JP4859906B2 - 導波路構造体 - Google Patents
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Description
図10に示した従来の導波管は、例えば、略直方体形状をした2つの導電性の部材10、20を積層し、導電性の部材10、20の表面にそれぞれ形成した溝10a、20aを互いに対向させることにより、断面が略矩形状をした中空の導波管30を形成している。
なお、導波管30は直線状に形成されており、その管軸の方向は、図10を示す紙面に直交する方向である。
また、2つの導電性の部材10と部材20が対向している面は、中空状の導波管30の分割面となっている。
このような分割面で分割され、断面が矩形状をした中空の導波管30は、ダイカストによる製作が可能であり、製造コストを比較的安価に抑えることができる。
分割構造により導波管を形成する場合には、図10に示すように、導波管断面の短辺に平行な分割面により導波管を分割する方が、伝送性能の低下を抑えることができる。
ダイカストなどでは、一般的に溝深さが溝幅に対して深くなるほど、溝を形成する壁の先端にまで溶融金属が流れ難くなり、成形精度が悪化するという問題があった。
また、溝深さが溝幅に対して深くなるほど、ダイカストに用いる金型の寿命が短くなり、結果的に製造コストが高くなってしまう問題があった。
この特許文献1に示された導波管の構造は、「中空状導波管を2つの部材(即ち、2つの桶状の半割部材)の分割構造で形成している点」が、図10に示した従来の導波管の構造に類似している。
ところが、構造的な要因や放熱性の確保等の理由により、導波管30を形成する導電性の部材10および部材20の両方に樹脂が使えず、部材の一方を金属として、金属部材と樹脂部材を組合せて、導波管を形成せざるを得ない場合がある。
この場合、部材間の線膨張差に起因して生じる接触摩擦により、金属製の部材10と金属メッキを施した樹脂製の部材20を接触して積層した際の接合面において、金属メッキの剥離が発生する。
また、積層部材間(即ち、積層した金属製の部材10と樹脂製の部材20)の線膨張差により、「積層部材間の相対位置がずれる」といった問題も発生する。
積層部材間(即ち、金属製の部材10と樹脂製の部材20の間)の相対位置がずれると、当然のことながら、導波管の伝送性能(伝播性能)に影響が出る。
図10に示すように、従来の導波管は、部材10および部材20の表面にそれぞれ形成した直線状の溝10aおよび溝20aが互いに対向するように、部材10と部材20とを接触させて積層することによって、中空の導波管30を構成したものである。
図10に示す導波管構成において、異なる材質の部材10と部材20を接触させて積層し、中空の導波管30を構成した場合、各々の部材の線膨張差により、各部材が接触する個所で接触摩擦が発生する。
図10において、部材10は、例えば、SUS(ステンレス)やAL(アルミニウム)などの金属部材で形成され、部材20は、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)やPEI(ポリエーテルイミド)などの樹脂部材の表面にニッケル等の金属メッキを施したもので形成される。
例えば、部材10を線膨張係数1.7x10−5のSUS、部材20を線膨張係数8.5x10−5のABSとした場合、温度が50℃変化すると、基線長50mm当たり膨張収縮量が0.17mm異なることとなり、その変形量の差に起因して摩擦が発生する。
この接触摩擦によって、従来の導波管では金属メッキの剥離が発生する。
また、図10に示すように、導波管長辺の中央で分割すると(即ち、溝10aと溝20aの深さを同一にすると)、いずれの溝も、溝幅に対して溝深さが深くなり、ダイカストによる金属製部材の成形が困難になる場合がある。
従って、製品歩留まりが悪くなり、金型の寿命も低下する。
この問題に対しては、金属製部材の表面に形成する溝の深さを樹脂製の部材に形成する溝よりも浅くするこが望まれる。
また、ダイカストにより金属製部材の表面に溝を歩留まり良く形成でき、金型の寿命の低下を抑制できる導波路構造体を提供することを目的とする。
さらに、2つの導電性部材の線膨張差により導電性部材間の位置ずれも防止できる導波
路構造体を提供することを目的とする。
