以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書又は図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書又は図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書又は図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の一側面の信号処理装置は、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、前記特定のシンボルの信号値が表す波形に、定常的な歪が生じる伝送経路を介して伝送される信号を処理する信号処理装置であって、
前記伝送経路を介して伝送されてきた信号から、前記特定のシンボルの信号値を取得する取得手段(例えば、図8のA/Dコンバータ82)と、
前記特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて生じる、前記特定のシンボルの信号値が表す波形の歪の特性に基づいて、前記特定のシンボルの信号値が表す波形に生じると予測される歪を、前記取得手段が取得した前記特定のシンボルの信号値が表す波形から分離することにより得られる分離波形を算出する分離手段(例えば、図8の波形分離部84)と、
前記特定のシンボルが取り得る値ごとに、前記特定のシンボルの値に応じた前記特定のシンボルの信号値が表す波形の特性に基づいて予測される前記特定のシンボルの信号値を、前記分離手段が算出した前記分離波形の信号値から減算し、前記特定のシンボルが取り得る値ごとの比較値を算出する比較値算出手段(例えば、図8の比較値算出部85および86)と、
前記特定のシンボルが取り得る値ごとの前記比較値を比較し、最も小さな前記比較値の算出に用いられた前記特定のシンボルの値を、前記伝送経路を介して伝送されてきた信号の特定のシンボルの値として決定する決定手段(例えば、図8の比較部87)と、
前記特定のシンボルよりも前に送信されて前記決定手段により決定済みの所定の数のシンボルの値と、前記歪の特性と、前記最も小さな比較値とに基づいて、前記所定の数のシンボルに対し、各シンボルの値が誤っている程度を表す誤り係数を生成する誤り訂正候補抽出手段(例えば、図8の誤り訂正候補抽出部88)と、
前記誤り訂正候補抽出手段が生成した前記誤り係数に応じて、前記決定手段により決定済みの前記シンボルの値を訂正する誤り訂正手段(例えば、図8の誤り訂正部89)と
を備える。
また、本発明の一側面の信号処理装置では、
前記誤り訂正候補抽出手段は、
前記決定手段により決定済みの所定の数のシンボルの値を、それぞれのシンボルが取り得る他の値に置き換えた置換値と、前記歪の特性と、前記最も小さな比較値とを用いて、前記比較値を再度算出する比較値再算出手段(例えば、図12の比較値算出部1131乃至113n)と
前記比較値再算出手段が算出した前記比較値のうちの、最も小さな値の算出に用いられた前記置換値に対応するシンボルを、誤り候補として選択する選択手段(例えば、図12の選択部114)と
を有し、
前記決定手段により前記特定のシンボルの値が決定されるたびに、前記比較値再算出手段による比較値の算出と、前記選択手段による誤り候補の選択が行われ、所定のシンボルが前記選択手段により誤り候補として選択された回数を、前記所定のシンボルに対する誤り係数とすることができる。
また、本発明の一側面の信号処理装置は、
あらかじめ設定された所定の値を取る複数の前記シンボルからなるテスト信号を受信する受信手段(例えば、図5の無線受信部73)と、
前記受信手段が受信した前記テスト信号の特定のシンボルの信号値と、前記テスト信号の複数のシンボルの値とに基づいて、前記歪の特性を求める特性取得手段(例えば、図5の統計処理部74)と
をさらに備えることができる。
本発明の一側面の信号処理方法またはプログラムは、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、前記特定のシンボルの信号値が表す波形に、定常的な歪が生じる伝送経路を介して伝送される信号を処理する信号処理方法、または、特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて、前記特定のシンボルの信号値が表す波形に、定常的な歪が生じる伝送経路を介して伝送される信号を処理する信号処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記伝送経路を介して伝送されてきた信号から、前記特定のシンボルの信号値を取得し(例えば、図16のステップS32)、
前記特定のシンボルの前に送信されたシンボルの値に応じて生じる、前記特定のシンボルの信号値が表す波形の歪の特性に基づいて、前記特定のシンボルの信号値が表す波形に生じると予測される歪を、前記伝送経路を介して伝送されてきた信号から取得された前記特定のシンボルの信号値が表す波形から分離することにより得られる分離波形を算出し(例えば、図16のステップS33)、
前記特定のシンボルが取り得る値ごとに、前記特定のシンボルの値に応じた前記特定のシンボルの信号値が表す波形の特性に基づいて予測される前記特定のシンボルの信号値を、前記分離波形の信号値から減算し、前記特定のシンボルが取り得る値ごとの比較値を算出し(例えば、図16のステップS34および35)、
前記特定のシンボルが取り得る値ごとの前記比較値を比較し、最も小さな前記比較値の算出に用いられた前記特定のシンボルの値を、前記伝送経路を介して伝送されてきた信号の特定のシンボルの値として決定し(例えば、図16のステップS36)、
前記特定のシンボルよりも前に送信され、決定済みの所定の数のシンボルの値と、前記歪の特性と、前記最も小さな比較値とに基づいて、前記所定の数のシンボルに対し、各シンボルの値が誤っている程度を表す誤り係数を生成し(例えば、図16のステップS40)、
前記誤り係数に応じて、決定済みの前記シンボルの値を訂正する(例えば、図16のステップS41)
ステップを含む。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は、本発明を適用した信号処理装置の一実施の形態の構成例を示す斜視図である。
図2において、信号処理装置31は、筐体32、電源モジュール33、プラットフォーム基板34、入力基板35、信号処理基板361乃至363、および出力基板37から構成される。
筐体32は、直方体形状の箱であり、その内部に、電源モジュール33、プラットフォーム基板34、入力基板35、信号処理基板361乃至363、および出力基板37が収納される。
電源モジュール33は、プラットフォーム基板34、入力基板35、信号処理基板361乃至363、および出力基板37に、駆動に必要な電力を供給する。
プラットフォーム基板34には、信号処理基板361乃至363が装着され、プラットフォーム基板34を介して、例えば、電源モジュール33から信号処理基板361乃至363に電力が供給される。
入力基板35は、筐体32に外装されているコネクタ(例えば、後述する図3のコネクタ431乃至434)に接続されており、入力基板35には、このコネクタを介して接続される外部機器(図示せず)から画像の信号が供給される。また、入力基板35は、電磁波を用いた無線通信を行うためのアンテナ35aを備えており、外部機器から供給された画像の信号を、アンテナ35aを介して、信号処理基板361乃至363に供給する。
信号処理基板361乃至363は、電磁波を用いた無線通信を行うためのアンテナ36a1乃至36a3を備えており、信号処理基板361乃至363には、アンテナ36a1乃至36a3を介して、入力基板35から画像の信号が供給される。信号処理基板361乃至363は、入力基板35からの画像の信号に対し、ノイズ除去処理、画像変換処理、または画像調整処理などの信号処理をそれぞれ施し、信号処理を施した画像の信号を、アンテナ36a1乃至36a3を介して、出力基板37に供給する。
出力基板37は、電磁波を用いた無線通信を行うためのアンテナ37aを備えるとともに、筐体32に外装されているコネクタ(例えば、後述する図3のコネクタ47)に接続されている。出力基板37は、アンテナ37aを介して、信号処理基板361乃至363から供給される画像の信号を、筐体32に外装されているコネクタに接続されている表示装置(図示せず)に供給する。
次に、図3は、図2の信号処理装置31の構成例を示すブロック図である。
図3において、信号処理装置31は、筐体42、コネクタ431乃至434、入力セレクタ44、信号ルータ45、機能ブロック461乃至463、コネクタ47、リモートコマンダ48、操作部49、およびシステム制御ブロック50から構成される。
信号処理装置31では、コネクタ431乃至434が、信号ケーブルを介して入力セレクタ44に接続されており、入力セレクタ44が、信号ケーブルを介して信号ルータ45に接続されており、信号ルータ45が、信号ケーブルを介してコネクタ47に接続されている。
筐体42は、図2の筐体32に対応し、筐体42には、コネクタ431乃至434、コネクタ47、および操作部49が外装され、筐体42の内部には、入力セレクタ44、信号ルータ45、機能ブロック461乃至463、およびシステム制御ブロック50が収納される。
コネクタ431乃至434は、信号処理装置31と、信号処理装置31に画像の信号を供給するチューナやDVDプレーヤなどの外部機器(図示せず)とを接続するケーブルが接続される接続部である。
