実施形態を説明する前に、まず、比較の形態として、図17及び図18を用いて、GaN系青色発光ダイオードを励起光源としYAG蛍光体を白色発光素子とする白色光源7の構造及びその白色光源7が白色光を発するメカニズムを説明する。ここで、図17は比較の実施形態の白色光源7の構造を示す断面図であり、図18は図17に示す白色光源7から発光スペクトル図である。
まず、白色光源7の構造を説明する。
この白色光源7は、図17に示すように、パッケージ71の表面に形成された基板72と、基板72の表面に形成された半導体層73と、半導体層73の表面に形成された電極76,77,78と、半導体層73と電極76,77,78とを覆うように形成された蛍光体層79と、を備えている。基板72は、サファイアからなり、可視光線を透過する。半導体層73は、3層の化合物半導体の層からなり、n型InGaAlN層73aと、InGaAlN活性層73bと、p型InGaAlN層73cとで構成され、この順に積層されている。ここで、InGaAlN活性層73bとp型InGaAlN層73cとは一部が除去されており、そのため、半導体層73において、n型InGaAlN層73aの一部は露出している。p型InGaAlN層73cの表面にはNi/Au透明電極76が形成されており、Ni/Au透明電極76の表面の一部にはAu電極77が形成されており、前記の露出したn型InGaAlN層73aの表面にはTi/Au電極78が形成されている。
次に、白色光源7の製造方法を示す。
初めに、例えば有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition: MOCVD法)により、サファイアからなる基板72上に、n型InGaAlN層73aとInGaAlN活性層73bとp型InGaAlN層73cとをこの順に形成する。
次に、InGaAlN活性層73bとp型InGaAlN層73cとに対して、例えばCl2ガスを用いてドライエッチングを行う。そして、ドライエッチングを行った表面(n型InGaAlN層73a表面)に、Ti/Au電極78を形成する。これにより、Ti/Au電極78を介してn型半導体層側電極を取り出すことが可能となり、n型InGaAlN層73側にボンディングパッドを形成することができる。また、p型InGaAlN層73cのドライエッチングを行っていない表面にNi/Au透明電極76を形成し、Ni/Au透明電極76の表面の一部にAu電極77を形成する。このとき、Ni/Au電極76の膜厚を10nmかそれ以下とすることにより、Ni/Au電極76を透明電極とすることができる。
続いて、上記の工程で製造された電極付き半導体層を、例えば、一辺300μmの正方形からなる発光ダイオードチップに分割し、パッケージ表面71に実装してワイヤボンディングを行う。
その後、パッケージ71上にYAG蛍光体を滴下し硬化させることにより、半導体層73及び電極76,77,78を覆って蛍光体層79を形成する。これにより、白色光源7を製造することができる。
次に、白色光源7が白色光を発するメカニズムを説明する。
白色光源7において、Au電極77とTi/Au電極78とに対して外部電圧を印加すると、白色光源7に電流が流れる。すると、InGaAlN活性層73bは、ピーク波長が470nmである青色の光を発する。そして、この青色の光は、Ni/Au電極76が透明電極であるため、Ni/Au電極76を透過して蛍光体層79を励起する。ここで、YAG蛍光体は青色の光を吸収するとピーク波長が約550nmである黄色の光を発する。そのため、YAG蛍光体に吸収された青色の光は黄色の光となって蛍光体層79から発せられる。また、蛍光体層79に吸収されなかった青色の光は、蛍光体層79を透過する。以上より、図18に示すように、白色光源7が発する光は、蛍光体層79から発せられた黄色の光(図18の右側のピーク)と蛍光体層79に吸収されなかった青色の励起光(図18の左側のピーク)とで構成される白色光である。これにより、白色光源7が発する光は、青色の光と黄色の光とで構成される白色光となる。
しかしながら、白色光源7が発する白色光は2色で構成されているため、白色光におけるスペクトル中の赤色成分が少なく、演色性に優れない。ここで、白色光が演色性に優れない(白色光の演色性が低い)とは、白色光で照らした場合の物体の見え方と自然光で照らした場合のその物体の見え方とが異なるという意味である。逆に、白色光が演色性に優れる(白色光の演色性が高い)とは、白色光で照らした場合の物体の見え方と自然光で照らした場合のその物体の見え方とがほとんど同じであるという意味である。そのため、白色光を照明用に用いるためには、演色性に優れた白色光を用いることが好ましい。そこで、青色を発する半導体層と黄色を発する半導体層または蛍光体層とを備えているだけでなく、赤色の光を発する半導体層または蛍光体層も備えている白色発光素子を、白色光源の白色発光素子として用いることにより、その白色光源が発する白色光の演色性が高くなる、という本願発明に至った。以下に、本発明の実施形態を示す。なお、以下に示す実施形態は例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
