JP4866169B2 - メラニン分解酵素 - Google Patents

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Description

本発明は、メラニン分解能を有する酵素及び当該酵素を使用してメラニンを分解する方法に関する。
本発明では、「毛髪」とは人の頭髪のことをいう。毛髪あるいはカビ等に含まれるメラニン類は、黒色の含窒素有機化合物であって、一般的には、アミノ酸(チロシン)からチロシナーゼ等によって、生体内で造られる高分子化合物である。このメラニンの分解は、ヘアカラー、ブリーチなどにおいては、アルカリ剤と過酸化水素により行われている。また、住居(特に風呂場等)の黒カビ(例えばクラドスポリウム属)による汚染は、アルカリ条件下で次亜塩素酸ナトリウム等により、漂白・除去されている。
これらのメラニン分解では、過激な酸化条件を用いるため、毛髪においてはタンパク損傷による毛髪のダメージが問題となる。また、住居のカビ取り剤として次亜塩素酸ナトリウムを主成分とするものは、目や皮膚を痛める危険性、強い塩素臭を伴うこと、更には酸性の商品と混ぜることにより有害な塩素ガスが発生する等の問題があった。
メラニン類を分解し、除去する技術としては、微生物やその培養物を用いたもの(特許文献1,2参照)、過酸化水素又はこれを生成する物質若しくは酵素と、ペルオキシダーゼ等の過酸化水素分解酵素との組み合わせによるもの(特許文献3,4,5参照)、ラッカーゼ(ポリフェノールオキシダーゼ)を用いたもの(特許文献6参照)、ペルオキシダーゼ又はラッカーゼと特定のメディエーター化合物との組み合わせによるもの(特許文献7参照)等が知られている。また、本発明者らは、マンガンを必要としないタイプのメラニン分解酵素も見出している(特許文献8参照)。
特開平6-219933号公報 特開平7-213294号公報 特開平7-157409号公報 特開平7-165553号公報 特開平7-97597号公報 特開平8-217659号公報 特開2002-12535号公報 特開2005-160376号公報
しかしながら、これら従来技術は、毛髪メラニンやカビメラニンに対する実際の効果は確認されていなかったり、マンガンや過酸化水素以外に特定の化合物が必要であったり、作用が弱かったりすることなどの問題から、実用性の高いものではなかった。従って、より効率的で、反応性の高い微生物や酵素が求められている。また、メラニンを高効率で分解する酵素を大量に製造するには、タンパク質をコードする遺伝子の情報が必要であるが、メラニンを分解する酵素において、そのタンパク質の一次構造あるいはDNA、RNA情報が開示されたものはこれまで見当たらなかった。
本発明の第1の目的は、メラニン類に対して高い分解能を有する酵素を提供することである。また、本発明の第2の目的は、該酵素の大量製造を可能とするための遺伝子を提供することである。更に、本発明の第3の目的は、該酵素を用いた安全で効率的なメラニン分解方法を提供することである。
本発明者らは、土壌から得られた担子菌が産生する酵素に上記要求を満たすものを見出し、更には当該酵素をコードする遺伝子を解析することに成功した。
すなわち本発明は、以下の特徴を有する酵素を提供するものである。
(1)マンガンを必須として過酸化水素の共存下で毛髪由来のメラニンを分解する。
(2)最適反応pHが6以下である。
(3)pH4.5における毛髪メラニンの分解活性(比活性,U/mg)が西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼの2倍以上である。
更に本発明は、以下の(a)又は(b)のタンパク質を提供するものである。
(a) 配列番号4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b) 配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつメラニン分解活性を有するタンパク質。
更に本発明は、上記タンパク質をコードする遺伝子を提供するものである。
更に本発明は、以下の(i)又は(ii)のDNAからなる遺伝子を提供するものである。
(i) 配列番号3の31〜1107番目に示す塩基配列からなるDNA。
(ii) 配列番号3の31〜1107番目に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつメラニン分解活性を有するタンパク質をコードするDNA。
更に本発明は、上記遺伝子を含む発現プラスミドベクターを提供するものである。
更に本発明は、前記酵素をマンガン及び過酸化水素の存在下にメラニンに作用させるメラニン分解方法を提供するものである。
本発明の酵素は、毛髪メラニンのような難分解性のメラニン類にも高い分解能を示す。本発明によれば、上記酵素を対象物に作用させることによって、対象物中のメラニン類を分解し、脱色することができる。また、本発明の方法は、従来法よりも低pH(中性〜酸性)で行うことができるため、安全性も良好である。
〔メラニン分解酵素〕
本発明のメラニン分解酵素は、過酸化水素を必須の補助因子とするペルオキシダーゼであり、E.C.1.11.1.7に分類される酵素である。この分類に属する酵素には、マンガンを必要とするマンガン−ペルオキシダーゼといわれる酵素と、マンガンを必要としない酵素があるが、本発明の酵素は、マンガン−ペルオキシダーゼである。マンガンを必須とするメリットとしては、活性の発現をマンガン濃度でコントロールできることが挙げられる。すなわち、保存中など、活性が不要なときにはマンガンを除去あるいは隔離しておき、使用時にマンガンの添加で活性を発現させることができる。活性のコントロールにはEDTAなどのキレート剤などが使用できる。