入力セレクタ44は、例えば、図2の入力基板35に設けられており、システム制御ブロック50と通信を行うためのアンテナ44aを備える。入力セレクタ44には、コネクタ431乃至434を介して、外部機器から画像の信号が供給され、入力セレクタ44は、システム制御ブロック50の制御に従って、コネクタ431乃至434のうちの、いずれか1つに接続された外部機器から供給される画像の信号を信号ルータ45に供給する。
信号ルータ45は、例えば、図2の出力基板37に設けられており、システム制御ブロック50や、機能ブロック461乃至463などと通信を行うためのアンテナ45aを備える。信号ルータ45は、システム制御ブロック50の制御に従い、入力セレクタ44から供給される画像の信号を、アンテナ45aを介して、電磁波を用いた無線通信により、機能ブロック461乃至463に送信する。
また、信号ルータ45は、アンテナ45aを介して、電磁波を用いた無線通信により、機能ブロック461乃至463から送信されてくる画像の信号を受信し、機能ブロック461乃至463からの画像の信号を、コネクタ47を介して、コネクタ47に接続されている表示装置(図示せず)に供給する。
機能ブロック461乃至463は、例えば、図2の信号処理基板361乃至363にそれぞれ設けられており、アンテナ46a1乃至46a3を備える。
機能ブロック461乃至463は、アンテナ46a1乃至46a3を介して、電磁波を用いた無線通信により、信号ルータ45から送信されてくる画像の信号を受信し、その画像の信号に対し、ノイズ除去処理、画像変換処理、または画像調整処理などの信号処理をそれぞれ施す。そして、機能ブロック461乃至463は、信号処理を施した画像の信号を、アンテナ46a1乃至46a3を介して、電磁波を用いた無線通信により、信号ルータ45に送信する。また、機能ブロック461乃至463どうしも、それぞれが備えるアンテナ46a1乃至46a3を介して、互いに信号の送受信を行う。
なお、機能ブロック461乃至463のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、以下、適宜、機能ブロック461乃至463を機能ブロック46と称する。同様に、機能ブロック461乃至463それぞれに設けられたアンテナ46a1乃至46a3も、アンテナ46aと称する。
コネクタ47は、図1のコネクタ19と同様に、信号処理装置31と、信号処理装置31から出力される画像を表示する表示装置とを接続するケーブルが接続される接続部である。
リモートコマンダ48または操作部49は、図1のリモートコマンダ20または操作部21と同様に、ユーザにより操作され、ユーザの操作に応じた操作信号を、システム制御ブロック50に供給する。
システム制御ブロック50は、例えば、図2のプラットフォーム基板34に設けられており、アンテナ50aを備えている。システム制御ブロック50は、ユーザの操作に応じた操作信号が、リモートコマンダ48または操作部49から供給されると、その操作信号に応じた処理が行われるように、アンテナ50aを介して、電磁波を用いた無線通信により、入力セレクタ44、信号ルータ45、または機能ブロック46を制御する。
以上のように信号処理装置31は構成され、信号処理装置31の筐体42の内部で、信号ルータ45と機能ブロック46とが、電磁波を用いた無線通信により、画像の信号を送受信する。
このような筐体42の内部で無線通信が行われると、例えば、信号ルータ45のアンテナ45aから出力された電磁波は、筐体42の壁面などで反射することによりマルチパスを介して伝送され、機能ブロック46に到達する電磁波(信号)の位相がずれてしまう。この位相のずれにより、機能ブロック46が受信する信号が互いに干渉し、信号の波形に歪が生じてしまい、例えば、信号のシンボルが誤って判定されることがある。
次に、図4を参照し、筐体42の内部における無線通信により伝送された信号の波形に生じる歪について説明する。
ここで、無線通信において、変調方式によっては、信号が表す1シンボルにより、複数のビットを伝送することができるが、以下では、例えば、BPSK(binary phase shift keying)のように、1シンボルにより1ビット(0または1のいずれか一方)が伝送される例について説明する。また、信号ルータ45と機能ブロック46との間、または機能ブロック46どうしの間で信号の送受信が行われるが、信号ルータ45から機能ブロック46に信号が送信される例について説明する。
図4の下側には、信号ルータ45から機能ブロック46に送信される信号の一部が示されている。即ち、図4の下側には、信号ルータ45から送信される信号の特定のビット(以下、適宜、現在のビットという)の4ビット前に送信されたビットから、現在のビットまでの5ビットの信号が示されており、現在のビットの4ビット前に送信されたビットから現在のビットまでの各ビットを「4ビット前、3ビット前、2ビット前、1ビット前、現在のビット」と表すとすると、「0,1,0,1,1」の5ビットの信号が示されている。
また、図4の上側には、機能ブロック46が受信した信号の波形が示されている。図4において、横軸は時間を表し、縦軸は信号の信号値を表す。また、図4において、細い線は、機能ブロック46が複数回受信した信号そのものの波形(DATA)を表し、太い線は、複数の信号の波形を平均した波形(AVG)を表す。
図4の右上には、無線通信により機能ブロック46が受信した信号の波形であって、現在のビットに対応する信号の波形が示されている。図4の左上には、例えば、信号ルータ45と機能ブロック46とが信号ケーブルを介して接続されていたとしたときに、信号ケーブルを介して機能ブロック46が受信した信号の波形であって、現在のビットに対応する信号の波形が示されている。
信号ケーブルを介して信号が伝送される場合には、図4の左上に示されているように、現在のビット「1」の信号値の平均値は約0.3となり、平均値の波形は直線的な形状である。
これに対し、無線通信により信号が伝送される場合には、筐体42の内部のように閉じられた系においては、電磁波の発散が少ないので、電磁波の減衰は小さく、現在のビットの数ビット前のビット、例えば、4ビット前から1ビット前までの各ビットが、筐体41の壁面で反射したり、各基板で反射や回折したりすることで遅延して伝送される。このように、4ビット前から1ビット前までの各ビットが遅延して伝送され、現在のビットに重畳されることにより、現在のビットの信号値が変化する。
従って、図4の右上に示されているように、機能ブロック46が受信した信号であって、現在のビットに対応する信号の信号値により表される波形(以下、適宜、現在のビットの波形という)に歪が生じてしまう。特に、現在のビットが1であるにもかかわらず、ビットの値の判定に用いられる閾値(即ち、0)以下の信号値もあり、これにより、現在のビットが0であると、間違って判定される可能性がある。
しかしながら、図4の右上に示されているように、歪が生じた波形の分散は、ある一定の大きさに収まっており、波形に生じる歪は、定常的な特性を有している。
即ち、図2に示すように、信号処理装置31の筐体32の内部では、電源モジュール33、プラットフォーム基板34、入力基板35、信号処理基板361乃至363、および出力基板37は、それぞれ固定されているので、筐体32の壁面や各基板などでは、常に、電磁波が同様に反射しており、それらの電磁波の干渉、即ち、マルチパスによる影響は、定常的なものであるといえる。これにより、現在のビットの波形に生じる歪が定常的なものとなる。
即ち、例えば、現在のビットの4ビット前に送信されたビットから現在のビットまでの各ビットが、図4の下側に示すように「0,1,0,1,1」であれば、筐体42の内部における無線通信により現在のビットの波形に生じる歪は、定常的に、図4の右上に示すようなものとなる。
従って、例えば、現在のビットの前に送信された複数のビットが、マルチパスを介して遅延して伝送される影響により、定常的な歪が生じた現在のビットの波形の特性(以下、適宜、遅延プロファイルという)が、機能ブロック46に予め記憶されていれば、機能ブロック46は、遅延プロファイルと、信号ルータ45から送信されてきた信号の現在のビットの波形とに基づいて、信号ルータ45から送信されてきた信号のビットを正確に決定することができる。
このような遅延プロファイルは、例えば、信号処理装置31において、画像の信号の送受信を無線通信により行う前に、信号ルータ45と機能ブロック46とが、予め所定の値が設定された複数のビットの組み合わせからなる信号(以下、適宜、テストパターン信号という)を、複数回、送受信することで、取得することができる。
ここで、例えば、テストパターン信号が、7ビットの信号である場合には、各ビットが「0」または「1」であるときの128(2の7乗)通りの信号を、テストパターン信号(例えば、後述する図14のテストパターン信号)として用いてもよいが、例えば、いずれか1つのビットが「1」である7通りの信号を、テストパターン信号として用いるだけでもよい。
即ち、具体的には、テストパターン信号が、7ビットの信号である場合には、「0,0,0,0,0,0,1」、「0,0,0,0,0,1,0」、「0,0,0,0,1,0,0」、「0,0,0,1,0,0,0」、「0,0,1,0,0,0,0」、「0,1,0,0,0,0,0」、「1,0,0,0,0,0,0,0」の7通りの信号をテストパターン信号として用いることができる。そして、後述するように、このような7つのテストパターン信号を用いて取得された7つの遅延プロファイルと、現在のビットの前に送信された複数のビットとの演算(例えば、後述する式(1)の演算)により、現在のビットの波形に生じると予測される歪が除去され、歪が除去された波形に基づいて、現在のビットが「1」または「0」のうちのいずれであるかが判定される。
