JP4869387B2 - ホイップアンテナ - Google Patents
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Description
図18に示すホイップアンテナ100は、コイル部111の全面を覆うようにカバー部113がモールドされたり、あるいは、コイル部111にカバー部113が嵌挿されており、下端に基部金具112が設けられているロッド部110が、アンテナベース114に対して傾動可能に固着されている。ロッド部110において、コイル部111の下端は基部金具112に電気的に接続されており、ロッド部110の下面から基部金具112の先端部が突出されている。この先端部にはネジが切られており、アンテナベース114に回動可能に支持されている枢軸114aに基部金具112の先端部が螺着されている。アンテナベース114は、合成樹脂製のモールド部品とされ、下面にベース金具115が固着されている。このベース金具115の下面から車体取付用の取付部が突出して形成されており、基部金具112に枢軸114aを介して芯線が接続され、ベース金具115に編組線が接続された同軸ケーブル116が取付部から導出されている。この同軸ケーブル116の先端は車両内に設置されたAM/FM受信機能を有する電子機器に接続される。
そこで、本発明は、アンテナ高を低くすることのできるAM/FM受信用のホイップアンテナを提供することを目的としている。
図1に示すホイップアンテナ1は、ロッド部10と、ロッド部10が傾動可能に固着されているアンテナベース15とを備えている。ロッド部10には、AM/FM受信用のアンテナエレメントが内蔵されており、アンテナエレメントはコイル部11と、コイル部11の上端部に設けられた金属等からなる導電性のパイプ部12とから構成されている。コイル部11の下端は基部金具13に電気的に接続されており、ロッド部10の下面から基部金具13の先端部が突出されている。直線状に配列されたパイプ部12とコイル部11と基部金具13の全面を覆うようにカバー部14がモールドされ、あるいは、カバー部14に嵌挿されてロッド部10が構成されている。ロッド部10は、アンテナベース15に対して傾動可能に固着されている。ロッド部10において、基部金具13の図示しない先端部にはネジが切られており、アンテナベース15に回動可能に軸支されている枢軸15aに基部金具13の突出している先端部が螺着されている。アンテナベース15は、合成樹脂製のモールド部品とされ、下面にベース金具16が固着されている。このベース金具16の下面から車体取付用の取付部が突出して形成されており、突出部を車体に形成された取付穴に嵌入して突出部にナットを螺合することによりホイップアンテナ1が車体に取り付けられるようになる。また、基部金具13に枢軸15aを介して芯線が電気的に接続され、ベース金具16に編組線が電気的に接続された同軸ケーブル17が取付部から導出されている。この同軸ケーブル17の先端は車両内に設置されたAM/FM受信用の電子機器に接続される。なお、コイル部11とパイプ部12との中心軸はほぼ同じとされて配列され、コイル部11と基部金具13との中心軸もほぼ同じとされて配列されている。
図3は、本発明にかかるホイップアンテナ1のAM帯における等価回路を示す図である。AM帯では波長に対してホイップアンテナ1のロッド部10の長さが非常に短いので、小型アンテナはほぼ容量として考えることができ、これはホイップアンテナ1のインピーダンスが非常に高いことを意味する。従って、図3に示す等価回路における容量Caからなるアンテナエレメント部50はロッド部10に相当し、ロッド部10に誘起したアンテナエレメント誘起電圧源V0とアンテナ全体容量Caとが直列に接続される。アンテナエレメント部50から出力される受信信号はアンプ回路部51に入力される。アンプ回路部51には増幅器AMPが設けられており、入力された受信信号が増幅されてAM受信機52に入力される。また、アンプ回路部51の入力側にはグランドとの間にアンプ入力部容量とされる無効容量Ciが接続されている。無効容量Ciは、アンテナエレメント部50のグランドに対する浮遊容量により発生する。増幅器AMPに入力される受信信号のアンテナ入力部電圧Viは次式(1)で求められる。
