JP4861590B2 - パーキンの活性調節に有用な組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、パーキン(parkine)の活性を調節するために有用な組成物及び方法に関する。より特定的には本発明は、パーキンの結合相手となるPAP1と命名された新規なタンパク質並びに該タンパク質から誘導されるかまたは該タンパク質に相同なペプチドまたはポリペプチドに関する。本発明はまた、パーキンの活性を少なくとも部分的に変調し得る化合物、特に、パーキンとPAP1との相互作用に干渉し得る化合物に関する。本発明は、治療及び診断の分野に有用であり、また、新規な医薬の開発に役立つ薬理学的ターゲットを構成するために有用である。
【0002】
パーキンソン病のいくつかの家族性形態(若年性常染色体劣性疾患)ではパーキンの遺伝子が突然変異している(Kitadaら,1998)。パーキンソン病(Lewy,1912)は、最も代表的な神経変性疾患の1つであり、55歳以上の人口の1%以上がこの病気に罹患している。この病気に罹患した患者には様々な神経障害が見られるが、これらをパーキンソン症候群と総称する。特徴的な症状は、筋固縮、無動、安静時振戦である。これらの症状は、脳の黒質のドーパミン作動性ニューロンが変性した結果として生じる。
【0003】
パーキンソン病の大抵の症例は家族性疾患ではない。しかしながら、家族性の症例もある程度は存在しており、そのうちの幾つかは一遺伝子遺伝型の疾患である。現時点では、発症例の少ない幾つかの遺伝性形態で異なる3つの遺伝子が同定されているだけである。第一の形態は、常染色体優性型であり、その原因遺伝子はアルファシヌクレインをコードしている(Polymeropoulosら,1997)。このタンパク質は、パーキンソン病のマーカーの役割を果たすLewy体と呼ばれる細胞質内封入体に多い成分である(Lewy,1912)。第二の形態は、同じく常染色体優性型であり、ユビキチンのカルボキシ末端ヒドロラーゼL1と呼ばれるヒドロラーゼをコードする遺伝子の突然変異に関係がある(Leroyら,1998)。この酵素はポリマーまたはコンジュゲートの形態のユビキチンをモノマー形態のユビキチンに加水分解すると推測されている。第三の形態は、上記の2つの形態に比べて、常染色体劣性型であること、しばしば40歳以前に発病すること、及び、Lewy体が存在しないことを顕著な特徴としている。この形態の患者に対しては、パーキンソン病の治療薬として使用されているドーパミン前駆物質L−ドーパが極めて有効である。この形態に関与する遺伝子はパーキンと呼ばれる新しいタンパク質をコードしている(Kitadaら,1998)。
【0004】
パーキンの遺伝子は、染色体6(6q25.2−q27)の500,000塩基対以上のゲノム領域を含む12個のエキソンから構成されている。現時点では、病気の初期にこの遺伝子に主として2種類の突然変異、即ち、エキソン2−9を含む領域に種々のサイズの欠失が生じる突然変異、または、終結コドンの早期出現もしくはアミノ酸の変化が生じる点突然変異が存在することが知見されている(Kitadaら,1998;Abbasら,1999;Luckingら,1998;Hattoriら,1998)。これらの突然変異の特性及び常染色体劣性伝達モードは、パーキンの機能低下がパーキンソン病に至ることを示唆する。
【0005】
この遺伝子は多くの組織、特に黒質で発現される。種々の選択的スプライシングの結果としてこの遺伝子に対応する複数の転写産物が存在する(Kitadaら,1998;Sunadaら,1998)。脳内に2種類のメッセンジャーRNAが存在しており、一方のメッセンジャーRNAではエキソン5に対応する部分が欠失している。白血球中で同定されたパーキン遺伝子のメッセンジャーRNAはエキソン3、4及び5をコードする領域を含まない。脳内に存在するパーキン遺伝子の長いほうのメッセンジャーRNAは2960塩基を含んでおり、465アミノ酸から成るタンパク質をコードしている。
【0006】
このタンパク質のN末端部分はユビキチンとの相同性が小さい。C末端側の半分は、システインに富む領域に対応するIBR(In Between Ring)ドメインによって分離された2つの“リングフィンガー”モチーフを含み、“ジンクフィンガー”ドメインとして金属と結合し得る(Morett,1999)。パーキンがメラミンを含有する黒質のニューロンの細胞質及びゴルジ装置に局在することは免疫組織化学によって証明された(Shimuraら,1999)。更に、このタンパク質はパーキンソン病患者の幾つかのLewy体に存在している。パーキンの細胞性機能はまだ解明されていないが、シナプス小胞内でも、タンパク質の成熟または分解のときにも、また、細胞の増殖、分化または発達のコントロールにおいても、輸送体の役割を果たすと考えられる。若年性常染色体劣性型ではパーキンが存在しない。従って、この機能の喪失が病気の一因であると確信し得る。
【0007】
従って、ドーパミン作動性ニューロンの変性過程でパーキンタンパク質が果たす正確な役割を解明することは、パーキンソン病の全容を理解しその治療方法を開発するため、より一般的には中枢神経系疾患の全容を理解しその治療方法を開発するために最も重要な課題である。
【0008】
本発明の目的は、生理的条件下でパーキンと相互作用するパーキンの結合相手を同定することである。パーキンの結合相手は、パーキンの活性を変調し得る化合物、特にドーパミン作動性ニューロンの変性及び/または神経性疾患の進行に関するパーキンの活性を変調し得る化合物を製造または研究する薬理学の新しい対象である。このタンパク質、抗体、対応する核酸及び特異的プローブもしくは特異的プライマーはまた、生物標本、特に神経組織標本中のタンパク質の検出または定量にも役立つ。これらのタンパク質または核酸は、パーキンの活性を変調したり本発明化合物の活性を変調したりするために、パーキンと本発明のポリペプチドとの相互作用を変調するような治療方法にも有用である。
【0009】
より特定的には本発明は、パーキンと相互作用する新規なヒトタンパク質が出願人らによって知見された結果として得られた。このタンパク質をPAP1(Parkine Associated Protein 1)またはLY111と呼ぶ。PAP1タンパク質(配列1または2)は、シナプトタグミンに対してある程度の相同性を有しており、特にパーキンの中央領域(配列3または4で表す)と相互作用し得る。PAP1タンパク質はまた、ヒト起原の種々の組織特に肺(配列12、13)及び脳(配列42、43)から、また、スプライシングに起因する変異体に対応する短縮形態(配列14、15、44、45)から、クローニングされ、配列決定され、特性決定された。
【0010】
本発明はまた、パーキンの機能の変調に関与するPAP1タンパク質の特定領域を同定及び特性決定した結果として得られた。このタンパク質の存在を知見しその機能に関与する領域を解明したことによって、医薬として有用な新規な化合物及び/または組成物を製造すること、及び、このような化合物の工業的なスクリーニング方法を開発することが可能になった。
【0011】
従って、本発明の第一の目的は、PAP1タンパク質(またはそれらのホモローグ)とパーキン(特にヒトのパーキン)との相互作用を少なくとも部分的に変調し得るかまたはこれらのタンパク質の相互作用段階に干渉し得る化合物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、PAP1タンパク質、そのフラグメント、誘導体及びホモローグを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、PAP1タンパク質、そのフラグメント、誘導体またはホモローグをコードする核酸、このような核酸を含むベクター、このような核酸またはベクターを含む組換え細胞、及び、このような核酸をその細胞内に含むヒト以外の哺乳動物を提供することである。
【0014】
本発明はまた、PAP1タンパク質、そのフラグメント、誘導体及びホモローグに結合し得る抗体、特にポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、より好ましくはPAP1タンパク質と結合することができPAP1タンパク質とパーキンとの相互作用を少なくとも部分的に阻害し得る抗体に関する。
【0015】
本発明の別の目的は、任意の生物標本中のpap1遺伝子または該遺伝子の1つの領域を検出または増幅するために有用なPAP1特異的ヌクレオチドプローブまたはプライマーを提供することである。
【0016】
本発明はまた、医薬組成物、遺伝的異常の検出方法、上記に定義のようなポリペプチドの産生方法、活性化合物のスクリーニングまたはキャラクタリゼーションの方法に関する。
【0017】
上述のように、本発明の第一の目的は、PAP1タンパク質(またはそのホモローグ)とパーキンとの相互作用の段階に少なくとも部分的に干渉し得る化合物を提供することである。