次に、図5は、図3の信号ルータ45および機能ブロック46の構成例を示すブロック図である。図5には、信号ルータ45が、機能ブロック46にテストパターン信号を送信し、機能ブロック46が、遅延プロファイルを取得する処理に必要なブロックが示されている。
図5において、信号ルータ45は、アンテナ45a、送信側制御部61、テストパターン生成部62、および無線送信部63から構成され、機能ブロック46は、アンテナ46a、受信側制御部71、テストパターン生成部72、無線受信部73、統計処理部74、および遅延プロファイル蓄積部75から構成される。
送信側制御部61は、テストパターン生成部62を制御し、テストパターン信号を生成させ、無線送信部63を制御し、テストパターン生成部62により生成されたテストパターン信号を機能ブロック46に送信させる。例えば、テストパターン信号が、7ビットの信号である場合には、送信側制御部61は、上述したような7つのテストパターン信号をテストパターン生成部62に生成させる。
なお、送信側制御部61には、テストパターン信号のビットが取る値の組み合わせや、それらのテストパターン信号を送信する順番、同一のテストパターン信号を繰り返して送信させる所定の回数などが、予め設定されている。
また、送信側制御部61は、テストパターン信号の送信を開始する前に、どのようなビットの組み合わせからなるテストパターン信号を送信して遅延プロファイルを取得するかなどを指定し、遅延プロファイルを取得する処理の開始を指示する制御信号(コマンド)を無線送信部63に供給し、この制御信号を機能ブロック46に送信させる。
ここで、例えば、画像の信号のように、高速で伝送される信号の送受信が行われる場合には、1ビットあたりの時間的な長さが短くなり、マルチパスの影響により信号に生じる歪の影響が大きく、信号が表すビットの判定に与える影響も大きくなる。これに対し、例えば、処理の開始を指示する制御信号のように、ある程度の低速で伝送される信号の送受信が行われる場合には、1ビットあたりの時間的な長さを短くする必要がなく、1ビットあたりの時間的な長さを長くすることができる。これにより、この場合には、マルチパスの影響により信号に生じる歪の影響は小さく、信号が表すビットの判定に与える影響も小さくなる。従って、送信側制御部61が無線通信により制御信号を送信しても、歪の影響は小さく、機能ブロック46は、制御信号を正常に受信することができる。
なお、例えば、送信側制御部61と受信側制御部71とが図示しない制御バスで接続されていて、その制御バスを介して、送信側制御部61が制御信号を受信側制御部71に送信してもよい。
テストパターン生成部62は、送信側制御部61の制御に応じて、テストパターン信号を生成し、無線送信部63に供給する。
無線送信部63は、送信側制御部61から供給された制御信号、またはテストパターン生成部62から供給されたテストパターン信号を、アンテナ45aを介して、機能ブロック46に送信する。
受信側制御部71には、送信側制御部61と同様に、テストパターン信号のビットが取る値の組み合わせや、それらのテストパターン信号を送信する順番、同一のテストパターン信号を繰り返して送信させる所定の回数などが、予め設定されている。そして、受信側制御部71は、信号ルータ45から送信されてきた遅延プロファイルを取得する処理の開始を指示する制御信号が、無線受信部73から供給されると、その制御信号で指定されたテストパターン信号を生成するように、上述の設定に従って、テストパターン生成部72を制御し、テストパターン信号を生成させる。
テストパターン生成部72は、受信側制御部71の制御に応じて、テストパターン信号を生成し、統計処理部74に供給する。
無線受信部73は、アンテナ46aを介して、信号ルータ45から送信されてくる制御信号またはテストパターン信号を受信する。無線受信部73は、信号ルータ45から送信されてきた制御信号を受信側制御部71に供給する。また、無線受信部73は、信号ルータ45から送信されてきたテストパターン信号から、現在のビットの信号値を取り出して、統計処理部74に供給する。
統計処理部74には、無線受信部73から、信号ルータ45から送信されてくるテストパターン信号の現在のビットの信号値が供給され、統計処理部74は、現在のビットの信号値に基づいて、遅延プロファイルを取得する。
即ち、例えば、過去に遅延プロファイルを取得する処理が行われ、遅延プロファイル蓄積部75に、既に取得された遅延プロファイルが蓄積されていれば、統計処理部74は、テストパターン生成部72から供給されたテストパターン信号に対応する遅延プロファイルを遅延プロファイル蓄積部75から読み出す。そして、統計処理部74は、無線受信部73から供給された現在のビットの信号値と、遅延プロファイル蓄積部75から読み出した遅延プロファイルとに対して統計的な処理を行い、例えば、現在のビットの信号値と遅延プロファイルとの平均値を演算する処理を行い、その演算の結果得られた値を、新たな遅延プロファイルとして取得する。
また、統計処理部74は、遅延プロファイル蓄積部75に、既に取得された遅延プロファイルが蓄積されていなければ、無線受信部73から供給された現在のビットの信号値を、遅延プロファイルとして取得する。
そして、統計処理部74は、自身が取得した遅延プロファイルと、テストパターン生成部72から供給されたテストパターン信号とを対応付けて、統計処理部74に供給する。
なお、送信側制御部61がテストパターン生成部62に生成させるテストパターン信号と、受信側制御部71がテストパターン生成部72に生成させるテストパターン信号とは、同一の設定に従って生成されるので、統計処理部74が遅延プロファイルの取得に用いたテストパターン信号のビットが取る値と、テストパターン生成部72から統計処理部74に供給されたテストパターン信号のビットが取る値とは、同一である。
そして、統計処理部74は、信号ルータ45から送信されてくる全てのテストパターン信号に対して、上述の処理と同様の処理を行い、全てのテストパターン信号に応じた遅延プロファイルを取得する。
このようにして、統計処理部74は、テストパターン信号が筐体42の内部における無線通信により伝送されたときに、現在のビットの前のビットがマルチパスを介して遅延して伝送される影響により生じる、テストパターン信号の現在のビットの波形の歪の特性、即ち、遅延プロファイルを取得する。
遅延プロファイル蓄積部75は、統計処理部74から供給された遅延プロファイルとテストパターン信号とを対応付けて蓄積(記憶)する。
次に、図6は、図5の信号ルータ45がテストパターン信号を送信し、機能ブロック46が遅延プロファイルを取得する処理を説明するフローチャートである。
例えば、図3の信号処理装置31の初期化時に、遅延プロファイルを取得する処理を行うように、信号処理装置31が設定されているとする。
ユーザが、信号処理装置31に基板などを追加し、初期化を行うように信号処理装置31を操作した後に、信号処理装置31が再起動すると処理が開始され、ステップS11において、信号ルータ45の送信側制御部61は、遅延プロファイルを取得する処理の開始を指示する制御信号(コマンド)を無線送信部63に供給し、無線送信部63は、その制御信号を機能ブロック46に送信する。
ステップS11の処理後、処理はステップS12に進み、送信側制御部61は、テストパターン生成部62を制御し、例えば、1番目に送信するように設定されているテストパターン信号を生成させる。テストパターン生成部62は、送信側制御部61の制御に従い、テストパターン信号を生成して無線送信部63に供給し、処理はステップS13に進む。
ステップS13において、無線送信部63は、ステップS12でテストパターン生成部62から供給されたテストパターン信号を機能ブロック46に送信し、処理はステップS14に進む。
ステップS14において、送信側制御部61は、機能ブロック46に送信すべき全てのテストパターン信号が無線送信部63により送信されたか否かを判定する。即ち、例えば、テストパターン信号が7ビットの信号である場合、送信側制御部61は、例えば、テストパターン信号が、7ビットの信号である場合、送信側制御部61は、上述したような7つのテストパターン信号が機能ブロック46に送信されたか否かを判定する。
ステップS14において、送信側制御部61が、機能ブロック46に送信すべき全てのテストパターン信号が無線送信部63により送信されていないと判定した場合、ステップS12に戻り、送信側制御部61は、直前のステップS13で無線送信部63により送信されたテストパターン信号の次に送信すべきテストパターン信号をテストパターン生成部62に生成させ、以下、同様の処理が繰り返される。
一方、ステップS14において、送信側制御部61が、機能ブロック46に送信すべき全てのテストパターン信号が無線送信部63により送信されたと判定した場合、信号ルータ45での処理は終了する。
一方、機能ブロック46は、遅延プロファイルを取得する処理の開始を指示する制御信号が、信号ルータ45から送信されてくるまで処理を待機しており、上述のステップS11で、信号ルータ45が、遅延プロファイルを取得する処理の開始を指示する制御信号を送信すると、ステップS21において、無線受信部73は、その制御信号を受信して受信側制御部71に供給する。
ステップS21の処理後、処理はステップS22に進み、受信側制御部71は、テストパターン生成部72を制御し、例えば、信号ルータ45から1番目に送信されてくることが設定されているテストパターン信号を生成させる。テストパターン生成部72は、送信側制御部71の制御に従い、テストパターン信号を生成して統計処理部74に供給し、処理はステップS23に進む。
