JP4859634B2 - 寿命試験の設計・判定方法 - Google Patents

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Description

この発明は、軸受等の機械部品やその試験片からなる試験対象品の寿命試験において、打切り試験を行う場合の打切り時間の設計、試験結果の未破損データから言える寿命の判定や、加速試験を行う場合の必要試験個数の設計、試験結果からほんとうに有為差があるか否かの判定等を行う寿命試験の設計・判定方法に関する。
寿命試験は、軸受等の機械部品の性能を評価するために欠かせない試験の1つである。寿命試験には、大きく分けて(1) 実機の使用環境に近い条件で試験を行う実機試験と、(2) 比較的過酷な条件で寿命試験を行う加速試験がある。前者は、製品が有限時間内に破損するケースが極めて少ないため、ある目標時間まで破損することなく試験が継続すれば、寿命は問題ないと判断する試験である(以下、このような試験を「打切り試験」と呼ぶ)。一方、後者は、比較的短時間で破損が発生するので、ワイブルプロットで寿命が算出でき(例えば非特許文献1)、その算出寿命から性能の優劣を判定する試験である(以下、このような試験を「加速試験」と呼ぶ)。
従来より、寿命試験は経験を積んだ熟練者が行っており、試験条件や試験個数を決める寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈に対して経験的に確からしい判断ができたと考えられる。
図78に、従来から行われてきた寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈の手順を、打切り試験と加速試験ごとに示す。
また、現在、寿命試験において経験的に判断されているものの詳細を、表1に示す。
Figure 0004859634
なお、ワイブル分布を機械部品の寿命判断に用いるものは、種々の特許文献,非特許文献に提案されている。
特開2006−040203号公報 特開2002−277382号公報 特開2005−226829号公報 真壁肇著、信頼性工学入門79、1991年発行
従来は、表1に詳細を示すように、(1) 寿命試験に必要な試験個数の設定、(2) 打切り試験における打切り時間の設定、(3) 試験結果の解釈等を熟練者が経験的に行ってきた。 しかし、どれだけの試験個数を用意して、どの程度の寿命差があれば、寿命の有為差が判断できるのかという寿命試験の設計指針、打切り時間が何時間ならばどの程度のL10(L50)寿命が保証できるのか、あるいは、どの程度の寿命差があれば寿命の有為差を判断できるのかという寿命試験結果の解釈を、都度熟練者に相談しなければ決定できないという点は大きな問題である。また、これらは、寿命試験の熟練者でもしばしば判断することが難しいものであり、寿命試験の経験が少ない技術者にとっては、寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈が困難な状況が発生すると考えられる。
寿命試験の試験時間、特に打切り試験の試験時間は、長く行うほど高い信頼度が得られるが、寿命試験は納期や試験機械台数等の厳しい制限下で行われ、また無駄な試験を無くすためにも、信頼性が確保できる範囲で適切な打切り時間を設定することが必要となる。試験中止基準時間についても、無駄に試験を継続しないために、適正な時間を設定することが必要となる。
また、打切り試験は、打切り時間が経過すると要求寿命が満足されたとする試験であるが、納期に余裕がある場合など、打切り時間の経過後も引き続いて試験を継続し、その試験対象品の寿命水準を確認したい場合がある。このような状況は、しばしば発生する。
しかし、従来、このような打切り試験の継続で試験対象品の寿命水準を試算する適切な方法がなかった。
加速試験では、試験個数の設計を試験前に設計しなければならない。加速試験では、試験個数が多いほど、算出される寿命の信頼性は高くなるが(ここでいう信頼性が高いとは、寿命のばらつきが小さいことをいう)、使用できる試機の台数や、ロットから抜き出した試験対象品を破損させてしまうことから、際限なく試験個数を増やすことはできない。加速試験の試験個数を決定する際に重要なことは、試験個数をどの程度多くすれば、どの程度信頼性の高い算出寿命が得られるかという点である。
上記のように、従来は、試験個数を決める設計を熟練者が経験的に行っており、また信頼性の確保できる試験個数を定めるには、長い時間がかかっていた。
また、加速試験は、上記のように破損時間から寿命を算出し、その算出寿命から性能の優劣を判定する試験であるが、2ロットの寿命試験結果から求めた算出寿命の間に、本当に有為差があるかどうかを確かめたい状況が多くある。
従来より、算出寿命の有為差判定は信頼幅という概念を使って行われてきた。しかし、この判定方法には、次のようにいくつかの問題がある。
まず、信頼幅は、2水準間での寿命の有意差を判断できないという問題がある。その理由は、どの程度信頼幅が重なっていたら寿命に優位差があるのかということを定量的に判断できないためである。信頼幅を使って2水準間での寿命の有意差を判定する場合、次のような手順が必要になる。以下、その手順を図79を使って説明する。
1) L10寿命におけるメディアンランクの信頼水準の分布(図中Aの分布)を求める。ここで、この分布はF値表とファイサー(Fisher)の近似式を用いて求める。
2) L10寿命におけるメディアンランクの信頼水準の分布とワイブルスロープからL10のばらつき頻度の分布(図中Bの分布)を求める。
3) このばらつき分布f(x)を使って、図中の式の積分を取り、寿命倍率nが同じ寿命分布から発生する頻度を調べる。これは寿命比のばらつき分布である。
4) 3)の分布の累積確率分布を作成し、そのグラフから90%以上の確率で有意差有と判定できる寿命倍率を計算する。
上のような手順で、従来の信頼幅を使って寿命の有意差検定や設計が可能になる。しかし、このような手順は複雑であり、実用化が難しい。このため、信頼幅を使った寿命の有意差検定が今まで行われてこなかったのは当然であるといえる。
レオナード・ジー・ジョンソン(LEONARD G. JOHNSON)は、ワイブルスロープごと、試験個数ごとに、2水準間の平均寿命とL10 寿命の有意差を判定する方法を提案している)。しかし、その方法も、実際には使われていないのが現状である。これは、手軽な形で優位差検定を行うツールを残していないことに原因がある。
また、従来は、有為差有りと判定を行っても、少なくともどの程度の寿命差があると言えるのかを、定量的に示す適切な方法がなかった。
このように、寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈は、熟練者を要するうえ、判断が迅速に行えず、また設定の基準が明確でなくて、試験結果の信頼性の面で不十分である。
この発明の目的は、寿命試験の設計と試験結果の解釈を、誰もが経験によらず正確に行うことができる方法を提供することである。
この発明の他の目的は、打切り時間の適切な見積もりが、簡単で迅速に行え、かつ信頼性の高いものにできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、熟練者でなくても、適切な打切り時間の見積もりが行える方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても寿命水準を試算することのできる方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、加速試験において高度な信頼性の算出寿命を得るための必要試験個数を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても必要試験個数を試算することのできる方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、加速試験において、2つのロット間での有為差有無の判定を定量的に適切に行える方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、加速試験において、有為差があると判定される場合に、少なくともどの程度の寿命差があると言えるのかを、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ定量的に求められて信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても必要な寿命差を適切に試算することのできる方法を提供することである。
この発明の寿命試験の設計・判定方法は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を、所定の環境条件においた状態を続ける寿命試験において、寿命判断の基準となる基準時間、寿命差、または試験個数である所定の設計対象項目の値を定める設計過程(S1)と、寿命試験を行った結果から試験対象品の寿命、または有為性、または寿命差である解釈項目の判定を行う判定過程(S3)とを含む。
上記設計過程(S1)では、試験対象品に対応する所定のワイブル分布に従ったワイブル乱数を、試験個数と見立てた個数だけ発生させる過程(S11)、およびそのワイブル乱数を分析する手順(S12)を繰り返し(S13)、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めて(S14)、その確率分布を基に上記所定の設計対象項目の値を定める(S15)。
上記判定過程(S3)では、試験結果に応じてワイブル乱数を試験個数分発生させる過程(S31)、およびその発生させたワイブル乱数を分析する手順(S32)を繰り返し(S33)、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めて(S34)、その確率分布を基に上記解釈項目の判定を行う(S35)。
軸受等の機械部品の寿命は、ワイブル分布に従うとされている。試験対象品に対応するワイブル分布に従ったワイブル乱数を発生させた場合、その発生させた乱数は、実際に試験を行った場合の寿命に相当する。したがって、試験個数と見立てた個数だけワイブル乱数を発生させてそのワイブル乱数の値を分析する手順を繰り返し、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めると、その繰り返し回数だけ実際に試験を行った場合に対応するデータが得られる。そのため、コンピュータシミュレーションにより、寿命判断の基準となる基準時間、寿命差、または試験個数の設定が行え、また寿命試験を行った結果を元に、コンピュータシミュレーションにより、試験対象品の寿命、有為性、寿命差等を求めることができる。このように、コンピュータシミュレーションが行えるため、寿命試験の設計と試験結果の解釈を、誰もが経験によらず正確に行うことができる。
この発明方法において、上記寿命試験が、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験である場合に、上記設計過程(S1)で定める設計対象項目が、上記打ち切り時間であり、上記判定過程(S3)で行う判定が、上記の見積もった打切り時間後に少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から求められる試験対象品のロットの寿命であっても良い。
この発明方法において、上記寿命試験が、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を使用環境よりも厳しい所定の環境条件におき、破損が発生した時間から寿命を算出する加速試験である場合に、上記設計過程(S1)で定める設計対象項目が、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数であり、上記判定過程(S3)で行う判定が、試験対象品の2つのロットの寿命から有為差が有るか無いかを判定する有為差有無の判定であっても良い。
この発明の寿命試験の設計・判定方法において、打ち切り試験の場合、より具体的には次の方法とできる。
すなわち、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、
判定基準となる上記打切り時間を見積もる設計過程(S1)、および実際の寿命試験の後、上記の見積もった打切り時間後に少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を判定する判定過程(S3)を含む、寿命試験の設計・判定方法とする。
上記打切り時間を見積もる設計過程(S1)は、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程(図1のA1)と、上記コンピュータに、打切り時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(A2)とを含む。
このコンピュータ演算処理過程(A2)として、コンピュータに次の、ワイブル分布特定手順(図6のB21)、乱数発生手順(B22)、乱数分析手順(B23)、設定回数繰り返し手順(B24)、累積分布の演算手順(B25)、および対応時間読み取り手順(B26)を実行させる。
ワイブル分布特定手順(B21)は、次式、
Figure 0004859634
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定する手順である。この明細書で言う「ワイブル分布」は、いずれも上記の式によって示される分布を言う。
乱数発生手順(B22)は、特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手順である。なお、この場合、および以下の各場合において、ワイブル乱数特定手順(B21)は、乱数発生手順(B22)に含めても良い。
乱数分析手順(B23)は、上記乱数発生手順(B22)で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順である。
上記設定回数繰り返し手順(B24)は、上記乱数発生手順(B22)および上記乱数分析手順(B23)を設定回数繰り返す手順である。
累積分布の演算手順(B25)は、上記繰り返し手順(B24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順である。
対応時間読み取り手順(B26)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手順である。
なお、この明細書において、上記打切り時間は、時間の単位に限らず、軸受を回転させて行う試験等のように繰り返して負荷を与える試験の場合、回転数等の負荷回数によって表現された値であっても良い。以下の説明で言う「時間」は、いずれも上記のように負荷回数によって表現された値であっても良い。
上記判定過程(S3)は、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力する入力過程(図27のE1)と、上記コンピュータに、寿命を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(E2)とを含む。
このコンピュータ演算処理過程(E2)は、未破損時間対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(図29のG21)と、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、上記乱数発生手順(G21)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、この設定割合寿命充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、この異寿命充足調査手順(G24)により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、を実行する過程である。
上記所定信頼度の寿命は、例えばL10寿命(90%の信頼度の寿命)や、L50寿命(50%の信頼度の寿命)等である。
この方法は、例えば、1ロットの機械部品の中から一部の機械部品を抜き取って寿命の打切り試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等において、打切り時間を定める場合に適用される。
軸受等の機械部品の寿命は、ワイブル分布に従うとされている。ワイブル分布は、ワイブルスロープm、尺度因子α、最小寿命γの3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。量産される軸受等では、ワイブルスロープは実績値が既知である場合が多く、この発明方法において、ワイブルスロープには、試験対象となる機械部品の実績値を用いることが好ましい。実績値がない場合は、適宜の方法で見積もったワイブルスロープを用いてもよい。最小寿命γは、種々の規格、例えばISO等によって計算方法が定められており、そのように定められたいずれかの計算方法を用いることが好ましい。尺度因子αは、ワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、要求寿命の値、および上記最小寿命γから一義的に決定される演算式があり、その演算式を用いて特定しても良い。
この発明の寿命試験の設計・判定方法における設計過程として、上記のようにワイブル分布を特定し、その特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分だけ発生させると、その発生させたワイブル乱数は、上記試験個数分の試験対象の寿命試験を行い、寿命データを得ることに対応する。乱数分析手順では、このように得られたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する。
この乱数発生手順および上記乱数分析手順を、信頼性を得るために満足できるとして設定される回数である設定回数だけ繰り返し、その繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算すると、その累積分布は、信頼性に対応した寿命の分布となる。
そこで、上記対応時間読み取り手順として、上記累積分布において、上記入力情報のうちの要求寿命の信頼度に対応する時間を読み取ることで、その読み取った値が全数未破損時の打切り時間として適切な値となる。例えば、信頼度が90%の寿命であるL10寿命では、上記累積確率が0.9の時間を読み取ることで、読み取られた時間がL10寿命の全数未破損時の打切り時間となる。
この設計過程によると、このように、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させて全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる過程を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から要求寿命の信頼度に対応する時間を読み取って打切り時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものにできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
この寿命試験の設計・判定方法における判定過程によると、未破損時間対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる。この手順を設定回数、例えば数千回数繰り返し、未破損時間以上にある確率を調べる。この確率を、順次異なる寿命を持つワイブル分布に対して求める。
このようにして得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係は、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかということを示している。したがって、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値(L10寿命であれば、100%から90%を引いた10%)となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定めることができる。
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命水準を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命水準を求めることができる。
この発明の寿命試験の設計・判定方法において、上記設計過程(S3)における上記乱数分析手順(図6のB22)は、上記乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順(図7のB22′)とし、
上記累積分布を演算する手順(B23)は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B23′)とし、
上記打切り時間とする手順(B27)は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とする手順(B27′)としても良い。
打切り試験において、信頼度が例えば90%であるL10寿命等では、全数未破損時の打切り時間に達するまでの途中で試験対象の破損が生じても、必ずしもそのロットが要求寿命を満足しないとは言えない。このような破損が生じた場合に、残りの試験対象について、打切り時間を何時間にすれば良いかを、上記のように、最も短い乱数からi個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上あるかを演算することにより、上記と同様にして、簡単かつ迅速に、かつ適切に定めることができる。
この発明の寿命試験の設計・判定方法において、加速試験の場合、より具体的には、次の方法とできる。
すなわち、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を使用環境よりも厳しい所定の環境条件におき、破損が発生した時間から寿命を算出する加速試験において、
試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数を見積もる設計過程(S1)と、試験対象品の2つのロットの寿命から、有為差有無の判定、および少なくとも断定できる、倍率による寿命差を算出する判定過程(S3)とを含む。
上記設計過程(S1)は、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、および何倍であれば有為差有りと判断するかの倍数で示される寿命差を入力する過程(図37のH1)と、上記コンピュータに、必要試験個数を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(H2)とを含む。
上記寿命は、例えばL10寿命(90%の信頼度の寿命)や、L50寿命(50%の信頼度の寿命)等の所定信頼度の寿命である。
上記コンピュータ演算処理過程(H2)として、
試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を仮試験個数分発生させる第1乱数発生手順(図39のJ21)と、
この第1乱数発生手順(J21)と同じワイブル分布に従った乱数を上記仮試験個数分発生させる第2乱数発生手順(J22)と、
第1乱数発生手順(J21)で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順(J22)で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命との1組の寿命比を算出する寿命比算出手順(J23)と、
これら第1乱数発生手順(J21),第2乱数発生手順(J22),および寿命比算出手順(J23)を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する累積確率分布作成手順(J24)と、
上記仮試験個数を繰り返しの都度変えて、上記第1乱数発生手順(J21),第2乱数発生手順(J22),および累積確率分布の作成までの手順である累積確率分布作成手順(J24)を、上記仮試験個数が設定最小個数から設定最大個数まで変わる範囲で繰り返し、試験個数と必要寿命差の関係を示すグラフを作成する個数・寿命差関係グラフ作成手順(J25)と、
この手順(J25)で作成された試験個数と必要寿命差の関係のグラフから、上記入力情報の寿命差に対応する個数を読み取って必要試験個数と定める必要試験個数読み取り手順(J26)と、
この読み取った必要試験個数を表示装置に出力させる必要試験個数出力手順(J27)と、
を含む。
上記第1,第2乱数発生手順(J21,J22)において、乱数発生に用いるワイブル分布を特定するための所定信頼度の寿命(例えばL10寿命)は、適宜想定した寿命を設定すれば良い。
また、寿命比算出手順(J23)において、乱数発生手順(J21,J22)で発生させた設定個数の乱数から寿命を求める所定の寿命計算方法は、加速試験において従来から用いられている中の適宜の寿命計算方法を用いれば良い。加速試験においては、破損の発生した時間からワイブルプロットで寿命を求めることが行われており、このような破損時間から寿命を求める計算方法を、上記寿命比算出手順(J23)における寿命計算方法として用いる。
上記判定過程(S3)は、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、比較する水準1,水準2の2つのロットの各試験個数および試験結果の寿命を入力する過程(図55のM1)と、上記コンピュータに、上記有為差有無の判定、および少なくとも断定できる寿命差を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(M2)とを含む。
上記コンピュータ演算処理過程(M2)として、
試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮設定寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる第1乱数発生手順(図57のN21)と、
第1乱数発生手順(N21)と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる第2乱数発生手順(N22)と、
第1乱数発生手順(N21)で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順(N22)で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の水準1,水準2の寿命の寿命比を算出する寿命比算出手順(N22)と、
これら第1乱数発生手順(N21),第2乱数発生手順(N22),および寿命比算出手順(N23)を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成して累積確率分布から、設定信頼幅内の最大の寿命比を読み取る累積確率分布分析手順(N24)と、
上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比が上記累積確率分布分析手順(N24)で得た最大寿命比を超える場合に有為差有りと判定し、最大寿命比以内の場合に有為差無しと判定する有為差有無判定手順(N25)とを含む。
この方法における上記設計過程おいて、累積分布作成手順(N24)で行う処理は、同じ寿命分布を持つロットから仮試験個数分の試験対象品を2組抜きとり、寿命試験を行った結果、どの程度の寿命差が出るのかを設定回数確認することに対応している。同じ寿命分布を持つロットから試験片を抜きとった試験においても、寿命はばらついてる。その寿命比のばらつきを累積確率分布の適宜の信頼区間、例えば5%と95%の区間(90%信頼区間)として定義すると、その寿命ばらつきは、上記累積確率分布から算出できる。この結果は、同じ寿命分布を持つロットから仮試験個数の試験片を2組抜きとって寿命比較を行っても、90%のものは、累積確率分布に示された信頼区間の範囲で寿命比がばらついてしまうことを示している。逆にいうと上記信頼区間の最大の寿命差があれば、そのロット間の寿命分布が異なっている可能性が高いということになるので、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ上記仮試験個数の場合、有為差を判断できる寿命差は、上記信頼区間の最大の寿命差であるといえる。
個数・寿命差関係グラフ作成手順では、試験個数を順次増やして、有意差を判断できる寿命差を上述と同様な手順で算出し、試験個数と必要寿命差のグラフを作成する。このグラフから、ワイブルスロープが入力情報の値となる試験における試験個数と有為差を判断する必要寿命差が分かる。
この設計過程(S1)は、このようにワイブル分布に基づくシミュレーションにより必要試験個数を求めるため、目的の信頼性の算出寿命を得るための必要試験個数を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても必要試験個数を試算することができる。
この方法における判定過程(S3)おいて、累積分布作成手順(N24)で行う処理は、同じ寿命分布を持つロットから験個数分の試験対象品を2組抜きとり、寿命試験を行った結果、どの程度の寿命差が出るのかを設定回数確認することに対応している。同じ寿命分布を持つロットから試験対象品を抜きとった試験においても、寿命はばらついてる。その寿命比のばらつきを累積確率分布の適宜の信頼区間、例えば5%と95%の区間(90%信頼区間)として定義すると、その寿命ばらつきは、上記累積確率分布から算出できる。この結果は、同じ寿命分布を持つロットから試験個数の試験対象品を2組抜きとって寿命比較を行っても、90%のものは、累積確率分布に示された信頼区間の範囲で寿命比がばらついてしまうことを示している。逆にいうと上記信頼区間の最大の寿命差があれば、そのロット間の寿命分布が異なっている可能性が高いということになる。
したがって、上記有為差有無判定手順(N25)として、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比が上記累積確率分布分析手順(N24)で得た最大寿命比を超える場合に有為差有りと判定し、最大寿命比以内の場合に有為差無しと判定することで、定量的に適切に有為差有無を判定することができる。