《実施形態1》
以下、実施形態1について図1から図3を参照しながら説明する。
本実施形態では、白色光源1の構造、白色光源1の製造方法及び白色光源1が白色光を発するメカニズムを説明する。なお、図1は本実施形態における白色光源1の模式図であり、図2は本実施形態における白色光源1の製造方法を示す図であり、図3は本実施形態における白色光源1が発する光のスペクトル図である。
まず、白色光源1の構造を説明する。
白色光源1は、図1に示すように、励起光源19と、励起光源19の発する光が透過可能な位置に設けられた白色発光素子10と、を備えている。そして、白色発光素子10は、励起光源19の発する光が透過するサファイア基板(基板)11と、サファイア基板11の表面にエピタキシャル成長された半導体層12と、半導体層12が設けられた表面と反対側のサファイア基板11の表面に形成されている蛍光体層13と、を備えている。
励起光源19は、ピーク波長が470nmである青色の光を発する青色発光ダイオードである。半導体層12は、例えばIn0.4Ga0.6NなどのAlxGayIn(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦1−x−y≦1)で形成されている。そして、半導体層12の禁制帯幅は1.9eVである。そのため、可視光線(例えば、青色の光)または紫外線が半導体層12に照射されると、半導体層12はピーク波長が650nmである赤色の光を発する。蛍光体層13は、YAG蛍光体で形成されている。そのため、可視光線(例えば、青色の光)または紫外線が蛍光体層13に照射されると、蛍光体層13はピーク波長が550nmである黄色の光を発する。
次に、白色発光素子10を集積化した白色光源1’の製造方法を説明する。
まず、サファイア基板11の表面に、MOCVD法により半導体層12となるIn0.4Ga0.6N層を形成する。これにより、半導体層12は、サファイア基板11上にエピタキシャル成長される。このとき、サファイア基板11の表面は、サファイアの(0001)面である。
次に、図2(b)に示すように、半導体層12がエピタキシャル成長された表面と反対側のサファイア基板11の表面に、蛍光体層13となるYAG蛍光体層を形成する。従って、サファイア基板11の両表面には、各々、半導体層12と蛍光体層13とが形成される。これにより、図1に示す白色発光素子10が形成される。なお、蛍光体層13を形成する前に、サファイア基板11を研磨して、サファイア基板11を例えば100μm以下の厚さになるように薄膜化してもよい。
そして、白色発光体素子10を、例えば1mm角にダイシングする。その後、図2(c)に示すように、パッケージ16に白色光源1の励起光源19となる青色発光ダイオードチップ19’を設け、接着剤17を用いてパッケージ16に白色発光素子10を接着する。これにより、商用上使用できるように小型化された白色光源1’を製造することができる。
続いて、図1を用いて、白色光源1が白色光を発するメカニズムを説明する。なお、図1に示す矢印は、各々、半導体層12、蛍光体層13及び励起光源19が発する光を表す。
一般に、ピーク波長が470nmである青色の光がIn0.4Ga0.6N層に照射されると、その青色の光は吸収されて赤色の光が発せられる。また、ピーク波長が470nmである青色の光がYAG蛍光体層に照射されると、その青色の光は吸収されて黄色の光が発せられる。そして、本実施形態では、励起光源19として青色発光ダイオードを用い、且つ、白色発光素子10を励起光源19からの光が透過可能となる位置に設けている。
励起光源19の発する青色の光が白色発光素子10に到達すると、その一部は半導体層12に吸収される。これにより、半導体層12は、ピーク波長が650nmである赤色の光を発する。そして、この赤色の光は、サファイア基板11及び蛍光体層13を透過して、白色発光素子10の外部へ放射される。
半導体層12に吸収されなかった青色の光は、サファイア基板11を透過して、蛍光体層13へ到着する。すると、この青色の光の一部は、蛍光体層13に吸収される。これにより、蛍光体層13は、ピーク波長が550nmである黄色の光を発する。そして、この黄色の光は、白色発光素子10の外部へ放射される。
半導体層12及び蛍光体層13に吸収されなかった青色の光は、半導体層12、サファイア基板11及び蛍光体層13を透過して、白色発光素子10の外部へ放射される。