本発明でいうメラニン分解活性は、市販合成メラニン(シグマ社,M8631)又は毛髪メラニン(塩酸処理メラニン,伊藤ら,アナリティカル・バイオケミストリー,144巻,527頁、1985年)を基質として用い、酵素反応後に残存するメラニンを540nmにおける吸光度に基づいて定量することにより測定した。反応液の標準組成は、0.004%(w/v)上記市販合成メラニン又は毛髪メラニン、酵素、35mM乳酸−コハク酸緩衝液(pH4.5)、1mM MnSO4、0.1mM過酸化水素である。酵素反応は30℃で行い、H2O2の添加によって反応を開始し、経時的に540nmにおける吸光度の減少を測定することでメラニンの分解を測定できる。酵素単位1ユニット(unit)は、1時間にメラニン由来の540nmにおける吸光度を0.001減少させる酵素量と定義する。なお、本明細書において毛髪メラニンは、中国人女性の毛髪から6Mの塩酸により還流しながら24時間加水分解処理により抽出したものを用いるものとする。
このような条件下で、本発明の酵素は、毛髪又は合成メラニンの分解において、市販西洋ワサビ(ホース・ラディッシュ)由来のペルオキシダーゼの2倍以上の比活性(U/mg,タンパク1mgあたりの酵素単位)を示す。市販の西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(シグマ社,P-8415)についてメラニン分解活性を測定したところ、この酵素(ロット21K7470)の合成メラニン及び毛髪メラニン分解活性の比活性は、それぞれ2×104(U/mg)、1×104(U/mg)であった。すなわち、本発明のメラニン分解酵素は、pH4.5において、酵素タンパク1mgあたり4×104(U/mg)以上の合成メラニン分解活性、かつ/又は、2×104(U/mg)以上の毛髪メラニン分解活性を示す酵素である。
また、本発明の酵素は、20000〜50000、特に40000〜45000の分子量(SDS-PAGE)を有する。
本発明の酵素としては、担子菌が産生するメラニン分解酵素、特に本発明者らが土壌中から見出した、セリポリオプシス・エスピー.(Ceriporiopsis sp.)MD-1株(FERM P-19507)が産生するメラニン分解酵素Eが、好適な例として挙げられる。本酵素は、MD-1株の培養液からカラムクロマトグラフィーなどの通常の蛋白精製操作を経て精製することができる。この酵素の代表的な性質は、以下に示すとおりである。なお、以下の(4)〜(8)における酵素活性は、毛髪メラニンを用いて測定されたものである。
(1)作用
合成メラニン及び毛髪メラニンに作用し、これを加水分解する。
(2)基質特異性
本酵素は、ペルオキシダーゼの基質として知られている化合物では、2,6-ジメトキシフェノール(2,6-Dimethoxyphenol)、グアイヤコール(Guaiacol)、シリンガルダジン(Syringaldazine)などを酸化した。3,4-ジメトキシベンジルアルコール(3,4-Dimethoxybenzyl alcohol)は酸化できなかった。本酵素は試験した色素化合物(コンゴーレッド、ブリリアントグリーン、ローダミン6G、ニグロシン、メチルオレンジ)に対しては脱色活性を示さなかった。1酵素反応あたり8.6μgの精製酵素を用いて、基質特異性を調べた。コンゴーレッドの分子吸光係数は23,000(497 nm)、ブリリアントグリーンの分子吸光係数は70,000(620 nm)、ローダミン6Gの分子吸光係数は75,000(527 nm)、メチルオレンジの分子吸光係数は25,000(470 nm)をそれぞれ用いた.また、ニグロシンはE1%1cm=180(570 nm)を用いた。
(3)分子量
メラニン分解酵素Eの分子量を、SDS-PAGEにより測定した。
分子量マーカーとして、Low Molecular Weight [LMW] Calibration kit(アマーシャム・ファルマシアバイオテク社)を使用した。この結果、SDS-PAGE法による精製酵素の分子量は、41,000であった。
(4)酵素活性に与えるpHの影響
50mM乳酸-コハク酸緩衝液(pH2.0〜5.0)、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0〜6.0)、50mMリン酸カリウム-ナトリウム緩衝液(pH6.0〜7.5)、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5〜9.0)を用いて(1.0μg使用)の酵素活性を測定したところ、本酵素は、弱アルカリ〜中性〜酸性領域で活性を示し、pH4.0において最大活性を示した(図1)。
(5)酵素活性に与える温度の影響
50mM乳酸-コハク酸緩衝液(pH 4.5)を用いて、20〜75℃の各温度で酵素活性を測定したところ、本酵素は、50℃において最大活性を示し、75℃以上においては活性を示さなかった(図2)。
(6)pH安定性
酵素液(6.0μg使用)を100mM乳酸-コハク酸緩衝液(pH2.0〜5.0)、100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0〜6.0)、100mMリン酸カリウム-ナトリウム緩衝液(pH6.0〜7.5)、100mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5〜9.0)で、4℃、24時間処理した後、残存する酵素活性をpH4.5で測定した。その結果、本酵素は、pH5.5〜7.5では80%以上の残存活性を示し、pH6.5で最も安定であった(図3)。
(7)熱安定性
50mM乳酸-コハク酸緩衝液(pH4.5)を用いて、本酵素(6.0μg使用)を20〜75℃の各温度で10分間加熱処理した後、残存する活性を測定した。その結果、本酵素は、60℃までの熱処理では80%以上の活性を維持した。しかし、それ以上の温度では急速に不安定となり、70℃の熱処理で完全に失活した(図4)。
