JP4870278B2 - 多孔質活性炭化物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鶏糞又は畜糞を原料とした良好な吸着力を有する多孔質活性炭化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、鶏糞や畜糞は乾燥して肥料としたり、堆肥化して土壌の改良に利用されている。しかしながら、大規模な養鶏場や牧畜場から排出される鶏糞や畜糞の量はきわめて多く、その有効な処理方法や利用方法が求められている。処理方法の一例として鶏糞等を焼却することも考えられるが、これでは鶏糞等の有効利用を図ることができず、また、焼却によってダイオキシン等の有毒物質を発生する危険性もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、鶏糞や畜糞の有効利用について研究を重ねた結果、鶏糞や畜糞を炭化及び賦活処理すると、ダイオキシン等の有毒物質を発生することなく、実用できるレベルの吸着力を備えた付加価値のある多孔質活性炭化物が得られ、例えば、畜産汚水の脱色用、畜舎及び堆肥の脱臭用、都市ゴミ等の焼却プラントから排出されるダイオキシンの吸着用、及び、その他の種々の用途に実用できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0004】
即ち、本発明は、鶏糞や畜糞を原料とする実用レベルの吸着力を備えた多孔質活性炭化物の、生産性、省エネルギー性に優れた製造方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の多孔質活性炭化物の製造方法は、鶏糞又は畜糞を炭化炉内で回転するレトルトの一端の投入口から投入し、レトルトの他端の取出口に向かって移送しながら、レトルトの一端側の加熱昇温領域で鶏糞又は畜糞を加熱昇温させ、続いてレトルトの中央部の炭化処理領域で鶏糞又は畜糞を800℃以上の高温で炭化処理して素灰となし、続いてレトルトの他端側の賦活処理領域で上記炭化処理温度よりも高い温度で上記素灰を水蒸気と接触さて賦活処理することにより多孔質活性炭化物となすことを特徴とするものである。
本発明の製造方法においては、上記素灰に接触させる上記水蒸気の量を、上記素灰1に対し1〜1.5の重量比の範囲内とすることが望ましい。
【0006】
市販の木質活性炭は、炭素や他の可燃分が99重量%程度を占め、灰分が1重量%程度と少なく、比表面積や全細孔容積が大きいため、優れた吸着力を有している。これに対し、鶏糞や畜糞を原料とする本発明の製造方法で得られる多孔質活性炭化物は、炭素や他の可燃分が70〜75重量%程度であり、灰分が25〜30重量%程度と木質活性炭より遥かに多いためpHが高く、比表面積や全細孔容積も木質活性炭より小さい。そのため、本発明の製造方法で得られる活性炭化物の吸着力は、市販の木質活性炭ほど大きくないが、それでも後述の実験データから裏付けられるにように、メチレンブルー吸着力やヨウ素吸着力や畜産汚水吸着力(脱色率)が木質活性炭の半分以上であり、充分に実用できるレベルである。
【0007】
また、本発明の製造方法のように、回転するレトルトの一端側の加熱昇温領域で鶏糞又は畜糞を加熱昇温させ、続いてレトルトの中央部の炭化処理領域で鶏糞又は畜糞を800℃以上の高温で炭化処理して素灰となし、続いてレトルトの他端側の賦活処理領域で上記炭化処理温度よりも高い温度で上記素灰を水蒸気と接触さて賦活処理すると、上記のように実用レベルの吸着力を備えた付加価値のある多孔質活性炭化物を簡単かつ効率良く製造することが可能となり、炭化処理と賦活処理を分離して別々に行う場合のように、炭化処理で得られた炭化物(素灰)を賦活処理するために再び高温に加熱する必要がなくなるので省エネルギーを達成でき、生産性も向上する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0009】
図1は、本発明の製造方法に用いる炭化炉の一例である外熱ロータリキルンの概略説明図である。
【0010】
この外熱ロータリキルンは、レトルト1を炉内に貫通させて設けたもので、レトルト1の両端部が支持ローラ2,2で支持されており、一方の指示ローラ2をモータMで回転させると、レトルト1が回転するようになっている。このレトルト1は、原料投入口1aのある一端部から取出口1bのある他端部に向かって徐々に低くなるように傾斜し、上記のようにレトルト1が回転すると、レトルト1内部に投入された原料3が他端の取出口1bに向かって少しずつ移送されるようになっている。また、原料投入口1aの内部には原料移送用のスクリュー1cが内蔵され、このスクリュー1cがモータMで回転すると、原料3がレトルト1内へ送り込まれるようになっている。なお、レトルト1を傾斜させないで水平に設置し、レトルト1の内周面に原料移送用の螺旋条(不図示)を設けて原料3を移送するように構成してもよい。