【0018】
本文中で使用されたPAP1タンパク質という用語は、タンパク質自体及び該タンパク質のすべての相同形を意味する。相同形という用語は、考察中のタンパク質に等価であり、種々の細胞、特にヒト細胞またはヒト以外の生物の細胞に由来し、同じタイプの活性を有しているすべてのタンパク質を意味する。このようなホモローグはまた、配列2を有しているPAP1タンパク質の天然変異体、特に多形性に起因する変異体またはスプライシングに起因する変異体を含意する。このようなホモローグはまた、コーディング核酸(特に配列1の核酸)との間のハイブリダイゼーション実験によって得られる。本文中で使用された範囲では、この種の配列が、特許請求の範囲に記載のPAP1タンパク質の生理的挙動と同様の生理的挙動に導くための有意な一致パーセンテージを有していれば十分である。有意な一致パーセンテージという用語は、少なくとも60%、好ましくは80%、より好ましくは90%、いっそう好ましくは95%のパーセンテージを意味する。この観点から、ヒト起原の組織から同定された配列13、15、43及び45は配列2の変異体及び/またはホモローグである。従って、PAP1という名称はこれらのポリペプチドも包含する。
【0019】
本文中で使用された範囲では、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の“一致パーセンテージ”は、最適に位置合せした2つの配列を比較ウインドウで比較することによって決定される。
【0020】
従って、比較ウインドウの内部に存在するヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の部分は、(付加または欠失を含まない)基準配列に比較して2つの配列の最適な位置合せが得られるような付加または欠失(例えば“ギャップ”)を含み得る。
【0021】
パーセンテージを計算するためには、比較した2つの配列(核酸配列またはペプチド配列)について同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が観察される位置の数を測定し、双方の配列の塩基またはアミノ酸残基の一致が存在する位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で除算し、次いで、得られた商に100を乗算することによって、配列一致パーセンテージを得る。
【0022】
比較用配列の最適位置合せは、WISCONSIN GENETICS SOFTWARE PACKAGE,GENETICS COMPUTER GROUP(GCG)社,575 Science Doctor,Madison,WISCONSINのパッケージに含まれた公知のアルゴリズムを用いたコンピュータ処理によって行うことができる。
【0023】
例えば、BLASTソフトウェア(1996年3月のBLAST 1.4.9バージョン、1998年2月のBLAST 2.0.4バージョン及び1998年9月のBLAST 2.0.6バージョン)を用い、端数切り捨てパラメーターを排他的に使用することによって(Altschulら,J.Mol.Biol.(1990)215;403−410;Altschulら,Nucleic Acids Res.(1997)25:3389−3402)配列一致パーセンテージを計算し得る。BlastはAltschulら(前出)のアルゴリズムを用いて基準“リクエスト”配列に類似/相同の配列を探索する。使用するリクエスト配列及びデータベースはペプチド配列または核酸配列でもよく、それらの任意の組合せでもよい。
【0024】
本発明化合物による干渉は種々の形態で現れる。例えば、化合物はPAP1タンパク質またはその相同形の1つとパーキンとの相互作用を少なくとも部分的に抑制、阻害または刺激する。好ましくは化合物が、例えば2つのポリペプチド間の相互作用を検出するツーハイブリッド型システムまたは非細胞性システム中で上記のような相互作用をin vitroで変調し得る。好ましい本発明化合物は、この相互作用を少なくとも部分的に変調し得る化合物であり、より好ましい本発明化合物は、化合物の非存在下のコントロールに比較してこの相互作用を少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%増進させるかまたは阻害し得る化合物である。
【0025】
本発明の特定実施態様では、化合物が配列4で表されたパーキンの領域と配列2、13、15、43または45で表されたPAP1タンパク質との間の相互作用の段階に干渉し得る。
【0026】
本発明の特定実施態様では、化合物がPAP1タンパク質またはその相同形の1つとパーキンとの相互作用ドメインの処に結合し得る。
【0027】
本発明化合物は多様な種類及び起原を有し得る。特に、ペプチド型、核酸型(即ち、塩基の連鎖を含む核酸、特にDNA分子またはRNA分子)、脂質型、糖型の化合物、抗体などでよく、より普遍的には有機または無機のすべての分子を包含する。
【0028】
第一種類の本発明化合物はペプチド型である。ペプチドという用語は、アミノ酸の連鎖を含むすべての分子、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体(または抗体のフラグメントまたは誘導体)を含意し、これらのペプチドは場合によっては修飾されていてもよくまたは別の化合物もしくは化学基に結合してもよい。この観点から、“ペプチド”という用語はより特定的には、50個以下のアミノ酸、より好ましくは40個以下のアミノ酸の連鎖から成る分子を意味する。ポリペプチド(またはタンパク質)は好ましくは50−500個またはそれ以上のアミノ酸を含む。
【0029】
第一の好ましい実施態様によれば、本発明化合物は、ペプチド配列2またはその誘導体のいずれか1つの全部または一部、特にペプチド配列13、15、43または45またはそれらの誘導体の全部または一部を含むペプチド化合物、より特定的には配列2、13、15、43または45を含むPAP1タンパク質である。
【0030】
本文中で使用された誘導体という用語は、1つまたは複数の遺伝性修飾及び/または化学的修飾によって生じた遺伝コードの変性が原因で考察中の配列から異なるすべての配列、並びに、核酸配列1またはそのフラグメント例えば核酸配列12、14、42または44またはそれらのフラグメントとハイブリダイズする配列によってコードされておりPAP1タンパク質またはそのホモローグの1つとパーキンとの相互作用の段階に干渉する能力を有しているすべてのペプチドを意味する。遺伝性修飾及び/または化学的修飾という用語は、1つまたは複数の残基の突然変異、置換、欠失、付加及び/または修飾のいずれかを意味する。誘導体という用語はまた、別の細胞ソース、特にヒト細胞またはヒト以外の生物の細胞に由来し考察中の配列と同種の活性を有している考察中の配列に相同の配列を意味する。このような相同配列はハイブリダイゼーション実験によって得られる。ハイブリダイゼーションは、核酸ライブラリーを出発物質とし、天然型配列またはそのフラグメントをプローブとして使用し種々のハイブリダイゼーション条件下で行う(Maniatisら,1989)。更に、“フラグメント”または“部分”という用語は、考察中の分子の部分であって連続する5個以上の残基、好ましくは連続する9個以上の残基、より好ましくは連続する15個以上の残基を含むすべての部分を意味する。典型的なフラグメントは少なくとも25個の連続する残基を含み得る。
【0031】
このような誘導体またはフラグメントは、種々の目的で、特に治療効果の増強または副作用の抑制などの目的、あるいは、これらの誘導体またはフラグメントに新規な薬理学的及び/または生物学的特性を付与するなどの目的で作製され得る。
【0032】
PAP1タンパク質及び相同形から誘導されたペプチドとしては特に、パーキンと相互作用する能力を有しているが非機能化されたエフェクター領域を含むペプチドが挙げられる。このようなペプチドは、PAP1タンパク質及びその相同形のエフェクター領域に欠失、突然変異または破壊を生じさせることによって得られる。このような修飾は例えば、in vitro突然変異誘発、付加要素もしくは合成配列の導入、または、初期要素の欠失もしくは置換によって得られる。上記に定義したような誘導体が作製されたとき、これらの誘導体がPAP1タンパク質またはその相同形とパーキンの結合部位との結合を部分的に阻害する活性を有していることを証明できる。このために、当業者に公知の任意の技術を使用し得ることは明らかであろう。
【0033】