(8)酵素活性に与えるH2O2、金属イオン、各種化合物の影響
H2O2の濃度を0〜1mMの範囲で変化させ、酵素活性を測定した結果、本酵素は、H2O2の無添加ではメラニン分解活性を全く示さず、過酸化水素はメラニン分解反応に必須の因子であった。本酵素は、過酸化水素添加系で活性を示し、0.2mMにおいて最大活性を示した(図5)。
0〜10mMのMn2+を加え、本酵素の酵素活性を測定した結果、本酵素は、Mn2+の無添加ではメラニン分解活性を全く示さず、Mn2+はメラニン分解反応に必須の因子であった。本酵素は、マンガン添加系で活性を示し、3.0mMにおいて最大活性を示した(図6)。このことから、本酵素は、マンガンペルオキシダーゼと判断された。
表1に金属塩等が本酵素の活性に及ぼす影響を示した。2価の鉄イオン及び銀イオンで100%の阻害を受け、銅イオンで比較的強い阻害を受けた。一方、活性を発現させる金属としては、マンガンのみであった。
Figure 0004866169
各種化合物の影響について調べた(表2)。SH阻害剤ではわずかに阻害を受け、キレート剤(EDTA、o-Phenanthroline)、アジ化ナトリウムで比較的強い阻害を受けた。
Figure 0004866169
a:p-クロロメルクリ安息香酸
b:5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)
c:1,2-ジヒドロキシ-3,5-ベンゼンジスルホン酸, 二ナトリウム塩, 一水和物;同仁化学薬品社
(9)西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼのメラニン分解活性との比較
西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(シグマ社)のメラニンに対する比活性とMD-1株由来のメラニン分解酵素の比活性を比較した。西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼのメラニンに対する活性は、標準活性測定法においてMD-1株由来のメラニン分解酵素の代わりに同酵素を用いて測定した。西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼは、10μg、30μg、100μgを使用し、MD-1株由来のメラニン分解酵素は10μgを使用した。
MD-1株由来のメラニン分解酵素と西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼの合成メラニンに対する比活性を比較すると、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ〔2.0×104(U/mg)〕に比べ、本酵素〔43×104(U/mg)〕は約21倍超であった。
MD-1株由来のメラニン分解酵素と西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼの毛髪メラニンに対する比活性を比較すると、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ〔1.0×104(U/mg)〕に比べ、本酵素〔18×104(U/mg)〕は約18倍であった。
(10)アミノ酸配列
本発明のメラニン分解酵素は、Arg-Thr-Ala-Cys-Glu-Trp-Glnのアミノ酸配列(配列番号1)及びPro-Asp-Gly-Lys-Asn-Thr-Alaのアミノ酸配列(配列番号2)を含むものである。特に、本発明のメラニン分解酵素は、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるものであり、配列番号1のアミノ酸配列は、配列番号4における266〜272番目、配列番号2のアミノ酸配列は、配列番号4における30〜36番目に相当する。
本発明の(a)配列番号4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質は、マンガンを必須として過酸化水素の共存下で合成メラニン及び毛髪メラニンを加水分解する新規なペルオキシダーゼである。本発明のタンパク質には、上記(a)配列番号4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質のほか、当該タンパク質と等価なタンパク質が包含される。
ここで、等価なタンパク質としては、(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつメラニン分解活性を有するタンパク質が挙げられる。
ここで、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列としては、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が好ましい。また、上記の付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
本発明のメラニン分解酵素と公知の酵素とのアミノ酸配列における同一性を比較すると、本酵素のN末端アミノ酸配列はVal-Ala-Cys-Pro-Asp-Glyであった。このN末端アミノ酸配列は、他の菌株由来のペルオキシダーゼの配列と比較して相同性を見出せなかった。
〔メラニン分解酵素生産菌〕
