JP4863568B2 - 貼付材及び絆創膏、並びに救急絆創膏 - Google Patents

貼付材及び絆創膏、並びに救急絆創膏 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、貼付材及び絆創膏、並びに救急絆創膏に関する。より具体的には、医療用途における貼付用品、例えば巻絆創膏、救急絆創膏、パップ剤、ドレッシング剤、創傷保護剤などに用いられ、特に皮膚刺激に過敏な老人、乳幼児、病弱な人への使用に好適な医療用の貼付材に関する。
【0002】
【従来の技術】
救急絆創膏や巻絆創膏など、医療用途の貼付材に用いられる支持体用のフィルムとして、従来より、カレンダー法やキャスティング法により作製された可塑化ポリ塩化ビニルを主成分としたフィルムが数多く使用されてきた。
【0003】
この可塑化ポリ塩化ビニルを主成分としたフィルムは、引張初期における高い応力が、引っ張ったままにしておくと、時間と共に急激に応力が緩和するという特性を有している。このような特性を有するフィルムを用いた貼付材を皮膚に貼付した場合には、貼付後次第に引張応力が緩和され、皮膚への負担が軽減される結果となる。
【0004】
しかし、近年、上記可塑化ポリ塩化ビニルの使用については、使用しているフタル酸系液状可塑剤や含有する塩素による環境問題の観点からその対策が求められている。また、一般に軟質ポリ塩化ビニルは、柔軟性を付与するために、液状の可塑剤が多量に配合されており、この可塑剤が粘着剤中に移行して粘着剤層の凝集力を低下させ、いわゆる糊残り現象が生じたり、粘着力が低下するなどの問題を引き起こすとの指摘もあった。
【0005】
このため、医療用途においてはもちろんのこと、その他の分野においても、ポリ塩化ビニルに替わる材料として、柔軟でかつ伸縮性を有する熱可塑性樹脂の開発が活発に行なわれている。
【0006】
例えば、エチレン−メタクリレート系樹脂、ポリα−オレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレン系樹脂などが挙げられる。さらにはこのような樹脂に改質剤として異種の熱可塑性エラストマーをブレンドするなどして、柔軟性、強度などを持たせたものを支持基材として、該基材上に粘着剤を積層した貼付材が研究、開発されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような樹脂を用いた単独フィルムやブレンドフィルムを用いた場合では、耐熱性、引張強度、柔軟性、応力緩和性などにおいてバランスのとれた軟質ポリ塩化ビニル(可塑化ポリ塩化ビニル)フィルムを用いた貼付材の特性には、未だ十分には到っていないのが現状である。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、引張強度、柔軟性並びに応力緩和性などにおいてバランスのとれた特性を有する軟質ポリ塩化ビニルフィルムの代替となる新たな貼付材用基材フィルムを提供することを目的とするものである。
【0009】
そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、支持基材として非晶性ポリオレフィンフィルムを用いた多層フィルムが、引張強度、柔軟性並びに応力緩和性において軟質ポリ塩化ビニルフィルムに近い特性を有することを見い出した。さらに、このようなフィルムにおいては、フィルム中に含有され、柔軟性に寄与する低分子量物の表面ブリードをも抑えることが可能なことを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る貼付材用基材フィルムは、非晶性ポリオレフィンよりなるA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂よりなるB層を積層したことを特徴としている。すなわち、本発明の貼付材用基材フィルムは、少なくとも2層構造をしており、非晶性ポリオレフィンよりなるフィルム(A層)とポリプロピレン系樹脂よりなるフィルム(B層)を積層したものであって、さらには、前記A層の両面にB層を積層したものをも含むものである。
【0011】
本発明の貼付材用基材フィルムのベース層(A層)は、非晶性ポリオレフィンを主成分とするものであって、必要に応じて非晶性ポリオレフィンに、無機充填剤や高分子可塑剤を含有させて作製される。
【0012】
当該非晶質ポリオレフィンとしては、例えば、特開平4−224809号公報に開示された方法により得られるものや、特公平6−89071号公報等に記載されたものが例示される。より具体的には、所定の触媒を用いて、プロピレンを単独でアタクチック重合させたもの、プロピレンとプロピレン以外の炭素数2〜10のα−オレフィンとを各モノマーがランダムに配列するように共重合させた分子量の比較的低いものが挙げられ、後者においては、プロピレン含量が50重量%以上であり、炭素数2〜10のα−オレフィン含量が50重量%以下のものが好ましく用いられる。
【0013】