Vi=V0・Ca/(Ca+Ci) (1)
(1)式で示されるように、アンテナ全体容量Caが大きいほど、または、無効容量Ciが小さいほど増幅器AMPに入力されるアンテナ入力部電圧Viは大きくなって、アンテナのゲインが向上することがわかる。すなわち、本発明にかかるホイップアンテナ1から効率よく受信電圧を得るには、無効容量Ciを少なくし、出来るだけ容量Caを持つアンテナを設計し、アンテナ負荷のインピーダンスを高くする必要がある。
η=Rr/(Rr+Rd) (2)
ただし、(2)式においてRrは放射抵抗(Ω)、Rdは導体抵抗(接地抵抗含む)である。上記(2)式より放射抵抗Rrが減少することにより放射効率ηが劣化することは明らかである。
Q=1/R・√L/C (3)
ただし、(3)式においてRはアンテナ直列抵抗(Ω)、Cはアンテナ容量(F)、Lはアンテナインダクタ(H)である。そして、アンテナ長を短くするとアンテナ容量Cが減少し、アンテナ長を短くするためにコイルを密に巻く必要があるためインダクタLが増加するようになって、上記(3)式よりQ値が大きくなって帯域幅が狭くなることは明らかである。
そこで、本発明にかかるホイップアンテナ1ではコイル部11にパイプ部12を接続する構成とすると共に、コイル部11とパイプ部12の外径φ1を大きくすることでアンテナ容量を大きくするようにして、ロッド部10を短くしたことによるFM帯における狭帯域化を軽減するようにしている。さらに、放射抵抗Rrも減少しないようになり、ホイップアンテナ1のFM帯における性能劣化が軽減される。
これを利用して本発明にかかるホイップアンテナ1においては、コイル部11およびパイプ部12の外径φ1を大きくすることによりAM帯の利得を改善している。
そして、ロッド部10の外径φ1を約φ11mmと大きくし、コイル部11にパイプ部12を接続したロッド部10の構成として、ロッド部10の長さL1を約110mm、パイプ部12の長さL2を約40mmとした場合、アンテナ全体容量Caが約0.33pF増加して、外径が約φ7mm、長さが約110mmとされたコイル部のみからなるロッド部と比べてAM帯において約1.5dB以上の利得が改善されることが確かめられた。
図6を参照すると、パイプ部12の長さを約10mm、約20mm、約30mm、約40mm、約50mmと長くしていくに従ってアンテナインダクタLは約−0.39μH、約−0.75μH、約−0.95μH、約−1.15μH、約−1.35μHと減少していき、パイプ部12の長さを約60mmとするとアンテナのインダクタLは約−2.15μHまで急激に減少することが分かる。このように、アンテナインダクタLが減少することにより、上記(3)式よりロッド部10を短くしたことによる狭帯域化を軽減することができることが分かる。
図7を参照すると、パイプ部12の長さを約10mm、約20mm、約30mm、約40mm、約50mm、約60mmと長くしていくに従ってアンテナ容量Cは約0.04pF、約0.04pF、約0.04pF、約0.06pF、約0.06pF、約0.06pFと次第に増大していくことが分かる。このように、アンテナ容量Cが増大することにより、上記(3)式によりロッド部10を短くしたことによる狭帯域化を軽減することができることが分かる。
図8を参照すると、傾動角度が30°になると従来のホイップアンテナ100では約0.19pF増加するのに対して、本発明のホイップアンテナ1では約0.17pFだけしか増加しない。また、傾動角度が20°になると従来のホイップアンテナ100では約0.26pF増加するのに対して、本発明のホイップアンテナ100では約0.24pFだけしか増加せず、傾動角度が10°になると従来のホイップアンテナ100では約0.34pF増加するのに対して、本発明のホイップアンテナ1では約0.33pFだけ増加するようになる。さらに、傾動角度が5°になると従来のホイップアンテナ100および本発明のホイップアンテナ1では約0.43pFもの浮遊容量が発生するようになる。このことから、本発明にかかるホイップアンテナ1において、ロッド部10の傾動角度は浮遊容量が許容範囲とされる約10°までが実用範囲と考えられ、この際のロッド部10におけるパイプ部12の先端とアンテナベース15の下面に相当するグランドとの高さH2’(図2参照)は約44mmとなり、ロッド部10が傾動されてもパイプ部12の先端とグランドとの高さH2は約44mm以上必要となることがわかる。
