[第1の実施形態]
以下に、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。最初に、本実施形態の建物の間取りを図1及び図3に基づいて説明する。なお、図1は、ガレージ付き建物の部屋の間取りを示す図であり、図3は、ガレージ11及びその周辺の一部を示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態の建物10には、リビング14やダイニング15等の居住空間が備えられているとともに、居住空間に隣接するようにして車庫としてのガレージ11が備えられている。ガレージ11は、建物10に一体的に設けられた所謂インナガレージとなっており、自動車等の車両18の駐車が可能な駐車スペース16を有している。ガレージ11には、リビング14との間を仕切るリビング側内部壁21と屋外空間との間を仕切る外部壁23とがそれぞれ側方に立設されており、ダイニング15との間を仕切るダイニング側内部壁22が奥方に立設されている。駐車スペース16は、リビング側内部壁21、ダイニング側内部壁22及び外部壁23により囲まれるとともにガレージ床面13とガレージ天井面(図示略)との間に形成された空間によって構成されている。
リビング側内部壁21の一部には、住人等の出入りが可能なリビング側出入口25が設けられており、そのリビング側出入口25によりリビング14とガレージ11とが連通されている。また、リビング側内部壁21には、リビング側出入口25に対してスライド可能なリビング側引き戸24が設けられている。このリビング側引き戸24がスライドされることによりリビング側出入口25が開放及び閉鎖されるようになっている。
一方、ダイニング側内部壁22の一部には、ダイニング側出入口27が設けられており、ダイニング15とガレージ11とが連通されている。ダイニング側内部壁22には、ダイニング側出入口27に対してスライド可能なダイニング側引き戸26が設けられている。このダイニング側引き戸26がスライドされることによりダイニング側出入口27が開放及び閉鎖されるようになっている。なお、リビング側引き戸24及びダイニング側引き戸26は、スライド式ではなく回動式の扉であってもよい。
ガレージ11の一側面にはガレージ開口部17が形成されており、そのガレージ開口部17を通じて人や車両18の出入りが可能となっている。ガレージ開口部17には、手動又は電動で開閉されるシャッタ28が設けられている。シャッタ28は横引き開閉式の所謂パイプシャッタである。図3に示すように、シャッタ28の下方におけるガレージ床面13には、シャッタ28のスライド移動を案内するシャッタレール38が配設されており、また、シャッタ28の上方には同じくシャッタ28のスライド移動を案内するシャッタレール(図示略)がガレージ11上部に配設されている。シャッタ28は、その下端及び上端をそれぞれシャッタレール38にスライドさせることにより、ガレージ開口部17を開閉している。
ガレージ開口部17のリビング14側にはシャッタ28を収納するシャッタボックス37が備えられている。シャッタボックス37内にはシャッタ収納ローラ40が備えられており、ガレージ開口部17が開放している場合には、シャッタ28はこのシャッタ収納ローラ40により巻き取られた状態で収納されている。
次に、ガレージ11内の特徴的構成について、図2乃至図6に基づいて、詳細に説明する。なお、図2はガレージ開口部17側からみたパース、図4は図3の要部縦断面図、図5はガレージ11周辺の基礎を示す平面図、図6は駐車スペース16の利用状態を示す平面図である。
図4及び図5に示すように、ガレージ11下部を構成する基礎19のうち、リビング14側に設けられているリビング側基礎19aには、ガレージ11側に開口する凹状のスペースが設けられている。そして、このスペースには、駐車スペース16に床面30を形成する床形成装置20が収納されている。以下、このスペースを収納領域43という。
収納領域43が設けられているリビング側基礎19aは、図5に示すように、周知の基礎19と比べてその幅が大きく形成されている。リビング側基礎19aは、より具体的に説明すると、縦断面がコ字状をなしており、その開口部をガレージ11側に向けて、ガレージ11の奥行き方向に沿って長尺状に形成されている。リビング側基礎19aは、その長手方向の両端において、リビング側基礎19aの長手方向に対して直交する方向に延びている基礎19とそれぞれ交差し、一体となっている。その結果、リビング側基礎19aには、前述したように、ガレージ11側にのみ開口する直方体状のスペースが形成され、このスペースが収納領域43となっている。