以上より、励起光源19が発する青色の光を白色発光素子10に照射すると、白色発光素子10は、半導体層12が発する赤色の光と、蛍光体層13が発する黄色の光と、励起光源19が発しそのまま白色発光素子10を透過する青色の光と、で構成される白色光を発する。すなわち、白色光源1は、図3に示すように、ピーク波長が650nmである赤色の光(右側のピーク)とピーク波長が550nmである黄色の光(中央のピーク)とピーク波長が470nmである青色の光(左側のピーク)とで構成される白色光を発する。比較の形態における白色光源7が発する白色光は、青色の光と黄色の光とで構成されており、白色光源1が発する白色光は、青色の光及び黄色の光に付け加え赤色の光を含む。そのため、白色光源1が発する白色光の演色性は、比較の形態における白色光源7が発する白色光の演色性よりも高くなる。
以下に、本実施形態における白色光源1及び白色発光素子10が奏する効果を示す。
比較の形態における白色光源7が発する白色光は、励起光源から発せられ半導体層及び蛍光体層を透過した青色の光と、その青色の光が蛍光体層で吸収されることにより発せられる黄色の光と、で構成されていた。一方、白色発光素子10は、ピーク波長が470nmである青色の光が照射されたときに、ピーク波長が650nmである赤色の光を発する半導体層12とピーク波長が550nmである黄色の光を発する蛍光体層13とを備えている。また、励起光源19が発する青色の光のうち半導体層12及び蛍光体層13に吸収されなかった光は、白色発光素子10を透過する。そのため、白色光源1が発する白色光は、赤色の光と黄色の光と青色の光とで構成される。従って、比較の形態における白色光源が発する白色光に赤色の光が含まれるため、白色光源1が発する白色光の演色性は、比較の形態における白色光源7が発する白色光の演色性に比べて向上する。また、比較の形態における白色発光素子に赤色の光を発する半導体層12を設けるだけで、白色光の演色性を高めることができる。
なお、本実施形態において、サファイア基板11の表面はサファイアの(0001)面に限定されることはなく、いかなる面方位でも良い。例えば、サファイアの(0001)面等の代表面からオフアングルのついた面方位であっても良い。
また、本実施形態において、基板をサファイア基板11としたが、これに限定されることはなく、可視光線を透過する基板であれば用いることができる。例えば、SiCやSiやGaAsなどで形成された基板を用いてもよい。なお、SiやGaAsで形成された基板を用いる場合には、半導体を結晶成長させた後に半導体を分離除去する必要がある。
また、サファイア基板11に半導体層12を形成するときのの結晶成長方法はMOCVD法に限定されることはなく、例えば、MBE(Molecular Beam Epitaxy;分子線エピタキシー)法やHVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy;ハイドライド気相成長)法を用いて結晶成長させてもよい。
また、半導体層12は、As、PなどのV族元素あるいはBなどのIII族元素を構成元素として含んでいてもよい。また、半導体層12は、Zn、MgやSiを不純物として含んでいてもよい。そして、Zn、MgやSiが不純物として含まれている場合、半導体層12は、この不純物の準位を介した電子と正孔との再結合により赤色に発光する。
また、サファイア基板11と半導体層12との間に、GaN下地層及びGaNあるいはAlNで形成されている薄膜バッファ層が形成されていてもよい。また、半導体層12は、多重量子井戸構造を含み輝度が向上するよう構成されていてもよく、InxGa(1−x)N(0≦x≦1)で構成されIn組成が面内で均一でなくてもよい。
更に、蛍光体層13は、半導体層12が設けられた表面に形成されていてもよい。
また、励起光源19において、青色に発光する素子はAlxGayIn(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦1−x−y≦1)で形成されている半導体層であってもよく、また、それ以外の組成式で表される半導体層であってもよい。
《実施形態2》
以下、実施形態2について図4及び図5を参照しながら説明する。
本実施形態では、白色光源2の構造、白色光源2の製造方法及び白色光源2が白色光を発するメカニズムを説明する。なお、図4は本実施形態における白色光源2の模式図であり、図5は本実施形態における白色光源2が発する光のスペクトル図である。また、図4において、図1と同一の物質及び機能を示す部分には、図1と同一の符号を付している。
本実施形態における白色光源2では、上記実施形態1における白色光源1と異なり、励起光源29が発する光は紫外線であり、蛍光体層23が2層からなる。
まず、白色光源2の構造を説明する。
白色光源2は、図4に示すように、励起光源29と、励起光源29からの光が透過可能な位置に設けられた白色発光素子20と、を備えている。そして、白色発光素子20は、励起光源29からの光が透過するサファイア基板11と、サファイア基板11の表面にエピタキシャル成長された半導体層12と、半導体層12が設けられた表面と反対側の表面に形成されている蛍光体層23と、を備えている。