【0011】
このレトルト1は、原料投入口1aのある一端側の略1/3の領域が原料3を加熱昇温させる加熱昇温領域、中央の略1/3の領域が原料を炭化処理する炭化処理領域、取出口1bのある他端側の略1/3の領域が水蒸気で賦活処理する賦活処理領域になっている。そして、このレトルト1の他端側の賦活処理領域には水蒸気供給管4が挿入され、該供給管4に形成された多数の放出孔から賦活処理用の水蒸気が供給されるようになっている。
【0012】
また、このレトルト1の他端側の乾留ガス取出口1dから取出された乾留ガスは燃焼器5に供給され、ファンFから供給される空気と混合されて、助燃バーナ5aで燃焼されるようになっている。そして、発生した熱風は炉壁の入気口1eから炉内へ導入され、この熱風によって炉内の温度が高温に保たれるようになっており、更に、炉内の熱風は排気口1fから廃ガスとして排出されるようになっている。
【0013】
本発明の多孔質活性炭化物の製造方法は、炭化処理と賦活処理を連続して行える上記の外熱ロータリキルンを用いて、次の要領で実施される。
【0014】
予め燃焼器5の助燃バーナ3を着火し、熱風を炉内へ送り込んで炉内の温度を高めてから、レトルト一端側の原料投入口1aより原料3として鶏糞又は畜糞をスクリュー1cでレトルト1の内部へ連続的に送り込む。原料3の鶏糞としては、水分が30重量%程度、灰分が20重量%程度、炭素が31重量%程度、他の可燃成分が19重量%程度の組成を有する粉状の乾燥鶏糞などが好適に使用されるが、醗酵鶏糞なども使用される。また、原料の畜糞も、粉状の乾燥畜糞や醗酵畜糞が使用される。
【0015】
レトルト1の内部へ投入された鶏糞等の原料3は、レトルト1の回転に伴って徐々に他端側に向かって移送されながら、レトルト1の一端側の加熱昇温領域で炭化処理に適した温度まで加熱昇温され、更に、レトルト1中央の炭化処理領域で炭化処理されて水分が完全に除去される。このとき鶏糞等の原料3の熱分解によって発生した乾留ガスは、前述したように、乾留ガス取出口1dから燃焼器5へ送られて燃焼され、その熱風が炉内へ導入されるため、レトルト1は炭化処理やその後の賦活処理に適した温度に維持される。
【0016】
炭化処理に適した温度は800℃以上、好ましくは830℃程度であり、処理時間は30分程度である。800℃より低い温度、例えば700℃程度の温度で炭化処理をすると、後述の実験データから裏付けられるように吸着力がやや劣る活性炭化物となる。
【0017】
炭化処理された原料3(素灰)は更に加熱されながらレトルト1の他端側の賦活処理領域へ連続的に移送され、水蒸気供給管2から供給される水蒸気と接触して賦活され、吸着力を有する多孔質活性炭化物30となって、取出口1bから取り出される。そして、この多孔質活性炭化物30は、必要に応じて、平均粒径が1mm以下の粉体に粉砕されて製品となる。このように炭化処理の最後に賦活処理を連続して行うと、炭化処理と賦活処理を分離して炭化炉と賦活炉で別々に行う場合のように、炭化処理で得られた炭化物(素灰)を賦活処理する際に再び高温に加熱する必要がなくなるので、省エネルギーを達成でき、生産性も向上する。
【0018】
水蒸気による賦活処理は、炭化処理温度よりも高い温度、例えば900℃程度で行うことが望ましく、その処理時間は30分程度である。また、供給する水蒸気量は、炭化処理した原料(素灰)1に対して水蒸気1〜1.5の重量比の範囲内とすることが望ましい。水蒸気量が上記の範囲を下回ると、賦活が不充分となるため得られる活性炭化物の吸着力が低下するといった不都合を生じ、逆に、上記の範囲を上回る量の水蒸気を供給しても、それに見合った賦活効果の向上がないので無駄になる。
【0019】
尚、炭化処理や賦活処理の処理時間は上記のように30分程度であるから、原料3がレトルト1の炭化処理領域と賦活処理領域をそれぞれ30分程度で通過するように、原料3の移送速度を調節することが必要となる。
【0020】
以上の製造方法によって得られる多孔質活性炭化物30は、鶏糞や畜糞を原料とするので、炭素や他の可燃分が木質活性炭より少なく70〜75重量%程度であり、一方、灰分は25〜30重量%程度と木質活性炭より遥かに多いためpHが高く、比表面積や全細孔容積も木質活性炭より小さい。そのため、本発明の活性炭化物30の吸着力は、市販の木質活性炭ほど大きくないが、それでもヨウ素吸着力は木質活性炭の1.6倍、畜産汚水吸着力(脱色率)は木質活性炭の半分以上であり、充分に実用できるレベルである。従って、本発明の活性炭化物は、畜産汚水の脱色、畜舎や堆肥の脱臭、その他の種々の用途に実用することができる。
【0021】