ステップS23において、無線受信部73は、信号ルータ45からテストパターン信号が送信されてくるまで待機し、上述のステップS13で信号ルータ45がテストパターン信号を送信すると、そのテストパターン信号を受信する。そして、無線受信部73は、信号ルータ45から送信されてきたテストパターン信号から、現在のビットの信号値を取り出して、統計処理部74に供給し、処理はステップS24に進む。
ステップS24において、統計処理部74は、既に取得され遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルであって、ステップS22でテストパターン生成部72から供給されたテストパターン信号に対応付けられている遅延プロファイルを、遅延プロファイル蓄積部75から読み出し、処理はステップS25に進む。なお、遅延プロファイル蓄積部75に遅延プロファイルが蓄積されていない場合、ステップS24をスキップして処理はステップS25に進む。
ステップS25において、統計処理部74は、ステップS23で無線受信部73から供給された現在のビットの信号値と、ステップS24で遅延プロファイル蓄積部75から読み出した遅延プロファイルとに対して統計的な処理を施し、例えば、現在のビットの信号値と遅延プロファイルとの平均値を算出し、その結果得られた値を、遅延プロファイルとして新たに取得する。なお、ステップS24をスキップして処理がステップS25に進んだ場合、統計処理部74は、ステップS23で無線受信部73から供給された現在のビットの信号値を、遅延プロファイルとして取得する。
ステップS25の処理後、処理はステップS26に進み、統計処理部74は、ステップS25で取得した遅延プロファイルを新たに遅延プロファイル蓄積部75に蓄積し、処理はステップS27に進む。
ステップS27において、受信側制御部71は、全てのパターンのテストパターン信号が信号ルータ45から送信されてきたか否かを判定する。
ステップS27において、受信側制御部71が、全てのパターンのテストパターン信号が信号ルータ45から送信されてきていないと判定した場合、ステップS22に戻り、受信側制御部71は、直前のステップS23で無線受信部73が受信したテストパターン信号の次に信号ルータ45から送信されてくることが設定されているテストパターン信号をテストパターン生成部72に生成させ、以下、同様の処理が繰り返される。
一方、ステップS27において、受信側制御部71が、全てのパターンのテストパターン信号が信号ルータ45から送信されてきたと判定した場合、処理は終了する。
以上のように、信号ルータ45は、テストパターン信号を送信し、機能ブロック46は、信号ルータ45から送信されてくるテストパターン信号に応じた遅延プロファイルを取得することができる。また、遅延プロファイルは、筐体42の内部における無線通信の定常性を利用したものであるので、機能ブロック46は、初期化時などに遅延プロファイルを取得する処理を行うだけで、高品質でロバストな値を取得することができる。
次に、図7は、図5の機能ブロック46により取得される遅延プロファイルの例を示す図である。
図7の横軸は、遅延プロファイルの位相を表し、図7の縦軸は、遅延プロファイルの信号値を表す。図7には、7ビットのテストパターン信号に基づいて取得された遅延プロファイルL1乃至L7が示されている。また、遅延プロファイルL1乃至L7は、テストパターン信号の現在のビットの信号値を、13点のサンプリングポイントでサンプリングすることにより、取得されたものである。
即ち、テストパターン信号のビットを、「6ビット前、5ビット前、4ビット前、3ビット前、2ビット前、1ビット前、現在のビット」と表すとすると、図7には、テストパターン信号「1,0,0,0,0,0,0」に基づいて取得された遅延プロファイルL1、テストパターン信号「0,1,0,0,0,0,0」に基づいて取得された遅延プロファイルL2、テストパターン信号「0,0,1,0,0,0,0」に基づいて取得された遅延プロファイルL3、テストパターン信号「0,0,0,1,0,0,0」に基づいて取得された遅延プロファイルL4、テストパターン信号「0,0,0,0,1,0,0」に基づいて取得された遅延プロファイルL5、テストパターン信号「0,0,0,0,0,1,0」に基づいて取得された遅延プロファイルL6、テストパターン信号「0,0,0,0,0,0,1」に基づいて取得された遅延プロファイルL7が示されている。
機能ブロック46は、このような遅延プロファイルを用い、信号ルータ45から送信されて、機能ブロック46が受信した信号(以下、適宜、受信信号という)のビットを決定する。
即ち、機能ブロック46は、遅延プロファイルの信号値と、現在のビットの前に送信されたビットの値とに基づいて、現在のビットの前に送信されたビットの値に応じて、現在のビットの波形に生じる歪を予測する。そして、機能ブロック46は、現在のビットの波形に生じると予測した歪(以下、適宜、予測歪という)を、受信信号の現在のビットの波形から分離し、その結果得られる波形(以下、適宜、分離波形という)に基づいて、受信信号の現在のビットを決定する。
例えば、現在のビットのnビット前から1ビット前までに送信されたビットの値により、現在のビットに生じると予測される予測歪の位相kでの信号値yk’は、現在のビットのnビット前に送信されたビットをxnとし、現在のビットのnビット前に送信されたビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの位相kでの信号値をan,kとすると、次の式(1)を演算することにより求められる。
また、予測歪の位相0乃至k(例えば、図7の例では、位相0乃至12)での信号値y0’乃至yk’は、次式で表される。
ここで、現在のビットのnビット前に送信されたビットが「1」であるとき、ビットxn=+1であり、一方、現在のビットのnビット前に送信されたビットが「0」であるとき、ビットxn=−1である。また、式(2)における遅延プロファイルの位相kでの信号値をan,kからなる行列を、例えば、受信振幅値予測係数という。
そして、受信信号の現在のビットの波形から予測歪を分離した分離波形の位相kでの信号値Skは、受信信号の現在のビットの位相kでの信号値ykから、予測歪の位相kでの信号値yk’を減算することにより求められる。即ち、分離波形の信号値Skは、式(3)で表される。
ここで、受信信号の現在のビットの波形は、現在のビットの値に応じた波形に、現在のビットの前に送信されたビットの影響により歪が生じた波形となっているので、受信信号の現在のビットの波形から予測歪を分離することにより、分離波形は、現在のビットの値に応じた形状となる。
即ち、分離波形の信号値Skは、受信信号の現在のビットが「1」である場合には、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの位相kでの信号値a0,kとほぼ同じ値となる。また、受信信号の現在のビットが「0」である場合には、現在のビットが「0」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの位相kでの信号値a0,kとほぼ同じ値となる。なお、受信信号は、伝播経路中の熱雑音などの雑音の影響を受けるため、分離波形の信号値Skは、信号値a0,kと同一とはならない。
従って、受信信号の現在のビットが「1」である場合には、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの位相kでの信号値a0,kを、分離波形の信号値Skから減算すると、その演算により得られる値(以下、適宜、比較値B1という)は、ほぼ0となる。比較値B1は、次の式(4)により表される。
また、現在のビットが「0」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルは、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルを反転させることにより得られる。従って、現在のビットが「0」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの位相kでの信号値a0,kを、分離波形の信号値Skから減算することにより得られる値(以下、適宜、比較値B0という)は、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの位相kでの信号値a0,kを、分離波形の信号値Skに加算することにより求めることができる。そして、受信信号の現在のビットが「0」である場合には、比較値B0は、ほぼ0となる。比較値B0は、次の式(5)により表される。
従って、機能ブロック46は、比較値B1および比較値B0を算出し、比較値B1と比較値B0とを比較して、その結果、比較値B0よりも比較値B1が0に近ければ、現在のビットは「1」であると決定し、一方、比較値B1よりも比較値B0が0に近ければ、現在のビットは「0」であると決定することができる。さらに、機能ブロック46では、このようにして決定された決定済みの複数のビットを用いて、決定済みのビットの値に誤りがあるか否かが判定され、誤りがあると判定された場合、そのビットの値が訂正されて出力される。
次に、図8は、図3の機能ブロック46の構成例を示すブロック図である。図8では、機能ブロック46が、受信信号のビットを決定し、決定済みのビットの誤りを訂正する処理に必要なブロックが示されている。
図8において、機能ブロック46は、アンテナ46a、受信部81、A/D(Digital/Analog)コンバータ82、クラスレジスタ83、波形分離部84、比較値算出部85および86、比較部87、誤り訂正候補抽出部88、並びに誤り訂正部89から構成される。