また、寿命が異なるワイブル分布との組み合わせで、上記同様の累積確率分布の計算を行い、例えば、ワイブル分布と寿命が1.1 、1.2 …50倍異なるワイブル分布の組み合わせで計算を行うと、その組み合わせが1.1 、1.2 …50倍と変化するごとに、寿命差が1.1 、1.2 …50倍を中心にしてばらつくはずである。上記倍率変更繰り返し手順は、このような累積確率分布の計算、およびその確率分布についての上記確率分布分析手順を行う。
この倍率変更繰り返し手順で得られた、繰り返し変更した設定倍率と上記信頼幅内の最大の寿命比の関係を示すグラフである寿命倍率関係グラフを作成し、このグラフから、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比に対応する上記設定倍率の値を読み取ると、その読み取った値が少なくとも断定できる寿命差となる。
この判定過程(S3)は、このようにワイブル分布に基づく乱数シミュレーションにより有為差有無を判定し、また少なくとも断定できる寿命差を求めるため、これら有為差有無および少なくとも断定できる寿命差を、簡単かつ迅速に試算することができる。また、定量的に求められて信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても試算することができる。この乱数シミュレーションに用いるプログラムは、条件入力を行えば勝手に有為差有無を判定および少なくとも断定できる寿命差の検定を行ってくれる手軽なツールであることが優れた点である。
この判定過程(S3)における、上記コンピュータ演算処理過程(M2)は、さらに、 上記有為差有無判定手順(N25)で有為差有りとした場合に実行され、上記ワイブル分布を仮設定寿命が異なる設定倍率となるワイブル分布に繰り返し毎に順次変えて、上記累積確率分布分析手順(N24)を、上記設定倍率が設定最小倍率から設定最大倍率となるまで繰り返す倍率変更繰り返し手順(N26)と、
この倍率変更繰り返し手順(N26)で得られた、繰り返し変更した設定倍率と上記信頼幅内の最大の寿命比の関係を示すグラフである寿命倍率関係グラフを作成する寿命倍率関係グラフ作成手順(N27)と、
上記寿命倍率関係グラフから、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比に対応する上記設定倍率の値を読み取り、その読み取った値を少なくとも断定できる寿命差とする有為寿命差読み取り手順(N28)と、
上記有為差有無判定手順(N25)で判定した結果および上記有為寿命差読み取り手順(N28)で読み取った、少なくとも断定できる寿命差を表示装置に表示させる結果出力手順(N29)と、を含む過程としても良い。
この発明の寿命試験の設計・判定方法は、寿命判断の基準となる基準時間、寿命差、または試験個数である所定の設計対象項目の値を定める設計過程と、寿命試験を行った結果から試験対象品の寿命、または有為性、または寿命差である解釈項目の判定を行う判定過程とを含む寿命試験の設計・判定方法であって、上記設計過程は、試験対象品に対応する所定のワイブル分布に従ったワイブル乱数を、試験個数と見立てた個数だけ発生させてそのワイブル乱数を分析する手順を繰り返し、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めて、その確率分布を基に上記所定の設計対象項目の値を定める過程であり、上記判定過程は、試験結果に応じてワイブル乱数を試験個数分発生させ、その発生させたワイブル乱数を分析する手順を繰り返し、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めて、その確率分布を基に上記解釈項目の判定を行う過程であるため、コンピュータシミュレーションにより、寿命試験の設計と試験結果の解釈を、誰もが経験によらず正確に行うことができる。
この発明の実施形態を説明する。図1,図2と共に概要を説明する。図1(A)はこの方法全体の概略流れ図である。この寿命試験の設計・判定方法は、軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を、所定の環境条件においた状態を続ける寿命試験において、寿命判断の基準となる基準時間、寿命差、または試験個数である所定の設計対象項目の値を定める設計過程(S1)と、実際に試験を行った実試験過程(S2)の結果から試験対象品の寿命、または有為性、または寿命差である解釈項目の判定を行う判定過程(S3)とを含む。
この寿命試験の設計・判定方法は、打切り試験に適用される場合と、加速試験に適用ささる場合とに大別される。
打切り試験は、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する寿命試験である。打切り試験の場合、設計過程(S1)で定める設計対象項目は、例えば、上記打ち切り時間である。判定過程(S3)で行う判定は、例えば、上記の見積もった打切り時間後に少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から求められる試験対象品のロットの寿命である。
加速試験は、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を使用環境よりも厳しい所定の環境条件におき、破損が発生した時間から寿命を算出する寿命試験である。加速試験の場合、判定過程(S3)で定める設計対象項目は、例えば、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数である。判定過程(S3)で行う判定は、試験対象品の2つのロットの寿命から有為差が有るか無いかを判定する有為差有無の判定であっても良い。
打切り試験および加速試験のいずれにおいても、上記設計過程(S1)および判定過程(S3)は、それぞれ図1(B),(C)に示す過程で行われる。
図1(B)に示すように、上記設計過程(S1)では、試験対象品に対応する所定のワイブル分布に従ったワイブル乱数を、試験個数と見立てた個数だけ発生させる手順(S11)、およびそのワイブル乱数を分析する手順(S12)を繰り返し(S13)、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めて(S14)、その確率分布を基に上記所定の設計対象項目の値を決定する(S15)。
図1(C)のように、上記判定過程(S3)では、試験結果に応じてワイブル乱数を試験個数分発生させる過程(S31)、およびその発生させたワイブル乱数を分析する手順(S32)を繰り返し(S33)、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めて(S34)、その確率分布を基に上記解釈項目の判定を行う(S35)。
この寿命試験の設計・判定方法によると、次の利点が得られる。軸受等の機械部品の寿命は、ワイブル分布に従うとされている。試験対象品に対応するワイブル分布に従ったワイブル乱数を発生させた場合、その発生させた乱数は、実際に試験を行った場合の寿命に相当する。したがって、試験個数と見立てた個数だけワイブル乱数を発生させてそのワイブル乱数の値を分析する手順を繰り返し、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めると、その繰り返し回数だけ実際に試験を行った場合に対応するデータが得られる。
そのため、簡単に、コンピュータシミュレーションにより、寿命判断の基準となる基準時間、寿命差、または試験個数等の設計が行え、また寿命試験を行った結果を元に、コンピュータシミュレーションにより、試験対象品の寿命、有為性、寿命差等を求めることができる。このように、コンピュータシミュレーションが行えるため、寿命試験の設計と試験結果の解釈を、誰もが経験によらず正確に行うことができる。
図2は、この寿命試験の設計・判定方法に使用するコンピュータ1の概要を示す。コンピュータ1はパーソナルコンピュータ等からなり、中央処理装置4およびメモリ5を有し、所定のオペレーションシステムによって動作するものである。コンピュータ1には、液晶表示装置等の画面によって表示可能な表示装置2と、キーボードやマウス等の入力装置3が接続され、あるいは付属して設けられている。以下の各図に示すコンピュータ1は、上記構成のものである。
このコンピュータ1のメモリ5に、打切り試験用のプログラム群81と、加速試験用のプログラム群82が記憶されている。打切り試験用のプログラム群81および加速試験用のプログラム群82には、いずれも、寿命試験の設計を行うプログラムである試験設計プログラム83,85と、寿命試験の判定を行うプログラムである判定プログラム84,86が含まれている。
打切り試験用のプログラム群81には、試験設計プログラム83として、打切り時間を見積もるプログラム6があり、その他に、試験中止基準時間を見積もるプログラム19、試験個数を見積もるプログラム88、およびワイブルスロープを見積もるプログラム71のいずれかが含まれている。判定プログラム84としては、寿命見積もりプログラム21が設けられている。
加速試験用のプログラム群82には、試験設計プログラム85として、必要試験個数を見積もるプログラム31、必要寿命差の見積もりプログラム41、およびワイブルスロープを見積もるプログラム71が含まれている。判定プログラム86としては、有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51が設けられている。
ワイブルスロープ見積もりプログラム71は、補助的に用いるものであり、また打切り試験用のプログラム群81と加速試験用のプログラム群82とを同じコンピュータ1に記憶させる場合、いずれかのプログラム群81,82に設けられる。
なお、コンピュータ1は、打切り試験用のプログラム群81および加速試験用のプログラム群82のいずれか一方を記憶したものであっても良い。また、上記の打切り試験用のプログラム群81および加速試験用のプログラム群82を構成する個々のプログラム(6,19,88,71,21,31,41,71,51)は、それぞれが独立してコンピュータで実行されるプログラムであり、別々のコンピュータに記憶させて実行させるようにしても良い。
これら個々のプログラム(6,19,88,71,21,31,41,71,51)については、一部(打切り試験の試験個数の見積もりプログラム88)を除き、後に具体的に流れ図等と共に説明する。
以下、この寿命試験の設計・判定方法につき、具体的に説明する。まず、打切り試験につき説明し、その後に加速試験、およびワイブルスロープの見積もり方法について説明する。
図3〜図7、図13〜図19は、打切り試験における設計過程(図1のS1)のうち、打切り時間の見積もり過程となる方法を示す。この打切り時間見積もり方法は、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等において、打切り時間を定める場合に適用される。
この打切り時間見積もり方法は、図3に示すコンピュータ1に、打切り時間見積もりプログラム6を実行させることで行う。このコンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および打切り時間見積もりプログラム6により、図4に各機能達成手段をブロックで示した寿命打切り試験の打切り時間見積もり装置が構成される。同図の打切り時間見積もり装置の構成については、後に説明する。
打切り時間見積もりプログラム6はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図6に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
この打切り時間見積もり方法は、図4に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程A1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程A2とからなる。
入力過程A1では、図13に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として打切り試験の対象となる軸受のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度の入力を促す表示を行わせる。要求寿命の信頼度は、ここではL10寿命とL50寿命のいずれかを選択する表示が行われ、その選択の入力を行う。ワイブルスロープの値には、試験対象となる型番の軸受における実績値を入力する。
実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。試験個数は、より多いほど打切り時間が短くできて好ましいが、試験機の台数等で制限される場合があり、納期や種々の状況を考慮して実際に試験に用いる個数を入力する。
図4のコンピュータ演算処理過程A2では、打切り時間を演算し、その演算結果を、図14(A)のように出力画面2bに表示する。なお、同図では全数未破損の場合の打切り時間の他に、一部の軸受が破損した場合の打切り時間を併せて表示しているが、ここでは簡明のため、全数未破損の場合について説明した後、一部破損の場合につき説明する。
図3の打切り時間見積もりプログラム6はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図6に流れ図で示す手順を備える。図6(A)に示すように、打切り時間見積もりプログラム6は、促し画面出力手順B1と打切り演算手順B2とでなり、促し画面出力手順B1では、図13と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、打切り演算手順B2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図5の入力過程A1であり、同図のコンピュータ演算処理過程A2は図6(A)の打切り演算手順B2を実行する過程である。
打切り演算手順B2は、同図(B)に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順B21〜B27毎の具体的な処理例を併記してある。
理解の容易のため、この具体的処理例を参照し、具体的な数値例を用いて、コンピュータ演算処理過程A2となる打切り演算手順B2の概要を説明する。
ある軸受製品のL10寿命(90%の確率の信頼度が得られる寿命)が1000時間以上であると保証するための全数打切り時間を見積もる場合を想定する。ここで、この試験対象となる軸受の寿命分布のワイブルスロープは、清浄油潤滑下での軸受の寿命試験の実績から1.85であると仮定する。また、試験個数が6個であるとする。
このワイブルスロープの値1.85と、試験個数6個の値とから、この軸受の寿命分布となるワイブル分布を特定する(図6(B)の手順B21)。寿命分布の作り方については、後に説明する。
図15は、L10寿命が1000時間であるワイブルスロープ1.85の寿命分布を示している。
まず初めに、図15のワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生させる(図6(B)の手順B22)。ワイブル乱数の発生方法は、後に説明する。
このように発生させたワイブル乱数は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片の寿命試験を行い、寿命データを得ることに対応している。
次に、得られた6個の乱数すべてが何時間以上になるかを調べる(手順B23)。調べたデータは、所定の記憶領域に記憶しておく。
以上の手順(B22,B23)を設定回数(例えば、5000回)繰り返す(手順B24)。なお、ワイブル分布特定手順B21は、乱数発生手順B22に含め、繰り返し毎に特定を行うようにしても良い。
この繰り返し手順の各回における6個の乱数すべてが何時間以上になる確率が高いかを演算し、累積確率で表す累積分布を演算する(手順B25)。図16は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個すべての試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。
この図から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である軸受では、1860時間以上の時間全数未破損となる状況が10%の確率でしか起こり得ない稀な状況であることが分かる。すなわち、1860時間以上の時間6個すべての試験片が未破損という状況は、その軸受のL10寿命が90%の確率で1000時間以上である状況といえるので、1860時間はこの状況での全数打切り時間ということになる。
このように、上記累積分布(図16)において、上記入力情報のうちの信頼度(L10寿命の場合は90%)に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする(手順B26)。
このように読み取った時間を、全数未破損時の打切り時間として、図14(A)の画面の一部に示したように、表示する(手順B27)。なお、図14はL10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された打切り時間は、L10寿命を1000時間とした場合の打切り時間よりも長い時間となっている。
上記ワイブル分布の特定(手順B21)の詳細について説明する。一般に軸受の寿命分布は次式1)のワイブル分布に従うと言われている。
Figure 0004859634
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
ワイブル分布は、3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。参考として、図17に各種パラメータを変化させた時のワイブル分布の変化を示す。ワイブルスロープmは、分布の形状を支配するパラメータであり、この値が小さいほどばらつきの大きい分布ということができる。尺度因子αは、横軸(寿命)のスケールを変化させるもので、この値が大きいほど寿命は相対的に長くなる。最小寿命γは、寿命分布の横軸(寿命)を単にシフトさせるものである。
この実施形態では、ワイブル乱数を発生させるが、この乱数を発生させるためにはワイブル分布の3つのパラメータを決定する必要がある。決め方の手順は、例えば以下のようになる。
1) ワイブルスロープmを実績から決定する。
2) 乱数を発生させたい分布の信頼度(例えばL10寿命であるか、あるいはL50寿 命であるか、及び寿命の値)を決定する。
3) 信頼度から求めたワイブルスロープmから、最小寿命γを所定の数式を使って決定 する。例えば、L10寿命またはL50寿命から求めた尺度因子αから、
最小寿命γを、例えば、以下の2)式を使って決定する。
この式は、1990年制定のISOの最小寿命であり、実験値からの回帰式である。
Figure 0004859634
これは、R≦10の値で、R=0(L10寿命でのa1)のとき、この式は1になるという式である。過去のISOの最少寿命考慮の式では、L10寿命以下の寿命は、この式にL10寿命を書けた値ということで定義されている。Rは信頼度に対応する値(100−Rが信頼度となる値)である。
なお、最小寿命の定め方については、各種の規格(例えばISO)において、時代と共に変更される場合があるが、規格の変更に伴い、実施時の規格に応じた定め方を採用すれば良い。また、最小寿命は、材料試験条件によっても変化するのでより一般的な式で記述するほうが良いとの主張もあり、適宜の値を用いれば良い。
ワイブル乱数の発生(手順B22)につき説明する。乱数とは、定性的にはでたらめな数列であって、発生頻度が均一(等確率)で、その発生に規則性がない(無規則性)というものであるが、完全な乱数を発生させることは不可能である。そこで、コンピュータで発生させることのできる疑似乱数を使う。簡易な乱数発生アルゴリズムでは、例えば10進法で20桁ぐらいの周期性が見られるが、周期性が6千桁以上の周期性となるものもあり、このような周期性の少ない乱数発生アルゴリズムを用いることが好ましい。
この実施形態では、一様な乱数ではなく、ワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を発生させる。このため発生方法には工夫が必要になる。確率密度関数が複雑な場合、その分布に従う乱数を発生するには棄却法と呼ばれる方法を用いればよく、この実施形態においても、棄却法を用いる。
確率密度関数f(x)の変域が図18のように、0からX0 の範囲にあるとみなされるものとし、その変域内でのf(x)の最大値をMとする。RNを区間〔0,1 〕での一様擬似乱数とするとX0 ・RNにより、区間〔0,x0〕での一様擬似乱数xiを発生することができる。同様にして、M・RNにより、区間〔0,M 〕での一様擬似乱数yiを発生することができる。そこで、このようにして発生させた乱数xi,yiがf(xi)> yi となる条件を満足する場合には、乱数xiは与えられた確率密度分布に従うものとして採用し、満足しなければ、その乱数xiを不採用とする。この作業を繰り返し、確率密度分布に従う確率で乱数xiを採用し、確率密度分布に従う乱数の数列を作っていく方法を棄却法という。この方法は、条件に合わない乱数を捨てることになるので乱数発生法としては効率がよくないが、よい一様乱数さえ得られれば原理的に正しい数列が得られる方法である。
図6に示した打切り時間見積もりプログラム6についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この打切り時間見積もりプログラム6は、整理すると、次の手順により構成される。
この実施形態の寿命打切り試験の打切り時間見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(B1)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順(B2)とを含む。
上記打切り時間演算手順(B2)は、上記の式1).に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(B21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(B22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(B23)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順(B24)と、
この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの、全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(B25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手順(B26)と、
読み取った時間を表示装置2の画面に表示する手順(B27)とを含む。
図6(B)に示す打切り演算手順B2は、全数未破損の場合についての手順であるが、試験中に一部の軸受に破損が生じた場合は、図7に示す流れ図に従って打切り時間を求める。
設定している全数未破損の打ち切り時間よりも短い時間で破損が発生しても、要求品質を満たせなくなる確率が高くなる最短破損時間よりは長い破損データが得られた場合、試験を継続すれば要求品質を満たすことができる可能性がまだある。この状況は、実際にしばしば起こる状況である。
全数打切り時間を経過せずに破損が発生した場合、目標品質を保証するためには、残存試験片の打ち切り時間は初めに設定した全数打切り時間よりも長くなることは容易に推測できる。ここでは、要求品質を満たすための残存軸受の打切り時間を見積もる方法について説明する。
図7の流れ図における注釈部分を参照し、具体的数値例と共に説明する。基本的な手順は、図6と共に前述した手順と同様である。図6(B)との違いは、図7の手順B23′における発生した乱数の最も短かった時間以外の残存データが何時間以上になるかを調べる点にある。なお、図7の手順は、破損個数が2個以上の場合にも適用でき、また破損無しの場合にも適用できるが、まず、破損個数が1個の場合を説明する。
以下、理解を簡単にするため、具体例を挙げる。試験個数6個で、その軸受のL10寿命が1000時間以上であると保証するための試験がしたい場合、前記のように1860時間が全数打切り時間になるが、1000時間で破損が発生したとする。1000時間はそのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間412時間(後に図20と共に説明する)よりも長いので、その製品のL10寿命が1000時間以上であると保証できる可能性がまだ残っていることになる。そこで、このまま試験を継続した場合、残存試験片が何時間以上未破損であれば、L10寿命が1000時間以上であると保証できるのかについて検討する。
ここで、試験の寿命分布のワイブルスロープは1.85であると仮定する。図7において、ワイブル分布の特定手順B21′は、図6の手順B21と同様であり、図6の手順の実行時に特性したワイブル分布を用いても良い。このワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生し(手順B22′)、得られた6個のワイブル乱数を昇順に並び替え、一番短い時間以外の残存データを得る。これは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験し、一番短い寿命データ以外の寿命データを得ることに対応している。次に、一番短い時間以外の残存データが何時間以上になるかを調べる(手順B23′)。
以上の手順B22′,B23′を設定回数(例えば5000回)だけ繰り返す(手順B24′)。
この繰り返し過程で、一番短い時間以外の残存データが何時間以上になる確率が高いかを調べる。図19は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個中5個の試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。この累積確率分布を演算する(手順B25′)。
図19から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命であるロットでは、6個中6個の試験片が2626時間以上の時間未破損で試験が継続する状況が10%の確率でしか起こり得ない稀な状況であることが分かる。すなわち、2626時間以上の時間6個中5個の製品が未破損という状況は、そのロットの製品のL10寿命が90%の確率で1000時間以上であるといえる状況なので、2626時間は6個中1個が全数打切り時間(1860時間)以内で破損した時の新たな打切り時間の設定値ということになる。このように、上記累積分布から、信頼度(L10寿命では90%)に対応する時間を読み取って1個破損時の打切り時間と定める(手順B26′)。このように読み取った結果を、図14(A)のように、1個破損時の打切り時間として表示装置2の画面2aに表示させる。なお、図14は、L10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された打切り時間は、L10寿命が1000時間とした場合の打切り時間よりも長い時間となっている。
この方法を応用すれば、試験対象軸受中、2,3…n個の試験片が打切り時間以内で破損した場合でも、要求寿命を満たすための残存試験片の打切り時間を設定することができる。i個(iは試験個数未満の零を含む任意の整数)破損した場合の打切り時間を演算する手順を、図7と共に整理すると、次の手順となる。なお、特に説明する事項の他は、図6(B)と共に説明した手順と同じである。
図7において、i個破損した場合、乱数分析手順(B23′)は、乱数発生手順(B22′)で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とする。
累積分布を演算する手順(B25′)は、繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とする。
打切り時間とする手順B26′は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とする手順とする。
これにより、試験対象軸受中、2,3…n個の試験片が打切り時間以内で破損した場合でも、要求寿命を満たすための残存試験片の打切り時間を設定することができる。
図4と共に打切り時間見積もり装置につき説明する。この打切り時間見積もり装置は、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力装置3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7と、実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置2の画面に出力する打切り時間演算手段8とを含む。
打切り時間演算手段8は、ワイブル分布特定手段9、乱数発生手段10、乱数分析手段11、繰り返し手段12、累積分布演算手段13、対応時間読み取り手段14、および読取結果出力手段15を備える。
ワイブル分布特定手段9は、図6の手順B21の処理を行ってワイブル分布を特定する手段である。
乱数発生手段10は、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段であり、図6の手順B22で説明した処理を行う。
乱数分析手段11は、乱数発生手段10で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段であり、図6の手順B23で説明した処理を行う。
繰り返し手段12は、乱数発生手段10による上記ワイブル乱数の発生、および乱数分析手段11による演算を設定回数繰り返す繰り返させる手段であり、図6の手順B24で説明した処理を行う。
累積分布演算手段13は、乱数発生手段10によるワイブル乱数の発生および乱数分析手段11による演算の繰り返しの各回における発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段であり、図6の手順B25で説明した処理を行う。