本発明はまた、上記のような配列のフラグメントを提供する。このようなフラグメントは種々の方法で作製し得る。特に、当業者に公知のペプチドシンセサイザーを使用し、本出願で与えた配列に基づいて、化学的方法で合成できる。また、所望のペプチドをコードするヌクレオチド配列を細胞宿主中で発現させる遺伝的方法によって合成できる。この場合、ヌクレオチド配列は、本出願で与えたペプチド配列及び遺伝コードに基づいてオリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用して化学的に合成できる。ヌクレオチド配列はまた、本出願で与えた配列を出発材料とし当業者に公知の技術に従って酵素切断、結合、クローニングなどを行うことによって作製してもよく、または、これらの配列から作製したプローブでDNAライブラリーをスクリーニングすることによって作製してもよい。
【0034】
更に、本発明のペプチド、即ち、PAP1タンパク質及び相同形とパーキンとの相互作用を少なくとも部分的に変調し得るペプチドはまた、パーキンとの相互作用を生じるPAP1タンパク質及び相同形の部位に対応する配列を有するペプチドであってもよい。
【0035】
別の本発明ペプチドは、細胞標的に対して上記に定義のペプチドと競合的に相互作用するペプチドである。このようなペプチドは特に、考察中のペプチドの配列に基づいて合成でき、上記に定義のペプチドとの競合能力を測定できる。
【0036】
本発明の特別な目的はPAP1タンパク質を提供することである。より特定的には配列2またはそのフラグメントもしくは誘導体を含むPAP1タンパク質、例えば配列13、15、43、45またはそのフラグメントを含むPAP1タンパク質を提供することである。
【0037】
本発明の別の目的は、上記に定義のようなポリペプチドに対するポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体またはこれらの抗体のフラグメントもしくは誘導体を提供することである。このような抗体は、当業者に公知の方法によって作製できる。特にこれらの抗体は、本発明のペプチド化合物(特に、配列2の全部または一部を含むポリペプチドまたはペプチド)に対して動物を免疫感作し、血液を採取し、抗体を単離することによって調製できる。これらの抗体はまた、当業者に公知の技術に従ってハイブリドーマを調製することによって作製できる。
【0038】
より好ましくは、本発明の抗体または抗体フラグメントは、特許請求の範囲に記載のペプチドとパーキンとの相互作用を少なくとも部分的に変調する能力を有している。
【0039】
更にこれらの抗体はまた、生物標本中のPAP1の発現を検出及び/または定量するために使用でき、その結果として、PAP1タンパク質の活性化状態に関する情報を得るために使用できる。
【0040】
抗体のフラグメントまたは誘導体は例えばフラグメントFab、Fab′2、一本鎖抗体(ScFv)、などである。特に、元になる抗体の抗原特異性を保存しているすべてのフラグメントまたは誘導体が包含される。
【0041】
より好ましくは本発明の抗体は、配列2、13、15、43または45を含むPAP1タンパク質、特にパーキンとの相互作用に関与するPAP1タンパク質の領域と結合し得る。より好ましくはこれらの抗体(またはフラグメントまたは誘導体)は、配列2の残基1から残基344までの配列中に存在するエピトープと結合し得る。
【0042】
本発明はまた、医薬として有用な非ペプチド性化合物または非ペプチド単独性化合物に関する。即ち、本出願に記載した活性タンパク質モチーフから医薬用途に適合する非ペプチド単独性のPAP1活性変調分子を作製することが可能である。特に、ペプチドの活性モチーフを非ペプチド性構造または非ペプチド単独性構造と共に複製すればよい。
【0043】
本発明の目的はまた、本発明のペプチド化合物をコードする核酸のいずれかを提供することである。本発明は特に、配列1、12、14、42もしくは44の全部または一部を含む核酸またはその誘導体の1つを提供する。本文中に使用された誘導配列という用語は、配列1で示された配列または該配列のフラグメントとハイブリダイズして本発明のペプチド化合物をコードする任意の配列を意味しており、また、遺伝コードの縮重に基づいて上記の配列から得られる配列を意味している。本発明の核酸は例えば核酸配列12、14、42または44の全部または一部を含む。
【0044】
本発明は更に、配列1に対してまたは配列1のフラグメントに対して有意な一致パーセンテージを有しておりかつPAP1タンパク質の生理的挙動に類似の生理的挙動を有しているペプチド化合物をコードする配列に関する。有意な一致パーセンテージという用語は、少なくとも60%、好ましくは80%、より好ましくは90%、いっそう好ましくは95%のパーセンテージを意味する。
【0045】
本発明の種々のヌクレオチド配列は人工的に産生された配列でもよくそうでなくてもよい。ヌクレオチド配列は例えば、ゲノム配列、cDNA、RNA、ハイブリッド配列、合成配列または半合成配列である。これらの配列は、DNAライブラリー(cDNAライブラリー、ゲノムDNAライブラリー)のスクリーニングによって得ることもでき、化学合成によって得ることもでき、ライブラリーのスクリーニングによって得られた配列の化学的または酵素的な修飾を含む混成方法によって得ることもでき、核酸またはタンパク質のデータベース中のホモロジーの探索、などによって得ることもできる。上述のようなハイブリダイゼーションは、Sambrookら(1989,9.52−9.55頁)によって記載された条件下で行うのが好ましい。
【0046】
ハイブリダイゼーションは高緊縮性ハイブリダイゼーション条件下で行うのが有利である。本発明で使用された“高緊縮性ハイブリダイゼーション条件”という用語は、以下の条件を表す。
【0047】
1−膜の競合及びプレハイブリダイゼーション
−40μlのサケ精子DNA(10mg/ml)と40μlのヒト胎盤DNA(10mg/ml)とを混合する。
−96℃で5分間変性し、次いで混合物を氷浴に浸漬させる。
−SSC 2×バッファを除去し、膜を収容したハイブリダイゼーション管に4mlのホルムアミドミックスを注入する。
−2つの変性DNAの混合物を加える。
−回転しながら42℃で5−6時間インキュベートする。
【0048】
2−標識プローブの競合
−標識し精製したプローブに、非特異的ハイブリダイゼーション量に従って10から50μlのCot I DNAを添加する。
−95℃で7−10分間変性する。
−65℃で2−5時間インキュベートする。
【0049】
3−ハイブリダイゼーション
−プレハイブリダイゼーションミックスを除去する。
−40μlのサケ精子DNA(10mg/ml)と40μlのヒト胎盤DNA(10mg/ml)とを混合する。96℃で5分間変性し、次いで混合物を氷浴に浸漬させる。
−ハイブリダイゼーション管に4mlのホルムアミドミックス、2つのDNAの混合物及び標識プローブ/変性Cot I DNAを加える。
−回転しながら42℃で15−20時間インキュベートする。
【0050】
4−洗浄
−周囲温度の洗浄用2×SSCで洗浄する。
−周囲温度の2×SSC及び0.1%SDSで5分間ずつ2回洗浄する。
−65℃の0.1×SSC及び0.1%SDSで15分間ずつ2回洗浄する。
膜をサランラップに包んで露光する。
【0051】
上記のハイブリダイゼーション条件は、20ヌクレオチドから数100ヌクレオチドまでの範囲の種々の長さの核酸分子を高緊縮性条件下でハイブリダイズするために好適な条件である。
【0052】
勿論、ハイブリダイゼーションさせるべき核酸及び選択された標識の種類に適応するように上記のハイブリダイゼーション条件を当業者に公知の技術に従って変更することができる。
【0053】
例えば、HAMES & HIGGINS(1985)の著作(Nucleic acid Hybridization iapractical Approach,Hames and Higgins Ed.,IRL Press,Oxford)またはF.AUSUBELら(1999)の著作(Currents Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.)に含まれている教示に従って適正なハイブリダイゼーシヨン条件に調整し得る。
【0054】
特定的な本発明の核酸は配列2またはそのフラグメントもしくは誘導体を含むポリペプチドをコードしており、特にヒトPAP1タンパク質をコードしている。有利な本発明の核酸は、核酸配列1、12、14、42または44を含む核酸である。
【0055】
このような核酸を本発明のペプチド化合物の製造に使用できる。従って本出願は、本発明の核酸を含む細胞を該核酸の発現条件下で培養する段階と、産生されたペプチド化合物を回収する段階とから成るペプチド化合物の製造方法に関する。この場合、ペプチド化合物をコードする部分は一般に、細胞宿主中で該ペプチド化合物を発現させ得るシグナルのコントロール下に配置されている。使用される細胞宿主に応じてこれらのシグナル(プロモーター、ターミネーター、分泌“リーダー”配列、など)の選択を変更できる。更に、本発明の核酸が自律複製ベクターまたは組込みベクターの一部を構成してもよい。特に自律複製ベクターは、自律複製配列を選択宿主中で使用することによって作製し得る。組込みベクターは、例えば相同的組換えによってベクターを組込むことができる宿主のゲノムの幾つかの領域に相同な配列を使用することによって作製できる。組込みベクターの種類には、プラスミドベクター、エピソームベクター、染色体ベクター、ウイルスベクター、などがある。