上記の酵素を産生するセリポリオプシス・エスピー.(Ceriporiopsis sp.)MD-1株(FERM P-19507)は、土壌から、真菌類を分離する既知の方法を用いて分離することができる。分離用の培地・方法としては、例えば「微生物の分類と同定 改訂版(上巻)」、学会出版センター(1984年)等に記載されている培地・方法が用いられる。特に、本菌はメラニン分解に関与する酵素群を生産するため、例えば真菌用培地(麦芽エキス培地)にメラニンを少量(0.1%(w/v)程度)加え、その脱色・分解性を判定することにより、比較的容易にスクリーニングすることができる。すなわち、土壌サンプルなどを蒸留水に懸濁し、この懸濁液を適宜希釈したものをスクリーニング用試料として用いる。この試料を、0.1%(w/v)メラニンを含有する真菌用分離用培地(麦芽エキス寒天培地)上に塗沫し、適温(20〜30℃)で培養する。そして、メラニンを脱色し得る菌株を、メラニン分解酵素を生産する菌株として取得することが可能である。
MD-1株は、担子菌亜門に属する菌株のみが持つ担子器とクランプ結合(かすがい連結)を有することから、担子菌亜門に属する。また、MD-1株の18SrRNA遺伝子のヌクレオチド配列を決定し、他の菌株の18SrRNA遺伝子のヌクレオチド配列と比較することにより同定を行った結果、MD-1株はCeriporiopsis subvermispora近縁の新種の菌株であることが判明した。他のCeriporiopsis subvermisporaの登録菌株については、メラニン分解能に関し全く報告がないのに対し、MD-1株は高いメラニン分解能を有する。MD-1株は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されており、その受託番号はFERM P-19507である。MD-1株は、本菌の増殖に適した市販の培地、例えば市販の麦芽エキス寒天培地などを用いて調製したスラント等に植菌して保存することができる。
上記MD-1株を用いて、本発明のメラニン分解酵素を得るには、培地にMD-1株を接種し、常法に従って培養すればよい。
培養に用いる培地中には、資化しうる炭素源及び窒素源を適当量含有せしめておくことが望ましい。この炭素源及び窒素源は特に制限されないが、その例としては、炭素源として例えばグルコース、フラクトース、キシロース、マルトース、シュクロース、廃糖蜜や資化うしる有機酸、例えばクエン酸等が挙げられる。また窒素源としては、コーングルテンミール、大豆粉、コーンスティープリカー、カザミノ酸、酵母エキス、ファーマメディア、肉エキス、トリプトン、ソイトン、ポリペプトン、ソイビーンミール、綿実油粕、カルチベータ、ゼスト等の有機窒素源が有効である。また、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、コバルト塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の無機塩や、必要であれば、無機、有機微量栄養やビタミン類を培地中に適宜添加することができる。
培養温度は15〜35℃、特に25〜30℃が好ましく、pHは3〜11、特に4〜7が好ましい。この条件下において通常4〜6日間で培養は完了する。
かくして得られた培養液の中から目的の本発明のメラニン分解酵素を採取するには、一般の酵素採取の手段に準じて行えばよい。すなわち、培養後、遠心分離、濾過等の通常の分離手段により菌体を培養液から除去して粗酵素液を得る。この粗酵素液はそのまま使用することもできるが、必要に応じて、限外濾過、沈澱法等の手段により回収し、適当な方法を用いて粉末化して用いることもできる。また、酵素精製の一般的手段、例えば適当な陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、ヒドロキシアパタイト等によるクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過等の組合わせによって精製することもできる。
〔遺伝子〕
本発明の遺伝子は、本発明のメラニン分解酵素、特に、前記(a)又は(b)のタンパク質をコードするものであり、好適には、(i)配列番号3の31〜1107番目に示す塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、及びこれと等価な遺伝子が挙げられる。ここで、等価な遺伝子としては、(ii)配列番号3の31〜1107番目に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつメラニン分解活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子が挙げられる。ここで「ストリンジェントな条件」とは、0.1%(w/v)SDSを含む0.2×SSC中、50℃でハイブリダイズし、0.1%SDSを含む1×SSC中、60℃での洗浄によっても脱離しない条件を挙げることができる。
メラニン分解酵素Eの産業上の利用性を高めるためには、効率的なメラニンの分解を経済的に達成することが必要である。例えば、本酵素のコード遺伝子を単離し、該酵素を大量発現可能なホスト微生物に導入することにより、さらに効率よく、かつ純度の高い酵素を大量に、しかも安定的に得ることが可能である。具体的には、アミノ酸の部分配列を調べ、PCRによってMD-1株のcDNAライブラリから酵素の塩基配列情報を読み取る。目的コード遺伝子が単離できれば、汎用技術を用いてプラスミドベクターで大腸菌や酵母、カビなどに導入し、培養することで、目的酵素を大量に取得することが可能となる。
〔メラニンの分解〕
本発明の酵素を用いたメラニンの分解は、本発明のメラニン分解酵素、反応に必要な量のマンガン、過酸化水素及びメラニンが共存し、酵素が作用できる反応条件(pH、温度など)で行えばよい。本発明のメラニン分解方法の対象となるメラニンとしては、毛髪メラニン、カビメラニン等が挙げられ、毛髪メラニンの分解による毛髪の脱色や、カビ等のメラニン汚染物の分解によるカビの脱色・分解などに利用することができる。