対応時間読み取り手段14は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする手段であり、図6の手順B26で説明した処理を行う。
読取結果出力手段15は、対応時間読み取り手段14で読み取った打切り時間を表示装置2に出力させる手段であり、図6の手順B27で説明した処理を行う。
この構成の打切り時間見積もり装置は、全数未破損の場合の打切り時間を見積もるものであるが、一部の軸受に破損が生じた場合にも適用できる装置とする場合は、図4の構成における一部を次のように変更する。
すなわち、乱数分析手段11は、乱数発生手順10で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとする。
累積分布演算手段13は、上記繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとする。
対応時間読み取り手段14は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i個破損時の打切り時間とするものとする。
この方法によると、このように、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させて全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる過程を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から要求寿命の信頼度に対応する時間を読み取って打切り時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、打切り時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、かつ信頼性の高いものとできて、打切り試験の結果の信頼性を向上させることができ、また熟練者でなくても、打切り時間の適切な見積もりが行えるとい効果が得られる。
次に、図8ないし図12等と共に、図1の設計過程S1のうち、試験中止基準時間の見積もり過程となる方法につき説明する。この見積もり方法は、打切り時間の見積もり方法で述べた打切り試験において、その時間までに機械部品に破損が生じると要求信頼度の要求寿命が満たせないとして試験を中止する基準とする試験中止基準時間を見積もる方法である。
この試験中止基準時間見積もり方法は、図8に示すコンピュータ1に、試験中止基準時間見積もりプログラム19を実行させることで行う。コンピュータ1は、実行するプログラムが試験中止基準時間見積もりプログラム19であることを除き、図3と共に前述したものと同じである。ここでは、図3の打切り時間見積もりプログラム6を記憶したコンピュータ1に、試験中止基準時間見積もりプログラム19を記憶させている。打切り時間見積もりプログラム6と、試験中止基準時間見積もりプログラム19とは、互いに一部の手順を共通とするもの、例えば両プログラム6,19が一本のプログラムとして構成されたものであっても良い。
コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および試験中止基準時間見積もりプログラム19により、図9に各機能達成手段をブロックで示した寿命打切り試験の試験中止基準時間見積もり装置が構成される。同図の打切り時間見積もり装置の構成については、後に説明する。
図8の 試験中止基準時間見積もりプログラム19はコンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図11に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
この試験中止基準時間見積もり方法は、図10に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程C1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程C2とからなる。
入力過程C1は、打切り時間見積もり方法につき、図5の流れ図および図13の入力画面2aと共に説明した過程と同じであり、この実施形態のように、同じコンピュータ1に打切り時間見積もりプログラム6と試験中止基準時間見積もりプログラム19の両方を実行させる場合は、打切り時間見積もり方法の入力過程A1(図5)を両見積もり方法に兼用する。
試験中止基準時間見積もりプログラム19は、図11(A)に示すように促し画面出力手順D1と試験中止基準時間演算手順D2とからなるが、促し画面出力手順D1は、打切り時間見積もりプログラム6における促し画面出力手順B1(図6(A))と兼用される。この促し画面出力手順B1(D1)で入力画面が表示されかつ必要な情報が入力された状態で、次に入力される実行命令の違いによって、図6(A)の打切り演算手順B2が実行されるか、または図11(A)の試験中止基準時間演算手順D2が実行されるかが選択される。例えば、打切り演算手順B2は、入力画面2a(図14)中のOKキーをクリックすることで実行されるものとしたが、試験中止基準時間演算手段D2は、入力画面2aに表示された別の所定のキー(図示せず)をクリックに応答して実行されるものとする。
試験中止基準時間演算手順D2は、図11(B)に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順D21〜D27の具体的な処理例を併記してある。
なお、この試験中止基準時間演算手順D2の説明の前に、試験中止基準時間について説明する。打切り試験において、設定している打切り時間よりも短い時間で、試験軸受の破損が生じる場合がある。この状況は実際でもしばしば起こる状況である。従来では、そのような状況になった場合、試験を継続するか中止するかの明確な判断ができなかった。例えば、目標品質がL10寿命で1000時間を保証する試験を行っている時に、10時間で破損が発生した場合、目標品質のL10寿命より明らかに短い時間で破損しているので、そのロットの寿命はきわめて短いだろうということが常識的に推測でき、試験を中止したほうが良いという判断ができる。しかし、打切り時間よりもかなり短いものの、判断に困る程度の時間(例えば500時間等)で破損が発生する場合には、寿命試験の熟練者にも試験中止の判断が難しくなる。この実施形態は、そのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間を試算する方法である。
図11(B)と共に、試験中止基準時間演算手順D2を説明する。基本的な手順は、打切り試験における打切り時間を見積もる手順と同様である。以下、説明を簡単にするため、具体例を挙げる。試験個数6個で、その製品のL10寿命が1000時間以上であると保証するための試験がしたい場合を考える。ここで、試験の寿命分布のワイブルスロープは1.85であると仮定する。まず初めに、L10寿命が1000時間のワイブル分布を上記と同様に特定する(D21)。このワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生する(D22)。これは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験し、寿命データを得ることに対応している。
次に、得られた6個のワイブル乱数を昇順に並び替え、最も小さい乱数が何時間以上になるかを調べる(D23)。以上の手順D22,D23を設定回数(例えば、5000回)回繰り返す(D24)。
この繰り返し過程で、最も小さい乱数が何時間以上になる確率が高いかを調査する。図20は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個中最も性能の悪い試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。この累積確率分布を演算する(D25)。
図20において、L10寿命の信頼度である90%を100%から減算した値である10%の値を読むと、412時間という値が得られる。すなわち、図20から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命分布をもつロットでは、6個中最も性能が悪い試験片でも412時間以上は未破損で試験が継続する確率が90%であることが分かる。この結果は、412時間以内の時間で1つでも破損が発生するという状況は、90%以上の確率で1000時間のL10寿命を保証できない状況を示しているので、412時間はそのロットの寿命が要求品質を満たせなくなる確率が高くなる破損時間ということになる。
このように、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度(L10寿命では90%)を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする(D26)。このように読み取った結果を、図14(B)に出力画面例を示すように、表示装置2の出力画面2bに表示する(D27)。なお、図14(B)は、1個が破損した場合の試験中止基準時間の他に、2個以上が破損した場合の試験中止基準時間を併せて表示している。2個以上破損の場合については、後に説明する。また、同図は、L10寿命が1622時間の場合のデータであり、表示された試験中止基準時間時間は、L10寿命が1000時間とした場合の試験中止基準時間よりも長い時間となっている。
図11に示した試験中止基準時間見積もりプログラム19についての上記の説明は、具体的数値を例にとって説明したが、この試験中止基準時間プログラム6は、整理すると、次の手順により構成される。
この実施形態の試験中止基準時間見積もりプログラム19は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(D1)と、
実行命令の入力に応答して、打切り時間を演算し上記表示装置の画面に出力する打切り時間演算手順(D2)とを含む。
上記打切り時間演算手順(D2)は、上記の式1).に従うワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順(D21)と、
特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(D22)と、
この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順(D23)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順(D24)と、
この繰り返し手順(D24)の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順(D25)と、
この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、1個破損時の打切り時間とする手順(D26)と、
この読み取った時間を表示装置2の画面に表示する手順D27)とを含む。
この方法を応用すれば、試験軸受中2,3…n個の試験片が何時間以下で破損したら、要求寿命を満たせなくなる確率が高くなるかという計算も行える。
図12は、試験軸受中、2個以上が破損した場合の試験中止基準時間を見積もるプログラムにおけるコンピュータ演算処理過程D2を示す。
図11の手順と異なる手順は次の事項であり、その他の図11の手順と同じである。図12の例では、乱数分析手順D22′は、上記乱数発生手順D22′で発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手順とする。
累積分布を演算する手順D25′は、上記繰り返し手順D24′の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順とする。
対応時間読み取り手順D26′は、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する値を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とする手順とする。
以上の手順により、試験軸受中2,3…n個の試験片が何時間以下で破損したら、要求寿命を満たせなくなる確率が高くなるかという計算が行える。計算結果は、図14(B)のように表示装置2の画面2bに表示する。
図9と共に、試験中止基準時間見積もり装置につき説明する。この試験中止基準時間見積もり装置は、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力手段3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、打切り試験の対象となる、軸受またはその他の機械部品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命の信頼度の選択、および選択された信頼度における要求寿命の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7と、実行命令の入力に応答して、試験中止基準時間を演算し演算結果を表示装置2の画面に表示させる試験中止基準時間演算手段18を含む。
この実施形態では、コンピュータ1のハードウェアおよび促し画面出力手段7が、打切り時間見積もり装置と兼用される。
上記試験中止基準時間演算手段18は、次のワイブル分布特定手段9A、乱数発生手段10A、乱数分析手段11A、繰り返し手段12A、累積分布演算手段13A、対応時間読み取り手段14A、および読取結果出力手段15Aを備える。
上記ワイブル分布特定手段9Aは、図11の手順D21の処理を行ってワイブル分布を特定する手段である。
乱数発生手段10Aは、上記のように特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる手段であり、図11の手順D22で説明した処理を行う。
乱数分析手段11Aは、乱数発生手順10Aで発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する手段であり、図11の手順D23Dで説明した処理を行う。
繰り返し手段12Aは、乱数発生手順10Aおよび乱数分析手順11Aの処理を設定回数繰り返させる手段であり、図11の手順D24で説明した処理を行う。
累積分布演算手段13Aは、乱数分析手段10Aによるワイブル乱数の発生および乱数分析手段11Aによる演算の繰り返し過程の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表した累積分布を演算する手段であり、図11の手順D25Dで説明した処理を行う。
対応時間読み取り手段14Aは、上記累積分布において、上記入力情報のうちの、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って、1個破損時の試験中止基準時間とする手段であり、図11の手順D27で説明した処理を行う。
この構成の試験中止基準時間見積もり装置は、1個破損の場合の試験中止基準時間を見積もるものであるが、2個以上の軸受に破損が生じた場合にも適用できる装置とする場合は、図9の構成における一部を次のように変更する。
すなわち、乱数分析手段11Aは、乱数発生手段10Aで発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数からi個(iは、上記試験個数未満の零を含む任意の整数)を除く残存ワイブル乱数が何時間以上であるかを演算するものとする。
累積分布演算手段13Aは、繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうち、最も短い乱数から上記i個を除く残存ワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算するものとする。
対応時間読取手段14Aは、上記累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、i+1個破損時の打切り時間とするものとする。
この打切り時間見積もり方法・装置、および試験中止基準時間見積もり方法・装置の補足説明および応用につき説明する。
上記のように全数打切り時間を表示装置2の画面に出力させた後、軸受の納期が全数打切り時間よりも長いことを確認する。ここで、全数打ち切り時間より短い時間で破損が生じた場合、より長い試験が必要になるので、複数個破損時打切り時間と納期の関係も留意したほうがよい。次に、1個目の試験中止基準を見て、この1個目の試験中止基準以下の時間で破損が発生すると、試験を中止したほうが良いという判断基準も確認する。以上の検討が終了次第、試験は実施すればよい。
もし、試験中に、1個目の試験中止基準以上、全数打切り時間以下で破損が発生した場合、例えば2000時間で剥離が発生したならば、図14の結果によると、次の打切り時間は4285時間に再設定し、試験中止基準は3個の試験片が2393時間以下で破損する状況に再設定する。
この見積もり方法は乱数を使って計算を行っているため、計算結果は毎回同じにならないことに注意が必要である。表2に、この実施形態のプログラムを用い、目標品質、試験個数、ワイブルスロープを変えて同じ計算を5回ずつ行った結果を示す。
Figure 0004859634
このプログラムで計算された結果は、最大3%程度の確率的な誤差が生じる。
図21に目標品質による全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間と試験中止時間は、目標品質が大きくなるにつれて、線形に長くなることが分かる。
図22に試験個数による全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間と試験中止時間は、試験個数が多くなるにつれて、指数関数的に短くなることが分かる。これは、試験個数が多くなると、打切り時間が短くても目標品質を保証できるためである。また、試験中止時間が短くなる理由は、試験個数が多くなると、1個短寿命品が出ても他の試験片が長寿命であれば、目標品質を保証できる可能性が出てくるためである。
図23にワイブルスロープによる全数打切り時間と試験中止基準(1個破損時)の計算結果の変化を示す。打切り時間は、ワイブルスロープが大きくなるにつれて指数関数的に短くなり、試験中止時間はワイブルスロープが大きくなるにつれて長くなることが分かる。これは、同じL10寿命であればワイブルスロープが大きいほど寿命分布が全体的に短寿命側に分布するためである。また、試験中止時間が長くなる理由は、ワイブルスロープが大きくなると、短寿命側の寿命の発生頻度が小さくなり、短寿命が発生する可能性が少なくなるためである。
この方法によると、このように、試験対象の寿命分布となるワイブル分布を用い、その分布に従った乱数を試験個数分ずつ発生させてそのうちの最も短いワイブル乱数が何時間以上であるかを調べる処理を繰り返し、この処理を繰り返して累積分布を演算し、この累積分布から、100%から信頼度を減算した値に対応する時間を読み取って1個破損時の試験中止基準時間とするコンピュータシミュレーションを行うため、試験中止基準時間の適切な見積もりが、簡単、迅速に行え、また熟練者でなくても、試験中止基準時間の適切な見積もりが行えるという効果が得られる。
以上のことから、打切り時間を短くするためには(納期を早めるためには)、
(1)L10寿命が短くなる試験条件を採用すること、
(2)試験個数をできるだけ多くすること、
(3)ワイブルスロープが大きくなる試験条件(寿命がそろう試験条件)で試験を実施することが重要になるといえる。
図24,図15,図16と共に、打切り試験における試験個数を設計するための手順を示す。ここでは、プログラムについての説明は省略し、説明を簡単にするため、具体例を挙げる。今、試験機の台数と試験片の個数に十分な余裕があるが、納期が3ヶ月(約2100時間)で決まっている状況で、その製品のL10寿命が1000時間以上であると保証するための試験がしたい状況を想定する。ここで、この試験の寿命分布のワイブルスロープは清浄油潤滑下での軸受の寿命試験の実績から1.85であると仮定する。
まず、適当な試験個数として6個の試験を行うとし、L10寿命が1000時間以上であると保証するための全数打切り時間を試算する。図15は、L10寿命が1000時間であるワイブルスロープ1.85の寿命分布を示している。まず初めに、図15のワイブル分布から6個のワイブル乱数を発生する(図24のステップT1)。これは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命が1000時間の寿命である6個の試験片の寿命試験を行い、寿命データを得ることに対応している。次に、得られた6個の乱数すべてが何時間以上になるかを調べる(T2)。さらに、以上の調査を5000回繰り返し、6個の乱数すべてが何時間以上になる確率が高いかを調査する(T3)。
図16は、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である6個の試験片を寿命試験した時、6個すべての試験片が破損することなく試験が継続する時間とその発生頻度の関係(累積確率分布)を示している。この図から、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1000時間の寿命である軸受では、1860時間以上の時間全数未破損となる状況が10%の確率でしか起こり得ない稀な状況であることが分かる。すなわち、1860時間以上の時間6個すべての試験片が未破損という状況は、その軸受のL10寿命が90%の確率で1000時間以上である状況といえるので、1860時間は、この状況での全数打切り時間ということになる。
今、納期は2100時間であるので、1860時間の全数打切り時間は設計上問題ない値になる。
このように、累積分布が90%になる時間である1860時間を読み取り(T4)、納期等の予定の試験可能時間と比較する。全数打切り時間が納期(予定の試験可能時間)よりも長くなる場合は、乱数発生個数を増やしながら、上記ステップT1〜T4を繰り返し、全数打切り時間が予定の試験可能時間内になる最小の個数を、打切り試験における試験個数として定める(T5)。また、全数打切り時間が納期(予定の試験可能時間)よりも十分に短くなる場合は、乱数発生個数を減らしながら、上記ステップT1〜T4を繰り返し、全数打切り時間が予定の試験可能時間内になる最小の個数を、打切り試験における試験個数として定める。
図25ないし図32は、打切り試験における判定過程(図1のS3)となる、寿命見積もり方法を示す。この寿命見積もり方法は、軸受を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、打切り時間後の試験継続等を行ったときに、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法である。
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等に適用される。
この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、図25に示すコンピュータ1に、寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21を実行させることで行う。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および寿命見積もりプログラム21により、図26に各機能達成手段をブロックで示した寿命見積もり装置が構成される。同図の寿命見積もり装置の構成については、後に説明する。
寿命見積もりプログラム21は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図28および図29に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は後に説明する。
この寿命見積もり方法は、図26に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程E1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程E2とからなる。
入力過程E1では、図31に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として打切り試験の対象となる軸受のワイブルスロープの値、試験開始時の試験個数、未破損個数および未破損時間の入力を促す表示を行わせる。ワイブルスロープの値には、試験対象となる型番の軸受における実績値を入力する。
実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。
図27のコンピュータ演算処理過程E2では、入力された未破損時間,未破損個数等からその試験対象品を含むロットの寿命水準となる寿命を演算し、その演算結果を、図272のように出力画面2bに表示する。すなわち、少なくともいえる寿命の計算結果が同図のように出力される。
図25の寿命見積もりプログラム21は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図28,図29に流れ図で示す手順を備える。図28に示すように、寿命見積もりプログラム21は、促し画面出力手順F1と寿命演算手順F2とでなり、促し画面出力手順F1では、図31と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、寿命演算手順F2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図27の入力過程A1であり、同図のコンピュータ演算処理過程E2は図28の寿命演算手順F2を実行する過程である。
寿命演算手順F2は、図29に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順G21〜G26毎の具体的な処理例を併記してある。
理解の容易のため、図29の流れ図を説明する前に、同図の流れ図の処理につき、全数未破損である場合に限定した処理を、具体的数値例と共に、図30と共に説明する。
図30は、継続している全数未破損の打切り試験の途中結果から寿命を算出するための手順を示す。今、目標品質がL10寿命で1000時間を保証するための試験を行っている状況を考える。納期が3ヶ月(2100時間)であったため、試験個数を6個用意して全数打切り時間が1860時間の打切り試験を開始した。
試験は破損が発生することなく継続し、全数打切り時間が1860時間を経過したので目標品質を保証できるという結果が得られた。試験を終了してもよいが、試験機を他の調査で今すぐ使用するという状況ではないので、その製品の寿命水準を把握しておくという目的で更に試験を継続するということになった。
今、試験が継続して3000時間が経過し、試験片6個全数未破損という状況から言える寿命を試算する。まず、現在の全数未破損時間である3000の1/10倍(=300時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生し(手順G21′)、得られた乱数6個すべてが3000時間以上になるかどうかを調べる(手順G22′)。
次に、この作業を5000回繰り返し、5000回中何回の頻度で3000時間を越える状況が発生するのかを調べる(G23′)。これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命300時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、どのくらいの確率で3000時間全数未破損になるかを調査していることに対応する。
さらに、この確率の調査を3000時間よりも1/10、2/10、3/10…11/10 …200/10倍のL10寿命を持つワイブル分布で行う(G24′)。このように得られた確率につき、横軸をそのL10寿命、縦軸を3000時間全数未破損の確率としたものが図33(A)になる。この図は、どのような寿命分布であれば3000時間全数未剥離になる確率が高いかということを示している。10%の頻度でしか3000時間全数未剥離のデータが得られない寿命分布は、L10寿命が1530時間のものである。したがって、3000時間全数未剥離のデータが得られる場合は、90%の確率でL10寿命が15630時間以上であるといえる。このように、発生確率が10%(L10寿命の信頼度90%を100%から引いた値)に対応する時間を読み取って、その試験対象品のロットのL10寿命が15630時間以上であると読み取る(G25′)。
以上が全数打切り試験の途中結果から寿命を算出する方法である。
次に、破損が生じた場合を含む寿命打切り試験から言える寿命について説明する。上記の表1の打切り試験の解釈(2) の項目に示すように、打切り試験の破損状況が複雑でも、その試験片の寿命水準を確認したい状況を想定している。例えば、試験個数10個の試験を行い、その内の2個の試験片は破損したが、その他の8個の試験片は未破損であったため、目標品質を満たすことができたが、引き続き試験を継続して、その試験片の寿命水準を確かめたい状況を想定している。
ここでは、総試験軸受中に少数の軸受に破損が発生した状況から寿命を試算する方法について説明する。図29の流れ図は、破損が生じた場合を含む寿命打切り試験から言える寿命の演算手順を示す。
図29の流れ図において、具体例を示す注釈部分を参照して説明する。基本的な手順は、図30と共に前述した全数打切り試験結果から寿命を見積もる手順と同様である。
以下、説明を簡単にするため、具体例を挙げる。目標品質がL10寿命で1000時間を保証するための試験を行っている状況を考える。納期が5ヶ月(3600時間)であったため、試験個数を6個用意して全数打切り時間が1860時間の打切り試験を開始した。試験を継続している途中、1個の試験片が1000時間で破損した。1000時間は、試験を中止する基準である全数打切り時間の設定値1860時間よりも短いが、試験を中止する基準(要求品質が満たされないとして試験を中止する基準時間)412時間を越えていたため、引き続き試験を継続することになった。目標品質を満たすためには、残存試験片の打切り時間が2626時間になるが、納期的には問題ない状況である。試験を継続した結果、残存試験片が2626時間で破損しなかったため、その製品は目標品質を満たすことができた。試験を終了してもよいが、試験機を他の調査で今すぐ使用するという状況ではないので、その製品の寿命水準を把握しておくという目的で更に試験を継続するということになった。