【0056】
組換え法によって本発明のペプチド化合物を産生させるために有用な細胞宿主は真核細胞または原核細胞のいずれでもよい。適当な真核宿主としては、動物細胞、酵母または真菌類がある。酵母としては特に、Saccharomyces、Kluyveromyces、Pichia、SchwanniomycesまたはHansenula属の酵母が挙げられる。動物細胞としては、COS細胞、CHO細胞、C127細胞、PC12細胞、などが挙げられる。真菌類としては特に、Aspergillus種またはTrichoderma種が挙げられる。原核細胞としては、E.coli、BacillusまたはStreptomycesのような細菌の使用が好ましい。
【0057】
本発明の目的は更に、本発明の核酸またはベクターを細胞中に含むヒト以外の哺乳動物を提供することである。
【0058】
このような哺乳動物(齧歯類、イヌ、ウサギ、など)はPAP1の特性研究及び治療用化合物の同定に有用である。このようなトランスジェニック動物のゲノムの修飾は、1つまたは複数の遺伝子を“ノックイン”または“ノックアウト”によって改変するかまたは修飾することによって得られる。この修飾は、従来の変性剤または突然変異誘発物質によって行われてもよく、または、調節的突然変異誘発によって行われてもよい。ゲノムの修飾はまた、野生型または突然変異型の(1つまたは複数の)遺伝子の挿入または置換によって得られる。ゲノムの修飾は、生殖細胞株及び前核に対して行うのが有利である。トランスジェニック生物を作製するためには、修飾された遺伝子を含む発現カセットを2つの受精前核にマイクロインジェクションによって注入する。従って本発明の動物は、核酸を含む発現カセットの注入によって得られる。好ましくはこの核酸はDNAであり、該DNAはゲノムDNA(gDNA)でもよくまたは相補的DNA(cDNA)でもよい。
【0059】
本発明のトランスジェニック動物は当業者に公知の慣用の技術に従って作製し得る。当業者は特に、米国特許US4,873,191、US5,464,764及びUS5,789,215に記載されているようなトランスジェニック動物の作製方法、特にトランスジェニックマウスの作製方法を参照し得る。これらの文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0060】
簡単に説明すると、本発明の核酸を含むポリヌクレオチド構築物をES型の細胞株系に挿入する。ポリヌクレオチド構築物の挿入は、Thomasら(1987,Cell,Vol.51:503−512)によって記載されたような電気穿孔によって行うのが好ましい。
【0061】
電気穿孔段階で処理した細胞を次に、ポリヌクレオチド構築物の存在に基づいてスクリーニングし(例えばラベルを用いて選択するか、または、PCR、またはサザン型のDNA電気泳動ゲル分析を用いる)、場合によっては、相同的組換えイベントを生じさせた後、外因性ポリヌクレオチド構築物をそのゲノムに組込んだ陽性細胞を選択する。このような技術は例えばMANSOURら(Nature(1988)336:348−352)によって記載されている。
【0062】
次に、BRADLEY(1987,Production and Analysis of Chimaeric mice.:E.J.ROBERTSON Ed.teratocarcinomas and embryonic stem cells: A practical approach.IRL press,Oxford,page113)によって記載されたような手順で、選択した陽性細胞を単離し、クローニングし、3.5日齡のマウスの胚盤胞に注入する。次に胚盤胞を雌の宿主動物に導入し、胚の発達を出産時期まで追跡する。
【0063】
代替方法では、WOODら(1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.90:4582−4585)またはNAGYら(1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.90:8424−8428)に記載されたような手順で、選択した陽性ES型細胞を、2.5日齡の8−16細胞期の胚(桑実胚)と接触させて、ES細胞のインターナリゼーションを生じさせ、生殖系になる細胞を含めた胚盤胞の広い範囲にES細胞のコロニーを形成させる。
【0064】
次いで、後代がポリヌクレオチド構築物(トランスジーン)を組込んでいるか否かを判定するために後代を試験する。
【0065】
本発明の核酸はまた、医薬として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは遺伝子のアンチセンス鎖の作製に役立つ。アンチセンス配列は、所与の遺伝子のコーディング鎖に相補的な短鎖オリゴヌクレオチドであり、転写されたmRNAと特異的にハイブリダイズできるので、該mRNAがタンパク質に翻訳されることを阻害し得る。従って本発明の目的は、パーキンに対するPAP1タンパク質の相互作用を少なくとも部分的に阻害し得るアンチセンス配列を提供することである。このような配列は、上記に定義した核酸配列の全部または一部から構成され得る。このような配列は一般的には、パーキンと相互作用するペプチドをコードする配列に相補的な配列であるかまたは配列フラグメントである。このようなオリゴヌクレオチドは、分割などによって作製されてもよく、または、化学合成によって作製されてもよい。
【0066】
特許請求の範囲に記載された配列は遺伝子治療の分野で、アンチセンス配列またはPAP1タンパク質とパーキンとの相互作用を変調し得るペプチドをin vivoで導入及び発現させるために使用し得る。このためには、in vivo投与し得るウイルス性または非ウイルス性のベクター(Kahnら,1991)に配列を組込む。本発明に好適なウイルス性ベクターとしては特に、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)またはヘルペスウイルスのようなベクターが挙げられる。本出願の目的はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸、特に配列2またはその誘導体の全部または一部を含むポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸、例えば、配列12、14、42または44またはそれらの誘導体の全部または一部を含むポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸を含む組換え欠陥ウイルスを提供することである。
【0067】
本発明はまた、上記に定義のヌクレオチド配列またはそれらの相補鎖とハイブリダイズし得る合成または非合成のヌクレオチドプローブを提供する。このようなプローブは、PAP1の発現もしくは超発現を検出するため、または、遺伝的異常(誤ったスプライシング、多型、点突然変異、など)を証明するために、診断ツールとしてin vitroで使用され得る。これらのプローブはまた、別の細胞ソース、好ましくはヒト由来の細胞から上記に定義のようなペプチドをコードする相同核酸配列を発見し単離するために使用され得る。本発明のプローブは一般的に少なくとも10個の塩基を含んでおり、例えば上記配列の1つまたはそれらの相補鎖全体を含んでいてもよい。これらのプローブは使用に先立って標識するのが好ましい。このために当業者に公知の種々の技術を使用し得る(放射性標識、蛍光標識、酵素標識、化学的標識、など)。
【0068】
本発明はまた、PAP1をコードする核酸の全部または一部を増幅し得るプライマーまたはプライマー対、例えば、配列16−41から選択された配列をもつプライマーに関する。
【0069】
本発明の目的は更に、少なくとも1つの上記に定義の化合物、特にペプチド化合物を有効成分として含むすべての医薬組成物を提供することである。
【0070】
本発明の目的は特に、少なくとも1つの上記に定義の抗体及び/または抗体フラグメントを有効成分として含むすべての医薬組成物、並びに、少なくとも1つの上記に定義の核酸またはベクターを有効成分として含むすべての医薬組成物を提供することである。
【0071】
本発明の目的はまた、PAP1タンパク質とパーキンとの相互作用を増強または抑制し得る化学分子を有効成分として含むすべての医薬組成物を提供することである。
【0072】
本発明の目的は更に、上記に定義のようなペプチド、抗体、化学分子及びヌクレオチド配列が互いにまたは別の有効成分と会合している医薬組成物を提供することである。
【0073】