さらに、対向する第1の部材と第2の部材の表面を所定の隙間を有して保持するように固定しているので、第1の部材と第2の部材の接触摩擦による金属メッキの剥離を防止できる。
また、第1の溝の深さは、第2の溝の深さより浅くしているので、ダイカストによって金属製の第1の部材の表面に第1の溝を形成する際の歩留まりは高くなる共に、金型の寿命低下も抑制され、低価格な導波管を製造することができる。
なお、各図間において、同一符号は、同一あるいは相当のものであることを表す。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による導波路構造体(導波管)を説明するための図であり、図1(a)は管軸と直交する面での断面図、図1(b)は導波路構造体の立体的な構造を示す斜視図である。
本実施の形態では、図10に示した従来の導波管と同様に、導電性を有する金属製の部材10の表面には直線状の溝10a(以下、第1の溝とも称す)が形成されており、金属メッキが施されて導電性を有する樹脂製の部材20の表面には直線状の溝20a(以下、第2の溝とも称す)が形成されている。
また、50は、金属製の部材10と樹脂製の部材20が対向している面であって、中空の導波管30の分割面となっている。
なお、導波管30の管軸の方向は、図1(a)を示す紙面と直交する方向である。
このような、分割面50で分割され、断面が矩形形状をした中空の導波管30は、ダイカストによる製作が可能であり、製造コストを比較的安価に抑えることができる。
図2は、本発明による導波路構造体を説明するための斜視図であり、図2(a)は金属製の部材10の表面に形成された複数の溝10aを、図2(b)は樹脂製の部材20の表面に形成された複数の溝20aを示している。
本実施の形態による導波路構造体は、これらの複数の(図2では4つの)溝10aと溝20aを対向して配置することにより構成される複数の中空の導波管30が隣接して配置されている。
図1において、部材10、部材20は、それぞれ積層によって導波路を形成する導電性部材である。
なお、部材10は金属製の導電性部材(以下、第1の部材とも称す)、部材20は表面に金属メッキが施された樹脂製の導電性部材(以下、第2の部材とも称す)である。
40は、第1の部材10と第2の部材20を積層する際に、意図的に空けられた隙間であり、50は、隙間40によって分割された導波管30の分割面である。
図1において、溝20aを設けた第2の部材20は、成形性の良い樹脂等で形成され、表面には金属メッキが施されている。
また、金属製の第1の部材10の表面には溝10aが形成されている。
導波管30は、溝10aおよび溝20aの幅方向に平行な偏波面を有する電波が、第1の部材10および第2の部材20と直交する方向に伝播するように形成されている。
また、この導波管30を伝播する電波の管内波長は、導波管断面の長辺(長さを“a”で示す)である溝10aと溝20aの深さ寸法と、意図的に空けられた隙間40の隙間量の総和で決まる。
なお、図1(a)において、“b”は、溝10aおよび溝20aの幅である。
図3は、導波管の側壁(広壁面)の電流ベクトル分布を示す図であり、図3(a)は導波管の断面、図3(b)は導波管の側壁(広壁面)を示している。
図3において、100は、導波管の側壁(広壁面)における電流ベクトルを示す。
図3に示すように、導波管断面の長辺の中点位置を流れる電流ベクトルは、いずれも管軸方向に対して平行に分布しており、管軸方向に直交する電流ベクトルは分布しない。
従って、導波管断面の長辺寸法“a”に対して、中点の位置を通るように導波管を分割すれば、分割によって側壁を流れる電流の流れを分断することはない。
また、管軸方向に対して平行な電流ベクトルは、導波管の長辺方向にある程度の幅を持って分布しているため、分割による隙間量をある程度許容できることがわかる。
図4は、「分割面」の位置と、意図的に空けられた隙間幅による「導波管の通過損失」を解析した結果である。
ここでは、導波管30の一端の断面からもう一端の断面までの通過損失を解析した。
解析対象は、図1に示すような、意図的に空けられた隙間40を含む導波管30の断面形状が管軸方向に6mm延びた形状とする。
即ち、図1(b)において、断面Aと断面Bの間の距離“l”が6mmである場合を、解析対象とする。
解析条件としては、伝播周波数を76.5GHz、導波管30の短辺長さ“b”を1.