なお、全数未破損時の打切り時間、一部破損時の打切り時間、および試験中止基準時間は、適宜の方法で見積もることができるが、ここでは説明を省略する。
今、試験を継続して3000時間経過し、試験片6個中5個が未破損という状況から言える寿命を試算する。
まず、現在の全数未破損時間である3000時間よりも、適宜の設定割合、例えば1/10倍(=300時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生する(手順G21)。
次に、得られた6個の乱数を昇順に並び替え、最も小さな乱数以外の5個のデータが3000時間以上になるかどうかを調べる(手順G22)。
次に、この作業を設定回数(この例では5000回)繰り返し、5000回中何回の頻度で3000時間を越える状況が発生するのかを調べる(手順G23)。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命300時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、一番短寿命である試験片以外の5個の試験片がどのくらいの確率で3000時間未破損になるかを調査していることに対応する。
さらに、この確率の調査を3000時間の1/10、2/10、3/10…11/10 …200/10倍のL10寿命を持つワイブル分布で行う(手順G24)。これは、この方法で寿命演算できる最短寿命を3000時間の1/10、最長寿命を3000時間の200/10倍と設定した場合の演算範囲である。
このように順次割合変更しながら、上記手順G23で得た確率について、横軸をL10寿命、縦軸を3000時間6個中5個未破損の確率としたものを作図したものが、図34(B)になる。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短寿命である試験軸受以外の5個の試験片が3000時間全数未剥離になる確率が高いかということを示している。10%(L10寿命の信頼度である90%を100%から引いた値)の頻度でしか、3000時間6個中5個未剥離のデータが得られない寿命分布は、L10寿命が1099時間のものである。
したがって、最も短寿命である試験片以外の5個の試験片が3000時間全数未剥離になる状況は、90%の確率でL10寿命が1099時間以上である状況といえる。このように、寿命分布と、残存乱数が未破損時間以上全数未剥離になる確率の関係から、(100%)−(信頼度)の時間を読み取り、その軸受のロットの水準となる寿命とする(手順G25)。このように読み取った寿命を、表示装置2の出力画面2bに表示する(手順G26)。
以上が総試験軸受中の少数の試験軸受に破損が発生した状況から寿命を算出する方法である。ここで、この状況の試験は、1000時間全数未破損という状況と考えることもできるし、6個中5個の試験片が3000時間未破損という状況と考えることもできるので、どちらの状況で寿命を試算すればよいかという疑問が残る。このような時には、いずれを採用するかを適宜設定しておけば良い。例えば、2つの状況で寿命の試算を行い、寿命が長く見積もられるほうを採用してもよい。表3に6個の試験片が1000,2000,3000時間全数未剥離であったとき試算できる寿命と6個中5個の試験片が1000,2000,3000時間未剥離であったとき試算できる寿命を示す。
Figure 0004859634
6個中全数の未破損時間1000時間であった時試算できる寿命は、6個中5個の試験片が3000時間未剥離であったとき試算できる寿命よりも短くなることが分かる。この場合、例えば、寿命が長く見積もられるもの(6個中5個の試験片が3000時間未剥離であったとき試算できる寿命)を採用することにする。
表4に試験結果の別の例を示す。
Figure 0004859634
この試験結果は、(1) 6個中6個が3050時間以上、(2) 6個中5個が4000時間以上、(3) 6個中4個6000時間以上の3通りの解釈が可能である。表5にそれぞれの解釈で計算を行った結果を示す。
Figure 0004859634
計算の結果、6個中4個が6000時間以上であると解釈するほうが、最も長寿命側の判定ができる。したがって、この試験結果からは、L10寿命が1742時間以上であるといえる。
図28,図29に示した寿命見積もりプログラム21についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この寿命見積もりプログラム21は、整理すると、次の手順により構成される。
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(G1)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順(G2)とを含む。
上記寿命演算手順(G2)は、
未破損時間対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順(G1)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順(G24)により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
寿命出力手順(G26)とを含む。
設定割合寿命充足調査手順(G23)は、上記乱数発生手順(G1)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返させる手順(G231)と、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる確率調査の手順(G232)となる。
異寿命充足調査手順(G24)は、設定割合寿命充足調査手順(G23)を、所定の最長寿命に達するまで繰り返させる繰り返し手順(G241)と、繰り返し毎に上記設定割合を順次変更する割合変更手順(G242)とでなる。なお、設定割合の初期値(上記の具体例では1/10)は、手順G21で定めておく。
上記乱数発生手順(手順B21)の詳細について説明する。この手順B21は、ワイブル分布特定手順(G211)と、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる手順(G212)とでなる。ワイブル分布特定手順(G211)では、上記の式1)のワイブル分布を特定する。
この実施形態では、ワイブル乱数を発生させるが、この乱数を発生させるためにはワイブル分布の3つのパラメータを決定する必要がある。決め方の手順は、前述の各例と同様である。
ワイブル乱数の発生(手順G212)では、前述の各例と同様に、コンピュータで発生させることのできる疑似乱数を使う。
図26と共に寿命打切り試験からの寿命見積もり装置につき説明する。この寿命見積もり装置は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力装置3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Eと、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段22とを備える。
寿命見積もり演算手段22は、乱数発生手段23と、乱数分析手段24と、設定割合寿命充足調査手段25と、異寿命充足調査手段26と、寿命読み取り手段27と、読取結果出力手段28とを備える。
乱数発生手段23は、未破損時間対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、図29の手順G21で説明した処理を行う。上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
乱数発生手段23は、ワイブル分布特定部23aと、乱数発生部23bとからなる。ワイブル分布特定部23aは、図29の手順G211で説明した処理を行い、乱数発生部23bは、図29の手順G212Dで説明した処理を行う。
乱数分析手段24は、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる手段であり、図29の流れ図における手順G22で説明した処理を行う。
設定割合寿命充足調査手段25は、上記乱数発生手段23および上記乱数分析手段24の処理を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手段24で調べた未破損時間以上にある確率を調べる手段であり、図29の流れ図における手順G23で説明した処理を行う。
異寿命充足調査手段26は、上記設定割合寿命充足調査手段26の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段であり、図29の流れ図における手順G24で説明した処理を行う。
寿命読み取り手段27は、異寿命充足調査手段26の処理により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取る手段であり、図29の流れ図における手順G25で説明した処理を行う。
読取結果出力手段28は、寿命読み取り手段27で読み取った寿命を上記表示装置2に出力させる手段であり、図29の流れ図における手順G26で説明した処理を行う。
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命水準を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命水準を求めることができる。
図35〜図44は、加速試験における設計過程(S1)における必要試験個数見積もり過程となる方法を示す。この必要試験個数見積もり方法は、加速試験において、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数を見積もる方法である。
この加速試験における必要試験個数見積もり方法は、図35に示すコンピュータ1に、シミュレーションプログラムである必要試験個数見積もりプログラム31を実行させることで行う。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および必要試験個数見積もりプログラム31により、図36に各機能達成手段をブロックで示した必要試験個数見積もり装置が構成される。同図の必要試験個数見積もり装置の構成については、後に説明する。
必要試験個数見積もりプログラム31は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図38および図39に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
この必要試験個数見積もり方法は、図36に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程H1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程H2とからなる。
入力過程H1では、図40に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、および何倍であれば有為差有りと判断するかの倍数で示される寿命差を入力する。ワイブルスロープの値には、試験の実績値を入力することが好ましい。実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。また、有為差有りと判断する寿命差は、2倍を標準とすることが好ましい。以上の点に注意して、所定の条件を入力し、入力画面2aのOKボタンを押すと計算が開始される。
図37のコンピュータ演算処理過程H2では、入力されたワイブルスロープの値および寿命差等から、有為差有りと判断するために必要となる必要試験個数を演算し、その演算結果を、図41のように出力画面2bに表示する。
なお、この必要試験個数見積もり装置およびプログラムでは、計算が終了すると、例えば、試験個数と有為差有りと判断できる必要寿命差との関係を示すグラフ(例えば図42)を初めに出力し、この状態で所定の入力を行うことで、図41の計算結果の表示が、上記グラフ上に重ねて表示されるようにしてある。上記所定の入力は、例えば上記必要試験個数見積もりプログラムが複数のシートをブックとして持つ表計算ソフトウェアである場合、シートを選択する入力とされる。
図35の必要試験個数見積もりプログラム31は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図38,図39に流れ図で示す手順を備える。図38に示すように、必要試験個数見積もりプログラム21は、促し画面出力手順J1と必要試験個数演算手順J2とでなり、促し画面出力手順J1では、図40と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、必要試験個数演算手順J2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図37の入力過程H1であり、同図のコンピュータ演算処理過程H2は図38の寿命演算手順J2を実行する過程である。
必要試験個数演算手順J2は、図39に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順J21〜G27毎の具体的な処理例を注釈として併記してある。
理解の容易のため、具体的数値を上げ、同図の具体的処理例を参照して、各手順J21〜G27を説明する。
加速試験では、何ロットかの試験対象品を用意して寿命試験を行い、それらロット間の寿命差を比較することが多い。今、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ3個の場合、どのくらいの寿命差が出れば、それらロット間に寿命の有為差があるといえるのかということについて考える。
まず、あるL10寿命を持つワイブル分布(図43(A)で、ワイブルスロープは4としている)から乱数を3個発生し、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を算出する(J21)。算出方法は、従来の加速試験の結果からの寿命算出に用いられている適宜の方法を使用する。なお、L10寿命だけ、またはL50寿命だけを演算しても良いが、この実施形態では、L10寿命とL50寿命のそれぞれについて必要試験個数を計算するために、L10寿命とL50寿命の両方を算出している。
次に、同じL10寿命を持つワイブル分布から乱数を3個発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を上記と同じ方法で算出する(J22)。
次に、得られた1組のL10寿命とL50寿命の寿命比をそれぞれ算出する。すなわちL10寿命同士の寿命比、およびL50寿命同士の寿命比を算出する(J23)。
次に、これらの作業を設定回数(例えば1000回)繰り返し、設定回数組(1000組)のL10およびL50寿命の寿命比の確率分布(図43(B)と累積確率分布(図43(C)を作成する(J24)。
これらは、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとり、寿命試験を行った結果、どの程度の寿命差が出るのかを設定回数(1000回)確認することに対応している。
度数分布の図(図43(B))から、同じ寿命分布を持つロットから試験片を抜きとって試験を行ったにもかかわらず、寿命はばらついていることが分かる。その寿命比のばらつきを、所定信頼度区間、例えば累積確率分布の5%と95%の区間(90%信頼区間)として定義すると、その寿命ばらつきは、図43(C)に示したように0.39〜2.57倍であると算出できる。
この結果は、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとって寿命比較を行っても、90%のものは0.39〜2.57倍の間で寿命比がばらついてしまうことを示している。逆にいうと、ばらつき内の最大値である2.57倍以上の寿命差があれば、そのロット間の寿命分布が異なっている可能性が高いということになるので、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ3個の場合、有為差を判断できる寿命差は2.57倍以上であるといえる。
最後に、試験個数を増やして、有意差を判断できる寿命差を上述と同様な手順で算出し、試験個数と必要寿命差のグラフ(図43(D))を作成する(J25)。この図から、ワイブルスロープが4の試験における試験個数と有為差を判断する必要寿命差が分かる。 今、2倍以上の寿命差がある時、そのロット間に寿命の有為差があるといえる試験個数を信頼性の高い算出寿命を得るための必要試験個数と定義する。この時、ワイブルスロープが4の試験における必要試験個数は、同図によると、L10寿命で評価する場合8個、L50寿命で評価する場合3個ということになる。通常、客先からはL10寿命での評価が要求されるので、試験個数は8個にして試験を実施することになる。この場合、2倍以上の寿命差でロット間の寿命の有為差が判断できることになる。
図44に試験個数と有為差有りと判断できる必要寿命差の計算結果の例をワイブルスロープ0.8、1.85、4について示す。これらの図から、(1) 試験個数が増えるほど有為差有りと判断できる必要寿命差が低下すること、(2) L50寿命で有意差を判定するほうが必要な試験個数を少なくできること、(3) ワイブルスロープが大きい試験条件ほど必要試験個数を少なくできることが分かる。
図39の必要試験個数読み取り手順J26では、上記のように試験個数と必要寿命差のグラフから必要寿命差(この例では2倍)に対応する必要試験個数を読み取り、その結果を手順J27で画面に出力する。
以上が加速試験における必要試験個数を試算する方法である。試験個数と必要寿命差のグラフ(図43(D))からは、試験個数が決まっている時の寿命の有為差を判断するための必要寿命差を読み取ることもできる。同図の例では、試験片が3個しか用意できない場合、L10寿命では2.57倍の寿命差が必要であり、L50寿命では1.90倍の寿命差が必要になる。
図38,図39に示した必要試験個数見積もりプログラム31についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この必要試験個数見積もりプログラム31は、整理すると、次の手順により構成される。
この実施形態の寿命打切り試験からの必要試験個数見積もりプログラム31は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、および何倍であれば有為差有りと判断するかの倍数で示される寿命差の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(J1)と、
実行命令に応答して必要試験個数を演算し上記表示装置の画面に表示させる必要試験個数演算手順(J2)とを含む。
上記必要試験個数演算手順(J2)は、
試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を仮試験個数分発生させる第1乱数発生手順(J21)と、
この第1乱数発生手順と同じワイブル分布に従った乱数を上記仮試験個数分発生させる第2乱数発生手順(J22)と、
第1乱数発生手順(J21)で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順(J22)で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命との1組の寿命比を算出する寿命比算出手順(J23)と、
これら第1乱数発生手順(J21),第2乱数発生手順(J22),および寿命比算出手順(J23)を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する累積確率分布作成手順(J24)と、
上記仮試験個数を繰り返しの都度変えて、上記第1乱数発生手順(J21),第2乱数発生手順(J22),および累積確率分布の作成までの手順である累積確率分布作成手順(J24)を、上記仮試験個数が設定最小個数から設定最大個数まで変わる範囲で繰り返し、試験個数と必要寿命差の関係を示すグラフを作成する個数・寿命差関係グラフ作成手順(J25)と、
この手順で作成された試験個数と必要寿命差の関係のグラフから、上記入力情報の寿命差に対応する個数を読み取って必要試験個数と定める必要試験個数読み取り手順(J26)と、
この読み取った必要試験個数を表示装置に出力させる必要試験個数出力手順(J27)とを含む。
累積確率分布作成手順(J24)は、手順J21〜J23を設定回数繰り返させる手順J241と、その繰り返し過程が得て記憶したおいた寿命比から確率分布および累積確率分布を演算する手順J242とでなる。
個数・寿命差関係グラフ作成手順(J25)は、仮試験個数が設定最大個数になるまで手順J21〜J24を繰り返させる手順(J251)と、繰り返し毎に仮試験個数を1個増加する手順(J252)とでなる。仮試験個数の初期値となる設定最小個数は、各乱数発生手順J21,J22に初期値として設定しておく。
各乱数発生手順(J21,J22)の詳細について説明する。これらの手順J21,J22は、前述の式1).に従うワイブル分布を特定し、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる。
乱数発生手順J21,J22において、ワイブル分布の特定のための寿命(L10寿命)は、適宜想定した値を、これらの手順J21,J22の計算式等に設定しておいても良く、また入力手段3からの入力によって可変としても良い。
また、寿命比較算出手順J23において、発生したワイブル乱数からのL10寿命を求める演算は、加速試験において従来から用いられている中の適宜の寿命計算方法を用いれば良い。加速試験においては、破損の発生した時間からワイブルプロットで寿命を求めることが行われており、このような破損時間から寿命を求める計算方法を、上記寿命比算出手順における寿命計算方法として用いる。
この寿命計算には、例えば次の方法が採用できる。
(1) 寿命試験を実施する。
(2) 得られたデータ(破損した時間あるいは破損した負荷回数)を昇順に並び替える。
(3) これらデータを図76のグラフ(ワイブル確率紙)にプロットする(縦軸:累積破損確率、横軸:寿命)。
(4) 図76の紙にプロットしたデータの最適直線を最小二乗法で引く。このとき、L10 寿命以下の位置に最小寿命があるということになるので、L10 寿命の値を10分割し(何分割でも良いがフィッティングでの計算時間が妥当な時間になるように設定する)、累積確率0 %の位置にプロットを加える。10通りの最適曲線で最もデータがフィットする最適直線を採用する。
(5) そうすると、ワイブルスロープがこの線の傾き、最小寿命は、L10 寿命の値を10分割のいずれかの値、L10 寿命(ワイブルスロープが累積確率10%交わる寿命)と尺度因子αの関係からαを決定できる。
この必要試験個数の見積もり方法は、このようにワイブル分布に基づくシミュレーションにより必要試験個数を求めるため、目的の信頼性の算出寿命を得るための必要試験個数を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても必要試験個数を試算することができる。
図36と共に加速試験における必要試験個数見積もり装置につき説明する。この必要試験個数見積もり装置は、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を使用環境よりも厳しい所定の環境条件におき、破損が発生した時間から寿命を算出する加速試験において、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数を見積もる装置であって、
演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、上記コンピュータ1に入力を行う入力手段3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、および何倍であれば有為差有りと判断するかの倍数で示される寿命差の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Fと、実行命令に応答して必要試験個数を演算しその演算結果を上記表示装置の画面に出力する必要試験個数演算手段32とを備える。
この必要個数演算手段32は、次の構成の第1乱数発生手段33、第2乱数発生手段34、寿命比算出手段35、累積確率分布作成手段36、個数・寿命差関係グラフ作成手段37、必要試験個数読み取り手段38、および必要試験個数出力手段39を有する。
第1乱数発生手段33は、試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を仮試験個数分発生させる手段であり、図39の流れ図における手順J21につき説明した処理を行う。
第2乱数発生手段34は、第1乱数発生手段33と同じワイブル分布に従った乱数を上記仮試験個数分発生させる手段であり、手順J22につき説明した処理を行う。
寿命比算出手段35は、第1乱数発生手段33で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手段34で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命との1組の寿命比を算出する手段であり、手順J23につき説明した処理を行う。
累積確率分布作成手段36は、上記第1乱数発生手段33,第2乱数発生手段34,および寿命比算出手段35の処理を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する手段であり、手順J24につき説明した処理を行う。
個数・寿命差関係グラフ作成手段37は、上記仮試験個数を繰り返しの都度変えて、上記第1乱数発生手段33,第2乱数発生手段34の処理および上記累積確率分布の作成までを行う累積確率分布作成手段36の処理を、上記仮試験個数が設定最小個数から設定最大個数まで変わる範囲で繰り返し、試験個数と必要寿命差の関係を示すグラフを作成する手段であり、手順J25につき説明した処理を行う。
必要試験個数読み取り手段38は、上記手順で作成された試験個数と必要寿命差の関係のグラフから、上記入力情報の寿命差に対応する個数を読み取って必要試験個数と定める手段であり、手順J26につき説明した処理を行う。
必要試験個数出力手段39は、この読み取った必要試験個数を表示装置に出力させる手段であり、手順J27につき説明した処理を行う。
図45ないし図52は、加速試験における設計過程(S1)における有為差判断の必要寿命差の見積もり過程となる方法を示す。この有為差判断の必要寿命差見積もり方法は、加速試験において、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断するために必要な寿命差を、倍率で示される値で見積もる方法である。
この有為差判断の必要寿命差見積もり方法は、図45に示すコンピュータ1に、乱数シミュレーションプログラムである有為差判断の必要寿命差見積もりプログラム41を実行させることで行う。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および必要寿命差見積もりプログラム41により、図46に各機能達成手段をブロックで示した必要試験個数見積もり装置が構成される。同図の必要試験個数見積もり装置の構成については、後に説明する。
必要寿命差見積もりプログラム41は、図48および図49に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
この必要寿命差見積もり方法は、図46に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程K1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程K2とからなる。
入力過程K1では、図50に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、並びに比較する水準1および水準2の2つのロットの各試験個数n1,n2の入力を促す表示を行われ、これらの情報を入力する。ワイブルスロープの値には、試験の実績値を入力することが好ましい。実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。また、試験個数は試験対象品の数や試験機の台数で制限される場合が多いが、より多くの試験対象品を用意することが望ましく、実際に行う試験個数を入力する。以上の点に注意して、所定の条件を入力し、入力画面2aのOKボタンを押すと計算が開始される。
図47のコンピュータ演算処理過程L2では、入力されたワイブルスロープの値、および2つのロットの各試験個数n1,n2から、有為差有りと判断するために必要となる寿命差を演算し、演算が終了すると、図51のように2水準間に必要な寿命差を表示する。
図45の必要寿命差見積もりプログラム41は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図48,図49に流れ図で示す手順を備える。図48に示すように、必要寿命差見積もりプログラム41は、促し画面出力手順L1と必要寿命差演算手順L2とでなり、促し画面出力手順L1では、図50と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、必要寿命差演算手順L2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図47の入力過程K1であり、同図のコンピュータ演算処理過程K2は図48の必要寿命差演算手順K2を実行する過程である。
必要寿命差演算手順L2は、図49に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には各手順L21〜L26毎の具体的な処理例を注釈として併記してある。
理解の容易のため、具体的数値を上げ、同図の具体的処理例を参照して、各手順L21〜L26を説明する。
