JP4873539B2 - トルクコンバータ内蔵されるステータへのスラストレースの取付け構造 - Google Patents

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本発明はトルクコンバータに内蔵されているステータ支持部を構成するスラストレースの取付け構造に関するものである。
トルクコンバータとは周知の通りエンジンの動力を、作動流体を媒体としてトランスミッションへ伝えることが出来る一種の継手であり、エンジンによって回されるポンプインペラ、そして該ポンプインペラの回転により送り出される作動流体の動きを受けて回るタービンランナ、さらにタービンランナから出た作動流体の向きを変えてポンプインペラへ導くステータから構成されている。
そこで、これらポンプインペラ、タービンランナ、及びステータには複数枚のブレードが所定の角度をもって一定間隔で配列されている。トルクコンバータ内に封入されている作動流体は、ポンプインペラからその各ブレードを介して外周方向へ送り出され、トルクコンバータのケース内壁を伝い、タービンランナのブレードに当って該タービンランナをポンプインペラと同方向に回す働きをする。又タービンランナに当たってから送り出される作動流体は、ステータのブレードに当たってポンプインペラの回転を助長する方向に流れ方向が変えられ、再び内周からポンプインペラに流入する。
図5は従来のトルクコンバータの断面を示している。同図の(イ)はポンプインペラ、(ロ)はタービンランナ、(ハ)はステータ、そして(ニ)はピストンをそれぞれ示し、これらはトルクコンバータ外殻(ム)内に収容されている。そこでエンジンからの動力を得てフロントカバー(ホ)が回転し、該フロントカバー(ホ)と一体となっているポンプインペラ(イ)が回転し、その結果、作動流体を媒介としてタービンランナ(ロ)が回る。
そしてタービンランナ(ロ)のタービンハブ(ヘ)には軸(図示なし)が嵌って、タービンランナ(ロ)の回転をトランスミッション(図示なし)へ伝達することが出来る。トルクコンバータは一種の流体クラッチである為、ポンプインペラ(イ)の回転速度が低い場合には、タービンランナ(ロ)の回転を停止することが出来(車を停止することが出来)、しかしポンプインペラ(イ)の回転速度が高くなるに従ってタービンランナ(ロ)は回り始め、さらに高速になるに従ってタービンランナ(ロ)の速度はポンプインペラ(イ)の回転速度に近づく。しかし作動流体を媒介としているトルクコンバータでは、タービンランナ(ロ)の回転速度はポンプインペラ(イ)と同一速度にはなり得ない。
そこで、同図にも示しているようにトルクコンバータ外殻(ム)内にはピストン(ニ)が設けられていて、タービンランナ(ロ)の回転速度が所定の領域を越えた場合には、該ピストン(ニ)が軸方向に移動してフロントカバー(ホ)に係合するように作動することが出来る。ピストン外周には摩擦材(ト)が取り付けられている為に、該ピストン(ニ)は滑ることなくフロントカバー(ホ)と同一速度で回転することが出来る。そしてこのピストン(ニ)はタービンランナ(ロ)と連結していて、タービンランナ(ロ)はピストン(ニ)によって回されることになり、エンジンからの動力をトランスミッションへ、流体を介することによるロスを伴うことなくほぼ100%の高効率で伝達することが出来る。
このように、タービンランナ(ロ)の回転速度が高くなって、ある条件になった時に、ピストン(ニ)はフロントカバー(ホ)に係合して、作動流体を媒体としないでタービンランナ(ロ)を直接回転駆動させることが出来る。しかし係合前は、タービンランナ(ロ)とフロントカバー(ホ)の回転速度は完全に同一ではなく、ピストン(ニ)がフロントカバー(ホ)に係合することで、速度差に基づく衝撃トルクが発生する。この係合時の衝撃を緩和し、一方では係合後にエンジンのトルク変動を伝えない為にピストン(ニ)とタービンランナ(ロ)との間にはダンパスプリング(チ)、(チ)…、を備えたロックアップダンパ装置(ヌ)が取付けられている。
したがって、タービンランナ(ロ)と共に同一速度で回転しているピストン(ニ)が僅かに速いフロントカバー(ホ)に係合する際、ピストン(ニ)の速度は瞬間的に高くなってタービンランナ(ロ)をより速く回そうとするトルクが作用する。この衝撃的トルクをダンパスプリング(チ)、(チ)…が圧縮変形して吸収するように構成されている。ピストン(ニ)はタービンランナ(ロ)のタービンハブ(ヘ)に同軸を成して取り付けられているが、ダンパスプリング(チ)、(チ)…の圧縮変形によって上記タービンランナ(ロ)と位相差を生じることが出来る構造となっている。