27mm、導波管30長辺長さ“a”を3.5mmで一定とし、意図的に設けられた隙間40の位置と幅を変化させた。
また、図4の縦軸は、導波管30の通過損失[dB]である。
なお、図4は、隙間40を、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mmおよび0.5mmとした場合を示している。
図4より、分割面50の位置を導波管長辺の50%付近とすれば、隙間40を0.5mmとしても、通過損失が小さいことが分かる。なお、隙間による通過損失が小さい分割面を理想分割面と呼ぶ。
しかし、理想分割面の位置が導波管長辺の50%となるのは、対向する溝10aおよび溝20aの断面形状が対称形状を有している場合のみである。
導波管の断面形状が溝深さ方向に対して対称形状になっていない場合は、理想分割面が導波管長辺の50%の位置(即ち、導波管長辺の中央の位置)からずれるため、導波管の分割面をオフセットさせる必要がある。
また、溝10a、溝20aを形成する導電体の導電率が異なる場合は、溝の形状が対称であっても理想分割面がオフセットする。
本実施の形態のように、溝形状を分割面に対して非対称として、理想分割面をオフセットさせることで、ダイカスト金型の寿命を考慮した形である「溝幅に対して溝深さが浅い溝10a」が形成できる。(例えば、溝深さに対して溝幅がほぼ1対1の溝10a)
導波管を構成するもう一方の溝20aは、樹脂成形や切削などを考慮した形状であり、溝深さを溝幅に対して大きくしたものである。
従って、本実施の形態によれば、放熱性のよい金属製の第1の部材と成形性に優れた樹脂部材に金属メッキを施した第2の部材を組合せることにより、第1の部材と第2の部材の両方を樹脂部材とした場合に比べて、放熱性が改善される。
さらに、対向する第1の部材と第2の部材の表面を所定の隙間を有して保持するように固定しているので、第1の部材と第2の部材の接触摩擦による金属メッキの剥離を防止できる。
従って、ダイカストによって金属製の第1の部材の表面に第1の溝10aを形成する際の歩留まりは高くなり、金型の寿命低下も抑制されので、低価格な導波管を製造すること
ができる。
図5〜図7は、実施の形態2による導波路構造体の特徴的な構造を説明するための図であり、第1の部材10の表面に形成される第1の溝10aと第2の部材20の表面に形成される第2の溝20aを、所定の隙間量保持して固定する方法を示したものである。
例えば、図5または図6に示すように、導波管30を構成する第1の溝10aおよび第2の溝20aから十分離れた位置に、第1の部材10と第2の部材20が互いに接触する突起部を設ける。
図5において、101は、突起61と突起62が接触する接触面である。
また、図6において、101は、第1の部材10のみに設けた突起61と第2の部材20が接触する接触面である。
図5および図6で示す突起部の高さは、製作する導波管の分割位置が理想分割面から離れるほど、小さく設定する必要がある。
隙間40の大きさ(隙間の量)は、突起部の高さにより決定される。
なお、図7において、101は、スペーサ102が第1の部材10あるいは第2の部材20と接触する接触面である。
隙間40の大きさ(隙間の量)は、スペーサ102の厚みにより決定される。
図5〜図7に示したいずれの方法においても、第2の部材20は、突起部を介して第1の部材10と接触する部分あるいはスペーサ102と接触する部分には金属メッキを施さないようにしている。
こうすることで、第1の部材10との接触摩擦で、第2の部材20のメッキが剥離することを防止する。
従って、第1の部材の表面と第2の部材の表面を所定の隙間量(即ち、突起部の高さにより決まる隙間量)だけ保持して固定できるので、第1の部材と第2の部材の接触摩擦による第2の表面に施した金属メッキの剥離を防止できる。
また、本実施の形態による導波路構造体においては、第2の部材20は、上記突起部と接触する部分には金属メッキをしない。
従って、突起部と第2の部材の表面に施した金属メッキとの摩擦をなくせ、金属メッキの剥離を防止できる。
また、本実施の形態による導波路構造体においては、隙間40は、第1の部材10と第2の部材20の間に挟んだスペーサ102によって形成されるとともに、第2の部材20のスペーサ102と接触する部分には金属メッキをしない。
従って、スペーサと第2の部材の接触摩擦による金属メッキの剥離を防止できる。