励起光源29は、ピーク波長が340nmである紫外線を発する紫外発光ダイオードである。上記実施形態1では、励起光源19として青色発光ダイオードを用いている。そのため、白色光源1が発する白色光を構成する青色の光は、励起光源19から発せられた光である。一方、本実施形態では、励起光源29として紫外発光ダイオードを用いている。そのため、白色光源2が発する白色光を構成する青色の光は、励起光源29から発せられた光ではなく、励起光源29からの紫外線を蛍光体層23が吸収して発せられた光である。すなわち、白色光源2から発せられる白色光は、励起光源29からの紫外線が吸収されたことにより発せられる光のみで決まる。従って、白色光源2の方が、上記実施形態1における白色光源1に比べて、発せられる白色光の演色性を容易に制御でき、再現性が良いとともに演色性に優れた白色光を発することができる。
半導体層12はIn0.4Ga0.6Nで形成されており、この禁制帯幅は1.9eVである。そのため、半導体層12は、可視光線または紫外線が照射されると、ピーク波長が650nmである赤色の光を発する。蛍光体層23は、可視光線または紫外線が照射されることにより緑色に発光する蛍光体層(以下、「緑色発光蛍光体層」という。)23aと、可視光線または紫外線が照射されることにより青色に発光する蛍光体層(以下、「青色発光蛍光体層」という。)23bと、で構成されており、この順に積層されている。
次に、白色発光素子20を集積化した白色光源(不図示)の製造方法を説明する。
本実施形態では、上記実施形態1における半導体層12が設けられた表面と反対側のサファイア基板の表面に蛍光体層13となるYAG蛍光体層を形成するという工程(図2(b)に示す工程)において、YAG蛍光体層を設ける代わりに緑色発光蛍光体層23aと青色発光蛍光体層23bとを設ければよい。それ以外の点は上記実施形態1における白色発光素子10を集積化した白色光源1’の製造方法と同一である。
続いて、図4を用いて、白色光源2が白色光を発するメカニズムを説明する。なお、図4に示す矢印は、各々、半導体層12、蛍光体層23及び励起光源29が発する光を表す。
白色光源2では、励起光源29として紫外発光ダイオードを用い、且つ、励起光源29からの光が透過可能な位置に白色発光素子20が設けられている。
励起光源29が発する紫外線が白色発光素子20に到達すると、その一部は半導体層12に吸収される。これにより、半導体層12は、ピーク波長が650nmである赤色の光を発する。そして、この赤色の光は、サファイア基板11及び蛍光体層23を透過して、白色発光素子20の外部へ放射される。
半導体層12に吸収されなかった紫外線は、サファイア基板11を透過して、緑色発光蛍光体層23aへ到着する。すると、その紫外線の一部は、緑色発光蛍光体層23aに吸収される。これにより、緑色発光蛍光体層23aは、ピーク波長が550nmである緑色の光を発する。そして、この緑色の光は、青色発光蛍光体層23bを透過して、白色発光素子20の外部へ放射される。
また、半導体層12及び緑色発光蛍光体層23aに吸収されなかった紫外線は、その一部が青色発光蛍光体層23bに吸収される。これにより、青色発光蛍光体層23bは、ピーク波長が470nmである青色の光を発する。そして、この青色の光は、白色発光素子20の外部へ放射される。
以上より、励起光源29が発する紫外線を白色発光素子20に照射すると、白色発光素子20は、半導体層12が発する赤色の光と、蛍光体層23の緑色発光蛍光体層23aが発する緑色の光と、蛍光体層23の青色発光蛍光体層23bが発する青色の光と、で構成される白色光を発する。すなわち、白色光源2は、図5に示すように、ピーク波長が650nmである赤色の光(右側のピーク)とピーク波長が550nmである緑色の光(中央のピーク)とピーク波長が470nmである青色の光(左側のピーク)とで構成される白色光を発する。よって、白色光源2が発する白色光は、比較の形態における白色光源7が発する白色光に赤色の光が加えられてなるため、その演色性は白色光源7が発する白色光の演色性に比べて高くなる。
なお、図5に示すスペクトルにおいて、340nm付近観測されるピークは、半導体層12及び蛍光体層23に吸収されなかった紫外線が白色発光素子20の外部に放射されたことにより生じたピークである。
以下に、本実施形態における白色光源2及び白色発光素子20が奏する効果を示す。本実施形態において用いられる蛍光体は、蛍光灯にて広く用いられており、そのため、その輝度は十分高い。その結果、白色光源2が発する白色光の演色性は、向上する。
なお、本実施形態において、蛍光体層23は、緑色発光蛍光体層23aと青色発光蛍光体層23bとで構成されているとしたが、層状構造を有している必要はなく、緑色に発光する蛍光体と青色に発光する蛍光体とを含んでいるだけでもよい。