本発明の医薬組成物は、パーキンタンパク質の活性を変調し、その結果としてドーパミン作動性ニューロンの生存を維持するために使用され得る。より特定的にはこれらの医薬組成物の所期の目的は、PAP1タンパク質とパーキンとの相互作用を変調することである。例えばパーキンソン病のような中枢神経系の疾患の治療を所期の目的とする医薬組成物が好ましい。
【0074】
本発明の目的はまた、パーキンの活性を変調するためまたは中枢神経系疾患をタイピングするために上記のような分子を使用することである。本発明では特に、パーキンの活性を少なくとも部分的に変調するためにこれらの分子を使用する。
【0075】
本発明はまた、配列2または配列4またはそれらのフラグメント(または誘導体)に結合し得る分子の選択から成る、パーキンの機能に対して活性の分子をスクリーニングまたはキャラクタリゼーションする方法に関する。該方法は好ましくは、1種または複数の被験分子を配列2または配列4またはそれらのフラグメント(または誘導体)を含むポリペプチドとin vitroで接触させる段階と、配列2(特に残基1−残基344の範囲に含まれる領域)または配列4に結合し得る分子を選択する段階とから成る。被験分子は様々な種類の分子(ペプチド、核酸、脂質、糖など、またはこれらの分子の混合物、例えば、組合せライブラリー、など)でよい。上述のように、上記の方法でパーキンの機能に対して活性であると同定された分子は、パーキンタンパク質の活性を変調するために使用でき、神経変性病理を治療するための強力な治療薬となる。
【0076】
本発明の別の利点は、非限定代表例を表す以下の実施例及び図面から明らかであろう。
【0077】
(図面の簡単な説明)
図1:ベクターpLex9−Parkine(135−290)の概略図
図2:一次5′−RACE実験の結果。8個のクローンが得られた。初期電子配列を図の下端に示す
図3:二次5′−RACE実験の結果。一次実験で得られた8個のクローンのうちの2個だけ(クローンA12及びD5)が有効であった。初期電子配列を図の下端に示す。DNA及びタンパク質の完全配列は配列12−15に示す
図4:二次5′−RACE実験のクローンC5及びD4の編成の詳細図。判明したコンセンサス配列を図の上部に示す
図5:ヒト脳から単離した転写産物の構造
図6:ヒト脳のLY111(全長)の核酸及びタンパク質の配列。二重下線:ジンクフィンガードメインの保存システイン;太字:C1ドメイン;イタリック体:C2ドメイン
図7:ヒト脳のLY111(短縮形)の核酸及びタンパク質の配列。二重下線:ジンクフィンガードメインの保存システイン;太字:C1ドメイン;イタリック体:C2ドメイン
図8:COS−7細胞中で発現後の短縮形LY111タンパク質(8b)または全長LY111タンパク質(8a)の局在
図9:ヒト肺のLY111(非短縮形)の核酸及びタンパク質の配列。
【0078】
図10:ヒト脳のLY111(短縮形)の核酸及びタンパク質の配列。
【0079】
使用材料及び使用技術
(1)酵母株:
S.cerevisiae属のL40株(Mata,his3D200,trp1−901,leu2−3,112,ade2,LYS2::(lexAop)−HIS3,URA3::(lexAop)−LacZ,GAL4,GAL80)を使用して、一方の結合タンパク質がLexAタンパク質に融合しているときのタンパク質−タンパク質相互作用を検証した。LexAタンパク質は、リポーター遺伝子LacZ及びHis3の発現をコントロールするLexA応答要素を認識し得る。
【0080】
上記酵母株を以下の培養培地で培養した。
完全YPD培地:−酵母エキス(10g/リットル)(Difco)
−バクトペプトン(20g/リットル)(Difco)
−ブドウ糖(20g/リットル)(Merck)
この培地に20g/リットルの寒天(Difco)を加えて固形培地にした。最小YNB培地:−酵母窒素基(アミノ酸非含有)(6.7g/リットル)
(Difco) −ブドウ糖(20g/リットル)(Merck)
この培地に20g/リットルの寒天(Difco)を加えて固形培地にする。また、CSM培地[CSM−Leu,−Trp,−His(620mg/リットル)、CSM−Trp(740mg/リットル)またはCSM−Leu,−Trp(640mg/リットル)(Bio101)]及び/または2.5mMの3−アミノ−1,2,4−トリアゾールを加えてアミノ酸及び/または3−アミノ−1,2,4−トリアゾールを補充する。
【0081】
(2)細菌株:
遺伝子型supE,hsdΔ5,thi,Δ(lac−proAB),F′[tra D36 pro AlacIlacZΔM15]をもつ大腸菌TG1株を使用してプラスミドを構築し、使用した組換えプラスミドの増幅及び単離手段とした。
【0082】
この大腸菌株を以下の培地で培養した。
LB培地:−NaCl(5g/リットル)(Prolabo)
−バクトトリプトン(10g/リットル)(Difco)
−酵母エキス(5g/リットル)(Difco)
この培地に15g/リットルの寒天(Difco)を加えて固形培地にする。
【0083】
アンピシリンを100μg/mlの濃度で使用した。この抗生物質は、この抗生物質に耐性の遺伝子をマーカーとして含むプラスミドを受容した細菌の選択に役立つ。
【0084】
遺伝子型supE44,ara14,galK2,lacY1,Δ(gpt−proA)62,rpsL20(Str),xyl−5,mtl−1,recA13,Δ(mcrC−mrr),HsdS(r)をもつ大腸菌HB101株を、ヒトリンパ球cDNAライブラリーから得られたプラスミドの増幅及び単離手段として使用した。
【0085】
この大腸菌株を以下の培地で培養した。
M9培地:−Na2HPO4(7g/リットル)(Prolabo)
−KH2PO4(3g/リットル)(Prolabo)
−NH4Cl(1g/リットル)(Prolabo)
−NaCl(0.5g/リットル)(Prolabo)
−ブドウ糖(20g/リットル)(Sigma)
−MgSO4(1mM)(Prolabo)
−サイアミン(0.001%)(Sigma)
この培地に15g/リットルの寒天(Difco)を加えて固形培地にする。HB101株が増殖できるようにするためにはロイシン(50mg/リットル)(Sigma)及びプロリン(50mg/リットル)(Sigma)をM9培地に加える必要がある。
【0086】
リンパ球cDNAのツーハイブリッドライブラリーからプラスミドを選択するときには、プラスミドがLeu2選択マーカーを有しているので培地にロイシンを添加しなかった。
【0087】
(3)プラスミド:
ベクターpLex9(pBTM116)(Bartelら,1993):細菌リプレッサーLexAをコードする配列の下流でターミネーターの上流に多重クローニング部位を含むpGBT10に相同の5kbのベクター。このベクターは融合タンパク質を形成するために使用した。
【0088】
pLex−HaRasVal12:哺乳動物のRafタンパク質との相互作用が知られている(Vojtekら)Val12位に突然変異をもつHaRasタンパク質をコードする配列を含む、国際特許出願WO98/21327に記載されているようなプラスミドpLex9。このプラスミドは、L40株におけるPAP1タンパク質の相互作用特異性を試験するために使用した。
【0089】
pLex9−cAPP:FE65のPTB2ドメインとの相互作用が知られているAPPタンパク質の細胞質ドメインをコードする配列を含むプラスミドpLex9。このプラスミドは、L40株におけるPAP1タンパク質の相互作用特異性を試験するために使用した。
【0090】
(4)合成オリゴヌクレオチド:
TTAAGAATTC GGAAGTCCAG CAGGTAG(配列5)
ATTAGGATCC CTACACACAA GGCAGGGAG(配列6)EcoRI部位とBamHI部位とに挟まれたパーキンの中央領域に対応するPCRフラグメントを得るために使用したオリゴヌクレオチド。
GCGTTTGGAA TCACTACAG(配列7)
GGTCTCGGTG TGGCATC(配列8)
CCGCTTGCTT GGAGGAAC(配列9)
CGTATTTCTC CGCCTTGG(配列10)
AATAGCTCGA GTCAGTGCAG GACAAGAG(配列11)
PAP1遺伝子に対応するインサートを配列決定するために使用したオリゴヌクレオチド。
オリゴヌクレオチドはApplied Systerm ABI 394−08装置で合成する。合成したオリゴヌクレオチドをアンモニア水によって合成マトリックスから剥離させ、10倍容のn−ブタノールで2回沈降させ、次いで水に入れる。光学密度の測定によって定量する(1OD260は30μg/mlに対応する)。
【0091】
(5)プラスミドDNAの調製
DNA精製キットを製造業者であるQuiagenによって指示されたプロトコルに従って使用してプラスミドDNAの少量生産及び大量生産を行った:
−Quiaprep Spin Miniprepキット,ref:27106−Quiaprep Plasmid Maxiprepキット,ref:12163。
