JP4873804B2 - セラミック穿孔装置用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、未焼成セラミックシートに複数の穴を穿設する打ち抜きピンを保持するピンプレートの如きセラミック穿孔装置用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、未焼成セラミックシートに複数の穴を穿設する場合、一般的にセラミック穿孔装置が使用されている。
【0003】
図4はセラミック穿孔装置の概略を示す断面図で、上金型51と下金型52より構成されており、上金型51は、複数の打ち抜きピン54と、打ち抜きピン54を保持するピンプレート55と、ピンプレート55の下方に配置され、打ち抜きピン54を案内するピンガイド56と、ピンプレート55の上部に配設され、穿孔時に打ち抜きピン54が上方に逃げるのを防ぐ上蓋57と、ピンプレート55を固定する支持プレート59と、支持プレート59からピンガイド56をつり下げる吊りボルト60と、支持プレート59の上部に配設され、支持プレート59を保持する上ダイセット58と、ピンガイド56が横方向に動くのを規制し、上下方向にのみ可動させるガイド棒61と、ピンガイド56を下方に押しつけるバネ63とから構成されており、下金型52は、上金型51の打ち抜きピン54と対応する位置に上記打ち抜きピン54が挿通される複数の穴65を有する下パンチ64と、下パンチ64の下部に配設される下ダイセット66とから構成されていた。
【0004】
また、打ち抜きピン54は、打ち抜きピン頭部62と打ち抜きピン先端部63よりなり、ピンプレート55に備える段付きの打ち抜きピン挿入穴67に挿入するとともに、打ち抜きピン頭部62を段付き部に引っかけることにより保持するようになっていた。
【0005】
そして、このセラミック穿孔装置により未焼成セラミックシートWに複数の孔を穿設するには、未焼成セラミックシートWを下パンチ64上に載せた後、上金型51を下降させ、ピンガイド56によって未焼成セラミックシートWを押さえ付け、さらに上金型51を下降させて打ち抜きピン54をピンガイド56より突出させ、下パンチ64の穴65に挿通させることにより、打ち抜きピン54と下パンチ64の穴65との間に作用する剪断力によって未焼成セラミックシートWに複数の孔を穿孔するようになっていた。
【0006】
ところで、セラミック穿孔装置に備えるピンプレート55やピンガイド56の如きセラミック穿孔装置用金型の打ち抜きピン54が挿入される打ち抜きピン挿入穴67は、通常、直径が0.05mm〜0.3mm、深さが0.6mm〜3.5mm程度の大きさを有し、マシニングセンタによるドリル加工によって形成されていた。
【0007】
例えば、打ち抜きピン54を保持するピンプレート55のように、段付きの貫通孔をマシニングセンタによるドリル加工によって穿孔する場合、まず、金属板に大径穴を穿孔するにあたり、センタドリルを用いて中心を決めるセンタ穴を開け、その後大径穴の径に対応するドリルによって金属板の途中まで穴開けを行った後、次に金属板を裏返し、大径穴の軸心と同じ位置にセンタドリルを用いてセンタ穴を開け、次いで小径穴の径に対応するドリルによって大径穴に連通する小径穴を穿孔することにより打ち抜きピン挿入穴67を有するピンプレート55を製作するようになっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなドリル加工では、セラミック穿孔装置用金型に打ち抜きピン挿入穴67を一つ一つ形成する必要があるために穴数が多い場合、穴開け加工に時間がかかるといった課題があった。
【0009】
例えば、セラミック積層パッケージを製造する場合、2万から3万程度の孔を有する未焼成セラミックシートWが用いられており、これに対応してピンプレート55やピンガイド56にも2万から3万程度の打ち抜きピン挿入穴67を形成しなければならないのであるが、このような数の打ち抜きピン挿入穴67をマシニングセンタで加工する場合、センタドリルの加工で2秒/1穴、ドリルの加工で20秒/1穴を要することから、2万個の打ち抜きピン挿入穴67を穿設する場合、120時間以上も要していた。