当該α−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、へキセン−1、オクテン−1、ノナン−1、デセン−1、4−メチルペンテン−1、4−メチルへキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1などの鎖状α−オレフィンや、シクロペンテン、シクロヘキセンなどの環状α−オレフィンを挙げることができる。これらのα−オレフィンは、1種若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。また、上記した中でも、非晶性のプロピレン重合体、非晶性のエチレン及び/又はブテン−1とプロピレンとの共重合体、すなわち、エチレンとプロピレンとの共重合体、あるいはブテン−1とプロピレンとの共重合体、さらにはエチレンとブテン−1及びプロピレンとのランダム共重合体が特に望ましく用いられる。なお、本発明においては、非晶性ポリオレフィンは、非晶性のポリオレフィンだけではなく、本発明の効果を発揮できる限りにおいて、低結晶性のポリオレフィンをも含む概念である。
【0014】
また、これらの非晶性ポリオレフィンとしては、数平均分子量が1,000〜28,000、好ましくは1,500〜25,000、さらに好ましくは2,000〜20,000の範囲のものであって、かつ、190℃における溶融粘度が100〜100,000mPa・Sの比較的低粘度のものが好ましく用いられる。
【0015】
このように、従来のポリプロピレン系樹脂に比べて結晶質部分の割合を大幅に減らした非晶性若しくは低結晶性ポリオレフィンを用いることにより、貼付材基材フィルムの応力緩和性や柔軟性を高めることができる。
【0016】
さらに本発明にあっては、弾性率や伸びなどの物理的性質を調整するために、結晶性のポリプロピレン系樹脂を適宜混合して用いることもできる。このときの混合比としては、非晶性(低結晶性)ポリオレフィンを5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、さらには好ましくは20〜80重量%となるように調整するのが好ましい。非晶性(低結晶性)ポリオレフィンが5重量%未満であれば、得られた貼付材用基材フィルムの柔軟性が低下する傾向を示し、本発明の用途には適しにくくなる。
【0017】
また、貼付材用基材フィルムに軟質フィルムの特性を持たせるため、混合する結晶性ポリプロピレンとして、密度0.890g/cm3以上、好ましくは0.895g/cm3のプロピレン系ランダム共重合体を用いるのが特に好ましい。
【0018】
さらに本発明においては、非晶性(低結晶性)ポリオレフィンや結晶性ポリプロピレンとして、変性したものを用いることもできる。当該変性ポリオレフィンとしては、上記非晶性(低結晶性)ポリオレフィンや結晶性ポリオレフィンを、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、これらのエステル、これらの酸無水物、これらの金属塩、さらにはこれらの誘導体を用いて変性したものを用いることができる。
【0019】
さらに上記したようにA層には、無機充填剤を10〜75重量%含有させるのが好ましい。この無機充填剤としては、従来のフィルムに添加されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ゼオライト、ベントナイト、マイカ、タルク、ケイ酸カルシウム、シリカ、カオリン、ガラス繊維、クレーなどのケイ酸化合物が挙げられる。
【0020】
この中で、本発明においては、ゼオライト及びタルクは、他のケイ酸化合物に比べ、当該A層のフィルムの剛性を挙げることなく応力緩和性を向上させることができ、好都合である。
【0021】
本発明においては、天然ゼオライトや合成ゼオライトを問わず用いることができる。例えば、天然ゼオライトとしてはモルデナイト(モルデン沸石)やエリオナイト(毛沸石)、クリノブチロライト、チャバザイト(斜方沸石)などが挙げられる。合成ゼオライトとしてはA型ゼオライトやX型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、オメガ型ゼオライトなどが挙げられる。また、これらのうちから選ばれた少なくとも1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
また、無機充填剤の粒径としても特に制限されるものではないが、平均粒径0.01〜150μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに望ましくは0.5〜35μmのものが好適に用いられる。150μmよりも大きな粒径を有する無機充填剤を用いた場合には、分散不良を引き起こし、得られた貼付材用基材フィルムにいわゆるフィッシュ・アイ現象が増加し、好ましくない。
【0023】