【0092】
(6)PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によるDNAの酵素増幅:
DNAマトリックス、dNTP(0.2mM)、PCRバッファ(10mMのトリス−HCl,pH8.5、1mMのMgCl2、5mMのKCl、0.01%のゼラチン)、各10−20ピコモルのオリゴヌクレオチド及び2.5IUのAmpli Taq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer)の存在下、最終容量100μlでPCR反応を行う。標本が蒸発しないように混合物を2滴のパラフィン油で覆う。Appligeneの“Crocodile II”装置を使用した。
【0093】
マトリックス変性温度としては94℃、ハイブリダイゼーション温度としては52℃、酵素による伸長温度としては72℃を使用した。
【0094】
(7)結合:
すべての結合反応は、100−200ngのベクター、0.1−0.5μgのインサート、40IUのT4 DNAリガーゼ酵素(Biolabs)及び結合バッファ(50mMのトリス−HCl,pH7.8;10mMのMgCl;10mMのDTT;1mMのATP)の存在下、最終容量20μlで37℃で1時間行った。陰性対照はインサートの非存在下でベクターを結合させることによって作製した。
【0095】
(8)細菌の形質転換:
プラスミドによる細菌の形質転換は、以下のプロトコルで行う。10μlの結合容量を使用してTG1細菌をChungの方法(Chungら,1989)に従って形質転換させる。形質転換後の細菌をアンピシリンを加えたLB培地で平板培養し、37℃で16時間インキュベートする。
【0096】
(9)DNAの分離及び抽出:
Maniatis(Maniatisら,1989)のアガロースゲル電気泳動によってDNAをサイズに基づいて分離する。TBEバッファ(90mMのトリス塩基;90mMのホウ酸塩;2mMのEDTA)中の1%アガロースゲル(Gibco BRL)を使用する。
【0097】
(10)プラスミドDNAの蛍光配列決定:
配列決定技術としては、Sangerの方法(Sangerら,1977)を基本とし、この方法をApplied Biosystemsによって開発された蛍光による配列決定に応用できるように修正した方法を使用した。使用したプロトコルは、システム(Perkin Elmer,1997)の考案者によって記載されたプロトコルである。
【0098】
(11)酵母の形質転換:
Gietzによって開発された従来の酵母形質転換技術(Gietzら,1992)を以下のように修正した方法で酵母にプラスミドを導入する:
特にリンパ球cDNAライブラリーによって酵母を形質転換させる場合には、使用される酵母がLexAタンパク質に融合したパーキンの中央部分をコードするプラスミドpLex9−Parkine(135−290)を含む。この酵母をアミノ酸CSM−Trpを補充した200mlのYNB最小培地中、30℃で撹拌下に10細胞/mlの密度になるまで培養する。上記プロトコルに従って酵母を形質転換させるために、各々に5μgのライブラリーを加えておいた50μl容の10本の管に細胞浮遊液を注ぎ分けた。熱ショックを20分間与え、次いで遠心によって細胞を収集し、100mlのYPD培地に再浮遊させて30℃で1時間維持し、CSM−Leu,−Trpを補充した100mlのYNB培地に再浮遊させて30℃で3時間30分間維持した。CSM−Trp,−Leuを補充した固形YNB培地に形質転換細胞を種々の希釈度で平板培養することによって形質転換効率を測定した。培養物を30℃で3日間維持した後、得られたコロニーを計数し、リンパ球ライブラリーのDNA1μgあたりの形質転換率を算定した。
【0099】
(12)酵母から抽出したプラスミドの単離:
30℃で16時間インキュベートした5mlの酵母培養物を遠心し、200μlの溶菌バッファ(1Mのソルビトール、0.1MのKH2PO4/K2HPO4,pH7.4、12.5mg/mlのザイモリアーゼ)に入れ、37℃で1時間インキュベートする。次に、DNA精製キット、Quiaprep Spin Miniprepキット,ref27106を製造業者であるQuiagenが指示したプロトコルに従って使用して溶菌液を処理する。
【0100】
(13)β−ガラクトシダーゼの活性試験:
ばらばらにした酵母クローンを収容したシャーレにニトロセルロースシートを予め配置する。次いでこのシートを液体窒素に30秒間浸漬させて酵母を破裂させ、β−ガラクトシダーゼ活性を遊離させる。解凍後、ニトロセルロースシートのコロニー付着面を上にして別のシャーレに配置する。このシャーレには、N,N−ジメチルホルムアミド中に40mg/mlの濃度で15μlのX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイル−β−D−ガラクトシド)を含む1.5mlのPBS溶液(60mMのNaHPO、40mMのNaHPO、10mMのKCl、1mMのMgSO,pH7)を予め含浸させたWhatmanペーパーを敷いておく。次にシャーレを37℃のオーブンに入れる。12時間後に膜上のコロニーが青色に変色すると試験結果は陽性であると判定する。
【0101】
実施例1:パーキンの中央部分と細菌リプレッサーLexAとの融合タンパク質を発現させ得るベクターの構築
ツーハイブリッドシステムを使用するライブラリースクリーニングでは、パーキンの中央領域が細菌リプレッサーLexAのようなDNA結合タンパク質に融合していることが必要である。この融合タンパク質を発現させるために、配列3または4で表される配列中に存在するパーキンの中央領域をコードする配列をLexAタンパク質に対応する配列と同じ読取り枠に導入したベクターpLex9(材料及び方法の項参照)を使用する。
【0102】
アミノ酸135を起点とするパーキンの中央領域の156個のアミノ酸に対応する468bpのDNAフラグメントがオリゴヌクレオチド(配列5及び6)からPCRによって得られた。これらのオリゴヌクレオチドはまた、5′末端にEcoRI部位を導入し、3′末端に終結コドン及びBamHI部位を導入した。LexAタンパク質をコードする配列の下流でプラスミドpLex9の多重クローニング部位のEcoRI部位とBamHI部位との間にPCRフラグメントを導入し、ベクターpLex9−Parkine(135−290)(図1)を作製した。
【0103】
DNAの配列決定によって構築物を検証した。この検証から、このフラグメントがPCR反応中に生じる突然変異を有していないこと、及び、LexAに対応するフラグメントの読取り枠と同じ読取り枠に融合していることが判明した。
【0104】
実施例2:リンパ球融合ライブラリーのスクリーニング
この実施例ではツーハイブリッド法(Fields & Song,1989)を使用した。融合ライブラリーのスクリーニングによって、GAL4のトランスアクチベータードメインに融合タンパク質を産生し実施例1に記載の有益なタンパク質(パーキンの中央領域)と相互作用できるクローンを同定し得る。この相互作用によってトランスアクチベーターが復元され、L40株中でリポーター遺伝子His3及びLacZの発現を誘発し得る。
【0105】
このスクリーニングを行うために、Richard Benarous(Peytaviら,1999)によって提供されたヒト末梢リンパ球に由来のcDNAから作製された融合ライブラリーを選択した。リンパ球ライブラリーによって酵母を形質転換させ、後述する手順で陽性クローンを選択した。
【0106】
スクリーニングの際には、少なくとも1つの酵母中に融合ライブラリーの独立プラスミドの各々とプラスミドpLex9−Parkine(135−290)とが十分な確率で共存していなければならない。この確率が十分に維持されるためには、酵母が高い形質転換効率を有していることが重要である。このために、1μgのDNAあたり2.6×10の細胞を形質転換させるという形質転換効率を与える酵母形質転換プロトコルを選択した。更に、異なる2つのプラスミドによって酵母の同時形質転換を行うと形質転換効率が低下するので、好ましい方法としてプラスミドpLex9−Parkine(135−290)によって予め形質転換させた酵母を使用した。表現型His−,Lys−,Leu−,Ade−をもつこの菌株L40 pLex9−Parkine(135−290)を、融合ライブラリーの50μgのプラスミドDNAによって形質転換させた。この量のDNAから概算で1.3×10の形質転換細胞を得ることができたが、この数は、ライブラリーを構成する独立プラスミドの数をやや上回る数に対応する。この結果から、ライブラリーのプラスミドのほぼ全部が酵母を形質転換させるために役立ったと考えることができる。機能性トランスアクチベーターを復元し得る形質転換細胞の選択は、2.5mMの3−アミノ−1,2,4−トリアゾール及び620mg/リットルのCSM(Bio101)を補給したヒスチジン、ロイシン及びトリプトファン非含有のYNB培地で行った。