次に、本発明の製造方法で得られる多孔質活性炭化物の吸着力試験について説明する。
【0022】
(試料の準備)
前記の外熱ロータリキルンを用いて、乾燥鶏糞(水分:30重量%)を830℃で30分間炭化処理すると共に、連続して900℃で30分間水蒸気賦活処理(水蒸気量1:1)して得られた多孔質活性炭化物を粉砕し、JIS Z8801に規定する網46μmふるい(330メッシュパス)で篩別を行い、恒温乾燥器中で乾燥した多孔質活性炭化物の粉末を試料Aとして準備した。
【0023】
また、炭化炉内で700℃で30分間炭化処理し、更に別の賦活炉内で900℃で60分間水蒸気により賦活処理して得られた多孔質活性炭化物を、同様に粉砕、篩別、乾燥したものを比較用試料Bとして、また、市販の木質活性炭を乾燥したものを比較用試料Cとして準備した。
【0024】
(試験方法)
試料Aについて、JIS K1474の活性炭試験方法に基づき、吸着溶質にヨウ素とメチレンブルーを採用して、それぞれの吸着等温度線のグラフから、ヨウ素残留濃度が2.5g/lのときの吸着量と、メチレンブルー残留濃度が0.24mg/lのときの吸着量を求めて、ヨウ素吸着力とメチレンブルー吸着力を評価した。また、畜産汚水についても同様に試験し、吸光度減少率を求めて試料Aの畜産汚水吸着力を評価すると共に、COD除去率も求めた。
【0025】
比較のために、上記の比較用試料Bと比較用試料Cについても同様に、ヨウ素吸着力、メチレンブルー吸着力、畜産汚水吸着力、COD除去率を求めた。
【0026】
(試験結果)
下記の表1に示すように、本発明の活性炭化物よりなる試料Aは、ヨウ素吸着力が1620mg/gであって、市販の木質活性炭よりなる比較用試料Cのヨウ素吸着力(1000mg/g)の略1.6倍の吸着性能を有している。そして、この試料Aのメチレンブルー吸着力は52mg/g未満で、比較用試料Cのメチレンブルー吸着力(150mg/g)の略35%程度であるが、試料Aの畜産汚水吸着力は0.198で、比較用試料Cの畜産汚水吸着力(0.368)の略54%であり、また、試料AのCOD除去率は33.4%で、比較用試料CのCOD除去率(57.6%)の略58%である。この結果から、本発明の活性炭化物よりなる試料Aは、総合的な吸着性能が、市販の木質活性炭よりなる比較用試料Cのおよそ半分程度であり、畜産汚水の脱色、畜舎や堆肥の脱臭、その他の種々の用途に充分実用できることが分かる。
【0027】
一方、700℃で炭化処理を行い、別の賦活炉で賦活処理して得られた活性炭化物からなる比較用試料Bは、下記の表1に示すように、ヨウ素吸着力が337mg/g、メチレンブルー吸着力が17mg/g未満、畜産汚水吸着力が0.17mg/g、COD除去率が17.6%であり、総合的な吸着性能が本発明の試料Aよりも劣っている。これは、炭化処理温度が700℃であること、炭化処理と賦活処理を別々に行っていること等に原因があるものと思われる。
【0028】
【表1】
Figure 0004870278
【0029】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の製造方法によって製造される、鶏糞や畜糞を原料とする多孔質活性炭化物は、市販の木質活性炭のおよそ半分程度の総合的な吸着性能を有し、畜産汚水の脱色、畜舎や堆肥の脱臭、その他の種々の用途に充分実用できるものであり、本発明の製造方法は、そのような充分実用可能な多孔質活性炭化物を、省エネルギーを達成しつつ生産性良く量産できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多孔質活性炭化物の製造方法に用いる外熱ロータリキルンの概略説明図である。
1 レトルト
1a 原料投入口
1b 取出口
1c スクリュー
1d 乾留ガス取出口
1e 入気口
1f 排気口
2 支持ローラ
3 原料(鶏糞又は畜糞)
4 水蒸気供給管
5 燃焼器
30 多孔質活性炭化物

Claims (2)

  1. 鶏糞又は畜糞を炭化炉内で回転するレトルトの一端の投入口から投入し、レトルトの他端の取出口に向かって移送しながら、レトルトの一端側の加熱昇温領域で鶏糞又は畜糞を加熱昇温させ、続いてレトルトの中央部の炭化処理領域で鶏糞又は畜糞を800℃以上の高温で炭化処理して素灰となし、続いてレトルトの他端側の賦活処理領域で上記炭化処理温度よりも高い温度で上記素灰を水蒸気と接触さて賦活処理することにより多孔質活性炭化物となすことを特徴とする多孔質活性炭化物の製造方法。
  2. 上記素灰に接触させる上記水蒸気の量を、上記素灰1に対し1〜1.5の重量比の範囲内としたことを特徴とする請求項1に記載の多孔質活性炭化物の製造方法。
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