【0010】
また、ピンプレート55のように段付きの打ち抜きピン挿入穴67を形成する場合、打ち抜きピン挿入穴67内にドリル加工によるバリが発生し、打ち抜きピン54を挿入、保持する際、打ち抜きピン54が打ち抜きピン挿入穴67内で傾いて挿入され、このような状態でセラミック穿孔装置に組み込んで穿孔作業を行うと、打ち抜きピン54が破損するといった課題もあった。
【0011】
さらに、ドリルにより打ち抜きピン挿入穴67を穿孔すると、段付き部はドリルの先端形状に対応した傾斜面となっているため、セラミック穿孔装置に組み込んで穿孔作業を行うと、穿孔時の荷重によって打ち抜きピン頭部62が段付き部に噛み込み、打ち抜きピン54を交換する際、打ち抜きピン挿入穴67より容易に抜き取ることができないといった課題もあった。
【0012】
しかも、ドリル加工では打ち抜きピン挿入穴67の中心が所定の位置よりずれることがあり、一つの打ち抜きピン挿入穴67でもその中心が正規の位置から0.02mm以上ずれると不良品となってしまうという不都合もあった。
【0013】
また、打ち抜きピン54の外径が0.25mm以下になると、打ち抜きピン54をピンプレート55に正確に保持するためには、打ち抜きピン頭部62を挿入保持する大径穴の深さを3mm以上とする必要があるが、ドリル加工では、穴径が
0.3mm以下の穴を3mm以上の深さまで穿孔することができず、その結果、打ち抜きピン54をピンプレート55で正確に保持することができず、セラミック穿孔装置に組み込んで穿孔作業を行うと、打ち抜きピン54が破損するといった課題もあった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記に鑑み本発明の打ち抜きピンを保持するためのセラミック穿孔装置用金型
は、複数の穴を備えた複数枚の金属板を互いの穴の位置を合わせた状態で積み重ねて接合した板状体により形成し、各金属板の穴によって構成される複数の貫通孔は大径穴と該大径穴に連通する小径穴とからなり、上記大径穴は上記小径穴より深く、該貫通孔を打ち抜きピン挿入穴としたことを特徴とする。
抜きピンを保持するピンプレートの如きセラミック穿孔装置用金型に関するものである。
【0015】
上記金属板の穴はエッチングにより形成することが好ましく、その際、金属板の厚みは0.03mm〜0.5mmとすることが好ましく、さらには上記貫通孔を大径穴と小径穴とからなる段付き穴とし、上記大径穴の深さを3mm以上とすることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1(a)は本発明のセラミック穿孔装置用金型の一例であるピンプレートを示す斜視図で、図1(b)は同図(a)のα―α線断面図である。
【0018】
このピンプレート1は、複数の穴12,13を備えた複数枚の金属板11を互いの穴の位置を合わせた状態で積み重ねて接合した板状体2からなり、この板状体2には上記各金属板11の穴12,13によって構成される複数の貫通孔3,8を有している。
【0019】
このうち貫通孔3は打ち抜きピン挿入穴7で、大径穴4とこの大径穴4に連通する小径穴5とからなり、大径穴4には打ち抜きピン頭部が挿入され、小径穴5には打ち抜きピン先端が挿通され、貫通孔3内の段付き部6に打ち抜きピン頭部を引っかけて保持するようになっており、また、貫通孔8は複数枚の金属板11を正確に積み重ねるために形成された位置決め穴9で、上部から下部まで同じ大きさの径を有している。
【0020】
なお、板状体2を形成する複数枚の金属板11を接合する手段としては特に限定するものではないが、接着や融着により接合すれば良い。
【0021】
次に、図1(a)(b)に示すピンプレート1の製造方法を図2(a)〜(e)に示す。
【0022】
まず、図2(a)に示すように、金属板11の表面にレジスト液を塗布し、感光膜21を配する。次に、図2(b)に示すように、感光膜21の表面に、透光部23を有するフィルム22を感光膜21の上に敷設して紫外線により露光する。次いで、現像液にて現像し、図2(c)に示すように透光部23に対応する開口部25,26を有するレジスト部24を形成する。