【0107】
この選択によって、表現型His+を有している多数のクローンが得られた。得られたクローンの有効性を別のリポーター遺伝子LacZの発現によって検査するために、これらの形質転換体にβ−ガラクトシダーゼ活性試験を行った。115個のクローンがタンパク質−タンパク質相互作用に対応できる二重表現型His+,β−Gal+を有していた。
【0108】
実施例3:選択クローン中のライブラリーのプラスミドの単離
パーキンの中央領域と相互作用できるタンパク質を同定するために、ツーハイブリッドスクリーニングによって選択した酵母に含まれていた融合ライブラリーのプラスミドを抽出した。このようなプラスミドを大量に得るためには、この単離に先立って、陽性酵母株のDNA抽出物によって大腸菌を形質転換しておくことが必要である。この抽出物に含まれているライブラリーのプラスミドは酵母/大腸菌シャトルプラスミドなので、細菌体内で容易に複製し得る。ロイシン欠失培地におけるロイシン要求性HB101菌株の相補性によってライブラリーのプラスミドを選択した。
【0109】
DNA抽出物による酵母の形質転換後に得られた細菌コロニーのプラスミドDNAを、制限酵素消化及びDNAフラグメントのアガロースゲル分離によって分析した。分析した115個のクローン中で、ライブラリーの1つのプラスミドを含むクローンが残りのクローンとは異なるプロフィルを有していた。このプラスミドをpGAD−Ly111bと命名し、より詳細に検討した。
【0110】
実施例4:同定されたプラスミドに含まれていたインサートの配列決定
同定されたプラスミドに含まれていたインサートを配列決定するために、先ず第一段階で、リンパ球cDNAライブラリー挿入EcoRI部位の近傍のGAL4TA配列に相補的な配列7のオリゴヌクレオチドを使用した。次に第二段階で、配列決定の進行中に得られたインサートの配列に対応する配列8から配列11のオリゴヌクレオチドを使用した。得られた配列を配列1に示す。このようにして同定されたタンパク質をPAP1(パーキン結合タンパク質1)と命名した。
【0111】
このインサートの配列とデータバンクGENBank及びEMBL(European Molecular Biology Lab)に含まれていた配列とを比較すると、シナプトタグミンファミリーの種々の構成員にタンパク質レベルで25%の相同性を示した。シナプトタグミンは脳及びその他の組織で発現される少なくとも11個の異なる遺伝子によってコードされている膜タンパク質ファミリーの構成員である。これらは非反復のトランスメンブランドメインとCと呼ばれる2つのカルシウム調節ドメインとを含んでいる。シナプトタグミンとPAP1タンパク質との相同性はこのドメインに見出される。その他の有意な相同性は全く観察されなかった。
【0112】
実施例5:パーキンの中央領域とPAP1タンパク質との相互作用特異性の分析
PAP1タンパク質に対応するフラグメントとパーキンの中央領域との相互作用特異性を決定するために、無関係の別のタンパク質と共に特異的ツーハイブリッド相互作用試験を実施した。この試験を行うために、プラスミドpLex9−Parkin(135−290)に代えて、それぞれがAPPの細胞質ドメインまたはLexAのDNA結合ドメインに融合したHaRasVal12タンパク質をコードしている対照プラスミドplex9−cAPPまたはpLex9−HaRasVal12、及び、ツーハイブリッドライブラリーのスクリーニングの際に単離されたプラスミドによってL40株を形質転換させた。タンパク質−タンパク質相互作用を判定するために、種々のプラスミドによって形質転換させた細胞に対してβ−Gal活性試験を行った。この試験の結果によれば、ツーハイブリッドライブラリーのスクリーニングの際に単離されたプラスミド及びプラスミドpLex9−Parkine(135−290)によって形質転換させた酵母だけがβ−Gal+活性を有しており、従ってParkineの中央領域とPAP1タンパク質との相互作用を示した。このPAP1フラグメントはcAPPタンパク質またはHaRasVal12タンパク質と相互作用しないと考えられるので、この相互作用は特異的であることが判明する。
【0113】
従ってこれらの結果は、パーキンと特異的に相互作用し得るPAP1と命名された新規なタンパク質の存在を示す。シナプトタグミンに近縁のこのタンパク質は既知タンパク質に対しては有意な相同性を全く有していないので、治療用途または診断用途で、抗体、プローブまたはペプチドを産生させるため、あるいは、活性分子をスクリーニグするために使用することができる。
【0114】
実施例6:ヒト肺DNAライブラリーからのPAP1遺伝子のクローニング
ヒトPAP1遺伝子の完全配列を同定し変異形態の存在を特性決定する目的で、配列1を2つの電子伸長方法で処理した。この処理によって、配列1に比べて330bpの伸長を有しているそれぞれ1644bp及び1646bpの2つの電子配列が得られた。しかしながらこれらの配列を分析すると、翻訳後のコンセンサス領域が明らかな違いを有していた。即ち、一方の配列では420aaのORF、他方の配列では230aaのORFが得られた。得られたタンパク質配列を既知の配列に比較すると、ヒトシナプトギャミンI(p65)(p21579)とオーバーラップする293個のアミノ酸で24%の相同性が判明した。シナプトギャミンIの機能は、シナプスのゾーンにシナプス小胞を輸送しているときの膜相互作用の調節機能である。シナプトギャミンIはある程度特異的に酸性リン脂質と結合する。更に、シナプトギャミンと活性化プロテインキナーゼC受容体との間でカルシウム依存性相互作用が報告されている。シナプトギャミンはまた、別の3つのタンパク質、即ち、ノイレキシン、シンタキシン及びap2と結合し得る。同定された配列とシナプトギャミンファミリーとの間の相同性がいずれも早期に急激に消滅することを考察すると、同定された配列は天然配列に比較して欠失を有している可能性が大きい。この仮説を検証し、配列の有効性を確認するために、1644bpの配列を使用してRT−PCR及び配列決定の実験を行った。得られた配列は420aaのORFを含んでおり、同程度のシナプトギャミン相同性を有している。
【0115】
もっと長い配列を作製するため、及び、得られた配列がスプライシング形態に対応するか否かを検証するために、ヒト肺のcDNA調製物に対してオリゴL1及びL2を使用し、有効性が確認された配列の3′領域から5′−RACEによる伸長実験を行った。
【0116】
得られた結果を図2に示す。これらの結果は、6個の異なる5′末端に対応する8個のクローンが同定されたことを示す。3つのクローン(クローンA12、F2、F12)はORFを遮断するSTOPコドンを含んでおり、クローンA3はORFを全く含んでいない。RT−PCR及びnested RT−PCTによって種々の転写物の存在を確認した(表1)。
【0117】
【表1】
Figure 0004861590
【0118】
プライマー対U3−L3及びC−Bは配列の共通フラグメントに特異的であり、オリゴA及びU1は初期配列及びクローンC11に特異的であり、オリゴL4は初期配列に特異的であり、プライマーU2はクローンA3に特異的である。種々のクローンの共通領域に局在するオリゴL3及びL7(図2)によって二次5′−RACEを行った。得られた結果を図3及び図4に示す。種々の転写物の存在をRT−PCR及びnested RT−PCTによって確認した(表2)。
【0119】
【表2】
Figure 0004861590
【0120】
プライマー及びオリゴヌクレオチドの配列を表3及び4(配列16−37)に示す。
【0121】
【表3】
Figure 0004861590
【0122】
【表4】
Figure 0004861590
【0123】
これらの結果を総合すると、ヒト肺から同定されたPAP1タンパク質の長いアイソフォーム(図9、配列12及び13)及び短いアイソフォーム(図10、配列14及び15)に対応するコンセンサス配列は有効である。以後の実施例ではこのタンパク質をLY111と呼ぶ。長いアイソフォームは配列12の残基237−2069に局在する1833bpのORFによってコードされており、610個のアミノ酸を含んでいる。ポリアデニル化シグナルはヌクレオチド2315以後に局在している。短いアイソフォームは配列14の残基429−1370に局在する942bpのORFによってコードされており、313個のアミノ酸を含んでいる。ポリアデニル化シグナルはヌクレオチド1616以後に局在している。
【0124】
次に、プローブ(amplimerCD及びE−F)によって種々のヒト組織に対するノーザンブロット実験を行うと、筋肉で6kbの転写産物、心臓で3kbの転写産物、胎児肝で6kbの転写産物が検出された。、更に、ヒト胎児脳の転写産物のクローニングについて実施例7に記載する。
種々のタンパク質データベースで種々の相同試験を実施した。その結果を以下の表5に示す。