さらにA層には熱可塑性エラストマーが添加される。熱可塑性エラストマーを添加することにより、無機充填剤とポリプロピレン系樹脂との相溶性を高め、貼付材用基材フィルムの耐衝撃性や延伸性、柔軟性、透明性等の劣化を防止できる。
【0024】
このような熱可塑性エラストマーとしては、明確な降伏点を有しない低結晶性エラストマー又は明確な融点及び明確な降伏点を有しない非晶性エラストマーであって、常温でゴム弾性を有するエラストマー、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
【0025】
より具体的に言うと、スチレン系エラストマーとして、スチレン−ブタジエン共重合体及びその水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、水素添加エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、イソプレン−スチレン共重合体及びその水素添加物、水素添加スチレン−イソプレン共重合体(SEPS)、水素添加スチレン−ビニルイソプレン共重合体(V−SEPS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SEPS)、水素添加スチレン−ブタジエン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)等が挙げられる。
【0026】
また、ポリオレフィン系エラストマーとして、非晶性又は低結晶性ポリオレフィン/α−オレフィン共重合体、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系ゴムとの混合物、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系ゴムの部分架橋体との混合物、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系樹脂の完全架橋体との混合物等が挙げられる。
【0027】
さらに、ポリエステル系エラストマーとしては、ポリエステル−ポリエーテル共重合体、ポリエステル−ポリエステル共重合体等を、また、ポリアミド系エラストマーとして、ポリアミドーポリエステル共重合体、ポリアミド−ポリエーテル共重合体をそれぞれ例示できる。
【0028】
このような熱可塑性エラストマーは、A層の樹脂組成物全重量中3〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%添加される。また、このとき、無機充填剤などその他の添加剤等をも含めたA層全重量中、5〜30重量%添加される。
【0029】
本発明においては、このようなA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂よりなるフィルム(B層)が積層される。このポリプロピレン系樹脂として、ホモポリプロピレンを用いてもよいが、本発明においては、プロピレンを主成分とした共重合体を用いるのが望ましい。ホモポリプロピレンを用いた場合には、貼付材用基材フィルムの材質として、弾性率が高くなる傾向を示す。
【0030】
また、当該共重合体としては、プロピレンと共重合できるものであれば特に問われるものではないが、適度な柔軟性を得るためには、エチレンを含有するランダムポリプロピレンを用いるのが特に好ましい。
【0031】
本発明においては、このB層には、上記した熱可塑性エラストマーが含有されたものを用いるのがより好ましい。また、この際、B層の樹脂組成物全重量中3〜95重量%、より好ましくは5〜80重量%添加される。また、このとき、その他の添加剤等をも含めたB層全重量中、10〜50重量%添加される。
【0032】
この熱可塑性エラストマーが含有されたB層は、A層の片面に積層され、2層構造の貼付材用基材フィルムとして、あるいはA層の両面に積層して3層構造の貼付材用基材フィルムとして提供される。特に、A層の少なくとも何れか一方の露出面に、熱可塑性エラストマーを含有したB層が積層され、残るA層の露出面には熱可塑性エラストマーを含有しないB層若しくは熱可塑性エラストマーを含有するB層が積層された3層構造とするのがよい。このような構造の貼付材用基材とすることにより、耐熱性や引張強度、柔軟性並びに応力緩和性において軟質ポリ塩化ビニルフィルムに近い特性を発揮させることができ、粘着剤層を積層した場合に軟質ポリ塩化ビニルフィルムと同様な貼付性を得られるものである。もちろん、A層の何れか一方のみに、熱可塑性エラストマーを含有したB層を積層したり、熱可塑性エラストマーを含有しないB層を積層するのみでも、ある程度引張強度、柔軟性、応力緩和性の向上に寄与できるものである。
【0033】
なお、A層及び/又はB層には、一般的な貼付材用基材フィルムに用いられるような耐熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料を添加してもよいのはもちろんである。
【0034】