《実施形態3》
以下、実施形態3について図6及び図7を参照しながら説明する。
本実施形態では、白色光源3の構造、白色光源3の製造方法及び白色光源3が白色光を発するメカニズムを説明する。なお、図6は本実施形態における白色光源3の模式図であり、図7は本実施形態における白色光源3の製造方法を示す図である。また、図6において、図1と同一の物質及び機能を示す部分には、図1と同一の符号を付している。
本実施形態における白色発光素子30は、上記実施形態1における白色発光素子10と異なり、蛍光体層を備えておらず、3層からなる半導体層32を備えている。
まず、白色光源3の構造を説明する。
白色光源3は、図6に示すように、励起光源29と、励起光源29からの光が透過可能な位置に設けられた白色発光素子30と、を備えている。そして、白色発光素子30は、励起光源29からの光が透過するサファイア基板11と、サファイア基板11の表面にエピタキシャル成長された半導体層32と、を備えている。
励起光源29は、ピーク波長が340nmである紫外線を発する紫外発光ダイオードである。半導体層32は、可視光線または紫外線が照射されることにより青色を発光するInGaAlN層(以下、「青色発光InGaAlN層」という。)32aと、可視光線または紫外線が照射されることにより緑色を発光するInGaAlN層(以下、「緑色発光InGaAlN層」という。)32bと、可視光線または紫外線が照射されることにより赤色を発光するInGaAlN層(以下、「赤色発光InGaAlN層」という。)32cと、で構成されており、この順に積層されている。ここで、青色発光InGaAlN層32aは、例えば、In0.2Ga0.8Nであり、禁制帯幅が2.6eVであり、発する光のピーク波長が470nmである。緑色発光InGaAlN層32bは、例えば、In0.3Ga0.7Nであり、禁制帯幅が2.3eVであり、発する光のピーク波長が550nmである。赤色発光InGaAlN層32cは、例えば、In0.4Ga0.6Nであり、禁制帯幅が1.9eVであり、発する光のピーク波長が650nmである。なお、In1−x−yGaxAlyN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦1−x−y≦1)を略してInGaAlNと表記している。
次に、白色発光素子30を集積化した白色光源3’の製造方法を説明する。
まず、MOCVD法により、サファイア基板11の表面に青色発光InGaAlN層32aとなる半導体層を形成し、その層の表面に緑色発光InGaAlN層32bとなる半導体層を形成し、その層の表面に赤色発光InGaAlN層32cとなる半導体層を形成する。これにより、図7(a)に示す白色発光素子30が形成される。
次に、白色発光体素子30を、例えば1mm角にダイシングする。その後、図7(b)に示すように、パッケージ16に白色光源3の励起光源29となる紫外発光ダイオードチップ29’を設け、接着剤17を用いてパッケージ16に白色発光素子30を接着する。これにより、商用上使用できるように小型化された白色光源3’を製造することができる。
続いて、図6を用いて、白色光源3が白色光を発するメカニズムを説明する。
励起光源29が発する紫外線が白色発光素子30に到達すると、その一部は赤色発光InGaAlN層32cに吸収される。これにより、赤色発光InGaAlN層32cは、ピーク波長が650nmである赤色の光を発する。そして、この赤色の光は、緑色発光InGaAlN層32b、青色発光InGaAlN層32a及びサファイア基板11を透過して、白色発光素子30の外部へ放射される。
赤色発光InGaAlN層32cに吸収されなかった紫外線のうちの一部は、緑色発光InGaAlN層32bに吸収される。これにより、緑色発光InGaAlN層32bは、ピーク波長が550nmである緑色の光を発する。そして、この緑色の光は、青色発光InGaAlN層32a及びサファイア基板11を透過して、白色発光素子30の外部へ放射される。
赤色発光InGaAlN層32c及び緑色発光InGaAlN層32bに吸収されなかった紫外線のうちの一部は、青色発光InGaAlN層32aに吸収される。これにより、青色発光InGaAlN層32aは、ピーク波長が470nmである青色の光を発する。そして、この青色の光は、サファイア基板11を透過して、白色発光素子30の外部へ放射される。
以上より、励起光源29が発する紫外線を白色発光素子30に照射すると、白色発光素子30は、青色発光InGaAlN層32aが発する青色の光と、緑色発光InGaAlN層32bが発する緑色の光と、赤色発光InGaAlN層32cが発する赤色の光と、で構成される白色光を発する。よって、白色光源3が発する白色光は、比較の形態における白色光源7が発する白色光に赤色の光が加えられてなるため、その演色性は白色光源7が発する白色光の演色性に比べて高くなる。