【0125】
【表5】
Figure 0004861590
【0126】
実施例7:ヒト胎児脳の相補的DNAを用いたPAP1の2つの全長転写産物(Ly111B)のクローニング
ヒト脳内に全長(“完全”)Ly111b転写産物が存在することを確認するために、ヒト胎児脳に由来の相補的DNAからPCRを実施した(Marathon Ready cDNA,Clontech)。プライマーとしてオリゴヌクレオチドLyF1(AAT GGA AGG GCG TGA CGC、図5、配列38)及びHA71(CCT CAC GCC TGC TGC AAC CTG、配列39)を使用した。約2キロ塩基の短いDNAフラグメントを増幅した。この一次PCRの産物をnested PCRのマトリックスとして使用した。このPCRにはオリゴヌクレオチドLyEcoF(GCACGAATTC ATG GCC CAA GAA ATA GAT CTG、配列40)及びHA72(CTG TCT TCG TAT TTC TCC GCC TTG、配列4)を使用した。増幅産物を制限酵素EcoRI(オリゴヌクレオチドLyEcoFに組込んだ)及びBstEII(図2)で消化し、発現ベクターpcDNA3に挿入し、次いでそれらの配列を決定した。得られたクローンの配列を解析すると、ヒト胎児脳に2つの全長転写産物Ly11bが存在し得ることが判明した(図5)。第一の転写産物(Ly111bfullA)はヒトの肺で同定されたmRNAに対応し(実施例6)、609アミノ酸のタンパク質(pLy111bfullA;図5及び6の配列42及び43)をコードしている。第二の転写産物(Ly111bfullB)は共通の一次mRNAの選択的スプライシング産物を表す可能性が高い。この転写産物はLy11bfullAに等しいが、ヒト肺で有効性が確認された配列のヌクレオチド752と956との間の配列が存在しない(配列42)。従って、Ly111bfullBは、アミノ酸172−240のドメイン(図5、7、配列44−45)が欠失したpLy111fullAに等しい541個のアミノ酸から成るタンパク質(pLy111bfullB)をコードしている。2つのタンパク質pLy111bfullAfullBは、酵母で同定されたアミノ酸135−290を含むパーキンのフラグメントと相互作用するドメイン(初期配列Ly111b、図5)を組込んでおり、従って理論的にこの相互作用を維持し得る。
pLy111bfullA/fullBタンパク質はRIM/Rabphilineファミリーに属する。
【0127】
pLy111bfullA/fullBはRIM/rabphilineファミリーのタンパク質に相同性を有しており(Wang Y,Sugita S & Sudhof TG,The RIM/NIM family of neuronal C2 domain proteins.J Biol Chem(2000)275,20033−20044)、特にgranulophilinesに相同性を有している(Wang Jie,Takeuchi T,Yokota H & Izumi T.Novel Rabphilin−3−like protein associates with insulin−containing granules in pancreatic beta calls.J Biol Chem(1999)274,28542−28548)。該タンパク質の特徴は、N末端部にジンクフィンガードメインが存在し、C末端部に2つのCドメインが存在することである(図6及び図7)。RIM/rabphilineファミリーのタンパク質のジンクフィンガードメインはRabタンパク質との相互作用に関与していた。Rabタンパク質はGTPに結合するタンパク質なので、真核細胞の膜輸送機構の必須成分である。また、RIM/rabphilineファミリーのタンパク質のCドメインがリン脂質との相互作用を介して膜に結合し得ることは既に文献に記載されている。
COS−7系の細胞におけるpLy111bfullA/fullBタンパク質の発現:パーキン遺伝子との共存的局在
転写産物Ly111bfullA/Bのコーディング配列を真核発現ベクターpcDNA3に、N末端mycエピトープをコードする配列に位相合せして挿入した(pcDNA3−mycLy111bfullA/B)。これらのベクターをトランスフェクトしたCOS−7系の細胞は、約67kDaの見掛け分子量をもつタンパク質(pcDNA3−mycLy111bfullA)と60kDaの見掛け分子量をもつタンパク質(pcDNA3−mycLy111bfullB)とを産生する。これらの分子量は予想分子量に一致する。N末端mycエピトープに対する抗体で免疫標識することによってこのタンパク質を検出すると、このタンパク質は、COS−7系の細胞の細胞質、細胞突起及びときには核の内部に不均一に点状に分布している(図8a,b、カラムA)。COS−7系の細胞中で抗パーキンAsp5抗体を用いて検出されたパーキンによってこれらのタンパク質が超発現するとき(図8a,b、カラムB)、これらのタンパク質の相似的分布及び共存的局在が観察される(図8a,b、カラムC)。
【0128】
(参考文献)
【0129】
【表6】
Figure 0004861590
Figure 0004861590

【図面の簡単な説明】
【図1】 ベクターpLex9−Parkine(135−290)の概略図である。
【図2】 一次5′−RACE実験の結果を示す。
【図3】 二次5′−RACE実験の結果を示す。
【図4】 二次5′−RACE実験のクローンC5及びD4の編成の詳細図を示す。
【図5】 ヒト脳から単離された転写物の構造を表す。
【図6】 ヒト脳のLY111(全長)の核酸及びタンパク質の配列を示す。二重下線:ジンクフィンガードメインの保存システイン;太字:C1ドメイン;イタリック体:C2ドメイン。
【図7】 ヒト脳のLY111(短縮形)の核酸及びタンパク質の配列を示す。二重下線:ジンクフィンガードメインの保存システイン;太字:C1ドメイン;イタリック体:C2ドメイン。
【図8a】 COS−7細胞中で発現後の短いLY111タンパク質(8b)または長いLY111タンパク質(8a)の局在を示す。
【図8b】 COS−7細胞中で発現後の短いLY111タンパク質(8b)または長いLY111タンパク質(8a)の局在を示す。
【図9】 ヒト肺のLY111(非短縮形)の核酸及びタンパク質の配列を示す。
【図10】 ヒト脳のLY111(短縮形)の核酸及びタンパク質の配列を示す。
【配列表】
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Claims (14)

  1. 配列番号2の配列を有する、パーキンと相互作用するポリペプチド。
  2. 配列番号13及び配列番号43の配列のいずれかを有するポリペプチド。
  3. 配列番号15及び配列番号45の配列のいずれかを有するポリペプチド。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードしている核酸。
  5. 配列番号1の配列を有する請求項4に記載の核酸。
  6. 配列番号12及び配列番号42のいずれかの配列を有することを特徴とする請求項4に記載の核酸。
  7. 請求項4乃至のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
  8. 請求項4乃至のいずれか一項に記載の核酸を含む組換え欠陥ウイルス。
  9. 配列番号2またはその配列のフラグメントに結合し得る分子の選択段階を含む、パーキンタンパク質の活性を変調するために使用される分子のスクリーニングまたはキャラクタリゼーション方法。
  10. 配列番号13、15、43及び45の配列またはそれら配列のフラグメントから選択された配列に結合し得る分子の選択段階を含む、パーキンタンパク質の活性を変調するために使用される分子のスクリーニングまたはキャラクタリゼーション特徴付け方法。
  11. 請求項4からのいずれか一項に記載の核酸または請求項7または8に記載のベクターを含む細胞を前記核酸の発現条件下で培養する段階と、産生されたペプチド化合物を回収する段階とを含む請求項1から3のいずれか一項に記載のペプチド化合物の製造方法。
  12. 請求項4乃至のいずれか一項に記載の核酸、又は請求項7または8に記載のベクターを含む細胞。
  13. 請求項4乃至のいずれか一項に記載の核酸をその細胞内に含む非ヒトトランスジェニック動物(ここで、該トランスジェニック動物は、齧歯類、イヌ、ウサギである)
  14. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリペプチドに対する抗体であることを特徴とする抗体または抗体の前記ポリペプチド結合性のフラグメントもしくは誘導体。
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