋の上面図、(b)のb−b矢視図に示すように、蓋5は、リング状の上板51と、当該上板51の周縁に結合された外周板52とで構成されている。上板51の一部には、径方向内側に突出する差込部(位置決め部)53が設けられている。具体的には、差込部53は、蓋5を本体4に取り付けた際に本体4の係合部46よりも径方向内側の位置に至るまで径方向内側に突出しており、先端に行くに従って幅が狭くなるような扇状となっている。これにより、差込部53は、蓋5を本体4に取り付けた際に、内周壁42の隙間45に差し込まれ、差込部53と隙間45とが周方向に係合する(図2参照)。一方、差込部53は、収納容器付きスプール1に同様な他の収納容器付きスプール1D(以下、同様な構成のため、収納容器付きスプール1Dに関連する符号には全て最後にDを付す)を重ねて連結する際に、他の収納容器付きスプール1Dの係合部46Dの隙間47Dに差し込まれ、差込部53と隙間47Dとが周方向に係合する(図11参照)。差込部53の表面には、例えば釣糸Lの号数を表示するラベル54が設けられている。外周板52は、蓋5を本体4に取り付ける際に、本体4の取付部61に係合する。
図6及び図7に示すように、外周板52には、突出部(掛止部)55が設けられている。この突出部55は、差込部53に連続して蓋5に一体に形成されており、蓋5を本体4に取り付けた際に、外周壁43の外周面(外表面)43aに対面するように下方に突出している。つまり、突出部55は、蓋5を本体4に取り付けた際に外周面43aの径方向外側に位置し、当該突出部55と外周面43aとの間でスリット49を挿通した釣糸Lを掛止する。また、蓋5を本体4に取り付けた際に、突出部55の先端側から基端側に向かって、当該突出部55と外周面43aとの間が狭くなるように構成されている。具体的には、突出部55が図7における下側に向かって若干に拡がるようなテーパ状を呈して突出していると共に、外周壁43の外周面43aにおいて上方側の端部が上方に行くに従ってその径が大きくなっている。なお、外周面43aにおいて下方側の端部は、釣糸Lを掛止し易くするために、下方に行くに従ってその径が大きくなっている。そして、この突出部55の表面にも、差込部53に同様な例えば釣糸Lの号数を表示するラベル56が設けられている(図12参照)。
前述したように、収納容器付きスプール1では、スプール2の内周面23に多角形部26が形成されており、収納容器3の本体4には多角形部26に当接し且つ胴部21を外周面24側へ付勢するアーム48が設けられている。
具体的には、図5及び図8に示すように、アーム48は、周方向に沿って延在し、その基端48a側が内周壁42の一端面42bと連結される一方、先端48b側に、収納されたスプール2の多角形部26に摺動可能に当接する摺動部62を有している。このアーム48は、周方向に沿って延在することで弾性を有しており、かかる弾性により多角形部26を径方向外側に付勢する。摺動部62は、上方視において径方向外側に凸の半円形状を呈している。なお、アーム48は、差込部53を隙間45に差し込んだ際に、当該差込部53の下面に接触しない位置に設けられている。
次に、このような構成を有する収納容器付きスプール1において釣糸Lを引き出す場合について説明する。
収納容器付きスプール1においては、スリット49から導出した釣糸Lを引っ張ることにより、スプール2が収納容器3内で回転し、釣糸Lが収納容器付きスプール1から引き出される。
このとき、上述したように、アーム48がスプール2の内周面23の多角形部26と当接し且つスプール2を径方向外側(外周面24側)に付勢するため、スプール2の回転が制限され、よって、釣糸Lを引き出すことが制限される。これは、このようにアーム48が当接し且つ付勢することにより、以下の摩擦力が生じるためである。すなわち、アーム48の摺動部62と多角形部26との間に摩擦力が生じるのに加え、多角形部26においてアーム48に当接する側と反対側の領域が収納容器3の本体4の内周壁42に押し付けられることになり、当該領域と内周壁42との間にも摩擦力が生じるためである。