以下に、本実施形態における白色光源3及び白色発光素子30が奏する効果を示す。
本実施形態においては、半導体層32が赤色の光、緑色の光及び青色の光を発する。そのため、白色発光素子30には蛍光体層を設ける必要がないため、上記実施形態1及び2の白色発光素子10、20よりも容易に製造することができる。また、白色光源3及び白色発光素子30は、上記実施形態1及び2で記載した効果も奏する。
なお、本実施形態において、半導体層32は、青色発光InGaAlN層32aと緑色発光InGaAlN層32bと赤色発光InGaAlN層32cとで構成されているが、層状構造を有している必要はなく、青色に発光するInGaAlNと緑色に発光するInGaAlNと赤色に発光するInGaAlNとを含んでいるだけでもよい。
《実施形態4》
以下、実施形態4について図8から図10を参照しながら説明する。
本実施形態では、白色光源4の構造、白色光源4の製造方法及び白色光源4が白色光を発するメカニズムを説明する。なお、図8は本実施形態における白色光源4の模式図であり、図9は本実施形態の白色発光素子40の高さ方向に対する禁制帯幅(バンドギャップ)を示す図であり、図10は本実施形態における白色光源4が発する光のスペクトル図である。また、図8において、図1と同一の物質及び機能を示す部分には、図1と同一の符号を付している。
本実施形態における白色発光素子40は、上記実施形態1における白色発光素子10と異なり、発光に関与しない半導体層44,45を備えている
まず、白色光源4の構造を説明する。
白色光源4は、図8に示すように、励起光源29と、励起光源29からの光が透過可能な位置に設けられた白色発光素子40と、を備えている。そして、白色発光素子40は、励起光源29からの光が透過するサファイア基板11と、サファイア基板11の表面に形成されたAlNバッファ層44と、AlNバッファ層44の表面に形成されたGaN層45と、GaN層45の表面に形成された半導体層42と、を備えている。そして、半導体層42は、青色発光InGaAlN層42aと、緑色発光InGaAlN層42bと、赤色発光InGaAlN層42cと、で構成されており、この順に積層されている。
励起光源29は、ピーク波長を340nmとする紫外線を発する紫外線発光ダイオードである。青色発光InGaAlN層42a、緑色発光InGaAlN層42b及び赤色発光InGaAlN層42cは、Si及びZnを含み、Siの準位及びZnの準位を介しての再結合により発光することにより、各々、青色、緑色及び赤色に発光する。また、青色発光InGaAlN層42aはIn0.1Ga0.9Nであり、緑色発光InGaAlN層42bはIn0.2Ga0.8Nであり、赤色発光InGaAlN層42cはIn0.3Ga0.7Nである。また、白色発光素子40がAlNバッファ層44とGaN層45とを備えているため、半導体層42の結晶欠陥密度を低減させることができる。そのため、白色発光素子40での非発光再結合が減少し輝度が向上する。なお、AlNバッファ層44及びGaN層45の厚さは、それぞれ約1μmである。
次に、白色発光素子40を集積化した白色光源(不図示)の製造方法を説明する。
まず、MOCVD法により、サファイア基板11の表面にAlNバッファ層44となるAlN層を形成し、そのAlN層の表面にGaN層45を形成し、その後、青色発光InGaAlN層42aとなるIn0.1Ga0.9N層、緑色発光InGaAlN層42bとなるIn0.2Ga0.8N層、赤色発光InGaAlN層42cとなるIn0.3Ga0.7N層を、この順にそれぞれ形成する。これにより、図8に示す白色発光素子40が形成される。このとき、In0.1Ga0.9N層、In0.2Ga0.8N層及びIn0.3Ga0.7N層には、Si及びZnがドープされている。
次に、白色発光体素子40を、例えば1mm角にダイシングする。その後、上記実施形態1及び3に記載のパッケージに白色光源4の励起光源29となる紫外発光ダイオードチップを設け、接着剤を用いてパッケージに白色発光素子40を接着する。これにより、白色発光素子40を集積化した白色光源を製造することができる。
そして、白色光源4が白色光を発するメカニズムは、上記実施形態3における白色光源3が白色光を発するメカニズムと略同一である。ぞのため、白色光源4は、図10に示すように、ピーク波長が650nmである赤色の光(右側のピーク)とピーク波長が550nmである緑色の光(中央の光)とピーク波長が470nmである青色の光(左側のピーク)とで構成される白色光を発する。そのため、白色光源4が発する白色光は比較の形態における白色光源7が発する白色光に赤色の光が加えられてなるため、その演色性は、白色光源7が発する白色光の演色性に比べて高くなる。