そして、トルクコンバータにはステータが備えられていて、タービンランナに当たってから送り出される作動流体は、ポンプインペラの回転を助長する方向に流れ方向が変えられる。該ステータはポンプインペラとタービンランナとの間に配置され、ポンプインペラの回転方向にのみ回転するように、該ステータと固定シャフトとの間にはステータ支持機構が備えられている。従来のステータ支持機構は、ステータホイールと、ワンウエイクラッチと、リテーナとを有している。ワンウエイクラッチはステータを一方向にのみ回転可能とする為の部材であり、固定シャフト廻りに環状に配置されている。ワンウエイクラッチは、アウターレースと、インナーレースと、クラッチ部材とから構成している。
アウターレースは、ワンウエイクラッチの外周側に環状に配置されており、ステータホイールに回転不能な状態で固定されている。インナーレースは、ワンウエイクラッチの内周側に環状に配置されており、固定シャフトと相対回転不能に固定されている。クラッチ部材は、アウターレースとインナーレースとの間に配置されており、アウターレースとインナーレースとの相対回転を一方向にのみ許容するものである。
タービンランナからポンプインペラへ作動油が戻る際に、ステータにより作動油の流れを調整している。ポンプインペラとタービンランナの回転数の差が大きい時は、タービン内周側からインペラ内周側へ流れる作動油は、インペラの回転を妨げる方向に流れる。その為に、ブレード前面、つまりインペラ回転方向と同じ側の面に作動油が衝突し、作動油の流れ方向がインペラ回転方向に変わる。この時、ワンウエイクラッチがステータを固定状態にしている。この結果、トルクコンバータのトルク比は大きくなる。
又、インペラとタービンとの回転数の差が小さくなると、タービンの内周側からインペラ内周側へ流れる作動油は、ブレード背面、つまりインペラ回転方向と逆側の面に当るようになる。この時、ワンウエイクラッチがステータを回転可能としているためにブレード背面に当った作動油は、インペラの回転を妨げる方向に流れることはない。その結果、トルクコンバータのトルク伝達効率は向上する。
上記機能を果たす為に、ステータはポンプインペラ及びタービンランナと一定のクリアランスを保ちながら滑らかに相対回転する必要があり、ステータ支持機構はトルクコンバータのトルク比増大及びトルク伝達効率の向上を実現する為の重要な構成要素である。
ところで、前記図5に示すように、ステータは一定方向に回転すると共に軸方向の移動がないように取付けられている。すなわち、インナーレースは固定軸に取着されて回転しないが、アウターレースはステータホイールと共に回転することが出来、該ステータホイールが軸方向に移動しないようにスラストベアリングが取付けられるが、該ステータホイールの表面にはスラストレースが取着されている。すなわち、スラストレースを介してスラストベアリングにて支持される構造と成っている。
図6はワンウエイクラッチ(リ)を備えた従来のステータ(ハ)を表している。ステータホイール(ル)にはアウターレース(ル)が固定され、固定軸に取着されるインナーレース(ワ)との間にはクラッチ部材(カ)が介在しており、アウターレース(オ)及びステータホイール(ル)を一方向へ回転することが出来る。そして、アウターレース(オ)にはスラストベアリングを受ける為のスラストレース(ヨ)が取着されているが、このスラストレース(ヨ)の取付け構造が複雑であり、製作並びに組み立て作業に要する工数が増えてコスト高を招いている。
すなわち、図6(c)には(b)のA部拡大斜視図を示しているように、ステータホイール(ル)に設けた内周溝(タ)にスナップリング(レ)を嵌めてスラストレース(ヨ)の脱落を防止している。そしてスラストレース(ヨ)の廻り止めは、アウターレース(ル)に設けた凹部に外周に形成したツメ(ソ)を嵌めることで行っている。従って、ステータホイール(ル)の内周溝(タ)の加工を行わなくてはならず、該内周溝(タ)にはスナップリング(レ)を嵌めなくてはならない。又スラストレース(ヨ)の廻り止めは上記ツメ(ソ)が嵌る凹部をブローチ加工やフライス加工しなくてはならない。
従来においてもトルクコンバータのステータに関する文献は色々知られている。例えば、特開2005−195167に係る「トルクコンバータのステータ支持機構」は、部品の一部を一体化することで、部品点数の削減及びコスト低減を図ると共に、部品寸法を小さくして軸方向への小型化を実現するものである。
特開2002−106675に係る「トルクコンバータのステータ支持構造」は、部品点数を少なくし、軸方向の小型化を図ったものである。