ここで、釣糸Lをさらに引っ張ることにより、スプール2が収納容器3内で当該収納容器に対してさらに回転し、釣糸Lが収納容器付きスプール1からさらに引き出されると、上述したように、アーム48が多角形部26に当接することから、アーム48の撓み量(変位量)はスプール2の回転に従って変化する。すなわち、多角形部26において多角形状の辺に相当する部分にアーム48が当接する場合(図9(a)参照)と、多角形部26において多角形状の頂点に相当する面にアーム48が当接する場合(図9(b)参照)と、では、その撓み量が異なる。例えば後者の場合では、アーム48の撓み量は、前者の場合でのアーム48の撓み量に比して小さくなる。よって、アーム48の付勢力は、多角形部26と当接する位置で変化する、つまり、アーム48は、多角形状に応じた強弱のある付勢力でもって、スプールの回転を制限する。従って、釣糸Lを引き出す場合、アーム48による付勢力が比較的弱くスムーズにスプール2が回転し、釣糸Lが比較的スムーズに引き出される状態(図9(a)参照)と、アーム48による付勢力が比較的強くスプール2が回転し難く、釣糸Lが比較的引き出され難い状態(図9(b)参照)と、が連続的に繰り返し生じることになる。
従って、釣糸Lに充分な張力を付与させつつ当該釣糸Lを多角形部26の多角形状の辺に応じた長さずつで連続して容易に引き出すことができると共に、意図しないスプール2の回転を抑制することが可能となる。その結果、所望の長さの釣糸Lを適切且つ容易に引き出すことができ、引き出さされた釣糸Lから巻き癖が好適に除去され、且つ、釣糸Lを引き出し過ぎてしまうということが防止される。ひいては、引き出さされた釣糸Lから巻き癖が好適に除去されることにより、釣糸Lが絡まることが抑制され、リールに巻き込む等の作業を迅速に行うことが可能となると共に、水中に投入された釣糸Lの弛みが低減され、魚信(いわゆる、あたり)に対する感度を高めることができる。
さらに、前述した状態の繰り返し(すなわち、釣糸Lが比較的スムーズに引き出される状態と釣糸Lが比較的引き出され難い状態との繰り返し)により、釣糸Lを引き出すに際して使用者は、いわゆるクリック感を感じることができ、所望の長さの釣糸Lを適切且つ容易に引き出すことができる。
さらに、例えば釣糸Lを引き出した後には、上述したように、スリット49を挿通し外部に導出した釣糸Lが、突出部55により掛止されると共に外周面43aと突出部55との間で係止される(図7参照)。このとき、上述のように、差込部53と内周壁42の隙間45とが周方向に係合することにより、蓋5と本体4との相対回転が抑止されているため、突出部55が収納容器3の周方向の一定の位置に常に配置される。従って、スリット49を挿通し外部に導出した釣糸Lを突出部55に確実に掛け止めることができると共に、釣糸Lの導出する長さを一定に保つことが可能である。
このとき、上述したように、突出部55は、その先端側から基端側に向かうに従い、外周面43aと突出部55との間が狭くなっている。これにより、外周面43aと突出部55との間において突出部55の先端側から容易に釣糸Lを進入させることができると共に、突出部55の基端側に釣糸Lを引き入れることで、釣糸Lを確実に係止することが可能である。また、かかる間において釣糸Lを係止する位置を変えることで、釣糸Lの係止の具合や程度を適宜に調整することもできる。なお、一般的に、収納容器が本体と蓋とを有するようないわゆる別体構造の場合には、外部に導出する釣糸Lを掛止しつつその長さを一定に保つことがその構造等の点から難しいため、上記効果、すなわち、釣糸Lを確実に掛止すると共に釣糸Lの導出する長さを一定に保つという効果は特に顕著である。
次に、収納容器付きスプール1においてスプール2に釣糸Lを巻回する場合について説明する。なお、図10の(a)〜(c)の上段は上面図、(a)〜(c)の下段は縦断面図である。
スプール2に釣糸Lを巻回する場合、図10(a)に示すように、まず、一方のフランジ22Rにおける凹部27を介して釣糸Lの糸巻(不図示)側を胴部21に導くと共に、段差29に沿って釣糸Lの糸巻側を胴部21の外周面24に導いて、外周面24において軸線方向の一端側(図示左側)から釣糸Lを巻き始める。続いて、図10(b)に示すように、外周面24の軸線方向における一端側から他端側に向けて順次に釣糸Lを巻回する(整列巻き)。なお、ここでは、釣糸Lに負荷される張力を抑制して巻回するソフト巻きを採用している。そして、図10(c)に示すように、釣糸Lの巻き始めの一端側を溝28に沿って内周面23に導き、内周面23にて固定部25により釣糸Lの巻き始めの一端側を接着固定する。