また、図5に示すように、リビング側基礎19aの、収納領域43を挟んだ両側の部分、つまり、リビング側基礎19aと、その長手方向の両端においてリビング側基礎19aの長手方向に対して直交する方向に延びている基礎19と、の交差部分には、建物10の柱46が立設されている。本実施形態の建物10は、この柱46によって、建物10の荷重の大部分を支える構造となっている。そのため、縦断面形状がコ字状をなしていることにより強度的に弱くなっている、リビング側基礎19aの収納領域43上方部分には、大きな荷重が加わることがないような構造となっている。したがって、収納領域43を備えるリビング側基礎19aが、建物10の荷重によって壊れるおそれはない。
次に、床形成装置20の詳細について説明する。まず、床形成装置20が収納領域43に収められている状態について説明する。
床形成装置20は、床面30を形成する床体29と、床体29を支持する複数の床支持体34とを備えている。
床体29は、ガレージ11の奥行き方向に沿って延びている長尺状の板状部材からなる複数の床小板31が、長手方向を平行に、かつ短手方向に並べられた状態で、ヒンジ等の連結材により連結されることにより構成されている。したがって、床体29は、各床小板31間において折り曲げ可能に構成されている。
床体29は、図4に示すように、収納領域43内において奥側に配置された床体ボックス45に収納されている。詳しくは、床体29は、床体ボックス45内に備えられた床体収納ローラ44により巻き取られた状態で収納されている。
床支持体34は、矩形板状に形成された面材からなる支持部材35の集合体であるパンタグラフ部36が複数、連結されることにより構成されている。パンタグラフ部36は、4つの支持部材35から構成されており、それぞれの端部同士を折り曲げ可能に連結することにより、平面視で菱形となるように組みつけられるとともにパンタグラフ状に変形可能とされている。床支持体34は、パンタグラフ部36が、複数、直列に対角位置で連結されることにより構成されている。したがって、床支持体34を構成する各パンタグラフ部36は、その直列連結方向に伸縮可能となっており、その結果、床支持体34全体として、当該直列連結方向に伸縮可能となっている。なお、各パンタグラフ部36は、その平面視における形状が正方形となるところまで延びると、それ以上延びないように伸長規制がかかるようになっている。
床支持体34は、収納領域43内において、床体ボックス45の開口側(ガレージ11側)に、縮められた状態で収納されている。床支持体34の収納時の状態をより詳しく説明すると、床支持体34は、そのパンタグラフ部36の菱形が完全に潰れて支持部材35の板面同士が向き合うようにして伸縮方向の全体の厚さが縮小された状態で収納されている。また、床支持体34は、その伸縮方向がシャッタ28開閉方向と一致する向きで収納されており、その収納領域43奥側の端部において床体ボックス45に取り付けられている。なお、収納領域43内における床支持体34の上面には、床体収納ローラ44からガレージ11側に延びている床体29が載せられている。
以上のように、収納領域43内の奥側には、巻き取られた状態の床体29が、収納領域43内の開口側には、縮められた状態の床支持体34が、それぞれ収納されている。
ところで、上記床形成装置20は、収納領域43から引き出すことができる。そこで、次に、床形成装置20が収納領域43から引き出された状態について説明する。
床形成装置20は、図3及び図4に示すように、床体29及び各床支持体34が連結部材32を介して連結されることにより構成されている。
連結部材32は、ガレージ11の奥行き方向に沿って延びている長尺状の部材であり、床体29の外部壁23側端部に当接された状態で、床体29と連結されている。連結部材32の上端は床体29が形成する床面30と略同じ高さであり、また、連結部材32の下端はガレージ床面13と近接した位置関係にある。
床体29は、床形成装置20が収納領域43から引き出された状態にある場合には、ガレージ床面13より上方でかつ、リビング14の床面より若干低い位置に床面30を形成する。