本発明のメラニン分解方法においては、反応系に過酸化水素が存在することが必要であるが、必ずしも過酸化水素を反応系に直接添加する必要はなく、過酸化水素を発生する媒体を使用することもできる。過酸化水素発生媒体としては、触媒あるいは酵素類が挙げられ、例えば、酵素ハンドブック(丸尾文治、田宮信雄著,朝倉書店,1986年)等に示される過酸化水素産生能のある酸化酵素とその基質の組み合わせが挙げられる。特に、尿酸とウリカーゼ、コレステロールとコレステロール酸化酵素、グルコースとグルコース酸化酵素等の組み合わせが挙げられる。これらの酸化酵素を用いることにより、過酸化水素を混合しなくとも、空気中の酸素から容易に過酸化水素を生成し、反応系に供給することができる。
メラニン分解の反応条件としては、現在行われている高アルカリ及び高濃度酸化剤条件によるメラニンの化学的酸化分解の条件を緩和する観点からは、過酸化水素濃度は0.0001〜2%(w/v)程度が好ましく、Mn2+は0.0001〜1%(w/v)程度が好ましく、pHは2〜8程度が好ましく、温度は5〜60℃程度が好ましい。更には、過酸化水素はウリカーゼやグルコースオキシダーゼ等の酸化酵素とそれぞれの基質で発生させるか、0.001〜1%(w/v)程度とするのが好ましく、Mn2+は0.001〜0.1%(w/v)程度が好ましく、pHは3〜6程度が好ましく、温度は15〜37℃程度が好ましい。
本発明の酵素を使用してメラニンを分解する場合には、通常用いられる浸透促進剤、界面活性剤、その他助剤を用いることができる。具体的には、毛髪メラニンを分解脱色する場合には、通常化粧品に用いられる原料、例えばアニオン、カチオン、ノニオンの各種界面活性剤、香料、各種植物あるいは動物由来のエキス、油分、アルコール、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、香料等の原料も配合可能である。また、カビ用の漂白剤や洗浄剤として使用する場合には、一般的に住居用洗剤、衣料用洗剤に用いられる原料、例えばアニオン、カチオン、ノニオンの各種界面活性剤、香料、各種植物あるいは動物由来のエキス、プロテアーゼなどの他の汚れ成分除去酵素、油分、アルコール、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、香料等の原料も配合可能である。
実施例1 MD-1株によるメラニン分解酵素の生産
(1) MD-1株の培養
前培養は、麦芽エキス培地(麦芽エキス2%(w/v)、グルコース2%(w/v)、ポリペプトン0.1%(w/v)、pH6.0)7mLにMD-1株を植菌し、30℃で2日間振とうすることによって行った。得られた培養液合計49mL(7mL×7本)を、麦芽エキス培地からポリペプトンを除いたMG培地(麦芽エキス2%(w/v)、グルコース2%(w/v)、pH6.0)500mL(5L窪み付き三角フラスコを使用)に植菌した後、30℃,60rpmの条件下で振とう培養した。培養開始24時間後ごとに2mLの培養液を無菌的にサンプリングした。培養液を遠心分離(27,000×g、10分、4℃)した後、上清中のメラニン分解酵素活性を測定した。
(2) 酵素活性測定法、タンパク定量方法
メラニン分解酵素活性は、毛髪メラニン(塩酸処理メラニン)を基質として用い、酵素反応後に残存するメラニンを540nmにおける吸光度に基づいて定量することにより測定した。酵素反応液の組成は、0.05%(w/v)メラニン懸濁液100μL、酵素液250μL、50mM乳酸−コハク酸緩衝液(pH4.5)900μL、130mM MnSO4・4〜5H2O水溶液10μL、9mM過酸化水素水14μL(合計1.27mL)であった。酵素反応は30℃で行い、14μLの過酸化水素水を添加することによって反応を開始した。反応開始後、経時的に540nmにおける吸光度を測定した。
酵素単位1unitは、1時間にメラニン由来の540nmにおける吸光度を0.001減少させる酵素量と定義した。また,比活性はタンパク質1mgあたりの酵素活性で示した。タンパク質はロウリー法(Lowry, O.H., Rosebrough, N.J., Farr, A.L., and Randall, R.J. J. Biol. Chem. 193巻, 265-275頁, 1951年)により定量した。標準タンパク質はウシ血清アルブミンを使用した。
(3) 結果(MD-1株培養によるメラニン分解酵素の生産)
麦芽エキス培地とMG培地において本菌を培養したときの、培養液中のメラニン分解酵素活性の経時変化を図7に示す。培養液中のメラニン分解酵素活性は培養開始4〜5日目に最大活性に達した。
以上の結果から、酵素の精製には,MG培地において4日間培養した培養液を用いることとした。
実施例2 MD-1株の生産するメラニン分解酵素の精製
(1) 酵素精製のための培養液の調製
MD-1株の培養は、上で述べた方法により行い、酵素精製のための培養液を合計4,500mL得た。得られた培養液を吸引ろ過した後、ろ液を遠心分離(27,000×g,15分,4℃)し、その上清を酵素精製に用いた(画分1,4,500mL)。
(2) メラニン分解酵素の精製方法
酵素精製における全ての操作は4℃下で行った。
・硫安分画
上で得た上清に、粉末状に砕いた硫酸アンモニウムを55%飽和になるように攪拌しながら加えた。30分攪拌した後、遠心分離(27,000×g,10分,4℃)して得た上清に、さらに硫酸アンモニウムを85%飽和となるように加えた。24時間攪拌した後、遠心分離(27,000×g,20分,4℃)した。沈殿したタンパク質を60mLの10mMリン酸ナトリウム-カリウム緩衝液(pH6.0)(以下緩衝液A)に溶解し、1Lの同緩衝液に対して1、2回目は3時間、3回目は12時間透析した(画分2,97mL)。
・DE52 celluloseカラムクロマトグラフィー