受信部81には、アンテナ46aが接続されており、アンテナ46aは、信号ルータ45から送信されてくるRF信号を受信し、受信部81に供給する。受信部81は、アンテナ46aから供給されたRF信号に、所定の周波数の信号を掛け合わせて、RF信号をベースバンド信号に変換する。そして、受信部81は、アンテナ46aが受信したRF信号をベースバンド信号に変換した信号、即ち、受信信号をA/Dコンバータ82に供給する。
A/Dコンバータ82は、受信部81から供給された受信信号をA/D変換する。A/Dコンバータ82は、受信部81から供給された受信信号をA/D変換した結果得られた値を、受信信号の信号値として取得し、波形分離部84に供給する。ここで、A/Dコンバータ82は、受信信号の1つのビットの信号値を、ビットの周波数よりも高い周波数でサンプリング(オーバーサンプリング)して量子化を行い、即ち、複数のサンプリング点で信号値を取得し、受信信号を波形として取得する。
クラスレジスタ83には、比較部87により決定されたビットの値が供給される。クラスレジスタ83は、現在のビットのnビット前から1ビット前までのビットの値を記憶し、適宜、波形分離部84および誤り訂正部89に供給する。また、クラスレジスタ83は、比較値算出部85および86が比較値を算出するのに用いる現在のビットを記憶しており、比較値算出部85に、現在のビットとして「1」を供給し、比較値算出部86に、現在のビットとして「0」を供給する。
波形分離部84には、A/Dコンバータ82から、受信信号の現在のビットの信号値が供給されるとともに、クラスレジスタ83から、現在のビットのnビット前から1ビット前までのビットの値が供給される。また、波形分離部84は、図5の遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルを読み出す。
そして、波形分離部84は、遅延プロファイル蓄積部75から読み出した遅延プロファイルと、クラスレジスタ83から供給されたビットの値とを用いて、上述した式(1)を演算し、現在のビットのnビット前から1ビット前までに送信されたビットの値により現在のビットに生じると予測される予測歪を算出する。さらに、波形分離部84は、上述した式(3)を演算し、A/Dコンバータ82から供給された受信信号の現在のビットの信号値から予測歪の値を減算した値である分離波形の信号値を算出する。波形分離部84は、分離波形の信号値を、比較値算出部85および86に供給する。
比較値算出部85には、クラスレジスタ83から現在のビット「1」が供給されるとともに、波形分離部84から分離波形の信号値が供給され、比較値算出部85は、波形分離部84から供給された分離波形の信号値から、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの信号値を減算した値である比較値B1を算出し、比較部87に供給する。
比較値算出部86には、クラスレジスタ83から現在のビット「0」が供給されるとともに、波形分離部84から分離波形の信号値が供給され、比較値算出部86は、分離波形の信号値から、現在のビットが「0」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの信号値を減算した値、即ち、分離波形の信号値に、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの信号値を加算した値である比較値B0を算出し、比較部87に供給する。
比較部87は、比較値算出部85から供給された比較値B1と、比較値算出部86から供給された比較値B0とを比較し、その比較結果に基づいて、現在のビットを決定する。
例えば、比較部87は、比較値B1の絶対値が比較値B0の絶対値よりも大である場合、現在のビットは「1」であると決定し、現在のビット「1」をクラスレジスタ83に供給するとともに、比較値B1を誤り訂正候補抽出部88に供給する。一方、比較部87は、比較値B0の絶対値が比較値B1の絶対値以下である場合、現在のビットは「0」であると決定し、現在のビット「0」をクラスレジスタ83に供給するとともに、比較値B0を誤り訂正候補抽出部88に供給する。
誤り訂正候補抽出部88には、比較部87から、比較値B1または比較値B0のうちのいずれか一方が供給されるとともに、クラスレジスタ83から、現在のビットのnビット前から1ビット前までのビットの値が供給される。誤り訂正候補抽出部88は、比較部87から供給された比較値B1または比較値B0のうちのいずれか一方と、クラスレジスタ83から供給された現在のビットのnビット前から1ビット前までのビットの値と、図5の遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルとを用いて、比較部87により決定済みのnビット前から1ビット前までのビットに対し、それぞれのビットの値が誤っている程度を表す誤り係数を生成し、この誤り係数を誤り訂正部89に供給する。
誤り訂正部89は、誤り訂正候補抽出部88から供給された誤り係数に対応するビットの値をクラスレジスタ83から読み出し、その誤り係数に応じて、クラスレジスタ83から読み出したビットの値が誤っているか否かを判定する。例えば、誤り訂正部89は、誤り訂正候補抽出部88から供給された誤り係数が、所定の閾値以上であれば、クラスレジスタ83から読み出したビットの値が誤っていると判定する。そして、誤り訂正部89は、クラスレジスタ83から読み出したビットの値は誤っていると判定した場合、そのビットの値の誤りを訂正して出力し、クラスレジスタ83から読み出したビットの値は誤っていないと判定した場合、比較部87により決定された値をそのまま出力する。
ここで、図9には、A/Dコンバータ82から出力される受信信号、波形分離部84から出力される分離波形、および比較値算出部85から出力される比較値が表す波形の例が示されている。
図9の上側には、現在のビットの2ビット前までのビットの値が「0」であり、現在のビットの1ビット前のビットの値が「1」であり、現在のビットの値が「1」である場合の受信信号が示されている。
図9の中央には、現在のビットの2ビット前までに送信されたビットの値「0」、および現在のビットの1ビット前に送信されたビットの値「1」により、現在のビットに生じると予測される予測歪を、受信波形から分離した分離波形が示されている。
図9の下側には、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルを、分離波形から減算した比較値が表す波形が示されている。受信信号の現在のビットの値は「1」であるので、比較値は、ほぼ0となっている。
次に、図10は、図8の波形分離部84の構成例を示すブロック図である。
図10において、波形分離部84は、遅延プロファイル供給部91、n個の掛け算器921乃至92n、足し算器93、および引き算器94から構成される。
遅延プロファイル供給部91は、図5の遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルの位相kでの信号値a1,k乃至an,kを読み出し、掛け算器921乃至92nにそれぞれ供給する。例えば、i番目の掛け算器を掛け算器92iとすると、遅延プロファイル供給部91は、信号値ai,kを掛け算器92iに供給する。
掛け算器921乃至92nには、図8のクラスレジスタ83から、現在のビットの1ビット前からnビット前までのビットx1乃至xnがそれぞれ供給される。例えば、掛け算器92iには、クラスレジスタ83からiビット前のビットの値が供給され、掛け算器92iは、クラスレジスタ83から供給されたビットxiと、遅延プロファイル供給部91から供給された信号値ai,kとを掛け合わせ、その結果得られる値(ai,k・xi)を、足し算器93に供給する。
足し算器93は、掛け算器921乃至92nのそれぞれから供給された値を足し合わせ、現在のビットに生じると予測される予測歪の位相kでの信号値yk’を算出し、引き算器94に供給する。
引き算器94には、図8のA/Dコンバータ82から受信信号の信号値ykが供給される。引き算器94は、A/Dコンバータ82から供給された受信信号の信号値ykから、足し算器93から供給された予測歪の位相kでの信号値yk’を減算し、その結果得られる分離波形の信号値Skを出力する。
次に、図11は、図8の比較値算出部85の構成例を示すブロック図である。
図11において、比較値算出部85は、遅延プロファイル供給部101、掛け算器102、および引き算器103から構成される。
遅延プロファイル供給部101は、図5の遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルの位相kでの信号値a0,kを読み出し、掛け算器102に供給する。
掛け算器102には、図8のクラスレジスタ83から現在のビットとして「1」(即ち、現在のビットx0=+1)が供給され、掛け算器102は、遅延プロファイル供給部101から供給された信号値a0,kと、クラスレジスタ83から供給されたビットx0とを掛け合わせ、その結果得られる値(+1×a0,k)を、引き算器103に供給する。
引き算器103には、図8の波形分離部84から分離波形の信号値Skが供給され、引き算器103は、波形分離部84から供給された分離波形の信号値Skから、掛け算器102から供給された値を減算し、その結果得られる比較値B1を出力する。
なお、比較値算出部86も比較値算出部85と同様に構成されており、比較値算出部86には、クラスレジスタ83から現在のビットとして「0」(即ち、現在のビットx0=−1)が供給され、掛け算器102は、遅延プロファイル供給部101から供給された信号値a0,kと、クラスレジスタ83から供給されたビットx0とを掛け合わせ、その結果得られる値(−1×a0,k)を、引き算器103に供給する。従って、引き算器103は、波形分離部84から供給された分離波形の信号値Skに信号値a0,kを加算し、その結果得られる比較値B0を出力する。