床体29を下方から支持する各床支持体34は、それぞれ、その外部壁23側端部が連結部材32に取り付けられている。また、床支持体34の下端には、複数のキャスタ39が、各パンタグラフ部36の菱形の伸縮方向の角部に取り付けられている。したがって、床支持体34はこれらのキャスタ39により支持されている。
ガレージ床面13には、縦断面凹形状でシャッタ28の開閉方向に沿って長尺状に形成されている床レール33が複数、ガレージ11の奥行き方向に沿って所定の間隔で設けられている。床支持体34を支持するキャスタ39は、この床レール33の凹部により形成される溝の内部に配設されている。これにより、床支持体34が伸縮される場合には、キャスタ39が床レール33の溝内を転がりながら伸縮されるため、床支持体34はこの床レール33に沿った方向に伸縮される。
以上のように床形成装置20は構成されているため、連結部材32を外部壁23側に移動させると、床体29が駐車スペース16に展開されて床面30が形成され、それとともに床支持体34が外部壁23側に伸ばされて床体29を下方から支持する。それに対して、連結部材32を収納領域43側に移動させると、床体29は収納領域43側に移動しながら床体収納ローラ44に巻き取られ、それとともに床支持体34は縮められて収納領域43に収納される。なお、図4に示すように、床形成装置20の収納時には、連結部材32は、リビング側基礎19aのガレージ11側端部に近接された位置関係にある。すなわち、この場合、収納領域43の開口部は、連結部材32により塞がれている。
床形成装置20は、ガレージ開口部17を開閉するシャッタ28と連結されている。具体的には、床形成装置20を構成する連結部材32のガレージ開口部17側端部が、シャッタ28の開閉方向における閉側端部に当接されており、その当接状態においてシャッタ28と連結部材32とが連結されている。
したがって、シャッタ28を閉めると、収納領域43に収納されている床形成装置20は、図3及び図6に示すように、シャッタ28開閉方向の閉側に展開され、駐車スペース16に床面30を形成する。それに対して、シャッタ28を開くと、床形成装置20は、シャッタ28開閉方向の開側に移動しながら、図4に示すように、収納領域43に収納される。
なお、本実施形態では、床形成装置20とシャッタ28とは、着脱自在に連結されている。これにより、駐車スペース16への車両18の駐車時に、シャッタ28を閉める場合には、連結を解除することで床形成装置20を連動させずにシャッタ28を閉めることができる。
以上、詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
本実施形態の構成によれば、駐車スペース16に床形成装置20を展開させることにより駐車スペース16のガレージ床面13よりも上方に床面30を形成することができるとともに、床形成装置20をリビング側基礎19aに設けられた収納領域43に収納することができる。これにより、車両18駐車時には、収納領域43に床形成装置20を収納することで車両18の駐車スペースを確保することができ、また、車両18が駐車スペース16に駐車されていない場合には、床面30を形成することで床面30上のスペースを駐車以外の目的で使用することができるので、駐車スペース16を有効活用することができる。
駐車スペース16とリビング14との間に立設するリビング側内部壁21の一部には、リビング側出入口25と、リビング側出入口25を開閉するリビング側引き戸24とが設けられている。したがって、床形成装置20を駐車スペース16に展開した場合には、リビング側引き戸24をスライドさせることによりリビング側出入口25を開放すれば、リビング側出入口25を介してリビング14と駐車スペース16の床面30上との間を行き来することができる。また、リビング14と連なる広大なスペースを得ることができるので、リビング空間を拡張させることができる。
さらに、本実施形態においては、駐車スペース16に形成される床面30は、駐車スペース16に隣接するリビング14の床面より若干低くなっているだけである。これにより、リビング14と駐車スペース16の床面30上との間の行き来を、より一層容易にすることができる。