画分2を緩衝液Aで平衡化したDE52 セルロース(Whatman Chemical Separation)を充填したカラム(2.4×15cm)にアプライした。300mLの緩衝液Aでカラムを洗浄した後、0〜0.2M塩化ナトリウムを含む900mLの緩衝液Aを用いてリニアグラジエント法により、流速60mL/hrで酵素を溶出した。各フラクション(5.0mL/tube)の酵素活性及びタンパク質を測定した。高活性画分を集め、1Lの緩衝液Aに対して1、2回目は3時間、3回目は12時間透析を行った(画分3,85mL)。
・DEAE-Toyopearl カラムクロマトグラフィー
画分3を緩衝液Aで平衡化したDEAE-Toyopearl 650S(東ソー)を充填したカラム(1.7×7.0cm)にアプライした。90mLの緩衝液Aでカラムを洗浄した後、0〜0.2M塩化ナトリウムを含む450mLの緩衝液Aを用いてリニアグラジエント法により、流速60mL/hrで酵素を溶出した。各フラクション(3.0mL/tube)の酵素活性及びタンパク質を測定した。高活性画分を集め1Lの緩衝液Aに対して1、2回目は3時間、3回目は12時間透析を行った(画分4,49mL)。
・Phenyl-Toyoperl カラムクロマトグラフィー
画分4に終濃度が1.5Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、1.5M硫酸アンモニウムを含む緩衝液Aで平衡化したPhenyl-Toyopearl 650S(東ソー、東京)を充填したカラム(1.7×7.0cm)にアプライした。90mLの1.5M硫酸アンモニウムを含む緩衝液Aでカラムを洗浄した後、1.5〜0.5M硫酸アンモニウムを含む300mLの緩衝液Aを用いてリニアグラジエント法により、流速60mL/hrで酵素を溶出した。各フラクション(3.0mL/tube)の酵素活性を測定した。高活性画分を集め3Lの緩衝液Aに対して3時間透析を行った(画分5,63mL)。
(3) 電気泳動方法
・ポリアクリルアミドゲル電気泳動
Davisらの方法により、7.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲル(pH9.4)、Tris-glycine(pH8.3)の泳動用緩衝液を用いて、2.5mA/tubeの条件で3.0時間泳動した。タンパク質の染色は0.25%(w/v)Coomassie brilliant blue R-250/エタノール-酢酸-水(9:2:9)溶液で1時間行い、エタノール-酢酸-水(25:8:65)溶液に3時間浸漬して脱色後、エタノール-酢酸-水(10:15:175)溶液中に保存した。
・SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
WeberとOsbornの方法により、7.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲル及び0.1%(w/v)SDS-0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.2)の泳動緩衝液を用いて、6mA/tubeの条件で3.5時間泳動した。染色及び脱色は、上で述べた方法によった。
(4) 酵素の精製の結果
MD-1株の生産するメラニン分解酵素は複数存在するが、DE52 cellulose カラムクロマトグラフィー、DEAE-Toyopearl 650Sカラムクロマトグラフィー、Phenyl-Toyopearl 650Sカラムクロマトグラフィーにより主たる酵素Eを精製した。
各精製段階における酵素活性及びタンパク量を表3に示す。最終調製酵素標品は、430倍(収率3.6%,比活性(合成メラニン)430,000 units/mg)に精製された。また、最終調製酵素標品の毛髪メラニンに対する比活性は、180,000 units/mgであった。
また、最終調製酵素標品を前記の電気泳動(PAGE及びSDS-PAGE)に供した結果、ゲル上で単一なタンパク質のバンドを示した。
Figure 0004866169
実施例3 メラニン分解酵素のN末端アミノ酸配列の分析
<方法>
本酵素30μgを、プロティアンミニII(Bio-Rad)を用いたスラブゲル−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。電気泳動後、BIO-RADミニトランスブロット(Bio-Rad)を用いて、スラブゲルから本酵素をポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜(GVHP304FO、ミリポア)に転移した。
PVDF膜を、0.1%(w/v)クマシーブリリアントブルーR-250を含む50%(v/v)メタノール溶液で染色した後、メタノール-酢酸-水(5:1:4)から成る溶液で脱色した。PVDF膜上で染色した酵素を膜ごと切り出し、N末端配列の分析に用いた。N末端アミノ酸配列は、プロテインシーケンサーPPSQ-10(島津製作所)を用い、自動エドマン分解の各サイクルで生成したPTH-アミノ酸をHPLCで同定することにより分析した。
<結果>
酵素EのN末端アミノ酸配列はVal-Ala-Cys-Pro-Asp-Glyであった。このN末端アミノ酸配列は、他の菌株由来のペルオキシダーゼの配列と比較して相同性を見出せなかった。
実施例4 メラニン分解酵素遺伝子の取得
1.mRNAの調製
MD-1株の生産するメラニン分解酵素をコードする遺伝子をクローニングするために、mRNAを調製した。
<方法>
MD-1株をMG培地において、培養上清中の酵素生成量が1,000U/mLに達するまで培養した。合計10LのMG培地から得た99.2gの湿菌体をグアニジンイソチオシアネート存在下でミルミキサーを用いて破砕した後、塩化セシウム超遠心法によりトータルRNAを得た。得られたトータルRNAからPolyATtract mRNA Isolation Systems(Promega社)を用いてmRNAを精製した。精製したmRNAは50μLのDEPC処理した水に溶解した。