次に、図12は、図8の誤り訂正候補抽出部88の構成例を示すブロック図である。
図12において、誤り訂正候補抽出部88は、基準値判定部111、遅延プロファイル供給部1121乃至112n、比較値算出部1131乃至113n、および選択部114から構成される。
基準値判定部111には、図8の比較部87が、現在のビットは「1」であると決定した場合、比較部87から比較値B1が供給され、比較部87が、現在のビットは「0」であると決定した場合、比較部87から比較値B0が供給される。基準値判定部111は、比較部87から供給された比較値が、所定の閾値以下であるか否かを判定する。
そして、基準値判定部111は、比較部87から供給された比較値が、所定の閾値以下であると判定した場合、nビット前から現在のビットまでの各ビットに誤り訂正候補となるビットがないことを示す情報を選択部114に供給する。一方、基準値判定部111は、比較部87から供給された比較値が、所定の閾値以下でないと判定した場合、比較部87から供給された比較値(即ち、比較値B1または比較値B0)を、比較部87により決定済みのビットの値が誤っている程度を表す誤り係数を生成するための基準値として、比較値算出部1131乃至113n、および選択部114に供給する。
遅延プロファイル供給部1121乃至112nは、図5の遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルの位相kでの信号値a1,k乃至an,kを読み出し、比較値算出部1131乃至113nにそれぞれ供給する。例えば、i番目の遅延プロファイル供給部112を遅延プロファイル供給部112iとし、i番目の比較値算出部113を比較値算出部113iとすると、遅延プロファイル供給部112iは、信号値ai,kを比較値算出部113iに供給する。
比較値算出部1131乃至113nには、基準値判定部111から基準値が供給されるとともに、遅延プロファイル供給部1121乃至112nから遅延プロファイルの位相kでの信号値a1,k乃至an,kが供給される。例えば、比較値算出部113iは、基準値(即ち、比較値B1または比較値B0のうちのいずれか一方)と、遅延プロファイルの位相kでの信号値ai,kとを用いて、現在のビットのiビット前のビットの値を反転させた値を用いて求められる比較値を算出し、選択部114に供給する。
具体的には、現在のビットのiビット前のビットの値が「1」であるとして図8の波形分離部84により分離波形が算出され、比較値算出部85および86により比較値が算出されていた場合、比較値算出部113iは、現在のビットのiビット前のビットの値が「0」であるとしたときに得られる分離波形から求められる比較値を算出する。また、比較値算出部113iにより算出される比較値は、基準値判定部111から比較値算出部113iに供給された基準値が比較値B1であれば、現在のビットが「1」であるとして求められる比較値であり、基準値判定部111から比較値算出部113iに供給された基準値が比較値B0であれば、現在のビットが「0」であるとして求められる比較値である。
選択部114は、基準値判定部111から、nビット前から現在のビットまでの各ビットに誤り訂正候補となるビットがないことを示す情報が供給されると、その情報に基づき、誤り候補テーブル(図15)に登録されている現在のビットのnビット前から1ビット前までの各ビットに対応する誤り係数のカウントアップを行わない。
また、選択部114は、基準値判定部111から基準値が供給されるとともに、比較値算出部1131乃至113nから比較値がそれぞれ供給されると、これらの値に基づき、誤り訂正候補となるビットを選択する。そして、選択部114は、現在のビットのnビット前から1ビット前までの各ビットのうちの、誤り訂正候補として選択されたビットに対応する誤り係数のカウントアップを行う。
そして、選択部114は、nビット前のビットの誤り係数を、図8の誤り訂正部89に供給する。
次に、図13および図14を参照して、図12の比較値算出部1131乃至113nが算出する比較値について説明する。
例えば、信号ルータ45が送信した信号のビット列が「1,1,1,1」であったときに、機能ブロック46の比較部87が、受信信号のビット列が「1,1,0,1」であると決定したとする。図13には、この場合に、比較部87から誤り訂正候補抽出部88の基準値判定部111に供給される比較値が表す波形が示されている。
図13に示すように、比較値は、0に近い値であるが、その波形の振幅の変動が若干大きく、その変動が所定の基準よりも大きければ、基準値判定部111は、比較部87から供給された比較値が、所定の閾値以下でないと判定する。この場合、基準値判定部111は、比較値を、比較部87により決定済みのビットの値が誤っている程度を表す誤り係数を生成するための基準値として、比較値算出部1131乃至113nに供給する。
図14には、比較値算出部1131が、現在のビットの1ビット前のビットの値を反転させた値を用いて求めた比較値、即ち、受信信号のビット列が「1,1,1,1」であるとして求めた比較値の波形が示されている。図14に示すように、比較値は、ほぼ0であり、比較値の波形の振幅には変動がない。比較値算出部1131は、信号ルータ45が送信した信号のビット列「1,1,1,1」と同一のビット列に基づいて比較値を求めたので、比較値算出部1131が求めた比較値は、基準値判定部111から供給された基準値、および、比較値算出部1132乃至113nが求めた比較値の中で、最も小さな値となる。
このように、最も小さな値の算出に用いられた反転されたビット、即ち、この場合は、現在のビットの1ビット前のビットは、誤って判定されているとして、選択部114は、そのビットを誤り候補として選択する。これにより、選択部114は、現在のビットの1ビット前のビットに対応する誤り係数のカウントアップを行う。
次に、図15を参照して、誤り訂正候補抽出部88が生成する誤り係数について説明する。
図15の左側には、時刻の経過に対するビット並びの経過が示されており、図15の右側には、誤り訂正候補テーブルが示されている。
図15では、例えば、現在のビットの5ビット前から1ビット前のビットまでの5ビットを対象にして、誤り訂正候補となるビットが選択され、その結果に基づいて誤り係数を求める例が示されている。
即ち、図15の左側は、時刻tiにおいて受信されたビットxiに対して、時刻ti+1乃至ti+5の間に、誤り候補として選択されたか否かが示されており、縦軸のビットxiと横軸の時刻ti+1乃至ti+5とに対応する枠のうちの、ハッチングされている枠が、誤り訂正候補として選択されたことを表している。
例えば、時刻t0において受信されたビットx0は、時刻t1乃至t5の各時刻において誤り訂正候補として選択されており、時刻t2において受信されたビットx2は、時刻t4において誤り訂正候補として選択されており、時刻t3において受信されたビットx3は、時刻t4、時刻t6、時刻t8において誤り訂正候補として選択されており、時刻t5において受信されたビットx5は、時刻t8において誤り訂正候補として選択されている。
図15の右側の誤り訂正候補テーブルには、各時刻に受信されたビットと、そのビットの誤り係数とが対応付けられている。即ち、誤り訂正候補テーブルにおいて、ビットx0の誤り係数は5とされており、ビットx2の誤り係数は1とされており、ビットx3の誤り係数は3とされており、ビットx5の誤り係数は1とされている。なお、ビットx1、ビットx4、ビットx6、ビットx7、およびビットx8の誤り係数は、それぞれ0とされている。
そして、誤り訂正部89が、例えば、誤り候補として選択された回数が、誤り候補として選択されなかった回数より多ければ、ビットが誤っていると判定するとされているとすると、誤り訂正部89は、例えば、ビットx0およびx3が誤っている(error)と判定する。一方、誤り訂正部89は、ビットx0およびx3が誤っていない(ok)と判定する。また、ビットx4以降のビットは、時刻t8以降に、即ち、誤り訂正候補抽出部88が誤り係数を確定した後に、誤っているか否かが判定される。
次に、図16は、図8の機能ブロック46が受信信号のビットを決定し、決定済みのビットの誤りを訂正する処理を説明するフローチャートである。
アンテナ46aが、信号ルータ45から送信されてくるRF信号を受信して受信部81に供給すると、ステップS31において、受信部81は、アンテナ46aが受信したRF信号をベースバンド信号に変換する。受信部81は、RF信号をベースバンド信号に変換した信号、即ち、受信信号をA/Dコンバータ82に供給する。
ステップS31の処理後、処理はステップS32に進み、A/Dコンバータ82は、受信部81から供給された受信信号をA/D変換し、受信信号の信号値を取得する。A/Dコンバータ82は、受信信号の信号値を波形分離部84に供給し、処理はステップS33に進む。
ステップS33において、クラスレジスタ83は、現在のビットのnビット前から1ビット前までのビットの値を波形分離部84に供給する。波形分離部84は、図5の遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルと、クラスレジスタ83から供給されたビットの値とを用いて、予測歪を算出する。そして、波形分離部84は、ステップS32でA/Dコンバータ82から供給された受信信号から予測歪を分離することにより得られる分離波形の信号値を算出し、比較値算出部85および86に供給する。