本発明においては、上記したように非晶性ポリオレフィンに、各種の無機充填剤や熱可塑性エラストマーなどが配合されたA層(フィルム)に、ポリプロピレン系樹脂に、熱可塑性エラストマーが配合されたB層(フィルム)若しくは熱可塑性エラストマーが配合されていないB層(フィルム)が積層されるが、このとき、各層ごとに上記各成分を混合して、通常ペレット状若しくは塊状として供給された後、積層フィルムに加工される。
【0035】
この際、混合方法としても特に限定されるものでもなく、従来から採用されている公知である種々の混合機、例えば、ニーダー、ロール、バンバリーミキサー等の各種混練り機、あるいは、一軸若しくは二軸押出し機等を用いて加熱溶融混練りして、ペレット状等に加工される。
【0036】
そして、これらのペレット等を用いてA層及びB層からなる積層フィルムが形成される。この時の成形方法も特に限定されるものではなく、従来から公知のTダイ法、インフレーション法、カレンダー法、圧延法等により所望する厚みに製膜して積層フィルムにすることができる。もちろん、樹脂ペレットを経ることなく、各層における上記成分を混練りして、ドライブレンド等にてフィルム状に一貫製造することができるのは言うまでもない。
【0037】
また、積層フィルムとする方法としても、従来から用いられている種々の公知の方法を用いることができ、いわゆるA層の片面若しくはその両面にB層をラミネートする方法や、2層若しくは3層共押出し法による方法が採用される。
【0038】
各層の厚みとしては、A層の厚みが10〜100μm、好ましくは20〜80μmであり、B層の厚みとしては、熱可塑性エラストマーを含有するしないにかかわらず、2〜20μm、好ましくは3〜15μmに設定される。A層の厚みが10μmよりも薄いと本発明の効果である応力緩和性が十分に発揮できない場合がある。また、A層の厚みが100μmよりも厚くなると、貼付材用基材フィルムとして硬くなりすぎ、柔軟性に欠け貼付時の違和感が出る可能性がある。
【0039】
一方B層の厚みが2μmよりも薄いとA層に用いた樹脂の低分子物質等の表面へのブリードによる弊害が懸念されることがある。また、20μmよりも厚いと、弾性率が高くなりすぎて、皮膚貼付時の違和感が出る可能性がある。
【0040】
このようにして作製された貼付材用基材フィルムにおいては、その片面若しくは両面に粘着剤層が形成される。このとき、A層の表面若しくはB層の表面何れにおいて、粘着剤層を形成してもよいが、A層中の低分子量物質のブリードや投錨性を考えた場合には、B層の表面に粘着剤層を形成するのが好ましく、さらに望ましくは熱可塑性エラストマーを含有するB層の表面に粘着剤層を形成するのが、貼付時の違和感を減少させ、若しくは投錨破壊を防ぐ点でより好ましく、塩化ビニルフィルムを用いた場合により近い特性を発揮させることが可能になる。
【0041】
また、粘着剤層を形成するに際し、当該貼付材用基材フィルムに直接粘着剤層を形成するだけでなく、基材フィルムとの投錨力向上のため、粘着剤層形成面にエンボス加工などを施して形成するのがよい。また、従来からある公知の方法により、コロナ処理や下塗り剤による前処理を施して間接的に粘着剤層を形成するのが好ましい。
【0042】
当該粘着剤層には、従来から医療用の粘着剤として用いられるものであれば特に限定されることなく、いかなる粘着剤をも用いることができる。当該粘着剤として、例えば、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤を挙げることができる。
【0043】
当該アクリル系粘着剤としては、好ましくは炭素数が1〜18、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体や当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として、当該単量体と共重合可能な他の単量体を1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲で共重合してなる各種共重合体などが用いられる。
【0044】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、ラウリルエステル、ステアリルエステルなどが挙げられ、これらのエステル鎖は直鎖状若しくは分岐状のいずれでもよい。
【0045】
また上記エステルと共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸やマレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有不飽和単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルエステルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミドやジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸N,N−アルキルアミノアルキルエステル、N−ビニルピロリドンなどの酸アミド基含有不飽和単量体などの官能性単量体が挙げられる。なお、これらの官能性単量体以外に、酢酸ビニルやスチレン、アクリロニトリルなどの無官能性の単量体も共重合させることができる。