<結果>
99.2gの湿菌体から、合計2.5mgのトータルRNAを得た。得られたRNAから8.0μgのmRNAを精製した。トータルRNAに含まれるmRNAの割合は、0.32%であった。
2.cDNAの調製
MD-1株の生産するメラニン分解酵素をコードする遺伝子をクローニングするために、調製したmRNAからcDNAライブラリーを作製した。
<方法>
cDNAライブラリーを作製するためにZAP-cDNA Synthesis Kit(Stratagene社)を使用した。
まず、1stストランドcDNAを合成するため以下に示す反応液を調製した。
10×first-strand buffer 5.0μL
first-strand methylnucleotide mixture 3.0μL
linkerプライマー(1.4μg/μL) 2.0μL
mRNA(143 ng/μL) 35.0μL
RNase Block Ribonuclease Inhibitor(40 U/μL) 1.0μL
DEPC処理水 2.5μL
反応液を室温で10分間インキュベートした後、1.5μLの逆転写酵素(50 U/μL)を加え、42℃で1時間インキュベートした。
次に2ndストランドcDNAを合成するため以下に示す反応液を調製した。
first-strand cDNA solution 45.0μL
10×second-strand buffer 20.0μL
second-strand dNTP 6.0μL
水 116.0μL
RNase H(1.5U/μL) 2.0μL
DNA polymeraseI(9U/μL) 11.0μL
16℃で2.5時間インキュベートした後、second-strand cDNA solutionに23μLのblunting mixtureと2μLのPfu DNA ポリメラーゼ(2.5U/μL)を加え、72℃で30分インキュベートして末端を平滑化した。反応液をエタノール沈殿に供し、回収したcDNAに9μLのEcoRIアダプター溶液を加え、4℃で30分インキュベートした。
次に合成したcDNAにEcoRIアダプターを連結するため、以下に示す反応液を調製した。
cDNA in EcoRI adapters solution 8.0μL
10×ligase buffer 1.0μL
10 mM rATP 1.0μL
T4 DNA ligase(4U/μL) 1.0μL
8℃で1晩インキュベートした後、70℃で30分インキュベートしてリガーゼを失活させた。反応液に1μLの10×ligase bufferと2μLの10mM rATP、5μLの水、2μLのT4 DNA キナーゼ(5U/μL)を添加し、37℃で30分インキュベートしてアダプター末端をリン酸化した。70℃で30分インキュベートしてキナーゼを失活させた後、反応液に28μLのXhoIbufferと3μLのXhoI(40U/μL)を加えた。37℃で2時間インキュベートしてXhoIで消化した後、反応液をエタノール沈殿に供し、cDNAを回収した。
余剰のアダプターや500bp以下のcDNAを除去するために、回収したcDNAをセファロースCL-2Bを用いたゲル濾過に供した。得られたフラクションの一部を1%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、500bp以上のcDNAを含む画分をcDNAライブラリーの作製に用いた。
<結果>
本菌のmRNAからcDNAを合成し、500bp以上のcDNAは、200 ng得られた。
3.cDNAライブラリーの作製
cDNAをベクターへライゲーションするために以下に示す反応液を調製した。
cDNA solution(50 ng/μL) 2.0μL
10×ligase buffer 0.5μL
10mM rATP(pH7.5) 0.5μL
Uni-ZAP XR vector(1μg) 1.0μL
水 0.5μL
T4 DNA ligase(4U/μL) 0.5μL
反応液を12℃で1晩インキュベートした。
反応液をpackaging extractsに加え、22℃で2時間インキュベートし、組換えDNAをファージ粒子に封入し(in vitroパッケージング)、ファージ液(ライブラリー1)を得た。得られたファージ液(ライブラリー1)を大腸菌Escherichia coli XL1-Blue MRF'株に感染させ、力価を測定(タイターチェック)した後、ライブラリーの増幅を行った。
<結果>
パッケージング終了液(ライブラリー1)の力価を測定した結果、ライブラリー1(1mL)は1.8×105クローンのファージを有した。ライブラリーの増幅後、ライブラリー(90mL)は7.5×1011クローンのファージを有した。
4.ハイブリダイゼーション及びスクリーニング
cDNAライブラリーから目的のクローンを得るために、ハイブリダイゼーション及びスクリーニングを行った。
<方法>
cDNAライブラリーのファージを大腸菌に感染させ、プレート培地にプラークを形成させた。プラークをBiodyne Bメンブレンに転写した。既に特定したメラニン分解酵素をコードする領域の一部(330bp)を32Pで標識し、プローブとして用いた。
60℃で20時間ハイブリダイゼーションした後、60℃でメンブレンを洗浄した。−80℃で25時間X線フィルムを感光させ、陽性を示したプラークを選別した(1次スクリーニング)。選別したプラークからファージ液を回収した。さらに、目的のクローンを確実に単離するために、2次スクリーニングを行った。
<結果>