本実施形態においては、半導体層42は、In0.1Ga0.9N層、In0.2Ga0.8N層及びIn0.3Ga0.7N層を積層する構造としたが、これに限定されるわけではない。しかし、In組成が増加するに伴い半導体の格子定数が大きくなり、その結果、格子不整合により結晶欠陥が発生する虞があるということを考慮すると、この格子不整合による欠陥の発生を抑制するためには、例えば、GaNの六方晶a軸の格子定数3.19Åと同じ格子定数を保ちつつ、InGaAlNのIn、Ga、Al組成を制御することが好ましい。そして、このように制御しても、白色発光素子40と同様、青色から赤色までの光を含んだ白色光を発することができる。
なお、本実施形態において、半導体層42は、青色発光InGaAlN層42a、緑色発光InGaAlN層42b、赤色発光InGaAlN層42cの順に積層されているとしたが、赤色発光InGaAlN層42c、緑色発光InGaAlN層42b、青色発光InGaAlN層42aの順に積層されていてもよい。また、青色発光InGaAlN層42a、緑色発光InGaAlN層42b及び赤色発光InGaAlN層42cはSi及びZnがドープされていなくてもよく、その場合は、各InGaAlN層におけるInの組成比を大きくすればよい。例えば、青色発光InGaAlN層42aはIn0.2Ga0.8Nで形成されていれば、Si及びZnがドープされていなくても、本実施形態における効果と同一の効果を得ることができる。
《実施形態5》
以下、実施形態5について図11から図13を参照しながら説明する。
本実施形態では、白色光源5の構造、白色光源5の製造方法及び白色光源5が白色光を発するメカニズムを説明する。なお、図11は本実施形態における白色光源5の模式図であり、図12は本実施形態の白色発光素子50の高さ方向に対する禁制帯幅(バンドギャップ)を示す図であり、図13は本実施形態における白色光源5が発する光のスペクトル図である。また、図11において、図1と同一の物質及び機能を示す部分には図1と同一の符号を付している。
本実施形態における白色発光素子50には、蛍光体層は形成されておらず、また半導体層52も1層しか形成されていない。
まず、白色光源5の構造を説明する。
白色光源5は、図11に示すように、励起光源29と、励起光源29からの光が透過可能な位置に設けられた白色発光素子50と、を備えている。そして、白色発光素子50は、励起光源29からの光が透過するサファイア基板11と、サファイア基板11の表面に形成されたAlNバッファ層44と、AlNバッファ層44の表面に形成されたGaN層45と、GaN層45の表面に形成された半導体層52と、を備えている。
励起光源29は、ピーク波長を340nmとする紫外線を発する紫外発光ダイオードである。AlNバッファ層44及びGaN層45は、結晶性に優れ欠陥密度は低い。半導体層52は、GaN層45の表面における元素組成がIn0.38Ga0.62Nであり、白色発光素子50の表面における元素組成がInNである。そして、元素組成比は、GaN層45の表面から白色発光素子50の表面に向かう方向に対して連続的に変化する。
次に、白色発光素子50を集積化した白色光源(不図示)の製造方法を説明する。
まず、MOCVD法により、サファイア基板11の表面にAlNバッファ層44となるAlN層を形成し、そのAlN層の表面にGaN層45を形成する。その後、GaN層45表面における半導体の元素組成がIn0.38Ga0.62Nであり、積層されるにつれてGaの組成比が減少してInの組成比が増加して、半導体層52の表面における半導体の元素組成がInNとなるように、半導体層52を形成する。これにより、図11に示す白色発光素子50が形成される。
次に、白色発光体素子50を、例えば1mm角にダイシングする。その後、上記実施形態1及び3に記載のパッケージに白色光源5の励起光源29となる紫外発光ダイオードチップを設け、接着剤を用いてパッケージに白色発光素子50を接着する。これにより、白色発光素子50を集積化した白色光源を製造することができる。
続いて、図12を用いて各化合物半導体が各々光を発するメカニズム及び白色光源5が白色光を発するメカニズムを説明する。
本実施形態についても上記の実施形態4と同様、InとGaとの組成比が異なることにより半導体層の禁制帯幅の値が変わることを利用している。そして、本実施形態の場合、半導体層52の元素組成比がGaN層45の表面から白色発光素子50の表面へ向かう方向に対して連続的に変化するため、白色光源5が発する光のピーク波長は、470nm、550nm、650nm、…というように離散するのではなく、例えば、469nm、470nm、471nm、472nm、…というように連続する。従って、白色光源5が発する白色光152は無限個の光で構成され、その結果、図13に示すように、白色発光素子50は幅の広いバンドを持つ光を発する。そのため、白色発光素子50が発する白色光は自然光に非常に近く、その演色性は上記実施形態1から4における白色光源が発する白色光の演色性よりも非常に高くなる。
《実施形態6》
以下、実施形態6について図14から図16を参照しながら説明する。