しかし、これらは本発明が対象としているスラストレースの取付け構造に関するものではない。
特開2005−195167に係る「トルクコンバータのステータ支持機構」 特開2002−106675に係る「トルクコンバータのステータ支持構造」
このように従来のトルクコンバータのステータの組付けに際してのスラストレースの取付け作業には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、簡単な構造で組付け作業が容易に行うことが出来るステータへのスラストレースの取付け構造を提供する。
本発明のステータへのスラストレース取付け構造は、従来のようナスナップリングを用いることなくスラストレースは外れないように、しかも回転しないように固定したもので、該スラストレースを取付けた状態でカシメた構造としている。従って、スナップリングが嵌る内周溝を設ける必要がなく、内周溝加工は不要となる。その代わりに、ステータホイールの内輪先端をカシメ易くする為の先端形状と成っている。
このように、ステータホイールにスラストレースを取付けてカシメることで、外れ防止を図ることが出来るが、廻り止めを達成する為に一部に凹部を設け、この凹部に嵌るツメがスラストレース外周部に突出した形状と成っている。一方、スラストレースの外周部に設けたツメを概略U形とし、このU形ツメをステータホイールの凹部に嵌め、ステータホイールの内輪先端をカシメた構造とすることも出来る。カシメはローラを用いて全周にわたって行われるが、U形ツメの先端がカシメ部に係止することでスラストレースは外れない。又、ツメは凹部に嵌ることで廻り止め効果が図られる。
本発明に係るスラストレースの取付け構造は、スナップリングを用いることなくステータホイールに取付け、外れないようにローラでカシメられる。その為に、従来の内周溝を加工する必要がなくなり、加工工数は小さくなる。そして、ステータホイール側に設けた凹部にツメを嵌めることでスラストレースの廻り止め効果が得られる。上記ツメが嵌る為の凹部はダイキャストによってステータホイールと共に成形され、又カシメる為の内輪先端もダイキャスト成形することが出来る。
図1はステータ1を示しており、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(b)におけるA部拡大斜視図、(d)は(b)におけるB部拡大斜視図をそれぞれ表している。該ステータ1は同図に示すように、ステータホイール2から複数枚のブレード3,3・・が外方向へ放射状に延び、先端は外輪4に連結している。ここで、ステータの基本的な作用に関しては前述した通り、従来と同じである。
ステータはアルミ合金を材質としてダイキャスト成形され、そのステータホイール2の軸穴にはワンウエイクラッチが嵌って取着され、該ワンウエイクラッチはアウターレース5とインナーレース7、及びその間に介在するクラッチ部材6とで構成されている。該インナレース7の内周面はスプラインが形成されていて、回転しないスプライン軸がインナーレース7の軸穴に嵌ることで、インナーレース7は回転しないで固定される。ステータホイール2はワンウエイクラッチを介して支持され、一定方向にのみ回転することが出来る。
ところで、ステータ1は一定方向にのみ回転してタービンランナからポンプインペラ側へ作動油を循環させることが出来るが、ステータホイール2の両側にはスラストベアリングが配置されていて、軸方向への移動が規制される支持構造となっている。これらの点は、従来のステータの場合と共通し、スラストベアリングが当る面にはスラストレース8が取付けられている。
スラストレース8は図2に示しているように、金属板を成形した概略リング体をなし、平坦な表面部9の外周には外周部10が起立し、この外周部10にはストレートツメとL形ツメが設けられている。ストレートツメ11は外周部10からストレートに延びて、外周部10の4箇所に設けられ、L形に屈曲したL形ツメ12,12・・は外周部10の4箇所に形成されている。そして、表面部9の中心には穴13が貫通している。
このような概略リング形状のスラストレース8はワンウエイクラッチのツバ14が穴13に嵌って位置決めされ、表面部9はステータホイール2の表面に当接している。そして、外周部10にステータホイール2が嵌った状態でスラストレース8が取付けられ、スラストレース外周部10に形成したストレートツメ11,11・・は外周面15と内輪16との間には設けられている凹部17,17・・に嵌入している。