ステップS33の処理後、処理はステップS34に進み、比較値算出部85は、波形分離部84から供給された分離波形の信号値から、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの信号値を減算して比較値B1を算出する。比較値算出部85は、比較値B1を比較部87に供給し、処理はステップS35に進む。
ステップS35において、比較値算出部86は、波形分離部84から供給された分離波形の信号値に、現在のビットが「1」であるテストパターン信号に基づいて求められた遅延プロファイルの信号値を加算して比較値B0を算出して、比較部87に供給する。
ステップS35の処理後、ステップS36に進み、比較部87は、比較値算出部85から供給された比較値B1を2乗した値と、比較値算出部86から供給された比較値B0を2乗した値とを比較し、比較値B0を2乗した値が、比較値B1を2乗した値以下であるか否かを判定する。
ステップS36において、比較部87が、比較値B0を2乗した値は、比較値B1を2乗した値以下であると判定した場合、ステップS37に進み、比較部87は、現在のビットは「0」であると決定する。また、比較部87は、比較値B0を誤り訂正候補抽出部88に供給する。
一方、ステップS36において、比較部87が、比較値B0を2乗した値は、比較値B1を2乗した値以下でない(大である)と判定した場合、ステップS38に進み、比較部87は、現在のビットは「1」であると決定する。また、比較部87は、比較値B1を誤り訂正候補抽出部88に供給する。
ステップS37またはS38の処理後、ステップS39に進み、比較部87は、ステップS37またはS38で決定した現在のビットを、クラスレジスタ83に供給して記憶させ、処理はステップS40に進む。
ステップS40において、誤り訂正候補抽出部88は、ステップS37で比較部87から供給された比較値B0、または、ステップS38で比較部87から供給された比較値B1のうちのいずれか一方と、クラスレジスタ83から供給される現在のビットのnビット前から1ビット前までのビットの値と、図5の遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルとを用いて、比較部87により決定済みのビットの値が誤っている程度を表す誤り係数を生成し、誤り訂正部89に供給する。
ステップS40の処理後、処理はステップS41に進み、誤り訂正部89は、誤り訂正候補抽出部88から供給された誤り係数に対応するビットの値をクラスレジスタ83から読み出し、その誤り係数に応じて、クラスレジスタ83から読み出したビットの値が誤っているか否かを判定する。誤り訂正部89は、クラスレジスタ83から読み出したビットの値が誤っていると判定した場合、クラスレジスタ83から読み出したビットの値を訂正して出力し、クラスレジスタ83から読み出したビットの値が誤っていないと判定した場合、クラスレジスタ83から読み出したビットの値をそのままに出力する。その後、処理はステップS33に戻り、A/Dコンバータ82から現在のビットの次に供給されるビットを、新たに、現在のビットとして、以下、同様の処理が繰り返される。
次に、図17は、図16のステップS40において誤り訂正候補抽出部88が実行する処理を説明するフローチャートである。
ステップS51において、誤り訂正候補抽出部88の基準値判定部111は、図8の比較部87から供給される比較値(比較値B1または比較値B0のうちのいずれか一方)を取得し、処理はステップS52に進む。
ステップS52において、誤り訂正候補抽出部88の基準値判定部111は、ステップS51で比較部87から供給された比較値が、所定の閾値以下であるか否かを判定する。
ステップS52において、基準値判定部111が、比較部87から供給された比較値が所定の閾値以下であると判定した場合、処理はステップS53に進み、基準値判定部111は、nビット前から現在のビットまでの各ビットに誤り訂正候補となるビットがないことを示す情報を選択部114に供給し、処理はステップS63に進む。
一方、ステップS52において、基準値判定部111が、比較部87から供給された比較値が所定の閾値以下でない(閾値より大である)と判定した場合、処理はステップS54に進み、基準値判定部111は、比較部87から供給された比較値を、比較部87により決定済みのビットの値が誤っている程度を表す誤り係数を生成するための基準値として、選択部114に供給する。
ステップS54の処理後、ステップS55に進み、基準値判定部111は、変数iをリセットする。例えば、基準値判定部111は、変数iに初期値としての0をセットする。
ステップS55の処理後、ステップS56に進み、基準値判定部111は、変数iが、誤り訂正の対象となるビットの個数n未満であるか否かを判定する。
ステップS56において、基準値判定部111が、変数iが、誤り訂正の対象となるビットの個数n未満であると判定した場合、処理はステップS57に進み、基準値判定部111は、比較値算出部113i+1に基準値を供給し、比較値算出部113i+1は、現在のビットのi+1ビット前のビットの値を反転させた値により求められる比較値を算出して選択部114に供給する。
ステップS57の処理後、処理はステップS58に進み、基準値判定部111は、変数iを1だけインクリメントし、ステップS56に戻る。
一方、ステップS56において、基準値判定部111が、変数iが、誤り訂正の対象となるビットの個数n未満でない(n以上である)と判定した場合、処理はステップS59に進む。即ち、比較値算出部1131乃至113nの全てが、比較値を算出して選択部114に供給するまで、ステップS56乃至S58の処理が繰り返される。
ステップS59において、選択部114は、ステップS54で基準値判定部111から供給された基準値の絶対値、およびステップS57で比較値算出部1131乃至113nのそれぞれから供給された比較値の絶対値の中から、最小の値のものを選択する。
ステップS59の処理後、ステップS60に進み、選択部114は、直前のステップS59で選択した値が、次の第1乃至第3の条件のいずれか1つを満たすか否かを判定する。
第1の条件は、直前のステップS59で選択した値が、所定の閾値(ステップS52の判定で用いられた閾値)以下であるという条件であり、第2の条件は、直前のステップS59で選択した値が、ステップS54で基準値判定部111から供給された基準値であるという条件であり、第3の条件は、直前のステップS59で選択した値が、以前のステップS59で既に選択された比較値と同一のビットを反転することにより得られた比較値であるという条件である。
ステップS60において、選択部114が、直前のステップS59で選択した値が、上述の第1乃至第3の条件のいずれも満たしていないと判定した場合、処理はステップS61に進む。
ステップS61において、選択部114は、選択された比較値を算出した比較値算出部1131乃至113nのいずれかに対応するビットの誤り係数、即ち、比較値算出部113iが算出した比較値が選択された場合、現在のビットのiビット前のビットの誤り係数のカウントアップを行う。
ステップS61の処理後、処理はステップS62に進み、選択部114は、ステップS59で選択した値を、新しい基準値として基準値判定部111に供給して、処理はステップS55に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
一方、ステップS60において、選択部114が、直前のステップS59で選択した値が、次の第1乃至第3の条件のいずれか1つを満たすと判定した場合、ステップS63に進み、選択部114は、現在のビットのnビット前のビットに対する誤り係数を誤り訂正部89に供給し、処理は終了される。
以上のように、機能ブロック46は、受信信号から予測歪などが分離された比較値B1と比較値B0とを比較した結果に基づいて、現在のビットを決定するので、現在のビットの信号値が表す波形に生じる歪の影響を受けずに、現在のビットを正確に決定することができる。さらに、機能ブロック46は、決定済みの所定の数のビット、例えば、現在のビットのnビット前から1ビット前までのビットに基づいて、比較値を再度算出してビットが誤っているか否かを判定するので、決定済みのビットに誤りがあったとしても、その誤りを訂正することができる。これにより、通信の品質を向上させることができる。
また、例えば、従来の無線通信では、送信側が、信号をブロック化し、それぞれのブロックに誤り訂正符号を付加して送信し、受信側が、そのブロックを受信して展開し、誤り訂正符号を用いて信号に発生した誤りを訂正する処理を行う必要があった。これに対し、信号処理装置31では、遅延プロファイルを用いて、ビットを正確に決定することができるので、信号ルータ45は、信号のビットを順次送信するだけでよく、機能ブロック46は、信号ルータ45からの信号を受信して、その信号のビットを順次決定するだけでよい。従って、従来の無線通信より遅延を短くし、遅延を一定にすること、即ち、リアルタイム性を容易に確保することができる。また、誤りを訂正する処理を行わなくてもよいので、装置をシンプルに構成することができる。
さらに、従来の無線通信では、マルチパス対策として、例えば、パケットにUWを挿入する必要があったが、遅延プロファイルに基づいて、通信の品質を向上させることができるので、UWを挿入する必要がなく、パケットのオーバーヘッドを減らすことができ、高速な通信を行うことができる。