今、あるL10寿命を持つワイブル分布(図52(A)で、ワイブルスロープは4としている)である加速試験で、2ロットの試験を行うとする。1ロット目(水準1)の試験個数n1が3個で、2ロット目(水準2)の試験個数n2も3個であるとする。
まず、そのワイブル分布に従って1ロット目の試験個数n1である3個の乱数を発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を算出する(L21)。算出方法は、従来の加速試験の結果からの寿命算出に用いられている適宜の方法を使用する。なお、L10寿命だけ、またはL50寿命だけを演算しても良いが、この実施形態では、L10寿命とL50寿命のそれぞれについて必要寿命差を計算するために、L10寿命とL50寿命の両方を算出している。
次に、同じL10寿命を持つワイブル分布から、第2ロット目の試験個数n2である3個の乱数を3個発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を上記と同じ方法で算出する(L22)。
次に、得られた1組のL10寿命とL50寿命の寿命比をそれぞれ算出する。すなわちL10寿命同士の寿命比、およびL50寿命同士の寿命比を算出する(L23)。
次に、これらの作業を設定回数(例えば1000回)繰り返し、設定回数組(1000組)のL10およびL50寿命の寿命比の確率分布(図52(B)と累積確率分布(図52(C)を作成する(L24)。
これらは、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとり、寿命試験を行った結果、どの程度の寿命差が出るのかを設定回数(1000回)確認することに対応している。
度数分布の図(図52(B))から、同じ寿命分布を持つロットから試験片を抜きとって試験を行ったにもかかわらず、寿命はばらついていることが分かる。その寿命比のばらつきを、所定信頼度区間、例えば累積確率分布の5%と95%の区間(90%信頼区間)として定義すると、その寿命ばらつきは、図52(C)に示したように0.39〜2.57倍であると算出できる。
この結果は、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとって寿命比較を行っても、90%のものは0.39〜2.57倍の間で寿命比がばらついてしまうことを示している。逆にいうと、ばらつき内の最大値である2.57倍以上の寿命差があれば、そのロット間の寿命分布が異なっている可能性が高いということになるので、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ3個の場合、有為差を判断できる寿命差は2.57倍以上であるといえる。
そこで、上記累積確率分布から設定信頼幅内の最大および最小の寿命比を読み取り、最小の寿命比は逆数で表して、それぞれ、
(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
(第1水準の寿命)/(第2水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
として定める(L25)。
上記の具体例では、(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)の場合の必要寿命差は、2.57倍である。(第1水準の寿命)/(第2水準の寿命)の場合の必要寿命差は、2.57倍(1/0.39=2.57)である。
この結果から考え、実際の試験として、ワイブルスロープ4である加速試験で、2ロットの試験を行い、1ロット目が試験個数3個でL10寿命が100時間、2ロット目も試験個数3個でL10寿命が150時間という結果が得られた状況を想定する。この場合の寿命比は、150/100=1.5である。この状況では、上記シミュレーションの結果である必要寿命差2.57倍を満たしておらず、有為差があるとは言えない。
図48,図49に示した必要寿命差見積もりプログラム41についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この必要寿命差見積もりプログラム41は、整理すると、次の手順により構成される。
この実施形態の加速試験における有為差判断の必要寿命差見積もりプログラム41は、コンピュータで実行可能なプログラムであって、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、並びに比較する水準1および水準2の2つのロットの各試験個数の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(L1)と、
実行命令に応答して必要な寿命差を演算し上記表示装置の画面に表示させる必要寿命差演算手順(L2)とを含む。
上記必要寿命差演算手順(L2)は、
試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる第1乱数発生手順(L21)と、
第1乱数発生手順と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる第2乱数発生手順(L22)と、
第1乱数発生手順(L21)で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順(L22)で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)となる寿命比を算出する寿命比算出手順(L23)と、
これら第1乱数発生手順(L21),第2乱数発生手順(L22),および寿命比算出手順(L23)を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する累積確率分布作成手順(L24)と、
上記累積確率分布から設定信頼幅内の最大および最小の寿命比を読み取り、最小の寿命比は逆数で表して、それぞれ、
(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
(第1水準の寿命)/(第2水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
として定める必要寿命差読み取り手順(L25) と、
この読み取った必要寿命差を表示装置に出力させる必要寿命差出力手順(L26)と、を含む。
累積確率分布作成手順(L24)は、手順L21〜J23を設定回数繰り返させる手順L241と、その繰り返し過程で得て記憶したおいた寿命比から確率分布および累積確率分布を演算する手順L242とでなる。
各乱数発生手順(L21,L22)の詳細について説明する。これらの手順L21,L22は、前述の式1).に従うワイブル分布を特定し、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる。
乱数発生手順L21,L22において、ワイブル分布の特定のための寿命(L10寿命)は、適宜想定した値を、これらの手順L21,L22の計算式等に設定しておいても良く、また入力手段3からの入力によって可変としても良い。
また、寿命比較算出手順L23において、発生したワイブル乱数からのL10寿命を求める演算は、前述と同様に、加速試験において従来から用いられている中の適宜の寿命計算方法を用いれば良い。
図77に、この実施形態の乱数シミュレーションプログラムである必要寿命差見積もりプログラム41で求めた寿命比の確率分布と、発明が解決しようとする課題の欄で説明した上記従来の信頼幅を使う方法における手順3)で求めた分布とを比較した結果を示す。2つの結果は概ね一致していることが分かる。しかし、この実施形態は、従来の方法に比べて簡素に有為差が判定できるという利点がある。
図46と共に加速試験における有為差判断の必要寿命差見積もり装置につきする。この必要寿命差見積もり装置は、演算処理装置1と、この演算処理装置1の出力を画面に表示する表示装置2と、上記演算処理装置1に入力を行う入力手段3とを備える。
上記演算処理装置1は、上記表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、並びに比較する水準1および水準2の2つのロットの各試験個数の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Kと、実行命令に応答して必要な寿命差を演算しその演算結果を上記表示装置2の画面に出力する必要寿命差演算手段42とを備える。
この必要寿命差演算手段42は、次の構成の第1乱数発生手段43、第2乱数発生手段44、寿命比算出手段45、累積確率分布作成手段46、必要寿命差読み取り手段47、および必要寿命差出力手段48を備える。
第1乱数発生手段42は、試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる手段であり、図49の手順L21で説明した処理を行う。
第2乱数発生手段44は、第1乱数発生手段43と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる手段であり、手順L22で説明した処理を行う。
寿命比算出手段45は、第1乱数発生手段43で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と、第2乱数発生手段44で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)となる寿命比を算出する手段であり、手順L23で説明した処理を行う。
累積確率分布作成手段46は、これら第1乱数発生手段43,第2乱数発生手段44,および寿命比算出手段45の処理を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する手段であり、手順L24で説明した処理を行う。
必要寿命差読み取り手段47は、上記累積確率分布から設定信頼幅内の最大および最小の寿命比を読み取り、最小の寿命比は逆数で表して、それぞれ、
(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
(第1水準の寿命)/(第2水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
として定める手段であり、手順L25で説明した処理を行う。
必要寿命差出力手段48は、この読み取った必要寿命差を表示装置2に出力させる手段であり、手順L26で説明した処理を行う。
この方法は、このようにワイブル分布に基づく乱数シミュレーションにより必要寿命差を求めるため、必要寿命差を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ定量的に求められて信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても必要寿命差を算出することができ る。また、この乱数シミュレーションに用いるプログラムは、条件入力を行えば勝手に優位差検定を行ってくれる手軽なツールであることが優れた点である。
図53〜図61は、加速試験における判定過程(S3)における有為差有無判定・有為寿命差見積もり過程となる方法を示す。この有為差有無判定・有為寿命差見積もり方法は、加速試験において、試験対象品の2つのロットの寿命から、有為差有無の判定、および少なくとも断定できる、倍率による寿命差を算出する方法である。
この加速試験における有為差有無判定・有為寿命差見積もり方法は、図53に示すコンピュータ1に、乱数シミュレーションプログラムである加速試験における有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム41を実行させることで行う。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および必要寿命差見積もりプログラム41により、図54に各機能達成手段をブロックで示した有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置が構成される。同図の有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置の構成については、後に説明する。
有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51は、図56および図57に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
この必要寿命差見積もり方法は、図54に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程M1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程M2とからなる。
入力過程M1では、図58に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示され、入力画面2a中に、所定の入力を促す表示が行われる。
入力画面2aは、同図の例では複数の画面に切り替えて表示される。入力画面のうち、第1の画面(図58(A)では、L10寿命とL50寿命とのいずれで有為差を検定するかを選択させる表示が行われる。この画面に対して、ラジオボタン等からなる表示部分を選択することで、L10寿命とL50寿命とのいずれかが選択できる。
第2の画面(図58(B))では、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値の入力を促す表示、および入力を記入する記入用表示が行われる。オペレータは、この記入用表示に、該当する値を入力する。
第2の画面(図58(C))では、比較する水準1および水準2の2つのロットの各試験個数n1,n2の入力、および試験結果の寿命を促す表示が行われ、その個数および寿命を入力する記入用表示が行われる。オペレータは、この記入用表示に対して該当する情報を入力する。
ワイブルスロープの値には、試験の実績値を入力することが好ましい。実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。また、試験個数および試験結果は、実際に行った試験における個数および結果を入力する。なお、試験個数と寿命は、水準2の欄に長寿命側の入力をしなければないらいとする入力規則が、有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51に手順として設定されている。この手順は、例えば促し画面出力手順N1の一部として設けられる。以上の点に注意して、所定の条件を入力し、入力画面2aのOKボタンを押すと計算が開始される。
図55のコンピュータ演算処理過程M2では、入力されたワイブルスロープの値、および2つのロットの各試験個数n1,n2、試験結果の寿命から、有為差有無の判定に必要な寿命差を計算して、有為差有無を判定し、有為差有りの場合には、少なくとも断定できる寿命差を計算する。
計算が終了すると、図59に示す出力画面に結果が表示される。有為差がない場合は、同図(A)のように、有為差無しという表示と、有為差有りと判断するための必要寿命差が表示される。
有為差がある場合は、同図(B)のように、有為差ありという表示と、少なくとも断定できる寿命差(倍率)が表示される。
図53の有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図56,図57に流れ図で示す手順を備える。図56に示すように、有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51は、促し画面出力手順N1と必要寿命差演算手順N2とでなり、促し画面出力手順N1では、図58と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、有為差有無判定・有為寿命差見積もり手順N2が実行される。同図の入力画面に対して入力する過程が、図55の入力過程M1であり、同図のコンピュータ演算処理過程M2は図56の有為差有無判定・有為寿命差見積もり手順N2を実行する過程である。
有為差有無判定・有為寿命差見積もり手順N2は、図57に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には各手順M21〜M29毎の具体的な処理例を注釈として併記してある。
理解の容易のため、具体的数値を上げ、同図の具体的処理例を参照して、各手順N21〜N29を説明する。
今、あるL10寿命を持つワイブル分布(図60(A))で、ワイブルスロープは4としている)である加速試験で、2ロットの試験を行ったとする。1ロット目(水準1)の試験個数n1が3個で、2ロット目(水準2)の試験個数n2も3個であるとする。
まず、そのワイブル分布に従って1ロット目の試験個数n1である3個の乱数を発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を算出する(N21)。算出方法は、従来の加速試験の結果からの寿命算出に用いられている適宜の方法を使用する。なお、L10寿命だけ、またはL50寿命だけを演算しても良いが、この実施形態では、L10寿命とL50寿命のそれぞれについて必要寿命差を計算するために、L10寿命とL50寿命の両方を算出している。
次に、同じL10寿命を持つワイブル分布から、第2ロット目の試験個数n2である3個の乱数を3個発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を上記と同じ方法で算出する(N22)。
次に、得られた1組のL10寿命とL50寿命の寿命比をそれぞれ算出する。すなわちL10寿命同士の寿命比、およびL50寿命同士の寿命比を算出する(N23)。
次に、これらの作業を設定回数(例えば1000回)繰り返し、設定回数組(1000組)のL10およびL50寿命の寿命比の確率分布(図60(B)と累積確率分布(図60(C)を作成する(N24)。
これらは、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとり、寿命試験を行った結果、どの程度の寿命差が出るのかを設定回数(1000回)確認することに対応している。
度数分布の図(図60(B))から、同じ寿命分布を持つロットから試験片を抜きとって試験を行ったにもかかわらず、寿命はばらついていることが分かる。その寿命比のばらつきを、所定信頼度区間、例えば累積確率分布の5%と95%の区間(90%信頼区間)として定義すると、その寿命ばらつきは、図60(C)に示したように0.39〜2.57倍であると算出できる(N243)。
この結果は、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとって寿命比較を行っても、90%のものは0.39〜2.57倍の間で寿命比がばらついてしまうことを示している。逆にいうと、ばらつき内の最大値である2.57倍以上の寿命差があれば、そのロット間の寿命分布が異なっている可能性が高いということになるので、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ3個の場合、有為差を判断できる寿命差は2.57倍以上であるといえる。
そこで、上記ばらつき内の最大値である2.57倍と、入力された2つのロット(水準1,水準2)の寿命差(倍率)、すなわち〔(水準2の寿命)/(水準1の寿命)〕とを比較し(N25)、入力された2つのロットの寿命の寿命差の方が小さいと、有為差無しと反対してその判定結果と上記の有為差を判断できる寿命差の値(上記の例では2.57場合)とを出力画面に表示させ(N29)、コンピュータ1による処理を終了する。
入力された2つのロットの寿命の寿命差の方が大きい場合は、次の手順N26〜N28に進み、少なくとも断定できる寿命差の演算を行う。
手順N26では、寿命分布が異なるワイブル分布との組み合わせで、上述と同様の計算を行う。具体的には、ワイブル分布と寿命が1.1 、1.2 …50倍異なるワイブル分布の組み合わせで計算を行う。このようにして計算を行うと、組み合わせが1.1 、1.2 …50倍と変化するごとに、寿命差が1.1 、1.2 …50倍を中心にしてばらつくはずである。
最後に、組み合わせの倍率を横軸にして、それぞれの累積確率分布の90%区間を縦軸にとったグラフ(図60(D))を作成する(N27)。この図は、寿命がある倍率で異なる2ロットの試験片群から3個の試験片を1組ずつ抜き取って寿命比較を行った場合、どの程度寿命差がばらつくかを示した図である。例えば、4倍の2ロットの試験片群から2個の試験片を1組ずつ抜き取り、寿命比較を行った場合、寿命差は4倍になるケースが最も多いものの、7.5倍の寿命差になるケースも10%の確率で起こりえることがこの図から読み取れる。
今、問題としている2ロット間の寿命差は3倍である。図から、3倍の寿命差は寿命差が1.7倍以上ある2ロット間でしか起こり得ない寿命差だということが読み取れるので、少なくともいえる寿命差は1.7倍ということができる。このように読み取った値を、少なくとも断定できる寿命差と定める(N28)。
この定めた寿命差の値は、有為差有りという表示と共に、表示装置2の出力画面2b(図59(A))に出力する(N29)。
以上が2ロットの寿命から少なくともいえる寿命差を算出する手順である。
図56,図57に示し有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム41についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム41は、整理すると、次の手順により構成される。
この発明の加速試験における有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム(51)は、コンピュータで実行可能なプログラムであって、
上記表示装置(2)の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、比較する水準1,水準2の2つのロットの各試験個数および試験結果の寿命の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(N1)と、
実行命令に応答して上記有為差有無の判定および少なくとも断定できる寿命差の演算を行いその演算結果を上記表示装置の画面に出力する有為差判定・有為寿命差演算手順(N2)とを含む。
この有為差判定・有為寿命差演算手順(N2)は、
上記入力情報のワイブルスロープの値および仮設定寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる第1乱数発生手順(N21)と、
第1乱数発生手順(N21)と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる第2乱数発生手順(N22)と、
第1乱数発生手順(N21)で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順(N22)で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の水準1,水準2の寿命の寿命比を算出する寿命比算出手順(N23)と、
これら第1乱数発生手順(N21),第2乱数発生手順(N22),および寿命比算出手順(N23)を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成して累積確率分布から、設定信頼幅内の最大の寿命比を読み取る累積確率分布分析手順(N24)と、
上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比が上記累積確率分布分析手順で得た最大寿命比を超える場合に有為差有りと判定し最大寿命比以内の場合に有為差無しと判定する有為差有無判定手順(N25)とを備える。
有為差判定・有為寿命差演算手順(N2)は、さらに、有為差有無判定手順(N25)で有為差有りとした場合に実行され、上記ワイブル分布を仮設定寿命が異なる設定倍率となるワイブル分布に繰り返し毎に順次変えて、上記累積確率分布分析手順を、上記設定倍率が設定最小倍率から設定最大倍率となるまで繰り返す倍率変更繰り返し手順(N26)と、
この倍率変更繰り返し手順(N26)で得られた、繰り返し変更した設定倍率と上記信頼幅内の最大の寿命比の関係を示すグラフである寿命倍率関係グラフを作成する寿命倍率関係グラフ作成手順(N27)と、
上記寿命倍率関係グラフから、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比に対応する上記設定倍率の値を読み取り、その読み取った値を少なくとも断定できる寿命差とする有為寿命差読み取り手順(28)と、
上記有為差有無判定手順(N28)で判定した結果および上記有為寿命差読み取り手順で読み取った、少なくとも断定できる寿命差を表示装置に表示させる結果出力手順(29)と、を含む。
上記累積確率分布分析手順(N24)は、手順N21〜N23を設定回数繰り返させる手順N241と、その繰り返し過程で記憶したおいた寿命比から確率分布および累積確率分布を演算する手順N242と、この累積確率分布から90%範囲の大寿命比を読み取る手順N243とからなる。
上記倍率変更繰り返し手順(N26)は、設定倍率が設定最小倍率から設定最大倍率となるまで繰り返す手順N261と、繰り返し毎に異なる設定倍率に変更する倍率変更手順N231とからなる。
各乱数発生手順(N21,N22)の詳細について説明する。これらの手順N21,N22は、前述の式1).に従うワイブル分布を特定し、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる。
乱数発生手順N21,N22において、ワイブル分布の特定のための寿命(L10寿命)は、適宜想定した値を、これらの手順N21,N22の計算式等に設定しておいても良く、また入力手段3からの入力によって可変としても良い。
また、寿命比較算出手順N23において、発生したワイブル乱数からのL10寿命を求める演算は、前述と同様に加速試験において従来から用いられている中の適宜の寿命計算方法を用いれば良い。
この打切り時間見積もり装置プログラム51では、有為差のある寿命差有りと判断するための必要寿命差の関係を求めている。図61に寿命差有りと判断するための必要寿命差の関係を示す。この結果は、事前に入力するワイブルスロープと試験個数によって変化するので、図にはワイブルスロープと試験個数を変化させた結果を示している。試験個数が増えるほど、あるいはワイブルスロープが大きいほど、傾きが小さくなることが分かる。これらの結果は、(1) 試験個数が増えるほど寿命差有りと判断するための必要寿命差を小さくできること、(2) ワイブルスロープが大きい試験条件ほど寿命差有りと判断するための必要寿命差を小さくできることを示している。
図54と共に加速試験における有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置につきする。この有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置は、演算処理装置1と、この演算処理装置1の出力を画面に表示する表示装置2と、上記演算処理装置1に入力を行う入力手段3とを備える。
上記演算処理装置1は、上記表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、比較する水準1,水準2の2つのロットの各試験個数および試験結果の寿命の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Mと、実行命令に応答して上記有為差有無の判定および少なくとも断定できる寿命差の演算を行いその演算結果を上記表示装置2の画面に出力する有為差判定・有為寿命差演算手段51とを備える。
上記有為差判定・有為寿命差演算手段52は、第1乱数発生手段53、第2乱数発生手段54、寿命比算出手段55、累積確率分布分析手段56、有為差有無判定手段57、倍率変更繰り返し手段58、寿命倍率関係グラフ作成手段59、有為寿命差読み取り手段60、および結果出力手段61を有する。
第1乱数発生手段53は、上記入力情報のワイブルスロープの値および仮設定寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる手段であり、図57の手順N21で説明した処理を行う。
第2乱数発生手段54は、第1乱数発生手段53と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる手段であり、手順N22で説明した処理を行う。
寿命比算出手段55は、第1乱数発生手段53で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と、第2乱数発生手段54で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の水準1,水準2の寿命の寿命比を算出する手段であり、手順N23で説明した処理を行う。
累積確率分布分析手段56は、これら第1乱数発生手段53,第2乱数発生手段54,および寿命比算出手段55の処理を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成して累積確率分布から、設定信頼幅内の最大の寿命比を読み取る手段であり、手順N24で説明した処理を行う。
有為差有無判定手段57は、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比が上記累積確率分布分析手段56で得た最大寿命比を超える場合に有為差有りと判定し最大寿命比以内の場合に有為差無しと判定する手段であり、手順N25で説明した処理を行う。
倍率変更繰り返し手段58は、有為差有無判定手段57で有為差有りとした場合に実行され、上記ワイブル分布を仮設定寿命が異なる設定倍率となるワイブル分布に繰り返し毎に順次変えて、上記累積確率分布分析手段56の処理を、上記設定倍率が設定最小倍率から設定最大倍率となるまで繰り返す手段であり、手順N26で説明した処理を行う。
寿命倍率関係グラフ作成手段59は、倍率変更繰り返し手段58で得られた、繰り返し変更した設定倍率と上記信頼幅内の最大の寿命比の関係を示すグラフである寿命倍率関係グラフを作成する手段であり、手順N27で説明した処理を行う。