このように、ストレートツメ11,11・・が凹部17,17・・に嵌入することでスラストレース8は回転しないように拘束される。一方、外周部10に設けたL形ツメ12,12・・は内輪16側へ延びている。そして、内輪16の先端18をローラにて押圧することで該L形ツメ12,12・・はカシメられ、スラストレース8はステータホイール2に固定される。すなわち、ステータホイール2から離脱することなく、しかも回転することなく固定される。
ところで、ステータホイール2、その内輪16、外輪4、並びにブレード3,3・・はアルミ合金を材質としたダイキャストにて成形され、その為にステータホイール2とその内輪16との間に凹部17,17・・を設けることは簡単であり、ダイキャストにて同時成形される。そして、内輪16にカシメ用の先端18を設けることも同じく簡単である。ただし、スラストレース8の表面部9が当接するステータホール表面、外周部10が嵌るステータホイール2の外周面15に関しては切削加工されて、所定の寸法が出される。
図3は本発明に係る他の実施例であり、スラストレース8の外周部10に設けたU形ツメ19にて該スラストレース8の外れ防止と回転防止が図られている。図4は該スラストレース8を単独で表しているが、表面部9の中心には穴13が貫通して設けられ、外周には外周部10が起立して沿設され、この外周部10の4箇所にはU形ツメ19,19・・を設けている。
このスラストレース8は、前記図2に示したスラストレース8の場合と同じく、ワンウエイクラッチのツバ14が穴13に嵌って位置決めされ、表面部9はステータホイール2の表面に当接している。そして、外周部10にはステータホイール2が嵌ることでスラストレース8が取付けられ、U形ツメ19,19・・は外周面15と内輪16との間に設けられている凹部17,17・・に嵌入している。
このように、U形ツメ19,19・・が凹部17,17・・に嵌入することでスラストレース8は回転しないように拘束される。そして、内輪16の先端18をローラにて押圧することで該U形ツメ19,19・・はカシメられ、スラストレース8はステータホイール2に固定される。すなわち、ステータホイール2から離脱することなく、しかも回転することなく固定される。
トルクコンバータに取付けられるステータで、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(b)におけるA部拡大斜視図、(d)は(b)におけるB部拡大斜視図を表している。 スラストレースの具体例。 トルクコンバータに取付けられるステータで、(a)は正面図、(b)は(a)におけるC−C断面図、(c)は(b)におけるA部拡大斜視図を表している。 スラストレースの具体例。 従来のトルクコンバータ。 トルクコンバータに取付けられる従来のステータで、(a)は正面図、(b)は(a)におけるE−E断面図、(c)は(b)におけるA部拡大斜視図を表している。
符号の説明
1 ステータ
2 ステータホイール
3 ブレード
4 外輪
5 アウターレース
6 ワンウエイクラッチ
7 インナーレース
8 スラストレース
9 表面部
10 外周部
11 ストレートツメ
12 L形ツメ
13 穴
14 ツバ
15 外周面
16 内輪
17 凹部
18 先端
19 U形ツメ











Claims (2)

  1. トルクコンバータに内蔵されるステータの軸方向移動を規制する為にスラストベアリングが当るスラストレースを取付ける為の構造において、スラストレースは中心に穴を貫通した概略リング体をなし、表面部外周には外周部を沿設し、外周部には複数のストレートツメと複数のL形ツメを形成し、ステータホイールのアウタレース圧入面と内輪との間には凹部を設け、スラストレースの表面部をステータホイール表面に当接すると共に外周部を外周面になじませて取付け、ストレートツメを凹部に嵌めて内輪先端をカシメてL形ツメを固定したことを特徴とするステータへのスラストレースの取付け構造。
  2. トルクコンバータに内蔵されるステータの軸方向移動を規制する為にスラストベアリングが当るスラストレースを取付ける為の構造において、スラストレースは中心に穴を貫通した概略リング体をなし、表面部外周には外周部を沿設し、外周部には複数のU形ツメを形成し、ステータホイールのアウタレース圧入面と内輪との間には凹部を設け、スラストレースの表面部をステータホイール表面に当接すると共に外周部を外周面になじませて取付け、上記U形ツメを凹部に嵌めて内輪先端をカシメて固定したことを特徴とするステータへのスラストレースの取付け構造。










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