ここで、従来、引き出される釣糸Lに充分な張力を付与するためには、釣糸Lの一端側をスプールに確実に固定するのが必要であることから、胴部の外周面にて釣糸Lの一端側を固定することが一般的である。しかし、この場合には、釣糸Lが重なり合って巻回されるため、固定の影響が巻き乱れとなって現れるという問題がある。特に、接着剤で釣糸Lを外周面24に固定すると、塗布した接着剤の上に釣糸Lが巻回されるため、釣糸Lの一端側以外に接着剤が付着するという問題がある。
しかしながら、本実施形態の収納容器付きスプール1では、上述のように、溝28を設けることにより、釣糸Lの一端側を内周面23に容易に案内でき、内周面23にて固定部25で釣糸Lの一端側を接着固定するのを好適に実施することができると共に、フランジ22Rの外側の側面22aから径方向外側に釣糸Lが邪魔に膨らむことを抑止できる。
さらに、釣糸Lが溝28に進入し案内されることで、釣糸Lとスプール2との摩擦力を増大させて釣糸Lのスプールに対する固定力を高めることできる。これは、上述したように、溝28の幅が釣糸Lの直径と略同じにされているため、釣糸Lとスプール2とは溝28の底面だけでなく溝28の両側面でも互いに接触する、つまり、接触面積が増大されるからである。
従って、本実施形態によれば、上記問題を解決して、釣糸Lをスプール2に確実且つ強固に固定でき、ひいては、充分な張力を付与しながら釣糸Lを引き出す際に、当該釣糸Lがスプールから抜け出ることが防止されると共に、釣糸Lを最後まで確実且つ適切に使い尽くすことができる。
さらに、本実施形態の収納容器付きスプール1では、上述のように、段差29を設けることにより、当該段差29に沿って釣糸Lの糸巻側を胴部21の外周面24に案内し、外周面24において軸線方向の一端側から釣糸Lを巻き始めることができ、これにより、巻き乱れ無くきれいに釣糸Lを整列巻きすることが可能となる。
次に、この収納容器付きスプール1に同様な収納容器付きスプールを連結する場合について説明する。
図11に示すように、収納容器付きスプール1における収納容器3の係合部46と収納容器付きスプール1に同様な他の収納容器付きスプール1Dにおける収納容器3Dの凸部63Dとを軸線方向に係合することにより、収納容器3,3Dが同軸で重ねられて着脱自在に連結され、よって、収納容器付きスプール1に同様な収納容器付きスプール1Dが同軸で重ねられて着脱自在に連結される。
このとき、上述のように、蓋5には差込部53が形成されている一方、係合部46は周方向に沿って延在し且つ隙間47を有しているため、収納容器付きスプール1における係合部46の隙間47に、収納容器付きスプール1Dにおける蓋5Dの差込部53Dが差し込まれる。すなわち、係合部46の隙間47に差込部53Dが差し込まれない場合には、係合部46と差込部53Dとが干渉して係合部46と凸部63Dとが係合しないため、係合部46の隙間47に差込部53Dが差し込まれる状態でのみ、係合部46と収納凸部63Dとが軸線方向に係合されることとなる。
従って、収納容器付きスプール1では、収納容器付きスプール1に同様な他の収納容器付きスプール1Dを軸線方向に重ねて着脱自在に連結することができると共に、かかる連結状態において収納容器3の相対回転を制限しつつ当該収納容器3を周方向に位置決めできる。ひいては、複数の収納容器付きスプールを持ち運び易く且つこれらの中から適宜な釣糸Lを容易に引き出すことができる。
さらに、上述のように、差込部53にラベル54が設けられているため、個別の収納容器付きスプール1では、釣糸Lの情報を差込部53にて表示し視認することができる。これに加えて、図12に示すように、突出部55にもラベル56が設けられているため、複数の収納容器付きスプール1を連結した状態においても収納した釣糸Lの情報を本体4の外周面43aに視認可能に表示することができる。加えて、かかる連結状態において、収納容器3が周方向に位置決めされることより突出部55の周方向位置が一列に揃うため、外周面43aでのラベル56が一列に揃い当該ラベル56を一層見易くすることができ、釣糸Lの情報を即時に認識することができる。
なお、本実施形態では、上述したように、係合部46が隙間47有し、当該隙間47に他の収納容器付きスプール1Dの差込部53Dが差し込まれるように構成されていることから、係合部46は、収納容器3と他の収納容器3Dとを軸線方向に重ねて着脱自在に連結する連結部としての機能だけでなく、収納容器3と他の収納容器3Dとの周方向の相対回転を制限する回り止め部としての機能も発揮するものである。また、上述したように、差込部53にはラベル54が設けられていることから、差込部53は、回り止め部としての機能だけでなく、釣糸Lに関する情報を表示する表示部としての機能も発揮するものである。すなわち、これらは相互に関連して一体に作用している。