図9には、パイプ部12の長さを10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mmに変更した場合の相対利得が示されており、相対利得が0dBとされる基準はパイプ部12の長さが0mm(ロッド部10はコイル部11のみで構成)とされている。図9を参照すると、パイプ部12の長さを10mmとした場合はパイプ部12がない場合に比して約0.4dB以上利得が向上し、パイプ部12の長さを10mmから20mmとした場合はさらに約0.045dB向上する。また、パイプ部12の長さを20mmから30mmとした場合はさらに約0.03dB向上し、パイプ部12の長さを30mmから40mmとした場合はさらに約0.08dB向上する。しかし、パイプ部12の長さを40mmから50mmとした場合は若干向上するだけであり、パイプ部12の長さを50mmから60mmとした場合は利得はほぼ同様となり利得は向上しないようになる。
図10には、パイプ部12の長さを10mm、20mm、30mm、40mm、50mm、60mmに変更した場合の相対利得が示されており、相対利得が0dBとされる基準はパイプ部12の長さが0mm(ロッド部10はコイル部11のみで構成)とされている。図10を参照すると、パイプ部12の長さを10mmとした場合はパイプ部12がない場合に比して約0.24dB以上利得が向上する。しかし、パイプ部12の長さを10mmから20mm、30mm、40mm、50mm、60mmと長くしていくにつれて相対利得は減少していくようになる。これは、ロッド部10の傾動角度が10°とされていることから、パイプ部12の長さが長くなるにつれてロッド部10の浮遊容量が増加して利得が減少するものと考えられる。
図9および図10の結果から、傾動角度が大きい場合はパイプ部12の長さが長くなるほど利得は向上するが、パイプ部12の長さが40mm以上となると利得がほぼ飽和し、傾動角度が小さい場合はパイプ部12の長さが長くなるに従って利得が減少することから、パイプ部12の長さを約20mmないし約60mmとするのが好適となり、約40mmとするのが最適であることがわかる。
図11を参照すると、B点で示す従来のホイップアンテナ100においてロッド部110の長さL100を170mmから110mmに変更すると、図示するLoだけ受信電圧は減少することになる。この場合のLoは約4.5dBとなる。しかし、A点で示す本発明のホイップアンテナ1では図示するGだけしか受信電圧は低下していない。このGは約2dBとなることから、従来のホイップアンテナ100に比して本発明のホイップアンテナ1においてはAM帯の受信電圧を約2.5dB改善できることが分かる。
図12を参照すると、ロッド部がいずれの長さとされてもFM帯の中域において利得が最大となっており中域から低域および高域に向かうにつれて利得は小さくなっている。また、ロッド部の長さが長くなるに従って利得は上昇していき、例えば、ロッド部の長さを170mmとした場合は、ロッド部の長さが110mmの場合に比して約3dBないし約6dB平均利得が向上することがわかる。
図13を参照すると、ロッド部がいずれの外径とされてもFM帯の中域において利得が最大となっており中域から低域および高域に向かうにつれて利得は小さくなっている。また、ロッド部の外径が大きくなるに従って利得は上昇していく。例えば、ロッド部の外径をφ13mmとした場合は、ロッド部の外径がφ7mmの場合に比して約1.6dBないし約2dB平均利得が向上するようになる。しかし、ロッド部の外径がφ9mm以上としても平均利得はほぼ飽和することがわかる。
図14では、ロッド部10の長さL1が約110mm、ロッド部10の外径φ1が約φ11mmとされた本発明のホイップアンテナ1と、外径がφ7mmとされコイル部のみからなるロッド部110において、長さが110mm、130mm、150mm、170mmとされた従来のホイップアンテナ100において、周波数帯域が76MHzないし90MHzのFM帯における垂直面の平均利得[dBd]が示されている。