また、駐車スペース16とダイニング15との間に立設するダイニング側内部壁22の一部には、ダイニング側出入口27と、このダイニング側出入口27を開閉するダイニング側引き戸26とが設けられている。したがって、床形成装置20を駐車スペース16に展開した場合には、ダイニング側引き戸26をスライドさせることによりダイニング側出入口27を開放し、駐車スペース16の床面30上で子供を遊ばせれば、ダイニング15で料理等をしながら子供の監視をすることができる。
本実施形態では、ガレージ11のガレージ開口部17にシャッタ28が設けられているため、床形成装置20の展開時には、シャッタ28によりガレージ開口部17を閉鎖することができる。これにより、駐車スペース16の床面30上で子供やペットを遊ばせたとしても、子供やペットが外部に出るのを防止することができる。また、外部から不審者等が侵入するのを防止することもできる。
また、床形成装置20と、シャッタ28とは連結されているので、シャッタ28を閉めると、シャッタ28に連動して床形成装置20は駐車スペース16に展開される。したがって、床面30形成時には、必ずシャッタ28によりガレージ開口部17は閉鎖されるため、上記のシャッタ28により得られる効果は自然と得られる。また、本構成によれば、外部と遮断された床上空間を容易に形成することができる。
一方、シャッタ28を開くと、床形成装置20は、シャッタ28開閉方向の開側に移動しながら収納領域43に収納される。したがって、駐車スペース16に車両18を入庫する際には、駐車スペース16に床形成装置20を展開したまま入庫するおそれがない。
連結部材32は、その下端がガレージ床面13と近接している。これにより、床形成装置20の展開・収納時に、子供等が誤って床体29の下に入り込むおそれがなくなるため、怪我をするのを回避することができる。
本実施形態では、ガレージ11のガレージ開口部17を開閉するシャッタ28として、パイプシャッタを使用している。これにより、駐車スペース16への風通しが良くなり、また、採光にも適しているので、床面30形成時には床面30上で快適に過ごすことができる。
本実施形態では、床形成装置20の収納領域43への収納時には、収納領域43の開口部は連結部材32により塞がれている。その結果、床形成装置20は駐車スペース16への展開時には、パイプシャッタを通して風や光に晒されるが、収納領域43への収納時には、風や光に晒されることがない。したがって、床形成装置20を構成する床小板31や支持部材35には、耐候性の高い屋外用デッキのような素材を使用する必要はない。
床支持体34は、伸縮可能な構造としたため、収納領域43に収納する際には床支持体34をコンパクトに縮めた状態で収納することができる。これにより、床支持体34を収納する収納領域43を小さくすることができるため、施工時における作業量の軽減を期待できる。
シャッタ28を開閉途中で止めてガレージ開口部17を一部開けた状態にすれば、床形成装置20は駐車スペース16の一部だけに展開されるため、床面30は駐車スペース16の一部だけに形成される。したがって、シャッタ28の開閉方向の位置を調整することにより、駐車スペース16に形成される床面30の広さを広くしたり狭くしたりすることができる。これにより、居住者のニーズに応じた広さの床面30を形成することができる。
また、本実施形態では、リビング側基礎19aに収納領域43が設けられているため、ガレージ11のリビング14側から床形成装置20が展開される。したがって、駐車スペース16の一部だけに床面30を形成する場合には、リビング14と駐車スペース16の床面30との連続性を生じさせることができるため、リビング14と、駐車スペース16の一部に形成された床面30と、を跨いで使用することができる。また、駐車スペース16の、床面30が形成されていない部分は、ガレージ床面13が露出しているため、駐車スペース16を玄関として利用することもできる。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、収納領域43に収納された床形成装置20を、シャッタ28を閉めることで駐車スペース16に展開することにより床面30を形成する構成としたが、本実施形態ではこれを変更する。本実施形態では、折り畳み式の床構造体60をガレージ11内の側方に備え、この床構造体60を駐車スペース16に展開することにより床面30を形成する構成とした。そこで、以下に、この床構造体60の構成についての詳細を、図7及び図8に基づいて説明する。なお、図7は、折り畳み式床構造体60を示し、(a)が展開状態の正面図、(b)が折り畳み状態の正面図である。図8は基礎69に取り付けられている折り畳み式床構造体60を示し、(a)が折り畳み状態の正面図、(b)が展開状態の正面図である。