本実施形態では、白色光源6の構造、白色光源6の製造方法及び白色光源6が白色光を発するメカニズムを説明する。なお、図14は本実施形態における白色光源6の模式図であり、図15は本実施形態における白色光源6の製造方法を示す図であり、図16は本実施形態における白色光源6が発する光のスペクトル図である。
本実施形態における白色発光素子60では、半導体層62に希土類元素がドープされている。
まず、白色光源6の構造を説明する。
白色光源6は、図14(a)に示すように、励起光源19と、励起光源19の発する光が透過可能な位置に設けられた白色発光素子60と、を備えている。そして、白色発光素子60は、励起光源19の発する光が透過するサファイア基板(基板)11と、サファイア基板11の表面にエピタキシャル成長されている半導体層62と、半導体層62が設けられた表面と反対側のサファイア基板11の表面に形成されている蛍光体層13と、を備えている。
励起光源19は、ピーク波長が470nmである青色の光を発する青色発光ダイオードである。
半導体層62は、アンドープAl0.5Ga0.5N層162にEu+がドープされて形成されたEuドープAl0.5Ga0.5N層である。ここで、アンドープAl0.5Ga0.5N層162は、GaN層でもよく、In0.02Ga0.98N/Al0.4Ga0.6N多重量子井戸などの量子井戸構造を含んでもよい。また、Eu+は、アンドープ層162を結晶成長中に添加されてもよい。
Eu+のドーズ量は、1x1013cm-3以上1x1016cm-3以下であることが好ましく、より好ましくは1x1015cm-3である。Eu+の加速電圧は、100keV以上500keV以下であることが好ましく、より好ましくは200keVである。また、図14(b)に示すように、半導体層62の深さ方向におけるEu+の濃度分布は、深さ75nm付近にピークを有し、そのピークにおけるEu+の濃度は、1x1020cm-3程度である。なお、このEu+の濃度分布は、ドーズ量及び加速電圧に依存して変化する。また、図15(b)に示すように、Eu+は、半導体層62の表面側のみに添加される。そして、半導体層62は、可視光線あるいは紫外光の照射により、Euの内殻電子が励起され、その電子が基底順位へ戻るさいに622nmの赤色を発光する。この赤色の発光強度は、Eu+のドーズ量を増加させることにより、増加する。
次に、白色発光素子60を集積化した白色光源6’の製造方法を説明する。
まず、図15(a)に示すように、サファイア基板11の表面に、MOCVD法によりアンドープAl0.5Ga0.5N層162を約1μm形成する。
次に、図15(b)に示すように、サファイア基板11を500℃程度にまで加熱しながら、アンドープAl0.5Ga0.5N層162の表面から200keVの加速電圧で1x1015cm-3のEu+を注入する。よって、図15(b)の拡大図に示すように、Eu+がドープされた層162aが半導体層62の表面側に形成される。そして、注入後のEu+の濃度分布は、深さ75nm付近にピークを有するようになる。そして、Eu+をイオン活性化させるため、イオン注入後に、N2雰囲気中でサファイア基板11を約1000℃でアニールし、アンドープAl0.5Ga0.5N層162をEuドープAl0.5Ga0.5N層(半導体層)62へ変化させる。
続いて、図15(c)に示すように、半導体層62が形成された表面と反対側のサファイア基板11の表面に、蛍光体層13となるYAG蛍光体を形成する。このとき、YAG蛍光体を形成する前に、サファイア基板11を研磨して、サファイア基板11を例えば100μm以下の厚さになるように薄膜化してもよい。これにより、図14に示す白色発光素子60を得ることができる。
そして、白色発光体素子60を、例えば1mm角にダイシングする。その後、図15(d)に示すように、パッケージ16に青色発光ダイオードチップ19’を設け、接着剤17を用いてパッケージ16に白色発光素子60を接着する。これにより、商用上使用できるように小型化された白色光源6’を製造することができる。
そして、白色光源6が白色光を発するメカニズムは、上記実施形態1に記載したとおりである。すなわち、励起光源19が発する青色の光を白色発光素子60に照射すると、白色発光素子60は、図16に示すように、半導体層62が発する赤色の光(ピーク波長が622nm)と、蛍光体層13が発する黄色の光(ピーク波長が550nm)と、励起光源19が発しそのまま白色発光素子60を透過する青色の光(ピーク波長が470nm)と、で構成される白色光を発する。そのため、白色光源6は、比較の実施形態に記載の白色光源7に比べて、赤色の光の成分が多いため、演色性に優れた白色光を発する。その結果、演色性に優れた白色発光ダイオードが実現可能となる。
なお、本実施形態において、半導体層62にはEu+がドープされているとしたが、Sm+やYb+がドープされていてもよい。