【0023】
そして、図2(d)に示すように、開口部25,26にエッチング液として例えば塩化第ニ鉄液を用いてエッチングを施し、位置決め穴9に対応する穴13及び打ち抜きピン挿入穴7に対応する穴12をそれぞれ形成した後、レジスト部24を除去することにより複数の穴12,13を有する金属板11を複数枚製作する。また、パターンフィルム21を穴径の小さな他のパターンフィルムに交換することにより、小さな穴径を有する金属板11も同様に複数枚製作する。
【0024】
このように、エッチング加工によって穴12,13を形成すれば、一枚の金属板11に2万から3万もの穴12,13を有するものでも複数枚同時に製作することができ、作業時間を短くすることができる。
【0025】
ただし、エッチング加工によって穴12,13を形成する場合、金属板11の厚みWは0.03mm〜0.5mmとすることが好ましい。
【0026】
なぜなら、金属板11の厚みWが0.03mm未満となると、板状体2を形成するために積み重ねる金属板11の枚数が多くなり過ぎ、作業性が悪いからであり、逆に金属板11の厚みWが0.5mmを超えると、穴側面がテーパー状に形成され、精度の良い穴12,13を形成することができないからである。
【0027】
次に、金属板11を貼り合わせるのであるが、例えば、接着剤を介して接合する場合、金属板11の表面にスクリーン印刷にて接着剤を塗布する。この時、金属板11の穴12,13には接着剤が塗布されないよう所望のパターンを有する製版を用いて印刷する。
【0028】
そして、図2(e)に示すように、治具31に備える一対の位置決めピン30を、金属板11の穴13に通し、複数枚の金属板11を所定の順序で積み重ね、加圧した状態で接着剤を硬化させることにより図1(a)(b)に示すピンプレート1を得ることができる。
【0029】
このように、複数の穴12,13を有する複数枚の金属板11を積み重ねて接合することにより板状体2を形成するようにしたことから、打ち抜きピン挿入穴7をドリルで加工する場合と比較して製作時間を大幅に短縮することができる。
【0030】
また、複数の穴12,13を有する複数枚の金属板11を積み重ねる構造であることから、打ち抜きピン挿入穴7内に板状体2の上下面に平行な段付き部6を形成することができる。その為、図3に示すように、本発明のピンプレート1をセラミック穿孔装置に用い、未焼成セラミックシートWへ孔の打ち抜き作業を繰り返しても打ち抜きピン頭部62が段付き部6に噛み込むようなことがなく、打ち抜きピン54の交換時には容易に抜き取って交換することができる。
【0031】
さらに、打ち抜きピン挿入穴7の深さは、金属板11の厚みTや金属板11を貼り合わせる枚数により適宜調整することができるため、打ち抜きピン頭部62を挿入する大径穴4の直径が0.3mm以下、深さTが3mm以上の穴4でも容易に形成することがきる。
【0032】
その為、外径が0.25mmの打ち抜きピン54を保持する場合でも、ピンプレート1の上下面に対して垂直に保持することができるため、図3に示すように、本発明のピンプレート1をセラミック穿孔装置に用い、未焼成セラミックシートWへ孔の打ち抜き作業を繰り返しても確実に打ち抜きピン54の先端を下パンチ64の穴65に挿通させることができ、打ち抜きピン54を破損するようなことがない。
【0033】
なお、ピンプレート1を形成する金属板11は接着剤のみでも強固に固着することができるが、剥離方向に力がかかる場合にはリベットを用いて補助的に固定するようにしても良い。
【0034】
また、図2(e)では、複数枚の金属板11を接合するにあたり、接着剤を用いた例を示したが、接着剤の代りに、真空中もしくは不活性ガス中で加熱しながら加圧する拡散接合法を用いて接合するようにしても構わない。
【0035】
さらに、複数枚の金属板11を貼り合わせて板状体2を製作する際、予め大きめに形成しておき、板状体2とした後、所定の寸法形状とするため、その外周部をワイヤー放電加工機やレーザ溶断機により切り出すようにしても良く、このようにすれば板状体2を形成する金属板11の側面同士が溶着されるため、より剥がれ難い構造とすることができる。