有為寿命差読み取り手段60は、上記寿命倍率関係グラフから、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比に対応する上記設定倍率の値を読み取り、その読み取った値を少なくとも断定できる寿命差とする手段であり、手順N28で説明した処理を行う。
結果出力手段61は、上記有為差有無判定手段57で判定した結果、および上記有為寿命差読み取り手段60で読み取った、少なくとも断定できる寿命差を表示装置2に表示させる手段であり、手順N29で説明した処理を行う。
この方法は、このようにワイブル分布に基づく乱数シミュレーションにより有為差有無を判定し、また少なくとも断定できる寿命差を求めるため、これら有為差有無および少なくとも断定できる寿命差を、簡単かつ迅速に試算することができる。また、定量的に求められて信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても試算することができる。この乱数シミュレーションに用いるプログラムは、条件入力を行えば勝手に有為差有無を判定および少なくとも断定できる寿命差の検定を行ってくれる手軽なツールであることが優れた点である。
図35〜図44は、加速試験における設計過程(S1)における必要試験個数見積もり過程となる方法を示す。この必要試験個数見積もり方法は、加速試験において、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数を見積もる方法である。
この加速試験における必要試験個数見積もり方法は、図35に示すコンピュータ1に、シミュレーションプログラムである必要試験個数見積もりプログラム31を実行させることで行う。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および必要試験個数見積もりプログラム31により、図36に各機能達成手段をブロックで示した必要試験個数見積もり装置が構成される。同図の必要試験個数見積もり装置の構成については、後に説明する。
必要試験個数見積もりプログラム31は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図38および図39に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
この必要試験個数見積もり方法は、図36に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程H1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程H2とからなる。
入力過程H1では、図40に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、および何倍であれば有為差有りと判断するかの倍数で示される寿命差を入力する。ワイブルスロープの値には、試験の実績値を入力することが好ましい。実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。また、有為差有りと判断する寿命差は、2倍を標準とすることが好ましい。以上の点に注意して、所定の条件を入力し、入力画面2aのOKボタンを押すと計算が開始される。
図37のコンピュータ演算処理過程H2では、入力されたワイブルスロープの値および寿命差等から、有為差有りと判断するために必要となる必要試験個数を演算し、その演算結果を、図41のように出力画面2bに表示する。
なお、この必要試験個数見積もり装置およびプログラムでは、計算が終了すると、例えば、試験個数と有為差有りと判断できる必要寿命差との関係を示すグラフ(例えば図42)を初めに出力し、この状態で所定の入力を行うことで、図41の計算結果の表示が、上記グラフ上に重ねて表示されるようにしてある。上記所定の入力は、例えば上記必要試験個数見積もりプログラムが複数のシートをブックとして持つ表計算ソフトウェアである場合、シートを選択する入力とされる。
図35の必要試験個数見積もりプログラム31は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図38,図39に流れ図で示す手順を備える。図38に示すように、必要試験個数見積もりプログラム21は、促し画面出力手順J1と必要試験個数演算手順J2とでなり、促し画面出力手順J1では、図40と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、必要試験個数演算手順J2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図37の入力過程H1であり、同図のコンピュータ演算処理過程H2は図38の寿命演算手順J2を実行する過程である。
必要試験個数演算手順J2は、図39に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順J21〜G27毎の具体的な処理例を注釈として併記してある。
理解の容易のため、具体的数値を上げ、同図の具体的処理例を参照して、各手順J21〜G27を説明する。
加速試験では、何ロットかの試験対象品を用意して寿命試験を行い、それらロット間の寿命差を比較することが多い。今、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ3個の場合、どのくらいの寿命差が出れば、それらロット間に寿命の有為差があるといえるのかということについて考える。
まず、あるL10寿命を持つワイブル分布(図43(A)で、ワイブルスロープは4としている)から乱数を3個発生し、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を算出する(J21)。算出方法は、従来の加速試験の結果からの寿命算出に用いられている適宜の方法を使用する。なお、L10寿命だけ、またはL50寿命だけを演算しても良いが、この実施形態では、L10寿命とL50寿命のそれぞれについて必要試験個数を計算するために、L10寿命とL50寿命の両方を算出している。
次に、同じL10寿命を持つワイブル分布から乱数を3個発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を上記と同じ方法で算出する(J22)。
次に、得られた1組のL10寿命とL50寿命の寿命比をそれぞれ算出する。すなわちL10寿命同士の寿命比、およびL50寿命同士の寿命比を算出する(J23)。
次に、これらの作業を設定回数(例えば1000回)繰り返し、設定回数組(1000組)のL10およびL50寿命の寿命比の確率分布(図43(B)と累積確率分布(図43(C)を作成する(J24)。
これらは、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとり、寿命試験を行った結果、どの程度の寿命差が出るのかを設定回数(1000回)確認することに対応している。
度数分布の図(図43(B))から、同じ寿命分布を持つロットから試験片を抜きとって試験を行ったにもかかわらず、寿命はばらついていることが分かる。その寿命比のばらつきを、所定信頼度区間、例えば累積確率分布の5%と95%の区間(90%信頼区間)として定義すると、その寿命ばらつきは、図43(C)に示したように0.39〜2.57倍であると算出できる。
この結果は、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとって寿命比較を行っても、90%のものは0.39〜2.57倍の間で寿命比がばらついてしまうことを示している。逆にいうと、ばらつき内の最大値である2.57倍以上の寿命差があれば、そのロット間の寿命分布が異なっている可能性が高いということになるので、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ3個の場合、有為差を判断できる寿命差は2.57倍以上であるといえる。
最後に、試験個数を増やして、有意差を判断できる寿命差を上述と同様な手順で算出し、試験個数と必要寿命差のグラフ(図43(D))を作成する(J25)。この図から、ワイブルスロープが4の試験における試験個数と有為差を判断する必要寿命差が分かる。 今、2倍以上の寿命差がある時、そのロット間に寿命の有為差があるといえる試験個数を信頼性の高い算出寿命を得るための必要試験個数と定義する。この時、ワイブルスロープが4の試験における必要試験個数は、同図によると、L10寿命で評価する場合8個、L50寿命で評価する場合3個ということになる。通常、客先からはL10寿命での評価が要求されるので、試験個数は8個にして試験を実施することになる。この場合、2倍以上の寿命差でロット間の寿命の有為差が判断できることになる。
図44に試験個数と有為差有りと判断できる必要寿命差の計算結果の例をワイブルスロープ0.8、1.85、4について示す。これらの図から、(1) 試験個数が増えるほど有為差有りと判断できる必要寿命差が低下すること、(2) L50寿命で有意差を判定するほうが必要な試験個数を少なくできること、(3) ワイブルスロープが大きい試験条件ほど必要試験個数を少なくできることが分かる。
図39の必要試験個数読み取り手順J26では、上記のように試験個数と必要寿命差のグラフから必要寿命差(この例では2倍)に対応する必要試験個数を読み取り、その結果を手順J27で画面に出力する。
以上が加速試験における必要試験個数を試算する方法である。試験個数と必要寿命差のグラフ(図43(D))からは、試験個数が決まっている時の寿命の有為差を判断するための必要寿命差を読み取ることもできる。同図の例では、試験片が3個しか用意できない場合、L10寿命では2.57倍の寿命差が必要であり、L50寿命では1.90倍の寿命差が必要になる。
図38,図39に示した必要試験個数見積もりプログラム31についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この必要試験個数見積もりプログラム31は、整理すると、次の手順により構成される。
この実施形態の寿命打切り試験からの必要試験個数見積もりプログラム31は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、および何倍であれば有為差有りと判断するかの倍数で示される寿命差の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(J1)と、
実行命令に応答して必要試験個数を演算し上記表示装置の画面に表示させる必要試験個数演算手順(J2)とを含む。
上記必要試験個数演算手順(J2)は、
試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を仮試験個数分発生させる第1乱数発生手順(J21)と、
この第1乱数発生手順と同じワイブル分布に従った乱数を上記仮試験個数分発生させる第2乱数発生手順(J22)と、
第1乱数発生手順(J21)で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順(J22)で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命との1組の寿命比を算出する寿命比算出手順(J23)と、
これら第1乱数発生手順(J21),第2乱数発生手順(J22),および寿命比算出手順(J23)を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する累積確率分布作成手順(J24)と、
上記仮試験個数を繰り返しの都度変えて、上記第1乱数発生手順(J21),第2乱数発生手順(J22),および累積確率分布の作成までの手順である累積確率分布作成手順(J24)を、上記仮試験個数が設定最小個数から設定最大個数まで変わる範囲で繰り返し、試験個数と必要寿命差の関係を示すグラフを作成する個数・寿命差関係グラフ作成手順(J25)と、
この手順で作成された試験個数と必要寿命差の関係のグラフから、上記入力情報の寿命差に対応する個数を読み取って必要試験個数と定める必要試験個数読み取り手順(J26)と、
この読み取った必要試験個数を表示装置に出力させる必要試験個数出力手順(J27)とを含む。
累積確率分布作成手順(J24)は、手順J21〜J23を設定回数繰り返させる手順J241と、その繰り返し過程が得て記憶したおいた寿命比から確率分布および累積確率分布を演算する手順J242とでなる。
個数・寿命差関係グラフ作成手順(J25)は、仮試験個数が設定最大個数になるまで手順J21〜J24を繰り返させる手順(J251)と、繰り返し毎に仮試験個数を1個増加する手順(J252)とでなる。仮試験個数の初期値となる設定最小個数は、各乱数発生手順J21,J22に初期値として設定しておく。
各乱数発生手順(J21,J22)の詳細について説明する。これらの手順J21,J22は、前述の式1).に従うワイブル分布を特定し、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる。
乱数発生手順J21,J22において、ワイブル分布の特定のための寿命(L10寿命)は、適宜想定した値を、これらの手順J21,J22の計算式等に設定しておいても良く、また入力手段3からの入力によって可変としても良い。
また、寿命比較算出手順J23において、発生したワイブル乱数からのL10寿命を求める演算は、加速試験において従来から用いられている中の適宜の寿命計算方法を用いれば良い。加速試験においては、破損の発生した時間からワイブルプロットで寿命を求めることが行われており、このような破損時間から寿命を求める計算方法を、上記寿命比算出手順における寿命計算方法として用いる。
この寿命計算には、例えば次の方法が採用できる。
(1) 寿命試験を実施する。
(2) 得られたデータ(破損した時間あるいは破損した負荷回数)を昇順に並び替える。
(3) これらデータを図76のグラフ(ワイブル確率紙)にプロットする(縦軸:累積破損確率、横軸:寿命)。
(4) 図76の紙にプロットしたデータの最適直線を最小二乗法で引く。このとき、L10 寿命以下の位置に最小寿命があるということになるので、L10 寿命の値を10分割し(何分割でも良いがフィッティングでの計算時間が妥当な時間になるように設定する)、累積確率0 %の位置にプロットを加える。10通りの最適曲線で最もデータがフィットする最適直線を採用する。
(5) そうすると、ワイブルスロープがこの線の傾き、最小寿命は、L10 寿命の値を10分割のいずれかの値、L10 寿命(ワイブルスロープが累積確率10%交わる寿命)と尺度因子αの関係からαを決定できる。
この必要試験個数の見積もり方法は、このようにワイブル分布に基づくシミュレーションにより必要試験個数を求めるため、目的の信頼性の算出寿命を得るための必要試験個数を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても必要試験個数を試算することができる。
図36と共に加速試験における必要試験個数見積もり装置につき説明する。この必要試験個数見積もり装置は、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を使用環境よりも厳しい所定の環境条件におき、破損が発生した時間から寿命を算出する加速試験において、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数を見積もる装置であって、
演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、上記コンピュータ1に入力を行う入力手段3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、および何倍であれば有為差有りと判断するかの倍数で示される寿命差の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Fと、実行命令に応答して必要試験個数を演算しその演算結果を上記表示装置の画面に出力する必要試験個数演算手段32とを備える。
この必要個数演算手段32は、次の構成の第1乱数発生手段33、第2乱数発生手段34、寿命比算出手段35、累積確率分布作成手段36、個数・寿命差関係グラフ作成手段37、必要試験個数読み取り手段38、および必要試験個数出力手段39を有する。
第1乱数発生手段33は、試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を仮試験個数分発生させる手段であり、図39の流れ図における手順J21につき説明した処理を行う。
第2乱数発生手段34は、第1乱数発生手段33と同じワイブル分布に従った乱数を上記仮試験個数分発生させる手段であり、手順J22につき説明した処理を行う。
寿命比算出手段35は、第1乱数発生手段33で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手段34で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命との1組の寿命比を算出する手段であり、手順J23につき説明した処理を行う。
累積確率分布作成手段36は、上記第1乱数発生手段33,第2乱数発生手段34,および寿命比算出手段35の処理を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する手段であり、手順J24につき説明した処理を行う。
個数・寿命差関係グラフ作成手段37は、上記仮試験個数を繰り返しの都度変えて、上記第1乱数発生手段33,第2乱数発生手段34の処理および上記累積確率分布の作成までを行う累積確率分布作成手段36の処理を、上記仮試験個数が設定最小個数から設定最大個数まで変わる範囲で繰り返し、試験個数と必要寿命差の関係を示すグラフを作成する手段であり、手順J25につき説明した処理を行う。
必要試験個数読み取り手段38は、上記手順で作成された試験個数と必要寿命差の関係のグラフから、上記入力情報の寿命差に対応する個数を読み取って必要試験個数と定める手段であり、手順J26につき説明した処理を行う。
必要試験個数出力手段39は、この読み取った必要試験個数を表示装置に出力させる手段であり、手順J27につき説明した処理を行う。
図45ないし図52は、加速試験における設計過程(S1)における有為差判断の必要寿命差の見積もり過程となる方法を示す。この有為差判断の必要寿命差見積もり方法は、加速試験において、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断するために必要な寿命差を、倍率で示される値で見積もる方法である。
この有為差判断の必要寿命差見積もり方法は、図45に示すコンピュータ1に、乱数シミュレーションプログラムである有為差判断の必要寿命差見積もりプログラム41を実行させることで行う。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および必要寿命差見積もりプログラム41により、図46に各機能達成手段をブロックで示した必要試験個数見積もり装置が構成される。同図の必要試験個数見積もり装置の構成については、後に説明する。
必要寿命差見積もりプログラム41は、図48および図49に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
この必要寿命差見積もり方法は、図46に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程K1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程K2とからなる。
入力過程K1では、図50に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、並びに比較する水準1および水準2の2つのロットの各試験個数n1,n2の入力を促す表示を行われ、これらの情報を入力する。ワイブルスロープの値には、試験の実績値を入力することが好ましい。実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。また、試験個数は試験対象品の数や試験機の台数で制限される場合が多いが、より多くの試験対象品を用意することが望ましく、実際に行う試験個数を入力する。以上の点に注意して、所定の条件を入力し、入力画面2aのOKボタンを押すと計算が開始される。
図47のコンピュータ演算処理過程L2では、入力されたワイブルスロープの値、および2つのロットの各試験個数n1,n2から、有為差有りと判断するために必要となる寿命差を演算し、演算が終了すると、図51のように2水準間に必要な寿命差を表示する。
図45の必要寿命差見積もりプログラム41は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図48,図49に流れ図で示す手順を備える。図48に示すように、必要寿命差見積もりプログラム41は、促し画面出力手順L1と必要寿命差演算手順L2とでなり、促し画面出力手順L1では、図50と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、必要寿命差演算手順L2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図47の入力過程K1であり、同図のコンピュータ演算処理過程K2は図48の必要寿命差演算手順K2を実行する過程である。
必要寿命差演算手順L2は、図49に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には各手順L21〜L26毎の具体的な処理例を注釈として併記してある。
理解の容易のため、具体的数値を上げ、同図の具体的処理例を参照して、各手順L21〜L26を説明する。
今、あるL10寿命を持つワイブル分布(図52(A)で、ワイブルスロープは4としている)である加速試験で、2ロットの試験を行うとする。1ロット目(水準1)の試験個数n1が3個で、2ロット目(水準2)の試験個数n2も3個であるとする。
まず、そのワイブル分布に従って1ロット目の試験個数n1である3個の乱数を発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を算出する(L21)。算出方法は、従来の加速試験の結果からの寿命算出に用いられている適宜の方法を使用する。なお、L10寿命だけ、またはL50寿命だけを演算しても良いが、この実施形態では、L10寿命とL50寿命のそれぞれについて必要寿命差を計算するために、L10寿命とL50寿命の両方を算出している。
次に、同じL10寿命を持つワイブル分布から、第2ロット目の試験個数n2である3個の乱数を3個発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を上記と同じ方法で算出する(L22)。
次に、得られた1組のL10寿命とL50寿命の寿命比をそれぞれ算出する。すなわちL10寿命同士の寿命比、およびL50寿命同士の寿命比を算出する(L23)。
次に、これらの作業を設定回数(例えば1000回)繰り返し、設定回数組(1000組)のL10およびL50寿命の寿命比の確率分布(図52(B)と累積確率分布(図52(C)を作成する(L24)。
これらは、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとり、寿命試験を行った結果、どの程度の寿命差が出るのかを設定回数(1000回)確認することに対応している。
度数分布の図(図52(B))から、同じ寿命分布を持つロットから試験片を抜きとって試験を行ったにもかかわらず、寿命はばらついていることが分かる。その寿命比のばらつきを、所定信頼度区間、例えば累積確率分布の5%と95%の区間(90%信頼区間)として定義すると、その寿命ばらつきは、図52(C)に示したように0.39〜2.57倍であると算出できる。
この結果は、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとって寿命比較を行っても、90%のものは0.39〜2.57倍の間で寿命比がばらついてしまうことを示している。逆にいうと、ばらつき内の最大値である2.57倍以上の寿命差があれば、そのロット間の寿命分布が異なっている可能性が高いということになるので、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ3個の場合、有為差を判断できる寿命差は2.57倍以上であるといえる。
そこで、上記累積確率分布から設定信頼幅内の最大および最小の寿命比を読み取り、最小の寿命比は逆数で表して、それぞれ、
(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
(第1水準の寿命)/(第2水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
として定める(L25)。
上記の具体例では、(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)の場合の必要寿命差は、2.57倍である。(第1水準の寿命)/(第2水準の寿命)の場合の必要寿命差は、2.57倍(1/0.39=2.57)である。
この結果から考え、実際の試験として、ワイブルスロープ4である加速試験で、2ロットの試験を行い、1ロット目が試験個数3個でL10寿命が100時間、2ロット目も試験個数3個でL10寿命が150時間という結果が得られた状況を想定する。この場合の寿命比は、150/100=1.5である。この状況では、上記シミュレーションの結果である必要寿命差2.57倍を満たしておらず、有為差があるとは言えない。
図48,図49に示した必要寿命差見積もりプログラム41についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この必要寿命差見積もりプログラム41は、整理すると、次の手順により構成される。
この実施形態の加速試験における有為差判断の必要寿命差見積もりプログラム41は、コンピュータで実行可能なプログラムであって、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、並びに比較する水準1および水準2の2つのロットの各試験個数の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(L1)と、
実行命令に応答して必要な寿命差を演算し上記表示装置の画面に表示させる必要寿命差演算手順(L2)とを含む。
上記必要寿命差演算手順(L2)は、
試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる第1乱数発生手順(L21)と、
第1乱数発生手順と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる第2乱数発生手順(L22)と、
第1乱数発生手順(L21)で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順(L22)で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)となる寿命比を算出する寿命比算出手順(L23)と、
これら第1乱数発生手順(L21),第2乱数発生手順(L22),および寿命比算出手順(L23)を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する累積確率分布作成手順(L24)と、
上記累積確率分布から設定信頼幅内の最大および最小の寿命比を読み取り、最小の寿命比は逆数で表して、それぞれ、
(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
(第1水準の寿命)/(第2水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
として定める必要寿命差読み取り手順(L25) と、
この読み取った必要寿命差を表示装置に出力させる必要寿命差出力手順(L26)と、を含む。
累積確率分布作成手順(L24)は、手順L21〜J23を設定回数繰り返させる手順L241と、その繰り返し過程で得て記憶しておいた寿命比から確率分布および累積確率分布を演算する手順L242となる。
各乱数発生手順(L21,L22)の詳細について説明する。これらの手順L21,L22は、前述の式1).に従うワイブル分布を特定し、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる。
乱数発生手順L21,L22において、ワイブル分布の特定のための寿命(L10寿命)は、適宜想定した値を、これらの手順L21,L22の計算式等に設定しておいても良く、また入力手段3からの入力によって可変としても良い。
また、寿命比較算出手順L23において、発生したワイブル乱数からのL10寿命を求める演算は、前述と同様に、加速試験において従来から用いられている中の適宜の寿命計算方法を用いれば良い。
図77に、この実施形態の乱数シミュレーションプログラムである必要寿命差見積もりプログラム41で求めた寿命比の確率分布と、発明が解決しようとする課題の欄で説明した上記従来の信頼幅を使う方法における手順3)で求めた分布とを比較した結果を示す。2つの結果は概ね一致していることが分かる。しかし、この実施形態は、従来の方法に比べて簡素に有為差が判定できるという利点がある。
図46と共に加速試験における有為差判断の必要寿命差見積もり装置につきする。この必要寿命差見積もり装置は、演算処理装置1と、この演算処理装置1の出力を画面に表示する表示装置2と、上記演算処理装置1に入力を行う入力手段3とを備える。
上記演算処理装置1は、上記表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、並びに比較する水準1および水準2の2つのロットの各試験個数の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Kと、実行命令に応答して必要な寿命差を演算しその演算結果を上記表示装置2の画面に出力する必要寿命差演算手段42とを備える。
この必要寿命差演算手段42は、次の構成の第1乱数発生手段43、第2乱数発生手段44、寿命比算出手段45、累積確率分布作成手段46、必要寿命差読み取り手段47、および必要寿命差出力手段48を備える。