図8に示すように、ガレージ11の下部を構成する基礎69の、ガレージ11側鉛直面には、案内手段を構成するガイド86が取り付けられている。ガイド86は、基礎69が延びる方向に沿って長尺状に形成されており、その横断面はコ字状をなしている。ガイド86は、そのコ字状開口部を基礎69側の反対側に向けた状態で基礎69のガレージ11側鉛直面に取り付けられている。
ガイド86のコ字状開口部が形成する溝部には、スライダ85が配設されている。スライダ85は、その縦断面が長方形状であり、基礎69が延びる方向に沿って長尺状に形成されている。スライダ85は、ガイド86の溝内を上下方向に移動できるように構成されている。
このスライダ85には、駐車スペース16に展開可能な床構造体60が、ブロックヒンジ70を介して連結されている。したがって、床構造体60は、図8(a)に示すように、折り畳まれた状態にある場合には、ガレージ11のガレージ床面13上に基礎69に寄せられた状態で設置されている。それに対し、床構造体60は、駐車スペース16に展開される場合には、図8(b)に示すように、基礎69の短手方向のガレージ11側に展開される。
以下の説明においては、便宜上、床構造体60の展開方向における展開側を、略して展開側ということとし、また、床構造体60の展開方向における折り畳み側を、略して折り畳み側ということとする。
図7及び図8に示すように、床構造体60は、複数の床ユニット50が、床構造体60の展開方向に沿って連結されることにより構成されている。
床ユニット50は、図7において実線で示すように、床面30を形成する2つの床材61と、床材61を支持する2つの支持材62とが連結されることにより構成されている。床材61と、支持材62とは、ともにウッドデッキ材等の木材からなる板状部材であり、基礎69が延びる方向に沿って長尺状に形成されている。
図7(a)に示すように、床ユニット50は、展開状態にある場合には、横並びとなった一対の隣接する床材61を、ガレージ床面13から延びる2つの支持材62が、それぞれ、隣接する床材61を跨るようにして、また、一対の床材61の展開側端部において、支持することにより構成されている。なお、展開側の支持材62は、展開側の床材61の展開側端部より展開側に突き出した状態となっている。
各床材61は、それぞれ、その展開側端部の下方に立設されている支持材62と、ヒンジ63を介して連結されている。したがって、床材61に対し支持材62は、ヒンジ63の回動軸を回動中心として回動可能となっている。その結果、支持材62は、床材61の下面側に折り畳むことができるようになっている。なお、ヒンジ63は、支持材62が延びる方向に沿って所定の間隔で複数、取り付けられている。
また、2つの床材61は、床面30側に設けられたヒンジ63を介して連結されている。したがって、折り畳み側の床材61に対し、展開側の床材61は、ヒンジ63の回動軸を回動中心として回動可能となっている。その結果、展開側の床材61は、折り畳み側の床材61の上面側に折り畳むことができるようになっている。そのため、各支持材62を各床材61の下面側に折り畳んだ後、展開側の床材61を折り畳み側の床材61の上面側に折り畳めば、床ユニット50を折り畳み状態で、水平にすることができる。なお、ヒンジ63は、床材61が延びる方向に沿って所定の間隔で複数、取り付けられている。
そして、床ユニット50には、さらに、隣接する床ユニット50との連結をするためのブロックヒンジ70が設けられている。各床ユニット50は、隣接する折り畳み側の床ユニット50と、このブロックヒンジ70を介して、連結されている。詳しくは、床ユニット50の折り畳み側の床材61と、当該床ユニット50に隣接する折り畳み側の床ユニット50の展開側の支持材62とが、ブロックヒンジ70を介して連結されている。