【0046】
ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブテン、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体などの主ポリマーに粘着付与樹脂としてロジン系樹脂やテルペン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、石油系樹脂などを配合したものを用いることができる。さらに必要に応じて、液状ポリブテンや鉱油、ラノリン、液状イソプレン、脂肪酸エステルなどの軟化剤や、酸化チタン、酸化亜鉛などの充填剤、ブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤などを適宜配合したものを用いることができる。なお、このような添加剤は、前記アクリル系粘着剤に配合しても差し支えないものである。また、アクリル系粘着剤に軟化剤を配合する場合には、必要に応じて多官能性ポリイソシアネートや、多官能性エポキシ化合物、アルミニウムキレート化合物により架橋処理するのが好ましい。
【0047】
シリコーン系粘着剤としては、ジメチルポリシロキサンを主成分とする粘着剤が例示される。
【0048】
これらの粘着剤から構成される粘着剤層の厚みは、10〜120μmが好ましく、さらに好ましくは20〜80μmである。10μmより薄いと、貼付材として皮膚に適用した場合、十分な固定性が得られないことがある。また、120μmよりも厚いと貼付材として皮膚に適用後剥離時に、粘着力が強過ぎてかぶれを引き起こす懸念がある。また、過剰の糊厚のためコスト的にも不利となる。これらの粘着剤は、従来から公知の方法によって上記基材フィルム上に塗布され、粘着剤層が形成される。
【0049】
このようにして得られた本発明に係る貼付材は、例えば、ドレッシング材やサージカルテープ、ロール状に巻回され、いわゆる巻絆創膏として用いられる。
【0050】
また、適当な大きさに切断した後、粘着剤層の表面中央領域に吸液性のパッドを備え、救急絆創膏として用いることもできる。当該吸液性パッドとしては、従来から使用されている公知のものが用いられ、例えば、ガーゼや織布、不織布、脱脂綿と不織布との複合品、脱脂綿と編ネットとの複合品などを挙げることができる。また、その大きさは貼付材の大きさによっても異なるが、吸液性パッドの周囲に該貼付材の粘着剤層が少なくとも2〜3mm程度露出されるような大きさに調整するのが好ましい。
【0051】
上記本発明の救急絆創膏は、粘着剤層の表面の汚染を防ぐために、使用するまで粘着剤層表面をセパレータにて被覆しておくことが好ましい。この場合、使用するセパレータは、オルガノシロキサン系ポリマーを含有する粘着剤層との離型性を良好とするため、シリコーン系の離型剤を用いたものを用いることが好適である。
【0052】
このようにして得られた貼付材は、柔軟性や応力緩和性に優れ、貼付感の良好なものであるが、皮膚面に長時間貼付すると貼付部位にムレを生じ、その結果、皮膚かぶれを引き起こしたり恐れがある。従って、このような場合には、貼付材用基材フィルム及び粘着剤層に、機械的強度を低下させない程度に穿孔処理を施すことが好ましい。この穿孔処理により、本発明の巻回された絆創膏においては、使用時の手切れ性が付与される。なお、これらの穿孔処理を施すには、穿孔ロールによる方法や、パンチング、レーザー照射などの方法を用いることができ、孔径は0.2〜3mm程度とするのが好ましい。
【0053】
【実施例】
以下、各実施例に基づいて、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下における「部」は「重量部」を意味し、「%」とは「重量%」を意味する。
【0054】
<樹脂ペレットの作製>
A層に用いる樹脂については、200℃のニーダーにて非晶性ポリオレフィン樹脂、無機充填剤、熱可塑性エラストマーを表1に示すように所定量仕込み、5〜10分間混練りして必要とする樹脂ペレットを作製した。またB層に用いる樹脂についても、200℃のニーダーにてランダムポリプロピレン及び熱可塑性エラストマーを表2に示すように所定量仕込み、5〜10分間混練りして必要とする樹脂ペレットを作製した。
【0055】
【表1】
Figure 0004863568
【0056】
<フィルムの作製>
公知のTダイ法により3層押出し機を用いて、実施例である貼付材用基材フィルムを作製した。この際、各押出し機のシリンダー温度を150〜240℃の間となるように、樹脂の種類に応じて適宜調整した。このとき、表2に示すように、各種組成物を所定厚さ比となるように押出し、各層(各フィルム)のトータル厚さが80μmとなるように調整しながら製膜し、実施例1〜5及び比較例1の貼付材用基材フィルムを得た。また、得られた貼付材用基材フィルムの両面にエンボス加工を施したが、これは押出し直後冷却前にエンボスロールにて圧着して施した。