第1乱数発生手段42は、試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる手段であり、図49の手順L21で説明した処理を行う。
第2乱数発生手段44は、第1乱数発生手段43と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる手段であり、手順L22で説明した処理を行う。
寿命比算出手段45は、第1乱数発生手段43で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と、第2乱数発生手段44で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)となる寿命比を算出する手段であり、手順L23で説明した処理を行う。
累積確率分布作成手段46は、これら第1乱数発生手段43,第2乱数発生手段44,および寿命比算出手段45の処理を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する手段であり、手順L24で説明した処理を行う。
必要寿命差読み取り手段47は、上記累積確率分布から設定信頼幅内の最大および最小の寿命比を読み取り、最小の寿命比は逆数で表して、それぞれ、
(第2水準の寿命)/(第1水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
(第1水準の寿命)/(第2水準の寿命)の場合の必要な寿命差、
として定める手段であり、手順L25で説明した処理を行う。
必要寿命差出力手段48は、この読み取った必要寿命差を表示装置2に出力させる手段であり、手順L26で説明した処理を行う。
この方法は、このようにワイブル分布に基づく乱数シミュレーションにより必要寿命差を求めるため、必要寿命差を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ定量的に求められて信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても必要寿命差を算出することができ る。また、この乱数シミュレーションに用いるプログラムは、条件入力を行えば勝手に優位差検定を行ってくれる手軽なツールであることが優れた点である。
図53〜図61は、加速試験における判定過程(S3)における有為差有無判定・有為寿命差見積もり過程となる方法を示す。この有為差有無判定・有為寿命差見積もり方法は、加速試験において、試験対象品の2つのロットの寿命から、有為差有無の判定、および少なくとも断定できる、倍率による寿命差を算出する方法である。
この加速試験における有為差有無判定・有為寿命差見積もり方法は、図53に示すコンピュータ1に、乱数シミュレーションプログラムである加速試験における有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム41を実行させることで行う。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および必要寿命差見積もりプログラム41により、図54に各機能達成手段をブロックで示した有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置が構成される。同図の有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置の構成については、後に説明する。
有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51は、図56および図57に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
この必要寿命差見積もり方法は、図54に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程M1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程M2とからなる。
入力過程M1では、図58に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示され、入力画面2a中に、所定の入力を促す表示が行われる。
入力画面2aは、同図の例では複数の画面に切り替えて表示される。入力画面のうち、第1の画面(図58(A)では、L10寿命とL50寿命とのいずれで有為差を検定するかを選択させる表示が行われる。この画面に対して、ラジオボタン等からなる表示部分を選択することで、L10寿命とL50寿命とのいずれかが選択できる。
第2の画面(図58(B))では、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値の入力を促す表示、および入力を記入する記入用表示が行われる。オペレータは、この記入用表示に、該当する値を入力する。
第2の画面(図58(C))では、比較する水準1および水準2の2つのロットの各試験個数n1,n2の入力、および試験結果の寿命を促す表示が行われ、その個数および寿命を入力する記入用表示が行われる。オペレータは、この記入用表示に対して該当する情報を入力する。
ワイブルスロープの値には、試験の実績値を入力することが好ましい。実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。また、試験個数および試験結果は、実際に行った試験における個数および結果を入力する。なお、試験個数と寿命は、水準2の欄に長寿命側の入力をしなければないらいとする入力規則が、有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51に手順として設定されている。この手順は、例えば促し画面出力手順N1の一部として設けられる。以上の点に注意して、所定の条件を入力し、入力画面2aのOKボタンを押すと計算が開始される。
図55のコンピュータ演算処理過程M2では、入力されたワイブルスロープの値、および2つのロットの各試験個数n1,n2、試験結果の寿命から、有為差有無の判定に必要な寿命差を計算して、有為差有無を判定し、有為差有りの場合には、少なくとも断定できる寿命差を計算する。
計算が終了すると、図59に示す出力画面に結果が表示される。有為差がない場合は、同図(A)のように、有為差無しという表示と、有為差有りと判断するための必要寿命差が表示される。
有為差がある場合は、同図(B)のように、有為差ありという表示と、少なくとも断定できる寿命差(倍率)が表示される。
図53の有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図56,図57に流れ図で示す手順を備える。図56に示すように、有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム51は、促し画面出力手順N1と必要寿命差演算手順N2とでなり、促し画面出力手順N1では、図58と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、有為差有無判定・有為寿命差見積もり手順N2が実行される。同図の入力画面に対して入力する過程が、図55の入力過程M1であり、同図のコンピュータ演算処理過程M2は図56の有為差有無判定・有為寿命差見積もり手順N2を実行する過程である。
有為差有無判定・有為寿命差見積もり手順N2は、図57に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には各手順M21〜M29毎の具体的な処理例を注釈として併記してある。
理解の容易のため、具体的数値を上げ、同図の具体的処理例を参照して、各手順N21〜N29を説明する。
今、あるL10寿命を持つワイブル分布(図60(A))で、ワイブルスロープは4としている)である加速試験で、2ロットの試験を行ったとする。1ロット目(水準1)の試験個数n1が3個で、2ロット目(水準2)の試験個数n2も3個であるとする。
まず、そのワイブル分布に従って1ロット目の試験個数n1である3個の乱数を発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を算出する(N21)。算出方法は、従来の加速試験の結果からの寿命算出に用いられている適宜の方法を使用する。なお、L10寿命だけ、またはL50寿命だけを演算しても良いが、この実施形態では、L10寿命とL50寿命のそれぞれについて必要寿命差を計算するために、L10寿命とL50寿命の両方を算出している。
次に、同じL10寿命を持つワイブル分布から、第2ロット目の試験個数n2である3個の乱数を3個発生させ、その3個のデータからL10寿命とL50寿命を上記と同じ方法で算出する(N22)。
次に、得られた1組のL10寿命とL50寿命の寿命比をそれぞれ算出する。すなわちL10寿命同士の寿命比、およびL50寿命同士の寿命比を算出する(N23)。
次に、これらの作業を設定回数(例えば1000回)繰り返し、設定回数組(1000組)のL10およびL50寿命の寿命比の確率分布(図60(B)と累積確率分布(図60(C)を作成する(N24)。
これらは、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとり、寿命試験を行った結果、どの程度の寿命差が出るのかを設定回数(1000回)確認することに対応している。
度数分布の図(図60(B))から、同じ寿命分布を持つロットから試験片を抜きとって試験を行ったにもかかわらず、寿命はばらついていることが分かる。その寿命比のばらつきを、所定信頼度区間、例えば累積確率分布の5%と95%の区間(90%信頼区間)として定義すると、その寿命ばらつきは、図60(C)に示したように0.39〜2.57倍であると算出できる(N243)。
この結果は、同じ寿命分布を持つロットから3個の試験片を2組抜きとって寿命比較を行っても、90%のものは0.39〜2.57倍の間で寿命比がばらついてしまうことを示している。逆にいうと、ばらつき内の最大値である2.57倍以上の寿命差があれば、そのロット間の寿命分布が異なっている可能性が高いということになるので、2ロットの比較試験で試験個数がそれぞれ3個の場合、有為差を判断できる寿命差は2.57倍以上であるといえる。
そこで、上記ばらつき内の最大値である2.57倍と、入力された2つのロット(水準1,水準2)の寿命差(倍率)、すなわち〔(水準2の寿命)/(水準1の寿命)〕とを比較し(N25)、入力された2つのロットの寿命の寿命差の方が小さいと、有為差無しと反対してその判定結果と上記の有為差を判断できる寿命差の値(上記の例では2.57場合)とを出力画面に表示させ(N29)、コンピュータ1による処理を終了する。
入力された2つのロットの寿命の寿命差の方が大きい場合は、次の手順N26〜N28に進み、少なくとも断定できる寿命差の演算を行う。
手順N26では、寿命分布が異なるワイブル分布との組み合わせで、上述と同様の計算を行う。具体的には、ワイブル分布と寿命が1.1 、1.2 …50倍異なるワイブル分布の組み合わせで計算を行う。このようにして計算を行うと、組み合わせが1.1 、1.2 …50倍と変化するごとに、寿命差が1.1 、1.2 …50倍を中心にしてばらつくはずである。
最後に、組み合わせの倍率を横軸にして、それぞれの累積確率分布の90%区間を縦軸にとったグラフ(図60(D))を作成する(N27)。この図は、寿命がある倍率で異なる2ロットの試験片群から3個の試験片を1組ずつ抜き取って寿命比較を行った場合、どの程度寿命差がばらつくかを示した図である。例えば、4倍の2ロットの試験片群から2個の試験片を1組ずつ抜き取り、寿命比較を行った場合、寿命差は4倍になるケースが最も多いものの、7.5倍の寿命差になるケースも10%の確率で起こりえることがこの図から読み取れる。
今、問題としている2ロット間の寿命差は3倍である。図から、3倍の寿命差は寿命差が1.7倍以上ある2ロット間でしか起こり得ない寿命差だということが読み取れるので、少なくともいえる寿命差は1.7倍ということができる。このように読み取った値を、少なくとも断定できる寿命差と定める(N28)。
この定めた寿命差の値は、有為差有りという表示と共に、表示装置2の出力画面2b(図59(A))に出力する(N29)。
以上が2ロットの寿命から少なくともいえる寿命差を算出する手順である。
図56,図57に示し有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム41についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム41は、整理すると、次の手順により構成される。
この発明の加速試験における有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム(51)は、コンピュータで実行可能なプログラムであって、
上記表示装置(2)の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、比較する水準1,水準2の2つのロットの各試験個数および試験結果の寿命の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(N1)と、
実行命令に応答して上記有為差有無の判定および少なくとも断定できる寿命差の演算を行いその演算結果を上記表示装置の画面に出力する有為差判定・有為寿命差演算手順(N2)とを含む。
この有為差判定・有為寿命差演算手順(N2)は、
上記入力情報のワイブルスロープの値および仮設定寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる第1乱数発生手順(N21)と、
第1乱数発生手順(N21)と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる第2乱数発生手順(N22)と、
第1乱数発生手順(N21)で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順(N22)で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の水準1,水準2の寿命の寿命比を算出する寿命比算出手順(N23)と、
これら第1乱数発生手順(N21),第2乱数発生手順(N22),および寿命比算出手順(N23)を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成して累積確率分布から、設定信頼幅内の最大の寿命比を読み取る累積確率分布分析手順(N24)と、
上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比が上記累積確率分布分析手順で得た最大寿命比を超える場合に有為差有りと判定し最大寿命比以内の場合に有為差無しと判定する有為差有無判定手順(N25)とを備える。
有為差判定・有為寿命差演算手順(N2)は、さらに、有為差有無判定手順(N25)で有為差有りとした場合に実行され、上記ワイブル分布を仮設定寿命が異なる設定倍率となるワイブル分布に繰り返し毎に順次変えて、上記累積確率分布分析手順を、上記設定倍率が設定最小倍率から設定最大倍率となるまで繰り返す倍率変更繰り返し手順(N26)と、
この倍率変更繰り返し手順(N26)で得られた、繰り返し変更した設定倍率と上記信頼幅内の最大の寿命比の関係を示すグラフである寿命倍率関係グラフを作成する寿命倍率関係グラフ作成手順(N27)と、
上記寿命倍率関係グラフから、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比に対応する上記設定倍率の値を読み取り、その読み取った値を少なくとも断定できる寿命差とする有為寿命差読み取り手順(28)と、
上記有為差有無判定手順(N28)で判定した結果および上記有為寿命差読み取り手順で読み取った、少なくとも断定できる寿命差を表示装置に表示させる結果出力手順(29)と、を含む。
上記累積確率分布分析手順(N24)は、手順N21〜N23を設定回数繰り返させる手順N241と、その繰り返し過程で記憶したおいた寿命比から確率分布および累積確率分布を演算する手順N242と、この累積確率分布から90%範囲の大寿命比を読み取る手順N243とからなる。
上記倍率変更繰り返し手順(N26)は、設定倍率が設定最小倍率から設定最大倍率となるまで繰り返す手順N261と、繰り返し毎に異なる設定倍率に変更する倍率変更手順N231とからなる。
各乱数発生手順(N21,N22)の詳細について説明する。これらの手順N21,N22は、前述の式1).に従うワイブル分布を特定し、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる。
乱数発生手順N21,N22において、ワイブル分布の特定のための寿命(L10寿命)は、適宜想定した値を、これらの手順N21,N22の計算式等に設定しておいても良く、また入力手段3からの入力によって可変としても良い。
また、寿命比較算出手順N23において、発生したワイブル乱数からのL10寿命を求める演算は、前述と同様に加速試験において従来から用いられている中の適宜の寿命計算方法を用いれば良い。
この打切り時間見積もり装置プログラム51では、有為差のある寿命差有りと判断するための必要寿命差の関係を求めている。図61に寿命差有りと判断するための必要寿命差の関係を示す。この結果は、事前に入力するワイブルスロープと試験個数によって変化するので、図にはワイブルスロープと試験個数を変化させた結果を示している。試験個数が増えるほど、あるいはワイブルスロープが大きいほど、傾きが小さくなることが分かる。これらの結果は、(1) 試験個数が増えるほど寿命差有りと判断するための必要寿命差を小さくできること、(2) ワイブルスロープが大きい試験条件ほど寿命差有りと判断するための必要寿命差を小さくできることを示している。
図54と共に加速試験における有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置につきする。この有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置は、演算処理装置1と、この演算処理装置1の出力を画面に表示する表示装置2と、上記演算処理装置1に入力を行う入力手段3とを備える。
上記演算処理装置1は、上記表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、比較する水準1,水準2の2つのロットの各試験個数および試験結果の寿命の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Mと、実行命令に応答して上記有為差有無の判定および少なくとも断定できる寿命差の演算を行いその演算結果を上記表示装置2の画面に出力する有為差判定・有為寿命差演算手段51とを備える。
上記有為差判定・有為寿命差演算手段52は、第1乱数発生手段53、第2乱数発生手段54、寿命比算出手段55、累積確率分布分析手段56、有為差有無判定手段57、倍率変更繰り返し手段58、寿命倍率関係グラフ作成手段59、有為寿命差読み取り手段60、および結果出力手段61を有する。
第1乱数発生手段53は、上記入力情報のワイブルスロープの値および仮設定寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる手段であり、図57の手順N21で説明した処理を行う。
第2乱数発生手段54は、第1乱数発生手段53と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる手段であり、手順N22で説明した処理を行う。
寿命比算出手段55は、第1乱数発生手段53で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と、第2乱数発生手段54で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の水準1,水準2の寿命の寿命比を算出する手段であり、手順N23で説明した処理を行う。
累積確率分布分析手段56は、これら第1乱数発生手段53,第2乱数発生手段54,および寿命比算出手段55の処理を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成して累積確率分布から、設定信頼幅内の最大の寿命比を読み取る手段であり、手順N24で説明した処理を行う。
有為差有無判定手段57は、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比が上記累積確率分布分析手段56で得た最大寿命比を超える場合に有為差有りと判定し最大寿命比以内の場合に有為差無しと判定する手段であり、手順N25で説明した処理を行う。
倍率変更繰り返し手段58は、有為差有無判定手段57で有為差有りとした場合に実行され、上記ワイブル分布を仮設定寿命が異なる設定倍率となるワイブル分布に繰り返し毎に順次変えて、上記累積確率分布分析手段56の処理を、上記設定倍率が設定最小倍率から設定最大倍率となるまで繰り返す手段であり、手順N26で説明した処理を行う。
寿命倍率関係グラフ作成手段59は、倍率変更繰り返し手段58で得られた、繰り返し変更した設定倍率と上記信頼幅内の最大の寿命比の関係を示すグラフである寿命倍率関係グラフを作成する手段であり、手順N27で説明した処理を行う。
有為寿命差読み取り手段60は、上記寿命倍率関係グラフから、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比に対応する上記設定倍率の値を読み取り、その読み取った値を少なくとも断定できる寿命差とする手段であり、手順N28で説明した処理を行う。
結果出力手段61は、上記有為差有無判定手段57で判定した結果、および上記有為寿命差読み取り手段60で読み取った、少なくとも断定できる寿命差を表示装置2に表示させる手段であり、手順N29で説明した処理を行う。
この方法は、このようにワイブル分布に基づく乱数シミュレーションにより有為差有無を判定し、また少なくとも断定できる寿命差を求めるため、これら有為差有無および少なくとも断定できる寿命差を、簡単かつ迅速に試算することができる。また、定量的に求められて信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても試算することができる。この乱数シミュレーションに用いるプログラムは、条件入力を行えば勝手に有為差有無を判定および少なくとも断定できる寿命差の検定を行ってくれる手軽なツールであることが優れた点である。
図62〜図75は、打切り試験または加速試験における設定過程(S1)として、ワイブルスロープを見積もる過程となる方法を示す。このワイブルスロープ見積もり方法は、試験の解釈または設計に実績値として用いるワイブルスロープの範囲を、同一仕様の試験対象品の試験結果から見積もる方法である。
この寿命試験のワイブルスロープ見積もり方法は、図62に示すコンピュータ1に、乱数シミュレーションプログラムである寿命試験のワイブルスロープ見積もりプログラム71を実行させることで行う。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、およびワイブルスロープ見積もりプログラム71により、図63に各機能達成手段をブロックで示した寿命試験のワイブルスロープ見積もり装置が構成される。同図のワイブルスロープ見積もり装置の構成については、後に説明する。
ワイブルスロープ見積もりプログラム71は、図67に示す比較データ群72、および図65,図66に流れ図で示す手順を備えるものである。これら図65〜図67の内容は、後に説明する。
このワイブルスロープ見積もり方法は、図64に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程P1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程P2とからなる。
入力過程P1では、図68に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示され、入力画面2a中に、所定の入力を促す表示が行われる。
この入力画面2aでは、図68(A)のように、何回目(図では試験水準○○と称す)の試験であるかの入力を行う画面と、その試験毎の試験個数およびワイブルスロープの値を入力する画面(図68(B))とが表示される。
ここで、ワイブルスロープは、最小寿命を考慮してワイブルプロットした結果を入力することが好ましい。
オペレータは、以上の点に注意して、上記試験回数、試験毎の試験個数およびワイブルスロープの値を入力し、入力画面上の計算開始ボタン(図示せず)を指定することなどで実行命令を入力すると、ワイブルスロープ見積もりプログラム71の実行による計算が開始される。
図64のコンピュータ演算処理過程P2では、入力された各値を比較データ群72と比較し、実績値として用いることのでるワイブルスロープの範囲を計算する。計算が終了すると、図69に示す出力画面に結果が表示される。
図62のワイブルスロープ見積もりプログラム71は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図67に示す比較データ群72と、図65,図66に流れ図で示すワイブルスロープ見積もり手順Q2とでなる。
比較データ群72は、図67に具体例を示すように、試験個数毎に、試験結果のワイブルスロープと、この試験結果のワイブルスロープの値に対して、所定の確率で取り得る可能性があるとするワイブルスロープのばらつきの上限値および下限値との関係を定めた比較データ72aの集まりである。比較データ72aは、試験個数毎に設けられる。
比較データ72aは、後に図71,図72と共に説明するデータ作成方法で得たデータである。図67の横軸は、上記データ作成方法における乱数を発生させたワイブル分布であり、縦軸がワイブルスロープのばらつきである。この比較データ72aは、対比に用いる場合、縦軸が実際の試験結果のワイブルスロープの値を対応させる値を示し、横軸がその試験結果のワイブルスロープの場合のばらつきの範囲を示すことになる。
ワイブルスロープ見積もり手順Q2は、図66に示すように、ばらつき読み取り手順Q21と、絞り込み手順Q22と、結果出力手順Q23とを含む。
ワイブルスロープ見積もり手順Q2は、入力情報における各回の試験毎の、試験個数とワイブルスロープの値を上記比較データ群72と比較して、試験個数に対応する比較データから試験結果のワイブルスロープに対応するワイブルスロープのばらつきの上限値および下限値を読み取る手順である。
絞り込み手順Q22は、この読み取った試験毎のワイブルスロープのばらつきの上限値と下限値間の重複範囲を求めて、その重複範囲の上限値と下限値とを、試験結果から見積られるワイブルスロープの範囲として定める絞り込む手順である。
結果出力手順Q23は、上記絞り込み手順Q22で得られたワイブルスロープの範囲を表示装置2の画面に、図69のように出力する手順である。
図66に示すワイブルスロープ見積もり手順Q2を、具体的数値例を用いて説明する。 今、実績が少ない試験を行い、図70(A)の図表のような試験結果が得られたとする。図表中の結果1は、試験個数が8個でワイブルスロープが2であったという結果であるが、この結果から、試験個数が8個でワイブルスロープが2であったという結果から得られるワイブルスロープの範囲を絞り込むことができる。
図67の比較データ72aにおけるグラフは、試験個数8個で得られたワイブルスロープと、そのバラツキの関係(ただし、90%の確率の信頼区間)を示す。図から、図70(A)の結果1(ワイブルスロープ2)の場合に、90%の確率であり得るワイブルスロープの範囲は0.74〜3.24であると判断できる。これは同様にして、図70(A)中の結果2、3・・に対しても、同様の絞込みを行う。
図70(B)に、ワイブルスロープの各試験結果毎の絞込みの結果を示す。ここまでの手順が、図66のばらつき読み取り手順である。
ここで、ワイブルスロープが試験によって決まっているという立場にたてば、図70の試験1〜5の結果から得られるワイブルスロープの範囲は、ワイブルスロープの範囲が重なる範囲を選択すればいいということになるので、さらに絞り込むことができて、1.48〜2.54になる。
このように、試験結果毎のワイブルスロープの範囲が重なる範囲を選択し、試験結果から見積られるワイブルスロープの範囲として定める手順が、図66の絞り込み手順Q22である。
結果出力手順Q23では、このように定めた結果であるワイブルスロープの最小値と最大値とを、表示装置2の画面に、図69の出力画面例における第2行目のようにように表示する。なお、図69の値は、図70とは異なる試験例の結果を示している。この出力画面例では、試験回数(試験水準)と、その回数における試験個数およびワイブルスロープの入力値と、各試験回数毎のあり得るワイブルスロープの上限値および下限値を、上記複数回の試験による結果と共に表示される。
また、図69の出力画面では、ワイブルスロープは試験方法だけでなく材料によっても変化するという立場にたった場合の結果を併せて示している。この立場に立った場合、複数回の試験の結果により得られた有り得るワイブルスロープの範囲をすべて選択する。したがって、この場合、試験結果から見積られるワイブルスロープの範囲は、0.74〜7.03になる。このワイブルスロープの材料によっても変化するという立場は、より一般的な立場ではあるが、試験を行う毎に範囲が広がり、絞り込みが不可となるため、この発明では、ワイブルスロープが試験によって決まっているという立場に立った場合の処理を行うようにしている。
図73(A)に試験個数とワイブルスロープのばらつきの変化を示す。この結果は、ワイブルスロープが4として計算したものである。ワイブルスロープのばらつきは試験個数が多くなるにつれて小さくなっていくことが分かる。また、そのばらつきの変化は、試験個数が20個までが著しいことが分かる。
図73(B)に図73(A)の下限値の値を試験個数で微分し、微分値の最大値で規格化した結果を示す。その微分値は試験片が10個で約80%まで低下し、試験個数が20個で約90%まで低下することが分かる。これは、試験個数を10個以上に増やせば、ワイブルスロープが真の値に近づいていく度合いが小さくなることを示している。したがって、ワイブルスロープを求める必要試験個数はおおよそ10個以上、望ましくは20個以上が目安となる。