ブロックヒンジ70は、縦断面が略正方形状である2つの同一のブロックが、それぞれの正方形の1頂点を合わせるようにして連結されることにより構成されている。そして、その頂点には回動軸が設けられており、ブロックヒンジ70の各ブロックはその回動軸を回動中心として回動可能となっている。したがって、当該床ユニット50の折り畳み側の床材61は、当該床ユニット50に隣接する折り畳み側の床ユニット50の展開側の支持材62に対し、ブロックヒンジ70の回動軸を回動中心として回動可能となっている。その結果、当該床ユニット50の折り畳み側の床材61は、当該床ユニット50に隣接する折り畳み側の床ユニット50の展開側の支持材62の鉛直面側に折り畳むことができるようになっている。そのため、前述した手順により、床ユニット50を折り畳み状態で水平とした後に、当該床ユニット50の折り畳み側の床材61を、当該床ユニット50に隣接する折り畳み側の床ユニット50の展開側の支持材62の鉛直面側に折り畳めば、図7(b)において実線で示すように、床ユニット50は折り畳まれた状態で立設される。
また、床ユニット50の折り畳み時には、ブロックヒンジ70の一対のブロックは横並び状態となっており、それらのブロックの下面には折り畳み側の支持材62の上面(展開時においては下面に相当する面)が当接されている。これにより、床ユニット50の折り畳み時に、折り畳み側の支持材62が、がたつくのを防止することができる。
以上、説明したように、床ユニット50は、図7(a)に示す展開状態と、図7(b)に示す折り畳み状態とに変形可能とされている。また、このように変形可能な床ユニット50が、ブロックヒンジ70を介して連結されることにより、床構造体60は構成されているため、床構造体60も全体として展開状態と折り畳み状態とに変形可能となっている。
床構造体60は、前述したように、スライダ85に、ブロックヒンジ70を介して連結されている。より詳しくは、床構造体60を構成する床材61のうち、折り畳み側端部に位置する末端床材61aが、ブロックヒンジ70を介して、スライダ85に連結されている。したがって、末端床材61aは、スライダ85に対し、ブロックヒンジ70の回動軸を回動中心として、回動可能となっている。その結果、末端床材61aはスライダ85の鉛直面側に折り畳むことができるようになっている。
床構造体60の折り畳み時には、支持材62のうち折り畳み側端部に位置する末端支持材62aは、他の支持材62と同様に、その上面がブロックヒンジ70の下面に当接されている。これにより、床構造体60の折り畳み時に、末端支持材62が、がたつくのを防止することができる。
床構造体60の展開時には、スライダ85は、図8(b)に示すように、その上面が支持材62の上面と同じ高さとなっている。そして、スライダ85の上面には末端床材61aの折り畳み側端部が載せられている。
一方、床構造体60の折り畳み時には、スライダ85は、図8(a)に示すように、床構造体60の展開時における位置よりも高くに位置している。したがって、このスライダ85に取り付けられている床構造体60も、全体としては、展開時よりも折り畳み時の方が高くに位置している。また、床構造体60の折り畳み時には、床構造体60の下端である床材61の下端はガレージ床面13に当接されている。つまり、換言すると、かかる当接関係が形成されるまで、スライダ85は上昇する。
基礎69の上面における長手方向の略中央部には、短手方向に延びる矩形溝状の凹部が形成されている。したがって、基礎69の上面は、この凹部を挟んだ両側に設けられている突出部の上面である突出部上面57と、凹部の水平面を形成している凹部上面58とからなる。基礎69の上端面を形成する突出部上面57には、基礎69の上方に立設される内部壁55を介してガレージ11と隣接する居室の床面を形成する床材68が敷設されている。これにより、基礎69の当該凹部と、床材68の下面とによって長方形状の開口部59が形成されている。
図8(b)に示すように、内部壁55を介してガレージ11に隣接する居室の床下には、折り畳まれた床構造体60が露出されるのを防止するためのカバーボード65が備えられている。カバーボード65は矩形板状の部材であり、その幅(基礎19の短手方向の長さ)は、折り畳まれた床構造体60の、基礎19の短手方向における両端部間の距離より大きく、また、その長さ(基礎19の長手方向の長さ)は床構造体60を構成する床材61の長手方向の両端部間の距離より大きくなるように形成されている。