【0057】
【表2】
Figure 0004863568
【0058】
<粘着剤の作製>
(粘着剤1)
アクリル酸イソオクチルエステル95部、アクリル酸5部を、重合溶媒としての酢酸エチル中で共重合させ、固形分濃度が35%の粘着剤溶液を得た。
【0059】
(粘着剤2)
上記粘着剤1の100部に対して、可塑剤としてミリスチン酸イソプロピル70部、外部架橋剤として3官能性ポリイソシアネート0.2部を酢酸エチルに希釈して、固形分濃度が30%の粘着剤溶液を得た。
【0060】
<貼付材の作製>
片面をシリコーン樹脂で剥離処理したセパレータ上に、上記作製した粘着剤溶液を乾燥後の厚みが約50μmとなるように塗布、乾燥して粘着剤層を作製した。次に、得られた粘着剤層を実施例1〜5及び比較例1の貼付材用基材フィルムに転写積層して、各種の貼付材を作製した。
【0061】
<評価試験>
上記のようにして作製した貼付材用基材フィルム及び貼付材を用い、以下に示す項目について評価試験を行なった。なお、試験用のサンプルとして、上記各フィルムを幅20mm、長さ40mmの大きさに裁断したものを用いた。また、測定には、貼付試験を除き、引張試験機を用いてチャック間距離20mm、23±2℃、65±15%相対湿度の条件下で行なった。さらに、比較例として、表2に示す各種単層基材フィルムを用いて同様に試験を行なった。
【0062】
(初期応力)
引張試験機を用いて、引張速度300mm/minで延伸し、伸び−応力曲線を求めた。この伸び−応力曲線から初期応力(N/20mm)を求めた。
【0063】
(応力緩和比)
初期応力と同様にして引張試験を行い、10%伸びまで延伸して、時間経過による引張応力値の変化を測定し、次式により応力緩和比(%)を求めた。
応力緩和比(%)=(5分後応力/初期引張応力)×100
なお、初期引張応力は、引張開始直後から10%伸長するまでの最大引張応力値を示す。
【0064】
(応力半減時間)
初期応力と同様にして引張試験を行い、10%伸びまで延伸して、時間経過による引張応力の変化を測定し、応力緩和曲線を求めた。この曲線より初期引張応力が、半分になるまでの時間(秒)を求めた。これらの基材フィルムの特性を表3にまとめた。
【0065】
(貼付材の貼付性)
上記実施例1〜4及び比較例3〜5の貼付材用基材フィルムを用いた貼付材を、それぞれ5cm×5cmの大きさに裁断して、健常人ボランティア10名の肘(屈曲部)に8時間貼付してもらい、貼付感、皮膚接着性について5段階評価により評価した。その結果を表4に示す。なお、表4には10名の平均値を示した。
【0066】
(チューブ固定性)
上記実施例1,4,5及び比較例1,2の貼付材用基材フィルムを用いたサージカルテープを、それぞれ12mm×60mmの大きさに裁断し、健常人ボランティア10名の前腕内側に当該テープでもって、外径5mmのシリコーンチューブをU字型にしたものを固定し、その時の固定性をチューブの復元力により剥がれなかった時間(分)で評価した。その結果を表5に示す。
【0067】
(救急絆創膏の貼付性)
上記実施例1,2,4及び比較例3〜5の貼付材用基材フィルムを用いた貼付材を、それぞれ19mm×72mmの大きさに裁断し、粘着剤表面の中央領域に12mm×20mmの大きさのガーゼパッドを設けて、救急絆創膏を作製した。得られた救急絆創膏を、健常人ボランティア10名の指第2関節に6時間ラップ巻すると共に前腕部に8時間貼付してもらい、貼付感、皮膚接着性、皮膚刺激性について5段階評価により評価した。その結果を表6に示す。なお、表6には10名の平均値を示した。
【0068】
<評価結果>
まず表3から分かるように、本発明による貼付材用基材フィルムにおいては、従来のポリエチレン系フィルムに比べて、初期応力はほぼ同等若しくはそれよりも高いものの、実際の使用上は特に問題となるものではなかった。しかし、応力緩和比については、従来のポリエチレン系フィルムに比べて低く、塩化ビニル製フィルムに近い値が得られた。また、応力半減時間においても、塩化ビニル製フィルムほどには短くならなかったが、従来のポリエチレン系フィルムに比べれば、格段に短いものであった。
【0069】
次に、これらの貼付材用基材フィルムを用いて各種貼付材を得たところ、表4及び表6から分かるように、従来のポリエチレン系フィルムに比べて、貼付感、皮膚接着性及び皮膚刺激性においても良好なものが得られ、また、塩化ビニルフィルムを用いた場合とほぼ同様な貼付性能を得られることが分かった。
【0070】
また、非晶性ポリオレフィンよりなるA層に直接粘着剤層を積層した場合には、表5に示すように粘着剤によっては投錨破壊が見られ、復元力の強いチューブの固定性に十分適したものが得られなかった(比較例1及び比較例2)。
【0071】