【0037】
ここで、図1に示す厚さ8mmのピンプレート1を製作した。金属板11の厚みTは0.1mmとし、80枚の金属板11を用意し、各金属板11に露光、現像、エッチング加工を施して2万個の穴12,13を形成した。この時、一枚の金属板11に露光と現像を施すには10分かかることから、80枚処理するのに800分要し、また、一回のエッチング加工に要する時間は12分であり、10枚単位でエッチング加工を行ったため96分要した。
【0038】
そして、80枚の金属板11に接着剤を塗布するのに15分、金属板11を積み重ねるのに1分、接着剤を完全に硬化させるのに20分を要することから合計で約15.5時間で製作することができ、従来のドリルを用いた加工が120時間以上かかることを考えると製作時間を大幅に短縮できることがわかる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明のセラミック穿孔装置用金型によれば、複数の穴を備えた複数枚の金属板を互いの穴の位置を合わせた状態で積み重ねて接合した板状体により形成し、各金属板の穴によって構成される複数の貫通孔を打ち抜きピン挿入穴としたことから、セラミック穿孔装置用金型の製作時間を大幅に短縮することができる。特に、各金属板の穴をエッチングにより形成することでさらに製作時間を縮めることができるとともに、外径の小さな穴でも容易に形成することができ、さらに各金属板の厚みを0.03mm〜0.5mmとすることで、精度の高い穴を形成することができる。
【0040】
また、上記貫通孔を大径穴と小径穴とからなる段付き穴とし、上記大径穴の深さを3mm以上とすることにより、外径が0.25mm以下の打ち抜きピンでも正確に保持することが可能なものとすることができ、打ち抜きピンが折れ難いセラミック穿孔装置用金型とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック穿孔装置用金型の一例であるピンプレートを示す図で、(a)はその斜視図、(b)は(a)のα−α線断面図である。
【図2】(a)〜(e)は本発明のピンプレートの製造工程を示す概略図である。
【図3】図1のピンプレートを備えるセラミック穿孔装置の一部を示す概略断面図である。
【図4】一般的なセラミック穿孔装置の一部を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1:ピンプレート
2:板状体
3:貫通孔
4:大径穴
5:小径穴
6:段付き部
7:打ち抜きピン挿入穴
8:貫通孔
9:位置決め穴
11:金属板
12,13:穴
21:感光膜
22:フィルム
23:透光部
24:レジスト部
25,26:開口部
30:位置決めピン
31:治具
51:上金型
52:下金型
53:バネ
54:打ち抜きピン
56:ピンガイド
57:上蓋
58:上ダイセット
59:支持プレート
60:吊りボルト
61:ガイド棒
62:打ち抜きピン頭部
63:打ち抜きピン先端
64:下パンチ
65:穴
66:下ダイセット
W:未焼成セラミックシート
Claims (4)
- 複数の穴を備えた複数枚の金属板を互いの穴の位置を合わせた状態で積み重ねて接合した板状体からなり、上記各金属板の穴によって構成される複数の貫通孔は大径穴と該大径穴に連通する小径穴とからなり、上記大径穴は上記小径穴より深く、該貫通孔を打ち抜きピン挿入穴としたことを特徴とする打ち抜きピンを保持するためのセラミック穿孔装置用金型。
- 上記金属板の穴がエッチング加工により形成してあることを特徴とする請求項1に記載のセラミック穿孔装置用金型。
- 上記金属板の厚みが0.03mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項2のセラミック穿孔装置用金型。
- 上記大径穴の深さが3mm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求3のいずれかに記載のセラミック穿孔装置用金型。
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