図8は、実施の形態3による導波路構造体の構造を説明するための断面図である。
本実施の形態による導波路構造体は、図8に示すように、使用周波数における自由空間中の伝播波長の1/4の厚さの管壁で構成した導波管を管軸方向で平行に複数本配置したものである。
前述した実施の形態1においては、隙間40からの電磁波の漏れが殆ど発生しない導波
管の理想分割面がある場合について説明した。
しかし、分割面が導波管の管軸に直交するような導波管では、理想分割面は存在しない。
理想分割面が存在しない場合の対策を、以下に説明する。
本実施の形態では、隣接する導波管(例えば、導波管30と導波管31)の間の管壁の厚さ“t”を自由空間中の伝播波長の約1/4となるように、各導波管を配置した。
となる。
従って、管壁部の隙間40を通って隣接する導波管に漏れる電磁波を最小限に抑えることができる。
図8に示したように、隣接する導波管の間の管壁の厚さ“t”を自由空間中の伝播波長の約1/4として、複数の導波管を平行に配置すれば、隣接する導波管からの電磁波の漏れによる性能低下を最小限に抑えられ、良好な個々の導波管特性が得られるばかりでなく、他の導波管とのアイソレーション特性の良い導波管構造体が得られる。
図9は、実施の形態4による導波路構造体を説明するための図であり、図9(a)は上面図、図9(b)は断面図である。
図9に示すように、本実施の形態による導波管は、材質が異なる複数の部材のうち、一つの部材(例えば、樹脂製の第2の部材20)の中心を通り互いに直交する軸200上の3箇所に、位置決めピン70を設け、もう一方の部材(例えば、金属製の第1の部材10)に位置決めピン70に対応する長穴80を設けたものである。
これによって、部材10の表面に形成された溝10aと部材20の表面に形成された溝20aが、それぞれの溝の長手方向(管軸方向)および長手方向と直交する方向において、正確に対向するように位置決めを行うことができる。
により、各部材の膨張収縮量が異なる。
図9は、これら膨張収縮量の異なる部材を積層する構造体において、温度変化による位置ずれの発生を抑制する位置決め構造を示したものである。
図9に示した部材中心点“C”は、最も電磁界が集中し、性能への影響度も高い個所で
ある。
従って、位置決め構造は、C点を基点として固定するものとした。
図9では、樹脂部材(第2の部材)20に位置決めピン70を設け、金属部材(第1の部材)10に位置決めピン70が嵌号する長穴80を設けたが、逆であっても構わない。
位置決めピン70は、樹脂部材20と一体成形してもよく、位置決めピン70のみを別部材で構成しても良い。
また、実施の形態2で示した突起部に位置決めピン70の機能をはたす構造を付加しても構わない。
また、実施の形態2で示したスペーサ102に位置決め構造を付加しても良い。
20 第2の部材 20a 第2の溝
30、31 導波管 40 隙間
50 分割面 61、62 突起部
70 位置決めピン 80 位置決めピン用の長穴
100 電流ベクトル 101 接触面
102 スペーサ 200 部材平面の中心軸(直交する軸)
Claims (4)
- 直線状の第1の溝が表面に形成された金属製の第1の部材と、直線状の第2の溝が表面に形成され、且つ、金属メッキが施されている樹脂製の第2の部材とを備え、上記第1の溝と上記第2の溝とが対向するように上記第1の部材と上記第2の部材を配置することにより導波管となる導波路を構成する導波路構造体であって、
上記第1の溝が形成された上記第1の部材の表面と上記第2の溝が形成された上記第2の部材の表面が所定の隙間を有して保持されており、上記第1の溝の深さは、上記第2の溝の深さより浅いことを特徴とする導波路構造体。 - 上記隙間は、上記第1の部材あるいは上記第2の部材の少なくとも一方の部材に設けた突起部で形成されることを特徴とする請求項1に記載の導波路構造体。
- 上記隙間は、上記第1の部材と上記第2の部材の間に挟んだスペーサによって形成されるともに、上記第2の部材の上記スペーサと接触する部分には金属メッキをしないことを特徴とする請求項1に記載の導波路構造体。
- 上記導波路は、自由空間中の伝播波長の1/4の厚さの管壁を有して平行に複数本配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導波路構造体。
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