1次スクリーニングの結果、24の陽性クローンを得た。回収したファージ液を使用して2次スクリーニングを行った結果、22の陽性クローンを得た。
5.インサートDNAのリクローニング
得られたファージのインサートDNAがメラニン分解酵素をコードする遺伝子であることを確認するために、インサートDNAを切り出し、大腸菌を形質転換し、塩基配列を調べた。
<方法>
得られたファージとヘルパーファージを大腸菌E. coli XL1-Blue MRF'株に共感染させることによりインサートDNAを切り出し、ファージミドを得た。このファージミドを大腸菌E. coli SOLR株に感染させた。分離した形質転換株からプラスミドDNAを調製し、その挿入断片の大きさを1.5%(w/v)アガロースゲル電気泳動で調べた。1000から1600bpの挿入断片を有する形質転換株から、FlexiPlep Kitを用いてプラスミドDNAを調製し、sequencingに供した。
<結果>
22の陽性クローンから、1000から1600bpの挿入断片を有する形質転換株を21株分離し、それらの株が有する挿入断片の塩基配列を調べた。その結果、21株中1株(A株)の塩基配列から推定されるアミノ酸配列は、MD-1株の生産するメラニン分解酵素のN末端アミノ酸配列を有していた。残りの20株の塩基配列から推定されるアミノ酸配列には、本酵素のN末端アミノ酸配列を有していなかった。さらに、A株の挿入断片の塩基配列はmRNA由来のpolyAの配列を有していた。A株の挿入断片から決定した塩基配列と推定されるアミノ酸配列を配列番号3及び4に示す。挿入断片は1291bpであり、polyAの配列を有し、1076bpのopen reading frame(ORF)を含んでいた。このORFから推定されるアミノ酸配列(配列番号4)は359残基からなり、Coriolus versicolor由来のペルオキシダーゼ(Accession number、BD107637)と75.1%の類似性を示した。以上の結果は、今回クローニングしたDNAが、目的とするメラニン分解酵素をコードする遺伝子であることを示している。
実施例3 酵素によるメラニンの分解・脱色
i)毛髪メラニン
温度25℃において、0.005%(w/v)の毛髪メラニン(塩酸処理メラニン)懸濁液(pH4.5)3mLにメラニン分解酵素E 1000ユニット、過酸化水素0.1%(w/v)を加えた。反応開始から経時的に観察すると、茶褐色の液が徐々に薄くなり、黄色味がかった茶色に変化し、毛髪メラニンが分解脱色されることが視覚的に確認された。
メラニン分解反応を分光光度計にてモニターしたところ、540nm、600nm、800nmいずれの吸光度においても初期値からの減少が確認され、吸光度的の変化からも毛髪メラニンの分解・脱色が確認された。
ii)合成メラニン
上記i)と同様の方法で合成メラニン(シグマ社、M8631,ロット:60K1383)の分解を確認できた。
pHがメラニン分解酵素Eの酵素活性に与える影響を示す図である。 温度がメラニン分解酵素Eの酵素活性に与える影響を示す図である。 メラニン分解酵素EのpH安定性を示す図である。 メラニン分解酵素Eの温度安定性を示す図である。 過酸化水素濃度がメラニン分解酵素Eの酵素活性に与える影響を示す図である。 Mn2+濃度がメラニン分解酵素Eの酵素活性に与える影響を示す図である。 MD-1株の培養によるメラニン分解酵素の生産を示す図である。

Claims (8)

  1. セリポリオプシス・エスピー(Ceriporiopsis sp.)MD-1株(FERM P-19507)により産生され、以下の特徴を有する酵素。
    (1)マンガンを必須として過酸化水素の共存下で毛髪由来のメラニンを分解する。
    (2)弱アルカリ〜中性〜酸性領域で活性を示し、pH4.0において最大活性を示す。
    (3)pH4.5における毛髪メラニンの分解活性(比活性,U/mg)が西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼの2倍以上である。
    (4)SDS-PAGE法による分子量は、20,000〜50,000である。
  2. 更に、以下の特徴を有する請求項1記載の酵素。
    (5)アミノ酸配列中にArg-Thr-Ala-Cys-Glu-Trp-Glnの配列(配列番号1)及びPro-Asp-Gly-Lys-Asn-Thr-Alaの配列(配列番号2)を含む。
  3. 以下の(a)又は(b)のタンパク質。
    (a) 配列番号4に示すアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (b) 配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつメラニン分解活性を有するタンパク質。
  4. 請求項記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  5. 以下の(i)又は(ii)のDNAからなる遺伝子。
    (i) 配列番号3の31〜1107番目に示す塩基配列からなるDNA。
    (ii) 配列番号3の31〜1107番目に示す塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつメラニン分解活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  6. 請求項4又は5記載の遺伝子を含む発現プラスミドベクター。
  7. 請求項1又は2記載の酵素を、マンガン及び過酸化水素の存在下にメラニンに作用させるメラニン分解方法。
  8. メラニンが、毛髪メラニン又はカビメラニンである請求項記載のメラニン分解方法。
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