この傾向は、ワイブルスロープが小さな試験でも同じであった。参考までに、図73(C)にワイブルスロープを1.85にした場合の図73(B)と同様の図を示す。図73(B)と同様に、微分値は試験片が10個で約80%まで低下し、試験個数が20個で約90%まで低下することが分かる。
次に、上記比較データ群72を求める方法を、図71,図72と共に説明する。説明を簡単にするため、具体例を挙げる。今、ワイブルスロープが4である試験で10個の試験を行った場合、ワイブルスロープがどのくらいの範囲でばらつくかを見積もる。まず初めに、ワイブルスロープが4として、L10寿命を適当に設定した寿命分布(図72(A)に示すワイブル分布)から、乱数を10個発生させ(図71手順R1)、ワイブルプロットによりワイブルスロープを求める(手順R2)。
次に、この作業(R1,R2)を設定回数(例えば1000回)繰り返し、ワイブルスロープの確率分布(図72(B))と累積確率分布(図72(C))を作成する。次に、累積確率分布からワイブルスロープのばらつきを、所定の信頼区間(5%と95%の区間(90%信頼区間))で読み取る(手順R3)。これは、ワイブルスロープが4の寿命分布から寿命データを10個得た時、ワイブルスロープがどの程度ばらつくかを示したものである。この図から、ワイブルスロープが4の寿命分布からは、ワイブルスロープが2.56以下8.63以上になる確率はそれぞれ5%であるので、この領域以外のワイブルスロープが試験個数10で得られた場合、その試験はワイブルスロープが4の試験ではない確率が90%以上という判断ができる。
これら一連の作業(R1〜R4)を、試験個数とワイブルスロープを変化させて計算すする。変化させる試験個数の範囲は、例えば1〜200程度とするが、任意に設定した範囲で良い。変化させるワイブルスロープについても、任意に設定した範囲で良い。上記のように試験個数とワイブルスロープを種々変化させて計算した結果により、横軸が乱数を発生した分布のワイブルスロープ、縦軸をワイブルスロープのばらつきとしてグラフ(図72(D))を作図する(手順R5)。
図72(D)に示したグラフが、図67に示した比較データ群72のグラフであり、このグラフを用いれば、上記のように実績からワイブルスロープの範囲を絞り込むことができる。図71ではこの絞り込み手順をR5で示している。
上記の手順R1〜R5が、上記比較データ群72を求める方法である。図72(D)のグラフは、図67につき説明したように、横軸が上記データ作成方法における乱数を発生させたワイブル分布であり、縦軸がワイブルスロープのばらつきであるが、対比に用いる場合、縦軸が実際の試験結果のワイブルスロープの値を対応させる値を示し、横軸がその試験結果のワイブルスロープの場合のばらつきの範囲を示すことになる。
上記の説明は、具体的数値例で説明したが、図71,図72の方法を一般的に示すと、次の方法となる。
この方法は、上記比較データ群72を作成する過程として、
設定ワイブルスロープを持つ設定寿命のワイブル分布を求め、このワイブル分布に従った乱数を仮の試験個数分だけ発生させる乱数発生手順(R1)と、
この発生させた乱数をワイブルプロットとしてワイブルスロープを求めるワイブルスロープ算出手順(R2)と、
上記乱数発生手順およびワイブルスロープ算出手順を設定回数繰り返し、各繰り返し過程で得られたワイブルスロープの確率分布と累積確率分布を作成し、その作成された累積確率分布から所定の信頼区間のワイブルスロープの上限値および下限値を読み取るワイブルスロープ範囲算出手順(R3)と、
上記仮の試験個数および設定ワイブルスロープを順次変化させて、上記乱数発生手順、ワイブルスロープ算出手順、およびワイブルスロープ範囲算出手順を繰り返し、試験個数毎に、ワイブルスロープ別に所定の確率で起こり得る可能性があるワイブルスロープの範囲を求めるばらつき範囲演算手順(R4)と、
このばらつき範囲演算手順(R4)で得られた計算結果を使って、試験個数毎に、横軸を乱数を発生したワイブル分布のワイブルスロープ、縦軸をワイブルスロープのばらつきとして、上記所定の確率で起こり得る可能性があるワイブルスロープの範囲の上限値および下限値のグラフを作成し、このグラフにおける縦軸の値を、上記比較データにおける試験結果のワイブルスロープの値、横軸の値を、所定の確率で取り得る可能性があるワイブルスロープの値とするグラフ作成手順(R5)と、を含む。
乱数発生手順(R1)の詳細について説明する。この手順R1では、前述の式1).に従うワイブル分布を特定し、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる。
図71の乱数発生手順R1において、ワイブル分布の特定のための寿命(L10寿命)は、適宜想定した値を用いる。
図63と共に寿命試験のワイブルスロープ見積もり装置につき説明する。このワイブルスロープ見積もり装置は、演算処理装置であるコンピュータ1は、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータにに入力を行う入力装置3とを備える。コンピュータ1は、比較データ群72と演算処理部73とを有する。
比較データ群72は、上記のように、試験個数毎に、試験結果のワイブルスロープの値と、この試験結果のワイブルスロープの値に対して、所定の確率で取り得る可能性があるとするワイブルスロープのばらつきの上限値および下限値との関係を定めた比較データの集まりである。
演算処理部73は、促し画面表示手段74、ばらつき読み取り手段75、絞り込み手段76、および結果出力手段77を含む。
促し画面表示手段74は、表示装置2の画面に、入力情報として、各回の試験毎の試験個数とワイブルスロープの値を入力することを促す表示を行う手段であり、図65の促し画面出力手順Q1につき説明した処理を行う。
ばらつき読み取り手段75は、上記入力情報における各回の試験毎の、試験個数とワイブルスロープの値を上記比較データ群72と比較して、試験個数に対応する比較データ72aから試験結果のワイブルスロープに対応するワイブルスロープのばらつきの上限値および下限値を読み取る手段であり、図66のばらつき読み取り手順Q21につき説明した処理を行う。
絞り込み手段76は、この読み取った試験毎のワイブルスロープのばらつきの上限値と下限値間の重複範囲を求めて、その重複範囲の上限値と下限値とを、試験結果から見積られるワイブルスロープの範囲として定める手段であり、図66の絞り込み手順Q22につき説明した処理を行う。
結果出力手段77は、上記絞り込み手段76で得られたワイブルスロープの範囲を表示装置2の画面に出力する手段であり、図66の結果出力手順Q23につき説明した処理を行う。
ワイブルスロープの仮定について考察する。この発明方法は、ワイブルスロープを仮定するが、仮定して良いかにつき説明する。この仮定は、レオナード ジー ジョンソン(LEONARD G. JOHNSON)の寿命優位差検定でも行われており、寿命試験結果の設計や検定では不可欠なものであるといえる。従来より、ワイブルスロープは材料によって決まる定数であるとされ、材料の強さの分散を示す尺度とされていた。しかし、本発明者らはワイブル分布のパラメーターの持つ意味について検討し、材料のばらつきは尺度因子によって決まるものであり、ワイブルスロープが試験条件(接触状態)によって変化するものと考えることが合理的であることを見いだした。本発明者等の寿命試験でも、ワイブルスロープは試験方法によって大きく変化することを経験している。図74は、同一の点接触試験機でSUJ2材を評価した結果である。ワイブルスロープは6.01であり、この結果を、図71と共に説明したワイブルスロープの範囲を決定するソフトウェアで解析すると、少なくとも3.4以上のワイブルスロープを持つ試験であることが分かる。この結果は一例であるが、点接触寿命試験結果から得られるワイブルスロープは、実機の寿命試験結果(清浄油潤滑の寿命試験結果では1.85で、統計的検討でも最大2.01)よりもほとんどの場合大きくなるケースが多い。以上のことから、ワイブルスロープが試験条件(接触状態)によって変化すると考えることは、理論的にも経験的にも確からしいものであると考えられる。
次に、ワイブルスロープを実績値から判断しなかった場合に生じる不都合の例について考える。図75にワイブルスロープ1.5でL10寿命234 (尺度因子1000)の分布から乱数を10個発生させ、その結果をワイブルプロットした結果を示す。寿命データが少ない場合、たまたま寿命がそろってしまい、ワイブルスロープが大きくなり、寿命のバラツキを示す信頼幅が小さくなってしまうことがある。ここで、このワイブルスロープ3.22は10%以上の確率で有り得る値であり、十分に起こりえる結果である。この結果から推測されるL10寿命の範囲は220〜660になり、真のワイブルスロープの値1.5を仮定した時の範囲60〜630よりも小さい。これは、試験個数が少ない場合ではワイブルスロープがでたらめな値になるため、信頼幅の値が全く信用できなくなる例である。以上のことからも、ワイブルスロープを実績からその値を安全目で見積り(ワイブルスロープを小さめに見積もる)、その値を使って寿命試験の検定や解釈を行うこの発明方法は、現状よりも妥当なものであると考える。
(A)はこの発明の一実施形態に係る寿命試験の設計・判定方法の流れ図、(B)はその設定過程の流れ図、(C)はその判定過程の流れ図である。 同寿命試験の設計・判定方法を実施する設計・判定装置の概略ブロック図である。 同寿命試験の設計・判定方法に用いる打切り時間見積もり装置の概略ブロック図である。 同打切り時間見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。 同打切り時間見積もり装置を用いた打切り時間見積もり方法の概略流れ図である。 同打切り時間見積もり方法を実施する打切り時間見積もりプログラムの流れ図である。 打切り時間見積もりプログラムの変形例の流れ図である。 同寿命試験の設計・判定方法に用いる打切り時間見積もり装置および試験中止基準時間装置を複合化した装置の概略ブロック図でである。 同複合化した装置の概念構成のブロック図である。 同装置を用いた試験中止基準時間見積もり方法の概略流れ図である。 同試験中止基準時間見積もり方法を実施する試験中止基準時間見積もりプログラムの流れ図である。 試験中止基準時間見積もりプログラムの変形例の流れ図である。 図3の打切り時間見積もり装置における入力画面例の説明図である。 図3の打切り時間見積もり装置および図8の装置における出力画面例の説明図である。 軸受の寿命と頻度の関係例を示すグラフである。 ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および全数打切り時間の見積もり例を示すグラフである。 ワイブルスロープの各パラメータの影響例を示すグラフである。 ワイブル分布の定め方を示すグラフである。 ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および1個破損時打切り時間の見積もり例を示すグラフである。 ワイブル乱数の所定の累積確率と寿命の関係例、および最短破損時間の関係例を示すグラフである。 目標品質による全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。 試験個数による全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。 ワイブルスロープによる全数打切り時間と試験中止基準時間の計算結果の変化例を示すグラフである。 打切り試験の試験個数の計算方法を示す流れ図である。 この発明の寿命試験の設計・判定方法に用いる寿命見積もり装置の概略ブロック図である。 同寿命見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。 同寿命見積もり装置を用いた寿命見積もり方法の概略流れ図である。 同寿命見積もり方法を実施する寿命見積もりプログラムの概略の流れ図である。 同プログラムにおける寿命演算手順の詳細を示す流れ図である。 同流れ図を特定の数値の場合に適用した例を示す概略流れ図である。 図25の寿命見積もり装置における入力画面例の説明図である。 図25の寿命見積もり装置における出力画面例の説明図である。 (A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は寿命分布と全数未破損となる確率の関係を示すグラフである。 (A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は寿命分布と6個中5個未破損となる確率の関係を示すグラフである。 この発明の一実施形態に係る寿命試験の設計・判定方法に用いる必要試験個数見積もり装置の概略ブロック図である。 同必要試験個数見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。 同必要試験個数見積もり装置を用いた必要試験個数見積もり方法の概略流れ図である。 同必要試験個数見積もり方法を実施する必要試験個数見積もりプログラムの概略の流れ図である。 同プログラムにおける必要試験個数演算手順の詳細を示す流れ図である。 図35の必要試験個数見積もり装置における入力画面例の説明図である。 図35の必要試験個数見積もり装置における出力画面例の説明図である。 有為差有りと判断できる寿命差と試験個数の関係例を示すグラフである。 (A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は頻度と寿命比の関係例を示す確率分布のグラフ、(C)は累積確率と寿命比の関係例を示すグラフ、(D)はL10寿命、L50寿命につき、有為差有りと判断できる寿命差と試験個数の関係例を示すグラフである。 有為差有りと判断できる寿命差と試験個数の関係を、各種のワイブルスロープにつき示したグラフである。 この発明の一実施形態に係る寿命試験の設計・判定方法に用いる必要寿命差見積もり装置の概略ブロック図である。 同必要寿命差見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。 同必要寿命差見積もり装置を用いた必要寿命差見積もり方法の概略流れ図である。 同必要寿命差見積もり方法を実施する必要寿命差見積もりプログラムの概略の流れ図である。 同プログラムにおける必要寿命差演算手順の詳細を示す流れ図である。 図45の必要寿命差見積もり装置における入力画面例の説明図である。 図45の必要寿命差見積もり装置における出力画面例の説明図である。 (A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は頻度と寿命比の関係例を示す確率分布のグラフ、(C)は累積確率と寿命比の関係例を示すグラフである。 この発明の一実施形態に係る寿命試験の設計・判定方法に用いる有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置の概略ブロック図である。 同有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。 同有為差有無判定・有為寿命差見積もりを用いた必要寿命差見積もり方法の概略流れ図である。 同有為差有無判定・有為寿命差見積もり方法を実施する有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラムの概略の流れ図である。 同プログラムにおける有為差有無判定・有為寿命差見積もり手順の詳細を示す流れ図である。 図53の有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置における入力画面例の説明図である。 図53の有為差有無判定・有為寿命差見積もり装置における出力画面例の説明図である。 (A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は頻度と寿命比の関係例を示す確率分布のグラフ、(C)は累積確率と寿命比の関係例を示すグラフ、(D)は少なくとも断定できる寿命差(倍率)と寿命差との関係を示すグラフである。 (A)はワイブルスロープ別の寿命倍率と必要寿命差の関係を示すグラフ、(B)は試験個数別の寿命倍率と必要寿命差の関係を示すグラフである。 この発明の一実施形態に係る寿命試験の設計・判定方法に用いるワイブルスロープ見積もり装置の概略ブロック図である。 同ワイブルスロープ見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。 同ワイブルスロープ見積もり装置を用いたワイブルスロープ見積もり方法の概略流れ図である。 同方法を実施するワイブルスロープ見積もりプログラムの概略の流れ図である。 同プログラムにおけるワイブルスロープ見積もり手順の流れ図である。 比較データ群の内容例を示す説明図である。 図62のワイブルスロープ見積もり装置における入力画面例の説明図である。 図62のワイブルスロープ見積もり装置における出力画面例の説明図である。 同実施形態の方法,装置による試験結果と絞り込み結果とを対比した説明図である。 比較データ群を作成する方法の流れ図である。 (A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は頻度とワイブルスロープの関係例を示す確率分布のグラフ、(C)は累積確率とワイブルスロープの関係例を示すグラフ、(D)は乱数を発生したワイブルスロープとワイブルスロープの上限値,下限値の関係を示すグラフである。 (A)は試験個数とワイブルスロープのばらつきの変化の関係を示すグラフ、(B)は同図(A)の下限値を試験個数で微分して微分値を規格化し結果を示すグラフ、(C)はワイブルスロープを1.85とし場合の同図(B)と同様の図である。 同一の点接触試験機でSUJ材を評価した寿命と累積破損確率の関係を示すグラフである。 乱数発生による寿命と累積破損確率の関係を示すグラフである。 ワイブル確率紙の説明図である。 実施形態の方法と従来の信頼幅を使った方法の寿命ばらつきの分布比較図である。 従来の打切りおよび加速試験の手順を示す流れ図である。 従来の信頼幅を使った寿命の有為差判定方法の説明図である。
符号の説明
1…コンピュータ(演算処理手段)
2…表示装置
3…入力装置
6…打切り時間見積もりプログラム
7,7E,7F,7K,7M,…促し画面出力手段
8…打切り時間演算手段
9,9A…ワイブル分布特定手段
10,10A…乱数発生手段
11,11A…乱数分析手段
12,12A…繰り返し手段
13,13A…累積分布演算手段
14,14A…対応時間読み取り手段
15,15A…読取結果出力手段
19…試験中止基準時間見積もりプログラム
22…寿命見積もり演算手段
23……乱数発生手段
24…乱数分析手段
25…設定割合寿命調査手段
26…異寿命充足調査手段
27…寿命読み取り手段
28…読取結果出力手段
31…必要試験個数見積もり演算プログラム
32…必要試験個数演算手段
33…第1乱数発生手段
34…第2乱数発生手段
35…寿命比算出手段
36…累積分布作成手段
37…個数・寿命差グラフ作成手段
38…必要試験個数読み取り手段
39…読取結果出力手段
41…必要寿命差見積もり演算プログラム
42…必要寿命差演算手段
43…第1乱数発生手段
44…第2乱数発生手段
45…寿命比算出手段
46…累積分布作成手段
47…必要試験個数読み取り手段
48…読取結果出力手段
51…有為差有無判定・有為寿命差見積もりプログラム
52…有為差有無判定・有為寿命差見積もり手段
53…第1乱数発生手段
54…第2乱数発生手段
55…寿命比算出手段
56…累積分布作成手段
57…有為差有無判定手段
58…倍率変更繰り返し手段
59…結果出力手段
71…ワイブルスロープ見積もり方法プログラム
72…比較データ群
72a…個数毎の比較データ
73…演算処理部
74…促し画面出力手段
75…ばらつき読み取り手段
76…絞り込み手段
77…結果出力手段

Claims (6)

  1. 軸受等の機械部品またはその試験片からなる試験対象品を、所定の環境条件においた状態を続ける寿命試験において、寿命判断の基準となる基準時間、寿命差、または試験個数である所定の設計対象項目の値を定める設計過程と、寿命試験を行った結果から試験対象品の寿命、または有為性、または寿命差である解釈項目の判定を行う判定過程とを含む寿命試験の設計・判定方法であって、
    上記設計過程は、試験対象品に対応する所定のワイブル分布に従ったワイブル乱数を、試験個数と見立てた個数だけ発生させてそのワイブル乱数を分析する手順を繰り返し、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めて、その確率分布を基に上記所定の設計対象項目の値を定める過程であり、
    上記判定過程は、試験結果に応じてワイブル乱数を試験個数分発生させ、その発生させたワイブル乱数を分析する手順を繰り返し、このワイブル乱数の発生および分析の繰り返しによって得られた所定事項の確率分布を求めて、その確率分布を基に上記解釈項目の判定を行う過程である、
    寿命試験の設計・判定方法。
  2. 請求項1において、上記寿命試験は、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験であって、
    上記設計過程で定める設計対象項目が、上記打ち切り時間であり、上記判定過程で行う判定が、上記の見積もった打切り時間後に少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から求められる試験対象品のロットの寿命である、
    寿命試験の設計・判定方法。
  3. 請求項1において、上記寿命試験は、軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を使用環境よりも厳しい所定の環境条件におき、破損が発生した時間から寿命を算出する加速試験であり、
    上記設計過程で定める設計対象項目が、試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数であり、上記判定過程で行う判定が、試験対象品の2つのロットの寿命から有為差が有るか無いかを判定する有為差有無の判定である、
    寿命試験の設計・判定方法。
  4. 軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、
    判定基準となる上記打切り時間を見積もる設計過程、および実際の寿命試験の後、上記の見積もった打切り時間後に少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を判定する判定過程を含む、寿命試験の設計・判定方法であって、
    この打切り時間を見積もる設計過程は、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験個数、要求寿命、および要求寿命の信頼度を入力する入力過程と、上記コンピュータに、打切り時間を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
    上記コンピュータ演算処理過程は、ワイブル分布を、上記入力情報におけるワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、および要求寿命の値を用いて特定するワイブル分布特定手順と、特定されたワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を、上記入力情報における試験個数分だけ発生させる乱数発生手順と、この乱数発生手順で発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上であるかを演算する乱数分析手順と、上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返す手順と、この繰り返し手順の各回おける、発生させたワイブル乱数のうちの全てのワイブル乱数が何時間以上になる確率が高いかを累積確率で表す累積分布を演算する手順と、この累積分布において、上記入力情報のうちの信頼度に対応する時間を読み取って、全数未破損時の打切り時間とする対応時間読み取り手順と、を実行する過程であり、
    上記判定過程は、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力する入力過程と、上記コンピュータに、寿命を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
    上記コンピュータ演算処理過程は、未破損時間対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順と、上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順と、この設定割合寿命充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順と、この異寿命充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順と、を実行する過程である、
    ことを特徴とする寿命試験の設計・判定方法。
  5. 軸受等の機械部品または試験片からなる試験対象品を使用環境よりも厳しい所定の環境条件におき、破損が発生した時間から寿命を算出する加速試験において、
    試験対象品の2つのロット間で有為差有りと判断できる必要試験個数を見積もる設計過程と、試験対象品の2つのロットの寿命から、有為差有無の判定、および少なくとも断定できる、倍率による寿命差を算出する判定過程とを含む寿命試験の設計・判定方法であって、
    上記設計過程は、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、および何倍であれば有為差有りと判断するかの倍数で示される寿命差を入力する過程と、上記コンピュータに、必要試験個数を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
    上記コンピュータ演算処理過程は、試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮に定めた寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を仮試験個数分発生させる第1乱数発生手順と、この第1乱数発生手順と同じワイブル分布に従った乱数を上記仮試験個数分発生させる第2乱数発生手順と、第1乱数発生手順で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命との1組の寿命比を算出する寿命比算出手順と、これら第1乱数発生手順,第2乱数発生手順,および寿命比算出手順を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成する累積確率分布作成手順と、上記仮試験個数を繰り返しの都度変えて、上記第1乱数発生手順,第2乱数発生手順,および累積確率分布の作成までの手順である累積確率分布作成手順を、上記仮試験個数が設定最小個数から設定最大個数まで変わる範囲で繰り返し、試験個数と必要寿命差の関係を示すグラフを作成する個数・寿命差関係グラフ作成手順と、この手順で作成された試験個数と必要寿命差の関係のグラフから、上記入力情報の寿命差に対応する個数を読み取って必要試験個数と定める必要試験個数読み取り手順と、この読み取った必要試験個数を表示装置に出力させる必要試験個数出力手順と、を実行する過程であり、
    上記判定過程は、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品の持つワイブル分布のワイブルスロープの値、比較する水準1,水準2の2つのロットの各試験個数および試験結果の寿命を入力する過程と、上記コンピュータに、上記有為差有無の判定、および少なくとも断定できる寿命差を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
    このコンピュータ演算処理過程は、試験対象品の上記入力情報のワイブルスロープの値および仮設定寿命から定まるワイブル分布に従った乱数を水準1のロットの試験個数分発生させる第1乱数発生手順と、第1乱数発生手順と同じワイブル分布に従った乱数を水準2のロットの試験個数分発生させる第2乱数発生手順と、第1乱数発生手順で発生させた設定個数の乱数から所定の寿命計算方法で求まる寿命と第2乱数発生手順で発生させた設定個数の乱数から上記所定の寿命計算方法で求まる寿命とから、1組の水準1,水準2の寿命の寿命比を算出する寿命比算出手順と、これら第1乱数発生手順,第2乱数発生手順,および寿命比算出手順を設定回数繰り返し、上記設定回数の組数の寿命比を求め、この寿命比の確率分布と累積確率分布を作成して累積確率分布から、設定信頼幅内の最大の寿命比を読み取る累積確率分布分析手順と、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比が上記累積確率分布分析手順で得た最大寿命比を超える場合に有為差有りと判定し、最大寿命比以内の場合に有為差無しと判定する有為差有無判定手順と、を実行する過程である、
    寿命試験の設計・判定方法。
  6. 請求項5において、上記判定過程における上記コンピュータ演算処理過程は、有為差有無判定手順で有為差有りとした場合に実行され、上記ワイブル分布を仮設定寿命が異なる設定倍率となるワイブル分布に繰り返し毎に順次変えて、上記累積確率分布分析手順を、上記設定倍率が設定最小倍率から設定最大倍率となるまで繰り返す倍率変更繰り返し手順と、この倍率変更繰り返し手順で得られた、繰り返し変更した設定倍率と上記信頼幅内の最大の寿命比の関係を示すグラフである寿命倍率関係グラフを作成する寿命倍率関係グラフ作成手順と、上記寿命倍率関係グラフから、上記入力情報における水準1,水準2の寿命の寿命比に対応する上記設定倍率の値を読み取り、その読み取った値を少なくとも断定できる寿命差とする有為寿命差読み取り手順と、上記有為差有無判定手順で判定した結果および上記有為寿命差読み取り手順で読み取った、少なくとも断定できる寿命差を表示装置に表示させる結果出力手順と、を実行する過程を含む、寿命試験の設計・判定方法。
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