また、信号処理装置31は、信号ケーブルを介して信号を送信する従来の信号処理装置と同様に、信号のビットが順次送信されるように構成されているので、信号ケーブルを介して信号を送信する従来の信号処理装置の基板間ハーネスや基板コネクタに代替して、信号処理装置31で行われる無線通信のシステムを、容易に、かつ、安価に導入することができる。また、信号処理装置31を製造する製造工程においても、従来の信号処理装置で必要であったハーネス接続工程などを、省くことができる。
なお、本実施の形態では、信号ルータ45から機能ブロック46に信号を送信する場合について説明したが、機能ブロック46から信号ルータ45に信号を送信したり、機能ブロック46どうしの間で信号の送受信をしたりする場合においても、信号ルータ45から機能ブロック46に信号を送信する場合と同様の処理により、現在のビットを正確に決定することができる。
なお、本実施の形態においては、誤り訂正候補抽出部88の選択部114が誤り候補として選択した回数を誤り係数としたが、例えば、誤り候補として選択された回数に、所定の重み係数を掛け合わせる演算を行い、その演算の結果得られる値を誤り係数とすることができる。
図18および図19を参照して、誤り係数を求める他の例について説明する。
図18の左側には、図15の左側と同様に、時刻の経過に対するビット並びの経過が示されている。
図18の右側に示されている誤り候補テーブルには、誤り候補として選択されたか否かを現すフラグ登録される。例えば、所定のビットが、時刻tiにおいて誤り候補として選択された場合、そのビットの誤りフラグeiに対応する欄には、誤り候補として選択されたことを現す−1が登録される。また、所定のビットが、時刻tiにおいて誤り候補として選択されなかった場合、そのビットの誤りフラグeiに対応する欄には、誤り候補として選択されなかったことを現す1が登録される。
図19には、誤り候補テーブルに登録されたフラグの値に、所定の重み係数を掛け合わせて、誤り係数を求める重み付け式が示されている。
ここで、現在のビットの前に送信されたビットが、現在のビットに与える影響は、現在のビットよりも遠いビットよりも、現在のビットに近いビットの方が大きいので、重み係数としては、例えば、現在のビットに対して1が用いられ、現在のビットの1ビット前のビットには、0.5が用いられ、現在のビットの2ビット前のビットには、0.4が用いられ、現在のビットの3ビット前のビットには、0.3が用いられ、現在のビットの4ビット前のビットには、0.2が用いられ、現在のビットの5ビット前のビットには、0.1が用いられる。
そして、誤り訂正部89が、図19に示されている重み付け式を演算した結果得られる誤り係数が、0より小であれば、ビットが誤っていると判定するとされているとすると、誤り訂正部89は、ビットx0が誤っていると判定する。一方、誤り訂正部89は、ビットx1乃至x3は誤っていないと判定する。
このように、重み付け式を演算して求めた誤り係数に基づいて誤り訂正を行うことで、図15を参照して説明したような多数決に基づいて誤り訂正を行う場合よりも、ビットが誤っているか否かの判定精度を向上させることができる。
また、重み係数としては、例えば、図5の遅延プロファイル蓄積部75に蓄積されている遅延プロファイルに応じた値、例えば、遅延プロファイルの平均値を用いることができる。遅延プロファイルは、現在のビットの前に送信されたそれぞれのビットが現在のビットに与える影響の大きさを表すので、遅延プロファイルに応じた値を重み係数として用いることで、ビットが誤っているか否かの判定精度をより向上させることができる。
また、上述の説明では、テストパターン信号が、7ビットの信号である場合に、7通りの信号をテストパターン信号として用いるとしたが、テストパターン信号としては、図20に示すように、各ビットが「0」または「1」であるときの128(2の7乗)通りの信号を用いることができる。
図20には、各ビットが「0」または「1」であるときの128つのテストパターン信号と、それらのテストパターン信号に基づいて取得される遅延プロファイルとの例が示されている。
このように、各ビットが「0」または「1」であるときのテストパターン信号に対応した遅延プロファイルを予め取得することにより、例えば、上述の式(1)の演算を行うことなく、実際に受信した信号と同一のビットの並びからなるテストパターン信号に対応した遅延プロファイルを予測歪として用いることができ、これにより、現在のビットを迅速に決定することができる。
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
図21は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するパーソナルコンピュータの構成の例を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)201は、ROM(Read Only Memory)202、または記憶部208に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)203には、CPU201が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU201、ROM202、およびRAM203は、バス204により相互に接続されている。
CPU201にはまた、バス204を介して入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部207が接続されている。CPU201は、入力部206から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU201は、処理の結果を出力部207に出力する。
入出力インタフェース205に接続されている記憶部208は、例えばハードディスクからなり、CPU201が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部209は、インターネットやローカルエリアネットワークなどのネットワークを介して外部の装置と通信する。
また、通信部209を介してプログラムを取得し、記憶部208に記憶してもよい。
入出力インタフェース205に接続されているドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア211が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記憶部208に転送され、記憶される。
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを格納するプログラム記録媒体は、図21に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211、または、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM202や、記憶部208を構成するハードディスクなどにより構成される。プログラム記録媒体へのプログラムの格納は、必要に応じてルータ、モデムなどのインタフェースである通信部209を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を利用して行われる。
なお、本発明は、1シンボルにより1ビットが伝送される変調方式を用いる装置の他、例えば、QPSK(quadrature phase shift keying)や、8PSK(quadrature phase shift keying)のように、1シンボルにより複数のビットが伝送される変調方式を用いる装置にも適用することができる。
また、本発明は、信号処理装置などの筐体の内部における無線通信だけではなく、遅延プロファイルが一定な環境であれば、屋外での無線通信にも適用することができる。また、ケーブルを介して信号を伝送するにあたり、ケーブルの端部で信号が反射し、伝送すべき信号と反射した信号とによって発生する干渉も定常的なものであるので、このようなケーブルを介して通信に、本発明を適用することで、通信の品質を向上させることができる。
また、例えば、磁界を利用した近接通信では、通信距離が限定されてしまうため、通信に用いるアンテナの配置などに制限があるが、信号処理装置31は、アンテナの配置が限定されることなく、高品質な通信を行うことができる。
なお、上述のフローチャートを参照して説明した各処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
31 信号処理装置, 32 筐体, 33 電源モジュール, 34 プラットフォーム基板, 35 入力基板, 35a アンテナ, 361乃至363 信号処理基板, 36a1乃至36a3 アンテナ, 37 出力基板, 37a アンテナ, 431乃至434 コネクタ, 44 入力セレクタ, 45 信号ルータ, 45a アンテナ, 461乃至463 機能ブロック, 36a1乃至36a3 アンテナ, 47 コネクタ, 48 リモートコマンダ, 49 操作部, 50 システム制御ブロック, 50a アンテナ, 61 送信側制御部, 62 テストパターン生成部, 63 無線送信部, 71 受信側制御部, 72 テストパターン生成部, 73 無線受信部, 74 統計処理部, 75 遅延プロファイル蓄積部, 81 受信部, 82 A/Dコンバータ, 83 クラスレジスタ, 84 波形分離部, 85および86 比較値算出部, 87 比較部, 91 遅延プロファイル供給部, 921乃至92n 掛け算器, 93 足し算器, 94 引き算器, 101 遅延プロファイル供給部, 102 掛け算器, 103 引き算器, 111 基準値判定部, 部1121乃至112n 遅延プロファイル供給部, 1131乃至113n 比較値算出部, 114 選択部