一方、B層に粘着剤層を積層した場合には、表5から分かるように、投錨破壊も見られず、また、復元力のあるチューブに対する固定性も十分なものが得られることが分かった。
【0072】
【表3】
Figure 0004863568
【0073】
【表4】
Figure 0004863568
【0074】
【表5】
Figure 0004863568
【0075】
【表6】
Figure 0004863568
【0076】
【発明の効果】
本発明の貼付材用基材フィルムによれば、非晶性ポリオレフィンよりなるA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂よりなるB層を積層しているので、従来のポリオレフィンフィルムに比べて、引張強度、柔軟性並びに応力緩和性においてバランスのとれたポリ塩化ビニルフィルムの特性に近い基材フィルムを提供できる。
【0077】
このとき、A層に積層されるB層に、熱可塑性エラストマーを含有させることにより、より一層引張強度、柔軟性並びに応力緩和性などの特性を塩化ビニルフィルムのそれに近づけることができる。
【0078】
また、A層の両面にB層を積層させるのが好ましいが、その何れか一方のB層に熱可塑性エラストマーを含有させることにより、より貼付性能に優れた貼付材を提供できる。また、熱可塑性エラストマーを含有させたB層に、粘着剤層を形成することにより、投錨破壊が少なく、また、A層中に含有された低分子量物質が粘着剤層に移行してブリードを生じるのを防ぐことができるのは言うまでもない。
【0079】
このように本発明によれば、従来の塩化ビニルフィルムの代替となる貼付材用基材フィルムを提供でき、本発明に係る貼付材用基材フィルムを用いることにより、引張強度、柔軟性並びに応力緩和性において優れ、塩化ビニルフィルムを用いた場合と劣ることのない絆創膏、救急絆創膏などの各種医療用途に適した貼付材を提供できる。

Claims (15)

  1. 貼付材用基材フィルムの少なくとも片面に、粘着剤層を備えた貼付材において、前記貼付材用基材フィルムは、非晶性ポリオレフィンよりなるA層の少なくとも片面に、ポリプロピレン系樹脂よりなるB層を積層したことを特徴とする貼付材用基材フィルムであって、前記粘着剤層は、前記B層に直接的若しくはコロナ処理や下塗り剤の塗布を施して間接的に積層したことを特徴とする貼付材。
  2. 前記B層は、熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする請求項1記載の貼付材。
  3. 前記A層のいずれか一方の露出面に、熱可塑性エラストマーを含有するB層が積層され、残る一方の露出面には、熱可塑性エラストマーを含有しないB層が積層されたことを特徴とする請求項2記載の貼付材。
  4. 前記非晶性ポリオレフィンは、非晶性ポリプロピレン、エチレン及び/又はブテン−1とプロピレンとのランダム共重合体の何れか1種若しくは2種以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の貼付材。
  5. 前記A層が結晶性ポリオレフィンを含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の貼付材。
  6. 前記A層が熱可塑性エラストマー及び無機充填剤を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の貼付材。
  7. 前記熱可塑性エラストマーは、エチレン−ブテン共重合体及び/又はスチレン−ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載の貼付材。
  8. 前記B層におけるポリプロピレンが、エチレンを含有するランダムポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の貼付材。
  9. 前記B層の露出表面がエンボス加工されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の貼付材。
  10. 前記A層の厚みが、10〜100μmであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の貼付材。
  11. 前記B層の厚みが、2〜20μmであることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の貼付材。
  12. 前記粘着剤層は、前記熱可塑性エラストマーを含有するB層側に積層されたことを特徴とする請求項1記載の貼付材。
  13. 前記粘着剤層の厚みは、10〜120μmであることを特徴とする請求項1又は12の何れか1項に記載の貼付材。
  14. 請求項1記載の貼付材が巻回されてなることを特徴とする絆創膏。
  15. 請求項1記載の貼付材と、前記粘着剤層の中央領域に吸液性パッドを備えたことを特徴とする救急絆創膏。
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