ちなみに、釣糸Lにあっては、その種類の選別が天候等の釣り現場での環境に応じて当該現場で行われることが多いことから、釣糸Lを釣り現場で選別する際の容易性や利便性の向上が強く求められている。これに関し、本実施形態では、上述したように、連結部、回り止め部、及び表示部が設けられていることにより、かかる容易性や利便性が高められ、よって、所望なときに所望な場所で適宜な釣糸Lを容易且つ迅速に引き出すことができる。
以上、本実施形態によれば、蓋5を本体4に取り付けた状態において、差込部53と内周壁42の隙間45とが周方向に係合することにより、蓋5と本体4との相対回転が抑止されているため、突出部55が収納容器3の周方向の一定の位置に常に配置される。従って、スリット49を挿通し外部に導出した釣糸Lを突出部55に確実に掛け止めることができると共に、釣糸Lの導出する長さを一定に保つことができる。その結果、スリット49から外部に導出された釣糸Lがばらばらに散在することを抑制すると共にその長さを一様にすることができ、よって、釣糸Lを容易に取り扱うことができる。
また、上述のように、収納容器付きスプール1は、スプール2と本体4と蓋5とを含んで構成されている。これにより、スプール2と本体4と蓋5との分別を容易にすることができ、例えば廃棄時の分別が促進され、地球環境への負荷を軽減することが可能となる。
ところで、従来の中空の環状体であるスプールでは、巻回された繊維体の熱収縮等で生じる応力により破壊され易く、よって、中空の環状体のスプールを実現することは困難であった。そこで、本実施形態では、胴部21の厚さを従来の一般的なものよりも厚くしている。さらに、この破壊の起点がフランジの凹部であるのが多いことを見出し、フランジ22の凹部27の深さを従来の一般的なものよりも浅くしている。そして、上述したように、釣糸Lをソフト巻きにより巻回している。これらにより、本実施形態によれば、スプール2を中空の環状体とすることができ、その結果、スプールの樹脂使用量を低減させて地球環境への負荷を軽減することが可能である。
なお、上述したように、収納容器3は、スプール2を陳列する際のいわゆるパッケージ(包装)として扱われるものである。つまり、本実施形態は、パッケージに上述した様々な機能を搭載させてスプールに高い付加価値を持たせたものであり、市場のニーズにより適応する収納容器付きスプールとなっている。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、アーム48によりスプール2の回転を制限したが、ゴム状のものやバネ状のものであってもよく、多角形部に当接し且つその弾性でもって胴部を付勢するものであればよい。
また、本実施形態では、収納容器3の軸線方向のコンパクト化の点で好ましいとして、断面L字状の係合部46が径方向内側に凸の凸部63Dに係合することにより、収納容器3に同様の収納容器3Dを重ねて連結したが、係合部を径方向内側に凸、凸部を断面L字状として収納容器3に同様の収納容器3Dを連結してもよく、種々の構成の凹凸構造により連結することができる。
また、本実施形態の収納容器付きスプール1では、多角形部の厚さの成形時のむらを抑制すると共にアーム48による付勢力の強弱及びクリック感を好適に得るために好ましいとして、多角形部26を軸線方向視において正十二角形の形状としたが、多角形部の軸線方向視における形状は種々の多角形形状としてもよく、その形状に応じた強弱の付勢力が弾性手段により生じるものであればよい。
また、本実施形態の収納容器付きスプール1では、釣糸Lを巻回して収納したが、裁縫用の糸、紐、又は電気コード等にも適用することができる。
また、ラベル54,56は、釣糸Lの号数を表示したが、釣糸の号数に代えて又は加えて、釣糸の太さ、断面積、強さ、若しくはこれらの組み合わせたものを表示してもよい。
1,1D…収納容器付きスプール、2…スプール、3,3D…収納容器、4…本体(本体部)、5,5D…蓋(蓋部)、21…胴部、23…胴部の内周面、24…胴部の外周面、43a…外周壁の外周面(外表面)、45…隙間(被係合部)、49…スリット(開口部)、53,53D…差込部(位置決め部)、55…突出部(掛止部)、L…釣糸(繊維体)。