カバーボード65は、床構造体60が展開されている場合には、図8(b)に示すように、床材68の下面に取り付けられているボード支持材67に支持されている。ボード支持材67は、平坦な上面を備える支持部56を備えており、支持部56の当該上面は、開口部59の下面である凹部上面58と同じ高さにある。カバーボード65は、展開側の端部を、開口部59に挿通させており、したがって、詳しくは、カバーボード65は、ボード支持材67の支持部56の上面及び凹部上面58に、支持されている。なお、開口部59は、カバーボード65が挿通可能な大きさで開口されている。
一方、床構造体60が折り畳まれている場合には、カバーボード65は、図8(a)に示すように、床構造体60の上に載せられている。床構造体60の折り畳み時には、床構造体60の上端位置は各床材61の上端位置となるため、カバーボード65はこれらの床材61の上端に載せられている。
また、本実施形態では、床材61は、その短手方向の長さが、基礎69の凹部上面58のガレージ床面13からの距離と同じになるように形成されている。これにより、床構造体60の折り畳み時における床材61の上端位置は、ボード支持材67の支持部56の上面及び凹部上面58と同じ高さとなっている。したがって、折り畳まれた床構造体60の上にカバーボード65を載せる場合には、基礎69の短手方向に沿って、展開側にカバーボード65を水平にスライドさせることにより、カバーボード65を床構造体60の上に載せることができる。
また、カバーボード65の展開側端部の、長手方向における略中央には、取っ手66が取り付けられている。したがって、カバーボード65を、基礎69の短手方向にスライドさせる場合には、この取っ手66を持つことができるため、カバーボード65のスライド移動を容易にすることができる。
以上、詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
本実施形態においては、折り畳み式の床構造体60を、ガイド86及びスライダ85を介して、基礎69に取り付け、この床構造体60を駐車スペース16に展開することにより床面30を形成する構成とした。これにより、車両18が駐車スペース16に駐車されていない場合には、第1の実施形態と同様、駐車スペース16に床構造体60を展開すれば床面30上のスペースを駐車以外の目的で使用することができるので、駐車スペース16を有効に活用することができる。また、車両18の駐車時には、床構造体60を折り畳むことにより床構造体60を基礎69に寄せて配置することができるので、床構造体60を収納する収納領域43を駐車スペース16の外部に設けることなく、車両18の駐車するスペースを確保することができる。したがって、その点について鑑みると、第1の実施形態と比べ、施工時における作業量の低減を期待できる。
床構造体60は、複数の床ユニット50が連結されることにより構成されている。かかる構成においては、連結される床ユニット50の数を増減させることにより、駐車スペース16に形成される床面30の広さを広くしたり狭くしたりすることができる。したがって、居住者のニーズに応じた広さの床面30を形成することができる。
床構造体60が折り畳まれている場合には、各床材61の上端面が、床構造体60の上端となる。したがって、床構造体60の折り畳み時には、展開側にカバーボード65を引き出して、床構造体60の上端にカバーボード65を水平に載せることができる。これにより、床構造体60の折り畳み時には、床構造体60の露出を防止できるとともに当該カバーボード65を腰掛けとして使用することもできる。
[別の実施の形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
上記実施形態では、駐車スペース16をリビング空間の拡張として利用する場合を例として説明したが、駐車スペース16をその他の目的で利用してもよい。以下、駐車スペース16の利用例について、図9乃至11に基づいて説明する。なお、図9乃至11は、駐車スペース16の他の利用例を示す平面図である。
図9に示すように、ダイニング71が内部壁72を介してガレージ11と隣接している場合には、内部壁72の一部に設けられた出入口73を開閉する引き戸74を開け、当該出入口73を開放し、そして駐車スペース16に形成された床面30上にダイニングテーブル82を設置する。そうすれば、ダイニング空間の拡張をすることができる。これにより、友人・知人を招いてホームパーティ等をする場合に、大人数で食事をすることができる。