図14を参照すると、本発明のホイップアンテナ1および従来のホイップアンテナ100においては、ロッド部110がいずれの外径とされてもFM帯の中域において利得が最大となっており中域から低域および高域に向かうにつれて利得は小さくなっている。また、ロッド部110の長さが長くなるに従って利得は上昇していく。そして、本発明のホイップアンテナ1は、約0.4dBゲインが低下するもののロッド部110の長さが130mmとされた従来のホイップアンテナ100とほぼ同等のFM帯における受信性能となることが分かる。
図15を参照すると、パイプ部12の長さL2を0mmから20mmまで長くしていくに従って帯域幅が次第に広くなり、長さL2を20mmとした場合は長さL2が0mmの場合に比して約0.4%帯域幅が広がるようになる。そして、長さL2を長くすればするほど帯域幅が広がる傾向となるものの長さL2を20mm以上としても帯域幅は若干広がるだけとなる。例えば、長さL2が70mmとされてもL2が20mmの場合に比して約0.3%しか広がらない。すなわち、パイプ部12の長さL2は約20mm以上とされていればよいことが分かる。
図16を参照すると、本発明のホイップアンテナ1では、20dBのS/Nを得るには522kHzにおいて約53.6[dBμV]の入力電圧が必要となるが、999kHzにおいては必要とされる入力電圧は約52.3[dBμV]に改善され、1629kHzにおいては必要とされる入力電圧は約51.3[dBμV]に改善される。また、従来のホイップアンテナ100は、本発明のホイップアンテナ1とほぼ同様のS/N特性となる。このように、ロッド部10の長さが約110mmと短くされた本発明のホイップアンテナ1は、ロッド部100が170mmと長くされている従来のホイップアンテナ100と総合特性においてほぼ同様のAM帯受信性能が得られることが分かる。
図17を参照すると、本発明のホイップアンテナ1では、30dBのS/Nを得るには76MHzにおいて約47.4[dBμV]の入力電圧が必要となり、83MHzにおいても必要とされる入力電圧は約47.4[dBμV]となり、90MHzにおいては必要とされる入力電圧は約47.7[dBμV]と若干増加する。これに対して、従来のホイップアンテナ100では、30dBのS/Nを得るには76MHzにおいて約48.9[dBμV]の入力電圧が必要となり、83MHzにおいては必要とされる入力電圧は約49.2[dBμV]と、本発明のホイップアンテナ1より劣化しており、90MHzにおいては必要とされる入力電圧は約45.3[dBμV]と本発明のホイップアンテナ1より向上している。このように、ロッド部10の長さが約110mmと短くされた本発明のホイップアンテナ1では、FM帯において従来のホイップアンテナ100のS/N特性より改善されたS/N特性が得られており、ロッド部100が170mmと長くされている従来のホイップアンテナ100と総合特性においてほぼ同様のFM帯受信性能が得られることが分かる。
Claims (3)
- アンテナベースに対して傾動可能に取り付けられるAM/FM受信用のロッド部を備えるホイップアンテナであって、
前記ロッド部には、前記アンテナベースに取り付けるための基部金具と、AM/FM受信用のアンテナエレメントが内蔵されており、
該アンテナエレメントは、前記基部金具に一端が接続されているヘリカル構造のコイル部と、該コイル部の他端に接続された導電性のパイプ部とからなり、前記基部金具と前記コイル部と前記パイプ部とがほぼ直線状に配列されており、前記コイル部および前記パイプ部の外径が約φ9mmないし約φ13mmとされていることを特徴とするホイップアンテナ。 - 前記ロッド部の長さを約110mmまで短くすることができると共に、前記ロッド部が傾動された際に、前記コイル部の先端と前記アンテナベースの下面との間の間隔が約44mm以上とされる傾動角度まで傾動可能とされることを特徴とする請求項1記載のホイップアンテナ。
- 前記パイプ部12の長さL1が約20mmないし約60mmとされていることを特徴とする請求項1または2に記載のホイップアンテナ。
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