図10に示すように、洗濯機81等が設置されているサニタリ75が内部壁76を介してガレージ11と隣接している場合には、駐車スペース16に形成された床面30上に物干し台83等を設置し、そこで洗濯物を干すようにすれば、洗濯物を干す際の動線を短縮することができる。また、ガレージ11には屋根があるため、雨天の場合にも雨に濡れることなく洗濯物を干すことができる。
図11に示すように、日曜大工等に用いる工具や部材が収納されている収納部屋79が内部壁80を介してガレージ11と隣接している場合には、駐車スペース16に形成された床面30上で日曜大工等をするようにすれば、重量物である工具や部材を運ぶ際の動線を短縮することができる。
上記実施形態では、建物10の一部を利用して設けられたガレージ11によって形成されている駐車スペース16に床形成装置20を展開し、床面30を形成する構成としたが、建物10に隣接している屋外の駐車スペース16に床形成装置20を展開し、床面30を形成する構成としてもよい。そうすれば、駐車スペース16に開放感あふれる床上空間を形成することができ、例えばそこでバーベキュー等をするのもよい。
また、その際に、床上空間と外部空間とを仕切る仕切り壁を、床体29の周囲に立設させる構成としてもよい。そうすれば、外部から見られることなく床上空間を利用することができる。
上記実施形態では、駐車スペース16に形成される床面30を、駐車スペース16に隣接するリビング14の床面より若干低くしたが、当該床面30をリビング14の床面とほぼ同じ高さにしてもよいし、当該床面30をリビング14の床面より高くしてもよい。但し、リビング14と駐車スペース16の床面30上との間の行き来のしやすさを考慮すると、リビング14の床面と当該床面30とは同じ高さとするのが望ましい。
上記第1の実施形態では、床支持体34の下端に取り付けたキャスタ39を、ガレージ床面13に設けられた床レール33の溝内に配設する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、床レール33を、上方に突出しかつシャッタ28の開閉方向に沿って延びる突条としてもよい。そうすれば、床レール33には溝部がなくなるため、ごみ等の異物が床レール33の溝内に入ることでキャスタ39の転がりが妨げられ、床支持体34が伸縮できなくなるおそれはなくなる。なお、このような突条の床レール33とした場合には、床支持体34の下端にはキャスタ39ではなく、例えば床レール33の突条部分が収容される溝部を有するガイドを取り付け、そのガイドを床レール33上でスライドさせる構成とするのがよい。
また、ガレージ床面13に床レール33を設けない構成としてもよい。そうすれば、ガレージ床面13に凹部がなくなるため、ガレージ11への車両18の入出庫の際に抵抗がなくなり、入出庫がしやすくなる。但し、床レール33をガレージ床面13に設けない構成とすると、床形成装置20を所定の方向に移動させるのが困難となるおそれがあるので、やはりガレージ床面13には床レール33を設けるのが望ましい。
上記第1の実施形態では、ガレージ11のガレージ開口部17を開閉するシャッタ28をパイプシャッタとしたが、これを格子状シャッタとしてもよい。
上記第1の実施形態では、床支持体34を構成する支持部材35は矩形板状の部材であったが、これを変更してもよい。例えば、パイプを複数連結させることにより床支持体34を構成してもよい。
上記第1の実施形態では、リビング側基礎19aに設けた収納領域43に床形成装置20を収納する構成としたが、床形成装置20をロープ等で上方に吊り上げてガレージ11の天井部に収容する構成としてもよい。そうすれば、建物の床下等に収納領域43を設ける必要がなくなるため、施工時における作業量の軽減を期待できる。また、床形成装置20をガレージ11の天井部に収容する際には、床形成装置20をそのまま展開された状態で上方に吊り上げればよいので、上記実施形態のように床形成装置20を変形可能なように構成する必要はない。したがって、床体29は1枚板で形成することができ、また、その場合、床体29を巻き取る床体収納ローラ44を不要とすることができる。そのため、部材コストの抑制を期待できる。
10…建物、11…ガレージ、13…ガレージ床面、16…駐車スペース、20…床形成装置、28…シャッタ、29…床体、30…床面、31…床小板、34…床支持体、35…支持部材、36…パンタグラフ部、43…収納領域、60…床構造体、61…床材、62…支持材。